新規微生物並びにそれを利用した廃水処理方法及びシステム
【課題】油脂分解能に優れた新規微生物、並びに、当該微生物を利用した廃水処理方法及び処理システムを提供すること。
【解決手段】油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズSN40株。フサリウム・スピーシーズSN40株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。フサリウム・スピーシーズSN40株及び油脂分解能を有する他の微生物とを油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及びフサリウム・スピーシーズSN40株と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えた廃水処理システム。並びに、油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、フサリウム・スピーシーズSN40株及び油脂分解能を有する他の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えたシステム。
【解決手段】油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズSN40株。フサリウム・スピーシーズSN40株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。フサリウム・スピーシーズSN40株及び油脂分解能を有する他の微生物とを油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及びフサリウム・スピーシーズSN40株と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えた廃水処理システム。並びに、油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、フサリウム・スピーシーズSN40株及び油脂分解能を有する他の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂分解能を有する新規微生物、及び当該新規微生物を利用した廃水処理方法及び処理システムに関する。更に当該新規微生物と油脂分解能を有する他の微生物とを併用した廃水処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では年間約200万トンもの油脂が消費されており、その消費量は年々増加している。油脂の消費増大に従い、廃油脂も増加しており、年間37〜46万トンが発生していると推定されている。
【0003】
油脂含有廃水が環境中に排出すると環境汚染を引き起こすため、油脂含有廃水を適切に処理する必要がある。また下水処理の負担軽減のため、我が国の下水道法においては、油脂を含有する廃水の排出は、n−ヘキサン抽出法による油分濃度で30mg/l以上は下水道に直接流せないことが規制されている。
【0004】
大量に油脂含有廃水を排出する事業所では、自然浮遊装置(グリーストラップ)や加圧浮上装置などを設置して、廃油脂を分離している。分離された廃油脂は、通常、回収されたのちに可燃物として焼却や埋め立て処理がなされる。しかしながら、廃油脂の焼却には多量の重油を使用するため、大気汚染やCO2の増加、また、焼却灰の処理という二次的な環境汚染が問題視されている。また、廃液中に含まれる乳化した廃油脂は自然浮上や加圧浮上では十分に分離しきれず、廃油脂が活性汚泥槽に流入し、活性汚泥処理に負荷を与えることがしばしば生じる。
【0005】
このため、廃油脂を微生物で処理する方法が注目され、油脂分解微生物に関する研究・開発が進められてきた。
【0006】
例えば、油脂含有廃水を高速処理可能な微生物であるAcinetobacter sp. SOD-1株が報告されている(非特許文献1参照)。
【0007】
また、高濃度の油脂含有廃水に対応可能な微生物として、Burkholderia cepacia属の微生物が報告されている(非特許文献2参照)。
【0008】
また高効率な分解処理を目指して複数の油脂分解能を有する微生物を組み合わせることも検討されている。例えば、Bacillus属、Acinetobacter属、Flavobacterium属を主体とした16種類の油脂分解微生物群により、2,000 ppmの油脂を37℃、24時間で80〜90%分解することが報告されている(非特許文献3参照)。
【0009】
また、本発明者らは10,000 ppmのサラダ油を30℃、24時間で60〜70%分解するBurkholderia sp. DW2-1株を報告している(非特許文献4参照)。
【0010】
このように、これまでにも、種々の油脂分解微生物が報告されてきている。しかし、微生物による廃水処理を実用化し、環境への負担を更に軽減するためには、更なる処理の効率化が必要と考えられる。
【0011】
通常、グリーストラップに流入する廃水の油脂濃度は、クロロホルム−メタノール抽出法による濃度で10,000ppm程度である。また、グリーストラップにおける廃水の滞留時間は、およそ24時間である。
【0012】
一方、クロロホルム−メタノール抽出法による油脂濃度が1000ppm程度であれば、下水に放流してもそれほど問題なく処理可能と考えられる。クロロホルム−メタノール抽出法による油脂濃度1000ppmはn−ヘキサン抽出法による油分濃度30mg/l程度と考えられる。
【0013】
このような状況下、微生物による油脂分解処理の実用化を促進するためには、クロロホルム−メタノール抽出法で10,000ppm程度の油脂を24時間で1000ppm程度に低減すること、即ち、10,000ppm程度の油脂を24時間で90%以上分解することが必要と考えられる。
【非特許文献1】生物工学会誌,80,559-62,(2002)
【非特許文献2】科学と工業,71,93-5(1997)
【非特許文献3】空気調和・衛生工学,71,999-1009(1997)
【非特許文献4】オレオサイエンス,第6巻第10号,pp.501-506(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような技術的背景に鑑みてなされたものであって、高濃度油脂含有廃水を効率よく処理可能とする新規微生物、及び当該新規微生物を用いた油脂含有廃水の処理方法及びシステムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として、新規微生物のスクリーニングを行った。その結果、優れた油脂分解能を有する糸状菌を見出し、更に鋭意検討を行って、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、油脂分解能を有する新規微生物、当該新規微生物を用いた廃水処理方法及び廃水処理システムに関する。
【0017】
項1:油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズ(Fusariumsp. )SN40株(受領番号 FERM AP-21237)。
【0018】
項2:項1に記載の微生物を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0019】
好ましくは、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0020】
項3:項1に記載の微生物及び油脂含有能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0021】
好ましくは、油脂分解能を有する他の微生物が、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株である項3に記載の廃水処理方法。
【0022】
好ましくは、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株及びバークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0023】
項4:廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
項1に記載の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽
を備えたシステム。
【0024】
好ましくは、廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
フサリウム・スピーシーズ(Fusariumsp. )SN40株と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えたシステム。
【0025】
項5:油脂分解槽が、項1の微生物及び油脂分解能を有する他の微生物と、油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽である項4に記載のシステム。
【0026】
好ましくは、油脂分解能を有する他の微生物が、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株(受領番号 FERM AP-21236)である項5に記載の廃水処理システム。
【0027】
好ましくは、油脂分解槽が、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株及びバークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株を油脂含有廃水と接触させる油脂分解槽である項5に記載のシステム。
【0028】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0029】
尚、本明細書中で用いられる用語「油脂」は有機性油状物質をいい、脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪酸、及びそれらを含むような植物性及び/又は動植性の油脂をさす。またそれらが食用油の場合、調理その他によって変性したものを含む。油脂含有廃水とは、これらの油脂等を含む廃水をさす。
【0030】
1.新規油脂分解菌フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)SN40株
本発明の新規微生物は、下記のような菌学的性質を有する。
【0031】
(科学的性質)
油脂分解能を有する糸状菌
【0032】
(形態学的性質)
胞子(分生子)形成:形成栄養菌糸より単生した分生子形成細胞の先端から楕円形〜紡錘形で単細胞〜多細胞性のフィアロ型分生子の形成が認められる。図9に微視的簡易形態観察結果を示す。
胞子形成に要する日数:1週間
胞子の色:クリーム色
変異によるコロニー形態の変化:無
【0033】
(分類学的性質)
28SrDNA-D1/D2領域塩基配列を解析した結果、図8又は配列表の配列番号1に示す配列を有している。当該配列を、国際塩基配列データベースBLASTを利用して相同性検索結果を行った結果、Fusarium属と非常に近縁であることが示されたものの、公知のもので完全に一致するものは見出せない。
【0034】
以上の諸性質から本菌株はFusarium属に属していることは明らかであるが、該当種が判明しないことから、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)に属せしめるのが適当であると認められた。更に、後述の実施例に示すように本菌株は優れた油脂分解能を有するが、フサリウム属の菌株においてこのような優れた油脂分解能を有する菌はこれまで知られていない。そのため、本菌を新菌株と認定し、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)SN40株と命名した。本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受領番号 FERM AP-21237として、平成19年3月2日に寄託された。以下本菌株をSN40株とも称する。
【0035】
SN40株の培養は、公知の適当な培地及び培養方法を選択して行うことができる。例えば、LBグルコース培地(1%ポリペプトン、0.5%乾燥酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、1%グルコース)を用い、好気的条件で培養することにより、培養可能である。
【0036】
培養条件は、使用する培地等に基づき適宜設定することができるが、培養温度は、通常20〜35℃程度、好ましくは28〜33℃程度である。また培養期間も菌体量等に応じて適宜設定し得るが、24時間〜7日程度、より好ましくは48時間から4日が適当である。
【0037】
またSN40株は、公知の適当な方法で保管することができる。例えば、凍結乾燥法や凍結法により保管することができる。保管条件は適宜設定し得るが、例えば、凍結乾燥法であれば、10%スキムミルク(110℃、10分殺菌)を保護剤に用いて、常温の条件で保管し得る。また、凍結法であれば、例えば、20%グリセロール存在下、-80℃の条件で保管し得る。保管した微生物の復元も公知の方法に従って行うことができる。例えば、凍結乾燥法であれば、LBグルコース培地1mlに溶解し、LBグルコース寒天培地に塗布することにより復元し得る。また、凍結法の場合には、LBグルコース寒天培地に塗布することにより復元し得る。復元温度は30℃程度である。
【0038】
SN40株は、公知の方法に従って適宜製剤化して用いることもできる。例えば、培養液を濃縮して液状化製剤とすることができる。また菌体の遠心分離、ろ過を行い、液状化製剤とすることも可能である。また凍結乾燥させて、粉末状又は粒状の製剤とすることができる。また公知の適当な担体を用いて製剤化することもできる。そのような担体としては、各種吸着物質や固定化材料などが挙げられる。
【0039】
SN40株は、後述する実施例にも示されるように、優れた油脂分解能を有し、高濃度油脂含有廃水において油脂の濃度を低下させる能力を有する。
【0040】
油脂分解能は、公知の方法に従って油脂に微生物を接触させた場合の油脂分重量の変化や分解量を調べることによって測定可能である。例えば、実施例に示す油脂分解能評価試験(クロロフォルム-メタノール抽出法による油脂分解能評価試験)に従って測定することができる。
【0041】
またSN40株は、糸状菌であって、菌糸を形成するため、遠心や濾過で容易に菌体を分離することができ、菌体の回収が容易である。また、胞子を形成するため、保存安定性にも優れる。
【0042】
更に、SN40株は、油脂分解能を有する他の微生物と共存可能である。特に、バークホルデリア属に属する微生物と共存可能で、組み合わせて用いることで油脂分解効率を向上させることができる。中でも、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)DW2-1株(以下、「DW2-1株」とも称する。)との共存において、互いの油脂分解能を阻害することなく、生菌数の低下もほとんどなく、組み合わせて用いることによって特に優れた油脂分解率を示す。なお、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)DW2-1株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受領番号 FERM AP-21236として、平成19年3月2日に寄託されている。以下本菌株をDW2-1株とも称する。
【0043】
2.廃水処理方法
本発明の廃水処理方法は、SN40株を、廃水に接触させることにより、微生物の働きにより油脂を分解して処理することを特徴とする。
【0044】
2-1)SN40株と廃水の接触
SN40株と廃水を接触させる方法は特に限定されず、効率の良い油脂分解を目的として適宜設定することができる。また、接触におけるSN40株の形態も適宜設定することができる。例えば、SN40株は生菌体として用いてもよく、製剤化した形として用いてもよい。また適当な固定化材料に固定化して用いてもよい。
【0045】
接触の方法も、特に制限されず、例えば、SN40株又はその製剤又は固定化材料を油脂含有廃水を含む反応槽に投入したり、SN40株を固定化した接触ろ材を設置した反応槽に油脂含有廃水を通水させたりすることにより、接触させることができる。
【0046】
接触条件、換言すると、処理条件は、処理する廃水の量等に応じて適宜設定することができるが、通常温度15〜37℃程度、好ましくは25〜35℃程度である。接触時間は4〜24時間程度、好ましくは6〜20時間程度である。
【0047】
接触におけるSN40株の濃度も適宜設定し得るが、廃水1Lに対し、通常10〜70グラム湿菌体重量程度、好ましくは30〜60グラム湿菌体重量程度である。
【0048】
2-2)SN40株と他の微生物の組合せ
本発明の廃水処理方法においては、SN40株と他の微生物を組み合わせて廃水に接触させることにより、油脂を分解する処理を行うこともできる。換言すると、本発明には、SN40株と油脂分解能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0049】
他の微生物は、油脂分解能を有し、SN40株の油脂分解能を必要以上に阻害しないものから適宜設定することができる。他の微生物は1種であってもよく、2種以上であってもよい。具体的な他の微生物としては、例えば、バークボルデリア属、シュードモナス属、バチルス属等に属する微生物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。中でも、バークボルデリア属に属する微生物が好適であり、特にバークボルデリアDW2-1株を好ましく用いることができる。
【0050】
SN40株及び他の微生物との組合せの条件は、微生物の量や処理条件等に応じて適宜設定することができる。
【0051】
例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、その量は、例えばDW2-1株1×109個/ml又は1×109cfu/mlで100mlの培地と設定した場合において、SN40株の量2〜7グラム湿菌体重量程度、好ましくは3〜6グラム湿菌体重量程度、更に好ましくは4〜5グラム湿菌体重量程度である。
【0052】
時間的要件も適宜設定することができ、SN40株とDW2-1株を同時に廃水に接触させてもよく、或いは、別々に接触させてもよい。具体的には、DW2-1株を廃水に接触させた後、4〜24時間後、好ましくは6〜20時間後、更に好ましくは8〜18時間後にSN40株を廃水に接触させることが適当である。
【0053】
SN40株とDW2-1株を組み合わせることで、特に優れた油脂分解効率が奏される。
【0054】
微生物の共存は互いの能力を阻害することや、生菌数の低下させることがある。しかし、SN40株とDW2-1株を組み合わせにおいては、油脂分解能の阻害や生菌数の低下はほとんど見られず、油脂分解率を向上させることができる。
【0055】
このような特性から、SN40株と DW2-1株の組合せは、油脂含有廃水の処理において好適に用いることができる。
【0056】
他の工程
本発明の廃水処理方法においては、必要に応じて、他の工程を更に設けることもできる。
【0057】
他の工程としては、例えば、廃水から夾雑物を予め除去する工程や、遠心分離や濾過などの前処理工程、油脂分解処理後の液の固液分離工程などが挙げられる。また処理水又は分離汚泥の排出工程を設けることもできる。また、油脂以外の有機物分解処理工程を設けることもできる。
【0058】
本発明の廃水処理方法には、微生物を用いた公知の廃水処理方法における技術を必要に応じて付加し得るものである。
【0059】
3.廃水処理システム
本発明の廃水処理システムは、油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
油脂含有廃水とSN40株とを接触させる油脂分解槽を備えており、
微生物の働きによって油脂を分解させることにより、廃水を処理するシステムである。
なお、本発明の処理システムには処理装置も含まれる。
【0060】
3-1.廃水導入手段
廃水導入手段は、廃水を油脂分解槽に導入するためのものである。
【0061】
導入手段の構成は、廃水を油脂分解槽に導入可能なものであれば、特に限定されない。例えば、廃水を連続的に導入する導入路であってもよく、回分的に導入する導入路であってもよい。また廃水導入手段には、流入量を調節するための流入調節装置や、夾雑物を除去するための除去手段や、遠心分離等の前処理手段等の他の手段を必要に応じて備えることもできる。
【0062】
3-2.油脂分解槽
油脂分解槽は、導入した廃水中に含まれる油脂を微生物の働きによって分解するためのものである。
【0063】
本発明においては、油脂分解槽にSN40株を存在させて、上記廃水導入手段により油脂分解槽に導入された廃水と接触させる。
【0064】
油脂分解槽は、SN40株の働きにより油脂を分解する構成を有するものであれば特に限定されない。
【0065】
例えば、油脂分解槽は、散気手段からの散気により微生物等を浮遊させる曝気槽、または微生物等を担持する担体乃至微生物製剤を投入する曝気槽、或いは、微生物を固定化した固定化材料が設置された曝気槽等とすることができる。それらには、微生物や微生物製剤の流出を防止し、かつ油分と十分に接触させるためのトラップを設けることもできる。またグリーストラップなどの油脂分離手段に、微生物を投入又は固定化して、油脂分解槽として用いることもできる。
【0066】
また油脂分解槽には、好気的処理を行うための空気や酸素の供給手段を備えることもできる。また適当な条件で処理が行われるように、ヒーター等の温度コントローラーを設けることや、適当な攪拌装置を設置することもできる。例えば、前記グリーストラップに、酸素供給手段や攪拌手段等を備えさせてもよい。
【0067】
油脂分解槽にSN40株を存在させるための手段も、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定することができる。例えば、SN40株の固体化に用いる担体乃至材料は、SN40株を適切に固定化できるものから適宜設定することができる。例えば、繊維状担体、不織布、ゴム製担体、木製担体、ウレタンフォーム製担体、アクリル製担体、ポリスチレン製担体、ポリエチレン製担体、ポリプロピレン製担体、硬質塩化ビニール製担体、FRP製担体、サランロック製担体、セラミックス製担体、ナイロン製担体、シリコン製担体、金属製担体、発泡スチロール製担体等を用いることができる。
【0068】
SN40株をこのような担体に固定化する方法も特に限定されないが、例えば、担体と生菌体又は胞子とを培養液と共に適当時間培養することにより行うことができる。また、高分子ゲルに菌体を包括した菌体固定化物も利用できる。
【0069】
3-3)SN40株と他の微生物の組合せ
本発明の廃水処理システムにおいては、SN40株と他の微生物を組み合わせて廃水に接触させて、油脂を分解する処理を行うことも可能である。
【0070】
換言すると、本発明には、廃水導入手段と、SN40株及び油脂分解能を有する他の微生物を廃水と接触させる油脂分解槽を備えた廃水処理システムが含まれる。
【0071】
他の微生物は、上記2-2)で述べたとおりであり、公知の微生物から適宜設定し得るが、中でも、DW2-1株を好ましく用いることができる。
【0072】
組み合わせの条件も、上記2-2)で述べた通りであり、微生物の種類等に応じて適宜設定し得るが、例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、DW2-1株1×109個/ml又は1×109cfu/mlで100mlの培地と設定した場合において、SN40株の量2〜7グラム湿菌体重量程度、好ましくは3〜6グラム湿菌体重量程度、更に好ましくは4〜5グラム湿菌体重量程度である。
【0073】
また、時間的要件も適宜設定することができる。例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、同時に廃水に接触させてもよく、或いは、別々に接触させてもよいが、DW2-1株を廃水に接触させた後、4〜24時間後、好ましくは6〜20時間後、更に好ましくは8〜18時間後にSN40株を廃水に接触させることが適当である。
【0074】
他の微生物を油脂分解槽に存在させるための手段も特に限定されず、公知の方法から適宜設定することができる。また、他の微生物は製剤化して用いてもよく、適当な固定化材料に固定化して用いてもよい。
【0075】
例えば、DW2-1株等の油脂分解能を有するバクテリアの微生物製剤とSN40株の生菌製剤をグリーストラップ内に投入して、グリーストラップ内で油脂を分解することができる。
【0076】
3-4.他の手段
本発明の処理システムには、必要に応じて適当な他の構成を設けることができる。
【0077】
例えば、油脂分解槽には、油脂分解槽において処理された液の固液分離を行うための固液分離装置を設けることもできる。また、処理水又は分離汚泥の排出路を設けることもできる。また、油脂以外の有機物分解処理を行う処理槽との連結路を設けることもできる。
【0078】
更に、本発明の廃水処理システムには、必要に応じて、公知の廃水処理システムや廃水処理装置に設けられている適当な手段を備えさせることができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、優れた油脂分解能を有する新規微生物SN40株が提供される。
【0080】
SN40株は糸状菌であり、菌体の回収が容易である。更に、油脂分解能を有する他の微生物との共存が可能であり、組み合わせて用いることによって油脂分解率を向上させることができる。特にDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物と共存可能であり、組み合わせによって油脂分解率を向上させることができる。
【0081】
また、本発明によれば、高濃度油脂含有廃水を効率よく処理する方法が提供される。本発明の廃水処理方法は、SN40株を利用しているため、菌体の扱いが容易であり、効率のよい油脂分解処理が可能である。更に、SN40株とDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物を組合せて用いた場合には、油脂分解処理の効率をより高めることができる。
【0082】
また、本発明によれば、高濃度で油脂を含有する廃水を効率よく処理するシステムが提供される。本発明の廃水処理システムは、SN40株を利用しているため、菌体の扱いが容易であり、効率のよい油脂分解処理が可能である。特に、SN40株とDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物を組合せて用いた場合には、油脂分解処理効率をより高めることができる。
【0083】
特にSN40株と、DW2-1株を組合せて利用した場合には、10000ppm以上の高濃度油脂を、30℃、24時間程度で、1000ppm以下に低減させることが可能となる。このような高効率処理により、油脂の回収作業等が不要になり、コスト低減や環境負荷の軽減等を図ることができる。
【0084】
このように本発明は、微生物を用いた油脂含有廃水処理の促進及び実用化に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0086】
1.方法
1-a).スクリーニング菌株の取得
採取した土壌 0.1 gを 1.5 ml容エッペンドルフチューブに入れ、蒸留水 1 ml を加えてボルテックスで懸濁した。10,000 ppmサラダ油含有真菌用無機塩培地 5 mlをワッセルマン管に入れて滅菌した後、土壌懸濁液 50 μlを加えて 30℃、160 rpm、72 時間振とう培養を行った。次に、ローズベンガル培地に培養液をスプレッドし、30℃、48 時間静置培養した。ローズベンガル培地上の糸状菌をシングルコロニーアイソレーションし、これを1次スクリーニング取得菌株とした。1次スクリーニング通過菌株をリパーゼ検定培地に画線し、30℃、48時間静置培養した。培養後、プレートをUV照射してハローが確認できた菌株を2次スクリーニング取得菌株とした。2次スクリーニング取得菌株において、LB-グルコース培地で前培養し、500 ml容坂口フラスコを用いてクロロホルム・メタノール抽出法にて各菌株の油脂分解能を評価した。このとき、油脂分解率が高い菌株を3次スクリーニング取得株とした。
【0087】
1-b.油脂分解能評価試験
油脂分解能の確認においては、以下の評価方法を用いた。
【0088】
(i)培養条件
500 ml容坂口フラスコまたは500 ml容溝付フラスコに入れた100 mlグルコース含有合成下水培地(0.6%ポリペプトン、0.4%牛肉エキス、0.1%尿素、0.03%NaCl、0.014%KCl、0.014%CaCl2、0.1%Na2HPO4、0,01%MgSO4、0.5%グルコース)に各菌株の前培養液を3 %(v/v)植菌し、坂口フラスコ(INCUBATOR SHAKER RLS216(サンキ精機、大阪))を用いて30℃、100 rpmで培養し、溝付フラスコ(TOHMAS AT12R(THOMAS、東京))を用いて30℃、120 rpmで培養した。培養時間は各実験により変えた。培養後、残存油脂をクロロフォルム・メタノール抽出法に従い抽出して、残存油脂の減少量から各菌株の油脂分解能を評価した。
【0089】
(ii)クロロフォルム-メタノール抽出法
培養液100 mlに対して、クロロホルム:メタノール(3:1、vol)混合溶液を30 ml添加して十分混合することにより残存する油脂をクロロホルム層に抽出した。混合液を250 ml容有機溶媒耐性遠心チューブに移し、himac CR22G(日立工機、東京)を用いて20℃、4,000 gで30分間遠心分離した。水層を除去し、菌層及びクロロホルム層を50 ml容有機溶媒耐性遠心チューブに移した。GS-15R型卓上遠心機(BECKMAN、東京)を用いて20℃、10,000 gで10分間遠心分離した後、クロロホルム層5.0 mlをあらかじめ重量を測定したシャーレに注ぎ、室温で24時間乾燥させた。乾燥後、残存油脂重量を測定し、未植菌で同様の操作を行ったブランクと比較して残存油脂濃度および油脂分解率を以下の数1で表される式より算出した。クロロホルム・メタノール抽出後の残存油脂に樹脂が含まれていた場合は、ヘキサン30 mlおよびメタノール30 mlを加えて樹脂から残存油脂を抽出し、測定した樹脂の重量を差し引いたものを残存油脂重量とした。
【0090】
【数1】
【0091】
尚、上記の式においてブランク値(g) = 0.231とした。
【0092】
(iii) 薄層クロマトグラフィー(TLC)
クロロホルム・メタノール抽出法により得られたクロロホルム層を残存油脂サンプルとして用いた。100×200 (mm)のシリカゲル60 F254 (メルク・ジャパン、東京) の底辺から15 mmの高さに15 mm間隔でサンプルを5 μlずつアプライした。その後、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸 (80:20:1、vol) 混合溶媒100 mlで30分間展開した。展開後、室温でシリカゲルシートを24時間乾燥させ、ヨウ素で呈色を行った。マーカーには分解試験に使用した油脂に合わせ、サラダ油又は牛脂を使用した。
【0093】
2. SN40株のスクリーニング
スクリーニング取得菌株をそれぞれ3 %(v/v)植菌し、10,000 ppmサラダ油の分解能を評価した。SN40株はスクリーニングされた6菌株の中で最も高い油脂分解率を示した(図1)。
【0094】
選抜したSN40株の形状を形態観察した結果を図2に示す。形態観察はLB-グルコース寒天培地に30℃、48時間生育させた後、デジタルカメラによって撮影した。倍率は1シャーレの直径が9cmである。
【0095】
3. SN40株の油脂分解の系時変化
SN40株について、溝付きフラスコを用い、30℃、120 rpmにおいて油脂分解率の経時変化を解析した。その結果、48時間培養において80.2%と最も高い油脂分解率を示した(図3)。また、SN40株について120時間培養による油脂分解能の評価を行った結果、83.2±5.7%の油脂分解率を示し、48時間以降の油脂分解率の向上はほぼ見られなかった。
【0096】
48時間培養の分解率はSN40株が最も高く、このことからSN40株が最も早く油脂を分解することが明らかとなった。
【0097】
図4に上述の培養条件での残存油脂の組成を薄相クロマトグラフィー(TLC)で解析した結果を示す。図4において、Mはマーカーとして用いたサラダ油、1)は12時間、2)は24時間、3)は36時間、4)は48時間培養したものの結果を示す。
【0098】
その結果、経時的にトリグリセリドのスポットが小さくなっていく傾向がみられ、48時間後にはほとんど確認されなかった。遊離脂肪酸に関しても24時間以降のスポットが小さくなっていくことから、培養の経過に伴い油脂の分解が進んでいることが確認された。
【0099】
4.SN40株の生育温度域
SN40株について油脂分解における至適温度を解析した。30℃で最も高い油脂分解率を示し、30℃から温度が変化するにつれて油脂分解率が減少する傾向が見られた(図5)。
【0100】
また各培養温度における残存油脂の組成を解析するためにTLC解析を行った(図6)。図6において、Mはマーカーとして用いたサラダ油、1)は20℃、2)は25℃、3)は30℃、4)は35℃で培養した結果を示す。このことから、SN40株は30℃から上では分解能が落ち、35℃では分解能が大幅に低下することが示された。その結果、SN40株では他の培養温度と比べると35℃において油脂の主成分であるトリグリセリドのスポットが大きいことが確認された。
【0101】
以上より、SN40株の油脂分解における至適温度は30℃であることがわかった。
【0102】
5. SN40株の種々の油脂に対する分解能
実際の油脂廃水には様々な種類の油脂が混入していることが想定される。そのため、SN40株が組成の異なる油脂を分解可能であるか確かめるために、牛脂を用いた油脂分解能の評価を行った。
【0103】
溝付きフラスコに入れたグルコース含有合成下水培地を用い、サラダ油又は牛脂の初期濃度を10,000 ppmとして、30℃、120 rpm、48時間培養して、各油脂の分解率を評価した。
【0104】
その結果、SN40株は57.0 %の牛脂分解率を示し、サラダ油の分解率80.2 %と比べて違いが見られたが、牛脂であっても分解は進むと考えられた(図7)。
【0105】
6. SN40株の同定
株式会社テクノスルガに依頼し、SN40株の同定を行った。同定は28SrDNA-D1/D2解析および簡易形態観察により行った。
【0106】
SN40株の28SrDNA-D1/D2領域の塩基配列を図8及び配列表の配列番号1に示す。また当該配列について国際塩基配列データベースBLASTを利用して検索を行った結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
国際塩基配列データベースBLASTを用いた検索結果(表1)から、SN40株はFusarium属と非常に近縁であることが示された。
【0109】
また簡易形態観察結果(600倍)を図9に示す。栄養菌糸より単生した分生子形成細胞の先端から楕円形〜紡錘形で単細胞〜多細胞性のフィアロ型分生子の形成が認められた。
【0110】
以上の結果より、SN40株はFusarium属の一種であることが示された。
【0111】
7. 油脂分解菌の組み合わせによる油脂含有廃液処理の効率化
廃水中に含まれる油脂処理の更なる効率化を目指し、バクテリアBurkholderia sp. DW2-1株と、バクテリア(Burkholderia sp. DW15-2、Stenotrophomonas sp. THL7)、酵母(THL6)および糸状菌(Fusarium sp. SN40)を組み合わせ、油脂分解の効率化を試みた(図10)。尚、前記DW15-2株、THL6株及びTHL7株は、立命館大学理工学部化学生物工学科(滋賀県草津市)に保存されている菌株である。
【0112】
その結果、DW2-1株とSN40株の組み合わせで油脂分解率の向上が見られた。一方、他の油脂分解微生物の組み合わせでは油脂分解率が低下した。このことから、SN40株とDW2-1株の組み合わせが油脂分解の効率化に有効である事が示された。
【0113】
8. DW2-1株とSN40株の組み合わせによる油脂分解の最適化
DW2-1株とSN40株との最適な組み合わせ条件を決定するため、まず、DW2-1株の植菌量を検討した(図11)。上記(i)の培養条件において、3 %(v/v)植菌に代えて、菌体濃度を1×107〜1×109cfu/mlに変化させる以外は同様の条件として油脂分解能の評価を行った。
【0114】
その結果1×109 cfu/mlになるように植菌したときに最も分解率が良かった。
【0115】
次にDW2-1株とSN40株の組み合わせの条件を検討した。
【0116】
DW2-1の添加濃度は1×109 cfu/mlとし、SN40株の植菌量及び植菌時間を変化させて検討した(表2、3)。
【0117】
表2にSN40株とDW2-1株とを同時に植菌し、SN40株の添加量を変化させる以外は同様の条件として油脂分解率を調べた結果を示す。
【0118】
【表2】
【0119】
また、表3にSN40株の添加量を4g-wetとし、DW2-1株の植菌時間に対するSN40株の植菌時間を変化させる以外は同様の条件として油脂分解率を調べた結果を示す。
【0120】
【表3】
【0121】
その結果、DW2-1株1×109cfu/mlに対して、SN40株を、DW2-1株の植菌から12時間後に4 g-wetの量で添加するのが最適な条件であることがわかった。
【0122】
9. DW2-1株とSN40株の組み合わせによる油脂分解の最適化
DW2-1株1×109cfu/ml、及び、SN40株4 g-wetを同時に添加して培養した時の油脂分解率と生菌数の経時変化を解析した(図12)。
【0123】
その結果、SN40株、DW2-1株とも生菌数の低下は確認されず、共培養において油脂分解や生育に阻害は確認されなかった。また油脂分解率が向上した。このことから、SN40株とDW2-1株によって共培養が可能であることが示された。
【0124】
10. 開放バッチ培養における油脂分解
DW2-1株とSN40株の組み合わせが開放バッチ培養時に油脂分解を効率的に行うことが可能かを検討するため、1 Lスケールの開放共培養を行った。
【0125】
LB培地1 Lを3 Lビーカー(材質:ポリプロピレン)に加え、そこにDW2-1株を1%植菌した。3 LビーカーをTHERMO MINDER SM-05で30℃に保温した恒温槽に浸し、トルネード用撹拌羽根DT-50による撹拌を行った。また、エアーポンプSERIES X-202による曝気(37.6 L/h)を行いながら、24時間バッチ培養を行った。24時間後、サラダ油10 gを添加とSN40株を菌体湿重量40 gを植菌し、24時間培養を行った。24時間後、培養液を100 ml分取し、100 ml中の残存油脂量をクロロホルム・メタノール抽出法に従って測定した。また、培養液中の微生物数を平板培養法を用いて測定した。
【0126】
図13に試験工程の概要を示す。
【0127】
また、図14に油脂分解率の結果を示す。
【0128】
その結果、DW2-1株単独の時と比較してSN40株を共培養した時には油脂分解率が向上した。このことから、SN40株とDW2-1株との組み合わせが実用的な条件でも可能であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】スクリーニングにより得られた種々の糸状菌の油脂分解率を示す図面である。
【図2】SN40株の形状の形態観察結果を示す図面である。
【図3】SN40株の培養時間と油脂分解率の関係を示す図面である。
【図4】SN40株の残存油脂組成の経時変化を示す図面である。Mはマーカー、1)は12時間後、2)は24時間後、3)は36時間後、4)は48時間後の結果を示す。
【図5】SN40株の培養温度と油脂分解率の関係を示す図面である。
【図6】SN40株の培養温度の違いによる残存油脂組成の解析結果を示す図面である。Mはマーカー、1)は20℃培養、2)は25℃培養、3)は30℃培養、4)は35℃培養とした場合の解析結果を示す。
【図7】SN40株による牛脂及びサラダ油の分解率を示す図面である。
【図8】SN40株の28SrDNA-D1/D2領域の塩基配列を示す図面である。
【図9】SN40株の微視的観察像を示す図面である。分生子形成構造が示されている。
【図10】DW2-1株と他の油脂分解微生物との組み合わせによる油脂分解率を示す図面である。
【図11】DW2-1株の植菌量毎の油脂分解率を示す図面である。
【図12】DW2-1株とSN40株の共培養時における生菌数と油脂分解率の経時変化を示す図面である。
【図13】DW2-1株とSN40株の組合せにおける開放バッチ培養系の試験工程の概要を示す図面である。
【図14】DW2-1株とSN40株の組合せにおける開放バッチ培養における油脂分解率を示す図面である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂分解能を有する新規微生物、及び当該新規微生物を利用した廃水処理方法及び処理システムに関する。更に当該新規微生物と油脂分解能を有する他の微生物とを併用した廃水処理方法及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では年間約200万トンもの油脂が消費されており、その消費量は年々増加している。油脂の消費増大に従い、廃油脂も増加しており、年間37〜46万トンが発生していると推定されている。
【0003】
油脂含有廃水が環境中に排出すると環境汚染を引き起こすため、油脂含有廃水を適切に処理する必要がある。また下水処理の負担軽減のため、我が国の下水道法においては、油脂を含有する廃水の排出は、n−ヘキサン抽出法による油分濃度で30mg/l以上は下水道に直接流せないことが規制されている。
【0004】
大量に油脂含有廃水を排出する事業所では、自然浮遊装置(グリーストラップ)や加圧浮上装置などを設置して、廃油脂を分離している。分離された廃油脂は、通常、回収されたのちに可燃物として焼却や埋め立て処理がなされる。しかしながら、廃油脂の焼却には多量の重油を使用するため、大気汚染やCO2の増加、また、焼却灰の処理という二次的な環境汚染が問題視されている。また、廃液中に含まれる乳化した廃油脂は自然浮上や加圧浮上では十分に分離しきれず、廃油脂が活性汚泥槽に流入し、活性汚泥処理に負荷を与えることがしばしば生じる。
【0005】
このため、廃油脂を微生物で処理する方法が注目され、油脂分解微生物に関する研究・開発が進められてきた。
【0006】
例えば、油脂含有廃水を高速処理可能な微生物であるAcinetobacter sp. SOD-1株が報告されている(非特許文献1参照)。
【0007】
また、高濃度の油脂含有廃水に対応可能な微生物として、Burkholderia cepacia属の微生物が報告されている(非特許文献2参照)。
【0008】
また高効率な分解処理を目指して複数の油脂分解能を有する微生物を組み合わせることも検討されている。例えば、Bacillus属、Acinetobacter属、Flavobacterium属を主体とした16種類の油脂分解微生物群により、2,000 ppmの油脂を37℃、24時間で80〜90%分解することが報告されている(非特許文献3参照)。
【0009】
また、本発明者らは10,000 ppmのサラダ油を30℃、24時間で60〜70%分解するBurkholderia sp. DW2-1株を報告している(非特許文献4参照)。
【0010】
このように、これまでにも、種々の油脂分解微生物が報告されてきている。しかし、微生物による廃水処理を実用化し、環境への負担を更に軽減するためには、更なる処理の効率化が必要と考えられる。
【0011】
通常、グリーストラップに流入する廃水の油脂濃度は、クロロホルム−メタノール抽出法による濃度で10,000ppm程度である。また、グリーストラップにおける廃水の滞留時間は、およそ24時間である。
【0012】
一方、クロロホルム−メタノール抽出法による油脂濃度が1000ppm程度であれば、下水に放流してもそれほど問題なく処理可能と考えられる。クロロホルム−メタノール抽出法による油脂濃度1000ppmはn−ヘキサン抽出法による油分濃度30mg/l程度と考えられる。
【0013】
このような状況下、微生物による油脂分解処理の実用化を促進するためには、クロロホルム−メタノール抽出法で10,000ppm程度の油脂を24時間で1000ppm程度に低減すること、即ち、10,000ppm程度の油脂を24時間で90%以上分解することが必要と考えられる。
【非特許文献1】生物工学会誌,80,559-62,(2002)
【非特許文献2】科学と工業,71,93-5(1997)
【非特許文献3】空気調和・衛生工学,71,999-1009(1997)
【非特許文献4】オレオサイエンス,第6巻第10号,pp.501-506(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような技術的背景に鑑みてなされたものであって、高濃度油脂含有廃水を効率よく処理可能とする新規微生物、及び当該新規微生物を用いた油脂含有廃水の処理方法及びシステムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として、新規微生物のスクリーニングを行った。その結果、優れた油脂分解能を有する糸状菌を見出し、更に鋭意検討を行って、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、油脂分解能を有する新規微生物、当該新規微生物を用いた廃水処理方法及び廃水処理システムに関する。
【0017】
項1:油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズ(Fusariumsp. )SN40株(受領番号 FERM AP-21237)。
【0018】
項2:項1に記載の微生物を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0019】
好ましくは、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0020】
項3:項1に記載の微生物及び油脂含有能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0021】
好ましくは、油脂分解能を有する他の微生物が、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株である項3に記載の廃水処理方法。
【0022】
好ましくは、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株及びバークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【0023】
項4:廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
項1に記載の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽
を備えたシステム。
【0024】
好ましくは、廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
フサリウム・スピーシーズ(Fusariumsp. )SN40株と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽を備えたシステム。
【0025】
項5:油脂分解槽が、項1の微生物及び油脂分解能を有する他の微生物と、油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽である項4に記載のシステム。
【0026】
好ましくは、油脂分解能を有する他の微生物が、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株(受領番号 FERM AP-21236)である項5に記載の廃水処理システム。
【0027】
好ましくは、油脂分解槽が、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株及びバークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp. )DW2-1株を油脂含有廃水と接触させる油脂分解槽である項5に記載のシステム。
【0028】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0029】
尚、本明細書中で用いられる用語「油脂」は有機性油状物質をいい、脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪酸、及びそれらを含むような植物性及び/又は動植性の油脂をさす。またそれらが食用油の場合、調理その他によって変性したものを含む。油脂含有廃水とは、これらの油脂等を含む廃水をさす。
【0030】
1.新規油脂分解菌フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)SN40株
本発明の新規微生物は、下記のような菌学的性質を有する。
【0031】
(科学的性質)
油脂分解能を有する糸状菌
【0032】
(形態学的性質)
胞子(分生子)形成:形成栄養菌糸より単生した分生子形成細胞の先端から楕円形〜紡錘形で単細胞〜多細胞性のフィアロ型分生子の形成が認められる。図9に微視的簡易形態観察結果を示す。
胞子形成に要する日数:1週間
胞子の色:クリーム色
変異によるコロニー形態の変化:無
【0033】
(分類学的性質)
28SrDNA-D1/D2領域塩基配列を解析した結果、図8又は配列表の配列番号1に示す配列を有している。当該配列を、国際塩基配列データベースBLASTを利用して相同性検索結果を行った結果、Fusarium属と非常に近縁であることが示されたものの、公知のもので完全に一致するものは見出せない。
【0034】
以上の諸性質から本菌株はFusarium属に属していることは明らかであるが、該当種が判明しないことから、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)に属せしめるのが適当であると認められた。更に、後述の実施例に示すように本菌株は優れた油脂分解能を有するが、フサリウム属の菌株においてこのような優れた油脂分解能を有する菌はこれまで知られていない。そのため、本菌を新菌株と認定し、フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp.)SN40株と命名した。本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受領番号 FERM AP-21237として、平成19年3月2日に寄託された。以下本菌株をSN40株とも称する。
【0035】
SN40株の培養は、公知の適当な培地及び培養方法を選択して行うことができる。例えば、LBグルコース培地(1%ポリペプトン、0.5%乾燥酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、1%グルコース)を用い、好気的条件で培養することにより、培養可能である。
【0036】
培養条件は、使用する培地等に基づき適宜設定することができるが、培養温度は、通常20〜35℃程度、好ましくは28〜33℃程度である。また培養期間も菌体量等に応じて適宜設定し得るが、24時間〜7日程度、より好ましくは48時間から4日が適当である。
【0037】
またSN40株は、公知の適当な方法で保管することができる。例えば、凍結乾燥法や凍結法により保管することができる。保管条件は適宜設定し得るが、例えば、凍結乾燥法であれば、10%スキムミルク(110℃、10分殺菌)を保護剤に用いて、常温の条件で保管し得る。また、凍結法であれば、例えば、20%グリセロール存在下、-80℃の条件で保管し得る。保管した微生物の復元も公知の方法に従って行うことができる。例えば、凍結乾燥法であれば、LBグルコース培地1mlに溶解し、LBグルコース寒天培地に塗布することにより復元し得る。また、凍結法の場合には、LBグルコース寒天培地に塗布することにより復元し得る。復元温度は30℃程度である。
【0038】
SN40株は、公知の方法に従って適宜製剤化して用いることもできる。例えば、培養液を濃縮して液状化製剤とすることができる。また菌体の遠心分離、ろ過を行い、液状化製剤とすることも可能である。また凍結乾燥させて、粉末状又は粒状の製剤とすることができる。また公知の適当な担体を用いて製剤化することもできる。そのような担体としては、各種吸着物質や固定化材料などが挙げられる。
【0039】
SN40株は、後述する実施例にも示されるように、優れた油脂分解能を有し、高濃度油脂含有廃水において油脂の濃度を低下させる能力を有する。
【0040】
油脂分解能は、公知の方法に従って油脂に微生物を接触させた場合の油脂分重量の変化や分解量を調べることによって測定可能である。例えば、実施例に示す油脂分解能評価試験(クロロフォルム-メタノール抽出法による油脂分解能評価試験)に従って測定することができる。
【0041】
またSN40株は、糸状菌であって、菌糸を形成するため、遠心や濾過で容易に菌体を分離することができ、菌体の回収が容易である。また、胞子を形成するため、保存安定性にも優れる。
【0042】
更に、SN40株は、油脂分解能を有する他の微生物と共存可能である。特に、バークホルデリア属に属する微生物と共存可能で、組み合わせて用いることで油脂分解効率を向上させることができる。中でも、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)DW2-1株(以下、「DW2-1株」とも称する。)との共存において、互いの油脂分解能を阻害することなく、生菌数の低下もほとんどなく、組み合わせて用いることによって特に優れた油脂分解率を示す。なお、バークボルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)DW2-1株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に、受領番号 FERM AP-21236として、平成19年3月2日に寄託されている。以下本菌株をDW2-1株とも称する。
【0043】
2.廃水処理方法
本発明の廃水処理方法は、SN40株を、廃水に接触させることにより、微生物の働きにより油脂を分解して処理することを特徴とする。
【0044】
2-1)SN40株と廃水の接触
SN40株と廃水を接触させる方法は特に限定されず、効率の良い油脂分解を目的として適宜設定することができる。また、接触におけるSN40株の形態も適宜設定することができる。例えば、SN40株は生菌体として用いてもよく、製剤化した形として用いてもよい。また適当な固定化材料に固定化して用いてもよい。
【0045】
接触の方法も、特に制限されず、例えば、SN40株又はその製剤又は固定化材料を油脂含有廃水を含む反応槽に投入したり、SN40株を固定化した接触ろ材を設置した反応槽に油脂含有廃水を通水させたりすることにより、接触させることができる。
【0046】
接触条件、換言すると、処理条件は、処理する廃水の量等に応じて適宜設定することができるが、通常温度15〜37℃程度、好ましくは25〜35℃程度である。接触時間は4〜24時間程度、好ましくは6〜20時間程度である。
【0047】
接触におけるSN40株の濃度も適宜設定し得るが、廃水1Lに対し、通常10〜70グラム湿菌体重量程度、好ましくは30〜60グラム湿菌体重量程度である。
【0048】
2-2)SN40株と他の微生物の組合せ
本発明の廃水処理方法においては、SN40株と他の微生物を組み合わせて廃水に接触させることにより、油脂を分解する処理を行うこともできる。換言すると、本発明には、SN40株と油脂分解能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0049】
他の微生物は、油脂分解能を有し、SN40株の油脂分解能を必要以上に阻害しないものから適宜設定することができる。他の微生物は1種であってもよく、2種以上であってもよい。具体的な他の微生物としては、例えば、バークボルデリア属、シュードモナス属、バチルス属等に属する微生物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。中でも、バークボルデリア属に属する微生物が好適であり、特にバークボルデリアDW2-1株を好ましく用いることができる。
【0050】
SN40株及び他の微生物との組合せの条件は、微生物の量や処理条件等に応じて適宜設定することができる。
【0051】
例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、その量は、例えばDW2-1株1×109個/ml又は1×109cfu/mlで100mlの培地と設定した場合において、SN40株の量2〜7グラム湿菌体重量程度、好ましくは3〜6グラム湿菌体重量程度、更に好ましくは4〜5グラム湿菌体重量程度である。
【0052】
時間的要件も適宜設定することができ、SN40株とDW2-1株を同時に廃水に接触させてもよく、或いは、別々に接触させてもよい。具体的には、DW2-1株を廃水に接触させた後、4〜24時間後、好ましくは6〜20時間後、更に好ましくは8〜18時間後にSN40株を廃水に接触させることが適当である。
【0053】
SN40株とDW2-1株を組み合わせることで、特に優れた油脂分解効率が奏される。
【0054】
微生物の共存は互いの能力を阻害することや、生菌数の低下させることがある。しかし、SN40株とDW2-1株を組み合わせにおいては、油脂分解能の阻害や生菌数の低下はほとんど見られず、油脂分解率を向上させることができる。
【0055】
このような特性から、SN40株と DW2-1株の組合せは、油脂含有廃水の処理において好適に用いることができる。
【0056】
他の工程
本発明の廃水処理方法においては、必要に応じて、他の工程を更に設けることもできる。
【0057】
他の工程としては、例えば、廃水から夾雑物を予め除去する工程や、遠心分離や濾過などの前処理工程、油脂分解処理後の液の固液分離工程などが挙げられる。また処理水又は分離汚泥の排出工程を設けることもできる。また、油脂以外の有機物分解処理工程を設けることもできる。
【0058】
本発明の廃水処理方法には、微生物を用いた公知の廃水処理方法における技術を必要に応じて付加し得るものである。
【0059】
3.廃水処理システム
本発明の廃水処理システムは、油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
油脂含有廃水とSN40株とを接触させる油脂分解槽を備えており、
微生物の働きによって油脂を分解させることにより、廃水を処理するシステムである。
なお、本発明の処理システムには処理装置も含まれる。
【0060】
3-1.廃水導入手段
廃水導入手段は、廃水を油脂分解槽に導入するためのものである。
【0061】
導入手段の構成は、廃水を油脂分解槽に導入可能なものであれば、特に限定されない。例えば、廃水を連続的に導入する導入路であってもよく、回分的に導入する導入路であってもよい。また廃水導入手段には、流入量を調節するための流入調節装置や、夾雑物を除去するための除去手段や、遠心分離等の前処理手段等の他の手段を必要に応じて備えることもできる。
【0062】
3-2.油脂分解槽
油脂分解槽は、導入した廃水中に含まれる油脂を微生物の働きによって分解するためのものである。
【0063】
本発明においては、油脂分解槽にSN40株を存在させて、上記廃水導入手段により油脂分解槽に導入された廃水と接触させる。
【0064】
油脂分解槽は、SN40株の働きにより油脂を分解する構成を有するものであれば特に限定されない。
【0065】
例えば、油脂分解槽は、散気手段からの散気により微生物等を浮遊させる曝気槽、または微生物等を担持する担体乃至微生物製剤を投入する曝気槽、或いは、微生物を固定化した固定化材料が設置された曝気槽等とすることができる。それらには、微生物や微生物製剤の流出を防止し、かつ油分と十分に接触させるためのトラップを設けることもできる。またグリーストラップなどの油脂分離手段に、微生物を投入又は固定化して、油脂分解槽として用いることもできる。
【0066】
また油脂分解槽には、好気的処理を行うための空気や酸素の供給手段を備えることもできる。また適当な条件で処理が行われるように、ヒーター等の温度コントローラーを設けることや、適当な攪拌装置を設置することもできる。例えば、前記グリーストラップに、酸素供給手段や攪拌手段等を備えさせてもよい。
【0067】
油脂分解槽にSN40株を存在させるための手段も、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定することができる。例えば、SN40株の固体化に用いる担体乃至材料は、SN40株を適切に固定化できるものから適宜設定することができる。例えば、繊維状担体、不織布、ゴム製担体、木製担体、ウレタンフォーム製担体、アクリル製担体、ポリスチレン製担体、ポリエチレン製担体、ポリプロピレン製担体、硬質塩化ビニール製担体、FRP製担体、サランロック製担体、セラミックス製担体、ナイロン製担体、シリコン製担体、金属製担体、発泡スチロール製担体等を用いることができる。
【0068】
SN40株をこのような担体に固定化する方法も特に限定されないが、例えば、担体と生菌体又は胞子とを培養液と共に適当時間培養することにより行うことができる。また、高分子ゲルに菌体を包括した菌体固定化物も利用できる。
【0069】
3-3)SN40株と他の微生物の組合せ
本発明の廃水処理システムにおいては、SN40株と他の微生物を組み合わせて廃水に接触させて、油脂を分解する処理を行うことも可能である。
【0070】
換言すると、本発明には、廃水導入手段と、SN40株及び油脂分解能を有する他の微生物を廃水と接触させる油脂分解槽を備えた廃水処理システムが含まれる。
【0071】
他の微生物は、上記2-2)で述べたとおりであり、公知の微生物から適宜設定し得るが、中でも、DW2-1株を好ましく用いることができる。
【0072】
組み合わせの条件も、上記2-2)で述べた通りであり、微生物の種類等に応じて適宜設定し得るが、例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、DW2-1株1×109個/ml又は1×109cfu/mlで100mlの培地と設定した場合において、SN40株の量2〜7グラム湿菌体重量程度、好ましくは3〜6グラム湿菌体重量程度、更に好ましくは4〜5グラム湿菌体重量程度である。
【0073】
また、時間的要件も適宜設定することができる。例えば、SN40株とDW2-1株を組み合わせる場合、同時に廃水に接触させてもよく、或いは、別々に接触させてもよいが、DW2-1株を廃水に接触させた後、4〜24時間後、好ましくは6〜20時間後、更に好ましくは8〜18時間後にSN40株を廃水に接触させることが適当である。
【0074】
他の微生物を油脂分解槽に存在させるための手段も特に限定されず、公知の方法から適宜設定することができる。また、他の微生物は製剤化して用いてもよく、適当な固定化材料に固定化して用いてもよい。
【0075】
例えば、DW2-1株等の油脂分解能を有するバクテリアの微生物製剤とSN40株の生菌製剤をグリーストラップ内に投入して、グリーストラップ内で油脂を分解することができる。
【0076】
3-4.他の手段
本発明の処理システムには、必要に応じて適当な他の構成を設けることができる。
【0077】
例えば、油脂分解槽には、油脂分解槽において処理された液の固液分離を行うための固液分離装置を設けることもできる。また、処理水又は分離汚泥の排出路を設けることもできる。また、油脂以外の有機物分解処理を行う処理槽との連結路を設けることもできる。
【0078】
更に、本発明の廃水処理システムには、必要に応じて、公知の廃水処理システムや廃水処理装置に設けられている適当な手段を備えさせることができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、優れた油脂分解能を有する新規微生物SN40株が提供される。
【0080】
SN40株は糸状菌であり、菌体の回収が容易である。更に、油脂分解能を有する他の微生物との共存が可能であり、組み合わせて用いることによって油脂分解率を向上させることができる。特にDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物と共存可能であり、組み合わせによって油脂分解率を向上させることができる。
【0081】
また、本発明によれば、高濃度油脂含有廃水を効率よく処理する方法が提供される。本発明の廃水処理方法は、SN40株を利用しているため、菌体の扱いが容易であり、効率のよい油脂分解処理が可能である。更に、SN40株とDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物を組合せて用いた場合には、油脂分解処理の効率をより高めることができる。
【0082】
また、本発明によれば、高濃度で油脂を含有する廃水を効率よく処理するシステムが提供される。本発明の廃水処理システムは、SN40株を利用しているため、菌体の扱いが容易であり、効率のよい油脂分解処理が可能である。特に、SN40株とDW2-1株等のバークボルデリア属との微生物を組合せて用いた場合には、油脂分解処理効率をより高めることができる。
【0083】
特にSN40株と、DW2-1株を組合せて利用した場合には、10000ppm以上の高濃度油脂を、30℃、24時間程度で、1000ppm以下に低減させることが可能となる。このような高効率処理により、油脂の回収作業等が不要になり、コスト低減や環境負荷の軽減等を図ることができる。
【0084】
このように本発明は、微生物を用いた油脂含有廃水処理の促進及び実用化に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0086】
1.方法
1-a).スクリーニング菌株の取得
採取した土壌 0.1 gを 1.5 ml容エッペンドルフチューブに入れ、蒸留水 1 ml を加えてボルテックスで懸濁した。10,000 ppmサラダ油含有真菌用無機塩培地 5 mlをワッセルマン管に入れて滅菌した後、土壌懸濁液 50 μlを加えて 30℃、160 rpm、72 時間振とう培養を行った。次に、ローズベンガル培地に培養液をスプレッドし、30℃、48 時間静置培養した。ローズベンガル培地上の糸状菌をシングルコロニーアイソレーションし、これを1次スクリーニング取得菌株とした。1次スクリーニング通過菌株をリパーゼ検定培地に画線し、30℃、48時間静置培養した。培養後、プレートをUV照射してハローが確認できた菌株を2次スクリーニング取得菌株とした。2次スクリーニング取得菌株において、LB-グルコース培地で前培養し、500 ml容坂口フラスコを用いてクロロホルム・メタノール抽出法にて各菌株の油脂分解能を評価した。このとき、油脂分解率が高い菌株を3次スクリーニング取得株とした。
【0087】
1-b.油脂分解能評価試験
油脂分解能の確認においては、以下の評価方法を用いた。
【0088】
(i)培養条件
500 ml容坂口フラスコまたは500 ml容溝付フラスコに入れた100 mlグルコース含有合成下水培地(0.6%ポリペプトン、0.4%牛肉エキス、0.1%尿素、0.03%NaCl、0.014%KCl、0.014%CaCl2、0.1%Na2HPO4、0,01%MgSO4、0.5%グルコース)に各菌株の前培養液を3 %(v/v)植菌し、坂口フラスコ(INCUBATOR SHAKER RLS216(サンキ精機、大阪))を用いて30℃、100 rpmで培養し、溝付フラスコ(TOHMAS AT12R(THOMAS、東京))を用いて30℃、120 rpmで培養した。培養時間は各実験により変えた。培養後、残存油脂をクロロフォルム・メタノール抽出法に従い抽出して、残存油脂の減少量から各菌株の油脂分解能を評価した。
【0089】
(ii)クロロフォルム-メタノール抽出法
培養液100 mlに対して、クロロホルム:メタノール(3:1、vol)混合溶液を30 ml添加して十分混合することにより残存する油脂をクロロホルム層に抽出した。混合液を250 ml容有機溶媒耐性遠心チューブに移し、himac CR22G(日立工機、東京)を用いて20℃、4,000 gで30分間遠心分離した。水層を除去し、菌層及びクロロホルム層を50 ml容有機溶媒耐性遠心チューブに移した。GS-15R型卓上遠心機(BECKMAN、東京)を用いて20℃、10,000 gで10分間遠心分離した後、クロロホルム層5.0 mlをあらかじめ重量を測定したシャーレに注ぎ、室温で24時間乾燥させた。乾燥後、残存油脂重量を測定し、未植菌で同様の操作を行ったブランクと比較して残存油脂濃度および油脂分解率を以下の数1で表される式より算出した。クロロホルム・メタノール抽出後の残存油脂に樹脂が含まれていた場合は、ヘキサン30 mlおよびメタノール30 mlを加えて樹脂から残存油脂を抽出し、測定した樹脂の重量を差し引いたものを残存油脂重量とした。
【0090】
【数1】
【0091】
尚、上記の式においてブランク値(g) = 0.231とした。
【0092】
(iii) 薄層クロマトグラフィー(TLC)
クロロホルム・メタノール抽出法により得られたクロロホルム層を残存油脂サンプルとして用いた。100×200 (mm)のシリカゲル60 F254 (メルク・ジャパン、東京) の底辺から15 mmの高さに15 mm間隔でサンプルを5 μlずつアプライした。その後、ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸 (80:20:1、vol) 混合溶媒100 mlで30分間展開した。展開後、室温でシリカゲルシートを24時間乾燥させ、ヨウ素で呈色を行った。マーカーには分解試験に使用した油脂に合わせ、サラダ油又は牛脂を使用した。
【0093】
2. SN40株のスクリーニング
スクリーニング取得菌株をそれぞれ3 %(v/v)植菌し、10,000 ppmサラダ油の分解能を評価した。SN40株はスクリーニングされた6菌株の中で最も高い油脂分解率を示した(図1)。
【0094】
選抜したSN40株の形状を形態観察した結果を図2に示す。形態観察はLB-グルコース寒天培地に30℃、48時間生育させた後、デジタルカメラによって撮影した。倍率は1シャーレの直径が9cmである。
【0095】
3. SN40株の油脂分解の系時変化
SN40株について、溝付きフラスコを用い、30℃、120 rpmにおいて油脂分解率の経時変化を解析した。その結果、48時間培養において80.2%と最も高い油脂分解率を示した(図3)。また、SN40株について120時間培養による油脂分解能の評価を行った結果、83.2±5.7%の油脂分解率を示し、48時間以降の油脂分解率の向上はほぼ見られなかった。
【0096】
48時間培養の分解率はSN40株が最も高く、このことからSN40株が最も早く油脂を分解することが明らかとなった。
【0097】
図4に上述の培養条件での残存油脂の組成を薄相クロマトグラフィー(TLC)で解析した結果を示す。図4において、Mはマーカーとして用いたサラダ油、1)は12時間、2)は24時間、3)は36時間、4)は48時間培養したものの結果を示す。
【0098】
その結果、経時的にトリグリセリドのスポットが小さくなっていく傾向がみられ、48時間後にはほとんど確認されなかった。遊離脂肪酸に関しても24時間以降のスポットが小さくなっていくことから、培養の経過に伴い油脂の分解が進んでいることが確認された。
【0099】
4.SN40株の生育温度域
SN40株について油脂分解における至適温度を解析した。30℃で最も高い油脂分解率を示し、30℃から温度が変化するにつれて油脂分解率が減少する傾向が見られた(図5)。
【0100】
また各培養温度における残存油脂の組成を解析するためにTLC解析を行った(図6)。図6において、Mはマーカーとして用いたサラダ油、1)は20℃、2)は25℃、3)は30℃、4)は35℃で培養した結果を示す。このことから、SN40株は30℃から上では分解能が落ち、35℃では分解能が大幅に低下することが示された。その結果、SN40株では他の培養温度と比べると35℃において油脂の主成分であるトリグリセリドのスポットが大きいことが確認された。
【0101】
以上より、SN40株の油脂分解における至適温度は30℃であることがわかった。
【0102】
5. SN40株の種々の油脂に対する分解能
実際の油脂廃水には様々な種類の油脂が混入していることが想定される。そのため、SN40株が組成の異なる油脂を分解可能であるか確かめるために、牛脂を用いた油脂分解能の評価を行った。
【0103】
溝付きフラスコに入れたグルコース含有合成下水培地を用い、サラダ油又は牛脂の初期濃度を10,000 ppmとして、30℃、120 rpm、48時間培養して、各油脂の分解率を評価した。
【0104】
その結果、SN40株は57.0 %の牛脂分解率を示し、サラダ油の分解率80.2 %と比べて違いが見られたが、牛脂であっても分解は進むと考えられた(図7)。
【0105】
6. SN40株の同定
株式会社テクノスルガに依頼し、SN40株の同定を行った。同定は28SrDNA-D1/D2解析および簡易形態観察により行った。
【0106】
SN40株の28SrDNA-D1/D2領域の塩基配列を図8及び配列表の配列番号1に示す。また当該配列について国際塩基配列データベースBLASTを利用して検索を行った結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
国際塩基配列データベースBLASTを用いた検索結果(表1)から、SN40株はFusarium属と非常に近縁であることが示された。
【0109】
また簡易形態観察結果(600倍)を図9に示す。栄養菌糸より単生した分生子形成細胞の先端から楕円形〜紡錘形で単細胞〜多細胞性のフィアロ型分生子の形成が認められた。
【0110】
以上の結果より、SN40株はFusarium属の一種であることが示された。
【0111】
7. 油脂分解菌の組み合わせによる油脂含有廃液処理の効率化
廃水中に含まれる油脂処理の更なる効率化を目指し、バクテリアBurkholderia sp. DW2-1株と、バクテリア(Burkholderia sp. DW15-2、Stenotrophomonas sp. THL7)、酵母(THL6)および糸状菌(Fusarium sp. SN40)を組み合わせ、油脂分解の効率化を試みた(図10)。尚、前記DW15-2株、THL6株及びTHL7株は、立命館大学理工学部化学生物工学科(滋賀県草津市)に保存されている菌株である。
【0112】
その結果、DW2-1株とSN40株の組み合わせで油脂分解率の向上が見られた。一方、他の油脂分解微生物の組み合わせでは油脂分解率が低下した。このことから、SN40株とDW2-1株の組み合わせが油脂分解の効率化に有効である事が示された。
【0113】
8. DW2-1株とSN40株の組み合わせによる油脂分解の最適化
DW2-1株とSN40株との最適な組み合わせ条件を決定するため、まず、DW2-1株の植菌量を検討した(図11)。上記(i)の培養条件において、3 %(v/v)植菌に代えて、菌体濃度を1×107〜1×109cfu/mlに変化させる以外は同様の条件として油脂分解能の評価を行った。
【0114】
その結果1×109 cfu/mlになるように植菌したときに最も分解率が良かった。
【0115】
次にDW2-1株とSN40株の組み合わせの条件を検討した。
【0116】
DW2-1の添加濃度は1×109 cfu/mlとし、SN40株の植菌量及び植菌時間を変化させて検討した(表2、3)。
【0117】
表2にSN40株とDW2-1株とを同時に植菌し、SN40株の添加量を変化させる以外は同様の条件として油脂分解率を調べた結果を示す。
【0118】
【表2】
【0119】
また、表3にSN40株の添加量を4g-wetとし、DW2-1株の植菌時間に対するSN40株の植菌時間を変化させる以外は同様の条件として油脂分解率を調べた結果を示す。
【0120】
【表3】
【0121】
その結果、DW2-1株1×109cfu/mlに対して、SN40株を、DW2-1株の植菌から12時間後に4 g-wetの量で添加するのが最適な条件であることがわかった。
【0122】
9. DW2-1株とSN40株の組み合わせによる油脂分解の最適化
DW2-1株1×109cfu/ml、及び、SN40株4 g-wetを同時に添加して培養した時の油脂分解率と生菌数の経時変化を解析した(図12)。
【0123】
その結果、SN40株、DW2-1株とも生菌数の低下は確認されず、共培養において油脂分解や生育に阻害は確認されなかった。また油脂分解率が向上した。このことから、SN40株とDW2-1株によって共培養が可能であることが示された。
【0124】
10. 開放バッチ培養における油脂分解
DW2-1株とSN40株の組み合わせが開放バッチ培養時に油脂分解を効率的に行うことが可能かを検討するため、1 Lスケールの開放共培養を行った。
【0125】
LB培地1 Lを3 Lビーカー(材質:ポリプロピレン)に加え、そこにDW2-1株を1%植菌した。3 LビーカーをTHERMO MINDER SM-05で30℃に保温した恒温槽に浸し、トルネード用撹拌羽根DT-50による撹拌を行った。また、エアーポンプSERIES X-202による曝気(37.6 L/h)を行いながら、24時間バッチ培養を行った。24時間後、サラダ油10 gを添加とSN40株を菌体湿重量40 gを植菌し、24時間培養を行った。24時間後、培養液を100 ml分取し、100 ml中の残存油脂量をクロロホルム・メタノール抽出法に従って測定した。また、培養液中の微生物数を平板培養法を用いて測定した。
【0126】
図13に試験工程の概要を示す。
【0127】
また、図14に油脂分解率の結果を示す。
【0128】
その結果、DW2-1株単独の時と比較してSN40株を共培養した時には油脂分解率が向上した。このことから、SN40株とDW2-1株との組み合わせが実用的な条件でも可能であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】スクリーニングにより得られた種々の糸状菌の油脂分解率を示す図面である。
【図2】SN40株の形状の形態観察結果を示す図面である。
【図3】SN40株の培養時間と油脂分解率の関係を示す図面である。
【図4】SN40株の残存油脂組成の経時変化を示す図面である。Mはマーカー、1)は12時間後、2)は24時間後、3)は36時間後、4)は48時間後の結果を示す。
【図5】SN40株の培養温度と油脂分解率の関係を示す図面である。
【図6】SN40株の培養温度の違いによる残存油脂組成の解析結果を示す図面である。Mはマーカー、1)は20℃培養、2)は25℃培養、3)は30℃培養、4)は35℃培養とした場合の解析結果を示す。
【図7】SN40株による牛脂及びサラダ油の分解率を示す図面である。
【図8】SN40株の28SrDNA-D1/D2領域の塩基配列を示す図面である。
【図9】SN40株の微視的観察像を示す図面である。分生子形成構造が示されている。
【図10】DW2-1株と他の油脂分解微生物との組み合わせによる油脂分解率を示す図面である。
【図11】DW2-1株の植菌量毎の油脂分解率を示す図面である。
【図12】DW2-1株とSN40株の共培養時における生菌数と油脂分解率の経時変化を示す図面である。
【図13】DW2-1株とSN40株の組合せにおける開放バッチ培養系の試験工程の概要を示す図面である。
【図14】DW2-1株とSN40株の組合せにおける開放バッチ培養における油脂分解率を示す図面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株(受領番号 FERM AP-21237)。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物及び油脂含有能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項4】
廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
請求項1に記載の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽
を備えたシステム。
【請求項5】
油脂分解槽が、請求項1の微生物及び油脂分解能を有する他の微生物と、油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽である請求項4に記載のシステム。
【請求項1】
油脂分解能を有する新規微生物フサリウム・スピーシーズ(Fusarium sp. )SN40株(受領番号 FERM AP-21237)。
【請求項2】
請求項1に記載の微生物を油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微生物及び油脂含有能を有する他の微生物を、油脂含有廃水に接触させることを特徴とする廃水処理方法。
【請求項4】
廃水処理システムであって、
油脂含有廃水を導入する廃水導入手段、及び、
請求項1に記載の微生物と油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽
を備えたシステム。
【請求項5】
油脂分解槽が、請求項1の微生物及び油脂分解能を有する他の微生物と、油脂含有廃水とを接触させる油脂分解槽である請求項4に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−220201(P2008−220201A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59592(P2007−59592)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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