説明

新規骨石灰化タンパク質発現系、およびその細胞内シグナル伝達経路の試験方法

本発明は、細胞の分化を非骨原性細胞系譜から骨原性細胞系譜へと切り替える方法に関する。本発明はまた、骨増殖因子の細胞内シグナル伝達経路を評価するためのモデル系を作出する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して、骨原性細胞、ならびに哺乳動物種における骨および骨組織の形成に関する。具体的には、本発明は、in vitroおよびin vivoで骨石灰化の有効性を増強する新規タンパク質ファミリー、ならびにこれらのタンパク質をコードする核酸に関する。本発明は、例えば脊椎融合、骨折修復および骨粗しょう症などの多様な病理学的状態に関連した骨および骨組織を治療するための方法を、提供する。
【背景技術】
【0002】
骨芽細胞は、多能性間葉系幹細胞から分化すると考えられている。骨芽細胞の成熟は、骨を石灰化し、そして形成することが可能な細胞外マトリクスの分泌をもたらす。この複雑な過程の調節はあまり解明されていないが、しかし、骨形成タンパク質(BMP)として公知の一群のシグナル伝達糖タンパク質が関与すると考えられている。これらのタンパク質は、胚の背腹パターン形成、肢芽発生および成体動物における骨折修復に関与することが示されている。B. L. Hogan, Genes & Develop., 10:1580 (1996年)。このトランスフォーミング増殖因子−ベータスーパーファミリー分泌タンパク質の群は、多様な細胞型において異なる分化段階で活性の分布を有し;これらの密接に関連する分子間の生理活性の違いは、明らかにされていない。D. M. Kingsley, Trends Genet., 10:16 (1994年)。異なるBMPシグナル伝達タンパク質のユニークな生理学的役割をより識別するために、我々は、ラット頭蓋冠の骨芽細胞分化の誘導に関して、BMP−6の効力をBMP−2およびBMP−4のものと比較した。Bodenら、Endocrinology, 137:3401 (1996年)。我々は、分化の開始にBMPまたは糖質コルチコイドを必要とする胎性ラット頭蓋冠の最初の継代(二次)培養物において、この過程を試験した。膜性骨形成のこのモデルでは、糖質コルチコイド(GC)またはBMPは、骨芽細胞特異的タンパク質であるオステオカルシンを分泌可能な石灰化骨小結節への分化を開始させるであろう。この二次培養系は、自発的な分化を起こす初代ラット骨芽細胞培養物とは異なっている。この二次的な系において、糖質コルチコイドは、骨芽細胞分化の増強に関与するBMP−6 mRNAおよびタンパク質発現の10倍の誘導をもたらした。Bodenら、Endocrinology, 138:2920 (1997年)。
【0003】
BMPなどの細胞外シグナルに加えて、細胞内シグナルまたは調節分子もまた、新たな骨の形成をもたらす事象のカスケードにおいて役割を果たしている可能性がある。細胞内調節分子の一つの広い分類は、LIMドメインとして公知の特徴的な構造モチーフを有することからそのように称されている、LIMタンパク質である。LIMドメインは、2アミノ酸のスペーサーにより連結している二つの特別なジンクフィンガーから構成される、システインに富む構造モチーフである。LIMドメインのみを有するタンパク質もあるが、多様なさらなる機能ドメインを含有するタンパク質もある。LIMタンパク質は、転写因子および細胞骨格タンパク質を含む、多様な群を形成する。LIMドメインの主な役割は、同一もしくは異なるLIMドメインとの二量体形成によるか、または異なるタンパク質と結合することによって、タンパク質−タンパク質相互作用を媒介することにあるようである。
【0004】
LIMホメオドメインタンパク質、すなわち、LIMドメインおよびホメオドメイン配列の双方を有するタンパク質において、LIMドメインは、負の調節エレメントとして機能する。LIMのみのタンパク質も同様の役割を有する可能性はあるが、LIMホメオドメインタンパク質は、細胞系譜決定の制御および分化の調節に関与する。LIMのみのタンパク質は、このようなタンパク質をコードするいくつかの遺伝子が発癌性の染色体転座に関連していることから、細胞増殖の制御にも関わっている。
【0005】
ヒトおよび他の哺乳動物種は、骨修復および/または再生の過程を必要とする疾患または傷害を起こしやすい。例えば、骨折の治療は、自然の骨修復機序を刺激することによって、骨折した骨が治癒するのに必要な時間を低減することが可能な新たな治療レジメンによって、改善されるであろう。別の例において、骨粗しょう症などの全身性骨障害を患う個体は、新たな骨の全身性形成をもたらすことになる治療レジメンの利益を享受するであろう。このような治療レジメンは、この疾患の特徴である骨量減少により生じる骨折の発生率を低減させるであろう。
【0006】
少なくともこれらの理由によって、BMPなどの細胞外因子は、新たな骨の形成をin vivoで刺激するためにそれらを用いることを目的として、研究されている。BMPおよび他の細胞外シグナル伝達分子により達成された初期の成功にもかかわらず、その使用は、多くの不都合を伴う。例えば、比較的大用量の精製BMPが、新たな骨の生成を増強するために必要なことにより、このような治療方法の費用を増加させている。さらに、細胞外タンパク質は、宿主動物へのその導入後に分解を受けやすい。加えて、それらは典型的には免疫原性であるため、投与されたタンパク質に対する免疫応答を刺激する可能性がなお存在する。
【0007】
譲受人により出願された係属中の米国出願番号11/385,612では、LIM石灰化タンパク質の小分子およびペプチド模倣体を含む、組み合わせ治療戦略について記載されており、すべての仮および非仮出願の全開示は、参照によって本明細書に援用される。LMP−1の正確な機序はなお研究中であるが、外因性BMPがSmad1/5を活性化することによって骨形成を誘導すると、一般には考えられている。Smad1/5は、Smurf1によって、分解の標的とされる。LMP−1タンパク質は、Smurf1との結合に関してSmad1/5と競合することにより、外因性BMPに対する細胞応答性を増加させる。
【0008】
このようなことから、新たな骨形成を誘導するために細胞内シグナル伝達分子を用いる利用可能な治療レジメンを持つことが、望ましいであろう。遺伝子療法の分野における進歩により、現在、骨形成過程の一部を形成する細胞内シグナルをコードするヌクレオチドフラグメントを、骨原性前駆細胞、すなわち骨形成に関与する細胞内に導入することが可能となっている。骨形成のための遺伝子療法は、多くの潜在的な利点を供する:(1)生産費用の低減;(2)細胞内シグナルの発現をより長期間成し遂げる能力による、細胞外治療レジメンと比較してより大きな有効性;(3)それは、細胞外シグナルによる治療がこれらのシグナルについての限定された数の受容体の存在によって妨げられる可能性を回避するであろう;(4)それは、トランスフェクトされた潜在的な骨前駆細胞の、限局性の骨形成が必要とされる部位への直接的な送達を可能にする;ならびに、(5)それは、全身性骨形成を可能にすることによって、骨粗しょう症および他の代謝性骨疾患の治療レジメンを供するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】係属中の米国出願番号11/385,612
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B. L. Hogan, Genes & Develop., 10:1580 (1996年)
【非特許文献2】D. M. Kingsley, Trends Genet., 10:16 (1994年)
【非特許文献3】Bodenら、Endocrinology, 137:3401 (1996年)
【非特許文献4】Bodenら、Endocrinology, 138:2920 (1997年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、骨形成をもたらす事象のカスケード初期に関わる細胞内シグナル伝達分子を用いた、骨形成を誘導するための新規組成物および方法を提供することにより、先行技術における難点を克服することを目指している。出願人は、元は刺激されたラット頭蓋冠骨芽細胞培養物から単離された配列と相同の、新規LIM遺伝子である10−4/RLMP(配列番号1、配列番号2)を発見した。該遺伝子をクローニングし、配列決定し、そして、in vitroで骨石灰化の有効性を増強するその能力についてアッセイした。タンパク質RLMPは、骨マトリクスの石灰化、ならびに骨芽細胞系譜への細胞分化に影響を及ぼす。例えばBMPなどの他の公知のサイトカイン類とは違って、RLMPは、分泌タンパク質ではなく、細胞内シグナル伝達分子である。この特徴には、細胞内シグナル伝達の増幅、ならびにトランスフェクトされた細胞のより容易な評価を提供する利点がある。それは、より効率的かつ特異的なin vivo適用にも適している。適切な臨床適用には、骨折、骨欠損、骨移植における骨修復、および骨粗しょう症を呈している患者の正常な恒常性の増強が含まれる。
【0012】
出願人は、ヒトLMP−1と称される、対応するヒトタンパク質のアミノ酸配列を、クローニングし、配列決定し、そして推定した。該ヒトタンパク質は、in vitroおよびin vivoにおいて骨石灰化の有効性の増強を示した。LMP−1は、N末端PDZドメインおよび三つのC末端LIMドメインを含有する。出願人は、HLMP−1sと称される、完全長hLMP−1のN末端223アミノ酸を含有するが骨誘導活性を維持している、切断(短い)バージョンのLMP−1を性状解析した。
【0013】
この短いバージョンは、cDNAクローンのある源において、タンパク質を切断する終止コドンを提供する点変異により生じた。短いバージョン(LMP−1s)は、細胞培養物およびin vivoにおいて発現させる場合、完全に機能的である。本明細書に記載の発明において、発明者は、三つのC末端LIMドメインを欠損するヒトLMP−1の切断型[hLMP−1(t)]が、多能性筋芽細胞の骨芽細胞系譜への分化を引き起こすかどうかを、評価した。本発明の目的の一つは、LMP−1などの骨誘導タンパク質が骨芽細胞の分化を促す経路の少なくとも一つが、複数のBMPの亢進を伴うことを示すことである。したがって、有用な培養系を、LMP−1などの骨誘導タンパク質の作用機序を評価するために開発した。本発明のより好ましい側面は、in vitroにおいてhLMP−1の作用機序を評価する、進展した方法である。
【0014】
最も好ましくは、本発明は、LMP−1の活性およびBMPシグナル伝達経路を評価するための骨格筋細胞培養モデルを提供する。本発明はまた、筋細胞における遺伝子発現試験を行い、そしてさらに、増殖因子シグナル伝達経路を調節することが可能な適切な因子または剤をさらにスクリーニングする可能性も、当業者に供する。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点を、以下の説明において記載することとし、そして、一部分は該説明から明白であろうし、あるいは、これを本発明の実施により学んでもよい。本発明の目的および他の利点は、本明細書に記述された説明および特許請求の範囲において具体的に指摘された事項の方法および組成物によって、認識され、かつ達成されるであろう。
【0016】
一つの広い側面において、本発明は、任意のLIM石灰化タンパク質をコードする核酸配列を含んでなる単離された核酸分子であって、標準的な条件下で完全長の配列番号25に相補的な核酸分子とハイブリダイズし、かつ、高ストリンジェントな条件下で完全長の配列番号26に相補的な核酸分子とハイブリダイズする、前記核酸分子に関する。特定の側面において、単離された核酸分子は、HLMP−1、HLMP−1sまたはRLMPをコードする。加えて、本発明は、これらの核酸分子を含んでなるベクター、ならびに該ベクターを含んでなる宿主細胞に関する。別の特定の側面において、本発明は、該タンパク質自体に関する。
【0017】
別の側面において、本発明は、細胞の分化を非骨原性細胞系譜から骨原性細胞系譜へと切り替える方法であって、Smurf1タンパク質とSmad1/5タンパク質との間の結合を破壊可能な剤を前記細胞に導入することを含んでなる方法を、提供する。一実施態様において、該剤を導入する工程は、前記細胞においてLMPタンパク質またはそのフラグメントを過剰発現させることを含んでなる。
【0018】
さらに別の側面において、本発明は、骨空隙欠損の治療方法であって:非骨原性細胞系譜の少なくとも一細胞を得ること;少なくとも一細胞にSmurf1タンパク質とSmad1/5タンパク質との間の結合を破壊可能な剤を導入すること;少なくとも一つの細胞を、該少なくとも一つの細胞を骨原性細胞系譜へと導くのに十分な時間、培養すること;骨原性細胞系譜の少なくとも一つの細胞を、骨空隙欠損を有する患者に導入すること;を含んでなる前記方法を提供する。一実施態様において、該剤は、LMPタンパク質またはそのフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を、含んでなる。本発明の別の実施態様において、該アミノ酸配列は、LMPタンパク質またはそのフラグメントと、少なくとも75%同一であるか、または少なくとも80%同一であるか、または少なくとも85%同一であるか、または少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であるか、または少なくとも995%同一であるか、または100%同一であってもよい。
【0019】
別の広い側面において、本発明は、HLMP−1、HLMP−1sおよびRLMPを含むLIM石灰化タンパク質に特異的である抗体に関する。ある具体的な側面において、該抗体はポリクローナル抗体である。別の具体的な側面において、該抗体はモノクローナル抗体である。
【0020】
さらに別の側面において、本発明は、骨原性前駆細胞にLIM石灰化タンパク質をコードする核酸配列を含んでなる単離された核酸分子をトランスフェクトする、骨形成の誘導方法に関する。ある具体的な側面において、単離された核酸分子はベクター内にあり、該ベクターは、プラスミドであっても、あるいはアデノウイルスまたはレトロウイルスなどのウイルスであってもよい。トランスフェクションは、単離された核酸分子の直接注入により、ex vivoまたはin vivoで行ってもよい。トランスフェクトされる単離された核酸分子は、HLMP−1、HLMP−1sまたはRLMPをコードしてもよい。
【0021】
さらなる側面において、本発明は、骨原性前駆細胞にLIM石灰化タンパク質と少なくとも70%同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子をトランスフェクトし、トランスフェクトされた骨原性前駆細胞をマトリクスと混合し、そして該マトリクスを脊椎と接触させることによって脊椎を融合させる方法に関する。
【0022】
さらに別の側面において、本発明は、宿主細胞への本発明のベクターの安定なトランスフェクションによって全身性の骨形成を誘導するための方法に関する。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の双方は、典型的かつ説明的であり、そして、特許請求の範囲に記載の本発明のさらなる説明の提供を意図することが、理解されよう。
【0023】
略語および定義
BMP 骨形成タンパク質
HLMP−1、ヒトLMP−1、ヒトLIMタンパク質またはHLMPまたはhLMPとも称される
HLMP−1s、hLMP−1(t)、ヒトLMP−1短い(切断型)タンパク質
HLMPU、ヒトLIMタンパク質ユニーク領域
LMP、LIM石灰化タンパク質
MEM、最小必須培地
Trm、トリアムシノロン
β−GlyP、ベータ−グリセロールホスフェート
RACE、cDNA端の迅速増幅
RLMP、ラットLIM石灰化タンパク質、RLMP−1とも称される
RLMPU、ラットLIMタンパク質ユニーク領域
RNAsin、RNase阻害剤
ROB、ラット骨芽細胞
10−4、RLMPのcDNA配列(配列番号2)を含有するクローン
UTR、非翻訳領域
Ad5−GFP−LMP、マウスアルカリホスファターゼ、オステオカルシン、BMP−2およびBMP−7のためのプライマー配列
【0024】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、本明細書においてLIM石灰化タンパク質またはLMPと称される、新規の哺乳動物LIMタンパク質に関する。本発明は、より具体的には、HLMPまたはHLMP−1として公知のヒトLMPに関する。
【0026】
新規細胞内骨誘導タンパク質であるLIM石灰化タンパク質−1(LMP−1)は、1998年にクローニングおよび配列決定された。Bodenら、Endocrinology 139(12):5125-34 (1998年)、該文献の教示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。LMP−1は、N末端PDZドメインおよび三つのC末端LIMドメイン/モチーフを含有する。Davidら、14:156-62 (1998年)。出願人は、これらのタンパク質が、in vitroで生育させた哺乳動物細胞において骨石灰化を増強することを、発見した。哺乳動物において産生される場合、LMPは、in vivoでも骨形成を誘導する。
【0027】
骨芽細胞培養物における試験は、完全長hLMP−1のN末端223アミノ酸を含有するが、ただしLIMドメインは含有しない切断型ヒトLMP−1であるhLMP−1(t)(配列番号47)が、上記の系においても骨誘導性であったように、LMP−1が骨形成を誘導するのにLIMドメインを必要としないことを示した。Liu YS ら、J Bone Min. Res. 17:406-14 (2002年)、該文献の教示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0028】
本発明において、発明者は、より関わりの薄い多能性細胞および非骨原性細胞系譜において、LIMドメインがLMP−1骨誘導活性に必要とされるかどうかを、決定した。本出願全体にわたる「非骨原性細胞系譜」の語は、通常は骨細胞の少なくとも一つの特徴を呈する細胞へと発生しない細胞を特徴付けるために、用いられる。非骨原性細胞系譜の細胞には、例えば、例えば筋芽細胞などの、多能性が限定されている幹細胞(例えば、組織特異的幹細胞または衛星細胞)が含まれる。
【0029】
外因性BMPは、Smad1/5を活性化することによって骨形成を誘導すると、現在、考えられている。本開示において、「Smad1/5」の語は、Smad1およびSmad5タンパク質の両方を指す。Smad1/5は、Smurf1による分解の標的とされる。LMP−1タンパク質は、Smurf1との結合についてSmad1/5と競合し、それにより外因性BMPに対する細胞応答性を増加させる。Sandagalaら、Lim Mineralization Protein-1 Potentiates Bone Morphogenic Protein Responsiveness via a Novel Interaction with Smurf1 resultng in Decreased Ubiquination of Smads, J. Biol. Chem. 281(25): 17212-17219 (2006年)、該文献の全体は、参照によって本明細書に援用される。出願人は、Smurf1タンパク質とSmad1/5タンパク質との間の結合を破壊可能な剤を細胞に導入することによって、非骨原性細胞系譜から骨原性細胞系譜へと細胞の分化経路を切り替える方法を、任意の特定の理論に関わることなく、発見した。一実施態様において、該剤の導入は、LMP−1タンパク質、あるいはSmurf1タンパク質のWW2ドメインとの結合に必要であり、かつ/またはLMP−1タンパク質の骨原性特性に十分なフラグメントなどの、そのフラグメントを、過剰発現させることを含んでなる。ある実施態様において、適切なフラグメントは、より大きなアミノ酸配列内に含まれ、それは所望により人工的であってもよい。このようなフラグメントおよび配列の適切な例には、非限定的に、配列番号48、配列番号49、配列番号50および配列番号51が含まれる。
【0030】
さらに別の実施態様において、核酸配列は、LMPタンパク質またはそのフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードする。当業者は、アミノ酸配列をコードする核酸配列が、LMPタンパク質またはそのフラグメントと、少なくとも75%同一であるか、または少なくとも80%同一であるか、または少なくとも85%同一であるか、または少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であるか、または少なくとも99%同一であるか、または100%同一であってもよいことを、正しく評価するであろう。
【0031】
本発明の少なくとも一側面において、発明者は、BMP−2またはTGF−βなどの細胞内増殖因子のシグナル伝達経路における調節因子の特異性および有効性を検証するための、有用なin vitroモデル系を開発した。本発明の少なくとも一つの好ましい実施態様において、発明者は、骨芽細胞系譜のLMP−1誘導およびBMP−2細胞内経路に対するその潜在的な効果の研究におけるC12細胞の新規使用を示した。
【0032】
発明者は、関係する胎性ラット頭蓋冠骨芽細胞において、LMP−1が骨小結節形成を増強することを、以前に示した。しかしながら、各実験を行うために、これらの初代細胞を動物から採取し、そして培養増殖させなければならない。これらの初代細胞の生物学的応答性は、異なるドナーおよび異なる継代によって様々である細胞の生理学的状態により変わる可能性がある。誘導された骨芽細胞系譜において骨誘導の機序を試験するためには、骨誘導タンパク質、好ましくはhLMP−1が一貫性のある予測可能な効果を有している細胞株を用いることが、非常に重要である。
【0033】
発明者は、C12細胞を、それらが多能性であることから選択した。しかしながら、本発明において使用してもよい、筋芽細胞などの非骨原性細胞系譜の他の細胞は、自己、同種間または異種間の源に由来することが可能である。好ましくは、非骨原性細胞系譜の細胞は、自己源、すなわち患者自身に由来する。本発明の一実施態様において、筋組織の試料を生検によって得てもよく、そして、筋芽細胞を単離する。
【0034】
筋芽細胞を、当該技術分野において公知であって、かつ例えばWebsterら、Isolation of human myoblasts with the fluorescence-activated cell sorter, Exp Cell Res. 174(1):252-65 (1988年)に記載されている単離および精製スキームによって、単離し、そして実質的に精製することが可能である。該文献の全体は、参照によって本明細書に援用される。そのアプローチとは、モノクローナル抗体5.1H11とヒト筋細胞表面抗原との特異的反応を利用したものである。該反応の結果に基づき、筋芽細胞を、蛍光励起細胞選別機を用いて単離してもよい。細胞集団の99%を超える筋芽細胞画分を、達成することが可能である。0.1gの組織につき平均10個の生筋芽細胞を得ることが可能であり、それぞれは、およそ40回の細胞分割を行う潜在性を持つ。
【0035】
本発明の一実施態様において、C12細胞は、損傷した成体マウス筋肉から元は単離され、かつ、筋原性分化の試験に優れたモデル系であることが証明された。C12細胞は、培養培地中で増殖するが、しかし、コンフルエンスになるまで生育させ、かつ増殖因子を欠乏させると、最終分化を行う。この過程の間、C12細胞は、細胞周期を出て、筋特異的遺伝子を亢進させ、そして融合して多核筋管となる。Yaffeら、Nature; 270:725-27(1997年)。C12細胞は、骨形成タンパク質−2(BMP−2)などのサイトカインで処理されると、骨芽細胞フェノタイプへと分化することが可能である。Yingら、JBC; 278:39029-036 (2003年)。
【0036】
本発明の本実施態様において、発明者は、多能性細胞を細胞内増殖因子、好ましくは骨誘導タンパク質、およびより好ましくは切断型ヒトLMP−1などのLMP1のアイソフォームで処理するときの、前記細胞からの骨芽細胞系譜の誘導を、研究する。発明者は、BMPシグナル伝達経路における前記因子の潜在的効果を、さらに評価した。
【0037】
本発明の本側面によると、発明者は、骨髄細胞およびラット頭蓋冠骨芽細胞などの初代細胞に優るこれらの多能性細胞(すなわち、哺乳動物C12筋細胞)の利点を、初めて示した。本発明の本側面の最も特筆すべき発見は、形態変化および骨芽細胞特異的遺伝子の発現により測定された、多能性筋芽細胞が骨芽細胞となる誘導である。この観察は、LMP−1アイソフォームが任意の多能性細胞を骨芽細胞フェノタイプへと駆動可能であることを示す、最初のものである。
【0038】
本発明の特徴として、発明者は、切断型hLMP−1を用いて検証するためのビオチン移行アッセイにおける、ビオチン化した完全長および切断型ヒトLMP−1の核タンパク質への結合、ならびに、C12培養物に対するその効果を、比較した。発明者はまた、完全長LMP−1およびLMP−1(t)の両方がSmurf1と相互作用することから、それらが類似する機序によって骨芽細胞の分化を誘導することが示唆されることも、同定した。
【0039】
別の実施態様において、例えばParkら、A Comparative Study of Magnetic-Activated Cell Sorting, Cytotoxicity and Preplating for the Purification of Human Myoblasts, Yonsei Med J., 47(2):179-183 (2006年)に記載のように、細胞を、磁気励起細胞選別機(MACS)、補体を介した細胞毒性およびプレプレーティング技術の組み合わせによって、単離してもよい。著者は、この組み合わせを用いて、筋芽細胞を92.8%含んでなる細胞培養物を得たことを、報告している。
【0040】
所望の特徴を有する細胞を選択するためのさらなる基準は、当該技術分野において公知であり、そして、Jankowskiら、Establishing reliable criteria for isolating myogenic cell fractions with stem cell properties and enhanced regenerative capacity, Blood Cell Mol Dis, 3291:24-33 (2004年)において論じられるように、例えば、高度の増殖能を含む。この基準および他の基準は、有利には上述のプロトコール中に含まれてもよい。
【0041】
本発明の別の実施態様において、発明者は、LMPのいずれかの型が相互作用するタンパク質に、ビオチンを移行させた。次いで、新たにビオチン化されたLMP−1と相互作用するタンパク質を、SDS−PAGE、およびニュートラアビジン(neutravadin)−HRPを用いて検出されるビオチン標識によって、分離した。したがって、発明者は、検出されたバンドに差がないことから、完全長および切断型hLMP−1は同じ結合パートナーを有し、かつ類似する生理学的効果を及ぼす可能性が高いことが示唆されることを、見いだした。85kDaのバンドは、Smurf1であることが決定され;50kDaおよび55kDaにある別の二つのバンドは、それぞれメオシンおよびカルデスモンであることが決定された。
【0042】
本発明の別の側面において、発明者は、C12培養物における骨増殖因子の形質導入効率を測定することが可能であった。少なくとも一つの好ましい実施態様において、発明者は、C12培養物のAd5−hLMP−1(t)−GFP形質導入効率を測定することにより、切断型ヒトLMP−1が多能性細胞を骨芽細胞系譜へと誘導するかどうかを同定した。
【0043】
このような目標を達成するために、発明者は、LMP−1のN末端223アミノ酸を含有するが、ただしLIMドメインは含有しないタンパク質をコードする、hLMP−1(t) cDNAを構築した。次いで、発明者は、形質導入効率を改善し、そしてhLMP−1(t)の過剰発現によるC12培養物における遺伝子発現の誘導を評価するために、cDNAをアデノウイルス送達によって送達した。フローサイトメトリーまたは当業者に公知の他の方法を、ベクターを取り込んだ細胞を同定するために使用した。したがって、ウイルス量の増加に伴って増加するGFP発現細胞数を、10〜500pfu/細胞の用量範囲で培養物に加えた。
【0044】
本発明の別の実施態様において、hLMP−1(t)の最大限の発現を達成するためのウイルスの至適用量を決定した。したがって、発明者は、種々の用量のAd5−hLMP−1(t)−GFPを加え、そして4日後にLMP−1 mRNAレベルをリアルタイムRT−PCRにより測定する実験を行った。
【0045】
プライマーは、ヒト過剰発現LMP−1 mRNAを検出するが、しかし内因性マウスLMP−1は検出しないように、設計された。この戦略は、当業者が、試験された最低用量(10pfu/細胞)においてもヒトLMP−1の過剰発現を示すことを、可能にする。初めて、当業者は、このような過剰発現を実証できる能力を正しく評価することが可能である。
【0046】
リアルタイムPCR解析は、切断型ヒトLMP−1 mRNAが豊富に発現していることを示した。トランスフェクトされた細胞におけるhLMP−1(t)遺伝子発現の相対値は、本方法ではマウスLMP−1 mRNAが対照C12細胞において検出されなかったため、対照よりもはるかに高かった。発明者は、増加していく量のAd5−hLMP−1(t)−GFPを、C12培養物に10〜250pfu/細胞の範囲で加えるとLMP−1発現が増加することを測定した。これに続く実験では、100pfu/細胞を、それがhLMP−1(t)の最大限の発現を与える最低用量であるため、適用した。
【0047】
ウエスタンブロット解析により、切断型LMP−1の顕著なシグナルが、約30においてさらに確認された。本発明のこの側面によると、100pfu/細胞のAd5−hLMP−1(t)−GFPを形質導入したC12培養物から抽出されたタンパク質に関して、ウエスタンブロット解析を、アフィニティ精製hLMP−1特異抗体を用いて行った。およそ50kDaのバンドは、内因性マウスLMP−1を表す可能性が最も高いことが決定された。
【0048】
別の実施態様において、発明者は、細胞内増殖因子、好ましくは骨誘導タンパク質、およびより好ましくは切断型ヒトLMP−1などのLMP1のアイソフォームが、C12細胞の筋管形成をブロックし、かつその骨芽細胞の特徴を増強することが可能なことを、初めて示した。より具体的には、当業者は、C12細胞が、適切な培地中で培養されると筋芽細胞に分化する潜在性を有することを、現在、正しく評価することが可能である。
【0049】
これらの対照条件下では、多くの筋管を、位相差顕微鏡下で見ることが可能である。しかしながら、Ad5−GFP−LMP−1(t)を形質導入されたC12培養物では、形質導入後4日にほとんど筋管はなく、hLMP−1(t)がC12での筋管形成に対して阻害効果を有することが示唆される。
【0050】
形質導入された培養物が骨芽細胞フェノタイプに分化したかどうかを決定するため、アルカリホスファターゼ活性を測定した。hLMP−1(t)を4日間過剰発現させると、C12培養物では、空のベクター対照で処理した培養物と比較して、アルカリホスファターゼ活性の50%増加が誘導された。
【0051】
アルカリホスファターゼおよびオステオカルシン遺伝子の発現増加は、骨芽細胞分化のマーカーである。hLMP−1(t)を4日間過剰発現させたC12培養物において、アルカリホスファターゼおよびオステオカルシン遺伝子発現は、ベクターのみで処理された対照C12培養物と比較して、それぞれ9および13倍有意に増加した。C12培養物におけるhLMP−1(t)の骨芽細胞分化誘導の可能な機序に関してさらに学ぶため、BMP−2およびBMP−7遺伝子発現も、形質導入後4日に測定した。当業者には明らかなように、本発明の発明者は、両遺伝子の発現がhLMP−1(t)の過剰発現に続いて有意に増加したことを示す。Minamideら、J Bone & Joint Surg Am 85A:1030-39 (2003年)もまた参照されたく、該文献の教示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0052】
hLMP−1(t)過剰発現培養物において、BMP−2の発現は、ベクター対照よりも8倍増加し、一方、BMP−7の発現は、これらの培養物において10倍増加した。総合すれば、該データは、hLMP−1(t)の過剰発現が、分化しているC12培養物において筋芽細胞フェノタイプを阻害し、一方で、骨芽細胞フェノタイプの複数のマーカーの発現を増強することを、当業者に証明している。
【0053】
当業者は、形態変化および骨芽細胞特異的遺伝子の発現によって測定されるように、多能性筋芽細胞が骨芽細胞となるよう誘導されている、本発明の特筆すべき発見を、正しく評価するであろう。この観察は、骨誘導タンパク質、好ましくはLMP−1アイソフォームが、任意の多能性細胞を骨芽細胞フェノタイプへと駆動可能であることを実証した、最初のものである。
【0054】
過剰発現させた完全長もしくは切断型のラットまたはヒトLMP−1は、関与する前骨芽細胞(ラット頭蓋冠から単離された初代培養物)の骨芽細胞マーカーを発現し、そして骨小結節を形成する能を増強可能であることが、示されている。Bodenら、139 (12):5125-34 (1998年);および、Liuら、J Bone Min. Res.17:406-14 (2002年)を参照されたい。
【0055】
本発明の少なくとも一つの側面において、当業者は、筋芽細胞フェノタイプを有する多能性細胞が、過剰発現させた切断型hLMP−1などの骨誘導タンパク質で処理すると、骨芽細胞フェノタイプへと誘導されるとの発見を、正しく評価するであろう。
【0056】
本発明の最も好ましい実施態様において、Ad5−hLMP−1(t)−GFPを一時的に形質導入されたC12培養物は、オステオカルシンおよびアルカリホスファターゼ遺伝子発現の亢進からも明らかなように、4日後に骨芽細胞フェノタイプへと分化した。対照群において、C12細胞は、筋芽細胞フェノタイプへと分化し、そして、予想されたように、オステオカルシンおよびアルカリホスファターゼ遺伝子発現は増加しなかった。したがって、C12細胞は、骨芽細胞フェノタイプのLMP誘導の機序を検証し、そしてさらに、前記経路を調節可能な適切な候補剤をさらにスクリーニングするための、適切なモデル系である。したがって、このようなin vitro分化過程は、TGF−βまたはBMP−2シグナル伝達に対する調節因子の特異性および有効性を検証するための非常に有用なモデル系を提供する。
【0057】
本発明はまた、遺伝子発現研究を行い、かつ、増殖因子シグナル伝達経路を調節することが可能な適切な剤をさらにスクリーニングする能力も、当業者に提供する。
本発明のさらに別の実施態様において、骨髄細胞、骨原性前駆細胞または間葉系幹細胞へのLMPまたはHLMPをコードする核酸のex vivoトランスフェクション、それに続くトランスフェクトされた細胞のドナーにおける再移植は、多様な骨関連障害もしくは損傷の治療に適することが予想される。例えば、長骨骨折の修復を増強し;部分欠損において骨を生成し;骨折に対して骨移植置換片を提供し;腫瘍再構築または脊椎融合を促進し;そして、腰部、椎骨または手関節の骨粗しょう症などにおける弱いかもしくは骨粗しょう症性の骨に対して局所治療(注入による)を提供するために、本方法を用いることが可能である。
【0058】
LMPまたはHLMPをコードする核酸のトランスフェクションは、トランスフェクトされた骨髄細胞の経皮注入において、骨折した長骨の修復;遅延癒合性もしくは非癒合性の長骨骨折または脊椎融合の仮関節の治療;の加速、ならびに、腰部または膝部の無血管性壊死における新たな骨形成の誘導にも、有用である。本発明の少なくとも一つの実施態様において、LMP−1タンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を導入する前後に、単離された細胞を、骨空隙の形に成形可能な基質上で培養してもよい。適切な基質には、非限定的に、ケージまたはメッシュが含まれ、これらは細胞接着を誘導するための組成物でコーティングされていてもよい。多様なこれらの組成物は、当該技術分野において公知であり、かつ、市販されている。このような組成物の適切な例には、BDバイオサイエンシズInc.(サンノゼ、カリフォルニア州)より入手可能なマトリゲル(商標)が含まれる。
【0059】
遺伝子療法のex vivo系方法に加え、LMPまたはHLMPをコードする核酸配列を含んでなる組換えDNAベクターのトランスフェクションを、in vivoで成し遂げることが可能である。LMPまたはHLMPをコードするDNAフラグメントを適切なウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクターに挿入する場合、ウイルスコンストラクトを、軟骨内骨形成が望まれる身体部位に直接注入することが可能である。LMPまたはHLMP配列を導入するために直接的な経皮注入を用いることによって、(ex vivoでトランスフェクトするための)骨髄細胞を得るか、または新たな骨が必要とされる患者の部位にそれらを再移植するための外科的インターベンションを必要とせずに、骨形成刺激を成し遂げることが可能である。Aldenら、Neurosurgical Focus (1998年)は、アデノウイルスベクター内にクローニングしたBMP−2をコードするcDNAを用いた遺伝子療法の直接注入方法の有用性を実証した。
【0060】
適切な身体部位に、裸の、すなわち被包されていない、HLMPをコードする核酸配列を含んでなる組換えプラスミドを直接注入することによって、in vivo遺伝子療法を実行することもまた可能である。本発明のこの実施態様において、トランスフェクションは、裸のプラスミドDNAが記載されている適切な標的細胞に取り込まれるか、または内部移行するときに、起こる。ウイルスコンストラクトを用いたin vivo遺伝子療法の場合のように、裸のプラスミドDNAの直接注入は、ほとんどもしくは全く外科的インターベンションを必要としないという利点を供する。内皮細胞マイトジェンVEGF(血管内皮増殖因子)をコードする裸のプラスミドDNAを用いた直接的な遺伝子療法は、ヒト患者における成功が実証されている。Baumgartnerら、Circulation, 97(12):1114-23 (1998年)。
【0061】
LMPを骨原性細胞に送達するためにアデノウイルスベクターを用いることによって、LMPの一時的な発現が達成される。これは、アデノウイルスが、トランスフェクトされている標的細胞のゲノム内に組み入れられないために、起こる。LMPの一時的な発現、すなわち、トランスフェクトされた標的細胞の寿命の間に起こる発現は、本発明の目的を達成するのに十分である。しかしながら、標的細胞のゲノム内に組み入れるベクターを送達媒体として用いる場合、LMPの安定な発現が起こる。例えば、レトロウイルス系ベクターは、この目的に適している。
【0062】
LMPの安定な発現は、骨粗しょう症および骨形成不全症などの種々の全身性骨関連障害の治療に、特に有用である。本発明のこの実施態様に関しては、LMPをコードするヌクレオチド配列を標的細胞内に送達するために標的細胞のゲノム内に組み込むベクターを用いることに加えて、LMP発現が、調節可能なプロモーターの制御下に置かれている。例えば、テトラサイクリンなどの外因性誘導剤への曝露によって活性化されるプロモーターが、適している。このアプローチを用いると、有効量の外因性誘導剤を投与することによって、全身にて新たな骨の形成を刺激することが可能である。ひとたび十分な量の骨量が達成されたならば、外因性誘導剤の投与を中断する。例えば骨粗しょう症の結果としての骨量減少を補填するために、この過程を必要に応じて繰り返してもよい。
【0063】
HLMPに特異的な抗体は、骨誘導性の、すなわち骨形成を行う患者細胞の潜在性をアッセイするための方法における使用に適している。この方法で、骨修復の治癒が遅いかもしくは不十分なリスクのある患者を同定することが可能である。HLMP特異抗体はまた、例えば骨粗しょう症などの骨変性疾患におけるリスクファクターを同定するためのマーカーアッセイにおける使用にも、適している。
【0064】
周知かつ慣用の用法にしたがって、本発明の遺伝子は、LMPをコードする核酸セグメントと、クローニングおよび/もしくは発現ベクターなどの他の核酸配列とのライゲーションによって、調製される。例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化、クローニングプロトコール、変異誘発、オリゴヌクレオチドの有機合成、およびDNA配列決定などの、これらの組換えベクターを構築および解析するために必要な方法については、記載されている。DNA配列決定に関しては、ジデオキシターミネーター(dieoxyterminator)法が好ましい。
【0065】
Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, コールドスプリングハーバー・プレス、第2版(1988年);Davisら、Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier (1986年);および、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Wiley lnterscience (1988年)を含む、組換えDNA法に関する多くの論文が公表されている。これらの参照マニュアルは、参照によって本明細書に具体的に援用される。
【0066】
DNAまたはcDNAのプライマー指向性増幅は、本発明の遺伝子の発現における一般的な工程である。それは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって典型的には行われる。PCRについては、Mullisらによる米国特許第4,800,159および他の公表された出所に記載されている。PCRの基本原理は、プライマー伸長の連続したサイクルによる、指数関数的なDNAの複製である。あるプライマーの伸張産物は、別のプライマーとハイブリダイズさせたとき、別の核酸分子合成のための鋳型となる。プライマー−鋳型複合物は、その複製機能を行う際にプライマーを伸長するDNAポリメラーゼの基質として作用する。PCR適用のための慣用の酵素は、サーマス・アクアチス(Thermus aquaticus)から単離された熱安定性DNAポリメラーゼ、またはTaq DNAポリメラーゼである。
【0067】
基本的なPCR法の多数の変形形態が存在し、そして、本発明の組換えベクターを構築するために必要な任意の所与の工程における、選択された特定の手順は、当業者によって容易に行われる。例えば、10−4/RLMPの細胞発現を測定するために、RNAを、標準的かつ周知の手順の下で抽出および逆転写する。次いで、得られたcDNAを、適切なmRNA配列に関して、PCRにより解析する。
【0068】
LIM石灰化タンパク質をコードする遺伝子を、組換え発現系において発現ベクターで発現させる。当然ながら、構築される配列は、元の配列またはその相補的な配列と同じである必要はなく、代わりに、それでもなお骨形成活性を有するLMPを発現するDNAコードの縮重によって決定される、任意の配列であってもよい。また、保存的アミノ酸置換、あるいはアミノ末端メチオニン残基の発生などの他の修飾が、使用されてもよい。
【0069】
選択した宿主発現系において活性のリボソーム結合部位を、キメラLMPコード配列の5'末端にライゲーションして、合成遺伝子を形成する。該合成遺伝子を、適切に線状化したプラスミドにライゲーションすることによって、非常に多様な発現用ベクターの任意の一つに挿入することが可能である。調節可能なプロモーター、例えば大腸菌(E. coli)lacプロモーターもまた、キメラコード配列の発現に適している。その他の適切な調節可能なプロモーターには、trp、tac、recA、T7およびラムダプロモーターが含まれる。
【0070】
LMPをコードするDNAを、例えば、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デキストラン、電気穿孔またはプロトプラスト融合などの、いくつかの標準的な公表されている手順の一つによって、レシピエント細胞にトランスフェクトして、安定な形質転換体を形成する。以下のように実施する場合は特に、リン酸カルシウム沈降が好ましい。
【0071】
DNAを、細胞内にトランスファーする前に、GrahamおよびVan Der, Virology, 52:456 (1973年)の方法にしたがって、リン酸カルシウムと共沈させた。担体としてサケ精子もしくは仔ウシ胸腺DNAを伴う、40〜50μgのDNAのアリコットを、100mm皿上に蒔いた0.5x10細胞に対して用いる。DNAを、0.5mlの2x Hepes溶液(280mM NaCl、50mM Hepesおよび1.5mM NaHPO、pH7.0)と混合し、これに等量の2xCaCl(250mM CaClおよび10mM Hepes、pH7.0)を加える。30〜40分後に現れる白色顆粒状の沈殿物を、細胞上に滴下して均等に分配し、該細胞を37℃にて4〜16時間インキュベートする。培地を除去し、そして、PBS中15%グリセロールで3分間、細胞にショックを与える。グリセロールを除去した後、細胞に、10%胎性ウシ血清含有ダルベッコ最小必須培地(DMEM)を供給する。
【0072】
DNAはまた、Kimuraら、Virology, 49:394 (1972年);および、Sompayracら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7575 (1981年)のDEAE−デキストラン法;Potter, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:7161 (1984年)の電気穿孔法;ならびに、Sandri-Goddinら、Molec. Cell. Biol., 1:743 (1981年)のプロトプラスト融合法を用いても、トランスフェクトすることが可能である。
【0073】
固相におけるホスホラミダイト化学は、オリゴデオキシヌクレオチドおよびポリデオキシヌクレオチドの有機合成に好ましい方法である。加えて、多くの他の有機合成法が利用可能である。これらの方法を、当業者は、本発明の特定の配列に対して容易に適応させることが可能である。
【0074】
本発明には、本発明のLIM石灰化タンパク質をコードする核酸配列のいずれかと標準的な条件下でハイブリダイズする核酸分子もまた含まれる。「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、プローブのサイズ、バックグラウンドおよび核酸試薬の濃度、ならびにハイブリダイゼーションのタイプ(例えば、in situ、サザンブロット、またはDNA−RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション(ノーザンブロット))に応じて、様々であろう。「標準的なハイブリダイゼーション条件」の決定は、当該技術分野における技能水準内である。例えば、Fremeauらによる米国特許第5,580,775を参照されたく、該出願は、本目的のために参照により本明細書に援用される。Southern, E. M., J. Mol. Biol., 98:503 (1975年);Alwineら、Meth. Enzymol., 68:220 (1979年);および、Sambrookら、Molecular Cloning: A laboratory Manual, 第2版、7.19-7.50ページ、コールドスプリングハーバー・プレス(1989年)もまた参照されたい。
【0075】
ある好ましい標準的なハイブリダイゼーション条件のセットは、50%ホルムアミド、5xSSPE(150nM NaCl、10mM NaHPO[pH7.4]、1mM EDTA[pH8.0])、5xデンハルト溶液(水100mlにつき20mgフィコール、20mgポリビニルピロリドンおよび20mg BSA)、10%硫酸デキストラン、1%SDSおよび100μg/mlサケ精子DNA中で、42℃にて2時間プレハイブリダイズするブロットを、伴う。32P標識cDNAプローブを加え、そして、ハイブリダイゼーションを14時間続ける。その後、ブロットを、2xSSPE、0.1% SDSで、22℃にて20分間、2回洗浄し、続いて、0.1xSSPE、0.1% SDS中で、65℃にて1時間洗浄する。次いで、ブロットを乾燥させ、そして増感スクリーンの存在下で5日間、X線フィルムに露出する。
【0076】
「高度にストリンジェントな条件」下では、プローブは、その標的配列と、これらの二つの配列が実質的に同一であるならば、ハイブリダイズするであろう。標準的なハイブリダイゼーション条件の場合のように、当業者は、当該技術分野における技能水準および特定の実験の性質を考慮して、実質的に同一の配列のみがハイブリダイズするであろう条件を決定する。
【0077】
本発明の別の側面には、核酸配列によってコードされるタンパク質が含まれる。さらに別の実施態様において、本発明は、抗LMP抗体に基いたこのようなタンパク質の同定に関する。この実施態様では、細胞を溶解し、そしてSDS−PAGEによりタンパク質を分離することによって、タンパク質試料をウエスタンブロット解析のために調製する。タンパク質を、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, ジョンワイリー・アンド・サンズ(1987年)によって記載のように、エレクトロブロッティングによりニトロセルロースに移行させる。インスタント脱脂粉乳(100ml PBS中5mg)でフィルターをブロッキングした後、抗LMP抗体をフィルターに加え、そして室温にて1時間インキュベートする。フィルターをリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で徹底的に洗浄し、そして、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)−抗ウサギ抗体複合体とともに室温にて1時間インキュベートする。フィルターを、PBSで再び徹底的に洗浄し、そして、抗原バンドを、ジアミノベンジジン(DAB)を加えることにより同定する。
【0078】
単一特異性抗体は、本発明におけるえり抜きの試薬であり、そして、具体的には、LMPの発現に伴う特有の特徴について患者細胞を解析するために、用いられる。「単一特異性抗体」は、本明細書では、LMPアフィニティカラムを用いて精製されるような、LMPに対して均一な結合特徴を有する、単一の抗体種または複数の抗体種として定義される。「均一な結合」とは、本明細書では、上述のように、LMPに関連するものなどの、特定の抗原またはエピトープと結合する抗体種の能を指す。LMPに対する単一特異性抗体を、LMPに対して反応性の抗体を含有する哺乳動物血清から精製するか、あるいは、KohlerおよびMilstein, Nature, 256:495-97 (1975年)の技術を用いて、LMPと反応性のモノクローナル抗体として調製する。例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギまたはウマなどの動物を、免疫アジュバントを含むかもしくは含まない適切な濃度のLMPで免疫することによって、LMP特異抗体を産生させる。
【0079】
この過程において、免疫前の血清を、最初の免疫に先立ち回収する。各動物は、望まれる場合に許容可能な免疫アジュバントを伴う、約0.1mg〜約1.0mg、好ましくは約1mgのLMPを投与される。このような許容可能なアジュバントには、これに限定されないが、フロイント完全、フロイント不完全、ミョウバン沈殿物、Corynebacterium parvumを含有する油中水型乳剤、およびtRNAアジュバントが含まれる。最初の免疫は、好ましくはフロイント完全アジュバント中のLMPからなり、複数部位にて皮下(SC)、腹腔内(IP)、またはその両方に注射される。抗体価を測定するために、各動物を一定間隔で、好ましくは1週間毎に採血する。動物は、最初の免疫後に、ブースター注射を受けても、または受けなくてもよい。ブースター注射を受けるこれらの動物には、同じ経路により、フロイント不完全アジュバント中の等量の抗原を与える。ブースター注射は、約3週間間隔で、最大限の力価が得られるまで行う。各ブースター免疫後約7日、または単回免疫後約1週間毎に動物を採血し、血清を回収し、そしてアリコットを約−20℃にて保管する。
【0080】
LMPと反応性のモノクローナル抗体(mAb)を、近交系マウス、好ましくはBalb/cマウスをLMPで免疫することによって調製する。上記に論じるように、マウスを、等量の許容可能なアジュバントに取り込んだ、約0.5mlのバッファーもしくは生理食塩液中約0.1mg〜約1mg、好ましくは約1mgのLMPで、IPもしくはSC経路により免疫する。フロイント完全アジュバントが、好ましい。マウスは、第0日に初回免疫を受け、そして、約3〜30週間おいておく。免疫したマウスに、リン酸緩衝生理食塩液などのバッファー溶液中約0.1〜約1mg、好ましくは約1mgのLMPのブースター免疫を、1またはそれより多くの回数で静脈内(IV)経路により与える。抗体陽性マウスから得たリンパ細胞、好ましくは脾臓リンパ細胞を、当該技術分野において公知の標準的な手順によって免疫したマウスから脾臓を取り出すことによって得る。脾臓リンパ細胞を適切な融合パートナー、好ましくは骨髄腫細胞と、安定なハイブリドーマの形成を可能にするであろう条件下で混合することにより、ハイブリドーマ細胞を作り出す。融合パートナーには、これに限定されないが、マウス骨髄腫P3/NS1/Ag4−1;MPC−11;S−194およびSp2/0が含まれ、Sp2/0が好ましい。抗体産生細胞と骨髄腫細胞を、約30%〜約50%の濃度の分子量約1000のポリエチレングリコール中で融合させる。融合したハイブリドーマ細胞を、添加ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中ヒポキサンチン、チミジンおよびアミノプテリン中での生育によって、当該技術分野において公知の手順により選択する。上清液を、およそ第14、18および21日に生育陽性ウェルから回収し、そして、LMPを抗原として用いる固相イムノラジオアッセイ(SPIRA)などのイムノアッセイにより、抗体産生に関してスクリーニングする。培養液は、mAbのアイソタイプを決定するためのオクタロニー沈降アッセイでも試験する。抗体陽性ウェルから得たハイブリドーマ細胞を、MacPherson, "Soft Agar Techniques", Tissue Culture Methods and Applications, KruseおよびPaterson(編集)、アカデミックプレス(1973年)の軟寒天技術などの技術によって、クローニングする。Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual, コールドスプリング研究所(1988年)もまた参照されたい。
【0081】
プリスタンで抗原刺激したBalb/cマウスに、抗原刺激後約4日に、約2x10〜約6x10ハイブリドーマ細胞を各マウスにつきおよそ0.5ml注射することによって、モノクローナル抗体をin vivoでも産生させてもよい。腹腔液を、細胞移行後およそ8〜12日に回収し、そして、モノクローナル抗体を当該技術分野において公知の方法により精製する。
【0082】
十分な量の特異的mAbを得るために、抗LMP mAbのin vitro産生を、ハイブリドーマ細胞株を約2%胎性仔ウシ血清含有DMEM中で生育させることによって実施する。該mAbは、当該技術分野で公知の技術により精製する。
【0083】
腹腔液またはハイブリドーマ培養液の抗体価を、これに限定されないが、沈降、受身凝集反応、酵素結合免疫吸着抗体(ELISA)技術およびラジオイムノアッセイ(RIA)技術を含む、種々の血清学的もしくは免疫学的アッセイによって測定する。同様なアッセイは、体液もしくは組織および細胞抽出物におけるLMPの存在を検出するために用いられる。
【0084】
単一特異性抗体を産生するための上述の方法を、LMPのポリペプチドフラグメント、完全長の新生LMPポリペプチド、またはそのバリアントもしくはアレルに特異的な抗体を産生するために利用してもよいことは、当業者に容易に明らかである。
【0085】
1997年7月22日に、pCMV2/RLMPと称されるベクター内10−4/RLMPの試料(挿入断片10−4クローン/RLMPを伴うベクターpRc/CMV2である)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、12301 Parklawn Drive, Rockville, Md. 20852に寄託した。この寄託に対するカルチャー・アクセッション番号は、209153である。1998年3月19日に、挿入断片HLPM−1を伴うベクターpHis−Aの試料を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託した。この寄託に対するカルチャー・アクセッション番号は、209698である。ブタペスト条約の要件下で行われたこの寄託は、少なくとも30年間、ATCCにおいて維持され、かつ、それらを開示する特許の許諾に基づいて公開されることになるであろう。寄託が利用可能であることは、政府の決定により許諾される特許権の侵害において、本件発明を実施する許可を構成しないことが、理解されるべきである。
【0086】
本発明の核酸、タンパク質または抗体の評価において、酵素アッセイ、タンパク質精製および他の慣用の生化学的方法が使用される。DNAおよびRNAは、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング技術によって、それぞれ解析される。典型的には、解析される試料は、ゲル電気泳動によってサイズ分画される。次いで、ゲル中のDNAまたはRNAを、ニトロセルロースもしくはナイロン膜に移行させる。次いで、ゲルにおける試料パターンのレプリカであるブロットに、プローブをハイブリダイズさせる。プローブを当業者に公知の他のシグナル作出分子で標識することは可能ではあるが、典型的には、プローブは、好ましくは32Pで、放射標識される。次いで、目的とする特定のバンドを、オートラジオグラフィなどの検出システムによって視覚化することが可能である。本発明の好ましい実施態様を例示する目的で、以下の非限定的な実施例が含まれる。これらの結果は、本発明のLIM石灰化タンパク質、およびこれらのタンパク質をコードする単離された核酸分子を用いて、骨形成の誘導または増強を実行可能であることを、実証している。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
材料−C12細胞およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)は、ATCC(マナサス、バージニア州)から購入した。胎性ウシ血清は、アトランタ・バイオロジカルズ社(アトランタ、ジョージア州)から得た。リポフェクタミン、オプティ−MEM、NuPAGE(商標)4〜12% Bis−Tris・ゲルおよび二フッ素化ポリビニルピロリデン膜は、インビトロジェン社(カールスバッド、カリフォルニア州)から購入した。アルカリホスファターゼ(ALP)アッセイキットは、シグマ・アルドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州)から得た。バイオ・ラッド・タンパク質アッセイキットは、バイオ・ラッド・ラボラトリー(ハーキュリーズ、カリフォルニア州)から得た。セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG、ならびにウエスタン発光試薬AおよびBは、パーキンエルマー・ライフサイエンス社(ボストン、マサチューセッツ州)から購入した。RNeasyミニキットおよびDNAse 1は、キアゲンInc.(バレンシア、カリフォルニア州)から得た。逆転写試薬およびSYBRグリーン・リアルタイムPCRキットは、アプライド・バイオシステムズ社(フォスターシティ、カリフォルニア州)から購入した。
【0088】
(実施例2)
細胞培養−第3もしくは第4代のC12細胞(ATCC、マナサス、バージニア州)を、T−75cmフラスコ(コーニングInc.、コーニング、ニューヨーク州)内で、10%ウシ胎仔血清(アトランタ・バイオロジカルズ社、アトランタ、ジョージア州)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;ATCC、マナサス、バージニア州)中で、加湿された5%CO中で37℃にて継代培養した。フラスコが80%コンフルエントとなったときに、細胞をトリプシン処理し、そして200,000細胞/ウェル(2x10細胞/cm)にて6ウェルプレートに移した。
【0089】
(実施例3)
Ad5−hLMP1(t)−GFPの構築−Ad5−hLMP1(t)の構築手順は、先に記載した。Ad5−hLMP1(t)−GFPを調製するために、我々は、内部リボソーム侵入部位(IRES)の下流にGFP cDNAを含有するシャトルベクター(キュー・バイオジーン社、モントリオール、ケベック州、カナダ)を用いた。切断型ヒトLMP−1を、IRESの上流に位置するマルチプル・クローニング・サイト内にクローニングした。線状化したトランスファープラスミドとアデノウイルスゲノムとの相同領域間で、組換えが293細胞内で生じた結果、完全なアデノウイルス組換え体(Ad5−LMP−1(t)−GFP)が形成された。組換えアデノウイルスを選択し、さらに増幅し、そして塩化セシウム勾配遠心分離によって精製し、そしてプラークアッセイによって力価測定した。ウイルス力価は、9x10pfu/mlであった。
【0090】
(実施例4)
LMP−1/LMP−1(t)と相互作用するタンパク質を検出するためのビオチン移行アッセイ−三官能性の架橋剤であるSulfo−SBED(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州)は、三つの官能基(光で活性化可能なアリールアジド、切断可能なジスルフィド基を伴うスルホン化N−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル、およびビオチン部分)を含有し、かつ、相互作用するタンパク質を同定するために広く用いられている。LMP−1またはLMP−1(t)を、この試薬を用いて標識し、ベイトとして核タンパク質とインキュベートし、そして、UV(365nm)により相互作用するタンパク質と架橋した。LMP−1またはLMP−1(t)と物理学的に相互作用するタンパク質は、SDS−PAGE還元バッファー中に懸濁するとき、ビオチン基を保持する。ビオチンを含有する標的タンパク質を、ニュートラアビジン(neutravadin)ビーズを用いて分離し、ウエスタンブロットによってニュートラアビジン−HRPで検出し、そして、シグナルを化学発光基質で発色させた。対応するタンパク質のバンドはゲル内でトリプシンで消化した。トリプシンペプチドを回収し、濃縮し、そして、そのトリプシンペプチドのマスプロファイルを、エモリー大学微量化学施設(Microchemical Facility)でMALDI−TOFによって解析した。
【0091】
(実施例5)
一時的なAd5−hLMP1(t)−GFPおよびAd5−GFPの形質導入および形態学的観察−C12細胞を6ウェルプレート(200,000細胞/ウェル)で継代培養した1日後に、細胞を、アデノウイルス形質導入効率を促進するために、各ウェルにつき500μlオプティ−MEM中のリポフェクタミン(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)で4時間処理した。次いで、それらにAd5−hLMP1(t)−GFPまたはAd5−GFP(対照として)を、300μlのオプティ−MEM(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)中で30分間形質導入した。形質導入後に、オプティ−MEMを加えて2ml/ウェルとし、そして、細胞を37℃にてインキュベートした。2日後に、培地を10%ウシ胎仔血清添加DMEMに替え、そして、細胞をさらに2日間分化させた。10〜500pfu/細胞の範囲にわたる用量/反応実験を行い、そして、細胞または全RNAを回収して、形質導入効率をフローサイトメトリーにより測定するか、あるいは最大限のLMP−1発現をもたらすAd5−hLMP1(t)−GFPの用量をリアルタイムRT−PCRにより測定した。これらの実験結果に基づき、それに続く試験において、100pfu/細胞を培地に適用した。このような各試験において、一つのウェルから、細胞を第4日にmRNA解析のため回収し;別の二つの並列のウェルからは、細胞をアルカリホスファターゼ活性およびタンパク質解析のため回収した。細胞を回収する前に、細胞形態を位相差顕微鏡下で観察し、そして写真撮影した。
【0092】
(実施例6)
アルカリホスファターゼ活性およびタンパク質アッセイ−氷冷リン酸緩衝生理食塩液で2回洗浄した後、細胞を、溶解バッファー(10mM Tris pH8.0、1mM MgCl、0.5%トリトンX−100)中で超音波処理することによって溶解させた。細胞溶解物を遠心分離し、そして、上清をアルカリホスファターゼ活性およびタンパク質レベルの解析のために単離した。細胞溶解物中のアルカリホスファターゼ活性は、シグマALPアッセイキット(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を用いて測定した。タンパク質含量は、バイオ・ラッド・タンパク質アッセイキット(バイオ・ラッド・ラボラトリー、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)を用いて、BSAの標準曲線を用いて測定した。アルカリホスファターゼ活性およびタンパク質含量はトリプリケートで測定し、そして、アルカリホスファターゼ活性を、タンパク質含量を基準に正規化した。
【0093】
(実施例7)
切断型ヒトLMP−1過剰発現のウエスタンブロット解析−形質導入されたC12細胞における切断型ヒトLMP−1タンパク質の存在を実証するため、アルカリホスファターゼ測定用に調製した細胞溶解物(一試料につき20μg)を、NuPAGE(商標)4〜12% Bis−Tris・ゲル(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)上で分離し、そして、二フッ化ポリビニリデン膜(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)上に移行させた。膜を、まず5%ミルクで1時間ブロッキングし、そして次いで、アフィニティ精製ウサギ抗LMP1抗体(1:2500希釈)および二次抗体(セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG、1:5,000希釈、パーキンエルマー・ライフサイエンス社、ボストン、マサチューセッツ州)でそれぞれ1時間、室温にてインキュベートした。次いで、シグナルを、化学発光基質(ウエスタン発光試薬AおよびB混合物;パーキンエルマー・ライフサイエンス社、ボストン、マサチューセッツ州)を用いて発色させた。
【0094】
(実施例8)
遺伝子発現の定量的リアルタイムRT−PCR測定RNAおよびcDNA調製:各試料から得た全RNAを、RNeasyミニキットを用いて、動物細胞から全RNAを単離するためのRNeasyミニのプロトコールにしたがい抽出した(キアゲンInc.、バレンシア、カリフォルニア州)。単離されたRNAを、DNAse1(キアゲンInc.、バレンシア、カリフォルニア州)で処理して、試料からDNA混入を除去した。単離されたRNAの濃度を、260nm波長にて分光光度法により測定し、そして、タンパク質混入を280nm波長にて測定した(DU−500;ベックマン社、Fullerton、カリフォルニア州)。260/280の比率は、1.6〜1.8の間であった。逆転写を、全RNA 1μg、10xRTバッファー10μL、5.5mM MgCl、2mM dNTP混合物、0.25μMオリゴd(T)、0.25μMランダムプライマー、40U RNase阻害剤および125U MuLV逆転写酵素(アプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を伴う100μL量中で、25℃にて10分間、48℃にて30分間および95℃にて5分間、行った。DNA混入のないことを確認するため、逆転写酵素を行っていないRNA試料もPCRにかけた。PCR産物がないことで、RNA試料中にDNAが混入していないことが確認された。
【0095】
定量的リアルタイムPCR:SYBRグリーン・リアルタイムPCRキット(アプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を、Ad5−hLMP1(t)−GFP、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、BMP−2、BMP−7および18S(正規化用)のcDNA発現を定量するために用いた。25μlの反応量には、cDNA 5μl、各プライマー5pmol、および2xSYBRグリーンマスターミックス(アプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)12.5μlが含まれた。プライマー配列を、表1に列挙する。リアルタイムPCRを、以下の三工程のプロトコールを用いて行った:Gene Amp 5700配列検出システム(アプライド・バイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を用いて、工程1、50℃にて2分間;工程2、95℃にて10分間;および、工程3(95℃にて15秒間、62℃にて1分間)を40サイクル。増幅特異性を確認するために、PCR産物を解離曲線解析にかけた。各反応の閾値サイクル(Ct)を、すでに記載されたように、比較ΔΔCt法を用いて、18S RNAについて得られたものを基準に正規化した。すべてのPCR反応を、トリプリケートで行った。
【0096】
統計解析
両側スチューデントt検定を、処理群を対照と比較するために用いた。0.05未満のp値を、統計学的有意差を定義するために用いた。
【0097】
(実施例9)
頭蓋冠細胞培養−ラット骨芽細胞(「ROB」)としても公知のラット頭蓋冠細胞を、すでに記載されたように、分娩前20日のラットから得た。Bodenら、Endocrinology, 137(8):3401-07 (1996年)。初代培養物を、コンフルエンスとなるまで生育させ(7日間)、トリプシン処理し、そして、最初の継代培養細胞として6ウェルプレートに移した(1X10細胞/35mmウェル)。第0日にコンフルエントであった継代培養細胞を、さらに7日間生育させた。第0日より層流フード下で3もしくは4日毎に、培地を変え、そして処理(Trmおよび/またはBMP)を適用した。標準的な培養プロトコールは、以下のとおりであった:第1〜7日、MEM、10%FBS、50μg/mlアスコルビン酸、±刺激;第8〜14日、BGJb培地、10%FBS、5mM β−GlyP(石灰化を可能にするための無機リン酸塩源として)。骨小結節形成およびオステオカルシン分泌のエンドポイント解析を、第14日に行った。BMPの用量を、本系におけるパイロット実験に基づき、試験したすべてのBMPに関する用量−反応曲線に対して中程度の効果を示した50ng/mlとして選択した。
【0098】
(実施例10)
アンチセンス処理および細胞培養−膜性骨形成時におけるLMP−1の潜在的な機能的役割を探求するため、我々は、LMP−1 mRNAの翻訳をブロックするアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成し、そして、糖質コルチコイドによって始動される分化を起こしている二次骨芽細胞培養物を処理した。RLMP発現の阻害を、推定翻訳開始部位(配列番号35)にわたる25bp配列に対応する高特異性のアンチセンスオリゴヌクレオチド(公知のラット配列と有意な相同性を持たない)を用いて、成し遂げた。対照培養物には、オリゴヌクレオチドを与えなかったか、あるいは、それらにセンスオリゴヌクレオチドを与えた。実験は、リポフェクタミンの存在下(プレインキュベーション)および非存在下で行った。簡潔には、22μgのセンスもしくはアンチセンスRLMPオリゴヌクレオチドを、MEM中で45分間、室温にてインキュベートした。このインキュベーション後に、さらなるMEMまたはプレインキュベートしたリポフェクタミン/MEM(7% v/v;室温にて45分間インキュベート)を、オリゴヌクレオチド濃度が0.2μMに達するよう加えた。その結果生じた混合物を、室温にて15分間インキュベートした。次いで、オリゴヌクレオチド混合物を、適切な培地、すなわちMEM/アスコルビン酸塩/±Trmと、最終オリゴヌクレオチド濃度が0.1μMに達するよう混合した。
【0099】
細胞を、適切なオリゴヌクレオチドの存在下または非存在下で、適切な培地(±刺激)でインキュベートした。最初にリポフェクタミンとインキュベートした培養物に、4時間インキュベート(37℃;5%CO)した後、リポフェクタミンもオリゴヌクレオチドも含有しない培地を再供給した。すべての培養物、特にオリゴヌクレオチドを与えられた培養物に、オリゴヌクレオチドレベルを維持するために、24時間ごとに再供給した。
【0100】
LMP−1アンチセンスオリゴヌクレオチドは、BMP−6オリゴヌクレオチドの効果と同様に、石灰化小結節形成およびオステオカルシン分泌を、用量依存的に阻害した。骨芽細胞分化におけるLMP−1アンチセンスのブロックは、外因性BMP−6の添加によってレスキューできなかったが、BMP−6アンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害は、BMP−6の添加により元に戻った。この実験により、骨芽細胞の分化経路において、LMP−1がBMP−6と比べて上流に位置することが、さらに確認された。LMP−1アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、初代ラット骨芽細胞培養物において、自発的な骨芽細胞分化を阻害した。
【0101】
(実施例11)
石灰化骨小結節形成の定量
実施例9および10にしたがって調製されたROBの培養物を、70%エタノール中で一晩固定し、そして、フォン・コッサ銀染色により染色した。半自動コンピューター制御ビデオ画像解析システムを用いて、各ウェルにおける小結節数および小結節面積を定量した。Bodenら、Endocrinology, 137(8):3401-07 (1996年)。次いで、これらの値を除して、小結節あたりの面積値を計算した。この自動化された過程を、手動の計数技術に対して検証し、そして、0.92の相関係数(p<0.000001)が示された。すべてのデータは、各条件における5もしくは6ウェルから計算された、平均±平均の標準誤差(S.E.M.)として表す。各実験は、異なる頭蓋冠調製物から得た細胞を用いて、少なくとも2回確認した。
【0102】
(実施例12)
オステオカルシン分泌の定量−培養培地中のオステオカルシンレベルを、Nanesら、Endocrinology, 127:588 (1990年)に記載されるように、我々の研究所で産生させたラットオステオカルシンのC末端ノナペプチドに対する単特異性ポリクローナル抗体(Pab)を用いて、競合ラジオイムノアッセイを用いて測定した。簡潔には、1μgのノナペプチドを、ラクトペルオキシダーゼ法により、1mM Ci 125I−Naでヨウ素化した。200μlのアッセイバッファー(0.02Mリン酸ナトリウム、1mM EDTA、0.001%チメロサール、0.025%BSA)を含有するチューブに、細胞培養物から得た培地またはオステオカルシン標準品(0〜12,000fmole)を、アッセイバッファー中100μl/チューブで与えた。次いで、Pab(1:40,000;100μl)を加え、続いて、ヨウ素化したペプチド(12,000cpm;100μl)を加えた。非特異的結合について試験する試料を、同様に調製したが、ただし抗体は含有しなかった。結合もしくは遊離しているPabを、ヤギ抗ウサギIgG 700μlを加え、続いて4℃にて18時間インキュベートすることによって、分離した。試料を1200rpmで45分間遠心分離した後、上清をデカントし、そして、ガンマ計数器で沈殿物を計数した。オステオカルシン値を、fmole/100μlで報告し、次いで、これらの値を100で除することによりpmole/ml培地(3日産生)に変換した。値は、各条件について5もしくは6ウェルでのトリプリケートの測定の平均±S.E.M.として表した。各実験を、異なる頭蓋冠調製物から得た細胞を用いて、少なくとも2回確認した。
【0103】
(実施例13)
in vitro石灰化に対するTrmおよびRLMPの効果−センスもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドはいずれも、非刺激細胞培養系における骨小結節の全体的な産生に対して、明白な効果がほとんどなかった。しかしながら、ROBをTrmで刺激すると、RLMPに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、小結節の石灰化を>95%阻害した。外因性BMP−6のオリゴヌクレオチド処理培養物への添加は、RLMP−アンチセンス処理小結節の石灰化をレスキューしなかった。
【0104】
オステオカルシンは、長い間、骨石灰化と同義であり、かつ、オステオカルシンレベルは、小結節の生成および石灰化と相関している。RLMP−アンチセンスオリゴヌクレオチドは、オステオカルシン産生を有意に減少させるが、しかし、アンチセンス処理培養物中の小結節数は、有意に変化しない。この場合、外因性BMP−6の添加のみが、RLMP−アンチセンス処理培養物におけるオステオカルシン産生を、10〜15%レスキューした。このことは、RLMPの作用が、より具体的には、BMP−6の下流にあり、かつBMP−6よりも特異的であることを、示唆している。
【0105】
(実施例14)
RNAの回収および精製−4Mグアニジン・イソチオシアネート(GIT)溶液を用いてROBのデュプリケートウェルから得た細胞RNA(6ウェル培養皿中で、実施例9および10にしたがって調製)を回収して、統計上のトリプリケートを得た。簡潔には、培養上清をウェルから吸引し、次いで、デュプリケートウェル回収につき0.6mlのGIT溶液を重ねた。GIT溶液を加えた後、プレートを5〜10秒間旋回させた。試料を、さらなる処理の前に−70℃にて、7日間まで保存した。
【0106】
RNAを、Sambrookら、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 第2版、第7.19章、コールドスプリングハーバー・プレス(1989年)に記載の標準的な方法のわずかな修飾により、精製した。簡潔には、解凍した試料に、2.0M酢酸ナトリウム(pH4.0)60μl、フェノール(水で飽和)550μlおよびクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)150μlを与えた。ボルテックスした後、試料を遠心分離し(10000xg;20分間;4℃)、水相を新しいチューブに移し、イソプロパノール600μlを加え、そして、RNAを−20℃にて一晩沈殿させた。
【0107】
一晩インキュベートした後に、試料を遠心分離し(10000xg;20分間)、そして、上清を穏やかに吸引した。ペレットを400μlのDEPC処理水に再懸濁し、フェノール:クロロホルム(1:1)で1回抽出し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で抽出し、そして、酢酸ナトリウム(3.0M;pH5.2)40μlおよび無水エタノール1.0mlを加えた後に、−20℃にて一晩沈殿させた。細胞RNAを回収するために、試料を遠心分離し(10000xg;20分間)、70%エタノールで1回洗浄し、5〜10分間空気乾燥させ、そして、20μlのDEPC処理水中に再懸濁した。RNA濃度を、分光光度計を用いて測定された光学密度から計算した。
【0108】
(実施例15)
逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応
加熱した全RNA(総量10.5μlのDEPC−HO中5μg、65℃にて5分間)を、5xMMLV−RTバッファー4μl、dNTP 2μl、dT17プライマー(10pmol/ml)2μl、RNAsin(40U/ml)0.5μlおよびMMLV−RT(200単位/μl)1μlを含有するチューブに加えた。試料を37℃にて1時間、次いで95℃にて5分間インキュベートして、MMLV−RTを不活化した。試料を、80μlの水を加えることにより希釈した。
【0109】
逆転写した試料(5μl)を、標準的な方法論を用いてポリメラーゼ連鎖反応にかけた(総量50μl)。簡潔には、水と適量のPCRバッファー、25mM MgCl、dNTP、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP、ハウスキーピング遺伝子)および/もしくはBMP−6用の順方向および逆方向プライマー、32P−dCTPならびにTaqポリメラーゼを含有するチューブに、試料を加えた。特に明記しない限り、プライマーは、22サイクル(94℃、30秒;58℃、30秒;72℃、20秒)で一貫して行われるように標準化した。
【0110】
(実施例16)
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびホスホイメージャー解析によるRT−PCR産物の定量−RT−PCR産物に5μl/チューブのローディング色素を与え、混合し、65℃にて10分間加熱し、そして遠心分離した。10μlの各反応物を、標準的な条件下でPAGE(12%ポリアクリルアミド:ビス;15V/ウェル;一定電流)にかけた。次いで、ゲルを、ゲル保存バッファー(10% v/vグリセロール、7% v/v酢酸、40% v/vメタノール、43%脱イオン水)中で30分間インキュベートし、真空下で1〜2時間乾燥させ(80℃)、そして、電子的増強リン光造影システムにより、6〜24時間発色させた。可視化されたバンドを解析した。バンド当たりの計数を、グラフにプロットした。
【0111】
(実施例17)
ディファレンシャルディスプレイPCR−RNAを、糖質コルチコイド(Trm、1nM)で刺激した細胞から抽出した。加熱した、DNase処理した全RNA(総量10.5μlのDEPC−HO中5μg、65℃にて5分間)を、実施例7に記載のように逆転写したが、ただし、H−T11M(配列番号4)をMMLV−RTプライマーとして用いた。得られたcDNAを、上述のようにPCR増幅したが、ただし、種々の市販のプライマーセット(例えば、H−T11G(配列番号4)およびH−AP−10(配列番号5);ジェンハンター・コープ社、ナッシュビル、テネシー州)を用いた。放射標識されたPCR産物を、DNA配列決定ゲル上で、ゲル電気泳動により分画した。電気泳動後に、得られたゲルを真空乾燥し、そして、オートラジオグラフを一晩露出した。差次的に発現されたcDNAを表すバンドをゲルから切り取り、そして、Connerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:278 (1983年)の方法を用いたPCRにより再増幅した。PCR再増幅の産物を、ベクターPCR−II(TAクローニングキット;インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)内にクローニングした。
【0112】
(実施例18)
UMR106ラット骨肉腫細胞cDNAライブラリのスクリーニング−UMR106ライブラリ(2.5x1010pfu/ml)を、寒天プレート(LB下層寒天)上に5X10pfu/mlで蒔き、そして、プレートを37℃にて一晩インキュベートした。フィルター膜をプレートの上に2分間重ねた。取り出してすぐに、フィルターを変性させ、リンスし、乾燥し、そして紫外線架橋した。次いで、フィルターをプレハイブリダイゼーションバッファー(2X PIPES[pH6.5]、5%ホルムアミド、1%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA)中で、42℃にて2時間インキュベートした。260塩基対の放射標識プローブ(配列番号3;ランダムプライミングによる32P標識)を、ハイブリダイゼーションミックス/フィルター全体に加え、続いて、42℃にて18時間ハイブリダイズさせた。膜を、室温にて1回(10分間、1xSSC、0.1%SDS)、および55℃にて3回(15分間、0.1xSSC、0.1%SDS)洗浄した。
【0113】
それらを洗浄した後、膜を、上述のようにオートラジオグラフィーによって解析した。陽性クローンをプラーク精製した。偽陽性を最小限にするため、該手順を、第二のフィルターを用いて4分間繰り返した。プラーク精製したクローンを、ラムダSK(−)ファージミドとしてレスキューした。クローニングしたcDNAを、以下に記載のように配列決定した。
【0114】
(実施例19)
クローンの配列決定−クローニングしたcDNAインサートを、標準的な方法によって配列決定した。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Wiley lnterscience (1988年)。簡潔には、適切な濃度の終止混合物、鋳型および反応混合物を、適切なサイクリングプロトコール(95℃、30秒;68℃、30秒;72℃、60秒;x25)にかけた。停止混合物を加えて、配列決定反応を終止させた。92℃で3分間加熱した後、試料を、変性6%ポリアクリルアミド配列決定ゲル(29:1、アクリルアミド:ビス−アクリルアミド)に載せた。試料を、60ボルトにて約4時間、定電流で電気泳動した。電気泳動後、ゲルを真空乾燥させ、そしてオートラジオグラフ処理した。
【0115】
オートラジオグラフは、手動で解析した。得られた配列について、デフォルトのパラメータに設定したBLASTnプログラムを用いて、国立バイオテクノロジー情報センター(NIH,ベセスダ、メリーランド州;http://www.ncbi.nim.nih.go- vl)によって維持されるデータベースをスクリーニングした。配列データに基づいて、新たな配列決定プライマーを調製し、そして、全遺伝子が配列決定されるまで、該過程を繰り返した。すべての配列を、双方の配向で最低3回は確認した。
【0116】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列もまた、PCGENEソフトウェアパッケージ(第16.0版)を用いて解析した。ヌクレオチド配列に対する相同百分率値を、プログラムNALIGNにより、以下のパラメータ:非一致ヌクレオチドの重み、10;非一致ギャップの重み、10;考えられるヌクレオチドの最大数、50;および、考えられるヌクレオチドの最小数、50を用いて計算した。アミノ酸配列に関しては、相同性パーセント値を、PALIGNを用いて計算した。オープンギャップコストとユニットギャップコストの双方について、10の値を選択した。
【0117】
(実施例20)
RLMP cDNAのクローニング−実施例17に記載したディファレンシャルディスプレイPCR増幅産物は、およそ260塩基対の主要なバンドを含有した。この配列を用いて、ラット骨肉腫(UMR 106)cDNAライブラリをスクリーニングした。陽性クローンをネステッドプライマー解析にかけて、完全長cDNAの増幅に必要なプライマー配列(配列番号11、12、29、30および31)を得た。さらなる試験に向けて選択したそれらの陽性クローンの一つを、クローン10−4と命名した。
【0118】
ネステッドプライマー解析により決定されたクローン10−4の完全長cDNAの配列解析は、クローン10−4が、ディファレンシャルディスプレイPCRによって同定された元の260塩基対フラグメントを含有していることを示した。クローン10−4(1696塩基対;配列番号2)は、457アミノ酸(配列番号1)を有するタンパク質をコードする1371塩基対のオープンリーディングフレームを含有した。終止コドンであるTGAは、ヌクレオチド1444〜1446に生じた。ヌクレオチド1675〜1680のポリアデニル化シグナル、および隣接するポリ(A)テイルは、3’非コード領域に存在した。二つの潜在的なN−グリコシル化部位Asn−Lys−ThrおよびAsn−Arg−Thrは、配列番号1のアミノ酸位置113〜116および257〜259にあった。二つの潜在的なcAMPおよびcGMP依存性プロテインキナーゼリン酸化部位SerおよびThrは、アミノ酸位置191および349にそれぞれ見いだされた。五つの潜在的なプロテインキナーゼCリン酸化部位SerまたはThrは、アミノ酸位置3、115、166、219、442にあった。一つの潜在的なATP/GTP結合部位モチーフA(P−ループ)であるGly−Gly−Ser−Asn−Asn−Gly−Lys−Thrが、アミノ酸位置272〜279に決定された。
【0119】
加えて、二つの高度に保存された推定されるLIMドメインが、アミノ酸位置341〜391および400〜451に見いだされた。この新規に同定されたラットcDNAクローンにおける推定されるLIMドメインは、他の公知のLIMタンパク質のLIMドメインとかなりの相同性を示した。しかしながら、他のラットLIMタンパク質との全体的な相同性は、25%未満であった。RLMP(10−4とも称される)は、ヒトエニグマタンパク質と78.5%相同であったが(米国特許第5,504,192を参照されたい)、しかし、それと最も近いラットホモログCLP−36およびRIT−18とは、それぞれ24.5%および22.7%しか相同でなかった。
【0120】
(実施例21)
RLMP発現のノーザンブロット解析−実施例17および18にしたがって調製した、ROB由来全RNA 30μgを、1%アガロースフラットベッドゲル中でホルムアルデヒドゲル電気泳動によってサイズ分画し、そして、浸透圧によりナイロン膜にトランスブロットした。ブロットを、ランダムプライミングにより32P−dCTPで標識した完全長10−4 cDNAの600塩基対のEcoR1フラグメントでプローブした。
【0121】
ノーザンブロット解析は、RLMPプローブとハイブリダイズする1.7kb mRNA種を示した。RLMP mRNAは、BMP−6に曝露後24時間に、ROBにおいておよそ3.7倍亢進した。RMLPの発現亢進は、BMP−2またはBMP4で刺激したROBにおいては、24時間後に見られなかった。
【0122】
(実施例22)
統計学的方法−報告された各小結節/オステオカルシンの結果に関して、代表的な実験から得た5〜6ウェルからのデータを用いて、平均±S.E.M.を計算した。グラフを、各パラメータについての最大値を基準に正規化したデータにより示して、小結節数、石灰化面積およびオステオカルシンを同時グラフ化させてもよい。
【0123】
それぞれ報告されたRT−PCR、RNaseプロテクションアッセイまたはウエスタンブロット解析に関して、代表的な実験のトリプリケートの試料から得たデータを用いて、平均±S.E.M.を決定した。グラフを、第0日または陰性対照のいずれかを基準に正規化し、かつ対照値を超える倍増加として表して、示してもよい。統計学的有意性は、必要に応じてボンフェローニのポストホック多重比較補正を用いた、一元配置分散分析を用いて評価した。D. V. Huntsberger、「The Analysis of Variance」、Elements of Statistical Variance, P. Billingsley (編), 298-330ページ, Allyn & Bacon Inc., ボストン、マサチューセッツ州 (1977年)、およびシグマスタット、 ジャンデル・サイエンティフィック社、コルテマデラ、カリフォルニア州。有意性に関するアルファ水準は、p<0.05と定義した。
【0124】
(実施例23)
ウエスタンブロット解析によるラットLIM石灰化タンパク質の検出−ポリクローナル抗体を、Englandら、Biochim. Biophys. Acta, 623:171 (1980年)、およびTimmerら、J. Biol. Chem., 268:24863 (1993年)の方法にしたがって調製した。
【0125】
HeLa細胞に、pCMV2/RLMPをトランスフェクトした。タンパク質を、Hairら、Leukemia Research, 20:1 (1996年)の方法にしたがって、トランスフェクトした細胞から回収した。天然RLMPのウエスタンブロット解析を、Towbinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:4350 (1979年)に記載のように行った。
【0126】
(実施例24)
ラットLMP−ユニーク(RLMPU)由来ヒトPCR産物の合成−ラットLMP−1 cDNAの配列に基づいて、順方向および逆方向PCRプライマー(配列番号15および16)を合成し、そして、ユニークな223塩基対の配列を、ラットLMP−1 cDNAからPCR増幅した。類似するPCR産物を、ヒトMG63骨肉腫細胞のcDNAから、同じPCRプライマーを用いて単離した。
【0127】
RNAを、T−75フラスコ内で生育させたMG63骨肉腫細胞から回収した。培養上清を吸引によって取り除き、そして、フラスコにデュプリケートで3.0mlのGIT溶液を重ね、5〜10秒間旋回させ、そして、得られた溶液を1.5mlエッペンドルフチューブに移した(0.6ml/チューブで5チューブ)。RNAを、標準的な方法(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第7章、19ページ、コールドスプリングハーバー研究所プレス(1989年)、およびBodenら、Endocrinology, 138:2820-28 (1997年)を参照されたい)のわずかな修飾によって精製した。簡潔には、0.6mlの試料に、2.0M酢酸ナトリウム(pH4.0)60μl、水飽和フェノール550μlおよびクロロホルム:イソアミルアルコール(49:1)150μlを加えた。これらの試薬を加えた後、試料をボルテックスし、遠心分離し(10000Xg;20分間:4℃)、そして、水相を新しいチューブに移した。イソプロパノール(600μl)を加え、そして、RNAを−20℃にて一晩沈殿させた。試料を遠心分離し(10000xg;20分間)、そして、上清を穏やかに吸引した。400μlのDEPC処理水にペレットを再懸濁し、フェノール−クロロホルム(1:1)で1回抽出し、クロロホルム;イソアミルアルコール(24:1)で抽出し、そして、酢酸ナトリウム(3.0M;pH5.2)40μlおよび無水エタノール1.0ml中で、−20℃にて一晩沈殿させた。沈殿後に、試料を遠心分離し(10000xg;20分間)、70%エタノールで1回洗浄し、5〜10分間空気乾燥させ、そして、20μlのDEPC処理水に再懸濁した。RNA濃度を、光学密度により得た。
【0128】
全RNA(総量10.5μlのDEPC−HO中5μg)を、65℃で5分間加熱し、そして次いで、5xMMLV−RTバッファー4μl、dNTP 2μl、dT17プライマー(10pmol/ml)2μl、RNAsin(40U/ml)0.5μlおよびMMLV−RT(200単位/μl)1μlを含有するチューブに加えた。反応物を、37℃で1時間インキュベートした。その後、95℃で5分間加熱することにより、MMLV−RTを不活化した。試料を、80μLの水を加えることにより希釈した。
【0129】
転写された試料(5μl)を、標準的な方法論を用いてポリメラーゼ連鎖反応にかけた(総量50μl)。Bodenら、Endocrinology, 138:2820-28 (1997年);Ausubelら、「Quantitation of rare DNAs by the polymerase chain reaction」、Current Protocols in Molecular Biology, 第15.31-1章、ワイリー&サンズ社、トレントン、ニュージャージー州(1990年)。簡潔には、試料を、水および適量のPCRバッファー(25mM MgCl、dNTP、順方向および逆方向プライマー(RLMPUに関しては;配列番号15および16)、32P−dCTPおよびDNAポリメラーゼ)を含有するチューブに加えた。プライマーを、放射活性バンドの検出には22サイクルで、そして、スクリーニングプローブとしての使用のためのPCR産物の増幅には33サイクルで、一貫して実行するように設計した(94℃、30秒、58℃、30秒;72℃、20秒)。アガロースゲル精製したMG63骨肉腫由来PCR産物の配列決定によって、配列がRLMPU PCR産物と95%を超えて相同であることを得た。この配列を、HLMPユニーク領域(HLMPU;配列番号6)と命名する。
【0130】
(実施例25)
逆転写酵素由来MG63 cDNAのスクリーニング−特定のプライマー(配列番号16および17)を用いたPCRによって、実施例15に記載のようにスクリーニングを行った。717塩基対のMG63 PCR産物をアガロースゲル精製し、そして、所与のプライマー(配列番号12、15、16、17、18、27および28)を用いて配列決定した。配列は、双方向において最低2回、確認した。MG63配列を互いに、そして次いで、完全長ラットLMP cDNA配列に対して並置して、部分的なヒトLMP cDNA配列(配列番号7)を得た。
【0131】
(実施例26)
ヒト心臓cDNAライブラリのスクリーニング−ノーザンブロット実験に基づき、LMP−1はヒト心筋を含む複数の異なる組織に異なるレベルで発現すると判断された。したがって、ヒト心臓cDNAライブラリを検証した。ライブラリを寒天プレート(LB下層寒天)上に5X10pfu/mlで蒔き、そして、プレートを37℃にて一晩生育させた。フィルター膜をプレートの上に2分間重ねた。その後、フィルターを変性させ、リンスし、乾燥させ、紫外線架橋し、そして、プレハイブリダイゼーションバッファー(2X PIPES[pH6.5];5%ホルムアミド、1%SDS、100g/ml変性サケ精子DNA)中で、42℃にて2時間インキュベートした。放射標識したLMPユニークの223塩基対プローブ(32P、ランダムプライマー標識;配列番号6)を加え、そして、42℃にて18時間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後に、膜を室温にて1回(10分間、1xSSC、0.1%SDS)、および55℃にて3回(15分間、0.1xSSC、0.1%SDS)洗浄した。オートラジオグラフィによって同定された、二重陽性のプラーク精製した心臓ライブラリクローンを、製造業者(ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州)のプロトコールにしたがい、ラムダファージミドとしてレスキューした。
【0132】
陽性クローンの制限消化により、様々なサイズのcDNA挿入断片が得られた。600塩基対長を超える挿入断片を、配列決定による初回スクリーニング用に選択した。これらの挿入断片を、実施例19に記載の標準的な方法によって配列決定した。
【0133】
一つのクローンである7番もまた、配列番号11〜14、16および27に対応するプライマーを用いて、自動化された配列解析にかけた。これらの方法によって得られた配列は、定常的に97〜100%相同であった。クローン7(心臓ライブラリに由来する部分的ヒトLMP−1 cDNA;配列番号8)は、翻訳された領域においてラットLMP cDNA配列と87%を超えて相同である配列を含有した。
【0134】
(実施例27)
完全長ヒトLMP−1 cDNAの決定
MG63ヒト骨肉腫細胞cDNA配列とヒト心臓cDNAクローン7配列との重複領域を用いて、これらの二つの配列を並置し、そして、1644塩基対の完全ヒトcDNA配列を得た。PCGENEソフトウェアパッケージ中のプログラムNALIGNを用いて、二つの配列を並置した。二つの配列の重複領域は、MG63 cDNA(配列番号7)中のヌクレオチド672における、対応するヌクレオチド516においてEGOの代わりに「A」を有するクローン7(配列番号8)に対する、一つのヌクレオチド置換を除けば完全に相同である、およそ360塩基対を構成した。
【0135】
二つの並置した配列を、PCGENEの別の副プログラムであるSEQINを用い、MG63骨肉腫cDNAクローンの「G」置換を用いて、連結させた。得られた配列を、配列番号9に示す。新規ヒト由来配列とラットLMP−1 cDNAとの並置を、NALIGNを用いて成し遂げた。完全長ヒトLMP−1 cDNA配列(配列番号9)は、ラットLMP−1 cDNA配列の翻訳部分と87.3%相同である。
【0136】
(実施例28)
ヒトLMP−1のアミノ酸配列の決定−ヒトLMP−1の推定されるアミノ酸配列を、PCGENEの副プログラムTRNSLを用いて決定した。配列番号9におけるオープンリーディングフレームは、457アミノ酸(配列番号10)を含んでなるタンパク質をコードする。PCGENEの副プログラムPalignを用いて、ヒトLMP−1アミノ酸配列が、ラットLMP−1アミノ酸配列と94.1%相同であることが見いだされた。
【0137】
(実施例29)
ヒトLMP cDNAの5’非翻訳領域の決定−MG63 5’cDNAを、MG63全RNAのネステッドRT−PCRにより、cDNA末端の5’迅速増幅(5’RACE)プロトコールを用いて増幅した。この方法には、3’末端に二つの縮重ヌクレオチド位置を有するロックドッキングオリゴ(dT)プライマーを用いた、第一鎖cDNA合成が含まれた(Chenchikら、CLONTECHniques. x :5 (1995年);Borsonら、PC Methods Applic., 2:144 (1993年))。第二鎖の合成は、Gublerら、Gene. 25:263 (1983年)の方法にしたがって、大腸菌DNAポリメラーゼI、RNase Hおよび大腸菌DNAリガーゼのカクテルで行った。T4 DNAポリメラーゼにより平滑末端を創出した後、二本鎖cDNAをフラグメント(5’−CTAATACGACTCACTATAGGGCTCGAGCGGCCGCCCGGGCAGGT−−3’)(配列番号19)にライゲーションした。RACEに先立ち、アダプターをライゲーションしたcDNAを、マラソンRACE反応に適した濃度に希釈した(1:50)。次いで、アダプターをライゲーションした二本鎖cDNAを、特異的にクローニングされるように準備した。
【0138】
第1巡のPCRを、センスプライマーとしてのアダプター特異的オリゴヌクレオチド5’−CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC−3’(AP−1)(配列番号20)、および実施例16に記載したユニーク領域(HLMPU)由来の遺伝子特異プライマー(GSP)を用いて行った。第2巡のPCRを、ネステッドプライマーGSP1−HLMPU(アンチセンス/逆方向プライマー)(配列番号23)およびGSP2−HLMPUF(配列番号24)(実施例16を参照されたい;センス/順方向プライマー)を用いて行った。PCRは、抗体を介するが、ただし他の点では標準的なホットスタートプロトコールを利用する市販のキット(アドバンテージcDNA PCRコアキット;クロンテック・ラボラトリーズInc.、パロアルト、カリフォルニア州)を用いて、行った。MG63 cDNAに対するPCR条件には、初回のホットスタート変性(94℃;60秒)に続く、94℃、30秒;60℃、30秒;68℃、4分;30サイクルが含まれた。第1巡PCR産物はおよそ750塩基対長であったが、ネステッドPCR産物は、およそ230塩基対長であった。第1巡PCR産物を、線状化したpCR2.1ベクター(3.9Kb)内にクローニングした。挿入断片を、M13順方向および逆方向プライマー(配列番号11;配列番号12)を用いて、双方向において配列決定した。
【0139】
(実施例30)
5’UTRを伴う完全長ヒトLMP−1 cDNAの決定−重複しているMG63ヒト骨肉腫細胞cDNA 5’−UTR配列(配列番号21)、MG63 717塩基対配列(実施例17;配列番号8)およびヒト心臓cDNAクローン7配列(実施例26)を並置して、1704塩基対の新規ヒトcDNA配列(配列番号22)を得た。この並置は、NALIGN(PCGENEとOmiga 1.0の両方;インテリジェネティクス社)を用いて成し遂げた。重複配列は、全717塩基対領域(実施例17)のほとんどを100%相同で構成した。並置した配列の連結は、SEQINを用いて成し遂げた。
【0140】
(実施例31)
LIMタンパク質発現ベクターの構築−実施例25および26に記載した配列を用いて、pHIS−5ATG LMP−1s発現ベクターの構築を実施した。717塩基対のクローン(実施例25;配列番号7)を、ClaIおよびEcoRVで消化した。小フラグメント(約250塩基対)を、ゲル精製した。クローン7(実施例26;配列番号8)を、ClaIおよびxbaIで消化し、そして、1400塩基対のフラグメントをゲル精製した。単離された250塩基対および1400塩基対の制限フラグメントをライゲーションして、約1650塩基対のフラグメントを形成した。
【0141】
クローン7における単一ヌクレオチド置換(717塩基対のPCR配列および元のラット配列と比較して)により、翻訳される塩基対672において終止コドンが生じた。この終止コドンのために、LMP−1sと称される切断型(短い)タンパク質がコードされた。これは、発現ベクター(配列番号32)において用いられるコンストラクトであった。5’UTRを伴う完全長cDNA配列(配列番号33)を、配列番号32を5’RACE配列(配列番号21)と並置することによって創出した。次いで、LMP−1sのアミノ酸配列(配列番号34)を223アミノ酸のタンパク質として推定し、そして、ウエスタンブロットにより(実施例23におけるように)約23.7kDの予測分子量で泳動することを確認した。pHis−ATGベクター(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)を、EcoRVおよびXbaIで消化した。ベクターを回収し、そして次いで、1650塩基対の制限フラグメントを、線状化したpHis−ATG内にライゲーションした。ライゲーションした産物をクローニングし、そして増幅した。挿入断片HLMP−1sを伴うpHIS−Aとも称される、pHis−ATG−LMP−1s発現ベクターを、標準的な方法により精製した。
【0142】
(実施例32)
LMP発現ベクターを用いたin vitroでの骨小結節形成および石灰化の誘導−実施例9にしたがい、ラット頭蓋冠細胞を単離し、そして二次培養において生育させた。培養物を、実施例9に記載のように、刺激しないか、あるいは糖質コルチコイド(GC)で刺激した。実施例25にしたがい、スーパーフェクト試薬(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)トランスフェクション・プロトコールの修飾を用いて、3μg/ウェルの各ベクターを二次ラット頭蓋冠骨芽細胞培養物へトランスフェクトした。石灰化小結節を、実施例11に記載のように、フォン・コッサ染色によって視覚化した。
【0143】
ヒトLMP−1s遺伝子産物の過剰発現のみは、骨小結節形成(約203小結節/ウェル)をin vitroで誘導した。小結節のレベルは、GC陽性対照によって誘導されたもの(約412小結節/ウェル)のおよそ50%であった。他の陽性対照には、pHisA−LMP−Rat発現ベクター(約152小結節/ウェル)およびpCMV2/LMP−Rat−Fwd発現ベクター(約206小結節/ウェル)が含まれ、一方、陰性対照には、pCMV2/LMP−Rat−Rev発現ベクター(約2小結節/ウェル)および非処理(NT)プレート(約4小結節/ウェル)が含まれた。これらのデータは、ヒトcDNAがラットcDNAと少なくとも同じ程度に骨誘導性であったことを実証している。その効果は、GC刺激により観察されるものより少なかったが、おそらく、発現ベクターの最適用量を下回っていたためであろう。
【0144】
(実施例33)
in vitroおよびin vivoでのLMPにより誘導される細胞分化−クローン10−4におけるラットLMP cDNA(実施例20を参照されたい)を、クローンをNotIおよびApaIで37℃にて一晩二重消化することにより、ベクターから切り出した。ベクターpCMV2 MCS(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)を、同じ制限酵素で消化した。クローン10−4およびpCMV2に由来する双方の線状cDNAフラグメントをゲル精製し、抽出し、そしてTAリガーゼを用いてライゲーションした。ライゲーションしたDNAをゲル精製し、抽出し、そして、増幅用の大腸菌JM109細胞を形質転換するために用いた。陽性の寒天コロニーを拾い、NotIおよびApaIで消化し、そして、制限消化物をゲル電気泳動により検証した。ストック培養物を、陽性クローンから調製した。
【0145】
リバースベクターを、用いた制限酵素がXbaIおよびHindIIIであったことを除いては類似の様式で、調製した。これらの制限酵素を用いたため、クローン10−4由来のLMP cDNAフラグメントは、pRc/CMV2内に逆の(すなわち、翻訳不可能な)配向で挿入された。作り出された組換えベクターを、pCMV2/RLMPと命名した。
【0146】
適量のpCMV10−4(60nMの最終濃度が最適である[3μg];本実験に関しては、0〜600nM/ウェル[0〜30μg/ウェル]の範囲の最終濃度が好ましい)を最小イーグル培地(MEM)に再懸濁して最終量450μlとし、そして、10秒間ボルテックスした。スーパーフェクトを加え(7.5μl/ml最終溶液)、該溶液を10秒間ボルテックスし、そして次いで、室温にて10分間インキュベートした。このインキュベート後に、10%FBS添加MEM(1ml/ウェル;6ml/プレート)を加え、そして、ピペット操作により混合した。
【0147】
次いで、得られた溶液を、洗浄したROB培養物上へ速やかにピペット操作した(1ml/ウェル)。培養物を、5%COを含有する加湿雰囲気下で、37℃にて2時間インキュベートした。その後、細胞を無菌PBSで穏やかに1回洗浄し、そして、適切な通常のインキュベーション培地を加えた。
【0148】
結果は、pCMV10−4で誘導したすべてのラット培養物における有意な骨小結節形成を実証した。例えば、pCMV10−4をトランスフェクトされた細胞は、429小結節/ウェルを産生した。Trmへ曝露された陽性対照培養物は、460小結節/ウェルを産生した。対照的に、処理を受けなかった陰性対照は、1小結節/ウェルを産生した。同様に、培養物にpCMV10−4(リバース)をトランスフェクトしたとき、小結節は観察されなかった。
【0149】
in vivoでのde novo骨形成を実証するために、4〜5週齢の正常ラット(mu/+;劣勢無胸腺状態についてヘテロ接合)の後肢より、骨髄を吸引した。吸引した骨髄細胞をアルファMEM中で洗浄し、遠心分離し、そして、ペレットを10mM Tris(pH7.4)中0.83%NHClに再懸濁させることによって、RBCを溶解した。残った骨髄細胞をMEMで3回洗浄し、そして、3x10細胞につき9μgのpCMV−LMP−1s(順もしくは逆の配向)で、2時間トランスフェクトした。次いで、トランスフェクトされた細胞をMEMで2回洗浄し、そして、3x10細胞/mlの濃度で再懸濁させた。
【0150】
細胞懸濁液(100μl)を、無菌ピペットにより無菌の2x5mm I型ウシコラーゲンディスク(Sulzerオルソペディックス社、フィートリッジ、コロラド州)に適用した。ディスクを、4〜5週齢無胸腺ラット(mu/mu)の頭蓋、胸部または腹部脊椎に、外科的に皮下移植した。動物を3〜4週目に屠殺し、その時点で、ディスクまたは外科的区域を切り出し、そして70%エタノール中に固定した。固定した標本をX線撮影によって解析し、そして、非脱灰の組織学的検査をゴールドナー・トリクロームにより染色した厚さ5μmの切片について行った。コラーゲンディスクに代わって、失活させ(グアニジン抽出)、鉱質除去した骨マトリックス(オステオテック社、Shrewsbury、ニュージャージー州)を用いた実験も行った。
【0151】
X線撮影により、高レベルの石灰化骨形成が明らかとなり、このことは、LMP−isをトランスフェクトされた骨髄細胞を含有する元のコラーゲンディスクの形態と適合した。陰性対照(翻訳されるタンパク質をコードしない、LMP−1s cDNAの逆配向バージョンをトランスフェクトされた細胞)では、石灰化骨形成は観察されず、かつ、担体の吸収は十分に進行しているように見えた。
【0152】
組織像によって、LMP−1sをトランスフェクトされたインプラント中の骨芽細胞に沿って並ぶ新たな骨梁が明らかとなった。陰性対照における担体が部分的に再吸収されている所に、骨は見られなかった。
【0153】
18セット(9の陰性対照pCMV−LMP−REVおよび9の実験pCMV−LMP−1s)のインプラントを無胸腺ラットの腰椎と胸椎の部位へ交互に加えた、さらなる実験のX線撮影により、0/9の陰性対象インプラントが椎骨間に骨形成(脊椎融合)を呈することが実証された。pCMV−LMP−1s処理インプラントの9つすべては、椎骨間に強固な骨融合を呈した。
【0154】
(実施例34)
実施例10および11において実証された配列からの、pHIS−5’ATG LMP−1s発現ベクターの合成−717塩基対クローン(実施例25)を、ClaIおよびEcoRV(ニューイングランド・バイオロジカルズ社、シティ、マサチューセッツ州)で消化した。小フラグメント(約250塩基対)を、ゲル精製した。クローン7番(実施例18)を、ClaIおよびXbaIで消化した。その消化物から、1400塩基対のフラグメントをゲル精製した。単離された250塩基対および1400塩基対のcDNAフラグメントを、標準的な方法によりライゲーションして、約1650bpのフラグメントを形成した。pHis−Aベクター(インビトロジェン社)を、EcoRVおよびXbaIで消化した。線状化されたベクターを回収し、そして、キメラの1650塩基対cDNAフラグメントにライゲーションした。ライゲーションされた産物を、標準的な方法によってクローニングおよび増幅し、そして、pHis−A−5’ATG LMP−1s発現ベクター(挿入断片HLMP−1sを伴うベクターpHis−Aとも称される)を、すでに記載されたように、ATCCに寄託した。
【0155】
(実施例35)
pHis−5’ATG LMP−1s発現ベクターによるin vitroでの骨小結節形成および石灰化の誘導−実施例9にしたがって、ラット頭蓋冠細胞を単離し、そして二次培養において生育させた。培養物を、実施例9にしたがって、刺激しないか、あるいは糖質コルチコイド(GC)で刺激した。培養物に、組換えpHis−AベクターDNA 3μg/ウェルを、実施例33に記載のようにトランスフェクトした。石灰化小結節を、実施例12にしたがって、フォン・コッサ染色により視覚化した。
【0156】
ヒトLMP−1s遺伝子産物の過剰発現のみ(すなわち、GC刺激なし)は、有意な骨小結節形成(約203小結節/ウェル)をin vitroで誘導した。これは、GC陽性対照に曝露された細胞によって産生された小結節量(約412小結節/ウェル)のおよそ50%である。同様な結果は、pHisA−LMP−Rat発現ベクター(約152小結節/ウェル)およびpCMV2/LMP−Rat−Fwd(約206小結節/ウェル)をトランスフェクトされた培養物で得られた。対照的に、陰性対照pCMV2/LMP−Rat−Revは、(約2小結節/ウェル)を生じ、一方、非処理プレートでは、およそ4小結節/ウェルが認められた。これらのデータは、ヒトLMP−1 cDNAが、このモデル系においてラットLMP−1 cDNAと少なくとも同じ程度に骨誘導性であったことを、実証している。この実験における効果は、GC刺激により観察されたものよりは少なかったが;しかし、効果が同程度である場合もあった。
【0157】
(実施例36)
LMPは可溶性骨誘導因子の分泌を誘導する−実施例24に記載のようなラット頭蓋冠骨芽細胞培養物におけるRLMP−1またはHLMP−1sの過剰発現は、陰性対照において観察されたものよりも有意に大きな小結節形成をもたらした。LIM石灰化タンパク質の作用機序を検討するため、条件培地を異なる時点で回収し、10倍に濃縮し、無菌ろ過し、新鮮血清含有培地においてその元の濃度へと希釈し、そして、トランスフェクトしていない細胞へ4日間適用した。
【0158】
RLMP−1またはHLMP−1sをトランスフェクトされた細胞から第4日に回収した条件培地は、トランスフェクトされた細胞におけるRLMP−1の直接的な過剰発現とほぼ同程度に、小結節形成を誘導するのに有効であった。逆配向のRLMP−1またはHLMP−1をトランスフェクトされた細胞から得た条件培地は、小結節形成に対して明らかな効果を及ぼさなかった。LMP−1をトランスフェクトされた培養物から第4日よりも前に回収した条件培地も、小結節形成を誘導しなかった。これらのデータは、LMP−1の発現が、可溶性因子の合成および/または分泌を引き起こし、それが、トランスフェクション後4日まで有効量にて培養培地に出現しなかったことを、示唆している。
【0159】
rLMP−1の過剰発現が骨誘導性因子の培地中への分泌をもたらしたことから、ウエスタンブロット解析を用いて、LMP−1タンパク質が培地中に存在するかどうかを測定した。rLMP−1タンパク質の存在を、LMP−1(QDPDEE)に特異的な抗体を用いて評価し、そして、慣用の手段により検出した。LMP−1タンパク質は、培養物の細胞層にのみ見いだされ、かつ、培地中には検出されなかった。
【0160】
骨誘導性可溶性因子の部分精製を、標準的な25%および100%硫酸アンモニウムでのカットに続く、DE−52陰イオン交換バッチクロマトグラフィ(100mMまたは500mM NaCl)によって、成し遂げた。全活性は、高硫酸アンモニウム、高NaCl画分中に観察された。このような局在性は、単一の因子が培地の条件付けに関与している可能性と一致する。
【0161】
すべての引用された出版物は、その全体が、参照によって本明細書に援用される。
上述の詳細は、本発明の原理を教示し、実施例を例示の目的で提供するが、本開示を読むことにより、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態および細部における種々の変更を行うことが可能であることが、当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の分化を非骨原性細胞系譜から骨原性細胞系譜へと切り替える方法であって、Smurf1タンパク質とSmad1/5タンパク質との間の結合を破壊可能な剤を前記細胞に導入することを含んでなる、前記方法。
【請求項2】
剤を導入する工程が、前記細胞中のLMPタンパク質またはそのフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を過剰発現させることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が筋芽細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を培養する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
LMPタンパク質またはそのフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を、細胞内に導入する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
核酸配列がベクター内に含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
核酸配列が、配列番号47を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
核酸配列が、配列番号49を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
核酸配列が、配列番号50または配列番号51を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
LMP−1タンパク質のフラグメントが、Smurf1タンパク質のWW2ドメインと結合可能である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
骨空隙の治療方法であって、
(a) 非骨原性細胞系譜の少なくとも一細胞を得ること;
(b) 少なくとも一細胞にSmurf1タンパク質とSmad1/5タンパク質との間の結合を破壊可能な剤を導入すること;
(c) 少なくとも一細胞を、少なくとも一細胞を骨原性細胞系譜へと導くのに十分な時間、培養すること;
(d) 骨原性細胞系譜の少なくとも一細胞を、骨空隙を有する患者に導入すること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項12】
非骨原性細胞系譜の前記少なくとも一細胞が、筋芽細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
非骨原性細胞系譜の前記少なくとも一細胞が、患者由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
非骨原性細胞系譜の前記少なくとも一細胞を、骨空隙の形に成形可能な基質上で培養する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記基質がメッシュまたはケージである、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
剤が、LMPタンパク質またはそのフラグメントと少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
核酸配列がベクター内に含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
核酸配列が、配列番号47を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
核酸配列が、配列番号49を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
核酸配列が、配列番号50または配列番号51を含んでなるアミノ酸配列をコードする、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
LMP−1タンパク質のフラグメントが、Smurf1タンパク質のWW2ドメインと結合可能である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
骨増殖因子の細胞内シグナル伝達経路を評価するための細胞培養モデル系を作出する方法であって、
(a) 適切な培地中で筋細胞を培養し;
(b) 前記筋細胞内に、切断型ヒトLMPタンパク質と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードするcDNA分子を形質導入またはトランスフェクトし;
(c) 筋細胞において骨増殖因子を発現させ;
(d) 前記筋細胞において筋管を阻害するのに十分な時間を取り;そして、
(e) 前記筋細胞を、少なくとも一つの骨芽細胞フェノタイプを呈するよう誘導する;
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項23】
骨芽細胞のLMP誘導の機序を検証する工程をさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
増殖因子が、TGF−βおよびBMP増殖因子からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
BMPが、BMP−2、BMP−5およびBMP−6からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
筋細胞がC12細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
形質導入を、プラスミドおよびウイルスからなる群より選択されるベクターを用いて行う、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
切断型ヒトLMPタンパク質が、LMP−1、hLMP−1、切断型hLMP−1、hLMP−2およびhLMP−3からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
筋細胞における骨増殖因子の細胞内シグナル伝達経路を評価するための方法であって、
(a) 適切な培地中で筋細胞を培養し;
(b) 前記筋細胞内に、切断型ヒトLMPタンパク質と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードするcDNA分子を形質導入またはトランスフェクトし;
(c) 筋細胞において骨増殖因子を発現させ;
(d) 前記筋細胞において筋管を阻害するのに十分な時間を取り;そして、
(e) 前記筋細胞を、少なくとも一つの骨芽細胞フェノタイプを呈するよう誘導する;
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項30】
骨芽細胞のLMP誘導の機序を検証する工程をさらに含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
増殖因子が、TGF−βおよびBMP増殖因子からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
筋細胞が哺乳動物C12細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
形質導入を、プラスミドおよびウイルスからなる群より選択されるベクターを用いて行う、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
切断型ヒトLMPタンパク質が、LMP−1、hLMP−1、切断型hLMP−1、hLMP−2およびhLMP−3からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
骨増殖因子の細胞内シグナル伝達経路上で外因性因子の活性をスクリーニングする方法であって、
(a) 適切な培地中で筋細胞を培養し;
(b) 前記筋細胞内に、切断型ヒトLMPタンパク質と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードするcDNA分子を形質導入またはトランスフェクトし;
(c) 筋細胞において骨増殖因子を発現させ;
(d) 前記筋細胞において筋管を阻害するのに十分な時間を取り;
(e) 前記筋細胞を、少なくとも一つの骨芽細胞フェノタイプを呈するよう誘導し;そして、
(f) 工程(e)の前記筋細胞のLMP誘導の機序に対する外部因子の効果を検証する;
工程を含んでなる、前記方法。
【請求項36】
増殖因子が、TGF−βおよびBMP増殖因子からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
BMP増殖因子が、BMP−2、BMP−5およびBMP−6からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
筋細胞が哺乳動物C12細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
形質導入を、プラスミドおよびウイルスからなる群より選択されるベクターを用いて行う、請求項35に記載の方法。

【公表番号】特表2010−506567(P2010−506567A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532547(P2009−532547)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/080910
【国際公開番号】WO2008/045919
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】