新規間葉系幹細胞
【課題】簡便に細胞を採取することができ、かつ効果的な分化能を示す新規間葉系幹細胞を提供する。さらには、前記新規間葉系幹細胞の選別方法を提供する。
【解決手段】抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞から選別された新規間葉系幹細胞による。新規間葉系幹細胞は、抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することにより選別される。従来の方法に比べて、容易に細胞を採取することができ、提供者にとって負担が少ない。また、本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞は、骨髄由来の細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【解決手段】抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞から選別された新規間葉系幹細胞による。新規間葉系幹細胞は、抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することにより選別される。従来の方法に比べて、容易に細胞を採取することができ、提供者にとって負担が少ない。また、本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞は、骨髄由来の細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療に応用可能な新規間葉系幹細胞に関する。さらには、前記新規間葉系幹細胞の選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯槽膿漏、歯周病や抜歯後の歯槽骨の吸収等により、歯槽骨が失われる場合があり、歯槽骨再生治療として、骨移植や特殊なタンパク質、コラーゲン膜などの骨補填財等を用いる方法が試みられている。また、腸骨骨髄由来並びに歯槽骨骨髄由来間葉系幹細胞を用いた歯槽骨再生療法なども試みられている。再生医療の治療や研究目的の細胞源としては、間葉系幹細胞(MSC: Mesenchymal stem cell)が広く用いられている。間葉系幹細胞は、増殖能が高く、軟骨・筋肉・肝細胞・神経細胞・心筋細胞・血管内皮細胞等、種々の細胞に分化することが知られている。間葉系幹細胞は、主に腸骨骨髄由来又は歯槽骨骨髄由来間葉系幹細胞から取得される。しかしながら、骨髄採取を安全に行うには、術者のある程度のトレーニングを必要とする。また、局所麻酔下で骨髄採取を行っても、患者は強い痛みを感じることが多く、骨髄穿刺による感染の危険性もある。
【0003】
また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、拒絶反応や倫理的問題を回避できる再生医療に利用可能な細胞として期待が高まっている。しかし、遺伝子導入に起因する細胞の癌化等、安全性についての問題など、解決しなければならない課題が多く残されている。
【0004】
そこで、近年口腔組織から間葉系幹細胞を採取する方法が試みられている。例えば、ヒト歯乳頭由来の間葉系幹細胞を用いる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、特許文献1の方法は、歯胚を摘出するために、顎骨削除など外科的侵襲を伴う大がかりな手術を行う必要がある。例えば歯髄から幹細胞を採取することについては、非特許文献1(S.Gronthos et al. (2000); PNAS)、非特許文献2(M.Miura et al. (2003); PNAS)等にも報告されている。さらに、歯髄から間葉系幹細胞を分離する方法について、特許文献2に開示がある。特許文献2では、歯髄から間葉系幹細胞を分離するのに有用な細胞表面抗原を特異的に検出することにより、夾雑細胞のコンタミネーションを防ぎかつ短時間で分離することが可能な方法を見出している。しかしながら上記方法は歯髄を採取し、さらに間葉系幹細胞を分離したのちに、分離した細胞を培養して幹細胞を取得する方法であり、効率的とはいい難い。そこで、簡便に細胞を採取することができ、かつ効果的に分化能を示す幹細胞の選別方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−238875号公報
【特許文献2】特開2010−252778号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】PNAS, 97: 13625-30, 2000
【非特許文献2】PNAS, 100: 5807-12, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便に細胞を採取することができ、かつ効果的に分化能を示す新規間葉系幹細胞を提供することを課題とする。さらには、前記新規間葉系幹細胞の選別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、抜歯窩の肉芽組織から容易に間葉系幹細胞を採取することが可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下よりなる。
1.抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞。
2.抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である前項1に記載の新規間葉系幹細胞。
3.抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することを特徴とする、新規間葉系幹細胞の選別方法。
4.抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である前項3に記載の新規間葉系幹細胞の選別方法。
5.前項3又は4に記載の選別方法により選別された新規間葉系幹細胞。
6.前項1、2又は5に記載の新規間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物。
7.再生医療用組成物が、骨形成用再生医療用組成物である前項6に記載の再生医療用組成物。
8.再生医療用組成物が、脂肪細胞形成用再生医療用組成物である前項6に記載の再生医療用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来細胞は、従来の腸骨骨髄又は歯槽骨骨髄由来細胞に比べて、容易に取得することができ、提供者にとって痛みや感染の問題から解放され、負担が少ない。また、本発明の肉芽組織由来細胞は、骨髄由来細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【0011】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と同様の細胞表面抗原発現パターンを示す。また、本発明の新規間葉系幹細胞は、in vitro及びin vivoで骨芽細胞の形成が確認され、in vitroにおいて脂肪細胞への分化も確認された。このことより、骨髄由来間葉系幹細胞と比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】イヌの抜歯窩の治癒過程を組織学的に評価するためのサンプル収集スケジュールを示す図である。(参考例1)
【図2】イヌの抜歯後3日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図3】イヌの抜歯後7日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図4】イヌの抜歯後10日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図5】イヌの抜歯後14日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図6】イヌの抜歯後2ヶ月目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図7】イヌの抜歯窩より採取した肉芽組織サンプル収集スケジュールを示す図である。(実施例1)
【図8】各収集したサンプルのコロニー形成能を示す写真図である。(実施例1)
【図9】各収集したサンプルが形成したコロニー数を示す図である。(実施例1)
【図10】各幹細胞のテロメラーゼ活性測定結果を示す図である。(実験例1)
【図11】各幹細胞のアルカリホスファターゼ活性結果を示す図である。(実験例2)
【図12】幹細胞(DSSC 3days)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図13】幹細胞(DSSC 3days again)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図14】幹細胞(BMSC Maxilla)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図15】幹細胞(BMSC LB)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図16】各幹細胞の脂肪細胞への分化を示す図である。(実験例5)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「抜歯窩」とは、抜歯後に見られる傷口をいう。抜歯窩においては、中の肉芽組織が徐々に新生骨に置き換わり、約1ヶ月程度で完全に骨に置き換わる。
【0014】
本発明の新規間葉系幹細胞は、抜歯後10日目までに形成された肉芽組織由来が好ましく、抜歯後6日までに形成された肉芽組織由来がより好ましく、最も好ましくは抜歯後3日までに形成された肉芽組織由来である。また、採取する肉芽組織は、一度肉芽組織を採取したのちに形成された肉芽組織であってもよい。
【0015】
本明細書において、「抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞」を、DSSC (Dental Socket Stem Cells) という場合もある。本発明の新規間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)への分化能を有する。特に好適には、骨細胞や脂肪細胞への分化能を有し、骨組織や脂肪細胞への再生医療への応用が可能である。
【0016】
本発明の新規間葉系幹細胞は、抜歯窩より採取した肉芽組織由来であればよく、調製方法は限定されないが、例えば以下の方法により調製することができる。抜歯窩より採取した肉芽組織をメスやナイフ等により細切し、前記細切した組織を例えば塩化アンモニウムやプロテアーゼなどの細胞分散液で処理して細胞を分散させた後、単個細胞浮遊液を調製する。調製した単個細胞浮遊液から、細胞コロニー形成単位 (CFU-F: colony forming unit-fibroblast)アッセイ法により形成されたコロニーに含まれる細胞を収集することにより、本発明の新規間葉系幹細胞を選別し、調製することができる。CFU-Fアッセイは、ヒト骨髄などから間葉系幹細胞を定量的に測定するために確立された方法で、骨髄やその他の組織に含まれる間葉系幹細胞を評価するのに理想的な方法である。アッセイは、自体公知の方法により行うことができ、市販のアッセイ用キットや試薬を用いてもよいし、必要に応じて、適宜調整したものを用いてもよい。CFU-Fアッセイ用培地に上記調製した単個細胞浮遊液を加え、培養器内で、例えば7〜21日、好ましくは7〜14日程度培養することができる。培養後、形成された細胞コロニーに含まれる細胞を採取することにより、本発明の間葉系幹細胞を選別し、調製することができる。また、コロニー数を計測する場合は、自体公知の方法により計測することができる。コロニー数の計測は、例えば顕微鏡下で計測してもよいし、染色してもよいし、PCRなどの細胞遺伝学的解析により行ってもよい。上記の他、分散させた単個細胞浮遊液について、細胞表面マーカーなどを指標として幹細胞を選別し、調製してもよいし、その他の方法で幹細胞を選別してもよい。
【0017】
本発明の間葉系幹細胞の培養方法は、特に限定されないが、自体公知の方法により行うことができる。具体的には、初代培養用培地に細胞を播種し、培養することができる。使用する培養液は、例えばウシ胎児血清(FBS)を含有した培地を使用することができる。培地は初代培養可能な培地であればよく、特に限定されないが、例えばMEM培地を使用することができる。培養液は、適宜交換することができる。培養液の交換の際に細胞の増殖を顕微鏡観察し、コンフルエントな状態になったらトリプシン-EDTA溶液(0.05% トリプシン0.53mM EDTA)などの細胞剥離液を用いて細胞を回収し、適当な回転数及び時間遠心処理し、上清を取り除いた後、回収した細胞に培養用培地を加えて再懸濁させることができる。例えば約1×105個の細胞を培養用培地に懸濁し、培養皿又は培養フラスコに播種し、37℃、5% CO2に設定したインキュベーター内にて継代培養することができる。この継代培養にて細胞数を増加させることができる。培地及び培養条件は上記に限定されるものではなく、適宜好ましい培養方法を選択することができる。
【0018】
本発明の新規間葉系幹細胞は、テロメア活性を有する。テロメアと細胞分裂回数に関係があることから、テロメア活性により細胞分裂能を確認でき、本発明の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と同等以上の細胞分裂能を示す。また、本発明の新規間葉系幹細胞の細胞表面マーカーは、BMSCと同様の細胞表面抗原発現パターンを示す。具体的には、CD29、CD44、CD90及びCD271からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面抗原を発現する。また、CD34及びCD45については、BMSCと同程度に、低発現値を示す。
【0019】
本発明の新規間葉系幹細胞は、当該間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物とすることができる。本発明の再生医療用組成物は、当該間葉系幹細胞そのものであってもよいし、当該間葉系幹細胞に培地やその他添加物を含むものであってもよい。再生医療には、選別した間葉系幹細胞自体を用いてもよいが、当該選別した間葉系幹細胞は、細胞数が少ないので、上述の方法などにより初代培養、更には継代培養し、間葉系幹細胞を増殖させたものを再生医療用組成物とすることもできる。継代培養は、通常2〜6代、好ましくは2〜4代行うことができる。
【0020】
培養して得られた新規間葉系幹細胞は、引き続いて分化誘導剤を加えて分化誘導を行うこともできる。培養間葉系幹細胞に種々分化誘導因子を添加し、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞など各種細胞へ分化誘導させ、分化した細胞を各組織の修復部に移植して、組織を再生する事も可能である。
【0021】
骨細胞への分化誘導剤として、例えばデキサメサゾン、β-グリセロホスフエイト、ビタミンCから選択される1種又は複数種を添加することができる。また、軟骨細胞への分化誘導剤として、例えばデキサメサゾン、ビタミンC、ITS(インシュリントランスフェリンセレニウム)、リノレン酸 、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸 Na、 L-プロリン、TGF-β3、BMP-2(骨形成タンパク)から選択される1種又は複数種を添加することができる。また、脂肪細胞への分化誘導剤として、デキサメサゾン、メチルイソブチルキサンチン、インシュリンから選択される1種又は複数種を添加することができる。本発明の再生医療用組成物は、分化誘導させた細胞を含むものであってもよい。
【0022】
本発明の新規間葉系幹細胞を用いて、再生医療による種々疾患の治療が可能である。例えば、骨・軟骨再生には、例えば1×106〜1×108個/mlの比較的高濃度に調製した本発明の間葉系幹細胞と、例えば骨補填材であるβ-リン酸三カルシウムと複合体形成したものを本発明の再生医療用組成物として骨欠損又は軟骨欠損等に直接移植することで、当該再生医療用組成物が移植された部位で骨組織又は軟骨組織を再生させる事が可能である。また、前記高濃度に調製した本発明の間葉系幹細胞を例えばセラミックス、金属材料、生体吸収性又は非吸収性ポリマーなどの足場材に播種し、適当な時間、例えば1〜24時間培養して足場材に高密度で接着せしめた後、骨欠損又は軟骨欠損等に直接移植することにより、間葉系幹細胞が移植された部位で骨組織又は軟骨組織を再生させる事が可能である。
【0023】
本発明の1つの実施形態として、培養した本発明の間葉系幹細胞を、必要時のために凍結保存することができる。分離培養した本発明の間葉系幹細胞、又はそれを初代培養及び継代培養した細胞を、細胞保存液を用いて凍結保存することができる。細胞の継代操作の際に継代培養に使用する細胞懸濁液を適当な回転数及び時間、例えば900rpm、3分間遠心処理し、上清を除去し、残留した細胞を回収し、例えばDMSO(dimethylsulfoxide)等の細胞保存剤が含まれる細胞保存液にて再懸濁し-80℃以下の冷凍庫にて凍結保存させることができる。そして、再生医療のために本発明の間葉系幹細胞が必要になった場合は、凍結保存していた間葉系幹細胞を急速解凍して細胞培養用培地に懸濁し、インキュベーター内で培養し、この培養により間葉系幹細胞を増殖させることができる。
【0024】
本発明の再生医療用組成物は、培養後の間葉系幹細胞を含むものであってもよいし、凍結保存された若しくは解凍後の間葉系幹細胞を含むものであってもよい。本発明の再生医療用組成物は、骨形成用再生医療用組成物、又は脂肪細胞形成用医療用組成物として使用することができる。
【0025】
本発明の間葉系幹細胞を再生医療等に使用する場合、当該間葉系幹細胞の提供者と受容者との関係は、免疫学的な拒絶反応の問題が克服されるのであれば特に限定されない。特に好適には、HLA(ヒト白血球抗原/組織適合抗原)型と血液型などの免疫学的な型が適合しうることが好ましいが、免疫型に関する問題は、今後の開発にゆだねることができる。
【0026】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞は、骨髄由来の細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能であることを示している。抜歯窩より採取した肉芽組織から骨髄由来間葉系幹細胞と比べ遜色ない幹細胞を効率的に単離することができたのは、本発明において初めてなされたものである。効率的に採取できた理由として、骨髄腔と解剖学的に接近した抜歯創の特性から、骨髄由来間葉系幹細胞が再生現場に遊走され、抜歯窩における成長因子等により増殖し、再生のために働く幹細胞プールとして機能している可能性が考えられる。また、本発明の新規間葉系幹細胞の分化能を確認したところ、骨髄由来のものと比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。さらに興味深いことに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取できることが確認された。上記により、本発明の新規間葉系幹細胞は、分化細胞に誘導することができ、機能的にも優れ、再生医療において非常に有用なツールとなりうる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の新規間葉系幹細胞を選別するに至った経緯を参考例に示し、本発明の新規間葉系幹細胞について、実施例及び実験例を示して具体的に説明する。本発明は、これら実施例等に示す内容に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0028】
(参考例1)イヌ抜歯窩の治癒過程
イヌの抜歯を行い、抜歯後3日目、7日目、10日目、14日目、2ヶ月目の抜歯窩周辺の組織をHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色することにより、抜歯窩の治癒過程の組織学的評価を行った。図1〜6に示すように、抜歯後3日目より骨芽細胞が観察され、その後新生骨梁が形成されることを観察した。
【0029】
(実施例1)抜歯窩より採取した肉芽組織由来間葉系幹細胞の調製
以下、本実施例及び各実験例で使用する細胞について、肉芽組織由来のものを「DSSC: Dental Socket Stem Cells」といい、対照として、骨髄由来のものを「BMSC: Bone marrow stromal cell」という。イヌの抜歯窩肉芽組織由来の細胞を以下のa)〜c)に示し、対照として、イヌの上顎骨骨髄及び長管骨骨髄由来の細胞を以下のd)〜e)に示した(図7参照)。
【0030】
a)抜歯後3日目の抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 3days)
b)ステップa)の後、3日目の、a)と同じ抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 3days again)
c)抜歯後10日目の抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 10days)
d)上顎骨(maxilla)由来骨髄から採取した細胞(BMSC maxilla)
e)長管骨(long bone)由来細胞から採取した細胞(BMSC LB)
【0031】
採取したイヌ抜歯窩肉芽組織をメスで細切し、 3 mg/mlのコラゲナーゼタイプ I (Worthington Biochemicals Corp., Freehold, NJ) 及び 4 mg/mlのディスパーゼ (Roche Diagnostic/Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, IN) で、37℃で40分間インキュベートした。インキュベートした組織から単一細胞を得るために、70μmのストレイナー (Falcon, BD Labware, Franklin Lakes, NJ)を通した。対照の細胞についても同手法により処理した。
【0032】
得られた単一細胞約1×105個を10 cm培養皿で12日間培養し、細胞のコロニー形成を確認した。培養用培地には、15% ウシ胎児血清(FBS)、2 mM L-グルタミン及び抗生物質(100 U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン)を含むαMEM培地(alpha-Modification of Eagle's Medium, GIBCO/Invitrogen, Carlsbad, CA) を用いた。形成されたコロニーにより得られた細胞を、本発明の間葉系幹細胞として以下使用する。
【0033】
上記各細胞について、培養12日目のコロニー形成能を図8に示した。また、形成されたコロニー数を図9に示した。その結果、DSSC 3daysでコロニー形成能が最も高く、DSSC 3days again及びDSSC 10daysで、各BMSCと同程度のコロニー形成能が確認された。本実施例において、形成されたコロニーに含まれる細胞を間葉系幹細胞といい、上記a)〜e)のサンプルから取得した各間葉系幹細胞についても、以降の実験例において各々、DSSC 3days、DSSC 3days again、DSSC 10days、BMSC maxilla、BMSC LBという。
【0034】
(実験例1)各間葉系幹細胞のテロメラーゼ活性
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、細胞分裂能の指標の一つとして、テロメラーゼ活性を測定した。テロメラーゼ活性は、市販のキット(TeloExpress Quantitative Telomerase Detection Kit, Express Biotech International, Thurmount, USA)を用い、リアルタイムRT-PCRにて定量した。その結果、図10に示すように、DSSC 3daysは他のBMSCと比べ同等以上のテロメア活性を有することが確認された。
【0035】
(実験例2)各間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、骨芽細胞分化誘導前の細胞と、骨芽細胞誘導培地で3日間培養した細胞について、骨芽細胞分化マーカーであるALPの発現量を、GAPDHを標準として定量した。各細胞がコンフルエントになった状態で、以下の骨芽細胞誘導培地に交換して培養し、3日後に培養上清をサンプルとして回収した。
【0036】
骨芽細胞誘導用培地として、15% FBS、10-8M リン酸デキサメタゾンナトリウム、1.8mM KH2PO4、抗生物質(100 U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン)、0.1mM リン酸L-アスコルビン酸、 2mM グルタミンを含むαMEM培地(Invitrogen)を用いた。
【0037】
ALP及びGAPDHの各遺伝子の発現量は、RNA抽出キット(RNeasy(R) kit, Qiagen)を用いて、上記培養した細胞からtotal RNAを抽出し、cDNA合成キット(iScriptTM cDNA Synthesis Kit, BIORAD)を用いて逆転写して得たcDNAについて、RT-PCRキット(iQTM SYBR(R) Green Supermix, BIORAD)を用いてリアルタイムRT-PCR法にて定量した。RT-PCRは、配列表の配列番号1〜4に示す塩基配列からなるプライマーを用いて行った。
ALP センスプライマー: AGATGTGGAGTATGAGATGGA(配列番号1)
ALP アンチセンスプライマー: CGTAGTGAGAGTGCTTGTG(配列番号2)
GAPDH センスプライマー: GCTGAGTATGTTGTGGAGTC(配列番号3)
GAPDH アンチセンスプライマー: AGAAGGAGCAGAGATGATGA(配列番号4)
【0038】
上記の結果、図11に示すように、骨芽細胞誘導培地で3日間培養することで、すべての細胞においてALPの発現量が上昇することが確認され、本発明の各間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化されたことが確認された。
【0039】
(実験例3)各間葉系幹細胞の細胞表面マーカー
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、細胞表面マーカータンパク質の解析をフローサイトメトリー法により行った。細胞表面各マーカーに対する各モノクローナル抗体を用いたゲート設定法にて解析を行った。それぞれの細胞をタンパク質分解酵素及びコラーゲン分解酵素を含む細胞剥離用溶液(Accutase(R))を用い培養皿から剥がし、抗CD34(MA1-81639,Thermo)、抗CD45 (MA1-80304)、抗CD29(555443, BD Pharmigen)、抗CD44(555478, BD Pharmigen)、抗CD90(559869, BD Pharmigen)、抗CD271(130-091-917, Miltenyi Biotec)の各抗体存在下で4℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、1% FBSを含むPBSバッファーで洗浄し、フローサイトメーター(MACSQuantTM Analyzer, Miltenyi Biotec)を用いて解析を行った。
【0040】
上記の結果を表1に示した。その結果、DSSC 3days又はDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBの細胞表面マーカーと同様の傾向を示し、分化能を有する幹細胞として機能しうることが示唆された。
【0041】
【表1】
【0042】
(実験例4)SCIDマウスによる骨形成能の確認
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBの異所性骨形成能を動物モデルを用いて評価した。
2〜3×106個の各細胞と40mgの骨補填材であるβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)(OSferion、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)を37℃で一時間半混和後、1200rpmで一分間遠心し、上清を除去し、各細胞とβ-TCPの各複合体を作製した。その後、作製した各複合体を、SCID (severe combined immunodeficiency disease)マウスの背皮下に移植した。8週後にサンプルを回収し、常法に従い脱灰パラフィン切片を作製した。切片をHE染色にて染色し、光学顕微鏡下で観察した結果、図12〜15に示すように、DSSC 3days及びDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBと同様に骨芽細胞への分化が認められた。
【0043】
(実験例5)培養による脂肪細胞形成能の確認
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBを培養皿に播種し、脂肪細胞誘導培地に交換し、1週間に2度の培地交換を行い、28日間培養した。脂肪細胞誘導培地として、市販のイヌ脂肪細胞分化培地(Canine Adipocyte Differentiation Medium; CELL Applications,INC)を用いた。脂肪誘導培地で培養した細胞をオイルレッド 0染色した結果、図16に示すように、DSSC 3days及びDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBと同様に脂肪細胞に誘導されたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来細胞は、従来の腸骨骨髄又は歯槽骨骨髄由来細胞に比べて、容易に取得することができ、提供者にとって痛みや感染の問題から解放され、負担が少ない。また、本発明の肉芽組織由来細胞は、骨髄由来細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【0045】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と同様の細胞表面抗原発現パターンを示した。また、本発明の新規間葉系幹細胞は、in vitro及びin vivoで骨芽細胞の形成が確認され、in vitroにおいて脂肪細胞への分化も確認された。このことより、骨髄由来間葉系幹細胞と比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。以上により、本発明の新規間葉系幹細胞は、容易に採取することができ、多分化能を有し、機能的にも優れ、再生医療において非常に有用なツールとなりうる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療に応用可能な新規間葉系幹細胞に関する。さらには、前記新規間葉系幹細胞の選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯槽膿漏、歯周病や抜歯後の歯槽骨の吸収等により、歯槽骨が失われる場合があり、歯槽骨再生治療として、骨移植や特殊なタンパク質、コラーゲン膜などの骨補填財等を用いる方法が試みられている。また、腸骨骨髄由来並びに歯槽骨骨髄由来間葉系幹細胞を用いた歯槽骨再生療法なども試みられている。再生医療の治療や研究目的の細胞源としては、間葉系幹細胞(MSC: Mesenchymal stem cell)が広く用いられている。間葉系幹細胞は、増殖能が高く、軟骨・筋肉・肝細胞・神経細胞・心筋細胞・血管内皮細胞等、種々の細胞に分化することが知られている。間葉系幹細胞は、主に腸骨骨髄由来又は歯槽骨骨髄由来間葉系幹細胞から取得される。しかしながら、骨髄採取を安全に行うには、術者のある程度のトレーニングを必要とする。また、局所麻酔下で骨髄採取を行っても、患者は強い痛みを感じることが多く、骨髄穿刺による感染の危険性もある。
【0003】
また、人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、拒絶反応や倫理的問題を回避できる再生医療に利用可能な細胞として期待が高まっている。しかし、遺伝子導入に起因する細胞の癌化等、安全性についての問題など、解決しなければならない課題が多く残されている。
【0004】
そこで、近年口腔組織から間葉系幹細胞を採取する方法が試みられている。例えば、ヒト歯乳頭由来の間葉系幹細胞を用いる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、特許文献1の方法は、歯胚を摘出するために、顎骨削除など外科的侵襲を伴う大がかりな手術を行う必要がある。例えば歯髄から幹細胞を採取することについては、非特許文献1(S.Gronthos et al. (2000); PNAS)、非特許文献2(M.Miura et al. (2003); PNAS)等にも報告されている。さらに、歯髄から間葉系幹細胞を分離する方法について、特許文献2に開示がある。特許文献2では、歯髄から間葉系幹細胞を分離するのに有用な細胞表面抗原を特異的に検出することにより、夾雑細胞のコンタミネーションを防ぎかつ短時間で分離することが可能な方法を見出している。しかしながら上記方法は歯髄を採取し、さらに間葉系幹細胞を分離したのちに、分離した細胞を培養して幹細胞を取得する方法であり、効率的とはいい難い。そこで、簡便に細胞を採取することができ、かつ効果的に分化能を示す幹細胞の選別方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−238875号公報
【特許文献2】特開2010−252778号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】PNAS, 97: 13625-30, 2000
【非特許文献2】PNAS, 100: 5807-12, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便に細胞を採取することができ、かつ効果的に分化能を示す新規間葉系幹細胞を提供することを課題とする。さらには、前記新規間葉系幹細胞の選別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、抜歯窩の肉芽組織から容易に間葉系幹細胞を採取することが可能なことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下よりなる。
1.抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞。
2.抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である前項1に記載の新規間葉系幹細胞。
3.抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することを特徴とする、新規間葉系幹細胞の選別方法。
4.抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である前項3に記載の新規間葉系幹細胞の選別方法。
5.前項3又は4に記載の選別方法により選別された新規間葉系幹細胞。
6.前項1、2又は5に記載の新規間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物。
7.再生医療用組成物が、骨形成用再生医療用組成物である前項6に記載の再生医療用組成物。
8.再生医療用組成物が、脂肪細胞形成用再生医療用組成物である前項6に記載の再生医療用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来細胞は、従来の腸骨骨髄又は歯槽骨骨髄由来細胞に比べて、容易に取得することができ、提供者にとって痛みや感染の問題から解放され、負担が少ない。また、本発明の肉芽組織由来細胞は、骨髄由来細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【0011】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と同様の細胞表面抗原発現パターンを示す。また、本発明の新規間葉系幹細胞は、in vitro及びin vivoで骨芽細胞の形成が確認され、in vitroにおいて脂肪細胞への分化も確認された。このことより、骨髄由来間葉系幹細胞と比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】イヌの抜歯窩の治癒過程を組織学的に評価するためのサンプル収集スケジュールを示す図である。(参考例1)
【図2】イヌの抜歯後3日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図3】イヌの抜歯後7日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図4】イヌの抜歯後10日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図5】イヌの抜歯後14日目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図6】イヌの抜歯後2ヶ月目の組織学的評価結果を示す写真図である。(参考例1)
【図7】イヌの抜歯窩より採取した肉芽組織サンプル収集スケジュールを示す図である。(実施例1)
【図8】各収集したサンプルのコロニー形成能を示す写真図である。(実施例1)
【図9】各収集したサンプルが形成したコロニー数を示す図である。(実施例1)
【図10】各幹細胞のテロメラーゼ活性測定結果を示す図である。(実験例1)
【図11】各幹細胞のアルカリホスファターゼ活性結果を示す図である。(実験例2)
【図12】幹細胞(DSSC 3days)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図13】幹細胞(DSSC 3days again)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図14】幹細胞(BMSC Maxilla)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図15】幹細胞(BMSC LB)をSCIDマウスに移植後8週目の骨形成能を示す図である。(実験例4)
【図16】各幹細胞の脂肪細胞への分化を示す図である。(実験例5)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「抜歯窩」とは、抜歯後に見られる傷口をいう。抜歯窩においては、中の肉芽組織が徐々に新生骨に置き換わり、約1ヶ月程度で完全に骨に置き換わる。
【0014】
本発明の新規間葉系幹細胞は、抜歯後10日目までに形成された肉芽組織由来が好ましく、抜歯後6日までに形成された肉芽組織由来がより好ましく、最も好ましくは抜歯後3日までに形成された肉芽組織由来である。また、採取する肉芽組織は、一度肉芽組織を採取したのちに形成された肉芽組織であってもよい。
【0015】
本明細書において、「抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞」を、DSSC (Dental Socket Stem Cells) という場合もある。本発明の新規間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)への分化能を有する。特に好適には、骨細胞や脂肪細胞への分化能を有し、骨組織や脂肪細胞への再生医療への応用が可能である。
【0016】
本発明の新規間葉系幹細胞は、抜歯窩より採取した肉芽組織由来であればよく、調製方法は限定されないが、例えば以下の方法により調製することができる。抜歯窩より採取した肉芽組織をメスやナイフ等により細切し、前記細切した組織を例えば塩化アンモニウムやプロテアーゼなどの細胞分散液で処理して細胞を分散させた後、単個細胞浮遊液を調製する。調製した単個細胞浮遊液から、細胞コロニー形成単位 (CFU-F: colony forming unit-fibroblast)アッセイ法により形成されたコロニーに含まれる細胞を収集することにより、本発明の新規間葉系幹細胞を選別し、調製することができる。CFU-Fアッセイは、ヒト骨髄などから間葉系幹細胞を定量的に測定するために確立された方法で、骨髄やその他の組織に含まれる間葉系幹細胞を評価するのに理想的な方法である。アッセイは、自体公知の方法により行うことができ、市販のアッセイ用キットや試薬を用いてもよいし、必要に応じて、適宜調整したものを用いてもよい。CFU-Fアッセイ用培地に上記調製した単個細胞浮遊液を加え、培養器内で、例えば7〜21日、好ましくは7〜14日程度培養することができる。培養後、形成された細胞コロニーに含まれる細胞を採取することにより、本発明の間葉系幹細胞を選別し、調製することができる。また、コロニー数を計測する場合は、自体公知の方法により計測することができる。コロニー数の計測は、例えば顕微鏡下で計測してもよいし、染色してもよいし、PCRなどの細胞遺伝学的解析により行ってもよい。上記の他、分散させた単個細胞浮遊液について、細胞表面マーカーなどを指標として幹細胞を選別し、調製してもよいし、その他の方法で幹細胞を選別してもよい。
【0017】
本発明の間葉系幹細胞の培養方法は、特に限定されないが、自体公知の方法により行うことができる。具体的には、初代培養用培地に細胞を播種し、培養することができる。使用する培養液は、例えばウシ胎児血清(FBS)を含有した培地を使用することができる。培地は初代培養可能な培地であればよく、特に限定されないが、例えばMEM培地を使用することができる。培養液は、適宜交換することができる。培養液の交換の際に細胞の増殖を顕微鏡観察し、コンフルエントな状態になったらトリプシン-EDTA溶液(0.05% トリプシン0.53mM EDTA)などの細胞剥離液を用いて細胞を回収し、適当な回転数及び時間遠心処理し、上清を取り除いた後、回収した細胞に培養用培地を加えて再懸濁させることができる。例えば約1×105個の細胞を培養用培地に懸濁し、培養皿又は培養フラスコに播種し、37℃、5% CO2に設定したインキュベーター内にて継代培養することができる。この継代培養にて細胞数を増加させることができる。培地及び培養条件は上記に限定されるものではなく、適宜好ましい培養方法を選択することができる。
【0018】
本発明の新規間葉系幹細胞は、テロメア活性を有する。テロメアと細胞分裂回数に関係があることから、テロメア活性により細胞分裂能を確認でき、本発明の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)と同等以上の細胞分裂能を示す。また、本発明の新規間葉系幹細胞の細胞表面マーカーは、BMSCと同様の細胞表面抗原発現パターンを示す。具体的には、CD29、CD44、CD90及びCD271からなる群から選ばれる少なくとも1種の表面抗原を発現する。また、CD34及びCD45については、BMSCと同程度に、低発現値を示す。
【0019】
本発明の新規間葉系幹細胞は、当該間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物とすることができる。本発明の再生医療用組成物は、当該間葉系幹細胞そのものであってもよいし、当該間葉系幹細胞に培地やその他添加物を含むものであってもよい。再生医療には、選別した間葉系幹細胞自体を用いてもよいが、当該選別した間葉系幹細胞は、細胞数が少ないので、上述の方法などにより初代培養、更には継代培養し、間葉系幹細胞を増殖させたものを再生医療用組成物とすることもできる。継代培養は、通常2〜6代、好ましくは2〜4代行うことができる。
【0020】
培養して得られた新規間葉系幹細胞は、引き続いて分化誘導剤を加えて分化誘導を行うこともできる。培養間葉系幹細胞に種々分化誘導因子を添加し、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞など各種細胞へ分化誘導させ、分化した細胞を各組織の修復部に移植して、組織を再生する事も可能である。
【0021】
骨細胞への分化誘導剤として、例えばデキサメサゾン、β-グリセロホスフエイト、ビタミンCから選択される1種又は複数種を添加することができる。また、軟骨細胞への分化誘導剤として、例えばデキサメサゾン、ビタミンC、ITS(インシュリントランスフェリンセレニウム)、リノレン酸 、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸 Na、 L-プロリン、TGF-β3、BMP-2(骨形成タンパク)から選択される1種又は複数種を添加することができる。また、脂肪細胞への分化誘導剤として、デキサメサゾン、メチルイソブチルキサンチン、インシュリンから選択される1種又は複数種を添加することができる。本発明の再生医療用組成物は、分化誘導させた細胞を含むものであってもよい。
【0022】
本発明の新規間葉系幹細胞を用いて、再生医療による種々疾患の治療が可能である。例えば、骨・軟骨再生には、例えば1×106〜1×108個/mlの比較的高濃度に調製した本発明の間葉系幹細胞と、例えば骨補填材であるβ-リン酸三カルシウムと複合体形成したものを本発明の再生医療用組成物として骨欠損又は軟骨欠損等に直接移植することで、当該再生医療用組成物が移植された部位で骨組織又は軟骨組織を再生させる事が可能である。また、前記高濃度に調製した本発明の間葉系幹細胞を例えばセラミックス、金属材料、生体吸収性又は非吸収性ポリマーなどの足場材に播種し、適当な時間、例えば1〜24時間培養して足場材に高密度で接着せしめた後、骨欠損又は軟骨欠損等に直接移植することにより、間葉系幹細胞が移植された部位で骨組織又は軟骨組織を再生させる事が可能である。
【0023】
本発明の1つの実施形態として、培養した本発明の間葉系幹細胞を、必要時のために凍結保存することができる。分離培養した本発明の間葉系幹細胞、又はそれを初代培養及び継代培養した細胞を、細胞保存液を用いて凍結保存することができる。細胞の継代操作の際に継代培養に使用する細胞懸濁液を適当な回転数及び時間、例えば900rpm、3分間遠心処理し、上清を除去し、残留した細胞を回収し、例えばDMSO(dimethylsulfoxide)等の細胞保存剤が含まれる細胞保存液にて再懸濁し-80℃以下の冷凍庫にて凍結保存させることができる。そして、再生医療のために本発明の間葉系幹細胞が必要になった場合は、凍結保存していた間葉系幹細胞を急速解凍して細胞培養用培地に懸濁し、インキュベーター内で培養し、この培養により間葉系幹細胞を増殖させることができる。
【0024】
本発明の再生医療用組成物は、培養後の間葉系幹細胞を含むものであってもよいし、凍結保存された若しくは解凍後の間葉系幹細胞を含むものであってもよい。本発明の再生医療用組成物は、骨形成用再生医療用組成物、又は脂肪細胞形成用医療用組成物として使用することができる。
【0025】
本発明の間葉系幹細胞を再生医療等に使用する場合、当該間葉系幹細胞の提供者と受容者との関係は、免疫学的な拒絶反応の問題が克服されるのであれば特に限定されない。特に好適には、HLA(ヒト白血球抗原/組織適合抗原)型と血液型などの免疫学的な型が適合しうることが好ましいが、免疫型に関する問題は、今後の開発にゆだねることができる。
【0026】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の細胞は、骨髄由来の細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能であることを示している。抜歯窩より採取した肉芽組織から骨髄由来間葉系幹細胞と比べ遜色ない幹細胞を効率的に単離することができたのは、本発明において初めてなされたものである。効率的に採取できた理由として、骨髄腔と解剖学的に接近した抜歯創の特性から、骨髄由来間葉系幹細胞が再生現場に遊走され、抜歯窩における成長因子等により増殖し、再生のために働く幹細胞プールとして機能している可能性が考えられる。また、本発明の新規間葉系幹細胞の分化能を確認したところ、骨髄由来のものと比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。さらに興味深いことに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取できることが確認された。上記により、本発明の新規間葉系幹細胞は、分化細胞に誘導することができ、機能的にも優れ、再生医療において非常に有用なツールとなりうる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の新規間葉系幹細胞を選別するに至った経緯を参考例に示し、本発明の新規間葉系幹細胞について、実施例及び実験例を示して具体的に説明する。本発明は、これら実施例等に示す内容に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0028】
(参考例1)イヌ抜歯窩の治癒過程
イヌの抜歯を行い、抜歯後3日目、7日目、10日目、14日目、2ヶ月目の抜歯窩周辺の組織をHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色することにより、抜歯窩の治癒過程の組織学的評価を行った。図1〜6に示すように、抜歯後3日目より骨芽細胞が観察され、その後新生骨梁が形成されることを観察した。
【0029】
(実施例1)抜歯窩より採取した肉芽組織由来間葉系幹細胞の調製
以下、本実施例及び各実験例で使用する細胞について、肉芽組織由来のものを「DSSC: Dental Socket Stem Cells」といい、対照として、骨髄由来のものを「BMSC: Bone marrow stromal cell」という。イヌの抜歯窩肉芽組織由来の細胞を以下のa)〜c)に示し、対照として、イヌの上顎骨骨髄及び長管骨骨髄由来の細胞を以下のd)〜e)に示した(図7参照)。
【0030】
a)抜歯後3日目の抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 3days)
b)ステップa)の後、3日目の、a)と同じ抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 3days again)
c)抜歯後10日目の抜歯窩由来肉芽組織から採取した細胞(DSSC 10days)
d)上顎骨(maxilla)由来骨髄から採取した細胞(BMSC maxilla)
e)長管骨(long bone)由来細胞から採取した細胞(BMSC LB)
【0031】
採取したイヌ抜歯窩肉芽組織をメスで細切し、 3 mg/mlのコラゲナーゼタイプ I (Worthington Biochemicals Corp., Freehold, NJ) 及び 4 mg/mlのディスパーゼ (Roche Diagnostic/Boehringer Mannheim Corp., Indianapolis, IN) で、37℃で40分間インキュベートした。インキュベートした組織から単一細胞を得るために、70μmのストレイナー (Falcon, BD Labware, Franklin Lakes, NJ)を通した。対照の細胞についても同手法により処理した。
【0032】
得られた単一細胞約1×105個を10 cm培養皿で12日間培養し、細胞のコロニー形成を確認した。培養用培地には、15% ウシ胎児血清(FBS)、2 mM L-グルタミン及び抗生物質(100 U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン)を含むαMEM培地(alpha-Modification of Eagle's Medium, GIBCO/Invitrogen, Carlsbad, CA) を用いた。形成されたコロニーにより得られた細胞を、本発明の間葉系幹細胞として以下使用する。
【0033】
上記各細胞について、培養12日目のコロニー形成能を図8に示した。また、形成されたコロニー数を図9に示した。その結果、DSSC 3daysでコロニー形成能が最も高く、DSSC 3days again及びDSSC 10daysで、各BMSCと同程度のコロニー形成能が確認された。本実施例において、形成されたコロニーに含まれる細胞を間葉系幹細胞といい、上記a)〜e)のサンプルから取得した各間葉系幹細胞についても、以降の実験例において各々、DSSC 3days、DSSC 3days again、DSSC 10days、BMSC maxilla、BMSC LBという。
【0034】
(実験例1)各間葉系幹細胞のテロメラーゼ活性
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、細胞分裂能の指標の一つとして、テロメラーゼ活性を測定した。テロメラーゼ活性は、市販のキット(TeloExpress Quantitative Telomerase Detection Kit, Express Biotech International, Thurmount, USA)を用い、リアルタイムRT-PCRにて定量した。その結果、図10に示すように、DSSC 3daysは他のBMSCと比べ同等以上のテロメア活性を有することが確認された。
【0035】
(実験例2)各間葉系幹細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、骨芽細胞分化誘導前の細胞と、骨芽細胞誘導培地で3日間培養した細胞について、骨芽細胞分化マーカーであるALPの発現量を、GAPDHを標準として定量した。各細胞がコンフルエントになった状態で、以下の骨芽細胞誘導培地に交換して培養し、3日後に培養上清をサンプルとして回収した。
【0036】
骨芽細胞誘導用培地として、15% FBS、10-8M リン酸デキサメタゾンナトリウム、1.8mM KH2PO4、抗生物質(100 U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン)、0.1mM リン酸L-アスコルビン酸、 2mM グルタミンを含むαMEM培地(Invitrogen)を用いた。
【0037】
ALP及びGAPDHの各遺伝子の発現量は、RNA抽出キット(RNeasy(R) kit, Qiagen)を用いて、上記培養した細胞からtotal RNAを抽出し、cDNA合成キット(iScriptTM cDNA Synthesis Kit, BIORAD)を用いて逆転写して得たcDNAについて、RT-PCRキット(iQTM SYBR(R) Green Supermix, BIORAD)を用いてリアルタイムRT-PCR法にて定量した。RT-PCRは、配列表の配列番号1〜4に示す塩基配列からなるプライマーを用いて行った。
ALP センスプライマー: AGATGTGGAGTATGAGATGGA(配列番号1)
ALP アンチセンスプライマー: CGTAGTGAGAGTGCTTGTG(配列番号2)
GAPDH センスプライマー: GCTGAGTATGTTGTGGAGTC(配列番号3)
GAPDH アンチセンスプライマー: AGAAGGAGCAGAGATGATGA(配列番号4)
【0038】
上記の結果、図11に示すように、骨芽細胞誘導培地で3日間培養することで、すべての細胞においてALPの発現量が上昇することが確認され、本発明の各間葉系幹細胞は骨芽細胞へ分化されたことが確認された。
【0039】
(実験例3)各間葉系幹細胞の細胞表面マーカー
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBについて、細胞表面マーカータンパク質の解析をフローサイトメトリー法により行った。細胞表面各マーカーに対する各モノクローナル抗体を用いたゲート設定法にて解析を行った。それぞれの細胞をタンパク質分解酵素及びコラーゲン分解酵素を含む細胞剥離用溶液(Accutase(R))を用い培養皿から剥がし、抗CD34(MA1-81639,Thermo)、抗CD45 (MA1-80304)、抗CD29(555443, BD Pharmigen)、抗CD44(555478, BD Pharmigen)、抗CD90(559869, BD Pharmigen)、抗CD271(130-091-917, Miltenyi Biotec)の各抗体存在下で4℃で30分間インキュベートした。インキュベート後、1% FBSを含むPBSバッファーで洗浄し、フローサイトメーター(MACSQuantTM Analyzer, Miltenyi Biotec)を用いて解析を行った。
【0040】
上記の結果を表1に示した。その結果、DSSC 3days又はDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBの細胞表面マーカーと同様の傾向を示し、分化能を有する幹細胞として機能しうることが示唆された。
【0041】
【表1】
【0042】
(実験例4)SCIDマウスによる骨形成能の確認
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBの異所性骨形成能を動物モデルを用いて評価した。
2〜3×106個の各細胞と40mgの骨補填材であるβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)(OSferion、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)を37℃で一時間半混和後、1200rpmで一分間遠心し、上清を除去し、各細胞とβ-TCPの各複合体を作製した。その後、作製した各複合体を、SCID (severe combined immunodeficiency disease)マウスの背皮下に移植した。8週後にサンプルを回収し、常法に従い脱灰パラフィン切片を作製した。切片をHE染色にて染色し、光学顕微鏡下で観察した結果、図12〜15に示すように、DSSC 3days及びDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBと同様に骨芽細胞への分化が認められた。
【0043】
(実験例5)培養による脂肪細胞形成能の確認
実施例1で作製された各間葉系幹細胞のうち、特にDSSC 3days、DSSC 3days again、BMSC maxilla又はBMSC LBを培養皿に播種し、脂肪細胞誘導培地に交換し、1週間に2度の培地交換を行い、28日間培養した。脂肪細胞誘導培地として、市販のイヌ脂肪細胞分化培地(Canine Adipocyte Differentiation Medium; CELL Applications,INC)を用いた。脂肪誘導培地で培養した細胞をオイルレッド 0染色した結果、図16に示すように、DSSC 3days及びDSSC 3days againについて、対照のBMSC maxilla及びBMSC LBと同様に脂肪細胞に誘導されたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来細胞は、従来の腸骨骨髄又は歯槽骨骨髄由来細胞に比べて、容易に取得することができ、提供者にとって痛みや感染の問題から解放され、負担が少ない。また、本発明の肉芽組織由来細胞は、骨髄由来細胞に比べてコロニー形成能が高く、より効率的に間葉系幹細胞又は前駆細胞が採取可能である。さらに、一度採取した抜歯窩から何度も同じ特性を有する細胞を採取することができる。
【0045】
本発明の抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と同様の細胞表面抗原発現パターンを示した。また、本発明の新規間葉系幹細胞は、in vitro及びin vivoで骨芽細胞の形成が確認され、in vitroにおいて脂肪細胞への分化も確認された。このことより、骨髄由来間葉系幹細胞と比べて遜色ない多分化能を有していることが確認された。以上により、本発明の新規間葉系幹細胞は、容易に採取することができ、多分化能を有し、機能的にも優れ、再生医療において非常に有用なツールとなりうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞。
【請求項2】
抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である請求項1に記載の新規間葉系幹細胞。
【請求項3】
抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することを特徴とする、新規間葉系幹細胞の選別方法。
【請求項4】
抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である請求項3に記載の新規間葉系幹細胞の選別方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の選別方法により選別された新規間葉系幹細胞。
【請求項6】
請求項1、2又は5に記載の新規間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物。
【請求項7】
再生医療用組成物が、骨形成用再生医療用組成物である請求項6に記載の再生医療用組成物。
【請求項8】
再生医療用組成物が、脂肪細胞形成用再生医療用組成物である請求項6に記載の再生医療用組成物。
【請求項1】
抜歯窩より採取した肉芽組織由来の新規間葉系幹細胞。
【請求項2】
抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である請求項1に記載の新規間葉系幹細胞。
【請求項3】
抜歯窩より採取した肉芽組織を培養し、形成された細胞コロニーを収集することを特徴とする、新規間葉系幹細胞の選別方法。
【請求項4】
抜歯窩より採取した肉芽組織が、抜歯後10日までに形成された肉芽組織である請求項3に記載の新規間葉系幹細胞の選別方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の選別方法により選別された新規間葉系幹細胞。
【請求項6】
請求項1、2又は5に記載の新規間葉系幹細胞を含む再生医療用組成物。
【請求項7】
再生医療用組成物が、骨形成用再生医療用組成物である請求項6に記載の再生医療用組成物。
【請求項8】
再生医療用組成物が、脂肪細胞形成用再生医療用組成物である請求項6に記載の再生医療用組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【公開番号】特開2012−239411(P2012−239411A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111873(P2011−111873)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第4859078号(P4859078)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第4859078号(P4859078)
【特許公報発行日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】
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