説明

新規TAB2蛋白質

【課題】炎症性サイトカイン(インターロイキン−1)IL-1のシグナル伝達に関与する新規なシグナル伝達蛋白質、該蛋白質を利用したIL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法、該スクリーニングにより単離しうる化合物を有効成分として含有するIL-1のシグナル伝達阻害剤を提供する。
【解決手段】TRAF6とTAK1のアダプター分子として働き、IL-1のシグナル伝達におけるTAK1の活性化を仲介する新規なシグナル伝達因子TAB2。TAB2は、IL-1によるNF-κBやJNKの活性化を誘導した。TAB2のドミナントネガティブ変異体によりTAB2のシグナル伝達を阻害すると、IL-1によるこれらのシグナル伝達は阻害された。TAB2におけるシグナル伝達を阻害する抗炎症作用を有する医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性サイトカインIL-1のシグナル伝達に関与する新規なシグナル伝達蛋白質に関する。また、本発明は、該蛋白質の活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法に関する。本発明はまた、該蛋白質の活性の阻害剤を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-1(IL-1)は、炎症過程において様々な作用を有する炎症性サイトカインである。細胞をIL-1で刺激するとシグナル伝達のカスケードが起動し、c-Jun N-末端キナーゼ(JNK)および核内転写因子κB(NF-κB)の活性化などが起こり、結果として核内の多くの炎症性遺伝子の発現を上昇させる(Dinarello,C.A.(1996) Blood, 87, 2095-2147)。刺激をしていない細胞においては、NF-κBは、抑制蛋白であるIκBと複合体を形成し、細胞質中に隔離されている。サイトカイン類や他の細胞外刺激による刺激を受けると、IκB蛋白質の特定のセリン残基がリン酸化され、ユビキチン化とそれに続くプロテアソーム経路によるIκBの分解が起こる。IκBが分解されるとNF-κBが放出され、それが核内に移行し特定の標的遺伝子の転写を刺激する(Thanos,D., and Maniatis,T. (1995) Cell, 80, 529-532; Verma,I.M. et al., (1995) Genes Dev., 9, 2723-2735; Baeuerle,P.A. and Baltimore,D. (1996) Cell, 87, 13-20)。
【0003】
最近の研究により、IL-1シグナル伝達経路がどのようにして制御されているかを説明するモデルが提供されている。IL-1の最初のシグナル伝達は、リガンドにより誘発されるタイプI受容体(IL-1RI)および受容体アクセサリー蛋白質(IL-1RAcP)の複合体形成である(Greenfeder,S.A. et al., (1995) J.Biol.Chem., 270, 13757-13765; Huang,J. et al., (1997) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 94, 12829-12832; Korherr,C. et al., (1997) Eur.J.Immunol., 27, 262-267; Wesche,H. et al., (1997) J.Biol.Chem., 272, 7727-7731)。その後、細胞質の骨髄細胞分化蛋白質MyD88がこの複合体へと動員され(Cao,Z. et al., (1996) Science, 271, 1128-1131; Muzio,M. et al., (1997) Science, 278, 1612-1615; Wesche, H. et al., (1997) Immunity, 7, 837-847; Burns,K. et al., (1998) J.Biol.Chem., 273, 12203-12209)、これによりセリン/スレオニンIL-1受容体結合キナーゼ(IRAK)の結合が可能になる。IRAKは高度にリン酸化され、受容体複合体から解離し、IL-1によるJNKおよびNF-κBの活性化に必要なTRAF6(TNF受容体結合因子6)と相互作用する(Cao,Z. et al., (1996) Nature, 383, 443-446; Yamin,T.T. and Miller,D.K. (1997) J.Biol.Chem., 272, 21540-21547; Lomaga,M.A. et al., (1999) Genes Dev., 13, 1015-1024)。別のセリン/スレオニンキナーゼであるNF-κB誘導キナーゼ(NIK)は、JNKの活性化は起こさないが、IL-1応答でのNF-κB活性化において下流に位置する成分と考えられている(Malinin,N.L. et al., (1997) Nature, 385, 540-544)。最近になって、2種のIκBキナーゼ(IKKα/IKK1およびIKKβ/IKK2)が、シグナルにより誘導されるIκB蛋白質のリン酸化へ関与していることが示唆された(DiDonato,J.A. et al., (1997) Nature, 388, 548-554; Mercurio,F. et al., (1997) Science, 278, 860-866; Regnier,C.H. et al., (1997) Cell, 90, 373-383; Woronicz,J.D. et al., (1997) Science, 278, 866-869; Zandi,E. et al., (1997) Cell, 91, 243-252)。これらのIKKは大きな複合体の成分であり、NEMO(NF-κB必須モジュレータ)/IKKγを含む(Rothwarf,D.M. et al., (1998) Nature, 395, 297-300; Yamaoka,S. et al., (1998) Cell, 93, 1231-1240)。本発明者らは最近、蛋白質キナーゼTAK1が、IL-1シグナル伝達経路に関与していることを明らかにした(Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)。細胞がIL-1に曝されると、内因性TAK1がTRAF6複合体に動員され、そこで活性化される。活性化されたTAK1は、次にMAPキナーゼカスケードを刺激しJNK活性化をもたらし、かつNIK-IKKカスケードを刺激しNF-κBの活性化をもたらす。従って、TAK1は、IL-1で活性化されるシグナル伝達経路において、TRAF6の下流に位置している。このことは、IL-1により誘導されるJNKおよびNF-κBの2つの活性化経路の分岐が、TAK1レベルで生じることを示唆している。
【0004】
TAK1は、当初はトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)ファミリーリガンドによって活性化されるMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAPKKK)として同定された。本発明者らは先に、TAK1は、哺乳動物細胞においてTGF-βシグナル伝達経路において機能することを明らかにしている(Yamaguchi,K. et al., (1995) Science, 270, 2008-2011; Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。初期のアフリカツメガエル胚においても、TAK1は、同じくTGF-βファミリーリガンドである骨形成因子(BMP)によって媒介される中胚葉誘導およびパターン形成に関与している(Shibuya,H. et al., (1998) EMBO J., 17, 1019-1028; Yamaguchi, K. et al., (1999) EMBO J., 18, 179-187)。更に、本発明者らは最近になって、TAK1が、Wntシグナル伝達経路を負に制御しているMAPキナーゼ様経路に関与していることを見出した(Ishitani,T. et al., (1999) Nature, 399, 798-802)。このように、TAK1は別々の違った経路を活性化する能力があるという事実は、シグナル伝達経路における特異性がどのようにして達成されるかという問題を新たに生じる。異なるシグナル伝達経路における特異的成分を同定することにより、様々なことなる刺激に対する反応におけるTAK1の選択的活性化に関するメカニズムを解明できることが期待される。
【0005】
MAPKKKには、Rafファミリー(Raf-1およびB-Raf)、MEKKファミリー(MEKK1、MEKK2およびMEKK3)、MLKファミリー(MLK1、MLK2、MLK3およびDLK)、更にはMTK1/MEKK4およびASK1を含むいくつかのグループが知られている(Fanger,G.R. et al., (1997) Curr.Opin.Genet.Dev., 7, 67-74; Robinson,M.J. and Cobb,M.H., (1997) Curr.Opin.Cell Biol., 9, 180-186)。MAPKKKの活性化には、いくつかの異なるメカニズムがあることも報告されている。MEKK1、および出芽酵母のMAPKKKであるSSK2の活性化には、分子内の反応によって媒介される自己リン酸化が関与していることが示唆されている(Deak,J.C. and Templeton,D.J., (1997) Biochem.J., 322, 185-192; Siow,Y.L. et al., (1997) J.Biol.Chem., 272, 7586-7594; Posas,F. and Saito,H., (1998) EMBO J., 17, 1385-1394)。ASK1およびMLK3は、上流の刺激に応答して二量体を形成し、この二量体化がそれらの触媒活性にとって重要であることが示されている(Gotoh,Y. and Cooper,J.A. (1998) J.Biol.Chem., 273, 17477-17482; Leung,I.W. and Lassam,N. (1998) J.Biol.Chem., 273, 32408-32415)。この二量体化は、受容体チロシンキナーゼの場合と同様に、活性化につながる分子内の自己リン酸化を促進するのだと思われる。一部のシグナル伝達経路においては、MAPKKKキナーゼ(MAPKKKK)がMAPKKKの上流で機能する。例えば、出芽酵母のSte20 MAPKKKKは、接合フェロモン経路のSte11 MAPKKKの活性化に機能する(Herskowitz,I., (1995) Cell, 80, 187-197)。同様にSte20-様キナーゼは、哺乳動物細胞におけるMAPKKKの活性化に関わっていることが示唆されている。Raf-1は、p21(Rac/Cdc42)活性化キナーゼ(PAK)によりリン酸化され活性化される(King,A.J. et al., (1998) Nature, 396, 180-183)。胚中心キナーゼ(GCK)は、TNF-αシグナル伝達経路においてMEKK1で上流に機能し、JNKの活性化をもたらす。しかしながら、IL-1がTAK1を活性化する分子メカニズムは、いまだ解明されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、IL-1のシグナル伝達に関与する新規なシグナル伝達蛋白質を提供する。また、本発明は、該蛋白質を利用したIL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明はまた、該スクリーニングにより単離しうる化合物を有効成分として含有するIL-1のシグナル伝達阻害剤を提供する。
【0007】
本発明者らは、IL-1シグナルがいかにしてTAK-1活性化の誘導へと統合されるかを解明するため、TAK1に結合する新規な蛋白因子を見出すべく鋭意研究を行なった結果、TAK1とTRAF6とを橋渡しする新規なシグナル伝達分子「TAB2」を同定することに成功した。TAB2の発現は、IL-1のシグナル伝達経路の下流に位置するJNKおよびNF-κBの活性化を誘導した。また、TAB2のドミナントネガティブ変異体は、IL-1によるそれらの活性化を阻害した。TAB2は、IL-1刺激により膜から細胞質へ移行し、そこでTRAF6とTAK1のIL-1依存的な結合を媒介した。さらに本発明者らは、IL-1がTAK1をその自己リン酸化を通して活性化することを見出した。
【0008】
これらの結果は、TAB2がTAK1およびTRAF6を連結するアダプターとしての役割を有しており、IL-1シグナル伝達経路におけるTAK1活性化を媒介していることを示している。このように、TAB2はIL-1のシグナルをTAK1に伝達する機能を有していることから、TAB2が関連したこのようなシグナル伝達を標的として、これを制御する化合物をスクリーニングすることにより、IL-1による種々の生体反応を制御する化合物を単離することが可能になる。
【0009】
また、TRAF6はIL-1のシグナル伝達に加え、IL-18、LPSのシグナル伝達にも関与していることが示されており(Clinical Immnology,32(3),269-276(1999))、TAB2の阻害剤は、IL-1、IL-18、LPSなどの刺激に対する阻害作用により、炎症やアレルギー性疾患の治療剤になりうる。
【0010】
特に、TAB2はIL-1のシグナル伝達は媒介するものの、TAK1が関与している別のシグナル伝達経路であるTGF-βシグナル伝達経路には関与していないと考えられる。このことから、TAB2を介したシグナル伝達を制御する化合物を利用すれば、IL-1刺激に応答した生体反応の特異的な制御やIL-1に関連する疾患の特異的な治療や予防が可能になると考えられる。例えば、TAB2とTAK1やTRAF6との結合を阻害する化合物の同定により、IL-1シグナル伝達を抑制する阻害剤の開発のための新たなアプローチが提供される。これらの阻害剤は、新規かつ補助的な役割を果たす新たな抗炎症薬の重要な候補となる。実際、本発明者等は、TAB2の部分ペプチドが、IL-1からのシグナル伝達を阻害する活性を有することを見出した。
【0011】
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものであり、IL-1のシグナル伝達に関与する新規なシグナル伝達蛋白質TAB2を提供するものである。また、本発明は、TAB2を介したIL-1のシグナル伝達の阻害剤のスクリーニング方法を提供する。本発明は、さらに、該スクリーニングにより単離し得る化合物を有効成分とするIL-1のシグナル伝達阻害剤を提供する。
【0012】
より具体的には、本発明は、下記1から28に記載の発明を提供するものである。
1. TAK1およびTRAF6に結合する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)から(e)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNA。
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
2. IL-1刺激に応答してシグナル伝達を行なう活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)から(e)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNA。
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
3. TAK1またはTRAF6に結合する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
4. IL-1刺激に応答したシグナル伝達を阻害する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
5. (1)から(4)のいずれかに記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチド。
6. (1)から(4)のいずれかに記載のDNAが挿入されたベクター。
7. (6)に記載のベクターを保持する宿主細胞。
8. (7)に記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞またはその培養上清から発現させた蛋白質またはペプチドを回収する工程を含む、(5)に記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
9. (5)に記載の蛋白質またはペプチドに結合する抗体。
10. 配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
11. IL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)被検試料の存在下、(1)または(3)に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質とを接触させる工程、
(b)(1)または(3)に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を検出する工程、および
(c)該結合を阻害する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法。
12. 工程(b)における検出が免疫沈降法により行なわれる、(11)に記載の方法。
13. IL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)被検試料の存在下、(2)に記載のDNAによりコードされる蛋白質を発現する哺乳動物細胞に、IL-1を接触させる工程、
(b)(2)に記載のDNAによりコードされる蛋白質を介して伝達される生物学的活性を検出する工程、および
(c)該生物学的活性を減少させる化合物を選択する工程、を含む方法。
14.生物学的活性がTAK1の活性化である、(13)に記載の方法。
15.TAK1の活性化をMKK6のリン酸化により検出する、(14)に記載の方法。
16.生物学的活性がNF-κBの活性化である、(13)に記載の方法。
17.Ig-κプロモーターの下流に結合したレポーター遺伝子を含むベクターを細胞内に導入し、該細胞内におけるレポーター遺伝子の発現を検出することにより、NF-κBの活性化を検出する、(16)に記載の方法。
18.生物学的活性がJNKの活性化である、(13)に記載の方法。
19.JNKの活性化をJunのリン酸化により検出する、(18)に記載の方法。
20.生物学的活性が(2)に記載のDNAによりコードされる蛋白質の細胞膜から細胞質への移行である、(13)に記載の方法。
21.生物学的活性がTAK1の自己リン酸化である、(13)に記載の方法。
22.(2)に記載のDNAを発現するベクターが導入された哺乳動物細胞を用いる、(13)から(21)のいずれかに記載の方法。
23. (11)から(22)に記載の方法により単離しうる化合物を有効成分とする、IL-1のシグナル伝達の阻害剤。
24. (1)に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を阻害する化合物を有効成分とする、IL-1のシグナル伝達の阻害剤。
25. (4)に記載のDNAまたは該DNAによりコードされる蛋白質若しくはペプチドを有効成分とする、IL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
26. ペプチドがTAB2-NまたはTAB2-Cである、(25)に記載のIL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
27. 炎症が関与する疾病または傷害を予防または治療するために用いられる、(23)から(26)のいずれかに記載のIL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
28. (11)または(12)に記載の方法により単離しうるTAB2阻害剤を有効成分とする、抗炎症剤または抗アレルギー剤。
【0013】
なお、本発明において「ペプチド」とは、アミノ酸同士がペプチド結合により結合した化合物を指す。従って、アミノ酸が長鎖の、いわゆるポリペプチドや蛋白質もまた本発明のペプチドに含まれる。
本発明は、IL-1のシグナル伝達に関与する新規なシグナル伝達蛋白質をコードするDNAを提供する。本発明者らにより単離されたヒトTAB2のcDNAの塩基配列を配列番号:1に、該cDNAによりコードされる蛋白質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。該蛋白質は、TRAF6とTAK1を橋渡しするアダプター分子として機能し、炎症性サイトカインであるIL-1のシグナルを伝達する。
【0014】
単離されたヒトTAB2遺伝子は693アミノ酸の蛋白質をコードしており、C末付近に両親媒性のαへリックスを形成すると予想される構造を有する以外は、既知の蛋白質と有意な相同性は見出されない。TAB2蛋白質はTRAF6およびTAK1の両者に同時に結合する活性を有しており、この複合体形成によりTRAF6のシグナルがTAK1に伝達され、TAK1の自己リン酸化とキナーゼ活性の活性化が起こることが示された。さらに、TAB2の発現は、IL-1シグナル伝達の下流に位置することが知られているNF-κBおよびJNKの活性化を誘導した。また、TAB2のドミナントネガティブ変異体は、TAB2におけるシグナル伝達を阻害する分子として働き、IL-1によるシグナル伝達を阻害することが判明した。これらの結果は、IL-1のシグナル伝達において、TAB2がTRAF6とTAK1のアダプター分子として機能していることを示している。
【0015】
特に、TAB2はIL-1のシグナル伝達は媒介するものの、TAK1が関与している別のシグナル伝達経路であるTGF-βシグナル伝達経路には関与していないと考えられるため、IL-1のシグナル伝達に特異的な阻害剤の開発のための標的分子として重要であり、このような阻害剤は新たな抗炎症剤の開発のための重要な候補である。TAB2におけるシグナル伝達を阻害する分子は、炎症が関与するさまざまな疾病や傷害の予防または治療への応用が期待される。
【0016】
本発明は、また、ヒトTAB2蛋白質(配列番号:2)と機能的に同等な蛋白質(またはペプチド)を包含する。このような蛋白質には、例えば、ヒト「TAB2」蛋白質に対応する他の生物由来のホモログ蛋白質やヒトTAB2蛋白質の変異体が含まれる。本発明において「機能的に同等」とは、対象となる蛋白質が、TRAF6およびTAK1に結合活性を有し、IL1刺激に応答したシグナル伝達において、これら蛋白質のアダプター分子として機能することを指す。
【0017】
ある蛋白質と機能的に同等な蛋白質を調製するための、当業者によく知られた方法としては、蛋白質に変異を導入する方法が知られている。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et al. (1995) Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Methods Enzymol. 100, 468-500、Kramer, W. et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492、Kunkel (1988) Methods Enzymol. 85, 2763-2766)などを用いて、ヒト「TAB2」蛋白質(配列番号:2)のアミノ酸に適宜変異を導入することにより、該蛋白質と機能的に同等な蛋白質を調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このように、ヒト「TAB2」蛋白質(配列番号:2)のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が変異したアミノ酸配列を有し、該蛋白質と機能的に同等な蛋白質もまた本発明の蛋白質に含まれる。このような変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、100アミノ酸以内であり、好ましくは、50アミノ酸以内であり、さらに好ましくは20アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内、さらに好ましくは3アミノ酸以内であると考えられる。
【0018】
変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0019】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有する蛋白質がその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
【0020】
ヒト「TAB2」蛋白質のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加された蛋白質には、ヒト「TAB2」蛋白質を含む融合蛋白質が含まれる。融合蛋白質は、ヒト「TAB2」蛋白質と他のペプチド又は蛋白質とが融合したものであり、本発明に含まれる。融合蛋白質を作製する方法は、ヒト「TAB2」蛋白質(配列番号:2)をコードするDNAと他のペプチド又は蛋白質をコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の蛋白質との融合に付される他のペプチド又は蛋白質としては、特に限定されない。
【0021】
本発明の蛋白質との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6 個のHis (ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc の断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag 、E-tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α-tubulinの断片、B-tag 、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の蛋白質との融合に付される他の蛋白質としては、例えば、GST (グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP (マルトース結合蛋白質)等が挙げられる。
【0022】
市販されているこれらペプチドまたは蛋白質をコードするDNAを本発明の蛋白質をコードするDNAと融合させ、これにより調製された融合DNAを発現させることにより、融合蛋白質を調製することができる。
【0023】
また、ある蛋白質と機能的に同等な蛋白質を調製する当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、ヒト「TAB2」蛋白質をコードするDNA配列(配列番号:1)もしくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAからヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等な蛋白質を単離することも通常行いうることである。このように、ヒト「TAB2」蛋白質をコードするDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードする蛋白質であって、ヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等な蛋白質もまた本発明の蛋白質に含まれる。このような蛋白質としては、例えば、ヒト以外の哺乳動物のホモログ(例えば、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコの遺伝子がコードする蛋白質が挙げられる。ヒト「TAB2」蛋白質をコードするDNAと相同性の高いcDNAを、動物から単離する場合、例えば、脾臓、胸腺、心臓、卵巣、精巣、腎臓、肝臓などの組織)を用いることが好ましいと考えられる。
【0024】
ヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件としては、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェンシーな条件としては、例えば42℃、5×SSC 、0.1%sodium dodecyl sulfate、50%ホルムアミドにより与えられる洗浄条件である。より好ましくは、高ストリンジェンシーな条件である。高ストリンジェンシーな条件としては、例えば60℃、0.1×SSC、0.1% sodium dodecyl sulfateにより与えられる洗浄条件である。ある蛋白質をコードする塩基配列に対し、適度なストリンジェンシー条件でハイブリダイズするDNAがコードする蛋白質がその蛋白質と同じ生物学的活性を有することはすでに知られている。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0025】
また、ハイブリダイゼーションにかえて、ヒト「TAB2」蛋白質をコードするDNA(配列番号:1)の配列情報を基に合成したプライマーを用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して、ヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAを単離することも可能である。
【0026】
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により単離されるDNAがコードする、ヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等な蛋白質は、通常、ヒト「TAB2」蛋白質(配列番号:2)とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明の蛋白質には、ヒト「TAB2」蛋白質と機能的に同等であり、かつ配列番号:2に示されるアミノ酸配列と高い相同性を有する蛋白質も含まれる。高い相同性とは、通常、60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、98%以上)の配列の同一性を指す。蛋白質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
【0027】
また、本発明には、TRAF6およびTAK1に結合活性を有するが、IL1刺激に応答したシグナル伝達を阻害する活性を有する、TAB2蛋白質の変異体や部分ペプチドが含まれる。このようなペプチドとしては、例えば、TAB2蛋白質のN末端側のペプチドが挙げられる(実施例2参照)。また、本発明には、TRAF6とTAK1のいずれか一方に結合する活性を有する、TAB2蛋白質の変異体や部分ペプチドが含まれる。これら蛋白質やペプチドは、内因性のTAB2蛋白質と競合し、IL1刺激に応答したシグナル伝達を阻害する活性を有しうる。また、本発明には、TRAF6とTAK1のいずれにも結合せず、かつ、IL1刺激に応答したシグナル伝達を阻害する活性を有する、TAB2蛋白質の変異体や部分ペプチドが含まれる。これら蛋白質やペプチドは、炎症に関連した疾患の治療や予防のための薬剤の重要な候補である。
【0028】
本発明の蛋白質は、後述するそれを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や糖鎖付加の位置、糖鎖の構造、リン酸化状態及び/又はジスルフィド結合の有無などが異なり得る。しかしながら、得られた蛋白質が、ヒト「TAB2」蛋白質と同等の機能を有している限り、本発明に含まれる。例えば、本発明の蛋白質を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の蛋白質のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加されるが、本発明はこのような蛋白質をも包含する。
【0029】
本発明の蛋白質は、当業者に公知の方法により、組み換え蛋白質として、また天然の蛋白質として調製することが可能である。組み換え蛋白質であれば、本発明の蛋白質をコードするDNA(例えば配列番号:1に記載の塩基配列を有するDNA)を、適当な発現ベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明の蛋白質に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製し、調製することが可能である。
【0030】
また、本発明の蛋白質をグルタチオンSトランスフェラーゼ蛋白質との融合蛋白質として、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換え蛋白質として宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換え蛋白質はグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。
融合蛋白質の精製後、必要に応じて融合蛋白質のうち、目的の蛋白質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
【0031】
天然の蛋白質であれば、当業者に周知の方法、例えば、本発明の蛋白質を発現している組織や細胞の抽出物に対し、後述する本発明の蛋白質に結合する抗体が結合したアフィニティーカラムを作用させて精製することにより単離することができる。抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
【0032】
本発明は、また、本発明の蛋白質の部分ペプチドを包含する。本発明の部分ペプチドは、少なくとも7アミノ酸以上、好ましくは8アミノ酸以上、さらに好ましくは9アミノ酸以上のアミノ酸配列からなる。該部分ペプチドは、上記したようにIL-1のシグナル伝達の阻害剤としての利用の他、例えば、本発明の蛋白質に対する抗体の作製、本発明の蛋白質とTAK1やTRAF6との結合の阻害剤のスクリーニングなどへの利用が考えられる。本発明の部分ペプチドは、遺伝子工学的手法、公知のペプチド合成法、あるいは本発明の蛋白質を適切なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。
【0033】
本発明の蛋白質をコードするDNAは、上述したような本発明の蛋白質の in vivo や in vitro における生産に利用される他、例えば、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の異常に起因する疾患や本発明の蛋白質により治療可能な疾患の遺伝子治療などへの応用も考えられる。本発明のDNAは、本発明の蛋白質をコードしうるものであればいかなる形態でもよい。即ち、mRNAから合成されたcDNAであるか、ゲノムDNAであるか、化学合成DNAであるかなどを問わない。また、本発明の蛋白質をコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。
【0034】
本発明のDNAは、当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、本発明の蛋白質を発現している細胞よりcDNAライブラリーを作製し、本発明のDNAの配列(例えば、配列番号:1)の一部をプローブにしてハイブリダイゼーションを行うことにより調製できる。cDNAライブラリーは、例えばSambrook, J. et al., Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法により調製してもよいし、市販の DNAライブラリーを用いてもよい。また、本発明の蛋白質を発現している細胞よりRNAを調製し、逆転写酵素によりcDNAを合成した後、本発明のDNAの配列(例えば、配列番号:1)に基づいてオリゴDNAを合成し、これをプライマーとして用いてPCR反応を行い、本発明の蛋白質をコードするcDNAを増幅させることにより調製することも可能である。
【0035】
また、得られたcDNAの塩基配列を決定することにより、それがコードする翻訳領域を決定でき、本発明の蛋白質のアミノ酸配列を得ることができる。また、得られたcDNAをプローブとしてゲノムDNA ライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することができる。
【0036】
具体的には、次のようにすればよい。まず、本発明の蛋白質を発現する細胞、組織、臓器(例えば、白血球等の血球細胞、あるいは脾臓、肝臓、腎臓などの組織)から、mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299) 、AGPC法 (Chomczynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987) 162, 156-159) 等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia) 等を使用して全RNAからmRNAを精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia) を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
【0037】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。cDNAの合成は、 AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うこともできる。また、本明細書に記載されたプライマー等を用いて、Marathon DNA Amplification Kit (Clontech製)およびポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction ; PCR)を用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 8998-9002 ; Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932) にしたがい、cDNAの合成および増幅を行うことができる。
【0038】
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を調製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNAの塩基配列は、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法により確認することができる。
【0039】
また、本発明のDNAにおいては、発現に使用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い塩基配列を設計することができる(Grantham, R. et al., Nucelic Acids Research (1981) 9, r43-74 )。また、本発明のDNAは、市販のキットや公知の方法によって改変することができる。改変としては、例えば、制限酵素による消化、合成オリゴヌクレオチドや適当なDNAフラグメントの挿入、リンカーの付加、開始コドン(ATG)及び/又は終止コドン(TAA、TGA、又はTAG)の挿入等が挙げられる。
【0040】
本発明のDNAは、具体的には、配列番号:1の塩基配列において81位の塩基Aから2159位の塩基CからなるDNAを包含する。
本発明のDNAはまた、配列番号:1に示す塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAであり、且つ上記本発明の蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAを含む。ハイブリダイゼーションにおける条件は、当業者であれば適宜選択することができるが、具体的には上記した条件を用いることができる。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。上記のハイブリダイズするDNAは、好ましくは天然由来のDNA、例えばcDNA又は染色体DNAである。
【0041】
本発明は、また、本発明のDNAが挿入されたベクターを提供する。本発明のベクターとしては、宿主細胞内において本発明のDNAを保持したり、本発明の蛋白質を発現させるために有用である。
【0042】
ベクターとしては、例えば、大腸菌を宿主とする場合には、ベクターを大腸菌(例えば、JM109、DH5α、HB101、XL1Blue)などで大量に増幅させ大量調製するために「ori」をもち、さらに形質転換された大腸菌の選抜遺伝子(例えば、なんらかの薬剤(アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すれば特に制限はない。ベクターの例としては、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Scriptなどが挙げられる。また、cDNAのサブクローニング、切り出しを目的とした場合、上記ベクターの他に、例えば、pGEM-T、pDIRECT、pT7などが挙げられる。本発明の蛋白質を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌での発現を目的とした場合は、ベクターが大腸菌で増幅されるような上記特徴を持つほかに、宿主をJM109、DH5α、HB101、XL1-Blueなどの大腸菌とした場合においては、大腸菌で効率よく発現できるようなプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Wardら, Nature (1989) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6, 2422-2427)、araBプロモーター(Betterら, Science (1988) 240, 1041-1043 )、またはT7プロモーターなどを持っていることが不可欠である。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(Pharmacia社製)、「QIAexpress system」(Qiagen社製)、pEGFP、またはpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現しているBL21が好ましい)などが挙げられる。
【0043】
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。蛋白質分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
【0044】
大腸菌以外にも、例えば、本発明の蛋白質を製造するためのベクターとしては、哺乳動物由来の発現ベクター(例えば、pcDNA3 (Invitrogen社製)や、pEF-BOS (Nucleic Acids. Res.1990, 18(17),p5322)、pEF 、pCDM8 )、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(GIBCO BRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えば、pHSV、pMV、pAdexLcw )、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えば、pZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば、「Pichia Expression Kit」( In vitrogen社製)、pNV11 、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えば、pPL608、pKTH50)が挙げられる。
【0045】
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーターなどを持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418など)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13などが挙げられる。
【0046】
さらに、遺伝子を安定的に発現させ、かつ、細胞内での遺伝子のコピー数の増幅を目的とする場合には、核酸合成経路を欠損したCHO細胞にそれを相補するDHFR遺伝子を有するベクター(例えば、pCHOIなど)を導入し、メトトレキセート(MTX)により増幅させる方法が挙げられ、また、遺伝子の一過性の発現を目的とする場合には、SV40 T抗原を発現する遺伝子を染色体上に持つCOS細胞を用いてSV40の複製起点を持つベクター(pcDなど)で形質転換する方法が挙げられる。複製開始点としては、また、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0047】
一方、動物の生体内で本発明のDNAを発現させる方法としては、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、例えば、レトロウイルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウイルス法などにより生体内に導入する方法などが挙げられる。これにより、本発明の「YS68」遺伝子の変異に起因する疾患に対する遺伝子治療を行うことが可能である。用いられるベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター(例えばpAdexlcw)やレトロウイルスベクター(例えばpZIPneo)などが挙げられるが、これらに制限されない。ベクターへの本発明のDNAの挿入などの一般的な遺伝子操作は、常法に従って行うことが可能である(Molecular Cloning ,5.61-5.63)。生体内への投与は、ex vivo法であっても、in vivo法であってもよい。
【0048】
また、本発明は、本発明のベクターが導入された宿主細胞に関する。本発明のベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、例えば、大腸菌や種々の動物細胞などを用いることが可能である。本発明の宿主細胞は、例えば、本発明の蛋白質の製造や発現のための産生系として使用することができる。蛋白質製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0049】
真核細胞を使用する場合、例えば、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、CHO(J. Exp. Med. (1995) 108, 945)、COS 、3T3、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et al., Nature (1981) 291, 358-340 )、あるいは昆虫細胞、例えば、Sf9 、Sf21、Tn5が知られている。CHO 細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO 細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220 )やCHO K-1 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1968) 60, 1275)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、エレクトロポーレーション法、リポフェクションなどの方法で行うことが可能である。
【0050】
植物細胞としては、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が蛋白質生産系として知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae )、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )が知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、例えば、JM109、DH5α、HB101 等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
【0051】
これらの細胞を目的とするDNAにより形質転換し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより蛋白質が得られる。培養は、公知の方法に従い行うことができる。例えば、動物細胞の培養液として、例えば、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、約6〜8であるのが好ましい。培養は、通常、約30〜40℃で約15〜200時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。
【0052】
一方、in vivo で蛋白質を産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。これらの動物又は植物に目的とするDNAを導入し、動物又は植物の体内で蛋白質を産生させ、回収する。本発明における「宿主」とは、これらの動物、植物を包含する。
動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。
【0053】
例えば、目的とするDNAを、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子との融合遺伝子として調製する。次いで、この融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ移植する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から、目的の蛋白質を得ることができる。トランスジェニックヤギから産生される蛋白質を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
【0054】
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の蛋白質をコードするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより、このカイコの体液から目的の蛋白質を得ることができる(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594 )。
【0055】
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とする蛋白質をコードするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens )のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum )に感染させ、本タバコの葉より所望のポリペプチドを得ることができる(Julian K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
【0056】
これにより得られた本発明の蛋白質は、宿主細胞内または細胞外(培地など)から単離し、実質的に純粋で均一な蛋白質として精製することができる。蛋白質の分離、精製は、通常の蛋白質の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば蛋白質を分離、精製することができる。
【0057】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製された蛋白質も包含する。
なお、蛋白質を精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼなどが用いられる。
【0058】
本発明は、また、本発明の蛋白質と結合する抗体を提供する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体の他、モノクローナル抗体も含まれる。また、ウサギなどの免疫動物に本発明の蛋白質を免疫して得た抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、さらにヒト抗体や遺伝子組み換えによるヒト型化抗体も含まれる。
抗体取得の感作抗原として使用される本発明の蛋白質は、その由来となる動物種に制限されないが哺乳動物、例えばヒト、マウス又はラット由来の蛋白質が好ましく、特にヒト由来の蛋白質が好ましい。ヒト由来の蛋白質は、本明細書に開示される遺伝子配列又はアミノ酸配列を用いて得ることができる。
【0059】
本発明において、感作抗原として使用される蛋白質は、完全な蛋白質であってもよいし、また、蛋白質の部分ペプチドであってもよい。蛋白質の部分ペプチドとしては、例えば、蛋白質のアミノ基(N)末端断片やカルボキシ(C)末端断片が挙げられる。本明細書で述べる「抗体」とは蛋白質の全長又は断片に反応する抗体を意味する。
本発明の蛋白質又はその断片をコードする遺伝子を公知の発現ベクター系に挿入し、該ベクターで本明細書で述べた宿主細胞を形質転換させ、該宿主細胞内外から目的の蛋白質又はその断片を公知の方法で得て、これらを感作抗原として用いればよい。また、蛋白質を発現する細胞又はその溶解物あるいは化学的に合成した本発明の蛋白質を感作抗原として使用してもよい。短いペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミンなどのキャリア蛋白質と適宜結合させて抗原とすることが好ましい。
【0060】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的には、げっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用される。
げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物としては、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物としては、例えば、サルが使用される。サルとしては、狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使用される。
【0061】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。一般的方法としては、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射する。具体的には、感作抗原をPBS (Phosphate-Buffered Saline) や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに対し、所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に投与する。さらに、その後、フロイント不完全アジュバントに適量混合した感作抗原を、4〜21日毎に数回投与することが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを常法により確認する。
【0062】
ここで、本発明の蛋白質に対するポリクローナル抗体を得るには、血清中の所望の抗体レベルが上昇したことを確認した後、抗原を感作した哺乳動物の血液を取り出す。この血液から公知の方法により血清を分離する。ポリクローナル抗体としては、ポリクローナル抗体を含む血清を使用してもよいし、必要に応じこの血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離して、これを使用してもよい。例えば、本発明の蛋白質をカップリングさせたアフィニティーカラムを用いて、本発明の蛋白質のみを認識する画分を得て、さらにこの画分をプロテインAあるいはプロテインGカラムを利用して精製することにより、免疫グロブリンGあるいはMを調製することができる。
【0063】
モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物の血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を取り出し、細胞融合に付せばよい。この際、細胞融合に使用される好ましい免疫細胞として、特に脾細胞が挙げられる。前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としては、好ましくは哺乳動物のミエローマ細胞、より好ましくは、薬剤による融合細胞選別のための特性を獲得したミエローマ細胞が挙げられる。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46) 等に準じて行うことができる。
【0064】
細胞融合により得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常、数日〜数週間継続して行う。次いで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングを行う。
【0065】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球、例えばEBウィルスに感染したヒトリンパ球をin vitroで蛋白質、蛋白質発現細胞又はその溶解物で感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、蛋白質への結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特開昭63-17688号公報)。
【0066】
次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明の蛋白質をカップリングしたアフィニティーカラムなどにより精製することで調製することが可能である。本発明の抗体は、本発明の蛋白質の精製、検出に用いられる他、本発明の蛋白質のアゴニストやアンタゴニストの候補になる。また、この抗体を本発明の蛋白質が関与する疾患の抗体治療へ応用することも考えられる。得られた抗体を人体に投与する目的(抗体治療)で使用する場合には、免疫原性を低下させるため、ヒト抗体やヒト型抗体が好ましい。
【0067】
例えば、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となる蛋白質、蛋白質発現細胞又はその溶解物を免疫して抗体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いて蛋白質に対するヒト抗体を取得することができる(国際公開番号WO92-03918、WO93-2227、WO94-02602、WO94-25585、WO96-33735およびWO96-34096参照)。
ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺伝子 (oncogene) により不死化させた細胞を用いてもよい。
【0068】
このように得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体として得ることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。組換え型抗体は、それをコードするDNAをハイブリドーマ又は抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる。本発明は、この組換え型抗体を包含する。
【0069】
さらに、本発明の抗体は、本発明の蛋白質に結合する限り、その抗体断片や抗体修飾物であってよい。例えば、抗体断片としては、Fab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv) (Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883) が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652-663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663-669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132-137参照)。
【0070】
抗体修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本発明の「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0071】
また、本発明の抗体は、公知の技術を使用して非ヒト抗体由来の可変領域とヒト抗体由来の定常領域からなるキメラ抗体又は非ヒト抗体由来のCDR(相補性決定領域)とヒト抗体由来のFR(フレームワーク領域)及び定常領域からなるヒト型化抗体として得ることができる。
【0072】
前記のように得られた抗体は、均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988) が、これらに限定されるものではない。上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又は酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)等により行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose F. F. (Pharmacia) 等が挙げられる。
【0073】
アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization : A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーはHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。
【0074】
また、本発明の抗体の抗原結合活性を測定する方法として、例えば、吸光度の測定、酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked immunosorbent assay;ELISA)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。ELISAを用いる場合、本発明の抗体を固相化したプレートに本発明の蛋白質を添加し、次いで目的の抗体を含む試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。酵素、例えば、アルカリフォスファターゼ等で標識した抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベーションし、次いで洗浄した後、p-ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。この方法には、蛋白質の断片、例えばそのC 末端からなる断片を使用してもよい。本発明の抗体の活性評価には、BIAcore(Pharmacia製) を使用することができる。
【0075】
これらの手法を用いることにより、本発明の抗体と試料中に含まれる本発明の蛋白質が含まれると予想される試料とを接触せしめ、該抗体と該蛋白質との免疫複合体を検出又は測定することからなる、本発明の蛋白質の検出又は測定方法を実施することができる。本発明の蛋白質の検出又は測定方法は、蛋白質を特異的に検出又は測定することができるため、蛋白質を用いた種々の実験等に有用である。
【0076】
本発明はまた、ヒト「TAB2」蛋白質をコードするDNA(配列番号:1)またはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
ここで「相補鎖」とは、A:T、G:Cの塩基対からなる2本鎖核酸の一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70% 以上、好ましくは80%以上 、より好ましくは90%以上 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。相同性を決定するためのアルゴリズムは本明細書に記載したものを使用すればよい。
【0077】
このような核酸には、本発明の蛋白質をコードするDNAの検出や増幅に用いるプローブやプライマー、本発明の蛋白質の発現を抑制するためのヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイム、またはこれらをコードするDNA等)が含まれる。また、このような核酸は、DNAチップの作製に利用することもできる。
プライマーとして用いる場合、3'側の領域は相補的とし、5'側には制限酵素認識配列やタグなどを付加することができる。
【0078】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:1の塩基配列中のいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号:1の塩基配列中の連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに好ましくは、連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドが翻訳開始コドンを含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0079】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、それらの誘導体や修飾体を使用することができる。修飾体として、例えばメチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、ホスホロチオエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相補配列であるもののみならず、DNA またはmRNAとオリゴヌクレオチドとが配列番号:1に示される塩基配列に特異的にハイブリダイズできる限り、1 又は複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在していてもよい。
【0080】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、本発明の蛋白質の産生細胞に作用して、該蛋白質をコードするDNA 又はmRNAに結合することにより、その転写又は翻訳を阻害したり、mRNA の分解を促進したりして、本発明の蛋白質の発現を抑制することにより、結果的に本発明の蛋白質の作用を抑制する効果を有する。
【0081】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤等の外用剤とすることができる。
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散財、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法にしたがって調製することができる。
【0082】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は患者の患部に直接適用するか、又は血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適用する。さらには、持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポソーム、ポリ-L- リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の投与量は、患者の状態に応じて適宜調整し、好ましい量を用いることができる。例えば、0.1 〜100mg/kg、好ましくは0.1 〜50mg/kg の範囲で投与することができる。
【0083】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは本発明の蛋白質の発現を阻害し、従って本発明の蛋白質の生物学的活性を抑制することにおいて有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する発現阻害剤は、本発明の蛋白質の生物学的活性を抑制することが可能である点で有用である。
【0084】
また本発明は、TAB2を利用したIL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法の1つの態様は、TAB2とTAK1および/またはTRAF6との結合活性の阻害を指標とする方法である。スクリーニングの標的となる化合物には、TRAF6とTAB2との結合を阻害する化合物、TAK1とTAB2との結合を阻害する化合物、およびTRAF6、TAB2、TAK1の複合体形成を阻害する化合物が含まれる。
【0085】
これらの化合物のスクリーニング方法は、(a)被検試料の存在下、TAB2蛋白質とTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質とを接触させる工程、(b)TAB2蛋白質とTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を検出する工程、および(c)該結合を阻害する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法である。
【0086】
被検試料としては特に制限はなく、例えば、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞紬出物、真核単細胞抽出物又は動物細胞抽出物あるいはそれらのライブラリー、精製若しくは粗精製蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物が挙げられる。被検試料を接触させる本発明の蛋白質は、例えば、精製した蛋白質として、可溶型蛋白質として、担体に結合させた形態として、他の蛋白質との融合蛋白質として、細胞膜上に発現させた形態として、膜画分として被検試料に接触させることができる。
【0087】
上記スクリーニングに用いられる各蛋白質は、結合能あるいは複合体の形成能を有する限りその形態に制限はなく、蛋白質全長でなくとも、変異体、または部分ペプチドであってもよい。また、他のペプチドとの融合蛋白質であってもよい。TAB2蛋白質としては、例えば、配列番号:2に記載の全長ヒトTAB2蛋白質はもちろんのこと、例えばインタクトな蛋白質が持つアダプター蛋白質としての機能を失った(または恒常的に活性化された)蛋白質であってもよい。例えば、ヒトTAB2蛋白質の401-693位のアミノ酸からなるC半側の部分ペプチドは、TRAF6およびTAK1に結合することが示された。よって、このTAB2部分ペプチドを用いて、TRAF6との結合を阻害する化合物のスクリーニングを行ったり、あるいはTAK1との結合を阻害する化合物のスクリーニングを行うことが可能である。TRAF6蛋白質やTAK1蛋白質も同様に、全長蛋白質のみならず、部分ペプチドやシグナル伝達機能を失った(または恒常的に活性化された)変異蛋白質などであってもよい。
【0088】
これらの蛋白質を組換え蛋白質として生成させるためには、具体的には、以下のように行うことができる。目的蛋白質をコードする遺伝子を、pSV2neo, pcDNA I, pCD8 などの外来遺伝子発現用のベクターに挿入することで動物細胞などで当該遺伝子を発現させる。発現に用いるプロモーターとしては SV40 early promoter (Rigby In Williamson (ed.), Genetic Engineering, Vol.3. Academic Press, London, p.83-141(1982)), EF-1 α promoter (Kimら Gene 91, p.217-223 (1990)), CAG promoter (Niwa et al. Gene 108, p.193-200 (1991)), RSV LTR promoter (Cullen Methods in Enzymology 152, p.684-704 (1987), SR α promoter (Takebe et al. Mol. Cell. Biol. 8, p.466 (1988)), CMV immediate early promoter (Seed and Aruffo Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, p.3365-3369 (1987)), SV40 late promoter (Gheysen and Fiers J. Mol. Appl. Genet. 1, p.385-394 (1982)), Adenovirus late promoter (Kaufman et al. Mol. Cell. Biol. 9, p. 946 (1989)), HSV TK promoter 等の一般的に使用できるプロモーターであれば何を用いてもよい。 動物細胞に遺伝子を導入することで外来遺伝子を発現させるためには、エレクトロポレーション法 (Chu, G. et al. Nucl. Acid Res. 15, 1311-1326 (1987))、リン酸カルシウム法 (Chen, C and Okayama, H. Mol. Cell. Biol. 7, 2745-2752 (1987))、DEAEデキストラン法 (Lopata, M. A. et al. Nucl. Acids Res. 12, 5707-5717 (1984); Sussman, D. J. and Milman, G. Mol. Cell. Biol. 4, 1642-1643 (1985))、リポフェクチン法 (Derijard, B. Cell 7, 1025-1037 (1994); Lamb, B. T. et al. Nature Genetics 5, 22-30 (1993); Rabindran, S. K. et al. Science 259, 230-234 (1993))等の方法があるが、いずれの方法によってもよい。特異性の明らかとなっているモノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を本発明の蛋白質のN 末または C末に導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位を有する融合蛋白質として本発明の蛋白質を発現させることができる。用いるエピトープ−抗体系としては市販されているものを利用することができる(実験医学 13, 85-90 (1995))。マルチクローニングサイトを介して、β−ガラクトシダーゼ、マルトース結合蛋白質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、緑色蛍光蛋白質(GFP)などとの融合蛋白質を発現することができるベクターが市販されている。
【0089】
融合蛋白質にすることにより本発明の蛋白質の性質をできるだけ変化させないようにするために数個から十数個のアミノ酸からなる小さなエピトープ部分のみを導入して、融合蛋白質を調製する方法も報告されている。例えば、ポリヒスチジン(His-tag)、インフルエンザ凝集素 HA、ヒトc-myc、FLAG、Vesicular stomatitis ウイルス糖蛋白質(VSV-GP)、T7 gene10 蛋白質(T7-tag)、ヒト単純ヘルペスウイルス糖蛋白質(HSV-tag)、E-tag(モノクローナルファージ上のエピトープ)などのエピトープとそれを認識するモノクローナル抗体を、本発明の蛋白質に結合する蛋白質のスクリーニングのためのエピトープ−抗体系として利用できる(実験医学 13, 85-90 (1995))。
【0090】
本発明において提供されるスクリーニング系は、in vitroのアッセイ系として行われうる。in vitroのアッセイ系の一つの具体例は、非細胞系において行われる。具体的には、上記蛋白質の結合を指標するスクリーニングにおいては、その蛋白質の組み合わせにおいて、いずれか1つを支持体に結合させ、ここに他の1または2の蛋白質と被験試料を加え、インキュベートをした後洗浄して支持体に結合した蛋白質に対する残りの蛋白質の結合を検出又は測定すればよい。
【0091】
本発明に使用される蛋白質は、それらを固有に発現する細胞、それらをコードするDNAを導入した細胞、それらをコードするDNAを導入した動物又は植物から産生される蛋白質を、精製した状態であるいは粗精製の状態で使用することができる。
【0092】
本発明に使用される蛋白質は、支持体に結合させて用いることができる。はじめに精製された又は粗精製されたTRAF6、TAB2、またはTAK1のいずれか一つを支持体に結合させる。該蛋白質を支持体に結合させるには、標準的な方法で該蛋白質を支持体に固相化すればよい。蛋白質を結合させる支持体としては、例えば不溶性の多糖類、例えばアガロース、デキストラン、セルロース、合成樹脂、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等が挙げられる。より具体的にはそれらを原料として製造される市販のビーズ、プレートが用いられる。ビーズの場合、これらが充填されたカラム等を用いてもよい。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)やバイオセンサーチップが挙げられる。
【0093】
蛋白質と支持体を結合させるには、化学結合、物理的な吸着等を利用する、通常用いられる方法を用いればよい。また、蛋白質を特異的に認識する抗体を予め支持体に結合せしめ、この抗体と蛋白質とを結合させることもできる。さらに、アビジン/ビオチンを介して結合させることができる。
【0094】
蛋白質同士の結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、Tris緩衝液等が使用される。また、インキュベートの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば4℃〜室温にて1時間〜24時間のインキュベーションが挙げられる。インキュベート後の洗浄は、蛋白質の結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば界面活性剤を含む緩衝液が使用される。界面活性剤としては、例えば0.05%Tween 20が使用される。
【0095】
目的の化合物を選択するには、各蛋白質及び被験試料を適切な条件下でインキュベートし、次いで洗浄することにより、特異的な結合と非特異的な結合を分離することができる。そして、上記のスクリーニング方法に応じて、TRAF6とTAB2との結合、TAB2とTAK1との結合、またはTRAF6、TAB2、およびTAK1を含む複合体の形成の状態を評価すればよい。
【0096】
目的の化合物を選択する際に、支持体に結合させる蛋白質は各蛋白質のいずれでもよい。例えば、TRAF6を支持体に結合させる場合には、TRAF6を固相化後、残りの蛋白質と被験試料をあらかじめ混合したもの、または被験試料添加後に残りの蛋白質を添加しても良い。また、TAB1を支持体に固相化する場合には、同様に残りの蛋白質と被験試料とをあらかじめ混合したもの、または被験試料添加後に残りの蛋白質を添加しても良い。TAK1の支持体に固相化する場合も同様である。以上の順序で添加した各蛋白質及び被験試料を適切な条件下でインキュベーションし、TRAF6とTAB2との結合、TAB2とTAK1との結合、またはTRAF6、TAB2、およびTAK1を含む複合体の形成の状態を評価することができる。
【0097】
本発明のスクリーニング方法において、被験試料を蛋白質に接触させる群と共にコントロール群を設置してもよい。コントロール群としては、被験試料を含まない陰性コントロール群又は陽性コントロール群あるいはその両群をおくことができる。
【0098】
本発明において結合した蛋白質を検出又は測定する際、単に結合した蛋白質を検出するだけでもよいし、又は結合した蛋白質を定量的に測定してもよい。これらの場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた結果、被験試料を含む群で得られた結果及び/又は陽性コントロール群で得られた結果を比較することにより、目的の化合物を検出することができる。
【0099】
また、これらの結果を数値として得、それらの数値を比較することにより、目的の化合物の活性を定量的に測定することもできる。定量的に測定する場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた数値と被験試料を適用した群で得られた数値を比較することにより、目的の化合物を検出することができる。陰性対照と比較して、得られた数値が減少していれば、被験試料が目的の化合物を含むと判定することができる。
【0100】
また、定量的に測定する場合、TRAF6とTAB2との結合、TAB2とTAK1との結合、またはTRAF6、TAB2、およびTAK1を含む複合体の形成を阻害することがわかっている化合物を既知量含む陽性コントロール群で得られた数値により作成された標準曲線を元に定量することができる。結合した蛋白質が多い場合、蛋白質の結合を阻害する化合物の活性が低く、一方結合した蛋白質が少ない場合、その蛋白質の結合を阻害する化合物の結合阻害活性が強いことが推測される。
【0101】
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを使用することができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは蛋白質−蛋白質間の相互作用を微量の蛋白質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である(例えばBIAcore、Pharmacia製)。したがって、BIAcore等のバイオセンサーを用いることにより本発明で使用される蛋白質の結合を評価することが可能である。
【0102】
すなわち、スクリーニングに用いる蛋白質の1つを固定化したセンサーチップに、もう一方の蛋白質を接触させ、固定化した一方の蛋白質に結合する蛋白質を共鳴シグナルの変化として検出しようとするものである。
具体的には以下のように行えばよい。初めにセンサーチップCM5(Biosensor製)を活性化してTAK1とTAB1との組み合わせの一方をセンサーチップ上に固定化する。すなわち、EDC / NHS水溶液(200mM EDC(N-ethyl-N'-(3-dimethylaminopropyl) carbonate hydrochloride), 50mM NHS(N-hydroxysuccinimide))によりセンサーチップを活性化した後、HBSバッファー(10mM HEPES pH7.4, 150mM NaCl, 3.4mM EDTA, 0.05%Tween20)によりセンサーチップを洗浄する。
【0103】
次に HBSバッファーに溶解した適量の相互作用を有する蛋白質をセンサーチップに接触させ、固定化する。 HBSバッファーによりセンサーチップを洗浄後、エタノールアミン溶液(1M ethanolamine hydrochloride, pH8.5)によりセンサーチップ上の残存活性基をブロックする。再び HBSバッファーによりセンサーチップを洗浄し結合評価に用いる。
次にHBSバッファーに溶解した適量の蛋白質を注入する。このときにセンサーチップに固定化された蛋白質に結合する相互作用を有する蛋白質の量は共鳴シグナル値の増加として観察される。
【0104】
さらに、上記結合評価系において、一方の蛋白質に相互作用を有するもう一方の蛋白質(3種の蛋白質の複合体の場合は残り2つの蛋白質)に引き続いて被験試料を注入する。また被験試料を注入する群と共に、コントロール群を設置してもよい。コントロール群としては被験試料を含まない陰性コントロール群又は陽性コントロール群あるいはその両群をおくことができる。
【0105】
結合した蛋白質は共鳴シグナル値の変化量として定量的に測定することができる。この場合、被験試料を含まない陰性コントロール群で得られた結果、被験試料を含む群で得られた結果及び/又は陽性コントロール群で得られた結果を比較することにより、目的の化合物を検出、決定することができる。
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、いずれかの蛋白質を標識し、結合した蛋白質の標識を利用することができる。
【0106】
例えば、前述のスクリーニング方法において、被験試料とともに一方の蛋白質に接触させるもう一方の蛋白質をあらかじめ標識しておき、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその標識により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料と標識したもう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質の標識を検出又は測定すればよい。
【0107】
本発明で使用される蛋白質は、通常知られる方法により標識されることができる。標識物質としては、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光物質、ビオチン/アビジン等が挙げられる。これらの標識物質は市販の標識物質を使用することができる。放射性同位元素しては、例えば32P、33P、131I、125I、3H、14C、35Sが挙げられる。酵素としては、例えばアルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、例えばフロオロセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンが挙げられる。これらは市販のものを入手することができ、公知の方法によって標識される。
【0108】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の標識された蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群を置き、これらをインキュベートする。インキュベートの後、洗浄し結合した蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を決定することができる。
【0109】
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、各蛋白質の組み合わせにて、いずれかの蛋白質を特異的に認識する抗体を用いることができる。
例えば、一方の蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質を、その蛋白質を特異的に認識する一次抗体により検出又は測定すればよい。一次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0110】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群を置き、これらをインキュベートする。
【0111】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質に対する抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄しその蛋白質を特異的に認識する一次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合、液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計より検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を決定することができる。
【0112】
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、本発明に使用される蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体を用いることができる。
例えば、前述のスクリーニング方法において、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体により検出又は測定すればよい。一次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0113】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料と他のペプチドと融合した別の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び/又は陽性コントロールを置き、これらをインキュベートする。
【0114】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチドに対する抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄しその蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を決定することができる。
【0115】
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、本発明で使用される蛋白質を特異的に認識する一次抗体及び該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いることができる。
例えば、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質を特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させたいずれかの蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質を、その蛋白質を特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定すればよい。二次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0116】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため、例えば、BSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料ともう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群を置き、これらをインキュベートする。
【0117】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチドに対する一次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、その蛋白質を特異的に認識する一次抗体を特異的に認識する二次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合、液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合、蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を選択することができる。
【0118】
本発明において、結合した蛋白質を検出又は測定する手段として、蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体を用いることができる。
例えば、前述のスクリーニング方法において、いずれかの蛋白質に被験試料とともにもう一方の蛋白質を接触させ、被験試料とともにインキュベートした後、洗浄して結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定する。すなわち、好ましくは支持体に結合させた一方の蛋白質に被験試料ともう一方の蛋白質を接触させる。インキュベートした後、洗浄して、結合している蛋白質をその蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体及び一次抗体を特異的に認識する二次抗体により検出又は測定すればよい。二次抗体は、好ましくは標識物質により標識されている。
【0119】
具体的には、次のようにして行うことができる。すなわち、いずれかの蛋白質を含む溶液をプレートに加え、一夜放置する。プレートを洗浄の後、蛋白質の非特異的な結合を防ぐため例えばBSAでブロッキングする。再び洗浄し、被験試料と他のペプチドと融合したもう一方の蛋白質をプレートに加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群を置き、これらをインキュベートする。
【0120】
インキュベートの後、洗浄し被験試料と共に加えた蛋白質と融合した他のペプチドに対する一次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、次いで一次抗体を特異的に認識する二次抗体を加える。適度なインキュベーションの後、洗浄して、その蛋白質と融合した他のペプチドを特異的に認識する一次抗体を特異的に認識する二次抗体により蛋白質を検出又は測定する。検出又は測定には、放射性同位元素の場合液体シンチレーションにより検出又は測定する。酵素の場合その基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出又は測定する。蛍光物質の場合蛍光光度計により検出又は測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を決定することができる。
【0121】
特に好ましくは、ELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay)により次のようにして行うことができる。すなわち、他のペプチド、例えば6×Hisと融合したいずれかの蛋白質を固相化バッファー(0.1 M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)により希釈する。96穴のイムノプレート(Nunc製)の各穴に希釈したこの水溶液を適量加え4℃で一晩インキュベートする。
【0122】
洗浄バッファー(PBS に0.05% Tween20 となるよう調製したもの)で3回各穴を洗浄後、 PBSに溶解した5% BSA(SIGMA 製)溶液200μl を加え、4℃で一晩ブロッキングする。
【0123】
次に洗浄バッファーで3回各穴を洗浄し、希釈バッファー(1% BSA、0.5% Tween20、PBS)で希釈した他のペプチド、例えばFLAGと融合した他方の蛋白質と被験試料を適量加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで3 μg/mlに希釈したマウス抗FLAG M2抗体(IBI製)を100μl各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。
【0124】
洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで 1000 倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ZYMED製)を 100μl各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで5回各穴を洗浄し、発色溶液(基質バッファー;50 mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8に 1 mg/mlの濃度に溶解したp-フェニルフォスフェート;SIGMA製)を 100μl 各穴に加え、室温で反応させた後に 405 nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model3550、BIO-RAD 製)を用いて測定する。これらの結果を、陰性コントロール群及び/又は陽性コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を決定することができる。
【0125】
なお、本発明の抗体を利用した検出または測定においては、二次抗体に代えてプロテインGやプロテインAを用いることも可能である。
【0126】
本発明のスクリーニング方法は、High Throughput Screening(HTS)を使用することができる。具体的には、ブロッキングまでを手作業で行い、その後の反応はロボットによって行うことでオートメーション化し、High Throughput screeningを実現することができる。
すなわち、他のペプチド、例えば6×Hisと融合したいずれかの蛋白質を固相化バッファー(0.1 M NaHCO3、0.02% NaN3、pH9.6)により希釈する。96穴のイムノプレート(Nunc製)の各穴に希釈したこの水溶液を適量加え4℃で一晩インキュベートする。
洗浄バッファー(PBS に 0.05% Tween20 となるよう調製したもの)で3回各穴を洗浄後、 PBSに溶解した5% BSA(SIGMA 製)溶液200μl を加え、4℃で一晩ブロッキングする。
【0127】
次に、例えばBiomek2000 HTS system(Beckman製)にブロッキング済みのイムノプレートをセットしてシステムのコントロールプログラムを実行する。この際、分注機としてはBiomek 2000分注機(Beckman製)あるいはMultipipette96穴同時分注器(Sagian製)を用いることでイムノプレート各穴への溶液の分注や溶液の除去を行うことができる。また、イムノプレートの各穴の洗浄にはEL404マイクロプレートウオッシャー(Bio Tek製)を用いることができる。また、吸光度の測定にはSPECTRAmax250プレートリーダー(Molecular Devices製)を用いることができる。
【0128】
プログラムは以下の操作をおこなうよう設定する。すなわち洗浄バッファーで3回各穴を洗浄し、被験試料と希釈バッファー(1% BSA、0.5% Tween20、PBS)で希釈した他のペプチド、例えばMBP(マルトース結合蛋白質)と融合した他方の蛋白質を適量加える。同時に被験試料を含まない陰性コントロール群及び陽性コントロールを置き、これらを室温で1時間インキュベートする。
【0129】
洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで5000倍に希釈したウサギ抗MBP抗血清(New England Biolabs製)を100μl各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファーで各穴を3回洗浄し、希釈バッファーで 5000 倍に希釈したアルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(TAGO製)を 100μl 各穴に加え、室温で1時間インキュベートする。
【0130】
洗浄バッファーで5回各穴を洗浄し、発色溶液(基質バッファー;50 mM NaHCO3、10mM MgCl2、pH9.8に 1 mg/mlの濃度に溶解したp-ニトロフェニルフォスフェート;SIGMA製)を 100μl 各穴に加え、室温で反応させた後に 405 nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー、Biomekプレートリーダー(Beckman / Molecular Devices製)を用いて測定する。これらの結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば目的の化合物を同定することができる。
本発明において使用される抗体として、市販の抗体や市販のキットに含まれる抗体を用いることもできるし、公知の手段を用いて得られるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いることもできる。抗体の作製方法は、上記のTAB2に対する抗体の作製方法と同様である。
【0131】
上記のように得られた一次抗体又は二次抗体は、通常知られる方法により標識されることができる。標識物質としては、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光物質等が挙げられる。これらの標識物質は市販の標識物質を使用することができる。放射性同位元素としては、例えば32P、33P、131I、125I、3H、14C、35Sが挙げられる。酵素としては、例えばアルカリフォスファターゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ等が挙げられる。蛍光物質としては、例えばフロオロセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンが挙げられる。これらの標識物質として市販のものを入手して、公知の方法によって標識化を行えばよい。
【0132】
また、蛋白質の結合の検出は、これら蛋白質の結合に応答して活性化するレポーター遺伝子の発現量の変化によって検出及び/又は測定することができる。このようなレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、HIS3遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)遺伝子等を用いることができる。
細胞で発現される蛋白質は他のペプチドとの融合蛋白質であってよい。これらの蛋白質と融合に付される他のペプチドとは、本発明のスクリーニング方法で使用されうる限りいかなるペプチドであってよいが、好ましくは転写調節因子である。
【0133】
例えば、DNAに結合してあるレポーター遺伝子の転写を活性化することが知られているヘテロダイマーからなる転写調節因子の各々のサブユニットと結合を測定する2種の蛋白質のそれぞれに融合させたDNAを構築し、それらを発現ベクターに含めて細胞に導入する(3種の蛋白質の複合体の場合は、例えばTAB2はそのまま発現させる)。蛋白質の結合を阻害する化合物が被験試料に含まれていない場合、2つの蛋白質(3種の蛋白質の複合体の場合は3者)がヘテロマーを形成し、そしてそのヘテロマーからなる転写調節因子がDNAに結合してレポーター遺伝子が活性化する。
【0134】
また、蛋白質の結合を阻害する化合物が被験試料に含まれている場合、蛋白質同士の結合が阻害され、その結果転写調節因子のサブユニットがヘテロマーを形成できず、レポーター遺伝子の転写が誘導されない。レポーター遺伝子の発現量の変化を調べることにより、目的の化合物を検出又は測定することができる。このような系においてレポーター遺伝子の発現量の変化を調べる場合、2ハイブリッド系(two hybrid system、Fields, S., and Sternglanz, R., Trends. Genet. (1994) 10, 286-292)あるいは3ハイブリッド系を用いることができる。
ハイブリッド系は通常用いられている方法により構築してもよいし、市販のキットを用いてもよい。市販の2ハイブリッド系のキットとしては、MATCHMARKER Two-Hybrid System、Mammalian MATCHMARKER Two-Hybrid Assay Kit(いずれもCLONTECH製)、HybriZAP Two-Hybrid Vector System(Stratagene製)が挙げられる。
【0135】
具体的には、次のようにすればよい。すなわち、いずれかの蛋白質をコードする遺伝子とLexAのDNA結合ドメインをコードする遺伝子とを連結し発現ベクターを作製する。このとき、酵母ツーハイブリッド発現プラスミドpBTM116(Vojtek, A.B., et al., Cell (1993) 74, 205-214)に目的の遺伝子断片を挿入し、発現プラスミドを構築する。
次に、他方をGAL4転写活性化ドメインをコードする遺伝子とを連結せしめることにより発現ベクターを作製する。発現ベクターは、例えば、酵母ツーハイブリッド発現プラスミドpGAD10(CLONTECH製)を用いることができる。
【0136】
LexA結合モチーフが存在するプロモーターにより転写が調節されるHIS3遺伝子を組み込んだ酵母L40株を各2ハイブリッド発現プラスミドを用いて形質転換した後、ヒスチジン不含合成培地上でインキュベートすると蛋白質の相互作用が認められたときのみ酵母の生育が観察される。このように、形質転換体の生育程度によりレポーター遺伝子の発現量の増加を調べることができ、目的の化合物をスクリーニングすることができる。
【0137】
また、IL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニングの他の態様は、TAB2蛋白質を介して伝達される生物学的活性の阻害を指標にした方法である。具体的には、(a)被検試料の存在下、TAB2蛋白質を発現する哺乳動物細胞に、IL-1を接触させる工程、(b)TAB2蛋白質を介して伝達される生物学的活性を検出する工程、および(c)該生物学的活性を減少させる化合物を選択する工程、を含む方法である。
被検試料としては特に制限はなく、例えば、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞紬出物、真核単細胞抽出物又は動物細胞抽出物あるいはそれらのライブラリー、精製若しくは粗精製蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成低分子化合物、天然化合物が挙げられる。
【0138】
スクリーニングに用いる細胞としては、IL-1刺激に応答したシグナル伝達を行なうことができる哺乳動物細胞であれば特に制限はない。例えば、IL-1レセプターを発現させた293細胞を好適に用いることができる。細胞には、必要に応じて外来性のTAB2を発現するベクターを挿入する。細胞がIL-1のシグナル伝達に関与する蛋白質を保有していない場合には、外来性の遺伝子を導入して、人工的にシグナル伝達系を作製することも可能である。
【0139】
スクリーニングの指標となる生物学的活性としては、例えば、TAK1の活性化、NF-κBの活性化、JNKの活性化、TAB2蛋白質の細胞膜から細胞質への移行、TAK1の自己リン酸化などが挙げられる。
TAK1は活性化状態において、そのキナーゼ活性によりMAPKK 、例えばMKK3(Moriguchi, T. et al., J. Biol. Chem. (1996) 271, 13675-13679)、MKK6(Moriguchi, T. et al., J. Biol. Chem. (1996) 271, 13675-13679)、又はXMEK2/SEKI(Shibuya, H.et al., Science(1996)272, 1179-1182)をリン酸化することによりMAPKK のキナーゼ活性を活性化する活性であることが明らかになっている。TAK1のリン酸化の基質としては、これらの蛋白質を用いることができる。例えば、MMK6のリン酸化を検出することによって、TAK1のリン酸化活性を検出することが可能である。TAK1のリン酸化活性の反応は、細胞内で行わせることもできれば、細胞から蛋白質を抽出し、インビトロで行わせてもよい。
【0140】
TAK1のキナーゼ活性を指標としてスクリーニングを実施するには、例えばTAK1を用いたin vitroキナーゼ測定系を用いることができる。被験試料と作用させたTAK1を、細胞抽出液から抗TAK1抗体等を用いて分離し、32P-ATPと共にMKK6等のTAK1の基質タンパクを加え、キナーゼ反応を行い、その活性を検出又は測定する。キナーゼ反応後基質タンパクのリン酸化に伴い取り込まれた32P-ATPの量を測定することでTAK1のキナーゼ活性を評価することができ、被験試料を含まない陰性コントロールの値と比較することで、TAK1のキナーゼ活性を直接阻害する化合物を同定できる。TAK1のin vitroキナーゼ測定系としては、文献「Moriguchi, T., et al., J. Biol. Chem. 271: 13675-13679 (1996)」に記載されている方法等が挙げられる。
【0141】
TAK1のキナーゼ活性を指標としたスクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング(High Throughput Screening; HTS)にも使用することができる。具体的には、各試料の添加・混合並びに各反応を、ロボットを用いて行うことでオートメーション化し、基質タンパクのリン酸化の程度を Scintillation proximity assay 法(Bothworth, N. and Towers, P., Nature, 341: 167-168, 1989)で検出することで、ハイスループットスクリーニングを実現することができる。
【0142】
すなわち、細胞から調製したTAK1を96穴のマイクロプレートの各穴に加え、32P-ATP と共に基質タンパク、例えば MKK6 を加え、キナーゼ反応を行う。次に、抗 MKK6 抗体を各穴に加え、続いてプロテインA又は種特異的な抗体をコーティングしたSPAビーズ(Amersham社製)を各穴に加える。インキュベーションの後、MicroBeta scintillation counter(Wallac社製)を用いて基質タンパクに取り込まれた放射活性を測定する。また、ビオチン化した基質タンパクを用いた場合には、ストレプトアビジンをコーティングしたSPAビーズを用いることで測定することが可能となる。これらの方法により得られた結果を、コントロール群で得られた数値と比較すれば、TAK1のキナーゼ活性を阻害する化合物を含む被験試料を同定することができる。
【0143】
実施例において、TAB2の発現はNF-κBやJNKの活性化を誘導することが示された。そして、TAB2のドミナントネガティブ変異体によって、NF-κBやJNKの活性化が阻害されることが実証された。従って、これらの生物学的活性を指標に本発明のスクリーニングを行うこともできる。
NF-κBの活性化は、例えば、Ig-κプロモーターの下流に結合したレポーター遺伝子を含むベクターを細胞内に導入し、該細胞内におけるレポーター遺伝子の発現を指標として検出することができる。
【0144】
具体的には、例えば、IL-1レセプターを発現させた293細胞に各遺伝子の発現プラスミドを導入した細胞及び挿入遺伝子を含まない発現ベクターを導入したコントロール細胞にIFN-β遺伝子由来のNF-κB応答性エレメントによって制御されるルシフェラーゼ遺伝子を含むレポーター遺伝子構築物(p55IgkLuc;Fujita, T., et al., Gene, Dev., (1993) 7, 1354-1363)を導入し、各々10ng/mlのIL-1を含む培地中またはIL-1を含まない培地中で培養する。その細胞抽出物中のルシフェラーゼ活性を測定する。
【0145】
その結果、被験試料を加えない細胞におけるルシフェラーゼ活性と比較して、被験試料を加えた細胞においてルシフェラーゼ活性が少なければ、該被験試料に含まれる化合物がIL-1のシグナル伝達を阻害すると判定される。このようにレポーター遺伝子の発現量を対照と比較することにより、目的の化合物をスクリーニングすることができる。
【0146】
一方、JNKの活性化は、例えば、実施例に記載のように、Junのリン酸化により検出することができる。具体的には、例えば、JNKをコードする発現ベクターと、TAB2をコードする発現ベクターを、IL-1レセプターを発現させた293細胞に共トランスフェクトし、該細胞に、IL-1を作用させる。該細胞抽出物からJNKを免疫沈降し、この免疫沈降物を用いて、Junを基質として用いて、in vitroリン酸化アッセイを行なう。その結果、被験試料を加えない細胞における、基質のリン酸化の程度と比較して、被験試料を加えた細胞において基質におけるリン酸化の程度が少なければ、該被験試料に含まれる化合物がIL-1のシグナル伝達を阻害すると判定される。
また、実施例において、IL-21刺激に応答して、細胞膜に存在するTAB2蛋白質が細胞質へ移行することが示された。従って、TAB2蛋白質の細胞膜から細胞質への移行を指標として、本発明のスクリーニングを行なうことができる。
【0147】
TAB2蛋白質の膜から細胞質への移行を検出するには、例えば、実施例に記載されたように、膜画分と細胞質画分を分離して、それら試料中に含まれるTAB2蛋白質を検出することにより行うことができる。また、TAB2に対する抗体を利用して、細胞免疫化学的手法を用いてin situ でTAB2の細胞内局在を検出することも可能である。また、TAB2と他のペプチド(例えば適当なエピトープやGFPなどの蛍光蛋白質など)との融合蛋白質として発現させることにより標識しておき、これを基に細胞内分布を測定することもできる。その結果、被験試料を加えない細胞における、TAB2蛋白質の細胞質へ移行量と比較して、被験試料を加えた細胞におけるTAB2蛋白質の細胞質へ移行量が少なければ、該被験試料に含まれる化合物がIL-1のシグナル伝達を阻害すると判定される。
【0148】
本発明は、また、本発明のスクリーニングにより単離しうる化合物を有効成分とする、IL-1のシグナル伝達の阻害剤を提供する。本発明において「IL-1のシグナル伝達の阻害剤」とは、IL-1のシグナル伝達を阻害するための試薬及び医薬の双方が含まれる。IL-1のシグナル伝達を阻害するための試薬は、例えば、JNKやNF-κBなどのIL-1刺激に応答したシグナル伝達に関与する分子の阻害剤でありうる。また、IL-1は、炎症やアレルギー性疾患、例えば、敗血症、関節リウマチ、喘息、腎炎、肝炎、肺炎、など様々な病態の進行に関与していると考えられることから、TAB2を介したIL-1のシグナル伝達を阻害する化合物は、これら疾患の治療や予防を目的とした医薬として利用することが考えられる。
【0149】
本発明のIL-1のシグナル伝達の阻害剤の1つの態様は、TAB2蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を阻害する化合物を有効成分とする。本発明のIL-1のシグナル伝達の阻害剤の他の1つの態様は、TAB2の変異体または部分ペプチドである。例えば、配列番号:2に示されるアミノ酸配列において401から693までからなるアミノ酸配列を有するTAB2のドミナントネガティブが挙げられる。このドミナントネガティブはTRAF6およびTAK1との結合能は有するが、3者の複合体を形成する能力はなく、TAK1のキナーゼ活性を活性化させない。そのため、TAB2のドミナントネガティブはTAK1下流のシグナル伝達をおこさない。そして、正常なTAB2がTRAF6やTAK1と結合することを阻害する。
【0150】
上記のようなIL-1のシグナル伝達を阻害する活性を有する化合物を、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーなどの医薬として使用する場合には、蛋白質や単離された化合物自体を直接投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。
【0151】
例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0152】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0153】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
【0154】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0155】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0156】
本発明の蛋白質の投与量は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では、通常、成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約100μgから20mgであると考えられる。
【0157】
本発明のTAB2を介したシグナル伝達を阻害する化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に、成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgであると考えられる。
【0158】
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であると考えられる。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量、あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】TAB2の単離を示す図である。(A)TAB2のアミノ酸配列を示す。TAK1を用いた酵母のツーハイブリッドスクリーニングにより得られた配列を枠で囲って示した。コイルドコイル領域には下線をつけてた。(B)哺乳動物細胞におけるTAK1とTAB2の結合を示す。記載したように、空のベクター(-)、もしくはT7-TAB2全長(Full)、T7-TAB2C(C)、またはT7-TAB2N(N)の発現ベクターと組み合わせ、HA-TAK1発現ベクターを293細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞抽出物は、抗T7抗体(7)またはマウスのIgG(C)と免疫沈降(IP)した。共沈降したHA-TAK1を、抗HA抗体によるイムノブロッティング(IB)により検出した(上パネル、左)。免疫沈降したT7-TAB2蛋白質の量を、抗T7抗体により測定した(下パネル)。全細胞抽出物を、抗HA抗体でイムノブロッティングし、HA-TAK1の総量を決定した(上パネル、右)。様々なTAB2構築物の該略図を、下側に示している。コイルドコイル領域は、黒く塗って示した。(C)酵母細胞におけるTAK1に対するTAB1およびTAB2の作用を示す。酵母株SY1984を、記載したようにTAK1-HAコードする発現ベクターと、TAB1またはTAB2のいずれかをコードする発現ベクターとで形質転換した。各細胞抽出物からTAK1-HAを免疫沈降(IP)し、免疫沈降物に、細菌によって発現されたMKK6を外来基質として用いてin vitroリン酸化アッセイを行った(上パネル)。「N/E」(抽出物なし)は、酵母抽出物非含有で実施したリン酸化アッセイを示し、これはMKK6の自己リン酸化に相当する。各免疫複合体中のTAK1、TAB1、およびTAB2の量は、それぞれ、抗-HA抗体(中パネル)、抗-TAB1抗体および抗-TAB2抗体(下パネル)によるイムノブロッティング(IB)で測定した。
【図2】IL-1およびTGF-βか媒介する経路におけるTAB2の作用を示す図である。(A)NF-κB活性化に対するTAB2の作用を示す。空のベクター(-)もしくは記載した量の全長TAB2 [Full(1-693)]、TAB2C [C(401-693)]、またはTAB2N [N(1-400)]の発現ベクターと組み合わせた、レポーターベクターIg-κ-ルシフェラーゼおよびpAct-β-Galを、293細胞に一過性にトランスフェクトした。細胞は、未処理のまま放置するか、もしくは、IL-1(10ng/ml)で24時間処理した(+IL-1)。ルシフェラーゼ活性を測定し、β-ガラクトシダーゼ活性レベルで標準化した。空のベクターでトランスフェクトされた細胞に対するルシフェラーゼ活性の上昇倍率を示した。(B)JNK活性化におけるTAB2の作用。HA-JNKをコードする発現ベクターと、TAB2またはTAB2Cのいずれかをコードする発現ベクターを、記載したように、293細胞に一過的に共トランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞は、未処理のまま放置するか、もしくは、IL-1(10ng/ml)で30分間処理した(+)。各細胞抽出物からHA-JNKを免疫沈降し、細菌で発現させたGST-cJunを外来基質として用いて、免疫沈降物の in vitroリン酸化アッセイを行った(上パネル)。それぞれの免疫複合体中のHA-JNK量を、抗HA抗体とのイムノブロッティングにより決定した(下パネル)。(C)3TP活性化におけるTAB2の作用を示す。レポーターベクター3TP-ルシフェラーゼおよびpAct-β-Gal、そして恒常的活性型のTGF-βタイプI受容体 [+TβRI(T204D)] の発現ベクターおよび記載した量の全長TAB2 [Full(1-693)]、TAB2C [C(401-693)]またはTAB2N [N(1-400)]の発現ベクターを組み合わせて、293細胞に一過的にトランスフェクトした。TβRI(T204D)により誘導される3TP活性を阻害する陽性対照としてSmad7を用いた。ルシフェラーゼ活性を測定し、β-ガラクトシダーゼ活性レベルを標準化した。空のベクターでトランスフェクトされた細胞に対するルシフェラーゼ活性の上昇倍率を示した。
【図3】TRAF6とTAB2の相互作用を示す図である。(A)哺乳動物細胞におけるTRAF6とTAB2の結合を示す。2Flag-TRAF6の発現ベクターと、空のベクター(-)またはT7-TAB2全長(Full)、T7-TAB2C(C)もしくはT7-TAB2N(N)の発現ベクターとを記載したように組み合わせ、293細胞に一過的にトランスフェクトした。細胞抽出物を、抗T7抗体(7)またはマウスIgG(C)で免疫沈降した(IP)。共沈降したFlag-TRAF6は、抗Flag抗体によるイムノブロッティングにより検出した(IB)(上パネル、左)。免疫沈降したT7-TAB2蛋白質の量は、抗T7抗体で測定した(下パネル)。全細胞抽出物は、抗Flag抗体でイムノブロッティングし、Flag-TRAF6の総量を決定した(上パネル、右)。(B)内因性TRAF6、TAB2、TAK1およびTAB1の結合を示す。293IL-1RI細胞を、未処理のままか(0分)、もしくは、IL-1(10ng/ml)で記載した時間処理した。細胞抽出物を、抗TRAF6で免疫沈降した(IP)。共沈降したTAB2、TAK1、およびTAB1を、それぞれ、抗TAB2抗体(上パネル、左)、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体(中パネル、左)を用いたイムノブロッティングにより検出した(IB)。免疫沈降したTRAF6の量は、抗TRAF6抗体を用いたイムノブロッティングにより決定した(下パネル)。全細胞抽出物を、抗TAB2抗体(上パネル、右)、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体(中パネル、右)を用いてイムノブロッティングし、それぞれ、TAB2、TAK1およびTAB1の総量を決定した。
【図4】IL-1により誘導されるTAB2の移行を示す図である。(A)IL-1刺激の存在または非存在下での293IL-1RI細胞の細胞内画分を示す。293IL-1RI細胞を、未処理のままか(0分)、もしくは、IL-1で記載した時間処理した。細胞を膜(P100)および細胞質(S100)画分に分け、抗TAB2抗体(上パネル)、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体(第二パネル)、抗TRAF6C抗体(第三パネル)でイムノブロッティングした(IB)。アスタリクス(*)は、抗TRAF6Cにより検出された非特異的バンドを示す。更に各画分は、膜および細胞質画分の対照として、それぞれ、抗β-カテニン抗体(第四パネル)および抗α-チューブリン抗体(下パネル)によりイムノブロッティングした。(B)細胞質におけるTAB2の、TAK1、TAB1、およびTRAF6との結合を示す。293IL-1RI細胞を、未処理のまま放置するか(-)、もしくは、IL-1(+)(10ng/ml)で15分間処理した。これらの細胞のS100画分を、抗TAB2抗体またはウサギIgG(対照IgG)で免疫沈降した(IP)。免疫沈降したTAB2の量は、抗TAB2抗体によるイムノブロッティング(IB)により測定した(上パネル、左)。共沈降したTAK1、TAB1、およびTRAF6は、それぞれ、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体(中パネル、左)、および抗TRAF6C抗体(下パネル、左)によりイムノブロッティングして検出した。S100画分中のTAB2、TAK1、TAB1、およびTRAF6の総量(S100合計)を、抗TAB2抗体(上パネル、右)、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体(中パネル、右)、および抗TRAF6C抗体(下パネル、右)によりイムノブロッティングして測定した。アスタリクス(*)は、抗TRAF6C抗体により検出された非特異的バンドを示す。
【図5】TAK1とTRAF6との相互作用へのTAB2の作用を示す図である。Flag-TRAF6およびHA-TAK1の発現ベクターを、空のベクター(-)、またはT7-TAB2全長(Full)もしくはT7-TAB2C(C)の発現ベクターと組みあわせて、記載したように293細胞にトランスフェクトした。細胞抽出物を、抗HA抗体(H)またはマウスIgG(C)で免疫沈降した(IP)。共沈降したFlag-TRAF6、T7-TAB2およびT7-TAB2Cが、それぞれ、抗Flag抗体(上パネル、左)および抗T7抗体(中パネル、左)によるイムノブロッティングにより検出された(IB)。各免疫複合体中のHA-TAK1の量を、抗HA抗体により測定した(下パネル)。全細胞抽出物は、抗Flag抗体および抗T7抗体によりイムノブロッティングし、各々、Flag-TRAF6、T7-TAB2およびT7-TAB2Cの総量を測定した(右パネル)。
【図6】自己リン酸化による、IL-1により誘発されるTAK1の活性化を示す図である。(A)IL-1により誘発されるTAK1のリン酸化および活性化を示す。293IL-1RI細胞を、IL-1(+)(10ng/ml)で10分間処理するか、もしくは、未処理のまま放置(-)した。細胞抽出物を、抗TAK1抗体で免疫沈降した。この免疫沈降物は、放置するか(レーン1,2)、もしくは、λ蛋白質ホスファターゼと共にインキュベートした(レーン3および4;PPase処理)。全ての試料を、抗TAK1抗体および抗TAB1抗体でイムノブロッティング(IB)し(上パネル)、細菌で発現させたMKK6を外来基質として用いてin vitroのリン酸化アッセイを行った(下パネル)。(B)IL-1により誘発されるTAK1の自己リン酸化を示す。293IL-1RI細胞に、HA-TAK1、HA-TAK1(K63W)、またはHA-TAK1(S192A)の発現ベクターを記載したように一過的にトランスフェクトした。細胞を、IL-1(+)(10ng/ml)で10分間処理するか、もしくは、未処理のまま放置(-)した。HA-エピトープで標識した野生型および変異TAK1を、抗HA抗体を用いたイムノブロッティング(IB)によって検出した。(C)TAK1および他のMAPKKK類の活性化ループのアミノ酸配列を並置した。アスタリクス(*)は、リン酸化され、これらのキナーゼの活性化に関わっていることが示された残基を意味する。(D)野生型および変異TAK1のキナーゼ活性。293細胞に、HA-TAK1(WT)、HA-TAK1(S192A)(SA)、またはHA-TAK1(S192D)(SD)、およびTAB1の発現ベクターを記載したようにトランスフェクトした。抗HA抗体による免疫沈降物に対し、外来基質として細菌で発現させたMKK6を用いてin vitroのリン酸化アッセイを行った(上パネル)。各々の免疫複合体中のHA-標識した野生型および変異TAK1の量を、抗TAK1抗体によるイムノブロッティングにより決定した(下パネル)。
【図7】IL-1シグナル伝達にTAB2がどのように関与するかを示すモデル図である。IL-1受容体からJNKおよびNF-κBへとつながる主要なシグナル伝達経路を示した。詳細は本文を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0160】
以下、実施例および参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0161】
[実施例1] TAB2の単離
本発明者らは、TAK1応答の特異性をもたらすように作用するアダプター蛋白質を同定するため、酵母のツーハイブリッドによりTAK1と結合する蛋白質のスクリーニングを行った。これにより本発明者らは、2種のTAK1結合蛋白質、TAB1およびTAB2を単離した(Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。このうちTAB1は、TAK1の直接的な活性化因子として機能することが見出されている(Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。
【0162】
一方、TAB2断片をコードするプラスミドpGAD-TAB2(394-693)は、TAB2のアミノ酸394-693 [TAB2(394-693)]をコードしている。続いて、TAB2(394-693)をプローブとしてヒト腎cDNAライブラリー(Clontech社)をスクリーニングし、TAB2のN-末端が欠失した3.3kbのクローンを単離した。TAB2 cDNAの5'末端は、5'-RACE-Ready cDNA(Clontech社)にを用いたcDNA-5'末端迅速増殖法(5'-RACE)で単離した。TAB2の全長cDNAは、5'-RACE産物から得られた270-塩基対のEcoRI-NcoI断片、およびヒト腎cDNAライブラリーからの3.3 kbクローンの2.2 kbのNcoI-HindIII断片の連結により再構築した。
【0163】
ノーザン(RNA)ブロット分析により、cDNAとサイズが一致する約5bpのTAB2転写物が、様々な組織において発現されていることが明らかになった(データ省略)。シークエンス分析から、TAB2蛋白質は、693個のアミノ酸からなる分子量 77kDa の蛋白質であることが予想された(図1A)。TAB2配列のひとつの際立った特長は、両親媒性のα-ヘリックスを形成する可能性のあるアミノ酸(535-609)が存在することである。他の点では、TAB2と他の公知の蛋白質との間に明らかでかつ顕著な類似性は認められず、このことはTAB2が新たなクラスの蛋白質であることを示している。
【0164】
[実施例2] TAK1とTAB2の間の相互作用
<細胞培養および発現ベクター>
以下の実験で用いた293および293IL-1 RI細胞は、ウシ胎仔血清(10%)を補充したダルベッコ改変イーグル培地で、37℃および5%CO2で培養した。TRAF6、TAB1、TAK1、および後述のTAK1(K63W)をコードしている哺乳動物発現ベクターについては先に記載されている(Yamaguchi,K. et al., (1995) Science, 270, 2008-2011; Cao,Z. et al., (1996) Nature, 383, 443-446; Shirakabe,K. et al., (1997) J.Biol.Chem., 272, 8141-8144; Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)。pCMVT7ベクターは、pCMVのClaI-EcoRIギャップへT7エピトープ配列(MASMTGGQQMG)をコードするDNA断片を挿入することによって構築し、CMVプロモーターの制御下で、N-末端にT7エピトープタグが付加された蛋白質を発現させた。pCMVT7-TAB2は、常法を用いて、pCMVT7へTAB2 のORFをサブクローニングすることによって作製した。TAB2のアミノ酸1-400および401-693をそれぞれコードしている欠失変異体TAB2NおよびTAB2Cは下記のように作製した。TAB2N変異体を作製するためには、250塩基対断片を、SspI制限部位を含む5'-オリゴヌクレオチド(5'-TATAACATTCAGAATATTTCAACAGGACCT-3'/配列番号:3)、ならびに終結コドンおよびSalI制限部位を含む3'-オリゴヌクレオチド(5'-CAGGTCGACTCACTGTTCATCTCCTGTGGC-3'/配列番号:4)によりPCR増幅した。得られた250塩基対のSspI-SalI断片、およびpCMVT7-TAB2から得られた950塩基対のEcoRI-SspI断片を、pCMVT7のEcoRI-SalIギャップに挿入した。TAB2C変異体を作製するためには、330塩基対断片を、EcoRI制限部位を含む5'-オリゴヌクレオチド(5'-CGCGAATTCATGCGGAATCAGCCCACACTC-3'/配列番号:5)、およびPstI制限部位を含む3'-オリゴヌクレオチド(5'-CCCCTGGTGAAACTGCAGGGGGCTTATTGG-3'/配列番号:6)によりPCR増幅した。得られた330塩基対のEcoRI-PstI断片、およびpCMVT7-TAB2から得られた1kbのPstI-SalI断片を、pCMVT7のEcoRI-SalIギャップへ挿入した。全ての構築物は、DNAシークエンシングにより確認した。
【0165】
<抗体および免疫沈降法>
ここで、実施例で用いた抗体おとび免疫沈降について記載する。TAB2に対するウサギのポリクローナル抗体(抗TAB2抗体)を、TAB2のアミノ酸1-20に相当するペプチドに対して作製した。TRAF6に対するウサギのポリクローナル抗体(抗TRAF6C抗体)は、TRAF6のアミノ酸497-522に相当するペプチドに対して作製した。TRAF6に対するヤギのポリクローナル抗体であるTRAF6(C20) (Santa Cruz社)を、後述の内因性TRAF6の免疫沈降に使用した。TAK1に対するポリクローナル抗体(抗TAK1抗体)およびTRAF6に対するポリクローナル抗血清(抗TRAF6抗血清)については先に記載されている(Lomaga,M.A. et al., (1999) Genes Dev., 13, 1015-1024; Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)。HAに対するモノクローナル抗体HA.11(Babco社)、T7に対するモノクローナル抗体(Novagen社)、およびFlagに対するモノクローナル抗体M2(Kodak社)を使用した。精製したウサギおよびマウスのIgG(Sigma社)を、対照の抗体として使用した。
【0166】
293IL-1 RI細胞は、未処理のまま放置するか、もしくは、記載された時間IL-1(10ng/ml)で処理した。トランスフェクション試験のために、293細胞(1×106)を10cmディッシュに播種し、リン酸カルシウム沈殿法により、様々な発現ベクターを含む合計10μg DNAでトランスフェクトし、24〜36時間インキュベートした。細胞を氷冷したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、20mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、12.5mM β-グリセロリン酸、1.5mM MgCl2、2mM EGTA、10mM NaF、2mM DTT、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、1mM PMSF、および20μMアプロチニンを含有する0.5%Triton X-100溶解バッファー0.3mlで溶菌した。細胞破片を、10,000gで5分間遠心分離除去した。細胞溶解物からの蛋白質は、様々な抗体1μgおよびProtein G-Sepharose(Pharmacia社) 20μlで免疫複合体を形成させた。この免疫複合体を、20mM HEPES(pH7.4)、500mM NaCl、および10mM MgCl2を含有する洗浄バッファーで3回洗浄し、20mM HEPES(pH7.4)、150mM NaCl、および10mM MgCl2を含有するリンスバッファー40μl中に懸濁した。イムノブロッティングのためには、この免疫沈降物または全細胞溶解物を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、Hybond-P膜(Amersham社)に転写した。これらの膜を、様々な抗体でイムノブロッティングし、結合した抗体を、増強化学発光(ECL)によるウェスタンブロットシステム(Amersham社)を用いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合した抗ウサギまたは抗マウスIgG抗体により可視化した。
【0167】
<結果>
TAK1とTAB2との間の相互作用を、哺乳動物細胞におけるin vivo共沈降実験法を用いて調べた。293細胞に、それぞれ、T7タグを付加したTAB2蛋白質およびHAタグを付加したTAK1蛋白質を発現する上記プラスミドを共トランスフェクトした。細胞抽出物を、抗T7モノクローナル抗体を用いて免疫沈降し、共沈降したHA-TAK1を、抗HAモノクローナル抗体によるイムノブロッティングにより検出した(図1B)。その結果、TAK1はTAB2に結合していることが判明した(レーン4)。本発明者らはさらに、内因性のTAB2およびTAK1の結合を示すことによって、TAB2のTAK1との相互作用が生理的なものであることを確認した(下記参照)。
【0168】
TAB2がTAK1と相互作用するための構造的な必要要件を決定するために、本発明者らは2種の欠失蛋白質であるT7-TAB2NおよびT7-TAB2Cを作製した(上述)。これらはそれぞれ、TAB2のN-末端(アミノ酸1-400)およびC-末端(アミノ酸401-最後まで)を含んでいる(図1B)。293細胞においてHA-TAK1と共発現させたところ、TAK1はTAB2Cとは共沈降するが、TAB2Nとはしないことが判明した(レーン6,8)。この結果は、コイルドコイル構造を含むTAB2のC-末端ドメインが、TAK1との結合に寄与していることを示している。一方で、先行する研究では、同じくコイルドコイルαヘリックスを含むTAK1のC-末端ドメインが、TAB2との相互作用に寄与していることが示されている(Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。従って、これらのコイルドコイルモチーフは、TAK1およびTAK2の間の接触を媒介する蛋白質間の相互作用ドメインとして機能しているのかも知れない。
【0169】
[実施例3] TAB2はTAK1の直接の活性化因子として作用しない
<発現ベクターおよび酵母培養>
酵母株SY1984を、pNV11-TAK1-HAと共に、YEpGAP112ベクター、YEpGAP112-TAB1、またはYEpGAP112-TAB2を組み合わせて共形質転換した。プラスミドYEpGAP112-TAB2は、YEpGAP112ベクターへTAB2のORF(コード領域)をサブクローニングして構築した。発現プラスミドpNV11-TAK1-HAおよびYEpGAP112-TAB1は、先に記載されたものである(Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。全ての構築物は、DNAシークエンシングにより確認した。形質転換体(100ml培養物)を、600nmにおける光学濃度が0.6になるまで増殖させた。50mM Tris-HCl (pH 7.5)、100mM NaCl、1mM Na4P2O7、5mM NaF、1mM EDTA、1% Triton-X 100、50mM DOC、1mM PMSF、0.5% アプロチニン、および1mM DTTを含有する溶菌バッファーで細胞抽出物を調製し、10,000gで5分間微量遠心機により分離した。10,000gで10分間再遠心分離した後、上清を、抗HAモノクローナル抗体(HA.11)で免疫沈降し、下記のようにキナーゼ活性をアッセイした。
【0170】
<in vitroリン酸化アッセイおよびホスファターゼ処理>
TAK1または様々な異所的発現したHA-エピトープタグを付加した蛋白質は、先に記したように、それぞれ、抗TAK1抗体または抗HA抗体で免疫沈降した。免疫沈降物を、20mM Tris-HCl、および10mM MgCl2を含有するA-mixバッファー40μl中で懸濁し、細菌により発現されたMKK6(Moriguchi,T. et al., (1996) J.Biol.Chem., 271, 13675-13679)1μgと共に、10mM HEPES(pH7.4)、1mM DTT、5mM MgCl2、および5μCiの[γ-32P]-ATP(3,000 Ci/mmol)を含有するキナーゼバッファー10μl中で、25℃で2分間インキュベートした。試料は、12%SDS-PAGE上で分離し、オートラジオグラフィーにより可視化した。ホスファターゼ処理については、免疫沈降物を、50mM Tris-HCl(pH 7.5)、0.1mM EDTA、5mM DTT、0.01%Brij 35、および2mM MgCl2を含有するホスファターゼバッファー中でλ蛋白質ホスファターゼ(New England Biolabs社)と共に、30℃で30分間インキュベートした。その後試料を、前述の溶解バッファーで2回、PBSで2回洗浄し、全ての試料について、前述のin vitroリン酸化アッセイを行った。
【0171】
<結果>
TAK1活性は、TAK1に特異的に結合するTAB1によって制御されると考えられるので、本発明者らは酵母細胞を用いて、TAB2のTAK1との相互作用が、その酵素活性を調節することができるかどうかを決定した。酵母細胞に、TAK1-HAに加え、TAB1またはTAB2のいずれかの発現プラスミドを共トランスフェクトした。その後、トランスフェクトした酵母細胞からTAK1蛋白質を免疫沈降(IP)し、そのキナーゼ活性を、特異的基質MKK6を用いて in vitro で測定した(図1C)。空のベクタープラスミドを共トランスフェクトした場合、免疫沈降されたTAK1はほとんど触媒活性がなかった(レーン2)。酵母細胞にTAB1発現プラスミドを共トランスフェクトした場合、TAK1キナーゼ活性の顕著な上昇が認められた(レーン3)。この知見は、TAB1はTAK1の活性化因子として機能するという先に公表された結果と一致している(Shibuya,H. et al., (1996) Science, 272, 1179-1182)。他方で、TAB2の共発現はTAK1を活性化しなかった(レーン4)。従って、TAB1とは対照的に、TAB2はTAK1の酵素活性に対する調節因子ではないことが判明した。
【0172】
[実施例4] TAB2はIL-1シグナル伝達分子として機能する
TAB2がIL-1シグナル伝達に関与するかどうかを決定するために、本発明者らは、IL-1刺激後のNF-κB活性化にTAB2が及ぼす影響について調べた。TAB2を発現する哺乳動物用ベクターを293細胞にトランスフェクトし、NF-κB依存性のルシフェラーゼレポーターを用いてNF-κB活性のアッセイを行った。
【0173】
レポーター遺伝子アッセイのためには、6ウェル(35mm)プレートに、293細胞(1.6×105細胞/ウェル)を播種した。播種して24時間後、記載したようにレポーター遺伝子プラスミドおよび各発現プラスミドを細胞にトランスフェクトした。Ig-κ-ルシフェラーゼレポーターを用いてNF-κB依存性の転写を測定した。β-アクチンプロモーター制御下のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を含有するプラスミド(pAct-β-Gal)を用いて、トランスフェクション効率を標準化した。レポーター遺伝子アッセイは、以前記載したように行った(Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)。
【0174】
図2Aに示すように、TAB2は、NF-κBを用量依存的に活性化した。TAB2の2種の欠失変異体であるTAB2NおよびTAB2C(図1B参照)は、いずれもルシフェラーゼ活性を誘導しなかったことから、TAB2全体がNF-κBを活性化する能力に必須であることが示唆される。野生型蛋白質および変異蛋白質の発現レベルが同等であることは、ウェスタンブロット法により確認した(データ省略)。IL-1が媒介するNF-κBの活性化におけるTAB2の役割を更に解明するために、本発明者らは、これらのTAB2の欠失変異体が、IL-1が誘導するNF-κB活性のドミナントネガティブインヒビターとして作用するかどうかを調べた。TAB2CはIL-1によるNF-κB活性化を強力に阻害する一方で、TAB2Nはこれを弱く阻害した(図2A)。これらの結果は、TAB2が、IL-1によるNF-κBの活性化に必要であることを示している。
【0175】
NF-κBの活性化に加え、IL-1はJNKの活性化を誘導する(Dinarello,C.A. (1996) Blood, 87, 2095-2147)。IL-1が媒介するJNKの活性化に、TAB2が関与しているかを決定するために、本発明者らは、JNK活性に対するTAB2の発現の作用について調べた(図2B)。HA-標識したJNKを、野生型TAB2またはTAB2Cのいずれかと共に293細胞に共トランスフェクトした。JNKを免疫沈降し、GST-c-Jun蛋白質を基質として in vitroキナーゼアッセイを行い、JNK活性の程度を決定した。野生型TAB2は、JNKの活性化を著しく誘導した(レーン1,2)。TAB2Cの過剰発現は、IL-1により誘発されるJNK活性化を阻害した(レーン3,4)ことから、TAB2Cは、IL-1が媒介するJNKに対してもドミナントネガティブ作用を発揮することが示された。これらの結果を合わせて考慮すると、TAB2は、IL-1によるNF-κBおよびJNKの両方の活性化に参画していることが示唆される。
【0176】
本発明者らは次に、3TP-Luxレポーターを用いて、TGF-βが媒介するシグナル伝達に対してTAB2が作用を及ぼす能力について試験した(図2C)。3TP-Luxレポーターは、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1遺伝子に由来するTGF-β応答配列によって制御されるルシフェラーゼ遺伝子を含む。
【0177】
上記のIg-κ-ルシフェラーゼレポーターの代わりに3TP-ルシフェラーゼレポーターを用いて、TGF-β依存性の転写をNF-κB活性のアッセイと同様に測定した。β-アクチンプロモーター制御下のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を含有するプラスミド(pAct-β-Gal)を用いて、トランスフェクション効率を標準化した。
【0178】
293細胞において、TAB2のトランスフェクションは、3TP-Luxの基本的転写に対しほとんど影響がなかった。TGF-βシグナル伝達は、TGF-βI型受容体の恒常的活性型 [TβRI(T204D)]の発現により開始され、リガンドやII型受容体が存在しなくてもTGF-β応答シグナルを伝達する。TβRI(T204D)のトランスフェクションは、3TP-Luxレポーターの基本発現を上昇させ、これは負のレギュレーターSmad7の共発現によって強力に阻害された。他方で、TAB2CおよびTAB2Nはいずれも、TβRI(T204D)により活性化された3TP-Lux活性には全く作用しなかった。これらの結果は、TAB2は、TGF-βシグナル伝達経路に関与していないことを示している。
【0179】
[実施例5] TAB2はTRAF6に結合する
TRAF6は、IL-1シグナル伝達経路に関与し(Cao,Z. et al., (1996) Nature, 383, 443-446; Lomaga,M.A. et al., (1999) Genes Dev., 13, 1015-1024)、TAK1と複合体を形成することが示されている(Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)。従って本発明者らは、TAB2がTRAF6と相互作用することができるかどうかを調べた(図3A)。293細胞において、T7-TAB2とFlagタグを付加したTRAF6とを共発現させ、抗-T7抗体で免疫沈降した。これらの免疫複合体を、抗Flagモノクローナル抗体によるイムノブロティングに供した。その結果、TAB2は、TRAF6により効果的に沈降した(レーン4)。TAB2のどのドメインがTRAF6との結合に関与しているかを決定するために、本発明者らは、TAB2NまたはTAB2CがTRAF6に結合することが可能であるかどうかを、同じ実験方法を用いて試験した。その結果、TRAF6は、TAB2Cとは共沈降するが、TAB2Nとはしないことが判明した(レーン6,8)。これらの結果から、TAB2のC-末端ドメインが、TRAF6との結合には必要である。
【0180】
本発明者らは、TRAF6とTAB2の相互作用が、これらの蛋白質の生理的なレベルでも生じるかどうかを調べた(図3B)。293IL-1RI細胞を、IL-1で処理するか、もしくは未処理のまま放置し、内因性TRAF6を抗TRAF6ポリクローナル抗体で免疫沈降した。これらの免疫沈降物を、TAK1、TAB1またはTAB2に対するポリクローナル抗体によるイムノブロッティングで分析した。先に観察されたように(Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)、内因性TAK1およびTAB1は、IL-1依存的にTRAF6と共沈降した(中央のパネル)。非刺激細胞においては、内因性TAB2のTRAF6との結合はほとんどなかった。しかし、IL-1刺激時にはこの結合は明らかになり、TRAF6に対するTAB2の結合カイネティクスは、TRAF6に対するTAK1およびTAB1の結合カイネティクスと同等であった(上パネル)。これらの結果は、TRAF6に対する内因性のTAK1、TAB1、およびTAB2の結合は、リガンド依存性であることを示している。
【0181】
TAK1およびTAB2が、IL-1依存的にTRAF6に対してどのように相互作用するかをさらに調べるために、本発明者らは、生理的条件下でのこれらの蛋白質の細胞内分布を調べた(図4A)。
【0182】
約70%コンフレンシーの293IL-1RI細胞を、未処理のまま放置するか、もしくは、IL-1(10ng/ml)で記載した時間処理し、10mM HEPES(pH7.4)、1.5mM MgCl2、10mM KCl、0.2mM PMSF、および0.5mM DTTを含有する氷冷した低張バッファー0.5ml中に再懸濁し、Dounceホモジナイザーを用いて、氷上で30ストロークでホモジナイズした。溶解されない細胞、核、細胞破片を、1,000gで5分間遠心分離し、ペレット化した。100,000gで1時間遠心分離し、可溶物[上清(S100)](細胞質)および顆粒分[ペレット(P100)](膜)画分を得た。各画分の試料は、SDS-PAGEにより分離し、TAK1、TAB1、TRAF6、およびTAB2蛋白質の存在を先に記した抗体を用いてイムノブロッティングにより分析した。
【0183】
ウェスタンブロッティングにより、TAK1およびTAB1蛋白質の大部分が細胞質画分に含まれる一方で、TRAF6蛋白質は膜および細胞質の両画分に存在することが明らかになった。IL-1刺激は、TAK1、TAB1、またはTRAF6の局在化パターンを変化させなかった。対照的に、TAB2蛋白質は、IL-1刺激がない場合は、ほとんど膜画分に存在した。IL-1刺激により、著しい量のTAB2蛋白質が細胞質移行した。
【0184】
抗-TAB2抗体を用いて細胞質抽出物の免疫沈降を行い、内因性TAK1およびTRAF6蛋白質との共沈降を、イムノブロット分析により調べた(図4B)。非刺激細胞においては、それぞれTAK1およびTRAF6に対するTAB2の結合はわずかであるか、もしくは結合していなかった。しかしながら、これらの相互作用はIL-1刺激により劇的に増加した。総合すると、これらの知見は、IL-1はTAB2の細胞質への蓄積を誘導し、そこでTAB2がTRAF6およびTAK1と複合体を形成することを示唆している。
【0185】
細胞内画分により、IL-1が存在しない場合は、TAB2は主として膜に局在することが明らかになった。IL-1の刺激は、TAB2の細胞質への放出をもたらし、TRAF6およびTAK1の間の相互作用を媒介することを可能にする(図4)。TAB2は、膜と相互作用することが予想されるドメインを有さないので、他の分子(群)によって膜につながれているのかも知れない。IL-1処理により、TAB2はこれらの分子(群)から解離し、細胞質においてTAB2の蓄積が生じるのであろう。従って、TAB2を過剰発現させると、膜が全てを保持することができない程過剰なTAB2が提供されることによって、IL-1リガンドの作用が模倣されると考えられる。実際に本発明者らは、TAB2を過剰発現させると、IL-1刺激が存在しない場合であっても、TAB2が細胞質に蓄積することを見出した(データ省略)。TAB2の過剰発現は、TRAF6およびTAK1の動員を通じて、JNKおよびNF-κBの活性化につながるシグナル伝達経路を誘導する。従って、IL-1刺激によるTAB2蛋白質の再分布は、TAK1を特定化するのに関連した重要なステップである。本発明者らのデータは、膜から細胞質へのTAB2の移行が、蛋白質複合体の特異的かつダイナミックなアッセンブリに関与しており、IL-1シグナルがTAK1の活性化へと翻訳されるための重要なステップになっていることを示唆している。
【0186】
[実施例6] TAB2はTAK1のTRAF6への結合のアダプター蛋白質として機能する
前述の知見は、TAB2が、TAK1のTRAF6への結合のためのアダプター蛋白質として機能する可能性を示唆する。TAB2がTRAF6とTAK1との間のアダプター蛋白質として機能するならば、TRAF6およびTAK1の過剰発現は、細胞中の内因性TAB2の量には限界があるので、TAK1と共沈降するTRAF6の量を減少させるはずである。この点を明らかにするために、T7-TAB2の存在下または非存在下、Flag-TRAF6をHA-TAK1と共に293細胞にトランスフェクトした(図5)。Flag-TRAF6とHA-TAK1との間には弱い相互作用が認められた(上パネル、レーン2)。ここにTAB2を共発現させると、TAK1とTRAF6との共免疫沈降を増強した(上パネル、レーン4)。これらの結果は、TAB2がTAK1およびTRAF6と共に三重複合体(ターナリーコンプレックス)を形成し、これらの蛋白質の相互作用を促進するというモデルと一致している。
【0187】
IL-1シグナル伝達に対するTAB2Cの顕著な阻害作用に関する生物学的な基盤を更に調べるために、本発明者らは、TRAF6およびTAK1の複合体形成におけるこの領域の潜在的な役割について試験した。T7-TAB2Cを、Flag-TRAF6およびHA-TAK1と共発現させた。TAB2のC-末端ドメインは、TAK1またはTRAF6のいずれかと相互作用するのに十分であることが見出された(図1Bおよび3A)。これと一致するように、TAB2CはTAK1と共沈降した(図5、中パネル、レーン6)。しかしながら、TAB2Cの過剰発現は、TAK1のTRAF6への結合を増強しなかった(上パネル、レーン6)。従って、TAB2C-TRAF6およびTAB2C-TAK1の二量複合体は形成されるが、TRAF6-TAB2-TAK1の三重複合体の形成には、TAB2全体の構造が必要である。IL-1シグナル伝達アッセイにおけるTAB2Cの際立った阻害作用は、おそらく、TRAF6およびTAK1の効果的なアセンブリを阻害するTAB2Cの能力に由来するものであろう。これらの結果は、TAB2がTRAF6およびTAK1を連結する中間のシグナル伝達分子であり、この結合がLI-1シグナルを伝達するために必要であることを示唆している。
【0188】
[実施例7] IL-1は自己リン酸化を介してTAK1を活性化する
IL-1刺激後にTAK1がどのように活性化されるかを調べるために、本発明者らは、IL-1処理した細胞および未処理の細胞において内因性TAK1複合体を分析した(図6A)。293IL-1RI細胞をIL-1で刺激すると、先に観察されたように(Ninomiya-Tsuji,J. et al., (1999) Nature, 398, 252-256)、内因性TAK1が活性化された(下パネル、レーン1,2)。イムノブロッティングにより、IL-1処理細胞および未処理細胞の両方において、TAB1はTAK1と共沈降することが明らかになった(上パネル、レーン1,2)。このことは、TAB1が恒常的にTAK1と結合していることを示唆している。しかしながら、IL-1で処理された細胞では、TAK1およびTAB1は、SDS-PAGEにおいてよりゆっくりと移動することがわかった。ホスファターゼ処理を行うと、これらのゆっくり移動するバンドは消失した(上パネル、レーン3,4)ことから、これらはリン酸化の結果であることが示唆される。TAK1複合体をホスファターゼで前処理を行うと、MKK6をリン酸化するTAK1の能力は失われた(下パネル、レーン4)ことから、脱リン酸化がTAK1キナーゼ活性を失活させることか示唆される。従って、TAK1のリン酸化は、その触媒活性にとって必須である。これらの結果は、IL-1が、予め形成されたTAB1-TAK1複合体のリン酸化を介してTAK1を活性化することを示唆している。
【0189】
IL-1により誘導されるTAK1のリン酸化は、別の蛋白質キナーゼにより、または自己リン酸化により媒介されうる。これらの2つの可能性は、触媒的に不活性なTAK1変異蛋白質が、IL-1処理によりリン酸化されるかどうかを試験することにより区別することができる。もし別のキナーゼがTAK1リン酸化に寄与しているならば、触媒的に不活性のTAK1でも、依然としてIL-1に反応してリン酸化されるはずである。反対に、自己リン酸化がTAK1のリン酸化に寄与しているならば、触媒的に不活性なTAK1はリン酸化されないだろう。触媒的に不活性な変異キナーゼであるTAK1(K63W)(上述)を使用した結果は、後者の可能性を裏付けるものであった。野生型TAK1はIL-1に応答してリン酸化されたが、TAK1(K63W)はリン酸化されなかった(図6B、レーン1-4)。これらの結果は、TAK1がIL-1処理により自己リン酸化されることを示している。
【0190】
MAPKKKを含む多くのプロテインキナーゼの活性化において、サブドメインVIIおよびVIIIの間のキナーゼ活性化ループ中のセリンおよび/またはスレオニン残基のリン酸化は必須である(Johnson,L.N. et al., (1996) Cell, 85, 149-158)。前記活性化ループ中に存在するTAK1 Ser-192残基は、MEKK1および酵母のSSK2 MAPKKK中にも存在する(図6C)。MEKK1 Thr-1393およびSSK2 Thr-1460 は、自己リン酸化によるそれらの蛋白質の活性化に必須であることが知られている(Deak,J.C. and Templeton,D.J. (1997) Biochem.J., 322,185-192)。Ser-192残基がTAK1機能の制御に関わっているかどうかを調べるために、本発明者らは、Ser-192がアラニンに置換された変異体TAK1(S192A)を作製し実験に供した。その結果、TAK1(S192A)変異蛋白質は、IL-1処理によりリン酸化されなかった(図6B)。更に野生型TAK1とは対照的に、TAK1(S192A)変異体は、TAB1と共発現した場合に、キナーゼ活性を有さなかった(図6D、レーン2,3)。従って、TAK1のSer-192残基はTAK1活性に必須である。これらの結果は、TAK1活性化ループ中のSer-192が、おそらく自己リン酸化部位として、TAK1の活性化に重要な役割を果たしていることを示唆している。
【0191】
いくつかのキナーゼにおいて、この活性化ループの中の特定の残基を負電荷を持つアミノ酸に置換すると恒常的な活性化を生じることが示されている(Yan,M. and Templeton,D.J. (1994) J.Biol.Chem., 269, 19067-19073; Ling,L. et al., (1998) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 95, 3792-3797)。従って本発明者らは、Ser-192がアスパラギン酸に置換されたTAK1(S192D)変異体を作製し、そのキナーゼ活性を野生型TAK1のものと比較した。TAK1(S192D)変異体は、TAB1と共に共発現させた場合であってもキナーゼ活性を示さなかった(図6D、レーン4)。これらの結果は、TAK1のSer-192のリン酸化によって達成される分子環境は、負電荷を持つ残基への置換によっては模倣できないことを示唆している。
【0192】
なお、活性化ループ中のセリン残基の置換を有するTAK1変異体であるTAK1(S192A)およびTAK1(S192D)(後述)はPCRにより作製した。まず、SacI制限部位を含む5'-オリゴヌクレオチド(TTGTGGAGCTCCGGCAGTTG/配列番号:7)を、TAK1(S192A)についてはNarI制限部位を含む3'-オリゴヌクレオチド(TTCAGGCGCCATCCAAGCAGCAGCCCC/配列番号:8)と共に、TAK1(S192D)については(TTCAGGCGCCATCCAAGCAGCATCCCC/配列番号:9) と共に用いて、TAK1変異体断片を作製した。得られたSacI-NarI断片を、ベクターpSP72(Promega社)のEcoRIおよびBamHI部位中にN-末端にHAエピトープタグを付加した全長TAK1 cDNA断片を含むpSP72-HA-TAK1のSacIおよびNarI部位にサブクローニングした。次に、このEcoRI-BamHI TAK1変異体断片を、pEF ベクターのEcoRI-BamHIギャップにクローニングし、pEF-HA-TAK1変異体を作製した。全ての構築物は、DNAシークエンシングにより確認した。
【0193】
多くのMAPKKKの活性化は、リン酸化により調節されている(Herskowitz,I. (1995) Cell, 80, 187-197; Deak,J,C. and Templeton,D.J. (1997) Biochem.J., 322, 185-192; Siow,Y.L. et al., (1997) J.Biol.Chem., 272, 7586-7594; King,A.J. et al., (1998) Nature, 396, 180-183; Leung,I.W. and Lassam,N. (1998) J.Biol.Chem., 273, 32408-32415; Posas,F. and Saito,H. (1998) EMBO J., 17, 1385-1394)。いくつかのMAPKKKのリン酸化は、Ste20様MAPKKKKなどの他の蛋白質キナーゼによって媒介される。他のケースでは、自己リン酸化がMAPKKKの活性化に関与している。ここで示された結果から、TAK1の自己リン酸化が、IL-1により誘発されるTAK1の活性化に重要であることが明らかにされた。サブドメインVIIおよびVIIIの間の活性化ループ中に見出されるSer-192のアラニンへの変異は、IL-1により誘導されるTAK1のリン酸化を失わせる。更にこの変異は、TAK1のキナーゼ不活性型となる。これらの結果を基にすると、Ser-192がTAK1の自己リン酸化部位であり、その触媒活性にとって重要である可能性が高い。
【0194】
キナーゼの自己リン酸化は、分子内または分子間反応のいずれかによって媒介される。分子間自己リン酸化のひとつの一般的例は、受容体チロシンキナーゼの活性化である。リガンド結合により、これらの受容体はホモ二量体を生成し、それらの二量体化された相手側をリン酸化し、このキナーゼの活性化をもたらす。活性化の同様のメカニズムが、ASK1およびMLK3のようなMAPKKKについて報告されている。上流の刺激に応答して、MLK3およびASK1の両方はホモ二量体を形成し、その結果活性化される。他方で、本発明者らは、TAK1の自己リン酸化が分子内反応によって生じることを見出した(データ省略)。このことは二量体化が、TAK1の活性化にとって重要な工程ではないことを示唆している。これと一致して、本発明者らは、共免疫沈降アッセイによってTAK1の二量体化を検出することはできなかった(データ省略)。これらの知見は、分子内自己リン酸化がMEKK1およびSSK2の活性化にとって重要であるという最近の報告と類似している(Deak,J.C. and Templeton,D.J. (1997) Biochem.J., 322, 185-192; Siow,Y.L. et al., (1997) J.Biol.Chem., 272, 7586-7594)。TAK1、MEKK1、およびSSK2の潜在的な自己リン酸化部位は、それらの活性化ループ中の相同の位置に存在する。TAK1の場合、自己リン酸化および活性化にはTAB1が必要である。興味深いことに、SSK2の自己リン酸化にも、相互作用する蛋白質であるSSK1が必要であり、SSK1はSSK2の上流のレギュレーターとして機能する(Posas,F. and Saito,H. (1998) EMBO J., 17, 1385-1394)。従って、TAK1、SSK2、そしておそらくはMEKK1は、共通の活性化メカニズムにより制御されているのかも知れない。これらの知見は、自己リン酸化に関わるMAPKKK活性化には少なくとも2種類の異なるメカニズム、すなわち二量体化が誘導する分子間自己リン酸化およびレギュレーター依存型の分子内自己リン酸化があることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明により、IL-1のシグナル伝達において、TAB2がTRAF6とTAK1とを橋渡しするアダプターとして機能しすることが示された。また、TAB2のC末端の部分ペプチドが、IL-1のシグナル伝達の阻害剤として機能することが明らかにされた。本発明のスクリーニング方法により、TRAF6、TAK1、またはTAB2を介したシグナル伝達の阻害を通して、IL-1のシグナル伝達を特異的に阻害するための化合物を単離することが可能となる。これら化合物は、IL-1のシグナル伝達を阻害することにより抗炎症作用を示すことが可能であると考えられる。従って、、炎症が関与する種々の疾病や傷害に対する新しい医薬の重要な候補である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TAK1およびTRAF6に結合する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)から(e)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNA。
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
【請求項2】
IL-1刺激に応答してシグナル伝達を行なう活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)から(e)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNA。
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
【請求項3】
TAK1またはTRAF6に結合する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
【請求項4】
IL-1刺激に応答したシグナル伝達を阻害する活性を有する蛋白質またはペプチドをコードする、下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA。
(b) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質の部分ペプチドをコードするDNA。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチド。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のDNAが挿入されたベクター。
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを保持する宿主細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞またはその培養上清から発現させた蛋白質またはペプチドを回収する工程を含む、請求項5に記載の蛋白質またはペプチドの製造方法。
【請求項9】
請求項5に記載の蛋白質またはペプチドに結合する抗体。
【請求項10】
配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド。
【請求項11】
IL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)被検試料の存在下、請求項1または3に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質とを接触させる工程、
(b)請求項1または3に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を検出する工程、および
(c)該結合を阻害する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項12】
工程(b)における検出が免疫沈降法により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
IL-1のシグナル伝達を阻害する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)被検試料の存在下、請求項2に記載のDNAによりコードされる蛋白質を発現する哺乳動物細胞に、IL-1を接触させる工程、
(b)請求項2に記載のDNAによりコードされる蛋白質を介して伝達される生物学的活性を検出する工程、および
(c)該生物学的活性を減少させる化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項14】
生物学的活性がTAK1の活性化である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
TAK1の活性化をMKK6のリン酸化により検出する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
生物学的活性がNF-κBの活性化である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
Ig-κプロモーターの下流に結合したレポーター遺伝子を含むベクターを細胞内に導入し、該細胞内におけるレポーター遺伝子の発現を検出することにより、NF-κBの活性化を検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生物学的活性がJNKの活性化である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
JNKの活性化をJunのリン酸化により検出する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
生物学的活性が請求項2に記載のDNAによりコードされる蛋白質の細胞膜から細胞質への移行である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
生物学的活性がTAK1の自己リン酸化である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
請求項2に記載のDNAを発現するベクターが導入された哺乳動物細胞を用いる、請求項13から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項11から22に記載の方法により単離しうる化合物を有効成分とする、IL-1のシグナル伝達の阻害剤。
【請求項24】
請求項1に記載のDNAによりコードされる蛋白質またはペプチドとTAK1蛋白質および/またはTRAF6蛋白質との結合を阻害する化合物を有効成分とする、IL-1のシグナル伝達の阻害剤。
【請求項25】
請求項4に記載のDNAまたは該DNAによりコードされる蛋白質若しくはペプチドを有効成分とする、IL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
【請求項26】
ペプチドがTAB2-NまたはTAB2-Cである、請求項25に記載のIL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
【請求項27】
炎症が関与する疾病または傷害を予防または治療するために用いられる、請求項23から26のいずれかに記載のIL-1、IL-18、またはLPSのシグナル伝達の阻害剤。
【請求項28】
請求項11または12に記載の方法により単離しうるTAB2阻害剤を有効成分とする、抗炎症剤または抗アレルギー剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−131026(P2010−131026A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9214(P2010−9214)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【分割の表示】特願2001−539870(P2001−539870)の分割
【原出願日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(303033118)
【Fターム(参考)】