説明

新規微生物、ホウ素除去剤及びホウ素の除去方法

【課題】ホウ素除去能を有する新たな微生物、及び該微生物を利用するホウ素の除去方法の提供。
【解決手段】ホウ素除去能を有するキャンディダ(Candida)属に属する微生物;キャンディダ(Candida)属JPCCY0403株(NITE P−806);かかる微生物を有効成分として含有するホウ素除去剤;ホウ素を含む化合物の共存下で、かかる微生物を培養する工程を有するホウ素の除去方法;かかるホウ素除去剤を使用するホウ素の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規微生物、該微生物を含有するホウ素除去剤、及び該微生物又はホウ素除去剤を使用するホウ素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素は、ガラスや半導体の材料に含まれていたり、防腐剤や医薬品の原料に含まれているなど、産業界において利用価値の高い元素である。また、ホウ素は、植物の必須微量元素であることが知られており、植物の成長に欠かせないことから、ホウ素が欠乏している土壌に対しては、肥料としての供給が必要となる。さらに、ホウ素は人間にとっての必須微量元素でもある。
【0003】
一方、土壌中のホウ素量が過剰になると、植物の成長が阻害されることが知られており、人間が過剰に摂取した場合にも、健康被害が発生することが知られている。このように、ホウ素は、必要とされる量が比較的狭い範囲に限定されることが判ってきており、近年は環境中への排出に対する規制対象となっている。
【0004】
しかし、上記のようなホウ素の利用価値の高さから、ホウ素を含む化合物は様々な分野の製造現場で使用されており、例えば、工場排水中へのホウ素の混入が懸念されている。また、元来、土壌中のホウ素濃度が高いことで、農業の発達が妨げられている地域もある。そこで、排水や自然環境からのホウ素の除去は、年々、重要な課題となってきている。
【0005】
これに対して、これまでに金属の除去方法としては、例えば、吸着による除去技術が検討されてきている。しかし、これは重金属の除去に対しては有効であることが多いが、ホウ素の除去に対しては、除去効率が低いために不向きであると言われている。
一方、微生物を利用する金属の除去方法が、これまでに種々検討されてきている。微生物を利用する除去方法としては、除去対象である金属を含む化合物を微生物の体内に取り込ませることで対象金属を除去するバイオミネラリゼーション、微生物の細胞表面に存在する多糖類や脂質等の高分子に、除去対象である金属を含む化合物を吸着させて対象金属を除去するバイオアドソープション等が知られている。このような微生物を利用する方法は、環境負荷も少なく低コストで行うことができる優れた方法であり、今後の発展が期待されている。
このような中、微生物を利用するホウ素の除去方法としては、これまでに、微生物として微細藻類を利用する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】微細藻類の機能を用いた排水中からの微量ホウ素除去法、財団法人電力中央研究所研究報告(U02061)、02−008、平成18年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記微細藻類を利用する方法は、まだ十分な検討がなされているとは言えず、ホウ素除去能を有する微生物に関する報告もほとんど無いのが実情である。そこで、ホウ素除去能を有する新たな微生物の探索が強く望まれている。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、ホウ素除去能を有する新たな微生物、及び該微生物を利用するホウ素の除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、ホウ素除去能を有するキャンディダ(Candida)属に属する微生物である。
請求項2に記載の発明は、キャンディダ(Candida)属JPCCY0403株(NITE P−806)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の微生物を有効成分として含有するホウ素除去剤である。
請求項4に記載の発明は、ホウ素を含む化合物の共存下で、請求項1又は2に記載の微生物を培養する工程を有するホウ素の除去方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のホウ素除去剤を使用するホウ素の除去方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホウ素除去能を有する新たな微生物、及び該微生物を利用するホウ素の除去方法を提供できる。そして、環境負荷を与えることなく低コストで、排水や自然環境からホウ素を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】JPCCY0403の26S rDNA−D1/D2塩基配列を使用して得られた分子系統樹を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、以下において、「キャンディダ(Candida)属JPCCY0403株(NITE P−806)」のことを「JPCCY0403」と略記することがある。
【0012】
<JPCCY0403の獲得>
JPCCY0403は、以下の手順に従って獲得した。
まず、下記手順で分離培地を作製した。
分離培地:酵母エキス5g、グルコース20g、ペプトン10g、人工海水37g、クロラムフェニコール0.3g、ストレプトマイシン0.15g、アンピシリン0.1g、粉末寒天12gを純水1Lに添加し、121℃で10分間滅菌処理した後、適量を滅菌済み平板に分取して、寒天平板を作製した。
次いで、長崎県五島市岐宿町河務郷字ドンドンフチから採取した土壌を、生理食塩水で100倍(質量比)に希釈して、これを前記分離培地に塗布し、25℃でインキュベーションした。植菌後3日目に確認できたコロニーを滅菌済み爪楊枝で釣菌し、新たな酵母培地に植菌し、生育を繰り返すことで単菌化した。
【0013】
<JPCCY0403の同定>
JPCCY0403の同定は、株式会社テクノスルガに委託して実施した。そして取得した検体を使用して、「簡易形態観察」、「生理性状試験」、「26S rDNA−D1/D2塩基配列の同定」を行った。なお、供試菌体としては、下記条件で培養した菌株を使用した。
[培養条件]
培地:Yeast extract−malt agar(YM agar)(Kurtzman and Fell,1998)
培養温度:温度耐性試験を除き25℃
培養期間:1週間〜1ヶ月間
その他の培養条件:好気培養
【0014】
[簡易形態観察]
以下のものを使用して行った。
顕微鏡:光学顕微鏡BX51(オリンパス株式会社製)(微分干渉観察)
マウント液;滅菌蒸留水
【0015】
(1)巨視的観察(コロニー観察)
YM寒天平板培地上で25℃の温度条件下、培養4日間でコロニーは表1に示す性状を示した。
【0016】
【表1】

【0017】
(2)微視的観察(形態性状観察)
YM平板培地上で25℃の温度条件下、培養開始2日目に、栄養細胞は球形から広楕円形であり、増殖は多極出芽によることが確認された。また、偽菌糸の形成が認められた。培養開始から1ヶ月経過した平板で、有性生殖器官の形成は認められなかった。
【0018】
[生理性状試験]
試験方法は、Barnet et al.(2000)及びKurtzman and Fell(1998)に準拠し、培養は温度耐性試験を除き25℃で行った。結果を表2〜6に示す。なお、表中、「+」は反応が陽性であることを、「−」は反応が陰性であることを、「W(week)」は弱い陽性反応であることをそれぞれ示す。また、「S(slow)」は試験開始後に2週間から3週間以上かけて徐々に陽性反応が認められたことを、「L(latent)」は試験開始2週間以降に急速に陽性反応が認められたことをそれぞれ示す。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
[26S rDNA−D1/D2塩基配列の同定]
DNA抽出からサイクルシークエンスまでの各操作は、下記の各プロトコールに基づいて行った。
DNA抽出:物理的破壊及びMarmur(1961)の改変法
PCR:puReTaq Ready−To−Go PCR beads(Amersham Biosciences)
サイクルシークエンス:BigDye Terminator v3.1 Kit(Applied Biosystems)
プライマー:NL1及びNL4(O’Donnell,1993)
シークエンス:ABI PRISM 3130xl Genetic Analyzer System(Applied Biosystems)
配列決定:ChromasPro 1.4(Technelysium Pty Ltd.)
相同性検索及び簡易分子系統解析:アポロン2.0(ソフトウェア、テクノスルガ・ラボ)、アポロンDB−FU2.0(データベース、テクノスルガ・ラボ)、国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)
【0025】
JPCCY0403の26S rDNA−D1/D2の塩基配列を同定した結果、配列番号1に示す塩基配列であることが判明した。
【0026】
アポロンDB−FU2.0に対するBLAST(Altschul et al.,1997)相同性検索の結果、JPCCY0403の26S rDNA−D1/D2塩基配列は、子嚢菌系アナモルフ(無性時代)酵母の一種であるキャンディダ ランセンシス(Candida rancensis)の基準株CBS8174T(アクセッション番号:AJ508580)と1塩基の相違で99.8%の最も相同率を示した。GenBank/DDBJ/EMBL等の国際塩基配列データベースに対する相同性検索の結果でも、JPCCY0403の26S rDNA−D1/D2塩基配列は、キャンディダ ランセンシスCBS8174T(アクセッション番号:AJ508580)に対して、99.8%で最もと高い相同率を示した。一般に酵母の26S rDNA−D1/D2塩基配列を使用した解析では、基準株との相違塩基数が0〜3塩基であれば、同種又は姉妹種である可能性が高く、相違が1%以上である場合には、別種である可能性が高いとされている(Kurtzman and Robnett,1998)。
【0027】
図1は、アポロンDB−FU2.0に対する相同性検索で得られた上位15塩基配列をもとに作成した系統樹である。図1中、左下の線はスケールバーを、系統枝の分岐に位置する数字はブートストラップ値を、株名の末尾の「T」はその種の基準株(Type strain)であることを、「NT」はその種の新基準株(Neotype strain)であることを、株名中の「_」はスペースを、それぞれ示す。
図1に示すように、JPCCY0403は、子嚢菌系酵母の一種であるメチニコウィア(Metschnikowia)属の菌種と、そのアナモルフ(無性時代)酵母であるキャンディダ(Candida)属の菌種で構成されるクラスターに含まれた。さらに、JPCCY0403は、キャンディダ ランセンシスCBS8174T(アクセッション番号:AJ508580)と同一の分子系統学的位置を示した。
【0028】
なお、キャンディダ ランセンシスは、古くからメチニコウィア ロイカウフィイ(Metschnikowia reukaufii)のシノニム(同種異名)である可能性が言われてきたが(Kurtzman and Fell,1998)、キャンディダ ランセンシスCBS8174T(アクセッション番号:AJ508580)及びメチニコウィア ロイカウフィイの基準株であるNRRL Y−7112T(アクセッション番号:U44825)の相同率は、比較塩基513塩基中、73塩基の相違で、86%にとどまる。さらに、両種は、分子系統学的にも明らかに異なる位置を示すことから(Nakase et al.,2009、図1参照)、シノニム(同種異名)の関係にある可能性は非常に低く、両種はそれぞれが独立した異なる種であると考えられる。
以上より、26S rDNA−D1/D2の塩基配列の解析結果において、JPCCY0403はキャンディダ ランセンシスに属する菌株であると推定された。
【0029】
簡易形態観察の結果、JPCCY0403の栄養細胞は、球形から広楕円形、円筒形であり、栄養増殖は多極出芽により、有性生殖器官の形成は認められず、キャンディダ属の一般的な形態学的特徴と一致した(Kurtzman and Fell,1998)。
生理性状試験の結果、JPCCY0403は、グルコース発酵性を示し、炭素源としてイノシトール、エリスリトール、ラフィノースを資化せず、マルトース、セロビオース、メレジトースを資化し、窒素源として硝酸塩を資化しなかった。また、JPCCY0403は、0.01%シクロヘキシミド添加培地における生育を示さず、50%(w/v)D−グルコース培地及び10%食塩+5%グルコース培地での生育を示す等の特徴が認められた。
【0030】
以上より、「簡易形態観察」、「生理性状試験」及び「26S rDNA−D1/D2塩基配列解析」の結果から、JPCCY0403は、キャンディダ ランセンシスに属する新菌株であると推定された。
【0031】
JPCCY0024は、2009年8月26日付けで、受託番号NITE P−806として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託されている。
【0032】
<新規微生物>
本発明の微生物は、ホウ素除去能を有するキャンディダ(Candida)属に属する微生物である。キャンディダ属に属する微生物でホウ素除去能を有するものは、これまでに知られていない。また、本発明の微生物は酵母に分類されるが、ホウ素除去能を有する酵母もこれまでに知られていない。JPCCY0403は、上記本発明のキャンディダ属に属する微生物に包含される。
JPCCY0403の18S rDNAは、配列番号2に示す塩基配列を有する。
【0033】
<ホウ素除去剤>
本発明のホウ素除去剤は、上記本発明の微生物を有効成分として含有するものである。
ホウ素除去剤としては、例えば、本発明の微生物を培養して得られた培養物をそのまま使用しても良いし、該培養物をろ過して得られたろ過物(固形分)や、遠心分離して得られた沈降物を使用しても良く、培養物から分離した微生物を使用しても良い。
【0034】
ホウ素除去剤には、必要に応じて本発明の効果を妨げない範囲で、これまでに例示した成分以外の各種添加剤を添加しても良い。
【0035】
ホウ素除去剤は、有効成分として複数種類の本発明の微生物を含有していても良い。この場合、これら微生物の組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0036】
培養時における本発明の微生物の細胞濃度は、培養条件にもより一概には言えないが、概ねホウ素を1mg除去するために、1.0×1010〜1.0×10とすることが好ましく、1.0×10〜5.0×10とすることがより好ましい。
【0037】
<ホウ素の除去方法>
本発明のホウ素の除去方法は、ホウ素を含む化合物の共存下で、上記本発明の微生物を培養する工程を有するものである。また、本発明のホウ素の除去方法は、上記本発明のホウ素除去剤を使用するものである。
本発明において、ホウ素を含む化合物とは、ホウ素原子(B)を含み、酵母が利用可能であるものであれば特に限定されず、無機化合物及び有機化合物のいずれでも良い。好ましいものとしては、ホウ酸(HBO)が例示できる。また、ホウ素を含む化合物はホウ酸塩等の塩類でも良く、かかる塩類としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩;アンモニウム塩等が例示できる。
【0038】
本発明の微生物を培養することで、ホウ素は微生物内に取り込まれ、蓄積されると考えられる。
【0039】
本発明の微生物は、キャンディダ(Candida)属に属する微生物を培養する公知の方法で培養できる。
前培養時の培地は、固形培地及び液体培地のいずれでも良い。
培養時の温度は、18〜30℃であることが好ましく、23〜27℃であることがより好ましい。
培地のpHは6.8〜7.5であることが好ましく、7.0であることがより好ましい。
培養時間は、培養温度及びホウ素量に応じて適宜調節すれば良い。
培養方法は、静置培養、振とう培養、撹拌培養等、培地の種類に応じて適宜選択すれば良い。そして、通気培養することが好ましい。
【0040】
ホウ素を除去する際の、本発明の微生物の培養条件は特に限定されない。例えば、先に述べた微生物獲得時の培養条件や前培養条件と同様でも良いし、これらの条件を参考に適宜調整しても良い。また、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水等の対象中に含まれるホウ素を除去する場合には、これら対象をそのまま培地とするか、又はこれら対象に本発明の微生物の生育に必要な成分を適宜添加したものを培地とし、それ以外は上記と同様の条件で培養すれば良い。
【0041】
本発明の微生物の植菌は、前記ホウ素除去剤を添加するか、本発明の微生物の前培養物を添加することで行うのが好ましい。添加量は、前記ホウ素除去剤や前培養物中の本発明の微生物含有量を考慮して決定すれば良い。
【0042】
ホウ素を除去する際の、本発明の微生物の使用量は、除去を行う環境によって種々異なるが、本発明の効果を妨げない範囲で微生物の密度を高くする方が、ホウ素の除去活性が高くなるので好ましい。
【0043】
JPCCY0403は、酵母の一種であり、容易に大量培養でき、しかもホウ素除去能が高い。したがって、本発明によれば、ホウ素の除去を大規模且つ低コストで行うことができる。
【実施例】
【0044】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
<JPCCY0403を使用したホウ素の除去(1)>
(酵母の培養)
酵母エキス5g、グルコース20g、ペプトン10g及び純水1Lを混合して得られた生育用酵母培地10mLをL字型試験管に分注し、JPCCY0403を白金線で前記生育用酵母培地に植菌して、25℃で2日間前培養した。
次いで、前記と同様の組成の生育用酵母培地250mLを1L三角フラスコに分注し、得られた前培養液5mLを添加して植菌した。そして、25℃で2日間、150rpmの条件で振盪培養した後、8000rpm、10分間の条件で遠心分離することにより、菌体を得た。
【0046】
ホウ素源としてホウ酸(HBO)を純水に溶解させ、ホウ素(B)濃度が100〜120ppmとなるように調整した水溶液を調製し、これをフィルター滅菌した。滅菌した前記水溶液10mLに、遠心分離で得た前記菌体を添加して、該菌体の濃度が2.0×10cells/mLとなるように調整した後、130rpmで24時間振とうしながら培養した。
次いで、8000rpm、10分間の条件で遠心分離することにより、菌体全量を回収し、さらに得られた上清をフィルターでろ過した。そして、得られたろ過液中のホウ素量を、JIS K0102−47.3に則って測定し、菌体により除去されたホウ素量を算出した。その結果、JPCCY0403は、24時間で前記水溶液中のホウ素を25質量%除去していた。
【0047】
(ホウ素除去能の比較)
同様の方法により、JPCCY0403も含めて806株の酵母について一株ごとにホウ素除去量を算出した結果、JPCCY0403が、ホウ素除去能が最も高い酵母であることを見出した。
【0048】
[実施例2]
<JPCCY0403を使用したホウ素の除去(2)>
ホウ素(B)を350ppm含むフィルター滅菌済みの溶液中に、細胞濃度が2.0×10cells/mLとなるようにJPCCY0403を添加し、25℃で24時、JPCCY0403を培養した培養液を3検体調製した(実施例2−1〜2−3)。
次いで、3検体のそれぞれについて、JPCCY0403を除去して得られた溶液中のホウ素量を、実施例1と同様の方法で測定し、ホウ素の除去量及び除去率を求めた。結果を表7に示す。
表7から明らかなように、JPCCY0403が安定したホウ素除去能を有することが確認できた。
【0049】
【表7】

【0050】
[実施例3〜7]
<JPCCY0403の細胞濃度を変化させた場合のホウ素の除去(1)>
溶液中のホウ素濃度を300ppm、溶液中の細胞濃度をそれぞれ2.0×10cells/mL(実施例3(実施例3−1〜3−3))、4.0×10cells/mL(実施例4(実施例4−1〜4−3))、6.0×10cells/mL(実施例5(実施例5−1〜5−3))、8.0×10cells/mL(実施例6(実施例6−1〜6−3))、1.0×10cells/mL(実施例7(実施例7−1〜7−3))としたこと以外は、実施例2と同様にホウ素の除去量及び除去率を求めた。結果を表8〜11に示す。
表8〜11から明らかなように、細胞濃度の増加に伴い、ホウ素除去率が向上することが確認できた。
【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
【表11】

【0055】
【表12】

【0056】
[実施例8〜10]
<JPCCY0403の細胞濃度を変化させた場合のホウ素の除去(2)>
溶液中のホウ素濃度を310ppm、溶液中の細胞濃度をそれぞれ2.0×10cells/mL(実施例8(実施例8−1〜8−3))、2.0×10cells/mL(実施例9(実施例9−1〜9−3))、4.0×10cells/mL(実施例10(実施例10−1〜10−3))としたこと以外は、実施例2と同様にホウ素の除去量及び除去率を求めた。結果を表12〜14に示す。
表12〜14から明らかなように、細胞濃度の増加に伴い、ホウ素除去率が向上することが確認できた。
【0057】
【表13】

【0058】
【表14】

【0059】
【表15】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、排水、土壌、汚泥、地下水、貯水池の水等に含まれるホウ素の除去に利用可能である。
【受託番号】
【0061】
NITE P−806

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素除去能を有するキャンディダ(Candida)属に属する微生物。
【請求項2】
キャンディダ(Candida)属JPCCY0403株(NITE P−806)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微生物を有効成分として含有するホウ素除去剤。
【請求項4】
ホウ素を含む化合物の共存下で、請求項1又は2に記載の微生物を培養する工程を有するホウ素の除去方法。
【請求項5】
請求項3に記載のホウ素除去剤を使用するホウ素の除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−62139(P2011−62139A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215835(P2009−215835)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】