方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法および探傷装置
【課題】ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷技術に関し、両方向に伝搬する広帯域波形を使用することによりノイズ除去と入射ガイド波パワーの増大を図るとともに、一方向に伝搬させるガイド波制御技術および特定方向からのガイド波を選択して増幅抽出することにより探傷に適する出力波形(パルス圧縮信号)を得る。
【解決手段】送信センサ6a;6bを所定の時間差を設けて励振することにより広帯域ガイド波8が一方向にのみ伝搬するよう制御して送信する。欠陥等により反射したガイド波10の波形を受信センサ11a;11bでデジタル収録し、各信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出する。抽出された信号に対し適切な参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術を適用する。
【解決手段】送信センサ6a;6bを所定の時間差を設けて励振することにより広帯域ガイド波8が一方向にのみ伝搬するよう制御して送信する。欠陥等により反射したガイド波10の波形を受信センサ11a;11bでデジタル収録し、各信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出する。抽出された信号に対し適切な参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術を適用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷技術に係り、詳しくは、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧処理によってパルス圧縮信号を得ることにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法および探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイド波探傷とは、探傷を行おうとする対象構造体にガイド波を伝搬させ、伝搬経路中に存在する欠陥により反射されるエコー信号を基に欠陥の検出を行うものである。
【0003】
対象構造体として配管を例に説明する。ガイド波を励起すると、ガイド波は配管の両方向に伝搬する性質を有する。ここで両方向とは配管が置かれている状態によって、左右又は前後あるいは上下の両方向を指す。説明を簡単にするため、それらを代表する両方向の用語として、左右両方向を使用する。ところが配管探傷においては、ガイド波が左右両方向に励起されると、左右にある欠陥等からのエコー信号が同一の受信信号上に重畳して現れることになり、欠陥位置の同定など信号解釈が複雑になる。これを防止するため従来のガイド波配管探傷においては、複数の送信センサを用いてガイド波を一方向に伝搬制御(以下、方向制御と称する)することが一般的となっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表平10−507530号公報
【特許文献2】特表平11−502020号公報
【0004】
従来のガイド波配管探傷技術では、送信波形としてバースト波と呼ばれる正弦波信号を用いている。その正弦波の波長λに対し、2つの送信センサをλの4分の1だけ離して設置し、各々の送信センサから90度の位相差をつけて正弦波を同時励振する、あるいは振幅を反転し適切な時間差をつけて正弦波を励振することにより方向制御を実現していた。
【0005】
ところで、従来のガイド波配管探傷技術の問題点の1つとして、送信波形としてバースト波と呼ばれる正弦波信号を用いているため、ガイド波のパワーが比較的弱く、振動ノイズおよび電磁ノイズ等の様々なノイズの影響を受けやすいといった事があげられる。
【0006】
これに対し、ノイズ低減や入力パワー増大のための信号処理技術の1つであるパルス圧縮技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術はレーダーや超音波探傷法などへの適用が図られている(例えば特許文献3、特許文献4参照)。パルス圧縮とは、送信時にバースト波やパルス波の代わりに時間的に長い広帯域信号を励起し、その受信波形に対して適切な参照信号により相互相関演算を施すことで、パルス状の時間分解能の良いパルス圧縮信号を得るものである。その際参照信号と相関性を持たないノイズ成分は相互相関演算によって打ち消されるため、パルス圧縮技術は優れたノイズ除去効果を有する。
【非特許文献1】レーダーハンドブック,スコルニケット,マクグロウヒル社,1970(Radar handbook, Skolniket., McGraw-Hill Inc., 1970)
【特許文献3】特許第3022108号公報
【特許文献4】特許第3036387号公報
【0007】
相互相関演算を施したパルス圧縮信号が時間分解能のよいパルス状になる様、励振される広帯域信号としては、時間と共に周波数が変化するチャープ波、Barker系列等による位相符号化正弦波などがよく用いられるが、原理的にはこれらに限定する必要はなく、励振される広帯域信号の自己相関関数が時間分解能のよいパルス状になりさえすればどのような波形を用いても良い。例えば、M系列や相補系列による位相符号化正弦波や、TSP(time stretched pulse)信号などがこれにあたる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガイド波配管探傷において広帯域波形を用いるパルス圧縮技術の適用を考えると以下の問題が生じる。背景技術で述べたようにガイド波配管探傷においては、ガイド波を配管の一方向へ伝搬するよう制御する必要がある。そのため広帯域信号を方向制御励振する際、複数の送信センサを用いて時間差励振する。伝搬させたい方向(以下順方向と呼ぶ)に伝搬されるガイド波は複数の広帯域信号が重畳した複雑波形を示し、その波形は送信センサ間隔の程度によって複雑に変化するといったことが生じる。
【0009】
図4(2)は、広帯域信号としてチャープ信号を用いて方向制御励振された場合の、順方向に伝搬される複雑重畳波形の例を示している。
【0010】
方向制御励振に伴って伝搬される複雑重畳波形の自己相関関数は、複数のウェーブレットが重なり合った時間分解能の悪い形状をとるため、パルス圧縮の信号として用いるには一般に不適当である。従来技術においては、このような複雑重畳波形に対するパルス圧縮技術の適用はなかった。また従来技術からの類推の範囲において、上記のような複雑重畳波形に対してパルス圧縮を実施すると、一般に時間分解能の悪い複雑な出力波形となるため、そのまま適用するには不適当であった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を、一方向に伝搬するよう制御して送信させ、かつその受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施してパルス状の時間分解能の良い波形を得るようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法および探傷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するために、請求項1記載の発明は、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサを用いて、前記間隔をガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差を設けて励振することにより、ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信し、かつガイド波の受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術によって探傷することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサを用いて、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたガイド波信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出を行い、抽出された受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術によって探傷するものである。またこの手順については、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術により対応するパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出してもよい。
【0014】
請求項3記載の発明は、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサを用いて、前記間隔をガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差を設けて励振することにより、ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信し、かつガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術により対応するパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出した結果によって探傷するものである。またこの手順については、それぞれの受信信号に対し、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたガイド波信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出を行った後に、抽出された受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施してもよい。
【0015】
請求項4記載の発明は、上記いずれかの探傷法において、広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波であることを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の発明は、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置であって、
チャープ波その他の広帯域波形を生成し、かつ、所定の時間差(Δt)を設けた複数チャネルの送信用波形データを計算する送信波形演算手段と、
前記波形データに対応した広帯域波形を有する信号を発生し送信センサに供給する送信信号発生手段と、
前記広帯域波形と同一の参照信号データを計算する参照信号演算手段と、
励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサと、
励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサと、
前記受信センサより得られる複数チャネルの信号をデジタル化して収録する信号収録手段と、
前記信号収録手段により得られる複数チャネルの受信信号データに対し、前記参照波演算手段より得られる参照信号データとの相互相関演算処理を行いパルス圧縮信号データを出力する相関処理手段と、
前記相関処理手段より得られる複数チャネルのパルス圧縮信号データに対し、チャネル毎に適切な時間シフトを施して各々加え合わせるシフト加算演算手段
を具備することを特徴とするものである。
ここで前記所定の時間差(Δt)とは、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔(Tp)の半分のことである。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記探傷装置において、広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
パルス圧縮処理による「ノイズ低減効果」により、これまでノイズに埋もれて検出できなかった微小な欠陥エコー信号を明確に捕らえることが出来るようになり、探傷精度を向上させることが出来る。
【0019】
パルス圧縮処理による「パワー増大効果」により、これまでよりもより遠くの領域まで、探傷に必要なガイド波信号を送受信することが可能となり、これに伴い探傷適用可能領域の拡大が可能となる。例えば今まで探傷可能長さ以上の配管長を持つ垂直方向に伸びる配管の探傷については、途中に足場を組んで分割探傷しなければ配管全体の探傷が出来ないため、コストの面で探傷を実施する事が困難であった。パルス圧縮の適用による探傷可能範囲の拡大により、これらの配管に対する探傷が足場組などの付帯工事を伴わず実施できるため、コスト面でも十分見合った探傷が可能となる。
【0020】
また、一方向にのみガイド波が伝搬するよう方向制御し、かつ受信時においても信号の伝搬方向を判別する事が可能であるため、収録される探傷信号の解釈が容易となり、信号解釈の複雑さから生じる欠陥の有無および欠陥位置の同定における誤判断などの可能性が少なくなり、スムーズに探傷を進めることが出来るようになるため、探傷精度の向上、および探傷に要する時間短縮が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかる実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明装置の機能実現手段を示す構成説明図である。また図2は、同装置の(a)ハードウェア構成図および(b)パーソナルコンピュータ内の処理を示す機能構成ブロック図である。
【0022】
図2(b)のパーソナルコンピュータ内部において、同期部2から所定の繰り返し周期ごとに出力される同期信号に基づき、所定周期ごとに広帯域信号等演算部3において送信に用いる2ch分の遅延時間情報等を含む広帯域信号の数値データが演算され、その情報をもとに図2(a)におけるD/Aコンバータ4a,4bから広帯域信号が発生され、送信用アンプ5a,5bによって電力増幅された後、送信センサ6a,6bに供給される。供給された広帯域波形を有する電気信号はガイド波送信センサ6a,6bによりガイド波信号に変換され被検体配管7に入射され、送信ガイド波8が伝搬する。さらに被検体配管中に存在する欠陥9によりガイド波は反射され、その反射ガイド波10はガイド波受信センサ11a,11bにより電気信号に変換され、受信アンプ12a,12bによって電圧増幅された後、同期部2からの同期信号に基づきA/Dコンバータ13a,13bによってデジタル収録される。収録された受信信号データはパーソナルコンピュータ1に転送され、必要に応じて同期加算平均部14において加算平均化処理された後、パルス圧縮部15において、参照信号演算部16で計算された参照信号データとの相互相関演算によりパルス圧縮がなされる。パルス圧縮部15による2ch分のパルス圧縮信号は、加算・シフト演算部17において所定の時間シフト演算および加算演算を行うことでこれを1つの最終出力波形とし、その結果が表示部18に表示される。
【0023】
図3は、ガイド波送信センサ6a,6bとガイド波受信センサ11a,11bについての詳細な配置図を示している。送信センサ6aと6bは間隔L1だけ隔てて配置され、同様に受信センサ11aと11bは間隔L2だけ隔てて配置される。間隔L1および間隔L2については請求項1,請求項2、請求項3および請求項5に記載の通り広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の間隔とする。これについては後で詳細に述べる事とする。
【0024】
送信センサ6a,6bからは、逆方向へ伝搬するガイド波をキャンセルする目的で、次式(数1)に示す時間差Δtを設けて、互いに振幅の符号を反転させた同形状の広帯域信号を時間差励振する。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、Vpはガイド波の伝搬速度を示している。その際、順方向に伝搬するガイド波の空間波形は、2つの互いに符号の異なる広帯域信号が距離2×L1だけ離れて重なった合成波形となる。図4には、広帯域信号としてチャープ信号を用いた場合の、各センサが励起した空間波形成分(1a),(1b)と、実際に伝搬する合成空間波形(2)を示している。
【0027】
ガイド波エコーを受信後、受信信号と参照信号との相互相関演算は、パーソナルコンピュータ内において次のような計算式に従ってソフトウェア的に行われる。同じサンプリングレートにてデジタル収録された受信信号R(n):データ数N、参照信号Ref(n):データ数Mに対し、相互相関波形C(τ)は次式(数2)によって得られる。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、相互相関演算に用いる参照信号Ref(n)としては、励振に用いられた広帯域波形もしくは、方向制御励振の結果伝搬し受信され得る合成された広帯域波形が用いられる事が多いが、原理的にはこれらに限った話ではなく、受信波形と相互相関演算されたパルス圧縮波形が時間分解能の良いパルス状になるものであればどのような参照信号を用いても良い。励振に用いた信号に対し単に窓関数を変えた波形などもこれにあたる。
【0030】
しかしながら上述のように得られたパルス圧縮信号は、一般に複数のウェーブレットが重畳した分解能の悪い波形となる。図5は、図4(2)の様な空間波形を有するガイド波に対し、この時各送信センサが励振に用いた広帯域信号を参照信号とした際のパルス圧縮波形を示す。図に示すように、上下反対方向を向いた2つの波形が、時間間隔Toだけ離れて重なっている。この時間間隔Toは、広帯域信号を方向制御励振する際に設けた遅延時間Δtの2倍に相当する。またそれぞれの波形は励振広帯域信号(時間波形)の自己相関関数に相当する形状を取る。
【0031】
ここで各自己相関関数に相当する波形のメインピークの山21と、直近のサイドローブの谷22との時間間隔をTpとすると、ToがTpと一致するようになれば、パルス圧縮波形は最も良い分解能を持つ事になる。次式(数3)で導かれるように、Toは励振時の送信センサ間隔L1に比例する。
【0032】
【数3】
【0033】
そこでToをTpに等しくする、すなわち送信センサの距離間隔L1を次式(数4)に示すように調整する事で、パルス圧縮波形の時間分解能は最も高くなる。
【0034】
【数4】
【0035】
図6は、L1を変化させた時のパルス圧縮波形を示す。図からも分かるように上記数式(数4)のように送信センサ間隔L1を調整した方が、振幅が大きくかつ時間分解能の高いパルス圧縮波形が得られる事がわかる。
【0036】
次に、ある方向に伝搬するガイド波のみを選択的に受信する方向選択について述べる。ここでは図3において+X方向に伝搬するガイド波と−X方向に伝搬するガイド波とが混在し、受信センサ11aおよび11bによって受信する際、−X方向に伝搬するガイド波のみを選択的に強調抽出しようとする場合を想定する。センサ11aおよびセンサ11bにより受信されその後、参照信号によって相互相関演算されたパルス圧縮波形をそれぞれCa(t)、Cb(t)とする。センサ11aによる受信信号に対し、センサ11bによる受信信号は、−X方向に伝搬する反射ガイド波については若干早く到達し、+X方向に伝搬する反射ガイド波については若干遅く到達するので、−X方向に伝搬するガイド波のみを強調するべく、一方の受信センサ11a由来のパルス圧縮信号を基準にもう一方の受信センサ11b由来のパルス圧縮信号をΔtbだけ遅くするよう時間シフトさせて加え合わせ、最終出力C(t)とする。数式表示は次式(数5)のとおりである。
【0037】
【数5】
【0038】
次式(数6)に示すとおり、時間シフト量Δtbは受信センサ間隔L2をガイド波が伝搬するのに要する時間である。
【0039】
【数6】
【0040】
この手順については、パルス圧縮する前の受信生波形の段階で時間シフトおよび加算処理を行った後にパルス圧縮処理をしても良い。−X方向に伝搬するガイド波の信号を強調するように時間シフト・加算操作を行うため、+X方向に伝搬するガイド波の最終出力信号は、受信センサ間隔L2に依存した重ね合わせ波形となる。この場合も受信センサの距離間隔L2を次式(数7)に示すように調整する事で、−X方向の信号が最も強調され+X方向の信号が最もキャンセルされる。
【0041】
【数7】
【0042】
図7は、方向選択受信をした場合としない場合による、−X方向および+X方向それぞれに伝搬する波に対する最終出力信号の違いを表している。方向選択受信が効果的に行われている事が図から見て取れる。
【実施例1】
【0043】
実施例1では、肉厚5.0mm、外径6インチ、長さ5.5mの配管用炭素鋼鋼管SGP−6Bを、図8に示すように、F1,F2,F3の3カ所に球面状の欠陥(肉厚方向の深さが4.0mmで曲率半径がそれぞれF1:10mm,F2:15mm,F3:25mm、断面欠損率は、それぞれ1.7%,2.1%,2.6%)を配置し、図中Tr、Reの位置にそれぞれT(0,1)モード用の送信センサ(1対)、受信センサ(1対)を配置した試験片に対して、励振波形としてチャープ信号を採用し、方向制御の方法を変えてガイド波パルス圧縮法を適用して探傷を行った。図中記号E1,E2はそれぞれ左右の管端を示している。
【0044】
図9のグラフは、(1)送信受信ともに方向制御しなかった場合、(2)送信時のみ方向制御した場合、(3)受信時のみ方向制御した場合、(4)送信受信とも方向制御した場合のそれぞれのパルス圧縮探傷波形を示している。各ピークに付けられているF1E1等の記号は、該当するガイド波の伝搬経路を示している。例えばF1E1の場合、Tr→F1→E1→Reの順に伝搬した事を示す。(1)方向制御しない場合の波形においては、送信時に管の両方向にガイド波が同時伝搬する事と、管端E1による反射の影響により多くの信号が乱立している。例えば欠陥F1に由来するピークは、F1ピーク、E1F1ピーク、F1E1ピーク、E1F1E1ピークの4本存在する。これに対し(2)送信時のみ方向制御した場合は、送信時にE1方向に伝搬しないため、(1)の場合に比べE1F1ピークおよびE1F1E1ピークが消去されている。また(3)受信時のみ方向制御した場合は、−X方向に伝搬する波だけを選択受信するため、−X方向に伝搬するF1ピークおよびE1F1ピークのみが強調して表示されている。さらに(4)送信受信とも方向制御した場合においては、(2)と(3)の効果が両方発現し、Tr→F1→Reの経路を取る信号(すなわちF1ピーク)のみが強調して表示されている。送信および受信の方向制御によって信号の乱立が緩和され、信号解釈が簡便になっている事が見て取れる。これにより、欠陥情報の誤判断を防止する効果が確認できる。
【実施例2】
【0045】
実施例2では、実施例1と同一の試験片を用い、励振波形として長さ11のBarker系列による位相符号化正弦波信号を採用し、方向制御の方法を変えてガイド波パルス圧縮法を適用して探傷を行った。
【0046】
図10のグラフは、図9と同様に(1)送信受信ともに方向制御しなかった場合、(2)送信時のみ方向制御した場合、(3)受信時のみ方向制御した場合、(4)送信受信とも方向制御した場合のそれぞれのパルス圧縮探傷波形を示している。励起信号としてBarker系列による位相符号化正弦波信号を用いた場合においても、前出のチャープ信号と同様に方向制御により信号の乱立が緩和され、信号解釈が簡便になる効果が確認出来る。
【実施例3】
【0047】
実施例3では、図11に示すような配管用炭素鋼鋼管SGP−6B鋼管で出来た、長さ30mを超える長尺モックアップ配管(定尺5.5mの配管を溶接により長尺化している)に対する探傷を行う。図11中の記号R/Tの位置に送信・受信センサを配置し、記号W1〜W7は溶接部の位置を示す。また簡明のため記載してないが幾つかの欠陥を設けている。図11中の記号R/T位置から矢印方向に方向制御励振する事とした。
【0048】
図12(1)は、従来法である方向制御されたバースト励振法による探傷波形、図12(2)は本発明の方向制御されたパルス圧縮法による探傷波形を示している。いずれの場合もノイズ除去のため500回の同期加算平均処理を行っている。ここで、探傷装置に供給する電源はインバータ方式の発電機を用いている事を記しておく。(1)バースト励振においては、ノイズ(この場合は発電機からのインバータノイズ)の影響を非常に強く受け、平均化処理後においてもノイズが除去されず、信号対ノイズ比が悪い波形となっている。これに対し、(2)パルス圧縮においては、ノイズが効果的に除去されて、欠陥が検出できた。本発明の適用により、パルス圧縮による電気系ノイズ除去効果が発揮され、探傷現場における十分な耐ノイズ性能を持たせられる事が示された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明装置の機能実現手段を示す構成説明図である。
【図2】同装置の(a)ハードウェア構成図及び(b)パーソナルコンピュータ内の処理を示すブロック図である。
【図3】送信センサと受信センサの詳細な配置を示す説明図である。
【図4】各送信センサが励振するガイド波の空間波形成分および実際に伝搬するガイド波の空間波形を示す説明図である。
【図5】相互相関処理したパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図6】送信センサ間隔L1を変えたときのパルス圧縮波形の変化を示す説明図である。
【図7】方向選択受信をした場合としない場合の最終出力波形の違いを示す説明図である。
【図8】実施例1および2で用いた試験片配置を示すレイアウト図である。
【図9】実施例1においてチャープ信号を励振し方向制御の方法を変えた場合のパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図10】実施例2において位相符号化正弦波信号を励振し方向制御の方法を変えた場合のパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図11】実施例3における長尺モックアップ配管配置を示すレイアウト図である。
【図12】インバータノイズがある状態での、従来法および本発明方法において得られる探傷波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 パーソナルコンピュータ
2 同期部
3 広帯域信号等演算部〔送信波形演算手段〕
4a D/Aコンバータ〔送信信号発生手段〕
4b D/Aコンバータ〔送信信号発生手段〕
5a 送信用アンプ〔送信信号発生手段〕
5b 送信用アンプ〔送信信号発生手段〕
6a 送信センサ
6b 送信センサ
7 被検体配管
8 送信ガイド波
9 欠陥
10 反射ガイド波
11a 受信センサ
11b 受信センサ
12a 受信アンプ〔信号収録手段〕
12b 受信アンプ〔信号収録手段〕
13a A/Dコンバータ〔信号収録手段〕
13b A/Dコンバータ〔信号収録手段〕
14 同期加算平均部
15 パルス圧縮部〔相関処理手段〕
16 参照信号演算部〔参照信号演算手段〕
17 加算・シフト演算部〔シフト加算演算手段〕
18 ディスプレイ
21 メインピークの山
L1 送信センサ間隔
L2 受信センサ間隔
X ガイド波パルス圧縮探傷装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷技術に係り、詳しくは、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧処理によってパルス圧縮信号を得ることにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法および探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガイド波探傷とは、探傷を行おうとする対象構造体にガイド波を伝搬させ、伝搬経路中に存在する欠陥により反射されるエコー信号を基に欠陥の検出を行うものである。
【0003】
対象構造体として配管を例に説明する。ガイド波を励起すると、ガイド波は配管の両方向に伝搬する性質を有する。ここで両方向とは配管が置かれている状態によって、左右又は前後あるいは上下の両方向を指す。説明を簡単にするため、それらを代表する両方向の用語として、左右両方向を使用する。ところが配管探傷においては、ガイド波が左右両方向に励起されると、左右にある欠陥等からのエコー信号が同一の受信信号上に重畳して現れることになり、欠陥位置の同定など信号解釈が複雑になる。これを防止するため従来のガイド波配管探傷においては、複数の送信センサを用いてガイド波を一方向に伝搬制御(以下、方向制御と称する)することが一般的となっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表平10−507530号公報
【特許文献2】特表平11−502020号公報
【0004】
従来のガイド波配管探傷技術では、送信波形としてバースト波と呼ばれる正弦波信号を用いている。その正弦波の波長λに対し、2つの送信センサをλの4分の1だけ離して設置し、各々の送信センサから90度の位相差をつけて正弦波を同時励振する、あるいは振幅を反転し適切な時間差をつけて正弦波を励振することにより方向制御を実現していた。
【0005】
ところで、従来のガイド波配管探傷技術の問題点の1つとして、送信波形としてバースト波と呼ばれる正弦波信号を用いているため、ガイド波のパワーが比較的弱く、振動ノイズおよび電磁ノイズ等の様々なノイズの影響を受けやすいといった事があげられる。
【0006】
これに対し、ノイズ低減や入力パワー増大のための信号処理技術の1つであるパルス圧縮技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術はレーダーや超音波探傷法などへの適用が図られている(例えば特許文献3、特許文献4参照)。パルス圧縮とは、送信時にバースト波やパルス波の代わりに時間的に長い広帯域信号を励起し、その受信波形に対して適切な参照信号により相互相関演算を施すことで、パルス状の時間分解能の良いパルス圧縮信号を得るものである。その際参照信号と相関性を持たないノイズ成分は相互相関演算によって打ち消されるため、パルス圧縮技術は優れたノイズ除去効果を有する。
【非特許文献1】レーダーハンドブック,スコルニケット,マクグロウヒル社,1970(Radar handbook, Skolniket., McGraw-Hill Inc., 1970)
【特許文献3】特許第3022108号公報
【特許文献4】特許第3036387号公報
【0007】
相互相関演算を施したパルス圧縮信号が時間分解能のよいパルス状になる様、励振される広帯域信号としては、時間と共に周波数が変化するチャープ波、Barker系列等による位相符号化正弦波などがよく用いられるが、原理的にはこれらに限定する必要はなく、励振される広帯域信号の自己相関関数が時間分解能のよいパルス状になりさえすればどのような波形を用いても良い。例えば、M系列や相補系列による位相符号化正弦波や、TSP(time stretched pulse)信号などがこれにあたる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガイド波配管探傷において広帯域波形を用いるパルス圧縮技術の適用を考えると以下の問題が生じる。背景技術で述べたようにガイド波配管探傷においては、ガイド波を配管の一方向へ伝搬するよう制御する必要がある。そのため広帯域信号を方向制御励振する際、複数の送信センサを用いて時間差励振する。伝搬させたい方向(以下順方向と呼ぶ)に伝搬されるガイド波は複数の広帯域信号が重畳した複雑波形を示し、その波形は送信センサ間隔の程度によって複雑に変化するといったことが生じる。
【0009】
図4(2)は、広帯域信号としてチャープ信号を用いて方向制御励振された場合の、順方向に伝搬される複雑重畳波形の例を示している。
【0010】
方向制御励振に伴って伝搬される複雑重畳波形の自己相関関数は、複数のウェーブレットが重なり合った時間分解能の悪い形状をとるため、パルス圧縮の信号として用いるには一般に不適当である。従来技術においては、このような複雑重畳波形に対するパルス圧縮技術の適用はなかった。また従来技術からの類推の範囲において、上記のような複雑重畳波形に対してパルス圧縮を実施すると、一般に時間分解能の悪い複雑な出力波形となるため、そのまま適用するには不適当であった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を、一方向に伝搬するよう制御して送信させ、かつその受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施してパルス状の時間分解能の良い波形を得るようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法および探傷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するために、請求項1記載の発明は、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサを用いて、前記間隔をガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差を設けて励振することにより、ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信し、かつガイド波の受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術によって探傷することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサを用いて、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたガイド波信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出を行い、抽出された受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術によって探傷するものである。またこの手順については、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術により対応するパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出してもよい。
【0014】
請求項3記載の発明は、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサを用いて、前記間隔をガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差を設けて励振することにより、ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信し、かつガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮技術により対応するパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出した結果によって探傷するものである。またこの手順については、それぞれの受信信号に対し、基準となる受信センサと他の受信センサとの距離に応じたガイド波信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせることにより、特定方向からの受信波のみを選択的に増幅抽出を行った後に、抽出された受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施してもよい。
【0015】
請求項4記載の発明は、上記いずれかの探傷法において、広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波であることを特徴としている。
【0016】
請求項5記載の発明は、両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置であって、
チャープ波その他の広帯域波形を生成し、かつ、所定の時間差(Δt)を設けた複数チャネルの送信用波形データを計算する送信波形演算手段と、
前記波形データに対応した広帯域波形を有する信号を発生し送信センサに供給する送信信号発生手段と、
前記広帯域波形と同一の参照信号データを計算する参照信号演算手段と、
励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサと、
励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔の半分の間にガイド波が伝搬する距離に相当する間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサと、
前記受信センサより得られる複数チャネルの信号をデジタル化して収録する信号収録手段と、
前記信号収録手段により得られる複数チャネルの受信信号データに対し、前記参照波演算手段より得られる参照信号データとの相互相関演算処理を行いパルス圧縮信号データを出力する相関処理手段と、
前記相関処理手段より得られる複数チャネルのパルス圧縮信号データに対し、チャネル毎に適切な時間シフトを施して各々加え合わせるシフト加算演算手段
を具備することを特徴とするものである。
ここで前記所定の時間差(Δt)とは、励振される広帯域波形の自己相関関数におけるメインピークの山と直近のサイドローブの谷との時間間隔(Tp)の半分のことである。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記探傷装置において、広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
パルス圧縮処理による「ノイズ低減効果」により、これまでノイズに埋もれて検出できなかった微小な欠陥エコー信号を明確に捕らえることが出来るようになり、探傷精度を向上させることが出来る。
【0019】
パルス圧縮処理による「パワー増大効果」により、これまでよりもより遠くの領域まで、探傷に必要なガイド波信号を送受信することが可能となり、これに伴い探傷適用可能領域の拡大が可能となる。例えば今まで探傷可能長さ以上の配管長を持つ垂直方向に伸びる配管の探傷については、途中に足場を組んで分割探傷しなければ配管全体の探傷が出来ないため、コストの面で探傷を実施する事が困難であった。パルス圧縮の適用による探傷可能範囲の拡大により、これらの配管に対する探傷が足場組などの付帯工事を伴わず実施できるため、コスト面でも十分見合った探傷が可能となる。
【0020】
また、一方向にのみガイド波が伝搬するよう方向制御し、かつ受信時においても信号の伝搬方向を判別する事が可能であるため、収録される探傷信号の解釈が容易となり、信号解釈の複雑さから生じる欠陥の有無および欠陥位置の同定における誤判断などの可能性が少なくなり、スムーズに探傷を進めることが出来るようになるため、探傷精度の向上、および探傷に要する時間短縮が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明にかかる実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明装置の機能実現手段を示す構成説明図である。また図2は、同装置の(a)ハードウェア構成図および(b)パーソナルコンピュータ内の処理を示す機能構成ブロック図である。
【0022】
図2(b)のパーソナルコンピュータ内部において、同期部2から所定の繰り返し周期ごとに出力される同期信号に基づき、所定周期ごとに広帯域信号等演算部3において送信に用いる2ch分の遅延時間情報等を含む広帯域信号の数値データが演算され、その情報をもとに図2(a)におけるD/Aコンバータ4a,4bから広帯域信号が発生され、送信用アンプ5a,5bによって電力増幅された後、送信センサ6a,6bに供給される。供給された広帯域波形を有する電気信号はガイド波送信センサ6a,6bによりガイド波信号に変換され被検体配管7に入射され、送信ガイド波8が伝搬する。さらに被検体配管中に存在する欠陥9によりガイド波は反射され、その反射ガイド波10はガイド波受信センサ11a,11bにより電気信号に変換され、受信アンプ12a,12bによって電圧増幅された後、同期部2からの同期信号に基づきA/Dコンバータ13a,13bによってデジタル収録される。収録された受信信号データはパーソナルコンピュータ1に転送され、必要に応じて同期加算平均部14において加算平均化処理された後、パルス圧縮部15において、参照信号演算部16で計算された参照信号データとの相互相関演算によりパルス圧縮がなされる。パルス圧縮部15による2ch分のパルス圧縮信号は、加算・シフト演算部17において所定の時間シフト演算および加算演算を行うことでこれを1つの最終出力波形とし、その結果が表示部18に表示される。
【0023】
図3は、ガイド波送信センサ6a,6bとガイド波受信センサ11a,11bについての詳細な配置図を示している。送信センサ6aと6bは間隔L1だけ隔てて配置され、同様に受信センサ11aと11bは間隔L2だけ隔てて配置される。間隔L1および間隔L2については請求項1,請求項2、請求項3および請求項5に記載の通り広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の間隔とする。これについては後で詳細に述べる事とする。
【0024】
送信センサ6a,6bからは、逆方向へ伝搬するガイド波をキャンセルする目的で、次式(数1)に示す時間差Δtを設けて、互いに振幅の符号を反転させた同形状の広帯域信号を時間差励振する。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、Vpはガイド波の伝搬速度を示している。その際、順方向に伝搬するガイド波の空間波形は、2つの互いに符号の異なる広帯域信号が距離2×L1だけ離れて重なった合成波形となる。図4には、広帯域信号としてチャープ信号を用いた場合の、各センサが励起した空間波形成分(1a),(1b)と、実際に伝搬する合成空間波形(2)を示している。
【0027】
ガイド波エコーを受信後、受信信号と参照信号との相互相関演算は、パーソナルコンピュータ内において次のような計算式に従ってソフトウェア的に行われる。同じサンプリングレートにてデジタル収録された受信信号R(n):データ数N、参照信号Ref(n):データ数Mに対し、相互相関波形C(τ)は次式(数2)によって得られる。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、相互相関演算に用いる参照信号Ref(n)としては、励振に用いられた広帯域波形もしくは、方向制御励振の結果伝搬し受信され得る合成された広帯域波形が用いられる事が多いが、原理的にはこれらに限った話ではなく、受信波形と相互相関演算されたパルス圧縮波形が時間分解能の良いパルス状になるものであればどのような参照信号を用いても良い。励振に用いた信号に対し単に窓関数を変えた波形などもこれにあたる。
【0030】
しかしながら上述のように得られたパルス圧縮信号は、一般に複数のウェーブレットが重畳した分解能の悪い波形となる。図5は、図4(2)の様な空間波形を有するガイド波に対し、この時各送信センサが励振に用いた広帯域信号を参照信号とした際のパルス圧縮波形を示す。図に示すように、上下反対方向を向いた2つの波形が、時間間隔Toだけ離れて重なっている。この時間間隔Toは、広帯域信号を方向制御励振する際に設けた遅延時間Δtの2倍に相当する。またそれぞれの波形は励振広帯域信号(時間波形)の自己相関関数に相当する形状を取る。
【0031】
ここで各自己相関関数に相当する波形のメインピークの山21と、直近のサイドローブの谷22との時間間隔をTpとすると、ToがTpと一致するようになれば、パルス圧縮波形は最も良い分解能を持つ事になる。次式(数3)で導かれるように、Toは励振時の送信センサ間隔L1に比例する。
【0032】
【数3】
【0033】
そこでToをTpに等しくする、すなわち送信センサの距離間隔L1を次式(数4)に示すように調整する事で、パルス圧縮波形の時間分解能は最も高くなる。
【0034】
【数4】
【0035】
図6は、L1を変化させた時のパルス圧縮波形を示す。図からも分かるように上記数式(数4)のように送信センサ間隔L1を調整した方が、振幅が大きくかつ時間分解能の高いパルス圧縮波形が得られる事がわかる。
【0036】
次に、ある方向に伝搬するガイド波のみを選択的に受信する方向選択について述べる。ここでは図3において+X方向に伝搬するガイド波と−X方向に伝搬するガイド波とが混在し、受信センサ11aおよび11bによって受信する際、−X方向に伝搬するガイド波のみを選択的に強調抽出しようとする場合を想定する。センサ11aおよびセンサ11bにより受信されその後、参照信号によって相互相関演算されたパルス圧縮波形をそれぞれCa(t)、Cb(t)とする。センサ11aによる受信信号に対し、センサ11bによる受信信号は、−X方向に伝搬する反射ガイド波については若干早く到達し、+X方向に伝搬する反射ガイド波については若干遅く到達するので、−X方向に伝搬するガイド波のみを強調するべく、一方の受信センサ11a由来のパルス圧縮信号を基準にもう一方の受信センサ11b由来のパルス圧縮信号をΔtbだけ遅くするよう時間シフトさせて加え合わせ、最終出力C(t)とする。数式表示は次式(数5)のとおりである。
【0037】
【数5】
【0038】
次式(数6)に示すとおり、時間シフト量Δtbは受信センサ間隔L2をガイド波が伝搬するのに要する時間である。
【0039】
【数6】
【0040】
この手順については、パルス圧縮する前の受信生波形の段階で時間シフトおよび加算処理を行った後にパルス圧縮処理をしても良い。−X方向に伝搬するガイド波の信号を強調するように時間シフト・加算操作を行うため、+X方向に伝搬するガイド波の最終出力信号は、受信センサ間隔L2に依存した重ね合わせ波形となる。この場合も受信センサの距離間隔L2を次式(数7)に示すように調整する事で、−X方向の信号が最も強調され+X方向の信号が最もキャンセルされる。
【0041】
【数7】
【0042】
図7は、方向選択受信をした場合としない場合による、−X方向および+X方向それぞれに伝搬する波に対する最終出力信号の違いを表している。方向選択受信が効果的に行われている事が図から見て取れる。
【実施例1】
【0043】
実施例1では、肉厚5.0mm、外径6インチ、長さ5.5mの配管用炭素鋼鋼管SGP−6Bを、図8に示すように、F1,F2,F3の3カ所に球面状の欠陥(肉厚方向の深さが4.0mmで曲率半径がそれぞれF1:10mm,F2:15mm,F3:25mm、断面欠損率は、それぞれ1.7%,2.1%,2.6%)を配置し、図中Tr、Reの位置にそれぞれT(0,1)モード用の送信センサ(1対)、受信センサ(1対)を配置した試験片に対して、励振波形としてチャープ信号を採用し、方向制御の方法を変えてガイド波パルス圧縮法を適用して探傷を行った。図中記号E1,E2はそれぞれ左右の管端を示している。
【0044】
図9のグラフは、(1)送信受信ともに方向制御しなかった場合、(2)送信時のみ方向制御した場合、(3)受信時のみ方向制御した場合、(4)送信受信とも方向制御した場合のそれぞれのパルス圧縮探傷波形を示している。各ピークに付けられているF1E1等の記号は、該当するガイド波の伝搬経路を示している。例えばF1E1の場合、Tr→F1→E1→Reの順に伝搬した事を示す。(1)方向制御しない場合の波形においては、送信時に管の両方向にガイド波が同時伝搬する事と、管端E1による反射の影響により多くの信号が乱立している。例えば欠陥F1に由来するピークは、F1ピーク、E1F1ピーク、F1E1ピーク、E1F1E1ピークの4本存在する。これに対し(2)送信時のみ方向制御した場合は、送信時にE1方向に伝搬しないため、(1)の場合に比べE1F1ピークおよびE1F1E1ピークが消去されている。また(3)受信時のみ方向制御した場合は、−X方向に伝搬する波だけを選択受信するため、−X方向に伝搬するF1ピークおよびE1F1ピークのみが強調して表示されている。さらに(4)送信受信とも方向制御した場合においては、(2)と(3)の効果が両方発現し、Tr→F1→Reの経路を取る信号(すなわちF1ピーク)のみが強調して表示されている。送信および受信の方向制御によって信号の乱立が緩和され、信号解釈が簡便になっている事が見て取れる。これにより、欠陥情報の誤判断を防止する効果が確認できる。
【実施例2】
【0045】
実施例2では、実施例1と同一の試験片を用い、励振波形として長さ11のBarker系列による位相符号化正弦波信号を採用し、方向制御の方法を変えてガイド波パルス圧縮法を適用して探傷を行った。
【0046】
図10のグラフは、図9と同様に(1)送信受信ともに方向制御しなかった場合、(2)送信時のみ方向制御した場合、(3)受信時のみ方向制御した場合、(4)送信受信とも方向制御した場合のそれぞれのパルス圧縮探傷波形を示している。励起信号としてBarker系列による位相符号化正弦波信号を用いた場合においても、前出のチャープ信号と同様に方向制御により信号の乱立が緩和され、信号解釈が簡便になる効果が確認出来る。
【実施例3】
【0047】
実施例3では、図11に示すような配管用炭素鋼鋼管SGP−6B鋼管で出来た、長さ30mを超える長尺モックアップ配管(定尺5.5mの配管を溶接により長尺化している)に対する探傷を行う。図11中の記号R/Tの位置に送信・受信センサを配置し、記号W1〜W7は溶接部の位置を示す。また簡明のため記載してないが幾つかの欠陥を設けている。図11中の記号R/T位置から矢印方向に方向制御励振する事とした。
【0048】
図12(1)は、従来法である方向制御されたバースト励振法による探傷波形、図12(2)は本発明の方向制御されたパルス圧縮法による探傷波形を示している。いずれの場合もノイズ除去のため500回の同期加算平均処理を行っている。ここで、探傷装置に供給する電源はインバータ方式の発電機を用いている事を記しておく。(1)バースト励振においては、ノイズ(この場合は発電機からのインバータノイズ)の影響を非常に強く受け、平均化処理後においてもノイズが除去されず、信号対ノイズ比が悪い波形となっている。これに対し、(2)パルス圧縮においては、ノイズが効果的に除去されて、欠陥が検出できた。本発明の適用により、パルス圧縮による電気系ノイズ除去効果が発揮され、探傷現場における十分な耐ノイズ性能を持たせられる事が示された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明装置の機能実現手段を示す構成説明図である。
【図2】同装置の(a)ハードウェア構成図及び(b)パーソナルコンピュータ内の処理を示すブロック図である。
【図3】送信センサと受信センサの詳細な配置を示す説明図である。
【図4】各送信センサが励振するガイド波の空間波形成分および実際に伝搬するガイド波の空間波形を示す説明図である。
【図5】相互相関処理したパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図6】送信センサ間隔L1を変えたときのパルス圧縮波形の変化を示す説明図である。
【図7】方向選択受信をした場合としない場合の最終出力波形の違いを示す説明図である。
【図8】実施例1および2で用いた試験片配置を示すレイアウト図である。
【図9】実施例1においてチャープ信号を励振し方向制御の方法を変えた場合のパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図10】実施例2において位相符号化正弦波信号を励振し方向制御の方法を変えた場合のパルス圧縮波形を示す説明図である。
【図11】実施例3における長尺モックアップ配管配置を示すレイアウト図である。
【図12】インバータノイズがある状態での、従来法および本発明方法において得られる探傷波形を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 パーソナルコンピュータ
2 同期部
3 広帯域信号等演算部〔送信波形演算手段〕
4a D/Aコンバータ〔送信信号発生手段〕
4b D/Aコンバータ〔送信信号発生手段〕
5a 送信用アンプ〔送信信号発生手段〕
5b 送信用アンプ〔送信信号発生手段〕
6a 送信センサ
6b 送信センサ
7 被検体配管
8 送信ガイド波
9 欠陥
10 反射ガイド波
11a 受信センサ
11b 受信センサ
12a 受信アンプ〔信号収録手段〕
12b 受信アンプ〔信号収録手段〕
13a A/Dコンバータ〔信号収録手段〕
13b A/Dコンバータ〔信号収録手段〕
14 同期加算平均部
15 パルス圧縮部〔相関処理手段〕
16 参照信号演算部〔参照信号演算手段〕
17 加算・シフト演算部〔シフト加算演算手段〕
18 ディスプレイ
21 メインピークの山
L1 送信センサ間隔
L2 受信センサ間隔
X ガイド波パルス圧縮探傷装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によってパルス圧縮信号を得ることにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の送信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置した1対以上の送信センサを用いて、前記距離間隔(L1)を前記ガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差(Δt)を設けて励振することにより、前記ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項2】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波が混在した受信信号に対し、参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置した1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算処理を施してパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項3】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の送信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置した1対以上の送信センサを用いて、前記距離間隔(L1)を前記ガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差(Δt)を設けて励振することにより、前記ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信するとともに、
前記ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置した1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算処理を施してパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項4】
広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波である請求項1乃至3のいずれか1項記載の方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項5】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷装置において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置であって、
チャープ波その他の広帯域波形を生成し、かつ、所定の時間差(Δt)を設けた複数チャネルの送信用波形データを計算する送信波形演算手段と、
前記波形データに対応した広帯域波形を有する信号を発生し送信センサに供給する送信信号発生手段と、
前記広帯域波形と同一の参照信号データを計算する参照信号演算手段と、
励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサと、
前記自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサと、
前記受信センサより得られる複数チャネルの信号をデジタル化して収録する信号収録手段と、
前記信号収録手段により得られる複数チャネルの受信信号データに対し、前記参照波演算手段より得られる参照信号データとの相互相関演算処理を行いパルス圧縮信号データを出力する相関処理手段と、
前記相関処理手段より得られる複数チャネルのパルス圧縮信号データに対し、チャネル毎に適切な時間シフトを施して各々加え合わせるシフト加算演算手段
を具備することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置。
【請求項6】
広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波である請求項5記載の方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置。
【請求項1】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によってパルス圧縮信号を得ることにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の送信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置した1対以上の送信センサを用いて、前記距離間隔(L1)を前記ガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差(Δt)を設けて励振することにより、前記ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項2】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波が混在した受信信号に対し、参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置した1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算処理を施してパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項3】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷法において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法であって、
前記ガイド波の送信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置した1対以上の送信センサを用いて、前記距離間隔(L1)を前記ガイド波が伝搬するのに要する時間に等しい時間差(Δt)を設けて励振することにより、前記ガイド波を一方向のみに伝搬するよう制御して送信するとともに、
前記ガイド波の受信に際し、励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置した1対以上の受信センサを用いて、それぞれの受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算処理を施してパルス圧縮信号を得た後、基準となる受信センサと他の受信センサとの離隔距離に応じたパルス圧縮信号の時間遅れを補正して各信号を加え合わせ、特定方向からのパルス圧縮信号のみを選択的に増幅抽出することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項4】
広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波である請求項1乃至3のいずれか1項記載の方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷法。
【請求項5】
ガイド波を用いて構造物の欠陥を検出する非破壊探傷装置において、
両方向に伝搬する広帯域波形を有するガイド波を一方向に伝搬制御して送信し、その受信信号に対し参照信号を用いて相互相関演算を施すパルス圧縮処理によって得られるパルス圧縮信号について方向選択に係る信号処理を施すことにより欠陥を検出するようにした方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置であって、
チャープ波その他の広帯域波形を生成し、かつ、所定の時間差(Δt)を設けた複数チャネルの送信用波形データを計算する送信波形演算手段と、
前記波形データに対応した広帯域波形を有する信号を発生し送信センサに供給する送信信号発生手段と、
前記広帯域波形と同一の参照信号データを計算する参照信号演算手段と、
励振される広帯域波形の自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L1)をおいて離隔配置された1対以上の送信センサと、
前記自己相関関数形状に応じて決められる所定の距離間隔(L2)をおいて離隔配置された1対以上の受信センサと、
前記受信センサより得られる複数チャネルの信号をデジタル化して収録する信号収録手段と、
前記信号収録手段により得られる複数チャネルの受信信号データに対し、前記参照波演算手段より得られる参照信号データとの相互相関演算処理を行いパルス圧縮信号データを出力する相関処理手段と、
前記相関処理手段より得られる複数チャネルのパルス圧縮信号データに対し、チャネル毎に適切な時間シフトを施して各々加え合わせるシフト加算演算手段
を具備することを特徴とする方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置。
【請求項6】
広帯域波形が時間と共に周波数が変化するチャープ波である請求項5記載の方向制御性を伴ったガイド波パルス圧縮探傷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−121092(P2007−121092A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313200(P2005−313200)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【出願人】(000211226)株式会社シーエックスアール (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【出願人】(000211226)株式会社シーエックスアール (2)
【Fターム(参考)】
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