新規発症自己免疫性糖尿病を予防および/または逆転させるためのマイクロスフィアに基づく組成物
特に非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘発するために、AS−オリゴヌクレオチドをマイクロスフィア形式で送達する。該マイクロスフィアは、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドを組み込む。プロセスは、NODマウスにおける自己免疫性糖尿病状態を逆転させるためにアンチセンスアプローチをインビボで使用することを含む。該オリゴヌクレオチドは、一次転写物CD40、CD80、CD86およびその組み合わせに結合するよう標的化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年8月4日に出願された米国仮特許出願第60/835,742号および2006年11月8日に出願された同第60/864,914号の優先権の利益を主張するものである。前記出願のそれぞれの全ての文言が、本明細書中に参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は一般的に、NODマウスにおいて自己免疫性糖尿病状態を予防する、および/または逆転させるためのアンチセンスアプローチに関連する。これは、特に非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、負の調節活性を引き起こす治療効果を達成するために、注射によるAS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフィア送達を含む。該マイクロスフィアを、完全に水性の条件を用いて作成し、該マイクロスフィアは1つまたはそれ以上のアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドを組み込む。
【0003】
微粒子、マイクロスフィア、およびマイクロカプセルは、1ミリメートルより小さい直径を有する固体または半固体粒子であり、そしてそれは100ミクロンより小さくあり得、それを合成ポリマー、タンパク質、および多糖を含む様々な材料から形成し得る。マイクロスフィアは、多くの異なる適用において、主に分離、診断、および薬剤送達において使用されてきた。
【0004】
合成ポリマー、天然ポリマー、タンパク質、および多糖からこれらの粒子を作成するために、相分離、溶媒蒸発、乳化、およびスプレー乾燥を含む、多くの異なる技術を使用し得る。一般的に、該ポリマーがこれらのマイクロスフィアの支持構造を形成し、そして関心のある薬剤が該ポリマー構造に組み込まれる。マイクロスフィアの形成に使用される代表的なポリマーは、ホモポリマーおよびRuizに対する特許文献1、Reidらに対する特許文献2、Ticeらに対する特許文献3、Ticeらに対する特許文献4、Ticeらに対する特許文献5、Singhらに対する特許文献6、Boyesらに対する特許文献7、Ticeらに対する特許文献8、およびSouthern Research Instituteに対する特許文献9において記載されたような、乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA);Illumに対する特許文献10において記載されたような、Tetronic(登録商標)908およびポロクサマー407のようなブロックコポリマー;およびCohenに対する特許文献11において記載されたようなポリホスファゼンを含む。これらのようなポリマーを用いて産生されたマイクロスフィアは、低い装填効率を示し、そして多くの場合低いパーセンテージの関心のある薬剤しかポリマー構造に組み込むことができない。従って、多くの場合、治療効果を達成するために、かなりの量のこれらの型のマイクロスフィアを投与しなければならない。それに加えて、これらのポリマーは典型的には疎水性であり、関心のある薬剤の溶解に負の影響を与える。この関係で典型的に使用されるポリマーは、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)を含む。
【0005】
医療界の目的は、糖尿病を含む様々な疾患の治療のために、核酸を動物の細胞へ送達することである。多くのアプローチにおいて、トランスフェクション薬剤の添加によって、比較的効率的に、核酸を培養中の細胞に(インビトロで)送達し得る。それに加えて、インビボにおいて、核酸を動物に送達する場合、内因性ヌクレアーゼの存在が、高率の核酸の分解を引き起こす。
【0006】
核酸をヌクレアーゼ消化から守ることに加えて、核酸送達媒体は、低い毒性を示さなければならず、細胞によって効率的に取り込まれなければならず、そしてよく規定された、容易に製造される処方を有する。臨床試験において示されたように、送達のためのウイルスベクターは、インビボにおいて、非常に有害な、致死的でさえある免疫反応を引き起こし得る。それに加えて、この方法は、インビボにおいて変異原性作用を有する可能性がある。異なる処方の脂質複合体(リポソームまたは陽イオン性脂質複合体のような)中で核酸を複合体化することによる送達は、毒性作用を有し得る。核酸の、様々なポリマーまたはペプチドとの複合体は、一致しない結果を示し、そしてこれらの処方の毒性はまだ解決していない。核酸はまた、送達のためにポリマーマトリックスに封入されたが、これらの場合、粒子は広いサイズ範囲を有し、そして治療的適用の有効性はまだ示されていない。そのような以前のアプローチは、本明細書中で望まれるゴールと反対の免疫系の刺激を含む、効果を生じ得る。例えば、PLGAを粒子に組み込む場合、免疫系はPLGAの存在によって刺激される。
【0007】
従って、核酸の送達における問題に取り組む必要性が存在し、そしてマイクロスフィアおよびマイクロスフィアを作成する新規方法の開発に対する継続する必要性が存在する。マイクロスフィアに関する詳細、特にその調製および性質に関する詳細は、Scottらに対する特許文献12、Woiszwilloらに対する特許文献13、特許文献14、特許文献15、および特許文献16、およびWoiszwilloに対する特許文献17、およびBrownらに対する特許文献18において見出される。本明細書中で同定された、これらおよび全ての参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,213,812号明細書
【特許文献2】米国特許第5,417,986号明細書
【特許文献3】米国特許第4,530,840号明細書
【特許文献4】米国特許第4,897,268号明細書
【特許文献5】米国特許第5,075,109号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,872号明細書
【特許文献7】米国特許第5,384,133号明細書
【特許文献8】米国特許第5,360,610号明細書
【特許文献9】欧州特許申請公開番号248,531明細書
【特許文献10】米国特許第4,904,479号明細書
【特許文献11】米国特許第5,149,543号明細書
【特許文献12】米国特許第6,458,387号明細書
【特許文献13】第6,268,053号明細書
【特許文献14】第6,090,925号明細書
【特許文献15】第5,981,719号明細書
【特許文献16】第5,599,719号明細書
【特許文献17】第5,578,709号明細書
【特許文献18】米国特許申請公開第2006/0024240号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によって、オリゴヌクレオチドをマイクロスフィアとして送達する。そのような送達アプローチは、ヌクレアーゼがマイクロスフィア内の核酸に近づくことを妨げると考えられる。アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドのマイクロスフィア送達を、特にNODマウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘導するために行う。該マイクロスフィアは、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドが組み込まれるような水性条件を用いて作成する。これらのマイクロスフィアを使用して、遺伝子発現を阻害し、そしてインビボにおいてNODマウスで自己免疫性糖尿病状態を予防および/または逆転させる。
【0010】
開示の1つの局面において、CD40、CD80、およびCD86転写物を標的とした3つのAS−オリゴヌクレオチドを合成し、そしてそのオリゴヌクレオチド混合物の水性溶液を調製し、そして水性ポリマー溶液と組み合わせる。オリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアが形成され、そしてこれらを注射によってNODマウスに送達する。
【0011】
開示の1つの局面において、マイクロスフィア組成物を投与することを含む、哺乳動物において1型糖尿病を逆転させる方法を提供し、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む。そのオリゴヌクレオチドを、配列番号1、配列番号2、または配列番号3およびその組み合わせ、またはさらにCD40、CD80およびCD86を標的とするあらゆる他のオリゴヌクレオチドから成るグループから選択し得る。
【0012】
開示の別の局面は、哺乳動物にマイクロスフィア組成物を注射することを含む、哺乳動物の膵臓のベータ細胞を、自己免疫性の破壊から保護する方法に向けられ、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0013】
別の局面は、哺乳動物にマイクロスフィア組成物を投与することを含む、哺乳動物において膵臓のT細胞による炎症および/または膵臓ベータ細胞死を減少させる方法であり、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含み、ここでその組成物を、哺乳動物において1型糖尿病の症状を寛解させるために有効な量で投与する。より規定された局面において、その組成物を、1型糖尿病の臨床的発症の後に投与する。別の局面において、その組成物を、1型糖尿病の臨床的発症の前に投与する。これらの治療的局面において、その組成物の投与は、投与前の哺乳動物の血中グルコースレベルと比較して、哺乳動物における血中グルコースレベルを正常化する。
【0014】
前記組成物の投与は、哺乳動物のベータ細胞集団を再生し得るか、またはベータ細胞集団のさらなる劣化を停止させ得るか、またはその両方であり得る。
【0015】
前記組成物を、あらゆる形式で投与し得、そしてある代表的な局面において、注射可能な形態で投与する。特定の局面において、該組成物を、インスリンと組み合わせて投与する。併用療法を使用する場合、インスリンを、マイクロスフィア組成物の投与の前に、同時に、または後に投与し得る。
【0016】
さらなる局面は、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を被験体に投与することを含む、新規発症または前臨床自己免疫性糖尿病を有する被験体において、残存ベータ細胞塊を保存する方法に向けられ、ここでその組成物の投与は、哺乳動物のベータ細胞塊を、糖尿病の発症前に存在した塊の少なくとも約15%まで維持する。その被験体はヒト被験体であり得る。その被験体は、ヒト子供であり得る。その治療方法は、組成物の反復投与を含み得、そしてその反復投与は、哺乳動物のベータ細胞塊を増加させる。
【0017】
特に規定された方法において、マイクロスフィアの30%および70%w/w程度がオリゴヌクレオチドである。そのような組成物は、典型的には、マイクロスフィア組成物中に、1:1:1のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比で含み得る。
【0018】
様々な組み合わせを含む、本開示のこれらおよび他の局面、目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明の考察によって明らかとなり、そして明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
この説明の過程では、添付された図を参照するものであって、ここで:
【図1】図1aおよび1bは、AS−オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシンポリカチオンのマイクロスフィアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2aおよび2bは、開示によるマイクロスフィア調製物の性質を示すグラフである。図2aは、マイクロスフィア調製物のサイズ分布を示すグラフである。図2bは、マイクロスフィア調製物の表面電荷のグラフを示す。
【図3】図3は、マイクロスフィアの脱処方化(deformulation)後のオリゴヌクレオチドのRP−HPLCクロマトグラムである。
【図4】図4は、スクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア、またはPBS媒体単独で処置した動物と比較した、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィア(AS−MSP)で複数回処置したNODマウスにおける、糖尿病の予防を示すプロットである。
【図5】図5は、スクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア、またはPBS媒体単独で処置した動物と比較した、本開示のAS−MSPで1回処置したNODマウスにおける、糖尿病の予防を示すプロットである。
【図6】図6a−6dは、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色したか(図6aおよびc;H+E)、またはインスリンに関して染色した(図6bおよび6d)、コントロールNODマウス由来の膵臓組織切片の光学顕微鏡写真である。
【図7】図7a−7dは、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色したか(図7aおよびc;H+E)、またはインスリンに関して染色した(図7bおよび7d)、AS−MSP処置NODマウス由来の膵臓組織切片の光学顕微鏡写真である。
【図8】図8は、本開示のAS−MSPで処置したマウス、またはコントロール動物から得られたT細胞のFACS分析を示す。
【図9】図9は、本開示によって、AS−MSPで処置した動物由来であり、そして脾臓細胞と培養したT細胞の増殖を示す、相対蛍光強度(RFI)のプロットを示す。
【図10】図10は、インビトロで、同系の照射脾臓細胞および卵白アルブミンの存在下で、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞の増殖を示すRFIのプロットを示す。
【図11】図11は、インビトロで、同系膵島溶解物の存在下で、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞の増殖の抑制を示すRFIのプロットを示す。
【図12】図12は、アンチセンスまたはスクランブルオリゴヌクレオチドを含むいずれかのマイクロスフィアで処置した、新規発症糖尿病マウスの血中グルコースレベルのプロットである。
【図13】図13Aは、新規発症糖尿病を有するマウスによる実験の予定表を示し、そして図13Bおよび図13Cは、AS−MSPまたはコントロールのいずれかで処置した新規発症糖尿病マウスの、平均血中グルコースレベルのプロットである。
【図14A】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図14B】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図14C】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図15】自己免疫性糖尿病の治療的逆転を説明するモデル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
必要に応じて、本開示の詳細な実施態様を本明細書中で開示する。しかし、開示された実施態様は、開示の単なる例であり、様々な形式で具体化され得ることが理解される。従って、本明細書中で開示される特定の詳細は限定的と解釈されず、単に請求の基礎として、および実質的にあらゆる適当な方式で本開示を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈される。
【0021】
1型糖尿病は、膵臓、および特に内分泌インスリン産生ベータ細胞の進行性の炎症が存在する自己免疫疾患である。発症前に、炎症は最初に内分泌ベータ細胞を機能不全にする。マイクロスフィア処方の単回注射は、ヒト自己免疫性(1型)糖尿病の非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて疾患の発症をかなり遅らせる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、マイクロスフィアは、注射部位の常在性および遊走性樹状細胞によって取り込まれ、そして次いで疾患の発症前に近位のリンパ節に移動すると考えられる。処置されたレシピエントにおいて、インビトロで推定されるベータ細胞抗原に標的化されたT細胞の増殖の減少が起こるとも考えられる。同系T細胞および樹状細胞で再構築し、そしてマイクロスフィアを投与した、免疫欠損NOD−scidマウスにおいて、CD4+CD25+推定T調節性細胞の普及率の増加が起こり得る。従って、マイクロスフィアに基づく治療的組成物は、樹状細胞活性を調節し、そして予防のために調節性ネットワークを動員し得る。
【0022】
糖尿病の発症を予防する治療を有することが望ましい。かなりの数のベータ細胞が破壊された、臨床的発症後に、疾患を停止させるか、または逆転する治療的組成物を有することも望ましい。新規発症糖尿病マウスに対する反復投与は、高血糖を正常化し、そして疾患を逆転させる。逆転は、典型的には、ヒトまたは他の哺乳動物のような個体が、血中グルコースレベルのほぼ正常化を示すことを示す。いかなる特定の理論にも拘束されないが、「逆転」の間、疾患に誘発されたT細胞性炎症および細胞死は阻止される。
【0023】
1つの実施態様は、CD40、CD80およびCD86の転写物を標的とした、本明細書中で記載されたアンチセンス(AS)−オリゴヌクレオチドマイクロスフィアを処方および注射することによって、自己免疫性インスリン依存性糖尿病を逆転させる。転写物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の例が、この実施例において開示される。他のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、CD40、CD80およびCD86の転写物への結合に有効であるように設計して、本明細書中で記載される効果を達成し得ることが理解される。そのようなオリゴヌクレオチドは、チオエート化(thioation)、メチル化、およびメトキシエチル化を含むがこれらに限らない当該分野で公知の修飾を含み得ること、およびそのような修飾の位置および数は、最適な効果を達成するために変化し得ることも理解される。これらのオリゴヌクレオチドは、免疫寛容を誘発するように設計され、それはNODマウスモデルにおいて、インスリン産生ベータ細胞の破壊の逆転を引き起こす。
【0024】
1型糖尿病は、NODマウスおよびヒトにおいて、膵臓のインスリン産生ベータ細胞の自己免疫性破壊によって起こる。臨床的発症時に、ヒトは、典型的には10〜20%またはそれより少ない残存ベータ細胞塊を有する。この残存塊をいくらかでも残すことが、グルコースレベルを調節するために適当なインスリンレベルの維持を引き起こし得る。それに加えて、ベータ細胞の破壊の逆転は、ベータ細胞集団の部分的な再生を引き起こし得る。本開示のオリゴヌクレオチドを含む微粒子を、ベータ細胞の自己免疫性破壊を阻害するために提供する。
【0025】
樹状細胞(DC)を活性化して、全ての組織で見出され、そして皮膚の下に存在する、強力な抗原提示細胞にし得ることが認識される。これらの抗原提示樹状細胞は、特にリンパ節におけるT細胞の活性化によって、自己免疫反応を含む免疫反応のトリガーとして機能する。理論に拘束されることを望まないが、CD40、CD80およびCD86は、自己免疫反応に重要であると考えられ、そしてこれらの分子のダウンレギュレーションは、自己免疫の反応低下を促進すると考えられる。それに加えて、インターフェロンおよびインターロイキンのようなあるサイトカインが、反応低下の結果として抑制される。
【0026】
マウスにおける自己免疫性糖尿病の治療に使用されるマイクロスフィアの作成において、1つ、2つまたは3つのAS−オリゴヌクレオチドを水性溶液中に溶解し、そして水溶性のポリマーおよびポリカチオンと組み合わせ得る。その溶液を、典型的には約60〜70℃でインキュベートし、約23℃に冷却し、そして過剰なポリマーを除去する。
【0027】
その核酸は、典型的にはマイクロスフィアの約30および約100重量%の間を構成し、そして約50ミクロンより小さい、典型的には約20ミクロンより小さい平均粒子サイズを有し、そして約10ミクロンより小さくあり得る。典型的には、それらを以下のように調製する。オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの水性溶液を調製する。3つのオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを調製する場合、3つのオリゴヌクレオチド溶液からのアリコートを組み合わせる。各溶液は、これら3つのオリゴヌクレオチドの型の1つを含む。オリゴヌクレオチドを含む最終溶液は、典型的には約10mg/mlのオリゴヌクレオチドを含む。
【0028】
特定の実施例において、そのマイクロスフィア処方は、65%、70%、75%。80%、85%、90%w/wまたはそれより多い量のオリゴヌクレオチドを含む。そのような実施態様において、その組成物は、6〜10% w/w のポリ−L−リシン含有量を有する。それに加えて、マイクロスフィアの水分含有量は変動し、そして約4%であり得る。オリゴヌクレオチドは、1:1:1のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比で存在する。
【0029】
これらを、ポリカチオンの10mg/mlのストック溶液のアリコートと組み合わせる。ポリカチオンの例は、ポリ−リシンおよびポリ−オルニチンである。他は、ポリエチレンイミン(PEI)、プロラミン、プロタミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアルギニン、ビニルアミン、および陽性荷電キトサンのような陽性荷電多糖の誘導体、およびその組み合わせを含む。そのポリカチオン溶液は、約1:1から約4:1のポリカチオン:オリゴヌクレオチドの容積比であり得る。通常使用されるポリカチオンは、ポリ−L−リシン・HBr(70,000ダルトンまで、Bachemから入手可能)およびポリ−L−オルニチン・HBr(例えば11,900ダルトン、Sigmaから入手可能)を含む。
【0030】
ポリマー溶液も調製する。これらは、相分離増強剤として機能し得る。適当なポリマーの例は、直鎖状または分岐ポリマー、コポリマーおよびブロックコポリマーを含む。これらのポリマーは、水溶性、半水溶性、水混和性、または水混和性溶媒に溶解性であり得る。ポリマーの例は、PEG200、PEG300、PEG3350、PEG8000、PEG10000、PEG20000等のような、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、およびポロクサマー188、プルロニックF127またはプルロニックF68のような、様々な分子量のポロクサマーのような、薬剤学的に許容可能な添加物を含む。よく使用されるポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。別のポリマーは、ヒドロキシエチルデンプンである。他の両親媒性のポリマーも、単独または組み合わせて使用し得る。相分離増強剤はまた、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物のような、非ポリマーであり得る。
【0031】
典型的な実施態様において、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールのポリマー溶液を調製し、そして他の溶液と組み合わせ得る。加熱、冷却、遠心、および複数回の洗浄が水性懸濁液を生じ、それを典型的には凍結および凍結乾燥して、オリゴヌクレオチドおよびポリカチオンを含むマイクロスフィアの乾燥粉末を形成する。
【0032】
そのマイクロスフィアは、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、動脈内、関節内等を含む、注射可能な経路によるインビボ送達に適当である。実施し得る他の送達経路は、例えば局所、経口、直腸内、鼻腔内、肺、膣内、頬側、舌下、経皮、経粘膜、耳、または眼内を含む。
【0033】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、本明細書中で例示されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアは、細胞表面分子CD40、CD80、およびCD86をダウンレギュレートすると考えられる。そのマイクロスフィアを注射し、そして樹状細胞がそのオリゴヌクレオチドマイクロスフィアを能動的に取り込むと考えられる。これらのオリゴヌクレオチドは、樹状細胞において、細胞表面細胞分子CD40、CD80、およびCD86の発現を抑制する。NODマウスの発症後にこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィアを投与することは、糖尿病を有効に逆転させる。
【0034】
以下の実施例は、開示をさらに説明するために、開示のある特徴および利点を説明する。実施例は、開示を制限しない、または他の点で限定しないと考えられる。
【実施例】
【0035】
実施例1
CD40、CD80およびCD86一次転写物を標的とした3つのAS−オリゴヌクレオチドを合成した。この実施例で使用したAS−オリゴヌクレオチド配列は、以下の通りであり、アステリスクはバックボーンのチオエート化(thioation)の部位を示す:
配列番号1:CD40−AS:5’C*AC*AG*CC*GA*GG*C*AA*AGA*C*AC*CA*T*GC*AG*GG*C*A−3’
配列番号2:CD80−AS:5’−G*GG*AA*AG*CC*AG*GA*AT*CT*AG*AG*CC*AA*TGG*A−3’
配列番号3:CD86−AS:5’−T*GG*GT*GC*TT*CC*GT*AA*GT*TC*TG*GA*AC*AC*G*T*C−3’
オリゴヌクレオチド混合物の水性溶液を、それぞれ1つの型のオリゴヌクレオチドを含む3つのオリゴヌクレオチド溶液のアリコートを組み合わせることによって調製して、3つの型のオリゴヌクレオチドの10mg/mlの溶液を形成した。脱イオン水中でポリ−L−リシン・HBrの10mg/mlの溶液(Bachem、King of Prussia、PAによる、70,000ダルトンまでのポリ−L−リシン・HBr)を調製した。ポリ−L−リシン・HBrを、1:1の容積比で、オリゴヌクレオチド溶液に加えた。その混合物を静かにボルテックスした。12.5%のPVP(ポリビニルピロリドン、40,000ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)および12.5%のPEG(ポリエチレングリコール、3,350ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)をpH5.5で1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum、Gardena、CA)中に含む25%のポリマー溶液を、以下のように2:1の容積比で加えた:0.75mlのAS−オリゴヌクレオチド、0.75mlのポリ−L−リシン・HBr、3.0mlのPEG/PVP、および4.50mlの全容積。
【0036】
そのバッチを70℃で30分間インキュベートし、そして次いで23℃に冷却した。冷却時、その溶液は濁り、そしてマイクロスフィアが形成された。次いで懸濁液を遠心し、そして過剰なPEG/PVPを除去した。ペレットを脱イオン水に再懸濁し、続いて遠心および上清を除去することによって、できたペレットを洗浄した。洗浄プロセスを3回繰り返した。水性懸濁液を凍結および凍結乾燥して、オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシンを含むマイクロスフィアの乾燥粉末を形成した。
【0037】
図1aおよびbは、2つの異なる倍率における、1:1のポリ−L−リシン:オリゴヌクレオチド比のマイクロスフィアの、代表的な走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。0.5〜4μmの大きさで、約2.5μmの平均粒子サイズのマイクロスフィアを作成した。図2aは、レーザー光散乱によって明らかになった、本開示によって作成したマイクロスフィアの1つの調製物のサイズ分布を示す。図2bは、光散乱による、マイクロスフィア調製物の表面電荷の決定を示す(ゼータ電位)。図3は、添加を定量するために、および脱処方化(deformulation)後のマイクロスフィアのアンチセンスオリゴヌクレオチド成分の完全性を評価するために使用した逆相(RP)HPLCを示す。マイクロスフィアを、CD86、CD40、CD80オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシン(PLL;MW30−70kD)を用いて処方した。次いでマイクロスフィアを、ポリ−L−アスパラギン酸(PAA)による、PLLからのDNAオリゴヌクレオチドの競合的置換を用いて脱処方化(deformulate)した。PAAを、260nmで吸収せず、そして260nmにおけるオリゴヌクレオチドの定量に干渉しないポリアミノ酸試薬として選択した。図3のようなRP−HPLCプロファイルにおいて、各ピーク下面積は、マイクロスフィアに添加された各オリゴヌクレオチドの量に比例する。図3に示すように、ピーク高は、各オリゴヌクレオチドのマイクロスフィアへのほぼ等量の添加を示す。オリゴヌクレオチドのマイクロスフィアへの添加を、重量によって約65%から約80%であると計算した。図3はまた、脱処方化(deformulation)後のピークの狭い分布によって示されるように、オリゴヌクレオチドの完全性は、マイクロスフィア処方プロセスによって影響を受けなかったことを示す。
【0038】
実施例2
この実施例において、本開示の予防の局面をカバーする試験の結果を示す。図4に示すように、5〜8週齢におけるNODマウスへのAS−MSPの単回投与は、糖尿病の発症を遅らせる。2グループのNODメスマウス(5〜8週齢)に、本開示のマイクロスフィアに処方されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS−MSP)の単回皮下注射をした。各アンチセンスオリゴヌクレオチド(抗CD40、抗CD80、および抗CD86)の1:1:1混合物を50μg含むと考えられる量で、処方を注射した。他のグループのマウスに、スクランブル配列のマイクロスフィア(SCR−MSP)またはPBS媒体(コントロールNOD)を注射した。尾静脈穿刺によって週1回血中グルコースを測定した。2回続けて>280〜300mg/dLを測定した後、糖尿病を確認した。図4は、2つの独立に処置したコホートの累積生存率を示す。
【0039】
図5は、5〜8週齢におけるNODマウスへのAS−MSPの複数回投与が、糖尿病の発症を予防することを示す。NODメスマウス(5〜8週齢)に、本開示によるマイクロスフィアに処方されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを8回連続で単回皮下注射した(週1回)。注射(各アンチセンスオリゴヌクレオチドの1:1:1混合物またはスクランブルオリゴヌクレオチドを50μg)を、週1回8週間与え、そして13週で終了した。他のグループのマウスに、スクランブル配列のマイクロスフィア(SCR−MSP)またはPBS媒体(コントロールNOD)を注射した。図5は、処置した動物の累積生存率を示す。
【0040】
図6aおよび6bは、処置を受けず、そして従って自然に自己免疫病に進行したマウス(糖尿病NODマウス)由来の、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色した(H+E;図6a)、またはインスリンに関して染色した(図6b)膵臓組織の切片を示す。図6cおよび6dは、SCR−MSP処方で処置したマウス由来の膵臓組織の切片を示す(注射を特異的AS−MSPで処置したグループと平行して開始した)。これらの切片も、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図6c)またはインスリンに関して染色した(図6d)。SCR−MSPマウスは全て糖尿病を発症した。
【0041】
図7aおよび7bは、8週齢より若い時に処置し(予防モデル)、そして本開示のアンチセンスマイクロスフィアで処置したマウス由来の、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図7a)またはインスリンに関して染色した(図7b)、膵臓組織の切片を示す。
【0042】
図8に示すように、AS−MSP処置NODマウス由来のT細胞は、Foxp3+CD25+推定Treg細胞の普及率の増加を示す。図8Aは、FACS分析に使用したゲーティングを示す。図8Bは、脾臓から濃縮されたFoxp3+CD25+T細胞のパーセンテージを示し、そして図8CはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節由来、またはスクランブル配列マイクロスフィア(SCR−MSP)で処置した、またはPBS媒体で処置した動物由来のパーセンテージを示す。
【0043】
図9は、ASMSP処置非糖尿病NODマウスのT細胞は、同種脾臓細胞と同時培養した場合に増殖することを示す。ASMSPで処置した非糖尿病NODマウスのT細胞を、濃縮カラムから得て、そしてBalb/c、C57BL6または同系非糖尿病NODマウス(10週齢)由来のγ線照射した脾臓細胞と同時培養した。Cyquant試薬を用いて、4日後に増殖を測定した。Splは、同種照射脾臓細胞を指す。
【0044】
図10に示すように、ASMSP処置非糖尿病NODマウス由来のT細胞は、インビトロにおいて同系照射脾臓細胞および卵白アルブミンの存在下で増殖する。T細胞を脾臓から、またはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節から濃縮した。
【0045】
図11は、ASMSP処置非糖尿病NODマウス由来のT細胞は、インビトロで、同系膵島溶解物の存在下で、増殖の抑制を示すことを示す。図4で記載したように、T細胞を脾臓から、またはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節から濃縮した。照射NOD脾臓細胞(非糖尿病10週齢NODマウス由来)を、抗原提示細胞として使用し、そして平行培養にNIT−1溶解物(1μg/ウェル)(またはPBS媒体)を適用した。
【0046】
最終的な糖尿病抑制治療のヒト試験への転換に関する主な懸念は、その治療アプローチの抗原特異性(そして従って細胞特異性)、およびその治療が、全体的および非特異的な抑制を与えるかどうかである。これらの問題に取り組むために、図4に示したコホートから、ランダムに選択した非糖尿病マウスを、安楽死させて、同種抗原、ノミナル抗原(完全な卵白アルブミンの形態で)、およびNOD由来インスリノーマ細胞系統NIT−1の細胞溶解物の形態の同系ベータ細胞由来抗原に対する、脾臓およびリンパ節T細胞の増殖を確認した。インスリンおよびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)は、機構的および目的論的な関与を有する、見込みのある候補自己抗原であるが、自己抗原を惹起する性質はまだ明らかでない。それにも関わらず、それはベータ細胞にあると考えるのが妥当である。従って、NODインスリノーマから得られるNIT−1細胞系統を、AS−MSPで処置した非糖尿病NODマウス由来のT細胞の同時培養において、ベータ細胞抗原の供給源として使用して、抗原特異的反応低下の可能性を決定した。これらの研究から、ノミナルおよび同種抗原に対するT細胞増殖は維持されるが、NIT−1細胞溶解物との同時培養においてT細胞の増殖低下があることが観察された。
【0047】
さらに、同時培養上清におけるサイトカインプロファイルを確認して、発明者らは、NIT−1溶解物の存在下でさえ、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞によるTNFα産生の有意な減少を観察した。IFNγの産生は、AS−MSP処置マウス由来のT細胞の同時培養においてわずかに減少したが、NIT−1溶解物存在下におけるPBS処置マウス由来のT細胞との同時培養と統計学的に区別できなかった。最後に、そのアッセイは、上清中にIL−4、IL−10、またはTGFβの存在を検出できなかった。
【0048】
実施例3
アンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィアの、早期発症NODマウスにおける糖尿病の症状を逆転させる能力も試験した。これらの実験の予定表を図13Aに示す。早期発症したNODマウスの血中グルコースレベルを試験し、そして400mg/dLより高い血中グルコースレベルを有する動物を同定することによって選択した。選択した動物に、インスリンペレットを与えて、血中グルコースレベルを300mg/dLより低くまで正常化した。インスリンをやめ、そしてマイクロスフィアの一連の非経口注射を開始した。6匹の動物に、CD40、CD80、およびCD86アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを週2回注射した。さらに10匹の動物に、CD40、CD80、および/またはCD86に向けられていないスクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物を含むマイクロスフィアを注射した。両方のグループの動物の各注射は、100μlの注射溶液中、マイクロスフィア中に50μgのオリゴヌクレオチドを含んでいた。スクランブルグループの動物のうち2匹を、肉体的状態が悪いため、実験の前および終わりに安楽死させた。注射プロトコールの開始後、血中グルコースレベルを1週間に2回サンプリングした。動物は実験の間、非絶食であった。結果を図12にプロットし、ここでインジケーター(1)は、インスリンペレットの設置を示し、そしてインジケーター(2)は、インスリンペレットの除去および週2回のMSP注射の開始を示す。図12で報告された最高血中グルコース値は、700mg/dLであり、それは使用した計器の最高の示度であり、700mg/dLのデータポイントは、700mg/dLまたはそれより高い血中グルコース示度を示すことが理解されることに注意する。CD40、CD80、CD86アンチセンスオリゴヌクレオチドの混合物を含むマイクロスフィア(ASMSP1からASMSP6)を投与されたグループの全ての動物は、スクランブルオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィア(SCRMSP1からSCRMSP10)を投与された動物より、有意に低いグルコースレベルを示した。さらに、このASMSPグループの6匹の動物のうち4匹は、典型的には糖尿病発症の閾値指標と考えられる、400mg/dLより低い血中グルコースレベルを示した。
【0049】
図13Aにおいて、実験の予定表を示す。各グループの、平均非空腹時血中グルコース(図13B)および平均空腹時血中グルコースレベルをプロットした(図13C)(+/−SEM)。図13Aに示すように、何匹かのマウスにおいて、ASMSP投与をやめた。図13Bおよび13Cにおいて示すように、新規発症糖尿病NODメスマウスに対する複数回のAS−MSP投与は、未処置の動物(コントロール)、PBSで処置した動物、またはスクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア(SCR−MSP)で処置した動物と比較して、血中グルコースレベルを改善し、そしてAS−MSP中止後でさえ安定な空腹時正常血糖を生じる。
【0050】
図7cおよび7dは、糖尿病の発症後にアンチセンス処方で処置し、そして疾患の逆転を示したNODマウス由来の膵臓組織の切片を示す。切片を、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図7c)またはインスリンに関して染色(図7d)した。
【0051】
3つの異なるAS−オリゴヌクレオチドを、PROMAXXマイクロスフィアに組み込み得、そしてそのようなマイクロスフィアを、免疫調節性樹状細胞の誘導によって、新規発症自己免疫性糖尿病を予防および/または逆転するための組成物として使用し得る。実際、その組成物の単回注射は、疾患の発症を遅らせ、そして新規発症糖尿病マウスへの反復投与は、高血糖を正常化し、疾患の逆転を示唆した。これらの研究において、血中グルコースが300mg/dL以下に低下するまで、インスリンを毎日投与した。次いでインスリンを中止し、そこでAS−MSPを皮下投与した。代表的な投与レジメにおいて、動物に体重1kgあたり2mgのAS−MSPを1週間に2回、3〜4週間投与した。非糖尿病マウスをモニターした。
【0052】
図14A〜14Cにおいて、NODマウスに対するAS−MSPの投与は、当該マウスの血中グルコースレベルを正常レベルに戻し、そしてその当該血中グルコースレベルの正常化は、延長した期間維持されることを示す。図14Bおよび図14Cにおいて示すように、AS−MSPを、インスリン投与を中止した後0〜30日の間に投与した。血中グルコースレベルは、インスリン中止後15日までに正常に戻り、そしてモニター期間の終わり(55日)まで正常レベルで維持された。
【0053】
自己免疫性糖尿病の治療的逆転の影響を示す図を、図15に示す。PROMAXX治療薬を、図15に示す新規発症「ハネムーン期」に投与した場合、機能的なままである10〜20%のベータ細胞の保存が予測され、それによって糖尿病のコントロールを導き、そして患者のインスリンに対する依存を抑制する。
【0054】
記載された本開示の実施態様は、本開示の原理の適用のいくつかの説明であることが理解される。本開示の真の意図および範囲から離れることなく、当業者によって多くの修飾がなされ得る。本明細書中で記載される様々な特徴を、あらゆる組み合わせで使用され得、そして本明細書中で明確に概略を述べた正確な組み合わせに制限されるものではない。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年8月4日に出願された米国仮特許出願第60/835,742号および2006年11月8日に出願された同第60/864,914号の優先権の利益を主張するものである。前記出願のそれぞれの全ての文言が、本明細書中に参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は一般的に、NODマウスにおいて自己免疫性糖尿病状態を予防する、および/または逆転させるためのアンチセンスアプローチに関連する。これは、特に非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて、負の調節活性を引き起こす治療効果を達成するために、注射によるAS−オリゴヌクレオチドのマイクロスフィア送達を含む。該マイクロスフィアを、完全に水性の条件を用いて作成し、該マイクロスフィアは1つまたはそれ以上のアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドを組み込む。
【0003】
微粒子、マイクロスフィア、およびマイクロカプセルは、1ミリメートルより小さい直径を有する固体または半固体粒子であり、そしてそれは100ミクロンより小さくあり得、それを合成ポリマー、タンパク質、および多糖を含む様々な材料から形成し得る。マイクロスフィアは、多くの異なる適用において、主に分離、診断、および薬剤送達において使用されてきた。
【0004】
合成ポリマー、天然ポリマー、タンパク質、および多糖からこれらの粒子を作成するために、相分離、溶媒蒸発、乳化、およびスプレー乾燥を含む、多くの異なる技術を使用し得る。一般的に、該ポリマーがこれらのマイクロスフィアの支持構造を形成し、そして関心のある薬剤が該ポリマー構造に組み込まれる。マイクロスフィアの形成に使用される代表的なポリマーは、ホモポリマーおよびRuizに対する特許文献1、Reidらに対する特許文献2、Ticeらに対する特許文献3、Ticeらに対する特許文献4、Ticeらに対する特許文献5、Singhらに対する特許文献6、Boyesらに対する特許文献7、Ticeらに対する特許文献8、およびSouthern Research Instituteに対する特許文献9において記載されたような、乳酸およびグリコール酸のコポリマー(PLGA);Illumに対する特許文献10において記載されたような、Tetronic(登録商標)908およびポロクサマー407のようなブロックコポリマー;およびCohenに対する特許文献11において記載されたようなポリホスファゼンを含む。これらのようなポリマーを用いて産生されたマイクロスフィアは、低い装填効率を示し、そして多くの場合低いパーセンテージの関心のある薬剤しかポリマー構造に組み込むことができない。従って、多くの場合、治療効果を達成するために、かなりの量のこれらの型のマイクロスフィアを投与しなければならない。それに加えて、これらのポリマーは典型的には疎水性であり、関心のある薬剤の溶解に負の影響を与える。この関係で典型的に使用されるポリマーは、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)を含む。
【0005】
医療界の目的は、糖尿病を含む様々な疾患の治療のために、核酸を動物の細胞へ送達することである。多くのアプローチにおいて、トランスフェクション薬剤の添加によって、比較的効率的に、核酸を培養中の細胞に(インビトロで)送達し得る。それに加えて、インビボにおいて、核酸を動物に送達する場合、内因性ヌクレアーゼの存在が、高率の核酸の分解を引き起こす。
【0006】
核酸をヌクレアーゼ消化から守ることに加えて、核酸送達媒体は、低い毒性を示さなければならず、細胞によって効率的に取り込まれなければならず、そしてよく規定された、容易に製造される処方を有する。臨床試験において示されたように、送達のためのウイルスベクターは、インビボにおいて、非常に有害な、致死的でさえある免疫反応を引き起こし得る。それに加えて、この方法は、インビボにおいて変異原性作用を有する可能性がある。異なる処方の脂質複合体(リポソームまたは陽イオン性脂質複合体のような)中で核酸を複合体化することによる送達は、毒性作用を有し得る。核酸の、様々なポリマーまたはペプチドとの複合体は、一致しない結果を示し、そしてこれらの処方の毒性はまだ解決していない。核酸はまた、送達のためにポリマーマトリックスに封入されたが、これらの場合、粒子は広いサイズ範囲を有し、そして治療的適用の有効性はまだ示されていない。そのような以前のアプローチは、本明細書中で望まれるゴールと反対の免疫系の刺激を含む、効果を生じ得る。例えば、PLGAを粒子に組み込む場合、免疫系はPLGAの存在によって刺激される。
【0007】
従って、核酸の送達における問題に取り組む必要性が存在し、そしてマイクロスフィアおよびマイクロスフィアを作成する新規方法の開発に対する継続する必要性が存在する。マイクロスフィアに関する詳細、特にその調製および性質に関する詳細は、Scottらに対する特許文献12、Woiszwilloらに対する特許文献13、特許文献14、特許文献15、および特許文献16、およびWoiszwilloに対する特許文献17、およびBrownらに対する特許文献18において見出される。本明細書中で同定された、これらおよび全ての参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,213,812号明細書
【特許文献2】米国特許第5,417,986号明細書
【特許文献3】米国特許第4,530,840号明細書
【特許文献4】米国特許第4,897,268号明細書
【特許文献5】米国特許第5,075,109号明細書
【特許文献6】米国特許第5,102,872号明細書
【特許文献7】米国特許第5,384,133号明細書
【特許文献8】米国特許第5,360,610号明細書
【特許文献9】欧州特許申請公開番号248,531明細書
【特許文献10】米国特許第4,904,479号明細書
【特許文献11】米国特許第5,149,543号明細書
【特許文献12】米国特許第6,458,387号明細書
【特許文献13】第6,268,053号明細書
【特許文献14】第6,090,925号明細書
【特許文献15】第5,981,719号明細書
【特許文献16】第5,599,719号明細書
【特許文献17】第5,578,709号明細書
【特許文献18】米国特許申請公開第2006/0024240号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によって、オリゴヌクレオチドをマイクロスフィアとして送達する。そのような送達アプローチは、ヌクレアーゼがマイクロスフィア内の核酸に近づくことを妨げると考えられる。アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドのマイクロスフィア送達を、特にNODマウスモデルにおいて、樹状細胞寛容を誘導するために行う。該マイクロスフィアは、アンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドが組み込まれるような水性条件を用いて作成する。これらのマイクロスフィアを使用して、遺伝子発現を阻害し、そしてインビボにおいてNODマウスで自己免疫性糖尿病状態を予防および/または逆転させる。
【0010】
開示の1つの局面において、CD40、CD80、およびCD86転写物を標的とした3つのAS−オリゴヌクレオチドを合成し、そしてそのオリゴヌクレオチド混合物の水性溶液を調製し、そして水性ポリマー溶液と組み合わせる。オリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアが形成され、そしてこれらを注射によってNODマウスに送達する。
【0011】
開示の1つの局面において、マイクロスフィア組成物を投与することを含む、哺乳動物において1型糖尿病を逆転させる方法を提供し、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む。そのオリゴヌクレオチドを、配列番号1、配列番号2、または配列番号3およびその組み合わせ、またはさらにCD40、CD80およびCD86を標的とするあらゆる他のオリゴヌクレオチドから成るグループから選択し得る。
【0012】
開示の別の局面は、哺乳動物にマイクロスフィア組成物を注射することを含む、哺乳動物の膵臓のベータ細胞を、自己免疫性の破壊から保護する方法に向けられ、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0013】
別の局面は、哺乳動物にマイクロスフィア組成物を投与することを含む、哺乳動物において膵臓のT細胞による炎症および/または膵臓ベータ細胞死を減少させる方法であり、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含み、ここでその組成物を、哺乳動物において1型糖尿病の症状を寛解させるために有効な量で投与する。より規定された局面において、その組成物を、1型糖尿病の臨床的発症の後に投与する。別の局面において、その組成物を、1型糖尿病の臨床的発症の前に投与する。これらの治療的局面において、その組成物の投与は、投与前の哺乳動物の血中グルコースレベルと比較して、哺乳動物における血中グルコースレベルを正常化する。
【0014】
前記組成物の投与は、哺乳動物のベータ細胞集団を再生し得るか、またはベータ細胞集団のさらなる劣化を停止させ得るか、またはその両方であり得る。
【0015】
前記組成物を、あらゆる形式で投与し得、そしてある代表的な局面において、注射可能な形態で投与する。特定の局面において、該組成物を、インスリンと組み合わせて投与する。併用療法を使用する場合、インスリンを、マイクロスフィア組成物の投与の前に、同時に、または後に投与し得る。
【0016】
さらなる局面は、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を被験体に投与することを含む、新規発症または前臨床自己免疫性糖尿病を有する被験体において、残存ベータ細胞塊を保存する方法に向けられ、ここでその組成物の投与は、哺乳動物のベータ細胞塊を、糖尿病の発症前に存在した塊の少なくとも約15%まで維持する。その被験体はヒト被験体であり得る。その被験体は、ヒト子供であり得る。その治療方法は、組成物の反復投与を含み得、そしてその反復投与は、哺乳動物のベータ細胞塊を増加させる。
【0017】
特に規定された方法において、マイクロスフィアの30%および70%w/w程度がオリゴヌクレオチドである。そのような組成物は、典型的には、マイクロスフィア組成物中に、1:1:1のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比で含み得る。
【0018】
様々な組み合わせを含む、本開示のこれらおよび他の局面、目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明の考察によって明らかとなり、そして明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
この説明の過程では、添付された図を参照するものであって、ここで:
【図1】図1aおよび1bは、AS−オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシンポリカチオンのマイクロスフィアの走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2aおよび2bは、開示によるマイクロスフィア調製物の性質を示すグラフである。図2aは、マイクロスフィア調製物のサイズ分布を示すグラフである。図2bは、マイクロスフィア調製物の表面電荷のグラフを示す。
【図3】図3は、マイクロスフィアの脱処方化(deformulation)後のオリゴヌクレオチドのRP−HPLCクロマトグラムである。
【図4】図4は、スクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア、またはPBS媒体単独で処置した動物と比較した、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィア(AS−MSP)で複数回処置したNODマウスにおける、糖尿病の予防を示すプロットである。
【図5】図5は、スクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア、またはPBS媒体単独で処置した動物と比較した、本開示のAS−MSPで1回処置したNODマウスにおける、糖尿病の予防を示すプロットである。
【図6】図6a−6dは、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色したか(図6aおよびc;H+E)、またはインスリンに関して染色した(図6bおよび6d)、コントロールNODマウス由来の膵臓組織切片の光学顕微鏡写真である。
【図7】図7a−7dは、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色したか(図7aおよびc;H+E)、またはインスリンに関して染色した(図7bおよび7d)、AS−MSP処置NODマウス由来の膵臓組織切片の光学顕微鏡写真である。
【図8】図8は、本開示のAS−MSPで処置したマウス、またはコントロール動物から得られたT細胞のFACS分析を示す。
【図9】図9は、本開示によって、AS−MSPで処置した動物由来であり、そして脾臓細胞と培養したT細胞の増殖を示す、相対蛍光強度(RFI)のプロットを示す。
【図10】図10は、インビトロで、同系の照射脾臓細胞および卵白アルブミンの存在下で、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞の増殖を示すRFIのプロットを示す。
【図11】図11は、インビトロで、同系膵島溶解物の存在下で、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞の増殖の抑制を示すRFIのプロットを示す。
【図12】図12は、アンチセンスまたはスクランブルオリゴヌクレオチドを含むいずれかのマイクロスフィアで処置した、新規発症糖尿病マウスの血中グルコースレベルのプロットである。
【図13】図13Aは、新規発症糖尿病を有するマウスによる実験の予定表を示し、そして図13Bおよび図13Cは、AS−MSPまたはコントロールのいずれかで処置した新規発症糖尿病マウスの、平均血中グルコースレベルのプロットである。
【図14A】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図14B】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図14C】図14A−Cは、NODマウスにおける1型糖尿病表現型の逆転を示す。これらの図は、AS−MSPの投与時に、哺乳動物の血中グルコースレベルが15日以内に正常に戻り(正常レベルを約200mg/dLにおける点線によって示す)、そしてAS−MSP投与を中止した後でも(30日目)正常に維持されることを示す。
【図15】自己免疫性糖尿病の治療的逆転を説明するモデル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
必要に応じて、本開示の詳細な実施態様を本明細書中で開示する。しかし、開示された実施態様は、開示の単なる例であり、様々な形式で具体化され得ることが理解される。従って、本明細書中で開示される特定の詳細は限定的と解釈されず、単に請求の基礎として、および実質的にあらゆる適当な方式で本開示を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈される。
【0021】
1型糖尿病は、膵臓、および特に内分泌インスリン産生ベータ細胞の進行性の炎症が存在する自己免疫疾患である。発症前に、炎症は最初に内分泌ベータ細胞を機能不全にする。マイクロスフィア処方の単回注射は、ヒト自己免疫性(1型)糖尿病の非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルにおいて疾患の発症をかなり遅らせる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、マイクロスフィアは、注射部位の常在性および遊走性樹状細胞によって取り込まれ、そして次いで疾患の発症前に近位のリンパ節に移動すると考えられる。処置されたレシピエントにおいて、インビトロで推定されるベータ細胞抗原に標的化されたT細胞の増殖の減少が起こるとも考えられる。同系T細胞および樹状細胞で再構築し、そしてマイクロスフィアを投与した、免疫欠損NOD−scidマウスにおいて、CD4+CD25+推定T調節性細胞の普及率の増加が起こり得る。従って、マイクロスフィアに基づく治療的組成物は、樹状細胞活性を調節し、そして予防のために調節性ネットワークを動員し得る。
【0022】
糖尿病の発症を予防する治療を有することが望ましい。かなりの数のベータ細胞が破壊された、臨床的発症後に、疾患を停止させるか、または逆転する治療的組成物を有することも望ましい。新規発症糖尿病マウスに対する反復投与は、高血糖を正常化し、そして疾患を逆転させる。逆転は、典型的には、ヒトまたは他の哺乳動物のような個体が、血中グルコースレベルのほぼ正常化を示すことを示す。いかなる特定の理論にも拘束されないが、「逆転」の間、疾患に誘発されたT細胞性炎症および細胞死は阻止される。
【0023】
1つの実施態様は、CD40、CD80およびCD86の転写物を標的とした、本明細書中で記載されたアンチセンス(AS)−オリゴヌクレオチドマイクロスフィアを処方および注射することによって、自己免疫性インスリン依存性糖尿病を逆転させる。転写物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の例が、この実施例において開示される。他のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、CD40、CD80およびCD86の転写物への結合に有効であるように設計して、本明細書中で記載される効果を達成し得ることが理解される。そのようなオリゴヌクレオチドは、チオエート化(thioation)、メチル化、およびメトキシエチル化を含むがこれらに限らない当該分野で公知の修飾を含み得ること、およびそのような修飾の位置および数は、最適な効果を達成するために変化し得ることも理解される。これらのオリゴヌクレオチドは、免疫寛容を誘発するように設計され、それはNODマウスモデルにおいて、インスリン産生ベータ細胞の破壊の逆転を引き起こす。
【0024】
1型糖尿病は、NODマウスおよびヒトにおいて、膵臓のインスリン産生ベータ細胞の自己免疫性破壊によって起こる。臨床的発症時に、ヒトは、典型的には10〜20%またはそれより少ない残存ベータ細胞塊を有する。この残存塊をいくらかでも残すことが、グルコースレベルを調節するために適当なインスリンレベルの維持を引き起こし得る。それに加えて、ベータ細胞の破壊の逆転は、ベータ細胞集団の部分的な再生を引き起こし得る。本開示のオリゴヌクレオチドを含む微粒子を、ベータ細胞の自己免疫性破壊を阻害するために提供する。
【0025】
樹状細胞(DC)を活性化して、全ての組織で見出され、そして皮膚の下に存在する、強力な抗原提示細胞にし得ることが認識される。これらの抗原提示樹状細胞は、特にリンパ節におけるT細胞の活性化によって、自己免疫反応を含む免疫反応のトリガーとして機能する。理論に拘束されることを望まないが、CD40、CD80およびCD86は、自己免疫反応に重要であると考えられ、そしてこれらの分子のダウンレギュレーションは、自己免疫の反応低下を促進すると考えられる。それに加えて、インターフェロンおよびインターロイキンのようなあるサイトカインが、反応低下の結果として抑制される。
【0026】
マウスにおける自己免疫性糖尿病の治療に使用されるマイクロスフィアの作成において、1つ、2つまたは3つのAS−オリゴヌクレオチドを水性溶液中に溶解し、そして水溶性のポリマーおよびポリカチオンと組み合わせ得る。その溶液を、典型的には約60〜70℃でインキュベートし、約23℃に冷却し、そして過剰なポリマーを除去する。
【0027】
その核酸は、典型的にはマイクロスフィアの約30および約100重量%の間を構成し、そして約50ミクロンより小さい、典型的には約20ミクロンより小さい平均粒子サイズを有し、そして約10ミクロンより小さくあり得る。典型的には、それらを以下のように調製する。オリゴヌクレオチドまたは複数のオリゴヌクレオチドの水性溶液を調製する。3つのオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを調製する場合、3つのオリゴヌクレオチド溶液からのアリコートを組み合わせる。各溶液は、これら3つのオリゴヌクレオチドの型の1つを含む。オリゴヌクレオチドを含む最終溶液は、典型的には約10mg/mlのオリゴヌクレオチドを含む。
【0028】
特定の実施例において、そのマイクロスフィア処方は、65%、70%、75%。80%、85%、90%w/wまたはそれより多い量のオリゴヌクレオチドを含む。そのような実施態様において、その組成物は、6〜10% w/w のポリ−L−リシン含有量を有する。それに加えて、マイクロスフィアの水分含有量は変動し、そして約4%であり得る。オリゴヌクレオチドは、1:1:1のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比で存在する。
【0029】
これらを、ポリカチオンの10mg/mlのストック溶液のアリコートと組み合わせる。ポリカチオンの例は、ポリ−リシンおよびポリ−オルニチンである。他は、ポリエチレンイミン(PEI)、プロラミン、プロタミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアルギニン、ビニルアミン、および陽性荷電キトサンのような陽性荷電多糖の誘導体、およびその組み合わせを含む。そのポリカチオン溶液は、約1:1から約4:1のポリカチオン:オリゴヌクレオチドの容積比であり得る。通常使用されるポリカチオンは、ポリ−L−リシン・HBr(70,000ダルトンまで、Bachemから入手可能)およびポリ−L−オルニチン・HBr(例えば11,900ダルトン、Sigmaから入手可能)を含む。
【0030】
ポリマー溶液も調製する。これらは、相分離増強剤として機能し得る。適当なポリマーの例は、直鎖状または分岐ポリマー、コポリマーおよびブロックコポリマーを含む。これらのポリマーは、水溶性、半水溶性、水混和性、または水混和性溶媒に溶解性であり得る。ポリマーの例は、PEG200、PEG300、PEG3350、PEG8000、PEG10000、PEG20000等のような、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、およびポロクサマー188、プルロニックF127またはプルロニックF68のような、様々な分子量のポロクサマーのような、薬剤学的に許容可能な添加物を含む。よく使用されるポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。別のポリマーは、ヒドロキシエチルデンプンである。他の両親媒性のポリマーも、単独または組み合わせて使用し得る。相分離増強剤はまた、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物のような、非ポリマーであり得る。
【0031】
典型的な実施態様において、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリエチレングリコールのポリマー溶液を調製し、そして他の溶液と組み合わせ得る。加熱、冷却、遠心、および複数回の洗浄が水性懸濁液を生じ、それを典型的には凍結および凍結乾燥して、オリゴヌクレオチドおよびポリカチオンを含むマイクロスフィアの乾燥粉末を形成する。
【0032】
そのマイクロスフィアは、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内、硬膜外、動脈内、関節内等を含む、注射可能な経路によるインビボ送達に適当である。実施し得る他の送達経路は、例えば局所、経口、直腸内、鼻腔内、肺、膣内、頬側、舌下、経皮、経粘膜、耳、または眼内を含む。
【0033】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、本明細書中で例示されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアは、細胞表面分子CD40、CD80、およびCD86をダウンレギュレートすると考えられる。そのマイクロスフィアを注射し、そして樹状細胞がそのオリゴヌクレオチドマイクロスフィアを能動的に取り込むと考えられる。これらのオリゴヌクレオチドは、樹状細胞において、細胞表面細胞分子CD40、CD80、およびCD86の発現を抑制する。NODマウスの発症後にこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィアを投与することは、糖尿病を有効に逆転させる。
【0034】
以下の実施例は、開示をさらに説明するために、開示のある特徴および利点を説明する。実施例は、開示を制限しない、または他の点で限定しないと考えられる。
【実施例】
【0035】
実施例1
CD40、CD80およびCD86一次転写物を標的とした3つのAS−オリゴヌクレオチドを合成した。この実施例で使用したAS−オリゴヌクレオチド配列は、以下の通りであり、アステリスクはバックボーンのチオエート化(thioation)の部位を示す:
配列番号1:CD40−AS:5’C*AC*AG*CC*GA*GG*C*AA*AGA*C*AC*CA*T*GC*AG*GG*C*A−3’
配列番号2:CD80−AS:5’−G*GG*AA*AG*CC*AG*GA*AT*CT*AG*AG*CC*AA*TGG*A−3’
配列番号3:CD86−AS:5’−T*GG*GT*GC*TT*CC*GT*AA*GT*TC*TG*GA*AC*AC*G*T*C−3’
オリゴヌクレオチド混合物の水性溶液を、それぞれ1つの型のオリゴヌクレオチドを含む3つのオリゴヌクレオチド溶液のアリコートを組み合わせることによって調製して、3つの型のオリゴヌクレオチドの10mg/mlの溶液を形成した。脱イオン水中でポリ−L−リシン・HBrの10mg/mlの溶液(Bachem、King of Prussia、PAによる、70,000ダルトンまでのポリ−L−リシン・HBr)を調製した。ポリ−L−リシン・HBrを、1:1の容積比で、オリゴヌクレオチド溶液に加えた。その混合物を静かにボルテックスした。12.5%のPVP(ポリビニルピロリドン、40,000ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)および12.5%のPEG(ポリエチレングリコール、3,350ダルトン、Spectrum Chemicals、Gardena、CA)をpH5.5で1Mの酢酸ナトリウム(Spectrum、Gardena、CA)中に含む25%のポリマー溶液を、以下のように2:1の容積比で加えた:0.75mlのAS−オリゴヌクレオチド、0.75mlのポリ−L−リシン・HBr、3.0mlのPEG/PVP、および4.50mlの全容積。
【0036】
そのバッチを70℃で30分間インキュベートし、そして次いで23℃に冷却した。冷却時、その溶液は濁り、そしてマイクロスフィアが形成された。次いで懸濁液を遠心し、そして過剰なPEG/PVPを除去した。ペレットを脱イオン水に再懸濁し、続いて遠心および上清を除去することによって、できたペレットを洗浄した。洗浄プロセスを3回繰り返した。水性懸濁液を凍結および凍結乾燥して、オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシンを含むマイクロスフィアの乾燥粉末を形成した。
【0037】
図1aおよびbは、2つの異なる倍率における、1:1のポリ−L−リシン:オリゴヌクレオチド比のマイクロスフィアの、代表的な走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。0.5〜4μmの大きさで、約2.5μmの平均粒子サイズのマイクロスフィアを作成した。図2aは、レーザー光散乱によって明らかになった、本開示によって作成したマイクロスフィアの1つの調製物のサイズ分布を示す。図2bは、光散乱による、マイクロスフィア調製物の表面電荷の決定を示す(ゼータ電位)。図3は、添加を定量するために、および脱処方化(deformulation)後のマイクロスフィアのアンチセンスオリゴヌクレオチド成分の完全性を評価するために使用した逆相(RP)HPLCを示す。マイクロスフィアを、CD86、CD40、CD80オリゴヌクレオチドおよびポリ−L−リシン(PLL;MW30−70kD)を用いて処方した。次いでマイクロスフィアを、ポリ−L−アスパラギン酸(PAA)による、PLLからのDNAオリゴヌクレオチドの競合的置換を用いて脱処方化(deformulate)した。PAAを、260nmで吸収せず、そして260nmにおけるオリゴヌクレオチドの定量に干渉しないポリアミノ酸試薬として選択した。図3のようなRP−HPLCプロファイルにおいて、各ピーク下面積は、マイクロスフィアに添加された各オリゴヌクレオチドの量に比例する。図3に示すように、ピーク高は、各オリゴヌクレオチドのマイクロスフィアへのほぼ等量の添加を示す。オリゴヌクレオチドのマイクロスフィアへの添加を、重量によって約65%から約80%であると計算した。図3はまた、脱処方化(deformulation)後のピークの狭い分布によって示されるように、オリゴヌクレオチドの完全性は、マイクロスフィア処方プロセスによって影響を受けなかったことを示す。
【0038】
実施例2
この実施例において、本開示の予防の局面をカバーする試験の結果を示す。図4に示すように、5〜8週齢におけるNODマウスへのAS−MSPの単回投与は、糖尿病の発症を遅らせる。2グループのNODメスマウス(5〜8週齢)に、本開示のマイクロスフィアに処方されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(AS−MSP)の単回皮下注射をした。各アンチセンスオリゴヌクレオチド(抗CD40、抗CD80、および抗CD86)の1:1:1混合物を50μg含むと考えられる量で、処方を注射した。他のグループのマウスに、スクランブル配列のマイクロスフィア(SCR−MSP)またはPBS媒体(コントロールNOD)を注射した。尾静脈穿刺によって週1回血中グルコースを測定した。2回続けて>280〜300mg/dLを測定した後、糖尿病を確認した。図4は、2つの独立に処置したコホートの累積生存率を示す。
【0039】
図5は、5〜8週齢におけるNODマウスへのAS−MSPの複数回投与が、糖尿病の発症を予防することを示す。NODメスマウス(5〜8週齢)に、本開示によるマイクロスフィアに処方されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを8回連続で単回皮下注射した(週1回)。注射(各アンチセンスオリゴヌクレオチドの1:1:1混合物またはスクランブルオリゴヌクレオチドを50μg)を、週1回8週間与え、そして13週で終了した。他のグループのマウスに、スクランブル配列のマイクロスフィア(SCR−MSP)またはPBS媒体(コントロールNOD)を注射した。図5は、処置した動物の累積生存率を示す。
【0040】
図6aおよび6bは、処置を受けず、そして従って自然に自己免疫病に進行したマウス(糖尿病NODマウス)由来の、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色した(H+E;図6a)、またはインスリンに関して染色した(図6b)膵臓組織の切片を示す。図6cおよび6dは、SCR−MSP処方で処置したマウス由来の膵臓組織の切片を示す(注射を特異的AS−MSPで処置したグループと平行して開始した)。これらの切片も、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図6c)またはインスリンに関して染色した(図6d)。SCR−MSPマウスは全て糖尿病を発症した。
【0041】
図7aおよび7bは、8週齢より若い時に処置し(予防モデル)、そして本開示のアンチセンスマイクロスフィアで処置したマウス由来の、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図7a)またはインスリンに関して染色した(図7b)、膵臓組織の切片を示す。
【0042】
図8に示すように、AS−MSP処置NODマウス由来のT細胞は、Foxp3+CD25+推定Treg細胞の普及率の増加を示す。図8Aは、FACS分析に使用したゲーティングを示す。図8Bは、脾臓から濃縮されたFoxp3+CD25+T細胞のパーセンテージを示し、そして図8CはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節由来、またはスクランブル配列マイクロスフィア(SCR−MSP)で処置した、またはPBS媒体で処置した動物由来のパーセンテージを示す。
【0043】
図9は、ASMSP処置非糖尿病NODマウスのT細胞は、同種脾臓細胞と同時培養した場合に増殖することを示す。ASMSPで処置した非糖尿病NODマウスのT細胞を、濃縮カラムから得て、そしてBalb/c、C57BL6または同系非糖尿病NODマウス(10週齢)由来のγ線照射した脾臓細胞と同時培養した。Cyquant試薬を用いて、4日後に増殖を測定した。Splは、同種照射脾臓細胞を指す。
【0044】
図10に示すように、ASMSP処置非糖尿病NODマウス由来のT細胞は、インビトロにおいて同系照射脾臓細胞および卵白アルブミンの存在下で増殖する。T細胞を脾臓から、またはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節から濃縮した。
【0045】
図11は、ASMSP処置非糖尿病NODマウス由来のT細胞は、インビトロで、同系膵島溶解物の存在下で、増殖の抑制を示すことを示す。図4で記載したように、T細胞を脾臓から、またはASMSP非糖尿病コホートからランダムに選択したASMSP処置非糖尿病マウスのプールしたリンパ節から濃縮した。照射NOD脾臓細胞(非糖尿病10週齢NODマウス由来)を、抗原提示細胞として使用し、そして平行培養にNIT−1溶解物(1μg/ウェル)(またはPBS媒体)を適用した。
【0046】
最終的な糖尿病抑制治療のヒト試験への転換に関する主な懸念は、その治療アプローチの抗原特異性(そして従って細胞特異性)、およびその治療が、全体的および非特異的な抑制を与えるかどうかである。これらの問題に取り組むために、図4に示したコホートから、ランダムに選択した非糖尿病マウスを、安楽死させて、同種抗原、ノミナル抗原(完全な卵白アルブミンの形態で)、およびNOD由来インスリノーマ細胞系統NIT−1の細胞溶解物の形態の同系ベータ細胞由来抗原に対する、脾臓およびリンパ節T細胞の増殖を確認した。インスリンおよびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)は、機構的および目的論的な関与を有する、見込みのある候補自己抗原であるが、自己抗原を惹起する性質はまだ明らかでない。それにも関わらず、それはベータ細胞にあると考えるのが妥当である。従って、NODインスリノーマから得られるNIT−1細胞系統を、AS−MSPで処置した非糖尿病NODマウス由来のT細胞の同時培養において、ベータ細胞抗原の供給源として使用して、抗原特異的反応低下の可能性を決定した。これらの研究から、ノミナルおよび同種抗原に対するT細胞増殖は維持されるが、NIT−1細胞溶解物との同時培養においてT細胞の増殖低下があることが観察された。
【0047】
さらに、同時培養上清におけるサイトカインプロファイルを確認して、発明者らは、NIT−1溶解物の存在下でさえ、AS−MSP処置した、非糖尿病NODマウス由来のT細胞によるTNFα産生の有意な減少を観察した。IFNγの産生は、AS−MSP処置マウス由来のT細胞の同時培養においてわずかに減少したが、NIT−1溶解物存在下におけるPBS処置マウス由来のT細胞との同時培養と統計学的に区別できなかった。最後に、そのアッセイは、上清中にIL−4、IL−10、またはTGFβの存在を検出できなかった。
【0048】
実施例3
アンチセンスオリゴヌクレオチドマイクロスフィアの、早期発症NODマウスにおける糖尿病の症状を逆転させる能力も試験した。これらの実験の予定表を図13Aに示す。早期発症したNODマウスの血中グルコースレベルを試験し、そして400mg/dLより高い血中グルコースレベルを有する動物を同定することによって選択した。選択した動物に、インスリンペレットを与えて、血中グルコースレベルを300mg/dLより低くまで正常化した。インスリンをやめ、そしてマイクロスフィアの一連の非経口注射を開始した。6匹の動物に、CD40、CD80、およびCD86アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを週2回注射した。さらに10匹の動物に、CD40、CD80、および/またはCD86に向けられていないスクランブル配列を有するオリゴヌクレオチドの混合物を含むマイクロスフィアを注射した。両方のグループの動物の各注射は、100μlの注射溶液中、マイクロスフィア中に50μgのオリゴヌクレオチドを含んでいた。スクランブルグループの動物のうち2匹を、肉体的状態が悪いため、実験の前および終わりに安楽死させた。注射プロトコールの開始後、血中グルコースレベルを1週間に2回サンプリングした。動物は実験の間、非絶食であった。結果を図12にプロットし、ここでインジケーター(1)は、インスリンペレットの設置を示し、そしてインジケーター(2)は、インスリンペレットの除去および週2回のMSP注射の開始を示す。図12で報告された最高血中グルコース値は、700mg/dLであり、それは使用した計器の最高の示度であり、700mg/dLのデータポイントは、700mg/dLまたはそれより高い血中グルコース示度を示すことが理解されることに注意する。CD40、CD80、CD86アンチセンスオリゴヌクレオチドの混合物を含むマイクロスフィア(ASMSP1からASMSP6)を投与されたグループの全ての動物は、スクランブルオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィア(SCRMSP1からSCRMSP10)を投与された動物より、有意に低いグルコースレベルを示した。さらに、このASMSPグループの6匹の動物のうち4匹は、典型的には糖尿病発症の閾値指標と考えられる、400mg/dLより低い血中グルコースレベルを示した。
【0049】
図13Aにおいて、実験の予定表を示す。各グループの、平均非空腹時血中グルコース(図13B)および平均空腹時血中グルコースレベルをプロットした(図13C)(+/−SEM)。図13Aに示すように、何匹かのマウスにおいて、ASMSP投与をやめた。図13Bおよび13Cにおいて示すように、新規発症糖尿病NODメスマウスに対する複数回のAS−MSP投与は、未処置の動物(コントロール)、PBSで処置した動物、またはスクランブルオリゴヌクレオチドマイクロスフィア(SCR−MSP)で処置した動物と比較して、血中グルコースレベルを改善し、そしてAS−MSP中止後でさえ安定な空腹時正常血糖を生じる。
【0050】
図7cおよび7dは、糖尿病の発症後にアンチセンス処方で処置し、そして疾患の逆転を示したNODマウス由来の膵臓組織の切片を示す。切片を、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色(H+E;図7c)またはインスリンに関して染色(図7d)した。
【0051】
3つの異なるAS−オリゴヌクレオチドを、PROMAXXマイクロスフィアに組み込み得、そしてそのようなマイクロスフィアを、免疫調節性樹状細胞の誘導によって、新規発症自己免疫性糖尿病を予防および/または逆転するための組成物として使用し得る。実際、その組成物の単回注射は、疾患の発症を遅らせ、そして新規発症糖尿病マウスへの反復投与は、高血糖を正常化し、疾患の逆転を示唆した。これらの研究において、血中グルコースが300mg/dL以下に低下するまで、インスリンを毎日投与した。次いでインスリンを中止し、そこでAS−MSPを皮下投与した。代表的な投与レジメにおいて、動物に体重1kgあたり2mgのAS−MSPを1週間に2回、3〜4週間投与した。非糖尿病マウスをモニターした。
【0052】
図14A〜14Cにおいて、NODマウスに対するAS−MSPの投与は、当該マウスの血中グルコースレベルを正常レベルに戻し、そしてその当該血中グルコースレベルの正常化は、延長した期間維持されることを示す。図14Bおよび図14Cにおいて示すように、AS−MSPを、インスリン投与を中止した後0〜30日の間に投与した。血中グルコースレベルは、インスリン中止後15日までに正常に戻り、そしてモニター期間の終わり(55日)まで正常レベルで維持された。
【0053】
自己免疫性糖尿病の治療的逆転の影響を示す図を、図15に示す。PROMAXX治療薬を、図15に示す新規発症「ハネムーン期」に投与した場合、機能的なままである10〜20%のベータ細胞の保存が予測され、それによって糖尿病のコントロールを導き、そして患者のインスリンに対する依存を抑制する。
【0054】
記載された本開示の実施態様は、本開示の原理の適用のいくつかの説明であることが理解される。本開示の真の意図および範囲から離れることなく、当業者によって多くの修飾がなされ得る。本明細書中で記載される様々な特徴を、あらゆる組み合わせで使用され得、そして本明細書中で明確に概略を述べた正確な組み合わせに制限されるものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において1型糖尿病を逆転させるためのプロセスであって、マイクロスフィア組成物を投与することを含み、ここで該組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、プロセス。
【請求項3】
哺乳動物の膵臓のベータ細胞を自己免疫性の破壊から保護するプロセスであって、前記哺乳動物中にマイクロスフィア組成物を注射する工程を含み、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む、プロセス。
【請求項4】
哺乳動物において膵臓のT細胞による炎症および/または膵臓ベータ細胞死を減少させる方法であって、該哺乳動物にマイクロスフィア組成物を投与することを含み、ここで該組成物中の該マイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含み、ここで該組成物を、該哺乳動物において1型糖尿病の症状を寛解させるために有効な量で投与する、方法。
【請求項5】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が1型糖尿病の臨床的発症の後に投与される、方法。
【請求項6】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が1型糖尿病の臨床的発症の前に投与される、方法。
【請求項7】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物の投与が、投与前の前記哺乳動物の血中グルコースレベルと比較して、該哺乳動物における血中グルコースレベルを正常化する、方法。
【請求項8】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、ここで該方法が、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、ここで前記組成物の投与が、前記哺乳動物のベータ細胞集団を再生する方法。
【請求項10】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が、注射可能な形態で投与される方法。
【請求項11】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が、インスリンと組み合わせて投与される方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記インスリンが、前記マイクロスフィア組成物の投与の前に、同時に、または後に投与される方法。
【請求項13】
新規発症または前臨床自己免疫性糖尿病を有する被験体において、残存ベータ細胞塊を保存する方法であって、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を該被験体に投与することを含み、ここで該組成物の投与が、前記哺乳動物のベータ細胞塊を少なくとも約15%まで維持する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ここで該方法が、前記組成物の反復投与を含み、そして該反復投与が、前記哺乳動物の前記ベータ細胞塊を増加させる、方法。
【請求項15】
請求項1、請求項3、請求項4、または請求項13に記載の方法であって、前記マイクロスフィアの70% w/w 程度がオリゴヌクレオチドである方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記マイクロスフィア組成物中のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比が1:1:1である方法。
【請求項1】
哺乳動物において1型糖尿病を逆転させるためのプロセスであって、マイクロスフィア組成物を投与することを含み、ここで該組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、プロセス。
【請求項3】
哺乳動物の膵臓のベータ細胞を自己免疫性の破壊から保護するプロセスであって、前記哺乳動物中にマイクロスフィア組成物を注射する工程を含み、ここで組成物中のマイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびそれらの組み合わせから成る群より選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含む、プロセス。
【請求項4】
哺乳動物において膵臓のT細胞による炎症および/または膵臓ベータ細胞死を減少させる方法であって、該哺乳動物にマイクロスフィア組成物を投与することを含み、ここで該組成物中の該マイクロスフィアは、CD40、CD80およびCD86一次転写物およびその組み合わせから成るグループから選択される一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含み、ここで該組成物を、該哺乳動物において1型糖尿病の症状を寛解させるために有効な量で投与する、方法。
【請求項5】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が1型糖尿病の臨床的発症の後に投与される、方法。
【請求項6】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が1型糖尿病の臨床的発症の前に投与される、方法。
【請求項7】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物の投与が、投与前の前記哺乳動物の血中グルコースレベルと比較して、該哺乳動物における血中グルコースレベルを正常化する、方法。
【請求項8】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、ここで該方法が、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、ここで前記組成物の投与が、前記哺乳動物のベータ細胞集団を再生する方法。
【請求項10】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が、注射可能な形態で投与される方法。
【請求項11】
請求項1、3、または4に記載の方法であって、前記組成物が、インスリンと組み合わせて投与される方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記インスリンが、前記マイクロスフィア組成物の投与の前に、同時に、または後に投与される方法。
【請求項13】
新規発症または前臨床自己免疫性糖尿病を有する被験体において、残存ベータ細胞塊を保存する方法であって、CD40、CD80、およびCD86一次転写物のアンチセンスであり、そしてそれらに結合するよう標的化されたオリゴヌクレオチドを含むマイクロスフィアを含む組成物を該被験体に投与することを含み、ここで該組成物の投与が、前記哺乳動物のベータ細胞塊を少なくとも約15%まで維持する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、ここで該方法が、前記組成物の反復投与を含み、そして該反復投与が、前記哺乳動物の前記ベータ細胞塊を増加させる、方法。
【請求項15】
請求項1、請求項3、請求項4、または請求項13に記載の方法であって、前記マイクロスフィアの70% w/w 程度がオリゴヌクレオチドである方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記マイクロスフィア組成物中のアンチセンスCD40:アンチセンスCD80:アンチセンスCD86の比が1:1:1である方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【公表番号】特表2010−500289(P2010−500289A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523082(P2009−523082)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/075292
【国際公開番号】WO2008/019346
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/075292
【国際公開番号】WO2008/019346
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【Fターム(参考)】
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