説明

新規癌関連遺伝子

新規DNA及び該DNAを含む癌関連遺伝子、該DNAにコードされる組換え蛋白質、該蛋白質に結合する抗体、該抗体を含む抗癌剤、該蛋白質に結合する低分子化合物、スクリーニング系の提供。以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNA。(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するポリペプチド

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規DNA及び該DNAを含む癌関連遺伝子、該DNAにコードされる組換え蛋白質、該蛋白質に結合する抗体、該抗体を含む抗癌剤、該蛋白質に結合する低分子化合物、スクリーニング系、アンチセンスDNA、siRNAに関する。
背景の技術
ヒトゲノム計画における大規模シークエンシングによって、ヒトゲノムの塩基配列に関する情報が日々産出されている。ヒトゲノム計画の最終目的は単にゲノム全塩基配列を決定することではなく、その構造情報、即ち、DNAの塩基配列情報からヒトのさまざまな生命現象を読み解くことにあろう。ヒトゲノム配列中で蛋白質をコードしている領域はその極一部であり、現在は、ニューラルネットワークや隠れマルコフモデルと呼ばれる情報科学の手法を用いて、そのコード領域の予測が行われている。しかしながら、それらの予測精度はまだ充分なものではなく、ヒトゲノムの塩基配列に関する情報が蓄積している現在であっても、コード領域の解明は途上であるし、ましては各コード領域がコードする蛋白質の機能の解明はこれからの課題である。今後、例えば、ある特定の疾患、例えば癌に関連した遺伝子を解析し、それを癌の検出や治療に利用することが望まれる。
例えば、従来より糖蛋白質のN型糖鎖が癌に関連していることが報告されている。糖蛋白質のN型糖鎖は、種々の生命現象、受精、発生、免疫、細胞内輸送、老化、癌などに関与しており、糖鎖異常によってさまざまな病態が引き起こされる。特に、癌細胞では糖鎖の高分岐化が見られ、癌細胞の転移能などの生物活性との関与が示されている。高分岐化糖鎖構造の形成はある特定な糖転移酵素の活性化により決定され、Nアセチルグルコサミン転移酵素は糖鎖構造の決定に重要な酵素として知られている。Nアセチルグルコサミン転移酵素I、II(GnT−I,−II)は基本となるコア構造の決定に、GnT−III,−IV,−V,−VIの各酵素は糖鎖のどの部分にNアセチルグルコサミンを転移させるかに関わっており、高分岐化に大きく影響をもっている。また、シアル酸転移酵素やフコース転移酵素は糖鎖の末端構造の決定に重要な酵素である。
GnT−III,−IV,−V,−VIは共通の基質を認識するにも関わらずcDNAの構造にホモロジーはほとんど認められない。GnT−IIIはN型結合糖鎖のコアのマンノースにNアセチルグルコサミンを転移し二分岐GlcNAcを形成する。GnT−IV,−VIはNグリカンのβ1−4鎖の生合成に関与する酵素であり、GnT−VはNグリカンのβ1−6鎖の生合成に関与している酵素である。これらN−アセチルグルコサミン転移酵素が癌化と関連している例としてGnT−Vが挙げられる。
GnT−Vは癌の転移に関与することが報告されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。Granovskyらは、GnT−Vのノックアウトマウスを用いた実験で、癌の転移とともに癌の増殖にもGnT−Vが必須であることを示している。また、村田らはGnT−Vが大腸癌の転移と相関があることを報告している(非特許文献3参照)。
【非特許文献1】 Demetriou,Mら、J.Cell Biol.、130、(1995)、383
【非特許文献2】 Granovskyら、Nat.Med.、6、(2000)、306
【非特許文献3】 村田ら、Clin.Cancer Res.、6、(2000)、1772
【発明の開示】
本発明は、ヒト由来のcDNAライブラリーから全長cDNAを得て、癌に関連する新規な遺伝子すなわち、GnT−Vに関連した新規な遺伝子を提供することを目的とする。さらに、本発明は該新規な遺伝子断片を用いた癌の検出方法、該新規な遺伝子のコードする蛋白質、該蛋白質に対する抗体、該抗体を含む抗癌剤、ならびに前記蛋白質に結合する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
今回、本発明者は新規な遺伝子を見出すべく、ヒト成人全脳、ヒト扁桃、ヒト海馬及びヒト胎児全脳由来のcDNAライブラリーから、蛋白質をコードしている領域を含む新規なDNAを直接クローニングすることに成功し、それらの塩基配列を決定して本発明を完成させた。
本発明はGnT−Vと44%の相同性を示す蛋白質をコードする遺伝子であり、新規な糖転移酵素であると考えられる。癌細胞での高い発現が見られ、特に、肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌細胞株で高い遺伝子発現が見られることより、これらの癌に関係した遺伝子であると推測される。GnT−Vは大腸癌の転移に関与していることが報告され、大腸癌の細胞株でも発現が見られるが、本発明の遺伝子では大腸癌細胞株では発現が見られない。しかしながら、大腸癌のリンパ節に転移から得られた細胞株であるSW620細胞では発現が見られることにより、癌の転移にも関与していることが示唆される。
したがって、本発明は特に肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌の癌の診断、治療、予防、あるいは癌の転移に関わる診断に有用である。
即ち、本発明は第一の態様として、以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNAに係る:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、一部のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するポリペプチド。
本発明の第二の態様として、以下の(a)又は(b)のDNAに係る:
(a)配列番号1で示される塩基配列において、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNA、
(b)(a)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、(a)のアミノ酸配列から成るポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有する蛋白質をコードするDNA。
以上の本発明の第一及び第二の態様であるDNAをまとめて、以下、「本発明DNA」ともいう。又、本発明はこれらDNAを含む遺伝子にも係る。
更に、本発明の第三の態様として、以下の(a)又は(b)のポリペプチドを含む蛋白質:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、一部のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するポリペプチド、及び、本発明遺伝子を発現させることにより得られる組換え蛋白質に係る。
更に、本発明の第四の態様として、上記蛋白質に結合する各種抗体に係る。
更に、本発明の第五の態様として、抗体を含む各種抗癌剤に係る。
更に、本発明の第六の態様として、上記蛋白質又はその部分ペプチドに結合する物質のスクリーニング方法であって、
(a)該蛋白質又はその部分ペプチドに被験試料を接触させる工程、
(b)該蛋白質又はその部分ペプチドと被験試料との結合活性を検出する工程、及び
(c)該蛋白質又はその部分ペプチドに結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む前記方法、に係る。
更に、本発明の第七の態様として、本発明DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、少なくとも15塩基から成るポリヌクレオチドに係る。
更に、本発明の第八の態様として、上記ポリヌクレオチドをプローブとして使用する癌の検出方法であって、
(a)該ポリヌクレオチドに被験試料を接触させる工程、及び
(b)該ポリヌクレオチドと被験試料とのハイブリダイズ活性を検出する工程、を含む前記方法、に係る。
1.本発明DNAの取得
本発明DNAは、市販されている(クロンテック社)ヒト成人全脳、ヒト扁桃、ヒト海馬及びヒト胎児全脳のmRNAを出発材料として、本発明者が調製したcDNAライブラリーから、cDNA断片として単離した後に、塩基配列を決定し同定したものである。
即ち、具体的には、小原他の方法(DNA Research Vol.4,53−59(1997))に従って調製したヒト成人全脳、ヒト扁桃、ヒト海馬及びヒト胎児全脳由来のcDNAライブラリーからクローンをランダムに単離する。
次に、ハイブリダイゼーションにより、重複クローン(繰り返し出てくるクローン)を除き、その後インビトロでの転写翻訳を行い50kDa以上の産物が認められるクローンについてその両末端の塩基配列を決定する。
更に、こうして得られた末端塩基配列をクエリーとして既知遺伝子のデータベースにて相同性検索を行い、その結果、新規であることが判明したクローンについて全塩基配列を決定する。
また、上記のスクリーニング法に加えて、cDNAの5’および3’の末端配列をヒトのゲノム配列に対応させ、それらが挟む領域に未知の長鎖遺伝子が確認された場合には、そのcDNAの全長解析をおこなう。
このようにして既知の遺伝子に依存した従来のクローニング方法では得られなかった未知の遺伝子も、システマチックにクローニングを行なうことができる。
又、短い断片や得られた配列に人工的な間違いが起こらないように十分な注意を払いながら、RACE等のPCR法を使用することによっても、本発明DNAを含むヒト由来遺伝子の全領域を調製することも可能である。
このようにして本発明DNAを有するクローン(FJ04470)を得ることが出来る。該クローンに含まれる遺伝子にコードされる本発明蛋白質の機能等については、本明細書中に示されている。
本発明DNAのクローニングの別の手段としては、本発明ポリペプチドの部分等の適当な塩基配列を有する合成DNAプライマーを作成し、適当なライブラリーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明ポリペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。
ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、上記のCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M.Ausubel et al.,1987)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
本発明DNAとしては、前述した本発明ポリペプチドをコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ヒトの脳、又は、それ以外の組織、例えば、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、精巣、等の細胞・組織に由来するcDNAライブラリー等から同定・単離されたcDNA、又は、合成DNA等のいずれでもよい。
ライブラリー作成に使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNA画分またはmRNA画分を調製したものを用いて、直接Reverse Transcription coupled Polymerase Chain Reaction(以下、「RT−PCR法」と略称する)によって増幅することもできる。
2.本発明のポリペプチド
配列番号2で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号2で示される全アミノ酸配列との相同性の程度が、全体の平均で約70%以上、好ましくは約80%以上、更に好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上であるアミノ酸配列を意味する。本明細書に記載される相同性の数値は、特に明示した場合を除き、BLAST[J.Mol.Biol.,215,403−410(1990)]、FASTA[Methods.Enzymol.,183,63−98(1990)]等の当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、好ましくはBLASTにおいてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて算出される数値あるいは、FASTAにおいてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて算出される数値である。
従って、本発明の配列番号2で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチドとしては、例えば、前記の配列番号2で示されるアミノ酸配列に対して上記の相同性を有し、該アミノ酸配列から成るポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性(機能)を有するポリペプチドを挙げることが出来る。ここで、実質的に同質とは、それらの活性(機能)が性質的に同質であることを示す。活性の高低は、限定されないが好ましくは配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の活性の50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。本発明蛋白質が持つ生物学的活性とは糖をポリペプチドに転移する活性が挙げられる。本発明タンパク質が持つ生物学的活性は、公知の文献に記載の糖転移酵素の活性測定を用いればよい(例えば、細胞工学別冊 グライコバイオロジー実験プロトコール、秀潤社、谷口直之ら監修、1996年)。
又、本発明ポリペプチドには、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列中の1又は複数の(好ましくは、1〜20個以内、より好ましくは1〜10個以内、さらに好ましくは1〜5個以内)のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列、或いはそれらを組み合わせたアミノ酸配列から成り、配列番号2で示されるアミノ酸配列から成るポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性(機能)を有するポリペプチドも含まれる。
3.本発明DNA
上記の配列番号2で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド、又はその一部のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列から成るポリペプチドをコードするDNAは、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作成することが可能である。
尚、その際に、実質的に同質の生物学的活性を有するためには、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸のうち、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士の置換が可能性として考えられる。又、実質的に同質の生物学的活性の維持のためには、本発明の各ポリペプチドに含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は保持されることが望ましい。
更に、本発明DNAは、配列番号1に示される塩基配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNA、及び、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、配列番号2で示されるアミノ酸配列から成るポリペプチドの機能と同質の生物学的活性(機能)を有するポリペプチド(蛋白質)をコードするDNAを包含する。
かかる条件下で、配列番号1に示される塩基配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNAとハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該DNAの全塩基配列との相同性の程度が、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上である塩基配列を含有するDNA等を挙げることが出来る。
ハイブリダイゼーションは、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M.Ausubel et al.,1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAを単離を期待しうる。ただし、上記のSSC,SDSおよびに温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であればハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記もしくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーションの反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
クローン化された本発明DNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
4.本発明ポリヌクレオチド
本発明DNA(遺伝子)は、以下の実施例で示されるように、癌細胞で高発現していることから、本発明遺伝子を検出することにより、かかる癌の検出に利用することが可能である。
従って、配列番号1に示された塩基配列を含む本発明DNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、このような癌の検査にプローブとして使用することが出来る。このようなポリヌクレオチドの長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上、特に好ましくは1000塩基以上である。また、本発明の遺伝子を増幅するためにプライマーとして利用することが可能である。
例えば、これらのヌクレオチドをプローブやプライマーとして用いたノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCRにより、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の発現異常を検査することができる。また、これらのヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより本発明の蛋白質をコードする遺伝子、DNA、mRNAを増幅し、RFLP解析、SSCP、シークエンシング等の方法により、遺伝子の発現異常を検査・診断することができる。
プライマーとして用いる場合には、通常15〜100塩基、好ましくは15〜35塩基の鎖長を有する。また、プローブとして用いる場合には、本発明のDNAの少なくとも一部もしくは全部の配列を含む少なくとも15塩基の鎖長のヌクレオチドが用いられる。このようなヌクレオチドは好ましくは本発明の蛋白質をコードするDNAに特異的にハイブリダイズするものである。「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーションの条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で本発明の蛋白質をコードするDNA(配列番号1)とハイブリダイズし、他の蛋白質をコードするDNAとはハイブリダイズしないことを意味する。
ここで、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、「1XSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5XSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2XSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離、検出を期待しうる。ただし、上記のSSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であればハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記もしくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーションの反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
具体的には、本発明のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、少なくとも15塩基から成るポリヌクレオチドと本発明のDNAを含むと予想される被験試料とを接触せしめ、前記ポリヌクレオチドと被験試料とのハイブリダイズ活性を検出することにより、被験試料が由来する被検体が癌に罹患しているかどうかを検出することができる。ハイブリダイズ活性は、前記ポリヌクレオチドとハイブリダイズし得るDNAまたはその断片が被験試料中に存在する場合に検出される。
この際、ポリヌクレオチドとして、例えば、本発明の蛋白質のアミノ酸配列の相同性が高い蛋白質との間で、部分的に相同性が低い部分をコードするポリヌクレオチドであって少なくとも15塩基から成るポリヌクレオチドを用いることにより、本発明の遺伝子を特異的に検出することができる。例えば、GnT−Vとアミノ酸配列を比較し、相同性の低い部分をコードするポリヌクレオチドを用いればよい。具体的には、例えば配列番号3または4に示されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたは少なくとも15塩基から成るその断片が挙げられる。
本発明DNA及び該DNAを含む遺伝子をプローブとして使用することにより、本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(Genomics,第5巻,874〜879頁(1989年)、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
5.本発明蛋白質の取得
本発明蛋白質は、当業者に公知の任意の方法によって、本発明DNA又は本発明DNAを含む遺伝子を含有する発現ベクターを作成し、該発現ベクターにより形質転換させた形質転換体を培養し、本発明ポリペプチド若しくは該ポリペプチドを含む組換え蛋白質を生成、蓄積せしめ、これを採取することによって、容易に調製することが出来る。
上記発現ベクターは、当該技術分野で公知の方法に従って作成することが出来る。例えば、(1)本発明DNA又は本発明DNAを含む遺伝子を含有するDNA断片を切り出し、(2)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC18,pUC118)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス等を利用することが出来る。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応した適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主が枯草菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
発現ベクターには、以上の他に、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン等を付加することができる。また、必要に応じて、本発明のDNAにコードされた蛋白質を他の蛋白質(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ及びプロテインA)との融合蛋白質として発現させることも可能である。このような融合蛋白質は、適当なプロテアーゼを使用して切断し、それぞれの蛋白質に分離することが出来る。
宿主細胞としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1(Proc.Natl.Acad.Sci,USA,60巻,160(1968)),JM103(Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)),JA221(Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)),及びHB101(Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969))等が用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サチルス(Bacillus subtilis)MI114(Gene,24巻,255(1983)),207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕等が用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccaromyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、スキゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccaromyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損CHO細胞,マウスL細胞,マウスAtT−20細胞,マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞,ヒトFL細胞などが用いられる。
これら宿主細胞の形質転換は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことが出来る。例えば、以下に記載の文献を参照することが出来る。
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69巻,2110(1972);Gene,17巻,107(1982);Molecular & General Genetics,168巻,111(1979);Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA),75巻,1929(1978);細胞工学別冊8 新 細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行);及びVirology,52巻,456(1973)。
このようにして得られた、本発明DNA又は本発明DNAを含む遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体は、当該技術分野で公知の方法に従って培養することが出来る。例えば、以下に記載の文献を参照することが出来る。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常、約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培養は通常、pH約5〜8に調整された培地を用いて約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、pHは約6〜8に調整された培地を用いて、通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加えることもできる。
上記培養物から本発明ポリペプチド又は蛋白質を分離精製するには、例えば、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により蛋白質の粗抽出液を得る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中に蛋白質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる蛋白質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。
こうして得られた本発明ポリペプチド(蛋白質)は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。更に、組換え体が産生する蛋白質を、精製前または精製後に、トリプシン及びキモトリプシンのような適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。
本発明ポリペプチド(蛋白質)又はその塩の存在は、様々な結合アッセイ及び特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイ等により測定することができる。
6.本発明抗体
本発明の抗体は、本発明蛋白質と結合する限り特に制限はなく、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるもの等を含む。尚、本発明抗体は、本発明蛋白質と特異的に結合することが好ましい。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、本発明蛋白質を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
本発明蛋白質をコードする遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的の本発明蛋白質を公知の方法で精製する。
次に、この本発明蛋白質を感作抗原として用いる。あるいは、本発明蛋白質の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドは本発明蛋白質のアミノ酸配列より当業者に公知の一般的な方法による化学合成により得ることができる。
ここで、本発明の蛋白質の部分ポリペプチドとしては、例えば、本発明蛋白質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも10個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有し、例えば、本発明のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するペプチドなどが用いられる。本発明の部分ポリペプチドとしては、例えば、後述するような各機能ドメインを含むものが特に好ましい。又、本発明の部分ペプチドはC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO−)であるが、前記した本発明の蛋白質のごとく、C末端がアミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよい。さらに、本発明の部分ペプチドには、前記した本発明の蛋白質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明抗体は、本発明蛋白質の検出、精製等に用いることが出来、又、以下の実施例で示されるように本発明遺伝子は癌細胞で高発現しているので、本発明抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞傷害性物質を結合させることにより、細胞増殖を抑制し得ることから、本発明抗体の認識する本発明蛋白質分子上のエピトープは特定のものに限定されず、本発明蛋白質分子上に存在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよい。従って、本発明抗体を作製するための抗原は、本発明蛋白質分子上に存在するエピトープを含む断片ならば、如何なる断片も用いることが可能である。
また、本発明蛋白質に特異的な抗体を得るために、例えば、本発明の蛋白質のアミノ酸配列の相同性が高い蛋白質との間で、部分的に相同性が低い部分であって、少なくとも6アミノ酸、好ましくは8アミノ酸、さらに好ましくは10アミノ酸からなるペプチドを抗体を作製するための抗原として用いればよい。例えば、GnT−Vとアミノ酸配列を比較し、相同性の低い部分を用いればよい。例えば、配列番号3または4に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたは少なくとも6アミノ酸から成るその断片を用いることができる。
本発明の抗体は、上記抗体の作製するための抗原を認識し、結合する抗体であり、該抗体は上記抗原を動物に投与して得ることができる。また、本発明の蛋白質を動物に投与して得られたポリクローナル抗体から、上記抗原を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより得ることもできるし、多数のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから上記抗原に結合する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることにより得ることができる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate−Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immnol.(1979)123,1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81,1−7)、NS−1(Kohler.G.and Milstein,C.Eur.J.Immunol.(1976)6,511−519)、MPC−11(Margulies.D.H.et al.,Cell(1976)8,405−415)、SP2/0(Shulman,M.et al.,Nature(1978)276,269−270)、F0(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods(1980)35,1−21)、S194(Trowbridge,I.S.J.Exp.Med.(1978)148,313−323)、R210(Galfre,G.et al.,Nature(1979)277,131−133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler.G.and Milstein,C.、Methods Enzymol.(1981)73,3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000−6000程度)を通常30−60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで本発明蛋白質に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、本発明蛋白質への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となる本発明蛋白質を投与して本発明抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞から本発明蛋白質に対するヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO 92/03918号公報、WO 94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990)192,767−775,1990参照)。
具体的には、本発明抗体を産生するハイブリドーマから、本発明抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin,J.M.et al.,Biochemistry(1979)18,5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,P.et al.,Anal.Biochem.(1987)162,156−159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5’−Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman,M.A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1988)85,8998−9002、Belyavsky,A.et al.,Nucleic Acids Res.(1989)17,2919−2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする本発明抗体のV領域をコードするDNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される本発明抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギのカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert,K.M.et al.,Bio/Technology(1994)12,699−702)。
本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576号公報参照)。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のフレームワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res.(1993)53,851−856)。
キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、C1、C2、C3、C4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られず本発明蛋白質に結合する限り、抗体の断片又はその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab’)2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)、Diabodyが挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co,M.S.et al,J.Immunol.(1994)152,2968−2976、Better,M. & Horwitz,A.H.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Plueckthun,A. & Skerra,A.Methods in Enzymology(1989)178,476−496,Academic Press,Inc.、Lamoyi,E.,Methods in Enzymology(1989)121,652−663、Rousseaux,J.et al.,Methods in Enzymology(1989)121,663−669、Bird,R.E.et al.,TIBTECH(1991)9,132−137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston,J.S.et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1988)85,5879−5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12−19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
Diabodyは、可変領域と可変領域をリンカー等で結合したフラグメント(例えば、scFv等)を2つ結合させて二量体化させたものであり、通常、2つのVLと2つのVHを含む(P.Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,6444−6448(1993)、EP404097号、WO93/11161号、Johnson et al.,Method in Enzymology,203,88−98,(1991)、Holliger et al.,Protein Engineering,9,299−305,(1996)、Perisic et al.,Structure,2,1217−1226,(1994)、John et al.,Protein Engineering,12(7),597−604,(1999)、Holliger et al,.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,90,6444−6448,(1993)、Atwell et al.,Mol.Immunol.33,1301−1312,(1996)、等)。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した本発明抗体を使用することもできる。抗体に放射性同位元素、化学療法剤、細菌由来トキシン等の細胞障害性物質などを結合することも可能である。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体は本発明蛋白質分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体や本発明蛋白質と他の蛋白質を認識する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位が本発明蛋白質を認識し、他方の抗原結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン等の細胞傷害性物質を認識してもよい。この場合、本発明蛋白質を発現している細胞に直接細胞傷害性物質を作用させ腫瘍細胞に特異的に傷害を与え、腫瘍細胞の増殖を抑えることが可能である。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277,108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフエラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341,544−546;FASEB J.(1992)6,2422−2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240,1041−1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei,S.P.et al J.Bacteriol.(1987)169,4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。
本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)、リガンドレセプター結合阻害活性(Harada,A.et al.,International Immunology(1993)5,681−690)の測定には公知の手段を使用することができる。
本発明抗体の抗原結合活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、酵素免疫測定法を用いる場合、本発明蛋白質をコーティングしたプレートに、本発明抗体を含む試料、例えば、本発明抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
本発明抗体は細胞障害活性を有していてもよい。本発明における細胞障害活性とは、例えば補体依存性細胞障害(complement−dependent cytotoxicity:CDC)活性、抗体依存性細胞介在性細胞障害(antibody−dependent cell−mediated cytotoxicity:ADCC)活性などを挙げることができる。本発明において、CDC活性とは補体系による細胞障害活性を意味し、ADCC活性とは標的細胞の細胞表面抗原に特異的抗体が付着した際、そのFc部分にFcγ受容体保有細胞(免疫細胞等)がFcγ受容体を介して結合し、標的細胞に障害を与える活性を意味する。
本発明抗体がADCC活性を有するか否か、又はCDC活性を有するか否かは公知の方法により測定することができる(例えば、Current protocols in Immunology,Chapter7.Immunologic studies in humans,Editor,John E,Coligan et al.,John Wiley & Sons,Inc.,(1993)等)。
具体的には、例えば、細胞障害活性の測定は以下の方法により行うことが可能である。
・エフェクター細胞の調製
CBA/Nマウスなどから脾臓を摘出し、RPMI1640培地(GIBCO社製)中で脾臓細胞を分離する。10%ウシ胎児血清(FBS、HyClone社製)を含む同培地で洗浄後、細胞濃度を5×10/mlに調製し、エフェクター細胞を調製する。
・補体溶液の調製
Baby Rabbit Complement(CEDARLANE社製)を10% FBS含有培地(GIBCO社製)にて10倍希釈し、補体溶液を調製する。
・標的細胞の調製
本発明蛋白質発現細胞(前立腺癌細胞、卵巣癌細胞、大腸癌細胞など)を0.2mCiの51Cr−sodium chromate(Amersham Pharmacia Biotech社製)とともに、10% FBS含有DMEM培地中で37℃にて1時間培養することにより放射性標識する。放射性標識後、細胞を10% FBS含有RPMI1640培地にて3回洗浄し、細胞濃度を2×10/mlに調製して、標的細胞を調製する。
・ADCC活性の測定
96ウェルU底プレート(Beckton Dickinson社製)に、標的細胞と、本発明抗体を50μlずつ加え、氷上にて15分間反応させる。その後、エフェクター細胞100μlを加え、炭酸ガスインキュベーター内で4時間培養する。抗体の終濃度は0または10μg/mlとする。培養後、100μlの上清を回収し、ガンマカウンター(COBRAIIAUTO−GMMA、MODEL D5005、Packard Instrument Company社製)で放射活性を測定する。細胞障害活性(%)は(A−C)/(B−C)×100により求めることができる。Aは各試料における放射活性(cpm)、Bは1%NP−40(半井社製)を加えた試料における放射活性(cpm)、Cは標的細胞のみを含む試料の放射活性(cpm)を示す。
・CDC活性の測定
96ウェル平底プレート(Becton Dickinson社製)に、標的細胞と、本発明抗体を50μlずつ加え、氷上にて15分間反応させる。その後、補体溶液100μlを加え、炭酸ガスインキュベーター内で4時間培養する。抗体の終濃度は0または3μg/mlとする。培養後、100μlの上清を回収し、ガンマカウンターで放射活性を測定する。細胞障害活性はADCC活性の測定と同様にして求めることができる。
7.本発明抗癌剤
本発明の抗癌剤(癌治療剤)の有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.01〜100000mg/bodyの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。また、本発明の治療剤の投与時期としては、疾患の臨床症状が生ずる前後を問わず投与することができる。本発明の治療剤は、常法にしたがって製剤化することができ(Remington’s Pharmaceutical Science,latest edition,Mark Publishing Company,Easton,米国)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および医薬添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれるが、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、注射用製剤として使用する場合には、溶剤、例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に溶解し、これに吸着防止剤、例えばTween80、Tween20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解再構成する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥のための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。本発明の治療剤は通常非経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与されるが、経口投与も可能である。
8.本発明蛋白質又はその部分ペプチドに結合する物質のスクリーニング方法
本発明の蛋白質は、これに結合する物質のスクリーニングに有用である。すなわち、本発明の蛋白質と、これに結合する化合物を含むと予想される被験試料とを接触せしめ、本発明の蛋白質と被験試料との結合活性を検出し、本発明の蛋白質に結合する活性を有する化合物を選択する、ことを含む本発明の蛋白質に結合する化合物をスクリーニングする方法において使用される。
スクリーニングに用いられる本発明の蛋白質は組換え蛋白質であっても、天然由来の蛋白質であってもよい。また上記の部分ペプチドであってもよい。被験試料としては特に制限はなく、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、精製若しくは粗精製蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物などが挙げられる。被験試料を接触させる本発明の蛋白質は、例えば、精製した蛋白質として、可溶型蛋白質として、担体に結合させた形態として、他の蛋白質との融合蛋白質として、細胞膜上に発現させた形態として、また、膜画分として被験試料に接触させることができる。
本発明の蛋白質を用いて、例えば該蛋白質に結合する蛋白質(リガンド等)をスクリーニングする方法としては当業者に公知の多くの方法を用いることが可能である。このようなスクリーニング方法としては、例えば、免疫沈降法(Harlow,E.and Lane,D.:Antibodies,pp.511−552,Cold Spring Harbor Laboratory publications,New York(1988))、ウエストウエスタンブロッティング法(Skolnik,E.Y.et al.,Cell(1991)65,83−90)、細胞を用いた2−ハイブリッドシステム(Fields,S.,and Sternglanz,R.,Trend.Genet.(1994)10,286−292、Dalton S,and Treisman R.,(1992)Characterization of SAP−1,a protein recruited by serum response factor to the c−fos serum response element.Cell,68,597−612、「MATCHMAKER Two−Hybrid System」「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」「MATCHMAKER One−Hybrid System」(いずれもClontech社製)、「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(Stratagene社製))、アフィニティクロマトグラフィーを利用した方法、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法、などが挙げられる。
また、蛋白質に限らず、本発明の蛋白質に結合する化合物を単離する方法としては、例えば、固定した本発明の蛋白質に、合成化合物、天然物バンク、もしくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーなどを作用させ、本発明の蛋白質に結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によるハイスループットを用いたスクリーニング方法(Wrighton NC;Farrell FX;Chang R;Kashyap AK;Barbone FP;Mulcahy LS;Johnson DL;Barrett RW;Jolliffe LK;Dower WJ.,Small peptides as potent mimetics of the protein hormone erythropoietin,Science(UNITED STATES)Jul 26 1996,273 p458−464、Verdine GL.,The combinatorial chemistry of nature.Nature(ENGLAND)Nov 7 1996,384 p11−13、Hogan JC Jr.,Directed combinatorial chemistry.Nature(ENGLAND)Nov 7 1996,384 p17−17)などが当業者に公知である。
本発明のスクリーニング方法により単離され得る化合物は、本発明の蛋白質とリガンドとの結合を阻害するための物質となり得る為、抗癌剤への応用が考えられる。すなわち、本発明のスクリーニング方法により単離された化合物と薬理学上許容される担体とを混ぜ合わせて抗癌剤を製造することも可能である。
さらには、本発明の蛋白質は糖鎖転移酵素であることが予測されるので、特に糖鎖を認識するレクチンを利用した基質となる蛋白質のスクリーニングが考えられる。「基質となる蛋白質」とは本発明遺伝子がコードする蛋白質の糖転移酵素活性により、糖鎖を付加される蛋白質のことを意味する。
例えば、βマンノースの6位側が分岐したN型糖鎖を認識するPHA−L4(インゲンマメレクチン)などのレクチンを用いて、本発明の蛋白質が高発現している細胞と低発現の細胞を比較して発現量の差がある蛋白質を解析することから、または本発明蛋白質による糖転移の有無による分子量変化を解析することにより基質となる蛋白質を同定することができる。このようなスクリーニングを行うための方法としては、例えば、乳癌細胞株MCF7(ATCC#HTB 22)、前立腺癌細胞株DU−145、(ATCC#HTB−81)、膵癌細胞株PANC−1(ATCC#CRL 1469)などの本発明遺伝子を高発現している培養細胞株と乳癌細胞株MDA−MB−231(ATCC#HTB 26)、前立腺癌細胞株LNCap.FGC(ATCC#CRL−1740)、膵癌細胞株BxPC−3(ATCC#CRL 1687)などの本発明遺伝子の発現が低い培養細胞株とで発現している糖蛋白質を種々のレクチンを用いたウエスタンブロティングなどを用いて解析することが挙げられる。また、本発明の遺伝子を遺伝子導入した細胞ともとの細胞を比較したり、本発明遺伝子を発現している細胞にアンチセンスDNAやsiRNAを用いて本発明蛋白質が発現するのを阻害することにより、基質となる蛋白質をスクリーニングする方法も挙げられる。
また、本発明蛋白質の糖転移酵素の活性により付加される糖鎖を同定し、癌の診断や治療に利用することもできる。例えば、本発明遺伝子が発現している前述の細胞から蛋白質を抽出してN型結合糖鎖を特異的に切断する酵素、例えばGlyco peptidase Fなどを用いて糖鎖を切り出すか、あるいは、化学反応、例えばヒドラジン分解、Nアセチル化処理後に糖鎖をHPLCなどにより分析することで癌特異的な糖鎖構造をスクリーニングすることもできる。
これらのスクリーニングにより得られた癌特異的な基質となる蛋白質や糖鎖構造はそれを改変することにより抗癌剤となりうる。
また、これら基質となる蛋白質や糖鎖構造に対する抗体は癌に特異的な反応を示すことが期待され、抗体を含む抗癌剤として有用である。
9.その他
本発明蛋白質又はその部分ポリペプチドをコードするDNAに実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(DNA)としては、当該DNAの塩基配列に実質的に相補的な塩基配列を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明DNAに相補的な塩基配列の全塩基配列または部分塩基配列と好ましくは約90以上、より好ましくは約95%以上、最も好ましくは100%の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。又、これらアンチセンスDNAと同様の作用を有する核酸配列(RNAまたはDNAの修飾体)も本発明でいうアンチセンスDNAに含まれる。これらのアンチセンスDNAは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
siRNA(small interfering RNA)はElbashirらにより報告された細胞内の遺伝子の発現を抑制する遺伝子に相補的な21塩基からなる二本鎖のRNAである(Elbashir SM,Harborth J,Lendeckel W,Yalcin A,Weber K,Tuschl T(2001).Nature 411:494−498.)。本発明蛋白質又はその部分ポリペプチドをコードするmRNAに相補的な塩基配列を有するsiRNAとしては、当該mRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有し、該mRNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのsiRNAであってもよい。siRNAは3’端にオーバーハングしたUUまたはTTの2塩基を持ち、本発明の遺伝子に相補的な19塩基からなるセンスRNAとアンチセンスRNAをハイブリダイズした二本鎖のRNAであり、例えばAmbion社のSilencerTM siRNA Construction Kit(#1620)、SilencerTM siRNA Labeling Kit−Cy3(#1632)、SilencerTM siRNA Labeling Kit−FAM(#1634)、SilencerTM Transfection Kit(#1630)などのキットのマニュアルに従って作製することができる。あるいは、化学合成によって作製することも挙げられる。siRNAの鎖長は21塩基以上が特に好ましいが、25塩基以上でもよく、該mRNAの発現を抑制し得る作用を有するものであればいずれの長さのものでもよい。また、siRNAをCy3、FAMなどでラベルしたものでも同じ程度の抑制作用があることが報告されており、これらで修飾されたものでもよい。
また、siRNAを安定に発現するために発現ベクターにより発現させることも挙げられる(Brummelkamp,TRら(2002)..Science 296:550−553、Paddison,PJら(2002)Genes & Dev.16:948−958、Paul,CPら.(2002).Nature Biotechnol.20:505−508、Sui,Gら,(2002).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(6):5515−5520、Yu,J−Yら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(9):6047−6052、Miyagishi,M,and Taira,K(2002).Nature Biotechnol.20:497−500、Lee,NSら(2002).Nature Biotechnol.20:500−505)。例えば、RNAポリメラーゼIIIが認識するプロモーターとしてpolymerase III H1 RNAやU6のプロモーターを利用して、転写終結シグナル配列との間に発明遺伝子の20塩基以上の長さの配列をインバーテッドリピートが形成されるように挿入して発現することが挙がられる。挿入する配列は当該mRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有し、該mRNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれの配列であってもよい。
本発明遺伝子に発現異常がある癌患者に対しては、これらの方法で遺伝子発現を抑制することで該患者の本発明の蛋白質の活性を阻害することができる。アンチセンスDNA、siRNAを直接該患者体内に導入する方法のほか、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターをベヒクルとして使用する遺伝子治療による導入方法も挙げられる。又は、摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することも可能である。
又、本発明のDNA若しくは遺伝子又はそれらの一部の塩基配列に基づき作成した合成DNAプライマーを使用し、ヒトの血液又は組織から抽出した染色体DNAを用いてPCRを行い、その産物の塩基配列を決定することにより、本発明のDNA又は遺伝子中にある個体によって異なる一塩基の変異、即ち、cSNPsを見出すことが出来る。これにより、個体の体質等が予測され、各自に適した医薬の開発等が可能となる。
又、クロスハイブリダイゼーションにより、マウス等のモデル生物における本発明のDNA又は遺伝子に対するオルソログ(ホモログ、カウンターパート)遺伝子を単離し、例えば、これら遺伝子をノックアウトすることによってヒトの疾患モデル動物を作成し、ヒトの病因となる遺伝子を探索・同定することも可能である。
尚、本明細書および表において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2002−338549号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、in vitroの転写により発現させたFJ04470の電気泳動を示す図である。
図2は、GnT−VとFJ04470のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。
図3は、FJ04470のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、実施例における各種遺伝子操作は、上記のCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M.Ausubel et al.,1987)に記載されている方法に従った。
〔実施例1〕 本発明のDNAの取得
(1) ヒト成人全脳、ヒト扁桃、ヒト海馬及びヒト胎児全脳由来cDNAライブラリーの構築
NotI部位を有するオリゴヌクレオチド(GACTAGTTCTAGATCGCGAGCGGCCGCCC(T)15)(インビトロジェン社)をプライマーとして、ヒト成人全脳、ヒト扁桃、ヒト海馬及びヒト胎児全脳由来mRNA(クローンテック社)を鋳型にSuperScriptII逆転写酵素キット(インビトロジェン社)で2本鎖cDNAを合成した。SalI部位を有するアダプター(インビトロジェン社)をcDNAとライゲーションした。その後、NotI消化し、1%濃度の低融解アガロース電気泳動により、3kb以上のDNA断片を精製した。
精製cDNA断片を、SalI−NotI制限酵素処理したpBluescript IISK+ プラスミドとライゲーションした。大腸菌ElectroMax DH10B株(インビトロジェン社)にエレクトロポレーション法によりこの組換えプラスミドを導入した。
(2)スクリーニング(その1)
次いで、こうして構築したcDNAライブラリーからランダムにクローンをピックアップし、メンブランにスポッティングした。次に、これまでに本発明者等によって既に全長の解析が行われている約1,300個のクローンの塩基配列に基づき作成したオリゴDNA(各21塩基)の混合物の各3’末端をターミナルトランスフェラーゼでDIGラベルし、これらをプルーブとして使用してドットハイブリダイゼーション(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M.Ausubel et al.,1987))により、重複クローン(繰り返し出てくるクローン)を除いた。
次に、インビトロでの転写翻訳(プロメガ社TNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System cat.no.L1107)を行い、50kDa以上の産物が認められるクローンを選択した。
次に、選択したクローンの末端塩基配列を決定し、得られた配列をクエリーとして相同検索プログラムBLASTN 2.2.1(Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller,and David J.Lipman(1997),”Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389−3402)を用いて、nr(All GenBank+EMBL+DDBJ+PDB sequences(but no EST,STS,GSS,or phase 0,1 or 2 HTGS sequences))データベースに対して相同検索を行った。配列決定には、PEアプライドバイオシステム社製のDNAシークエンサー(ABIPRISM377)と同社製反応キットを使用した。大部分の配列はショットガンクローンをダイターミネーター法を用いて決定した。一部の塩基配列については、決定した塩基配列を元にしてオリゴヌクレオチドを合成し、プライマーウォーキング法で決定した。
このようにして新規DNA又は遺伝子のスクリーニングを行なった。その結果、ヒト胎児脳由来のpolyA+RNAから作成されたcDNAよりクローンFJ04470を見出した。
(3)本発明遺伝子にコードされる蛋白質の発現
インビトロでの転写翻訳系(プロメガ社,TNT T7 Quick Coupled Transcioption /Translation System cat.no.L1107)を用いて、cDNAクローンFJ04470からの遺伝子産物を発現させた。
35S標識メチオニンを取り込ませた産物を12.5%のSDS−PAGEで泳動した。ゲルを乾燥させ、BAS2000(Fujifilm)のシステムでオートラジオグラフィーをおこない、クローンFJ04470の遺伝子産物を検出した。BIO RADのKaleidoscope Prestained Standards(Cat.161−0324)のサイズマーカーで測定したfj04470 productのサイズは90kDaであった。
FJ04470がコードするタンパク質は、最初のメチオニンから数えると793アミノ酸残基からなり、分子量は、約89.4kDaと予想され、実験結果によく一致するものであった。
〔実施例2〕 本発明DNAの相同性
(4)本発明DNAの相同性検索
次に、BLASTN 2.1.3,BLASTP 2.1.3(Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller,and David J.Lipman(1997),”Gapped BLAST and PSI−BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389−3402)を用いてNCBI nt(non−redundant nucleotide database),nr(non−redundant protein database)、特許配列データーベースgeneseqnt,geneseqaaに対してホモロジー検索を行った。
その結果、FJ04470遺伝子が、表1に示した遺伝子と相同性を示すことが明らかになった。FJ04470遺伝子は793個のアミノ酸からなる蛋白質をコードする4491bpからなる遺伝子であり、核酸配列の575番目から2950番目の配列がアミノ酸をコードしている。
高い相同性が見出されたヒト遺伝子gb:T50606,hypothetical protein DKFZp761J107.1と比較するとN末端が254アミノ酸長く、FJ04470遺伝子は同一遺伝子の全長の遺伝子をコードしていると考えられる。gb:T50606はコンピューターで予測されたアミノ酸配列であり、N末端に存在する膜貫通領域と見られる疎水性領域、4個の糖鎖付加部位をもたない部分配列であり、機能的分子であるとはいえない。
データベースで次にホモロジーのあったgb:AAC52925はCHO細胞で発現しているalpha−1,3(6)−mannosylglycoprotein beta−1,6−N−acetyl−glucosaminyltransferaseという糖鎖の転移酵素であり、FJ04470遺伝子はこれと45.5%の領域にわたって44%の相同性を有することから糖転移酵素の一つであると考えられる。その次に相同性を有するgb:NP_002401.1はgb:AAC52925のヒトオルソログであるので、gb:NP_002401.1とFJ04470蛋白質のアミノ酸配列を詳細に比較した。GCG Wisconsin Package(Accelrys社)のGAPを用いた。21個あるシステイン残基のうち、FJ04470蛋白質の157番のシステイン残基以後に存在する19個のシステイン残基についてはgb:AAC52925に20個あるシステイン残基のうち1個を除いてほぼ配置が似ており、ジスルフィド結合による蛋白質のフォールディングの結果に得られる構造はかなり類似したものであることが予想される。

表1には、該相同遺伝子に関する情報が挙げられている。尚、表1中の各項目の意味は以下の通りである。
「相同領域 クローン」クローンの相同領域の起点及び終点
「相同領域 相同遺伝子」相同遺伝子の相同領域の起点及び終点
「Score」この値が高ければ高いほど信頼度が高い
「E−value」この値が0に近ければ近いほど信頼度が高い
「相同性」相同領域のアミノ酸残基の一致の割合
「相同範囲率」相同遺伝子中の相同領域の割合
ペプチド配列についてはHMMER 2.1.1(Bioinformatics 14:755−763,(1998))によりPfam database(http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)に対してモチーフ検索を行ったが、ヒットするモチーフは存在しなかった。
疎水領域、細胞内の局在を推測するプログラムであるPSORT II(http://psort.nibb.ac.jp/)による検索の結果、25番目のアミノ酸から41番目のアミノ酸が膜貫通領域であり、N末端が細胞質内に存在する他の糖転移酵素と同じくII型の膜蛋白質であると予測された。また、GCG Wisconsin Package(Accelrys社)のPEPTIDESTRUCTUREを用いて解析したところ、アミノ酸残基93番、127番、215番、236番、447番、600番、666番、675番の8箇所にN型糖鎖付加部位が存在していることからFJ04470蛋白質は糖蛋白質であると考えられる。
(2) ゲノム配列との比較
BLASTN 2.1.3によるホモロジー検索でヒットした gb:AC016168.18,Homo sapiens chromosome 17,clone RP11−87G24,complete sequence,Length=193537をFJ04470遺伝子と比較した。その結果、ゲノム配列のgb:AC016168.18の147788番目から65867番目の位置にFJ04470遺伝子は存在しており、FJ04470遺伝子は19個のエクソンに分かれ、2番目のエクソンから18番目のエクソンにコーディング領域は分かれている。FJ04470遺伝子とゲノム配列を比較した結果を表とした(表2)。
さらに、Wise2−1−20c(http://www.sanger.ac.uk/Software/Wise2)のgenewiseプログラムを使用してFJ04470蛋白質とgb:AC016168.18の核酸配列を比較して、エクソン−イントロンのジャンクション部位を特定した。
gb:XM_085533,Homo sapiens hypothetical protein FLJ25132(FLJ25132),mRNAはコンピューターで予測された遺伝子として報告されているが、FJ04470遺伝子の362番から1493番の核酸配列と99%(1132/1133)一致している。これは4番目のエクソンまで(コーディングエクソンの1番目から3番目)の配列しか含まない。4番目と5番目のエクソンの間には20255塩基からなる大きなイントロンが存在していることがgenewiseによる解析から判明し、この長いイントロンをNCBIのコンピュータープログラムでは予測できなかったものと考えられる。つまり、FJ04470 cDNAのエクソン構造は大きなイントロンを含んでいるためにコンピューターでは予測できない遺伝子であるということを示している。
表2 FJ04470 cDNA配列とゲノム配列の比較
FJ04470 cDNA配列とゲノム配列をgenewiseによりエクソン、イントロンの境界を分析し、得られたエクソンのサイズ、イントロンのサイズを表にした。
番号は左のcDNAの番号に対応するゲノム配列gb:AC016168.18の番号を並べて示した。

(3) 公的なデーターベースにおける遺伝子発現情報
FJ04470遺伝子は、Unigene databaseに対して行ったホモロジー検索からHs.144531のUnigene clusterに属する。Hs.144531に属するESTクローンは33個あり、それらのESTの由来は脳(brain)、肝臓(liver)、膵臓(外分泌)(pancreas,exocrine)、生殖細胞(プールされたもの)(germ cell,pooled)、乳房(breast)、子宮頸(cervix)、肺(lung)、脾臓(spleen)、眼(eye)、膵臓(pancreas)、後根神経節(dorsal root ganglia)、卵巣(ovary)であるが、脳由来のcDNAが多い傾向が見られる(15/33)。公的なデーターベースから得られる発現情報では癌に特異的な発現をしているかは不明である。
〔実施例3〕 本発明のDNAの転写解析
(1) リアルタイムPCRによる転写物の解析
ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(ABI社)により本発明遺伝子の転写物の量を各種組織のcDNAを用いて解析した。GAPDH遺伝子の発現量の解析には、Pre−Developed TaqMan PCR Assay Kit(ABI社#4310884E)を使用した。PCR反応の組成は、1.25μl 20X Control Mix(GAPDH),DEPC−treated water(Ambion社#9920)6.25μl,TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI社#4304437)12.5μlを混合したMaster Mixに対してクロンテック社のMTC Panel cDNA 5μlを加えて25μlとして、ABI社のMicroAmp Optical 96−Well Reaction Plate(ABI社#N801−0560)上でABI社 ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection Systemを用いて50度2分、95度10分、95度15秒−60度1分を40サイクルの遺伝子増幅を行なった。MTC Panel cDNAはクロンテック社のHuman MTCTM Panel I(K1420−1)、Human MTCTM Panel II(K1421−1)、Human Tumor MTCTMPanel I(K1422−1)を使用した。培養した癌細胞からISOGEN(和光純薬)によりtotal RNAを回収して、これをamplification grade Dnase I(Invitrogen)を使用してゲノムDNAを分解した。方法はInvitrogen推奨のマニュアルに従った。DNase Iで処理したtotal RNAはInvitrogen superscript II reverse transcriptaseにより逆転写してcDNAとした。
本発明遺伝子の発現量については、ABI社のPrimerExpress 1.5を使用してRT−PCRに最適なプライマーの配列を検索した。FJ04470遺伝子の配列をゲノム配列と比較したところ、AC016168.18に配列がマッチした。イントロン、エクソンの構造を解析した結果、FJ04470の塩基番号で2158番付近に約2260塩基からなるイントロンが存在することが予想されたので、この領域を挟む形でプライマーの位置を決定した。プライマー4470−2043(5’−AGATCCATGGCACCGTGTACTAC−3’)、プライマー4470−2230(5’−GAAGATGCAACCATTGGCG−3’)はcDNAでは188塩基を増幅するが、ゲノムは約2450塩基を増幅することになる。0.5μlの10μMのプライマー4470−2043、0.5μlの10μMのプライマー4470−2230、6.5μlのDEPC−treated water、12.5μlのSYBR Green PCR Master Mix(ABI社#4309155)を混合し20μlとして、これに対してクロンテック社のMTC Panel cDNA 1μl及びDEPC−treated water(処理水)4μlを加えて25μlとした。ABI社のMicro Amp Optical 96−Well Reaction Plate(ABI社#N801−0560)上でABI社ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection Systemを用いて50度2分、95度10分、95度20秒−60度1分を40サイクルの遺伝子増幅を行なった。GAPDH遺伝子の発現量を内部コントロールとしておいたGAPDHアンプリコンをクローニングしたプラスミドを用いて標準曲線を引き、それをもとにして反応液中に存在するコピー数を算出した。本発明遺伝子の発現量をGAPDH遺伝子の発現量で割って得られた相対値で、各組織での発現量を比較した結果を以下の表3に示す。
表3において、左側は組織の名前を示し、右側の数値は各々の組織におけるGAPDH遺伝子の発現量を使ってノーマライズしたFJ04470遺伝子の発現量を示している。肝臓での値を1として他の組織での発現量を相対値として示した。
この表3から判るように、肺癌(lung carcinoma)、前立腺癌(prostatic adenocarcinoma)、において高値を示した。正常組織では脳、精巣では高い値を示したが、他の組織での発現量はあまり高くはない。
表3 リアルタイムPCRによる転写物の解析(1)
FJ04470の発現量を比較するために、内部コントロールとして測定したGAPDHの発現量で割った値の相対値で比較した。肝臓での相対的な発現量を1として種々の組織での発現量を比較した。

さらに、各種癌細胞株での発現量を比較するために31種類の癌細胞と4種類の正常細胞のcDNAを用いてFJ04470遺伝子の発現解析を行った。
その結果、肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌において高い発現が見られた。以上のことから本発明の遺伝子は肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌で発現が亢進している遺伝子であり、この遺伝子がコードする蛋白質もこれらも組織において高い発現があると考えられる。
また、大腸癌細胞株の項目のなかで、唯一発現が高く見られたSW620細胞であるが、この細胞は大腸癌がリンパ節に転移した部位から得られた細胞であるので、本発明の遺伝子は癌の転移とも関わりが示唆される。
表4 リアルタイムPCRによる転写物の解析(2)
FJ04470の発現量を比較するために、内部コントロールとして測定したGAPDHの発現量で割った値の相対値で比較した。乳腺上皮細胞での相対的な発現量を1として種々の癌細胞での発現量を比較した。

〔実施例4〕 ポリクローナル抗体の作製
相同性が一番高いGnT−Vの配列と比較して異なる領域で抗原性の高い領域を2か所選んでポリクローナル抗体を作成した。
図2にGnT−VとFJ04470のアミノ酸配列のアラインメントを示す。図中に示した数字はFJ04470のアミノ酸番号を示し、アミノ酸は一文字表記した。三段めにGnT−Vとのコンセンサス配列を示す。ペプチド抗体の作製に使用した配列は図中の線で示した部分(11アミノ酸部分と15アミノ酸部分)である。その他の下線はN型糖鎖の付加が予想される部位を示す。
選んだペプチドAG,RAの配列はAG:CAGSNTKYRRL(配列番号3),RA:CRAPDPALPEAHAPQ(配列番号4)である。プロメガ(株)にペプチド合成、ウサギポリクローナル抗体の作製を委託した。ペプチドは11mer(AG),15mer(RA)を80%以上の精製で合成後、KLHをコンジュゲートして各2羽のウサギに免疫した。日本白色種雌の2.5〜3.0kgのウサギを使用し、アジュバンドとして初回免疫にはFCA、追加免疫にはIFCAを用いて0.5mgを5回免疫した。
pcDNA3.1(Invitrogen)にFJ04470−FLAGをクローニングした発現ベクターをCOS細胞に遺伝子導入し、48時間後にSDS−PAGEサンプルバッファーで溶解した細胞をSDS−PAGEで分離した。
SDS−PAGE終了後、ゲルをtransfer buffer(1M Tris(pH7.5)48ml,2.928g glycine,200ml MtOH/L)に浸して、PVDF膜Immobilon−P(日本ミリポア IPVH304 F0)に、BioRad Trans−Blot SDを用いて 20Vで60分間ブロッティングした。蛋白のトランスファーされたメンブレンを2%スキムミルク(雪印)/T−TBSで4℃一晩ブロッキングし、1000倍に希釈したウサギ抗ペプチド抗血清と室温で一時間反応させた。T−TBSで10分、3回振倒しながら洗浄し、次に2次抗体を反応させた。anti−rabbit Ig,HRP linked F(ab’)2 fragment(from donky)(アマーシャム)を2%skimmilk(雪印)/T−TBSで5000倍希釈して室温で1時間反応させた。T−TBSで10分、4回振倒しながら洗浄し、アマーシャムのECL検出キットを使用してペプチド抗体に反応するバンドを検出した。結果、RA2のウサギにおいて抗FLAG抗体で検出されるバンドと同じサイズの約90KDaのFJ04470のバンドが検出できた。ブロードなバンドとして検出されたことから糖鎖修飾を受けていると考えられる。
図3にウエスタンブロッティングの結果を示す。図3はCOS7細胞に一過性に発現させたC末端にFLAGタグのついたFJ04470−FLAGとCOS7細胞の細胞溶解液をSDS−PAGEで分離したものをウサギ抗ペプチド抗血清で検出したものである。FLAGと記載されたものは抗FLAG抗体で検出したコントロールである。矢印に示したバンドの一がFJ04470−FLAG蛋白のバンドの位置である。RA2 030225のサンプルで特異的なバンドが検出できていることが明らかに見られる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用の可能性】
以上の知見から、本発明遺伝子は癌に関連して遺伝子発現が上昇している新規遺伝子であり、癌の診断に使用することが可能である。特に、肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌などにおいて高発現していることからこれらの癌の診断に有用であると考えられる。方法としてはDNA診断、抗体を使った免疫組織染色による方法が挙げられる。
さらに、転移した癌の診断にも有用と考えられる。
また、この遺伝子がコードする蛋白質の糖転移酵素としての機能を阻害すること等により癌を抑制できる可能性がある。機能を阻害する方法としては抗体を使った機能阻害、あるいは低分子を使った機能阻害が考えられる。特に、肺癌、乳癌、前立腺癌、膵癌などの癌の治療薬又は予防薬として有用であると考えられる。
さらには、この遺伝子は糖転移酵素として糖鎖の基質となる蛋白質のスクリーニング、基質蛋白質に転移する糖鎖をスクリーニングするための手段として利用することもできる。例えば、癌に関与して本発明蛋白質により糖付加をうける蛋白質や糖鎖は癌の治療薬又は予防薬の標的分子として有用であり、それらに対する抗体や糖の類似体など用いることで癌の治療薬または予防薬の開発がつながる可能性があるため、本発明遺伝子はこれらのスクリーニングに使用することに対しても有用である。
【配列表】












【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNA。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するポリペプチド
【請求項2】
以下の(c)又は(d)のDNA。
(c)配列番号1で示される塩基配列において、配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むDNA
(d)(c)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号2のアミノ酸配列から成るポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有する蛋白質をコードするDNA
【請求項3】
請求項1又は2記載のDNAを含む遺伝子。
【請求項4】
請求項1又は2記載のDNAを含む発現ベクター。
【請求項5】
請求項4のベクターを含む形質転換体。
【請求項6】
以下の(a)又は(b)のポリペプチドを含む蛋白質。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列から成るポリペプチド
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、(a)のポリペプチドの機能と実質的に同質の生物学的活性を有するポリペプチド。
【請求項7】
請求項1又は2記載のDNAを含む遺伝子を発現させることにより得られる組換え蛋白質。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の蛋白質に結合する抗体。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
配列番号3または配列番号4のペプチドに結合する抗体。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の抗体を含む抗癌剤。
【請求項12】
癌が肺癌である、請求項11記載の抗癌剤。
【請求項13】
癌が乳癌である、請求項11記載の抗癌剤。
【請求項14】
癌が前立腺癌である、請求項11記載の抗癌剤。
【請求項15】
癌が膵癌である、請求項11記載の抗癌剤。
【請求項16】
請求項6又は7に記載の蛋白質又はその部分ペプチドに結合する物質のスクリーニング方法であって、
(a)該蛋白質又はその部分ペプチドに被験試料を接触させる工程、
(b)該蛋白質又はその部分ペプチドと被験試料との結合活性を検出する工程、及び
(c)該蛋白質又はその部分ペプチドに結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む前記方法。
【請求項17】
部分ペプチドが配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項16記載のスクリーニング方法。
【請求項18】
請求項1又は2記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、少なくとも15塩基から成るポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列をコードする、請求項18記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載のポリヌクレオチドをプローブとして使用する癌の検出方法であって、
(a)該ポリヌクレオチドに被験試料を接触させる工程、及び
(b)該ポリヌクレオチドと被験試料とのハイブリダイズ活性を検出する工程、を含む前記方法。

【国際公開番号】WO2004/046358
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【発行日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553218(P2004−553218)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014812
【国際出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【出願人】(596175810)財団法人かずさディー・エヌ・エー研究所 (40)
【Fターム(参考)】