説明

新規蛍光性化合物

【課題】簡便、迅速、および直接的にヒストンデアセチラーゼの酵素活性を検出する方法を提供する。
【解決手段】一般式(I)および一般式(II)で表される化合物またはその塩。


式(I)および式(II)中、X1、X2およびX3は、互いに独立して、−O−、−NH−または−NR−であり(Rは、低級アルキル基である)、R1、R3およびR4は、互いに独立して、−Hまたは低級アルキル基であり、Y1およびY2は、互いに独立して、蛍光性基であり、Z,ZおよびZは、互いに独立して、−CHまたは、式(E)で表される基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規蛍光性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヒストンに存在するアセチル化リジンの脱アセチル化を触媒する酵素である。この脱アセチル化を通じて、HDACは、遺伝子転写の制御に深く関わっていることが知られている。また、HDACは、ヒストンに加え、転写因子や細胞骨格形成に関わるタンパク質など多くの非ヒストンタンパク質の脱アセチル化反応を触媒している。そのため、HDACの役割および意義を解明することは、生命科学分野において極めて重要視されている。さらに、HDAC活性の異常は、癌、生活習慣病、中枢神経疾患などの疾病の原因となることが知られている。そのため、HDAC活性を制御する医薬(阻害剤および活性化剤)の開発は、医学および創薬の分野で大きな注目を集めている。従って、HDAC活性を迅速に評価する方法の開発は、医薬品開発の観点から非常に重要である。
【0003】
HDACの活性を検出する方法としては、(1)放射性同位体を利用する方法、(2)免疫学的検出法、(3)クロマトグラフィーおよび質量分析計による分析化学的方法、(4)蛍光ペプチド基質を用いる方法(例えば、特許文献1)が挙げられる。(1)の方法では、HDACの基質に放射性同位体標識したアセチル基を導入し、放射線を検出することにより、その基質の脱アセチル化反応の進行を検出する。この方法には、放射性同位体を用いるため、放射線管理区域内における実験に限られ、様々な取り扱い上の制約を受けるという問題点がある。また、この方法には、放射線被爆の危険性がある、という問題点がある。(2)の方法では、基質中のアセチル化リジンまたは脱アセチル化リジンを抗体によって検出する。この方法には、1次抗体との反応、二次抗体との反応、洗浄操作、ブロッキング操作など、検出までに数ステップが必要であり、迅速には活性を検出できず、さらに操作も複雑であるという問題点がある。(3)の方法は、基質と、基質の脱アセチル化反応により生じた生成物との、クロマグラフィーにおける溶出時間の変化を検出し、質量分析により、変化したピークの質量変化を検出する。この方法には、分析に時間がかかり、ハイスループットスクリーニングに用いることができないという問題点がある。
【0004】
(4)の方法は、基質ペプチドに蛍光色素を結合させたプローブを利用して蛍光検出する方法である。具体的には、プローブとHDACとを反応させ(脱アセチル化)、その後、脱アセチル化されたプローブをプロテアーゼにより処理すると、蛍光強度が上昇する。この方法では、この蛍光強度の変化を検出する。(4)の方法として、例えば、アルギニン−ヒスチジン−アセチル化されたリジン−蛍光性基という蛍光ペプチド基質を用いた方法が知られている(例えば、非特許文献1)。この方法では、蛍光ペプチド基質は、蛍光性ではない。この蛍光ペプチド基質にHDACを作用させると、リジンの側鎖が脱アセチル化される。しかしまだ、この脱アセチル化生成物は蛍光性ではない。この脱アセチル化生成物をトリプシンで処理すると、ペプチド鎖と蛍光性基との結合が切断され、蛍光性基が遊離する。この蛍光性基由来の化合物が、蛍光を発するため、この蛍光性基由来の化合物の蛍光強度を測定すれば、HDACの活性を検出することができるのである。この方法では、蛍光検出するためにプロテアーゼ処理が必要であり、その結果、直接、酵素活性を検出することができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−221399号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Malik, Rら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 2010年、391巻、p. 739-743.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、簡便、迅速、および直接的にHDACの酵素活性を検出する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般式(IA)で表される化合物もしくは一般式(IB)で表される化合物またはその塩である。
【化1】

【0009】
前記式(IA)および式(IB)中、
1、X2およびX3は、互いに独立して、−O−、−NH−または−NR−であり、
Rは、低級アルキル基であり、
1、R3およびR4は、互いに独立して、−Hまたは低級アルキル基であり、
1およびY2は、互いに独立して、蛍光性基であり、
1、Z2およびZ3は、互いに独立して、−CH3または、式(E)で表される基であり、
n1、n2およびn3は、互いに独立して、2〜4の整数である。
【0010】
【化2】

【0011】
前記式(E)中、
2は、−Hまたは低級アルキル基であり、
mは、2または3である。
【0012】
本発明はまた、前記化合物またはその塩を含むヒストンデアセチラーゼを検出するためのプローブである。
【0013】
本発明は、また、検体と、前記プローブとを反応させ、生じる蛍光強度を測定する工程を含む、ヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法である。
【0014】
本発明はまた、被験組織切片または被験細胞と、請求項3に記載のプローブとを反応させ、生じる蛍光強度を測定する工程を含むヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法である。
【0015】
本発明は、また、前記化合物またはその塩を含むヒストンデアセチラーゼ活性を検出するためのキットである。本発明のキットは、さらに、キットの取り扱い説明書を含むのが好ましい。
【0016】
本発明は、また、検体と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む、前記検体のヒストンデアセチラーゼ阻害活性を測定する方法である。
【0017】
本発明はまた、被験化合物と、請求項3に記載のプローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む、前記検体のヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングする方法である。
【0018】
本発明は、また、前記化合物またはその塩と、ヒストンデアセチラーゼとを含むヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングするためのキットである。本発明のキットは、さらに、キットの取り扱い説明書を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化合物は、それ自体では蛍光を示さない。一方、この化合物がヒストンデアセチラーゼと反応して生成した生成物は、蛍光を示す。従って、本発明の化合物を用いて、すなわち、この生成物の蛍光を測定することにより、直接的にHDACの酵素活性を検出することができる。また、この方法は、簡便および迅速である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、DACPとSirt1との反応をモニターした蛍光スペクトルのチャートを示す。図1(b)は、DACPのみをモニターした蛍光スペクトルのチャートを示す。
【図2】図2(a)は、DACPとSirt1との反応をモニターしたHPLCチャートを示す。図2(b)は、DACPのみをモニターしたHPLCチャートを示す。図2(c)は、7−ヒドロキシクマリンのみのHPLCチャートを示す。
【図3】図3は、Sirt1阻害剤の阻害効果をDACPにより検出する蛍光スペクトルのチャートを示す。
【図4】図4は、を示す。DACPとHDAC6との反応をモニターした蛍光スペクトルのチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一般式(IA)で表される化合物もしくは一般式(IB)で表される化合物は、前記のように、
【0022】
【化3】

【0023】
前記式(IA)および式(IB)中、
1、X2およびX3は、互いに独立して、−O−、−NH−または−NR−であり、
Rは、低級アルキル基であり、
1、R3およびR4は、互いに独立して、−Hまたは低級アルキル基であり、
1およびY2は、互いに独立して、蛍光性基であり、
1、Z2およびZ3は、互いに独立して、−CH3または、式(E)で表される基であり、
n1、n2およびn3は、互いに独立して、2〜4の整数である。
【0024】
【化4】

【0025】
前記式(E)中、
2は、−Hまたは低級アルキル基であり、
mは、2または3である。
【0026】
本明細書において、用語「本発明の化合物」は、特に断りが無い限り、「一般式(IA)の化合物もしくは一般式(IB)の化合物」を意味する。本発明の化合物において、用語「蛍光性基」とは、可視光線、紫外線、X線等が照射され、そのエネルギーを吸収することにより電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出する性質を有する基を意味する。例えば、蛍光性基とは、クマリン色素、キサンテン色素、シアニン色素、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタル酸ヒドラジド、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン等から誘導される基が挙げられる。
【0027】
本発明の化合物において、前記Y1が、式(A)、式(B)または式(C)で表される基であり、前記Y2が、式(D)で表される基であるのが好ましい。
【0028】
【化5】

【0029】
前記式(A)中、
11は、−H、−NH2、−OH、−COOH、−CONH2、−CN、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、
12は、−H、−OH、−CF3、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、
13、R14およびR15は、互いに独立して、−H、−NH2、−OH、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子である。
【0030】
前記式(B)中、
31およびR34は、互いに独立して、低級アルコキシ基であり、
32は、−COOH、−OCH2COOH、−COOR321、−OCH2COOR321、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R321は、低級アルキル基であり、
33は、−COOH、−COOR331、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R331は低級アルキル基であり、
35、R36、R37およびR38は、−OHである。
【0031】
前記式(C)中、
41は、−COOH、−OCH2COOH、−COOR411、−OCH2COOR411、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R411は、低級アルキル基であり、
42は、−COOH、−COOR421、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R421は、低級アルキル基であり、
43およびR44は、互いに独立して、−OH、低級アルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0032】
前記式(D)中、
21およびR24は、互いに独立して、−Hまたはハロゲン原子であり、
22およびR23は、互いに独立して、−H、−NH2、−COOH、−CH2NH2またはハロゲン原子であり、
25、R26、R27およびR28は、互いに独立して、−H、−OH、−NO2、低級アルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0033】
本発明の化合物において、低級アルキル基とは、炭素数1〜6のものが挙げられる。具体的には、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、および1−エチル−1−メチルプロピル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基を挙げることができ、好適には炭素数1〜3のものが挙げられる。
【0034】
本発明の化合物において、低級アルコキシ基とは、炭素数1〜6のものが挙げられる。具体的には、低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、1−エチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、1,1−ジメチルブチルオキシ基、2,2−ジメチルブチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、および1−エチル−1−メチルプロピルオキシ基などの直鎖状または分岐状のアルキルオキシ基を挙げることができ、好適には炭素数1〜3のものが挙げられる。
【0035】
本発明の化合物において、アリール基とは、炭素数6〜10のものが挙げられる。具体的には、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0036】
本発明の化合物において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
本発明の化合物としては、Y1が式(A)で表される基であり、Z1が、−CH3である式(IA)の化合物が好ましい。
【0038】
本発明において、式(IA)の化合物の塩は、式(IA)の化合物と、酸または塩基との塩であってもよい。また、本発明において、式(IB)の化合物の塩は、式(IB)の化合物と、酸または塩基との塩であってもよい。そのような塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの無機塩基との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミン塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸塩、及びギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、酒石酸などの有機カルボン酸塩、及びメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸付加塩、及びアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの塩基性又は酸性アミノ酸といった塩基との塩又は酸付加塩が挙げられる。
【0039】
本発明において、式(IA)の化合物および式(IB)の化合物は、溶媒和物の形をとることもありうるが、これも本発明の範囲に含まれる。溶媒和物としては、好ましくは、水和物及びエタノール和物が挙げられる。
【0040】
式(IA)の化合物は、例えば、以下のスキーム1に示す方法により製造することができる、または、式(IA)の化合物は、従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよい。式(IA)の化合物を、X=Oである式(IA−1)の場合と、X=NHまたはNRである式(IA−2)の場合と分けて以下に説明する。
【0041】
【化6】

【0042】
前記式中、X’は、−NH−または−NR−であり、
Rは、低級アルキル基であり、
1は、蛍光性基であり、
1は、−CH3または、式(E)で表される基であり、
1は、−Hまたは低級アルキル基であり、
n1は、2〜4の整数である。
【0043】
式(IIA−1)の化合物と、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DCS)、または式(IIA−2)の化合物と、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)とをそれぞれ反応させ、活性な炭酸エステルである式(IIIA−1)の化合物または活性なカルバミン酸エステルである式(IIIA−2)の化合物を得る。得られた式(IIIA−1)の化合物または式(IIIA−2)の化合物を式(IVA)の化合物と反応させ、式(IA−1)の化合物または式(IA−2)の化合物をそれぞれ得る。式(IIA−1)の化合物、式(IIA−2)の化合物および式(IVA)の化合物は、市販で入手するか、従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよい。
【0044】
式(IB)の化合物は、例えば、以下のスキーム2に示す方法により製造することができる、または、式(IB)の化合物は、従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよい。式(IB)の化合物を、X=Oである式(IB−1)の場合と、X=NHまたはNRである式(IB−2)の場合と分けて以下に説明する。
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
前記式中、X’は、−NH−または−NR−であり、
Rは、低級アルキル基であり、
3およびR4は、互いに独立して、−Hまたは低級アルキル基であり、
2は、蛍光性基であり、
2およびZ3は、互いに独立して、−CH3または、式(E)で表される基であり、
n2およびn3は、互いに独立して、2〜4の整数である。
【0048】
式(IIB−1)の化合物と、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DCS)、および式(IIB−2)の化合物と、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DCS)とをそれぞれ反応させ、活性な炭酸エステルである式(IIIB−1)の化合物および式(IIIB−2)の化合物を得る。得られた式(IIIB−1)の化合物を式(IVB)の化合物とを約1:1の量で反応させ、必要に応じて単離精製した後、式(IIIB−2)の化合物と反応させて、式(IB−1)の化合物を得る。または、式(IIB−3)の化合物と、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、および式(IIB−4)の化合物と、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)とをそれぞれ反応させ、活性なカルバミン酸エステルである式(IIIB−3)の化合物および式(IIIB−4)の化合物を得る。得られた式(IIIB−3)の化合物を式(IVB)の化合物とを約1:1の量で反応させ、必要に応じて単離精製した後、式(IIIB−4)の化合物と反応させて、式(IB−2)の化合物を得る。
【0049】
なお、式(IIB−1)の化合物と式(IVB)の化合物とを約2:1の量で反応させ、式(IIIB−2)の化合物とは反応させない場合、得られる式(IB−1)の化合物において、Z3=Z2、R4=R3、n3=n2、X3=X2の化合物を得ることができる。同様に、式(IIIB−3)の化合物と式(IVB)の化合物とを約2:1の量で反応させ、式(IIIB−4)の化合物とは反応させない場合、得られる式(IB−2)の化合物において、Z3=Z2、R4=R3、n3=n2、X3=X2の化合物を得ることができる。
【0050】
式(IIB−1)の化合物、式(IIB−2)の化合物、式(IIB−3)の化合物、式(IIB−4)の化合物および式(IVB)の化合物は、市販で入手するか、従来技術における公知文献を参考に自家製造してもよい。
【0051】
本発明は、式(IA)の化合物が、それ自体では蛍光を示さない一方、この化合物がヒストンデアセチラーゼと反応した生成物は蛍光を示す。このような性質を利用し、本発明の化合物を用いて、直接的にHDACの酵素活性を検出することができる。例えば、Z1が−CH3の化合物(スキーム3中、式(I−3)で表す)について、以下のスキーム3を用いて説明する。
【0052】
【化9】

【0053】
スキーム3中、R1、X1、Y1およびn1は、式(IA)におけるものと同じ意味を有する。HDACは、ヒストンデアセチラーゼを意味する。
【0054】
前記のように、式(I−3)の化合物はそれ自体では蛍光を示さない。式(I−3)の化合物は、アミノ基にアセチル基が結合しており、この部分がHDACの基質になる。そうすると、式(I−3)の化合物がHDACにより脱アセチル化され、式(V)に示す化合物に変換される。この式(V)化合物のアミノ基は、分子内のカルボニル炭素を攻撃し、環化して式(VI)の化合物を生じる。そして残った部分は式(VII)の化合物であり、Y1が蛍光性基であるこの化合物は、蛍光を生じる。従って、式(I−3)の化合物を用いて、式(VII)の化合物の蛍光強度を測定することにより、HDACの酵素活性を検出することができる。
【0055】
1が、式(E)で表される化合物(スキーム4中、式(I−4)で表す)についても、式(I−3)の化合物と同様である(スキーム4参照)。
【0056】
【化10】

【0057】
スキーム4中、R1、R2、X1、Y1、mおよびn1は、式(IA)におけるものと同じ意味を有する。HDACは、ヒストンデアセチラーゼを意味する。
【0058】
前記のように、式(I−4)の化合物はそれ自体では蛍光を示さない。式(I−4)の化合物は、アミノ基にアセチル基が結合しており、この部分がHDACの基質になる。そうすると、式(I−4)の化合物がHDACにより脱アセチル化され、式(VIII)に示す化合物に変換される。この式(VIII)化合物のアミノ基は、分子内のカルボニル炭素を攻撃し、環化して式(IX)の化合物を生じる。そして残った部分は式(V)の化合物である。この式(V)の化合物のアミノ基は、さらに分子内のカルボニル炭素を攻撃し、環化して式(VI)の化合物を生じる。そして残った部分は式(X)の化合物であり、Y1が蛍光性基であるこの化合物は、蛍光を生じる。従って、式(I−4)の化合物を用いて、式(X)の化合物の蛍光強度を測定することにより、HDACの酵素活性を検出することができる。
【0059】
式(IB)の化合物についても、それ自体では蛍光を示さない一方、この化合物がヒストンデアセチラーゼと反応した生成物は蛍光を示す。このような性質を利用し、本発明の化合物を用いて、直接的にHDACの酵素活性を検出することができる。例えば、Z2およびZ3が−CH3の化合物(スキーム5中、式(I−5)で表す)について、以下のスキーム5を用いて説明する。
【0060】
【化11】

【0061】
スキーム5中、R3、R4、X2、X3、n2、n3、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27およびR28は、式(IB)におけるものと同じ意味を有する。HDACは、ヒストンデアセチラーゼを意味する。
【0062】
前記のように、式(I−5)の化合物はそれ自体では蛍光を示さない。式(I−5)の化合物は、アミノ基にアセチル基が結合しており、この部分がHDACの基質になる。そうすると、式(I−5)の化合物がHDACにより脱アセチル化され、分子内環化して分解し、最終的に式(XI)の化合物を生じる。この化合物(XI)は、蛍光を生じる。従って、式(I−5)の化合物を用いて、式(XI)の化合物の蛍光強度を測定することにより、HDACの酵素活性を検出することができる。
【0063】
前記のように、本発明のヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法は、検体と、前記プローブとを反応させ、生じる蛍光強度を測定する工程を含む方法である。前記検体としては、例えば、細胞溶解液等が挙げられる。
【0064】
本発明のヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法によれば、放射性同位体を用いる必要はない。また、この方法によれば、蛍光を測定するのみの簡便な操作により、ヒストンデアセチラーゼ活性を検出することができる。また、この方法によれば、蛍光を測定するのみであるので、ハイスループットスクリーニングに用いることもできる。
【0065】
また、前記のように、本発明のヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法は、被験組織切片または被験細胞と、前記プローブとを反応させ、生じる蛍光強度を測定する工程を含む方法である。前記被験組織切片は、ヒトまたは動物の組織をスライスすることにより調製することができる。被験組織切片または被験細胞と、前記プローブとを反応させるには、被験組織切片または被験細胞に、前記プローブの溶液または分散液を塗布または散布し、一定時間放置することにより行うことができる。生じる蛍光強度を測定する工程は、そのような処理を行った被験組織切片または被験細胞の蛍光強度を測定することにより行うことができる。
【0066】
また、前記のように、本発明のヒストンデアセチラーゼ阻害活性を測定する方法は、検体と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む。前記比較対照としての蛍光強度としては、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度、他の検体と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度等であってもよい。
【0067】
前記第1蛍光強度と前記第2蛍光強度とを比較し、前記第1蛍光強度が低下した場合、前記検体にはヒストンデアセチラーゼ阻害活性が認められる。検体と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程は、複数種類の濃度の前記検体について行ってもよい。その場合、例えば濃度が増加する順に第1蛍光強度その1、第1蛍光強度その2、第1蛍光強度その3等、呼ぶとする。濃度が増加するにつれ第1蛍光強度が低下した場合、前記検体には、濃度依存的にヒストンデアセチラーゼ阻害活性が認められる。
【0068】
また、前記のように、本発明の検体のヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングする方法は、被験化合物と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む。前記比較対照としての蛍光強度としては、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度、他の検体と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度等であってもよい。前記第1蛍光強度と前記第2蛍光強度とを比較し、前記第1蛍光強度が低下した場合、前記検体にはヒストンデアセチラーゼ阻害活性が認められる。前記スクリーニングする方法は、例えば96孔のプレート中のウェルに、被験化合物(ウエルごとに種類、濃度等が相違する)と、前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼとを入れ、一定時間反応させた後、プレートの蛍光強度を蛍光リーダーで読み取る。ウェルの1つに前記プローブと、ヒストンデアセチラーゼのみを入れて反応させた場合、これがコントロールとなる。このコントロールの生じる蛍光強度より弱い蛍光強度を示すウェルを特定することにより、ヒストンアセチラーゼ阻害活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。また、蛍光リーダーでプレートの蛍光強度を読み取った際、最も蛍光強度が弱いウェルを特定することにより、ヒストンアセチラーゼ阻害活性を有する化合物をスクリーニングすることができる。
【0069】
また、前記のように、本発明のヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングするためのキットは、また、前記化合物またはその塩と、ヒストンデアセチラーゼとを含む。
【0070】
本発明におけるヒストンデアセチラーゼの例としては、18種類のヒストンデアセチラーゼが挙げられる。分類と共に、これらのヒストンデアセチラーゼを以下の表に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
[実施例]
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
DMSO:ジメチルスルホキシド
PIPES:ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)
Ar:アルゴン
【0073】
[化合物および機器]
化合物は、入手できる最も高いグレードのものであり、東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社、およびシグマ−アルドリッチジャパン株式会社から購入して、さらなる精製を行わずに用いた。酵素(HDAC)は、BPSバイオサイエンスおよびエンゾライフサイエンスから購入した。蛍光原アッセイキットは、BPSバイオサイエンスから得た。サレミド(Salermide)はカイマン・ケミカル社より提供を受け、阻害力学実験で用いた。
【0074】
NMRスペクトルは、1H用には400MHzで、13NMR用には100.4MHzで、テトラメチルシランを内部標準として用い、JEOL JNM−AL400装置で測定した。質量スペクトル(ESI)は、Waters LCT-Premier XE(日本ウォーターズ株式会社)で測定した。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、JEOL JMS−700で測定した。HPLC分離は、C18カラム(ODS3、GLサイエンス社)を用いて行った。サンプルは、溶媒A(0.1%ギ酸を含む水)に対する溶媒B(0.1%ギ酸を含むアセトニトリル)の割合を増加させて、溶出させた。蛍光スペクトルは、日立分光蛍光光度計F−4500を用いて測定した。光電子増倍管電圧は700Vであった。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、BW−300(富士シリシア化学株式会社)を用いて行った。全てのプローブは蛍光測定前にDMSO(生化学用グレード、和光純薬工業株式会社)に溶解させた。
【0075】
[DACP(式2の化合物)の合成]
式2の化合物を、下記スキーム6に従い製造した。
【0076】
【化12】

【0077】
3−アミノプロパン−1−オール(65.3mmol,5ml)と、酢酸メチル(65.3mmol,3.72ml)とを、溶媒無しで混合し、12時間還流した。生じたメタノールを蒸留により除去した後、得られた生成物は、沸点が138℃であった。残渣を、ジクロロメタンおよびメタノール(9:1)の混合物で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、N−(3−ヒドロキシプロピル)アセトアミド(化合物1)を得た(5g,収率65%)。
【0078】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ 1.78 (m,2H), 1.98 (s,3H), 3.4 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.62 (q, J = 6.4 Hz, 2H), 6.36 (s,H)
MS(ESI+) m/z [M+H]+についての計算値:118.1480、実測値118.1557。
【0079】
N−(3−ヒドロキシプロピル)アセトアミド(400mg,3.4mmol)およびN,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC、3.4mmol,870mg)を、無水アセトニトリル中に連続して溶解させ、そこへ、トリエチルアミン(6.8mmol,941μL)を添加した。その混合物を室温でAr雰囲気下で1時間攪拌し、次いで、7−ヒドロキシクマリンをその混合物へ添加した。トリエチルアミン(3.4mmol,470μL)をその混合物へ更に添加し、室温で2時間攪拌した。反応混合物を、酢酸エチルと水の混合物(酢酸エチル:水=1:1)で洗浄した。有機相をろ過し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、残渣を酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、化合物2(以下、DACPと呼ぶ)を得た(200mg,収率19%)。
【0080】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ 2.05 (m, 5H), 3.41 (q, J = 6.0 Hz, 2H), 4.18 (t, J = 4.4 Hz, 2H) , 5.71 (s, H,), 6.42 (d, J = 4.4 Hz, 2H), 7.13 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 7.26(d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.48(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.68(d, J = 10 Hz, 2H);
13 C NMR(100 MHz, CDCl3)δ163.9, 153.4, 147.2, 146.1, 145.5, 135.8, 121.8, 110.7, 109.8, 108.8, 102.5, 60.8, 28.8, 22.9, 15.9 ;
HRMS (EI+) m/z 計算値 305.0899、実測値 305.0894
【0081】
<蛍光スペクトル分析>
蛍光スペクトルは、340nm、励起および放射についてスリット幅5.0nm、30℃の温度における励起を記録した。DACP(20μM)をHDAC(487nMのSirt1)と共に、137mMのNaCl、2.7mMのKClおよび1mMのMgCl2を含む25mMのPIPES緩衝液(pH6.5)中で、インキュベートした。蛍光スペクトルの測定は、定期的に行った。得られた蛍光スペクトルのチャートを図1(a)に示す。また、酵素(Sirt1)を添加しない以外は、前記と同様にして得られた蛍光スペクトルのチャートを図1(b)に示す。
【0082】
Sirt1(酵素)とDACPを反応させて得られた蛍光スペクトルのチャートにおいては、経時的に蛍光強度の上昇が観測された(図1(a)参照)。一方、DACP単独で得られた蛍光スペクトルにおいては、蛍光強度は低く、蛍光強度変化は確認されなかった(図1(b)参照)。また、DACPの蛍光量子収率は0.043であり、酵素反応産物と考えられる7−ヒドロキシクマリンの量子収率(0.60)に比べ低いことが確認できた。以上のことから、DACPは、Sirt1と反応することで蛍光強度を上昇させることが確認できた。
【0083】
<HPLC分析>
Sirt1とDACPの反応の進行は、320nmの吸収を用いてHPLCでモニターした。DACP(20μM)を、137mMのNaCl、2.7mMのKClおよび1mMのMgCl2を含む25mMのPIPES緩衝液(pH6.5)中において、Sirt1(487nM)存在下又は不在下に、5分間、30分、2時間、4時間および8時間、インキュベートした。HPLC分析は、インキュベーション後に行った。Sirt1とDACPの反応をモニターしたHPLCチャートを図2(a)に、DACP単独をモニターしたHPLCチャートを図2(b)に、7−ヒドロキシクマリンのHPLCチャートを図2(c)に示す。
【0084】
Sirt1とDACPの反応をモニターしたHPLCチャートにおいて、溶出時間12分付近に示されるピークが時間と共に減少し、溶出時間11分付近のピーク強度が増加した(図2(a)参照)。この溶出時間12分付近のピークは、DACPのピークであり、溶出時間11分は、7−ヒドロキシクマリンと同じである(図2(c)参照)。この7−ヒドロキシクマリンは、DACPがヒストンデアセチラーゼと反応した後、生じる蛍光物質である、一方、酵素を添加せずに、DACP単独をモニターしたHPLCチャートにおいては、溶出時間11分付近のピークの変化はほとんど見られなかった(図2(b)参照)。以上の結果から、この条件下においては、DACP単独は安定であり、Sirt1との反応により、DACPは分解したことを確認した。
【0085】
<蛍光量子収量>
DACPをDMSO中に溶解し、2mMのストック溶液を得た。これらの溶液を、適切な緩衝液を用いて、所望の最終濃度にまで希釈した。プローブの蛍光量子収量を、25mMのPIPES緩衝液(pH6.5)中で、比較の参照として蛍光標準、キニンビスルフェートを用いて、50mMのH2SO4水溶液(Φ=0.55)中で測定した。その結果、DACPの蛍光量子収量は、0.043であった。
【0086】
<蛍光分析による阻害実験>
DACP(5μM)、Sirt1(487nM)および阻害剤であるサレミド(0、5、20、50μM)を、137mMのNaCl、2.7mMのKClおよび1mMのMgCl2を含む25mMのPIPES緩衝液(pH6.5)に溶解させて、反応混合物を調製した。蛍光強度を、励起および放射のための2.5nmスリット幅を用いて2時間にわたって、16秒ごとに測定した。得られたチャートを図3に示す。
【0087】
Sirt1の阻害剤であるサレミドを添加したとき、その阻害効果をDACPにより観測することができるかを検討した。阻害剤濃度を上昇させるにつれ、蛍光強度の上昇が抑制されることが明らかとなった。この結果から、DACPを用いることにより、Sirt1阻害剤の酵素反応の阻害効果を調べることが可能であることが確認できた。
【0088】
<クラス2HDACとの反応性>
DACPをクラス2HDACであるHDAC6と反応させたところ、蛍光強度の上昇が確認された。その結果を図4に示す。この図4に示すように、本実験条件下において、DACPは選択的にHDACと反応することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のHDAC活性を検出する方法は、HDAC阻害剤スクリーニング等に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IA)で表される化合物もしくは一般式(IB)で表される化合物またはその塩。
【化13】

前記式(IA)中、
1、X2およびX3は、互いに独立して、−O−、−NH−または−NR−であり、
Rは、低級アルキル基であり、
1、R3およびR4は、互いに独立して、−Hまたは低級アルキル基であり、
1およびY2は、互いに独立して、蛍光性基であり、
1、Z2およびZ3は、互いに独立して、−CH3または、式(E)で表される基であり、
n1、n2およびn3は、互いに独立して、2〜4の整数である。
【化14】

前記式(E)中、
2は、−Hまたは低級アルキル基であり、
mは、2または3である。
【請求項2】
前記Y1が、式(A)、式(B)または式(C)で表される基であり、前記Y2が、式(D)で表される基である請求項1に記載の化合物。
【化15】

前記式(A)中、
11は、−H、−NH2、−OH、−COOH、−CONH2、−CN、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、
12は、−H、−OH、−CF3、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、
13、R14およびR15は、互いに独立して、−H、−NH2、−OH、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリール基またはハロゲン原子であり、
前記式(B)中、
31およびR34は、互いに独立して、低級アルコキシ基であり、
32は、−COOH、−OCH2COOH、−COOR321、−OCH2COOR321、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R321は、低級アルキル基であり、
33は、−COOH、−COOR331、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R331は低級アルキル基であり、
35、R36、R37およびR38は、−OHであり、
前記式(C)中、
41は、−COOH、−OCH2COOH、−COOR411、−OCH2COOR411、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R411は、低級アルキル基であり、
42は、−COOH、−COOR421、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R421は、低級アルキル基であり、
43およびR44は、互いに独立して、−OH、低級アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
前記式(D)中、
21およびR24は、互いに独立して、−Hまたはハロゲン原子であり、
22およびR23は、互いに独立して、−H、−NH2、−COOH、−CH2NH2またはハロゲン原子であり、
25、R26、R27およびR28は、互いに独立して、−H、−OH、−NO2、低級アルコキシ基またはハロゲン原子である。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物またはその塩を含むヒストンデアセチラーゼ活性を検出するためのプローブ。
【請求項4】
検体と、請求項3に記載のプローブとを反応させ、
生じる蛍光強度を測定する工程を含む
ヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法。
【請求項5】
被験組織切片または被験細胞と、請求項3に記載のプローブとを反応させ、
生じる蛍光強度を測定する工程を含む
ヒストンデアセチラーゼ活性を検出する方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の化合物またはその塩を含むヒストンデアセチラーゼ活性を検出するためのキット。
【請求項7】
被験化合物と、請求項3に記載のプローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、
比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む、
前記検体のヒストンデアセチラーゼ阻害活性を測定する方法。
【請求項8】
被験化合物と、請求項3に記載のプローブと、ヒストンデアセチラーゼとを反応させ、生じる蛍光強度(第1蛍光強度)を測定する工程と、
比較対照としての蛍光強度(第2蛍光強度)と前記第1蛍光強度とを比較する工程とを含む、
前記検体のヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングする方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の化合物またはその塩と、ヒストンデアセチラーゼとを含むヒストンデアセチラーゼ阻害活性をスクリーニングするためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−126765(P2012−126765A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276991(P2010−276991)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】