方向性溶媒抽出を使用する淡水化
実質的な純水が、水を方向性をもって溶解するが塩を溶解しない方向性溶媒を使用する淡水化によって生成される。方向性溶媒を加熱して、塩分溶液からの水を方向性溶媒に溶解させる。残りの高濃縮塩分水を取り除き、方向性溶媒と水の溶液を冷まして、溶液から実質的な純水を沈降させる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
今世紀において、真水の不足は、人類の全地球的な関心事として、エネルギーの不足を凌ぐものと予想されており、これらの2つの難題は、容赦なく関連している。真水は、人間及び他の生物にとって最も基本的な必需品の1つである。農業並びに工業プロセスからの真水の大きな需要に加えて、人間一人一人は、最低で1日に約2リットルを消費する必要がある。一方では、真水を輸送し又は淡水化により真水を製造するための技術は、ますます不足する入手可能なエネルギー供給の需要が高い傾向にある。
【0002】
水の供給が不十分であることによってもたらされる出来事は、特に深刻である。真水が不足すると、飢饉、疾病、死、やむを得ない集団移住、(ダルフールからアメリカ南西部までの)地域間の紛争/戦争、及び生態系の崩壊に至るかもしれない。真水に対する要求が危険な状態にあり、不足による重大な結果にもかかわらず、真水の供給は、特に制約されている。地球上の水の97.5%は、塩分を含んでおり、残りのうち約70%は、(大部分は氷帽と氷河内に)氷として閉じ込められており、地球上の全ての水のわずか0.75%が利用できる真水として残されているにすぎない。
【0003】
さらに、利用できる真水のこの0.75%は、一様に分布してはいない。例えば、インドや中国のような、人口の多い発展途上国では、供給が不十分な地域が多い。そのうえ、真水の供給は、季節によって一定ではないことが多い。一般に、水は、地域の流域に制限され、大量に消費され、その輸送に費用がかかり、エネルギーを大量に消費する。
【0004】
一方では、真水に対する需要は、地球全体で逼迫している。貯水池は枯渇し、帯水層は減少し、河川は干上がり、氷河と氷帽は収縮している。人口の上昇により需要が増大し、農業及び拡大する工業化における変化によっても需要が増大する。気候変動は、多くの地域においてより一層の脅威をもたらしている。したがって、水不足に直面している人の数は増加している。
【0005】
海水から(又は、それには及ばないものの、弱塩水から)特に遠隔地のために真水を製造するには、一般に大量のエネルギーが必要とされる。逆浸透膜(RO)は現在のところ、主要な淡水化技術であるが、逆浸透膜はエネルギーの消費が多く、半透膜を通して水を押しやるのに大きな圧力を要するため依然として非効率であり、半透膜が汚損する傾向がある。小規模のROシステム(例えば、客船)では、全くもってさらに効率が悪いが、大規模なプラントでは、所要のエネルギー/容量は、理論的最小値の約1kWh/m3と比較して、30%の回収で4kWh/m3程度とすることができる。別の普及している方法は、多段階フラッシュ(MSF)蒸留であるが、これもエネルギーと資金を要するプロセスである。
【0006】
電気透析(ED)及び容量性淡水化(CD)のような電気化学的な方法は、純水を抽出するのではなく、飲料水(<10mM)を得るのにちょうど十分な塩分を抽出する。現在の大規模な電気化学的な淡水化システムは、海水の淡水化においてROプラントよりも効率が悪い(例えば、7kWh/m3がEDにおける技術の現状である)が、弱塩水に対してはより効率的になる(例えば、CDは、0.6kWh/m3を達成することができる)。一般に、水から塩分を除去するための既存の技術(そのうちの幾つかは何世紀もの間、存在していた)は、高コストであったり複雑であったり又はその両方であったりする傾向がある。
【発明の概要】
【0007】
方向性溶媒抽出を使用して淡水化するための方法及び装置が、ここに記載されている。この装置及び方法の種々の実施形態は、以下に記載する要素、特徴、及び工程のうち幾つか又は全てを含んでもよい。
【0008】
食用油(例えば、ダイズ油)及び幾つかの脂肪酸のような一定の溶媒は、塩化ナトリウムのような他の水溶性塩又は不純物を溶解させず、かつ、水に不溶性又は殆ど不溶性としつつ(即ち、水は、大部分の方向性溶媒の相に溶解するが、方向性溶媒は、痕跡量よりも多い分だけ大部分の水の相に溶解しない)、水を方向性をもって溶解させることができる特有の特性を所有する。この方向性の溶解現象が、ここでは塩分溶液の温度制御された淡水化に関する新しい方法において利用されている。
【0009】
この方法の一例では、塩分溶液(例えば、海水)は、方向性溶媒と接触状態にされる。方向性溶媒には、デカン酸CH3(CH2)8COOHのような、カルボン酸(即ち、カルボキシル基R−COOHを含む化合物)を含むことができる。塩分溶液と溶媒を、接触の前又は後に加熱して、水の溶媒への方向性分解を増大させ、これにより別個の相、即ち、溶媒と塩分溶液からの水とを含む第1相と、塩分溶液の高濃縮残部を含む第2相とを生成する。第1相は、第2相から分離し、抽出される。或いは、第2相は、第1相から抽出されることができる。抽出の後、第1相を冷まして、溶媒から水を沈降させる。次いで、沈降した水を溶媒から取り除く。抽出された水は、実質的な純水(例えば、工業的又は農業的な使用に適し、又は純度99.95%のような飲料水の水質基準の純度にさえ適合する)の形態とすることができる。
【0010】
本開示の方法は、地熱源から、海洋から、太陽から、又は他のプロセスから廃熱として生ずることができる低品質の熱を使用することができる。これらの淡水化方法は、使用するのも容易であり、現在の淡水化方法と比較して顕著なエネルギー及び経済的な節約を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実験室規模における方向性溶媒抽出淡水化プロセスの概略図である。
【図2】図2は、塩水が方向性溶媒と混合されるプロセスにおける最初の段階の図である。
【図3】図3は、スターリングプレートを使用して塩水と溶媒の混合物を攪拌しエマルションを生成する状態を示した図である。
【図4】図4は、エマルションを湯浴内に浸漬してエマルションの温度を上昇させる状態を示した図である。
【図5】図5は、加熱したエマルションの溶媒及び溶存水の上層と高濃縮塩水の底層への分離を示した図である。
【図6】図6は、溶媒及び溶解した水の上層を管内に注ぐ状態を示した図である。
【図7】図7は、注がれた溶媒及び溶存水を冷まして、溶媒から水の小滴を沈降させる状態を示した図である。
【図8】図8は、誘電泳動を使用して溶媒から水滴を分離し、分離した水を管の底に集める状態を示した図である。
【図9】図9は、管の底から実質的な純水を回収する状態を示した図である。
【図10】図10は、スターリングプレートを使用して塩水とデカン酸の溶媒の混合物を攪拌し、加熱されたエマルションを生成する状態を示した図である。
【図11】図11は、加熱されたエマルションを分離して、デカン酸及び溶存水の上層と高濃縮塩水の底層にする状態を示した図である。
【図12】図12は、デカン酸及び溶存水の上層を温水浴中で加熱した管に注ぐ状態を示した図である。
【図13】図13は、加熱した管内で誘電泳動を使用して溶媒から水滴を分離し、分離した水を管の底に集める状態を示した図である。
【図14】図14は、デカン酸溶媒からの真水の収率を温度の関数としてプロットした図である。
【図15】図15は、溶媒としてデカン酸を使用する淡水化プロセスについてのエネルギー消費を温度の関数としてプロットした図である。
【0012】
添付図面において、同様な参照文字は、異なる図面全体を通して同じ又は類似の部分を意味する。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、後述の特定の原理を示す際に強調されることもある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の種々の態様に関する上述及び他の特徴と利点は、本発明のより広範な範囲内における種々の概念及び特有の実施形態に関する以下のより特別な記載から明らかであろう。上記において紹介され、より詳細に後述される要旨に関する種々の態様は、その要旨が具体化のいかなる特別な方法にも限定されるものではなく、多数の方法のいずれかで具体化されてもよい。特定の具体化及び用途の例は、主として例示的な目的のために提供される。
【0014】
特に規定されていなければ、ここで使用される(技術的及び科学的用語を含む)用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常使用されるものと同じ意味を有する。通常使用される辞書で規定されるような用語は、関連する技術の文脈中における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明記されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。例えば、特別な組成が参照されている場合に、現実的で不完全な実体が加えられてもよく、例えば、(例えば、0.1重量又は容量%未満の)少なくとも痕跡不純物の潜在的な存在が、本記載の範囲内にあるものとして理解されることができる。
【0015】
第1、第2、第3等の用語が種々の要素を説明するのに本明細書で使用されているが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、或る用語を他の用語と区別するのに使用されているにすぎない。かくして、後述の第1要素は、典型的な実施形態の教示から逸脱することなしに、第2要素を名づけることができる。
【0016】
「上方」、「上部」、「下方」、「下部」、「下側」等のような空間的な相対用語は、ここでは、図面に示されるような、一要素と別の要素との関係を記載するのに記載し易くするため、使用してもよい。空間的な相対用語は、図示されている配向に加えて、使用中又は動作中の装置の異なる配向を含むことを意図していることが理解されるであろう。例えば、図の装置をひっくり返すと、他の要素又は特徴の「下方」又は「下部」と記載されている要素は、他の要素又は特徴の「上方」となるであろう。かくして、典型的な用語「上方」は、上方と下方の両方の配向を含んでもよい。装置は、別の方法で(例えば、90度回転され又は他の配向で)配向されてもよく、ここで使用される空間的な相対記載は、それに応じて解釈される。
【0017】
さらに、本開示では、或る要素が、別の要素「の上にあり」、別の要素「に連結され」又は別の要素「に結合される」ものとして言及されているとき、他の要素上に直接あり、他の要素に直接連結し、又は他の要素に直接接合してもよく、或いは、特に規定されていない限り、介在要素を設けてもよい。
【0018】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としており、例示的な実施形態を限定することを意図していない。ここで使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「1つの(the)」は、特に明記されない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、用語「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、記載された要素又は段階の存在を規定するが、1つ又はそれ以上の他の要素又は段階の存在又は付加を妨げるものではない。
【0019】
淡水化プロセスに関する実験室規模の1バッチの実施例が、図1におおまかに概略的に示されており、図示された種々の段階が図2〜図9により詳細に示されている。このプロセスは、大型の自動化された装置を使用して、大きな工業的規模で実施することもできる。さらに、このプロセスを連続した段階的プロセスで行い、塩分溶液を連続して入力し、実質的な純水を連続して出力することもできる。
【0020】
図1のプロセスは、段階Aから開始し、容器16内の方向性溶媒14に、塩分溶液12と熱Qが加えられる。方向性溶媒14と塩分溶液12は混合され11、段階Bに図示されるように、エマルション22を生成する。熱Qをさらに加えると、塩分溶液からの水が、段階Cを通して方向性溶媒に溶解13し、塩分溶液の濃縮された残部30は、容器16の底に沈殿して15段階Dになる。
【0021】
次いで、容器16を熱源から移動させ、段階Eにおいて方向性溶媒中の水の溶液を容器から第2試験管内に注ぎ17、冷やしたままにして、段階Fに図示されるように、溶液から水を沈降させる19。沈降した水は、段階Gにおいて試験管の底に沈殿し21、次いで、段階Hにおいて試験管の底から実質的な純水として回収される23。次いで、図示されるように、このプロセスがさらなる塩分溶液に対して繰り返されるように、方向性溶媒を再使用25することができる。
【0022】
より詳細な例でこのプロセスの段階を最初から再考し、図2(図1の段階A)から始めると、方向性溶媒14が満たされた容器(例えば、ビーカー)16に、室温又は室温付近の温度(例えば、25〜35℃)で塩分溶液12を加える。塩分溶液12は、天然に存在する、例えば、海から抽出された塩水の形態とすることができる。方向性溶媒14は、例えば、脂肪酸を含むダイズ油、パーム油、ナタネ油、ココナッツ油、又はアマニ油のような食用油とすることができる。或いは、方向性溶媒は、1つ又はそれ以上の選択した脂肪酸で実質的に構成することができる。適当な脂肪酸には、例えば、炭素鎖長が10個の炭素原子のデカン酸のような、6個〜13個の炭素原子の炭素鎖を含むことができる。脂肪酸は、室温(例えば、約30℃及び/又はそれ未満)で固体であってもよい。デカン酸は、水に実質的に溶けない(例えば、40〜50ppm程度までしか水に溶解しない)とみなされ、デカン酸は、もともとミルク中にあるように、人体に比較的無害である。塩分溶液から水を分離するための方法では、脂肪酸の親水性の水酸化物基が、塩分溶液からの水に結合するかもしれない。
【0023】
次いで、容器16で塩分溶液12と方向性溶媒14を混合してエマルションを形成する。図3(図1の段階B)に図示されるように、実験室規模の環境では、混合は、マグネチックスターラー18を容器16に入れて、マグネチックスターリングプレート20上で実施することができる。スターリングプレート20は、マグネチックスターラー18を容器16内で磁気的に移動させて、溶媒14と塩分溶液12を勢いよく混合させ、2つの液体のエマルション22を生成する。エマルション22が目で見て不透明のように見えるまで(例えば、この実施形態では、約30秒間)、混合される。
【0024】
容器16中のエマルション22を、図4(図1の段階C)に図示されるように、(例えば、湯浴の形態の)熱源24に曝し、例えば約75℃、又は他の実施形態では約40℃程度の予熱温度まで予熱する。温度の上昇は、図示される温度計26の水銀の上昇によって表される。或いは、溶媒14及び/又は塩分溶液12を接触又は混合前に加熱してもよい。熱は、例えば、別のプロセスからの廃熱、又は地熱源、海洋、又は太陽からの純然たる太陽熱によって得ることができる。エマルション22は、予熱温度を維持するため熱源に曝した状態のまま(例えば、1日間)にし、エマルション22中の塩分溶液滴からの水を方向性溶媒に溶解させる。
【0025】
溶媒と溶存水との溶液28は、容器16の上部に上昇し、はっきりと目視できるようになり、塩分溶液の濃縮した残部30は、図5(図1の段階D)に図示されるように、容器16の底に分離する。
【0026】
次いで、容器16を熱源24から移動させ、溶媒と溶存水を含んでいる溶液28を、図6(図1の段階E)に図示されるように、容器16から(例えば、円錐管の形態の)第2の試験管32に注ぎ、図7(図1の段階F)に図示されるように、(例えば、周囲空気で)冷まして室温に戻す。溶液28が冷えるにつれて、溶液28は、不透明な状態に変わり、水の小滴が沈降してエマルション34を形成する。
【0027】
必要に応じて、沈降した水の分離及び溶媒からの水の分離を促進するために、沈降した水と溶媒のエマルション34を、管32内にスタンド33で保持した状態で、図8(図1の段階G)に図示されるように、誘電泳動に供することができる。図示されるように、試験管32の底部と頂部に配置された一対の電極35、36に導線38を介して電源40が接続されている。電源40は、電極35、36間に電位差を作り出し、非均一な電極形状(例えば、一端が平板、他端が針)は、溶媒から水滴を分離するように水滴に作用する不平等電界を作り出す。したがって、溶媒よりも密度が大きな実質的な純水42が、試験管32の底に集められ、試験管の底の孔から取り除かれ、図9(図1の段階H)に図示されるように、(この実施形態ではビーカーの形態の)貯水器44中に集められる。
【0028】
実質的な純水42は、例えば、1.5%未満、0.14%未満、又は0.05%未満の重量に基づく塩分含有量を有することができる。必要に応じて、より高レベルの水純度に到達するため、上述の水分離方法の後に、付加的な淡水化を用いることができる。例えば、淡水化の第2の段階は、逆浸透膜又はフラッシュ蒸発の形態とすることができる。
【0029】
大きなシステムでは、システムの効率を向上させるために、熱回収を使用してもよい。例えば、純水を沈降させるため冷却で回収された熱は、油中塩分−水エマルションを加熱するために使用されることができる。
【0030】
これらの装置及び方法の1つの用途は、石油又は天然ガスの生産に関するものであり、方向性溶媒を使用して、例えば特にタールサンドから石油を抽出するとき又はシェールから天然ガスを抽出するときに生成される「生産水」(即ち、石油及びガスと一緒に生産される水)又は「フラッキング水」(即ち、水圧破砕からの水)から、塩分及び方向性溶媒に不溶性の他の成分を分離することができる。フラッキング水は、一般的な海水の塩分濃度の3倍の塩分濃度を有することができ、例えば、ベンゼン及び重金属を含むことができる。そして一般には、生産水又はフラッキング水は、地上のプールでの処理及び/又は収納のため、オフサイトに輸送される。
【0031】
逆浸透膜と多段階フラッシュは両方とも、生産水又はフラッキング水の処理においてより低い性能を示し、生産水又はフラッキング水中の塩分が多くなると、エネルギー消費が増加し、膜汚損が増大する。その代わりに生産水を方向性溶媒と混合することによって、さらに濃縮された低容量の廃棄物を残し、抽出された水を油抽出プロセスでの再使用を可能にした状態で、水の大部分を、実質的に純粋な形態で比較的小さなエネルギー及び熱入力を使用して妥当なコストで抽出することができ、これにより廃棄物の収納の点での環境上のかなりの利益、より少ない水需要、より少ない環境汚染、及びより大きな効率を提示する。
【実施例】
【0032】
実施例1
材料、方法、及び測定:
第1の実験では、方向性溶媒としてダイズ油を使用した。ダイズ油の水飽和限界は、25℃で0.3容量%であり、この飽和限界は、60℃ではほぼ2倍になると予測される。ダイズ油は、安価であり、入手しやすい。
【0033】
海水をシミュレートするため、塩化ナトリウムの水溶液を準備した。この溶液の塩分含有量をホリバ塩分濃度計(Horiba Salt Meter)を使用して測定し、3.367%±0.115%であることが分かった。
【0034】
この塩分溶液の約6mlを約300mlのダイズ油に添加し、スターリングプレート上の容器中で勢いよく混合させて、油中に塩分溶液のエマルションを生成した。容器の中身が目で見て不透明に見えるまで、混合物を約30秒間攪拌した。
【0035】
次いで、このエマルションの容器を、75℃まで予熱した湯浴内に置いた。エマルションを24時間(このインキュベーション期間は、処理速度又は出力を最適にするため、容易に増減してもよい)湯浴内においたままにし、エマルション滴からの多少の水を油に溶解させる。水の油へのこの方向性分解は、残りの滴を塩分で高濃縮された状態にすると予想され、これらの滴は、重力によって容器の底に分離すると予想される。
【0036】
24時間のインキュベーションの後、エマルションの容器を湯浴から取り出す。予想通りに、相当な量の塩分溶液が容器の底に分離し、上方の油は、見た目に透明であるように見えた。不透明から透明へのこの変化は、エマルション滴が溶解し又は容器の底に分離したことを示す。
【0037】
分離した塩分溶液の上方の油を6個の異なる50mlの円錐管に注ぎ、空気中で室温で冷ましたままにした。予想通りに、数時間のクールダウンの後に、油は、再び不透明に変わったように見えたが、これは、水の小滴が沈降したことを表す。
【0038】
この沈降水の分離、及び油からのその分離のプロセスを促進するため、エマルションを誘電泳動に供した。誘電泳動プロセスでは、不平等電界を使用して、主流体(ここでは油)から粒子(ここでは水滴)を分離した。詳細には、混合物を約2kV/cmの電界に約5分間供した。油からの水の顕著な分離を観察した。この分離され、塩分除去されたようにみえる水を、円錐管の底の孔から取り除いた。約1.5mlの水を回収した。
【0039】
回収された水も、ホリバ塩分濃度計を使用して試験し、最終的な塩分含有量が、0.5833%±0.0681%であることが分かった。
【0040】
考察:
予想通りに、最初の塩分溶液の塩分含有量は、この実証プロセスを使用して著しく減少した。
【0041】
最終的な塩分濃度が最初の塩分濃度よりも著しく低かったが、それは、0.05%の飲料水水質基準ではない。回収された水の中の残りの塩分は、塩分を含有する非溶存水の全てが注ぐ前に分離されたわけではなく、最終的に純水と混合された可能性に帰するものである。乳化された高塩水の微小滴の分離を増大させて、回収された水の最終的な塩分濃度をさらに減少させるため、塩分含有量を、冷ます前に混合物を誘電泳動に供することによって減少させることができる。或いは、このような塩分含有量でさえも、このプロセスは、例えば、引き続く第2段階における膜による水分離技術の使用と組み合わせて、淡水化の第1(前処理)段階として使用されることができる。こういうわけで、この第1段階の淡水化プロセスは、第2段階のプロセスにおいて高純度の水を製造するのに要するエネルギーとコストを減少させる。
【0042】
改良のための別の領域は、回収されたのが少量の純水であることであった。回収された純水は、使用された油の容量の約0.5%にすぎなかった。この限定的な回収は、このプロセスのエネルギーを非効率にし、並びに、サイズを非効率にする可能性がある。この問題に取り組むため、多量の水を溶解することができるデカン酸のような、他の方向性溶媒を使用することができる。
【0043】
これらの領域が改良の目標とされるにもかかわらず、この実験の結果は、非常に有望であるとみなされた。この方法は、意図した修正を伴って、エネルギーと寸法の効率を依然として維持しつつ、純水を産出することができると思われた。
【0044】
実施例2
より効率的なプロセスを発見しようとして、第2の実験を行ったが、この実験では、溶媒としてデカン酸を使用して、上述の実験を繰り返した。デカン酸は、33℃で約3.4%の水を(即ち、溶液が約3.4%の溶解水を含むように)、62℃で約5.1%の水を溶解する。純粋なデカン酸は、30℃未満で固体である。
【0045】
塩分溶液を加える前に、デカン酸を最初に僅かに(約30℃まで)加熱して溶融させ、図10に図示されるように、エマルション22の形成時に(上昇した温度を示す温度計26によって図示されるように)スターリングプレート20を加熱して混合物を加熱した。攪拌した後、エマルションを、加熱した/スターリングプレート20上で停止させて、図11に図示されるように、溶媒と溶存水の溶液28を塩分溶液30の高濃縮残部から分離させる。
【0046】
しかる後、デカン酸と溶解した水溶液28を含有する相を、図12に示されるように、水浴48内に置かれた円錐管32に移し、そこで内容物を冷まし、実質的な純水の最終的な分離の前に数時間その状態にした。次に、図13に図示されるように、誘電泳動の際に抵抗発熱コイル46を介して熱を加え、デカン酸を凝固しないように30℃超に維持する。最後に、デカン酸よりも密度が大きな実質的な純水42は、試験管32の底に集められ、試験管32の底の孔から取り出され、図9に示されるように、貯水器44内に集められる。この第2実験には、エマルションが40、45、50、55、60、65、70、75及び80℃の温度まで加熱される実験が含まれた。最初の塩分含有量を3.5重量%で開始すると、脱塩された水は、頂部の動作温度に応じて、0.06%〜0.11%の塩分を含有し、収率は、エマルションから脱塩された水の0.4重量%〜2重量%であった(収率は、回収された水の重量を使用された溶媒の単位重量で除したものである)。かくして、この溶媒は、(第1実験において使用されたようなダイズ油よりも)かなり効率的であるのみならず、塩分の除去も、デカン酸に対してより一層効果的である。回収された水の塩分濃度は、農業用及び飲料用の水質基準の範囲内にある。図14は、結果を要約したものであり、異なる実験からの収率(丸)49と回収水の塩分濃度(三角)50がプロットされている。純水がデカン酸に溶解されたときの実験収率(四角)52もプロットされている。破線54は、「The Effect of Water on Solidification Points of Fatty Acids」(C.Hoerrら著、Journal of American Oil Chemists’Society、第19巻、126〜128頁、1942年)による溶解度のデータから計算した収率を表す。最後に、EPAの塩分限界が、図の底部において一点鎖線56として図示されており、WHOの塩分濃度がそのすぐ上に第2の一点鎖線58としてプロットされている。
【0047】
さらに、溶媒としてデカン酸を使用する別の利点は、デカン酸が30℃未満で固体であることであり、かくして、溶媒が回収された水の背後に不純物として残っている場合には、混合物を30℃未満で冷やし、固形の不純物から水を分離することによって、容易に取り除いてもよい。
【0048】
エネルギー消費を、方向性溶媒としてデカン酸を使用する工業的淡水化プロセスについて計算し、図15にまとめて示した。図15では、40、45、50、55、60、65、70、75及び80℃の予熱温度における実験結果からのエネルギー消費(丸)60が、逆浸透膜のエネルギー消費(白三角)62及び多段階フラッシュのエネルギー消費(菱形)64についての文献値と比較されている。エネルギー消費のこれらのプロットは、海水から塩分を除去するのに使用されるのに等価な電力の最大量を表している。電気が高温で発電プラントから得られるとすると、逆浸透膜のエネルギー消費(黒三角)66の実際の温度源も示されている。連続的な工業プロセスの数値に向けて実験結果を推定するため、80%の熱交換効率を仮定した。提案したプロセスについての仕事変換へのエネルギーは、熱機関を使用して得られる理論的最大値であるカルノー(Carnot)効率で行われた。実際には、熱機関は、ここで使用された低動作温度では効果的ではなく、実際の電気的な仕事の等価物は、計算されたものよりもさらに低くなるであろう。破線68は、再び「The Effect of Water on Solidification Points of Fatty Acids」(C.C.Hoerrら著、Journal of American Oil Chemists’Society、第19巻、126〜128頁、1942年)による溶解度のデータから計算したエネルギー消費に基づいている。
【0049】
本発明の実施形態の説明において、明瞭にするため、特定の述語が使用される。説明の目的のため、特定の用語は、同様な方法で動作して同様な結果を得る技術的及び機能的な等価物を少なくとも含むことを意図している。さらに、本発明の特定の実施形態が複数のシステムの要素又は方法の段階を含む幾つかの場合には、これらの要素又は段階は、単一の要素又は段階と置換してもよいし、同様に、単一の要素又は段階は、同じ目的に供する複数の要素又は段階と置換してもよい。さらに、種々の性質についてのパラメータが本発明の実施形態に対してここに規定されない限り、これらのパラメータは、特に明記されていない限り、1/100、1/50、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2、3/4等を乗じて(又は、2、5、10等の係数を乗じて)、又はそれらを丸めた近似値を乗じて調整されることができる。加えて、本発明がその特定の実施形態に関連して図示され説明されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなしに、形状及び細部において種々の置換及び代替を施してもよいことを理解するであろう。さらに、他の態様、機能及び利点も、本発明の範囲内にあり、本発明の全ての実施形態は、上述の利点の全てを達成し又は上述の特性の全てを所有することは必ずしも必要とはしない。さらに、一実施形態に関連してここで議論されている段階、要素、及び特徴は、他の実施形態に関連して同様に使用することができる。本文書の全体を通して引用された参考テキスト、雑誌、特許、特許出願等を含む参考文献の内容は、その全体が参考資料としてここに組み込まれる。これらの参考資料からの適当な構成要素、段階、及び特性を、必要に応じて、本発明の実施形態に含めてもよいし含めなくともよい。さらに、背景技術の項において明らかにされている構成要素及び段階は、本開示と一体化しており、本発明の範囲内における本開示のどこかに記載された構成要素及び段階に関連して使用され又はこれらと置換されることができる。方法の請求項において、段階が特定の順序で列挙されている(参照を容易にするため、連続した前置き文字を付加し又は付加しない)場合には、用語及び語句表現によって特に指定されたり暗示されたりしない限りは、これらの段階は、列挙された順序に時間的に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【背景技術】
【0001】
今世紀において、真水の不足は、人類の全地球的な関心事として、エネルギーの不足を凌ぐものと予想されており、これらの2つの難題は、容赦なく関連している。真水は、人間及び他の生物にとって最も基本的な必需品の1つである。農業並びに工業プロセスからの真水の大きな需要に加えて、人間一人一人は、最低で1日に約2リットルを消費する必要がある。一方では、真水を輸送し又は淡水化により真水を製造するための技術は、ますます不足する入手可能なエネルギー供給の需要が高い傾向にある。
【0002】
水の供給が不十分であることによってもたらされる出来事は、特に深刻である。真水が不足すると、飢饉、疾病、死、やむを得ない集団移住、(ダルフールからアメリカ南西部までの)地域間の紛争/戦争、及び生態系の崩壊に至るかもしれない。真水に対する要求が危険な状態にあり、不足による重大な結果にもかかわらず、真水の供給は、特に制約されている。地球上の水の97.5%は、塩分を含んでおり、残りのうち約70%は、(大部分は氷帽と氷河内に)氷として閉じ込められており、地球上の全ての水のわずか0.75%が利用できる真水として残されているにすぎない。
【0003】
さらに、利用できる真水のこの0.75%は、一様に分布してはいない。例えば、インドや中国のような、人口の多い発展途上国では、供給が不十分な地域が多い。そのうえ、真水の供給は、季節によって一定ではないことが多い。一般に、水は、地域の流域に制限され、大量に消費され、その輸送に費用がかかり、エネルギーを大量に消費する。
【0004】
一方では、真水に対する需要は、地球全体で逼迫している。貯水池は枯渇し、帯水層は減少し、河川は干上がり、氷河と氷帽は収縮している。人口の上昇により需要が増大し、農業及び拡大する工業化における変化によっても需要が増大する。気候変動は、多くの地域においてより一層の脅威をもたらしている。したがって、水不足に直面している人の数は増加している。
【0005】
海水から(又は、それには及ばないものの、弱塩水から)特に遠隔地のために真水を製造するには、一般に大量のエネルギーが必要とされる。逆浸透膜(RO)は現在のところ、主要な淡水化技術であるが、逆浸透膜はエネルギーの消費が多く、半透膜を通して水を押しやるのに大きな圧力を要するため依然として非効率であり、半透膜が汚損する傾向がある。小規模のROシステム(例えば、客船)では、全くもってさらに効率が悪いが、大規模なプラントでは、所要のエネルギー/容量は、理論的最小値の約1kWh/m3と比較して、30%の回収で4kWh/m3程度とすることができる。別の普及している方法は、多段階フラッシュ(MSF)蒸留であるが、これもエネルギーと資金を要するプロセスである。
【0006】
電気透析(ED)及び容量性淡水化(CD)のような電気化学的な方法は、純水を抽出するのではなく、飲料水(<10mM)を得るのにちょうど十分な塩分を抽出する。現在の大規模な電気化学的な淡水化システムは、海水の淡水化においてROプラントよりも効率が悪い(例えば、7kWh/m3がEDにおける技術の現状である)が、弱塩水に対してはより効率的になる(例えば、CDは、0.6kWh/m3を達成することができる)。一般に、水から塩分を除去するための既存の技術(そのうちの幾つかは何世紀もの間、存在していた)は、高コストであったり複雑であったり又はその両方であったりする傾向がある。
【発明の概要】
【0007】
方向性溶媒抽出を使用して淡水化するための方法及び装置が、ここに記載されている。この装置及び方法の種々の実施形態は、以下に記載する要素、特徴、及び工程のうち幾つか又は全てを含んでもよい。
【0008】
食用油(例えば、ダイズ油)及び幾つかの脂肪酸のような一定の溶媒は、塩化ナトリウムのような他の水溶性塩又は不純物を溶解させず、かつ、水に不溶性又は殆ど不溶性としつつ(即ち、水は、大部分の方向性溶媒の相に溶解するが、方向性溶媒は、痕跡量よりも多い分だけ大部分の水の相に溶解しない)、水を方向性をもって溶解させることができる特有の特性を所有する。この方向性の溶解現象が、ここでは塩分溶液の温度制御された淡水化に関する新しい方法において利用されている。
【0009】
この方法の一例では、塩分溶液(例えば、海水)は、方向性溶媒と接触状態にされる。方向性溶媒には、デカン酸CH3(CH2)8COOHのような、カルボン酸(即ち、カルボキシル基R−COOHを含む化合物)を含むことができる。塩分溶液と溶媒を、接触の前又は後に加熱して、水の溶媒への方向性分解を増大させ、これにより別個の相、即ち、溶媒と塩分溶液からの水とを含む第1相と、塩分溶液の高濃縮残部を含む第2相とを生成する。第1相は、第2相から分離し、抽出される。或いは、第2相は、第1相から抽出されることができる。抽出の後、第1相を冷まして、溶媒から水を沈降させる。次いで、沈降した水を溶媒から取り除く。抽出された水は、実質的な純水(例えば、工業的又は農業的な使用に適し、又は純度99.95%のような飲料水の水質基準の純度にさえ適合する)の形態とすることができる。
【0010】
本開示の方法は、地熱源から、海洋から、太陽から、又は他のプロセスから廃熱として生ずることができる低品質の熱を使用することができる。これらの淡水化方法は、使用するのも容易であり、現在の淡水化方法と比較して顕著なエネルギー及び経済的な節約を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実験室規模における方向性溶媒抽出淡水化プロセスの概略図である。
【図2】図2は、塩水が方向性溶媒と混合されるプロセスにおける最初の段階の図である。
【図3】図3は、スターリングプレートを使用して塩水と溶媒の混合物を攪拌しエマルションを生成する状態を示した図である。
【図4】図4は、エマルションを湯浴内に浸漬してエマルションの温度を上昇させる状態を示した図である。
【図5】図5は、加熱したエマルションの溶媒及び溶存水の上層と高濃縮塩水の底層への分離を示した図である。
【図6】図6は、溶媒及び溶解した水の上層を管内に注ぐ状態を示した図である。
【図7】図7は、注がれた溶媒及び溶存水を冷まして、溶媒から水の小滴を沈降させる状態を示した図である。
【図8】図8は、誘電泳動を使用して溶媒から水滴を分離し、分離した水を管の底に集める状態を示した図である。
【図9】図9は、管の底から実質的な純水を回収する状態を示した図である。
【図10】図10は、スターリングプレートを使用して塩水とデカン酸の溶媒の混合物を攪拌し、加熱されたエマルションを生成する状態を示した図である。
【図11】図11は、加熱されたエマルションを分離して、デカン酸及び溶存水の上層と高濃縮塩水の底層にする状態を示した図である。
【図12】図12は、デカン酸及び溶存水の上層を温水浴中で加熱した管に注ぐ状態を示した図である。
【図13】図13は、加熱した管内で誘電泳動を使用して溶媒から水滴を分離し、分離した水を管の底に集める状態を示した図である。
【図14】図14は、デカン酸溶媒からの真水の収率を温度の関数としてプロットした図である。
【図15】図15は、溶媒としてデカン酸を使用する淡水化プロセスについてのエネルギー消費を温度の関数としてプロットした図である。
【0012】
添付図面において、同様な参照文字は、異なる図面全体を通して同じ又は類似の部分を意味する。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、後述の特定の原理を示す際に強調されることもある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の種々の態様に関する上述及び他の特徴と利点は、本発明のより広範な範囲内における種々の概念及び特有の実施形態に関する以下のより特別な記載から明らかであろう。上記において紹介され、より詳細に後述される要旨に関する種々の態様は、その要旨が具体化のいかなる特別な方法にも限定されるものではなく、多数の方法のいずれかで具体化されてもよい。特定の具体化及び用途の例は、主として例示的な目的のために提供される。
【0014】
特に規定されていなければ、ここで使用される(技術的及び科学的用語を含む)用語は、本発明が属する分野における当業者によって通常使用されるものと同じ意味を有する。通常使用される辞書で規定されるような用語は、関連する技術の文脈中における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明記されない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。例えば、特別な組成が参照されている場合に、現実的で不完全な実体が加えられてもよく、例えば、(例えば、0.1重量又は容量%未満の)少なくとも痕跡不純物の潜在的な存在が、本記載の範囲内にあるものとして理解されることができる。
【0015】
第1、第2、第3等の用語が種々の要素を説明するのに本明細書で使用されているが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、或る用語を他の用語と区別するのに使用されているにすぎない。かくして、後述の第1要素は、典型的な実施形態の教示から逸脱することなしに、第2要素を名づけることができる。
【0016】
「上方」、「上部」、「下方」、「下部」、「下側」等のような空間的な相対用語は、ここでは、図面に示されるような、一要素と別の要素との関係を記載するのに記載し易くするため、使用してもよい。空間的な相対用語は、図示されている配向に加えて、使用中又は動作中の装置の異なる配向を含むことを意図していることが理解されるであろう。例えば、図の装置をひっくり返すと、他の要素又は特徴の「下方」又は「下部」と記載されている要素は、他の要素又は特徴の「上方」となるであろう。かくして、典型的な用語「上方」は、上方と下方の両方の配向を含んでもよい。装置は、別の方法で(例えば、90度回転され又は他の配向で)配向されてもよく、ここで使用される空間的な相対記載は、それに応じて解釈される。
【0017】
さらに、本開示では、或る要素が、別の要素「の上にあり」、別の要素「に連結され」又は別の要素「に結合される」ものとして言及されているとき、他の要素上に直接あり、他の要素に直接連結し、又は他の要素に直接接合してもよく、或いは、特に規定されていない限り、介在要素を設けてもよい。
【0018】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としており、例示的な実施形態を限定することを意図していない。ここで使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「1つの(the)」は、特に明記されない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、用語「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」は、記載された要素又は段階の存在を規定するが、1つ又はそれ以上の他の要素又は段階の存在又は付加を妨げるものではない。
【0019】
淡水化プロセスに関する実験室規模の1バッチの実施例が、図1におおまかに概略的に示されており、図示された種々の段階が図2〜図9により詳細に示されている。このプロセスは、大型の自動化された装置を使用して、大きな工業的規模で実施することもできる。さらに、このプロセスを連続した段階的プロセスで行い、塩分溶液を連続して入力し、実質的な純水を連続して出力することもできる。
【0020】
図1のプロセスは、段階Aから開始し、容器16内の方向性溶媒14に、塩分溶液12と熱Qが加えられる。方向性溶媒14と塩分溶液12は混合され11、段階Bに図示されるように、エマルション22を生成する。熱Qをさらに加えると、塩分溶液からの水が、段階Cを通して方向性溶媒に溶解13し、塩分溶液の濃縮された残部30は、容器16の底に沈殿して15段階Dになる。
【0021】
次いで、容器16を熱源から移動させ、段階Eにおいて方向性溶媒中の水の溶液を容器から第2試験管内に注ぎ17、冷やしたままにして、段階Fに図示されるように、溶液から水を沈降させる19。沈降した水は、段階Gにおいて試験管の底に沈殿し21、次いで、段階Hにおいて試験管の底から実質的な純水として回収される23。次いで、図示されるように、このプロセスがさらなる塩分溶液に対して繰り返されるように、方向性溶媒を再使用25することができる。
【0022】
より詳細な例でこのプロセスの段階を最初から再考し、図2(図1の段階A)から始めると、方向性溶媒14が満たされた容器(例えば、ビーカー)16に、室温又は室温付近の温度(例えば、25〜35℃)で塩分溶液12を加える。塩分溶液12は、天然に存在する、例えば、海から抽出された塩水の形態とすることができる。方向性溶媒14は、例えば、脂肪酸を含むダイズ油、パーム油、ナタネ油、ココナッツ油、又はアマニ油のような食用油とすることができる。或いは、方向性溶媒は、1つ又はそれ以上の選択した脂肪酸で実質的に構成することができる。適当な脂肪酸には、例えば、炭素鎖長が10個の炭素原子のデカン酸のような、6個〜13個の炭素原子の炭素鎖を含むことができる。脂肪酸は、室温(例えば、約30℃及び/又はそれ未満)で固体であってもよい。デカン酸は、水に実質的に溶けない(例えば、40〜50ppm程度までしか水に溶解しない)とみなされ、デカン酸は、もともとミルク中にあるように、人体に比較的無害である。塩分溶液から水を分離するための方法では、脂肪酸の親水性の水酸化物基が、塩分溶液からの水に結合するかもしれない。
【0023】
次いで、容器16で塩分溶液12と方向性溶媒14を混合してエマルションを形成する。図3(図1の段階B)に図示されるように、実験室規模の環境では、混合は、マグネチックスターラー18を容器16に入れて、マグネチックスターリングプレート20上で実施することができる。スターリングプレート20は、マグネチックスターラー18を容器16内で磁気的に移動させて、溶媒14と塩分溶液12を勢いよく混合させ、2つの液体のエマルション22を生成する。エマルション22が目で見て不透明のように見えるまで(例えば、この実施形態では、約30秒間)、混合される。
【0024】
容器16中のエマルション22を、図4(図1の段階C)に図示されるように、(例えば、湯浴の形態の)熱源24に曝し、例えば約75℃、又は他の実施形態では約40℃程度の予熱温度まで予熱する。温度の上昇は、図示される温度計26の水銀の上昇によって表される。或いは、溶媒14及び/又は塩分溶液12を接触又は混合前に加熱してもよい。熱は、例えば、別のプロセスからの廃熱、又は地熱源、海洋、又は太陽からの純然たる太陽熱によって得ることができる。エマルション22は、予熱温度を維持するため熱源に曝した状態のまま(例えば、1日間)にし、エマルション22中の塩分溶液滴からの水を方向性溶媒に溶解させる。
【0025】
溶媒と溶存水との溶液28は、容器16の上部に上昇し、はっきりと目視できるようになり、塩分溶液の濃縮した残部30は、図5(図1の段階D)に図示されるように、容器16の底に分離する。
【0026】
次いで、容器16を熱源24から移動させ、溶媒と溶存水を含んでいる溶液28を、図6(図1の段階E)に図示されるように、容器16から(例えば、円錐管の形態の)第2の試験管32に注ぎ、図7(図1の段階F)に図示されるように、(例えば、周囲空気で)冷まして室温に戻す。溶液28が冷えるにつれて、溶液28は、不透明な状態に変わり、水の小滴が沈降してエマルション34を形成する。
【0027】
必要に応じて、沈降した水の分離及び溶媒からの水の分離を促進するために、沈降した水と溶媒のエマルション34を、管32内にスタンド33で保持した状態で、図8(図1の段階G)に図示されるように、誘電泳動に供することができる。図示されるように、試験管32の底部と頂部に配置された一対の電極35、36に導線38を介して電源40が接続されている。電源40は、電極35、36間に電位差を作り出し、非均一な電極形状(例えば、一端が平板、他端が針)は、溶媒から水滴を分離するように水滴に作用する不平等電界を作り出す。したがって、溶媒よりも密度が大きな実質的な純水42が、試験管32の底に集められ、試験管の底の孔から取り除かれ、図9(図1の段階H)に図示されるように、(この実施形態ではビーカーの形態の)貯水器44中に集められる。
【0028】
実質的な純水42は、例えば、1.5%未満、0.14%未満、又は0.05%未満の重量に基づく塩分含有量を有することができる。必要に応じて、より高レベルの水純度に到達するため、上述の水分離方法の後に、付加的な淡水化を用いることができる。例えば、淡水化の第2の段階は、逆浸透膜又はフラッシュ蒸発の形態とすることができる。
【0029】
大きなシステムでは、システムの効率を向上させるために、熱回収を使用してもよい。例えば、純水を沈降させるため冷却で回収された熱は、油中塩分−水エマルションを加熱するために使用されることができる。
【0030】
これらの装置及び方法の1つの用途は、石油又は天然ガスの生産に関するものであり、方向性溶媒を使用して、例えば特にタールサンドから石油を抽出するとき又はシェールから天然ガスを抽出するときに生成される「生産水」(即ち、石油及びガスと一緒に生産される水)又は「フラッキング水」(即ち、水圧破砕からの水)から、塩分及び方向性溶媒に不溶性の他の成分を分離することができる。フラッキング水は、一般的な海水の塩分濃度の3倍の塩分濃度を有することができ、例えば、ベンゼン及び重金属を含むことができる。そして一般には、生産水又はフラッキング水は、地上のプールでの処理及び/又は収納のため、オフサイトに輸送される。
【0031】
逆浸透膜と多段階フラッシュは両方とも、生産水又はフラッキング水の処理においてより低い性能を示し、生産水又はフラッキング水中の塩分が多くなると、エネルギー消費が増加し、膜汚損が増大する。その代わりに生産水を方向性溶媒と混合することによって、さらに濃縮された低容量の廃棄物を残し、抽出された水を油抽出プロセスでの再使用を可能にした状態で、水の大部分を、実質的に純粋な形態で比較的小さなエネルギー及び熱入力を使用して妥当なコストで抽出することができ、これにより廃棄物の収納の点での環境上のかなりの利益、より少ない水需要、より少ない環境汚染、及びより大きな効率を提示する。
【実施例】
【0032】
実施例1
材料、方法、及び測定:
第1の実験では、方向性溶媒としてダイズ油を使用した。ダイズ油の水飽和限界は、25℃で0.3容量%であり、この飽和限界は、60℃ではほぼ2倍になると予測される。ダイズ油は、安価であり、入手しやすい。
【0033】
海水をシミュレートするため、塩化ナトリウムの水溶液を準備した。この溶液の塩分含有量をホリバ塩分濃度計(Horiba Salt Meter)を使用して測定し、3.367%±0.115%であることが分かった。
【0034】
この塩分溶液の約6mlを約300mlのダイズ油に添加し、スターリングプレート上の容器中で勢いよく混合させて、油中に塩分溶液のエマルションを生成した。容器の中身が目で見て不透明に見えるまで、混合物を約30秒間攪拌した。
【0035】
次いで、このエマルションの容器を、75℃まで予熱した湯浴内に置いた。エマルションを24時間(このインキュベーション期間は、処理速度又は出力を最適にするため、容易に増減してもよい)湯浴内においたままにし、エマルション滴からの多少の水を油に溶解させる。水の油へのこの方向性分解は、残りの滴を塩分で高濃縮された状態にすると予想され、これらの滴は、重力によって容器の底に分離すると予想される。
【0036】
24時間のインキュベーションの後、エマルションの容器を湯浴から取り出す。予想通りに、相当な量の塩分溶液が容器の底に分離し、上方の油は、見た目に透明であるように見えた。不透明から透明へのこの変化は、エマルション滴が溶解し又は容器の底に分離したことを示す。
【0037】
分離した塩分溶液の上方の油を6個の異なる50mlの円錐管に注ぎ、空気中で室温で冷ましたままにした。予想通りに、数時間のクールダウンの後に、油は、再び不透明に変わったように見えたが、これは、水の小滴が沈降したことを表す。
【0038】
この沈降水の分離、及び油からのその分離のプロセスを促進するため、エマルションを誘電泳動に供した。誘電泳動プロセスでは、不平等電界を使用して、主流体(ここでは油)から粒子(ここでは水滴)を分離した。詳細には、混合物を約2kV/cmの電界に約5分間供した。油からの水の顕著な分離を観察した。この分離され、塩分除去されたようにみえる水を、円錐管の底の孔から取り除いた。約1.5mlの水を回収した。
【0039】
回収された水も、ホリバ塩分濃度計を使用して試験し、最終的な塩分含有量が、0.5833%±0.0681%であることが分かった。
【0040】
考察:
予想通りに、最初の塩分溶液の塩分含有量は、この実証プロセスを使用して著しく減少した。
【0041】
最終的な塩分濃度が最初の塩分濃度よりも著しく低かったが、それは、0.05%の飲料水水質基準ではない。回収された水の中の残りの塩分は、塩分を含有する非溶存水の全てが注ぐ前に分離されたわけではなく、最終的に純水と混合された可能性に帰するものである。乳化された高塩水の微小滴の分離を増大させて、回収された水の最終的な塩分濃度をさらに減少させるため、塩分含有量を、冷ます前に混合物を誘電泳動に供することによって減少させることができる。或いは、このような塩分含有量でさえも、このプロセスは、例えば、引き続く第2段階における膜による水分離技術の使用と組み合わせて、淡水化の第1(前処理)段階として使用されることができる。こういうわけで、この第1段階の淡水化プロセスは、第2段階のプロセスにおいて高純度の水を製造するのに要するエネルギーとコストを減少させる。
【0042】
改良のための別の領域は、回収されたのが少量の純水であることであった。回収された純水は、使用された油の容量の約0.5%にすぎなかった。この限定的な回収は、このプロセスのエネルギーを非効率にし、並びに、サイズを非効率にする可能性がある。この問題に取り組むため、多量の水を溶解することができるデカン酸のような、他の方向性溶媒を使用することができる。
【0043】
これらの領域が改良の目標とされるにもかかわらず、この実験の結果は、非常に有望であるとみなされた。この方法は、意図した修正を伴って、エネルギーと寸法の効率を依然として維持しつつ、純水を産出することができると思われた。
【0044】
実施例2
より効率的なプロセスを発見しようとして、第2の実験を行ったが、この実験では、溶媒としてデカン酸を使用して、上述の実験を繰り返した。デカン酸は、33℃で約3.4%の水を(即ち、溶液が約3.4%の溶解水を含むように)、62℃で約5.1%の水を溶解する。純粋なデカン酸は、30℃未満で固体である。
【0045】
塩分溶液を加える前に、デカン酸を最初に僅かに(約30℃まで)加熱して溶融させ、図10に図示されるように、エマルション22の形成時に(上昇した温度を示す温度計26によって図示されるように)スターリングプレート20を加熱して混合物を加熱した。攪拌した後、エマルションを、加熱した/スターリングプレート20上で停止させて、図11に図示されるように、溶媒と溶存水の溶液28を塩分溶液30の高濃縮残部から分離させる。
【0046】
しかる後、デカン酸と溶解した水溶液28を含有する相を、図12に示されるように、水浴48内に置かれた円錐管32に移し、そこで内容物を冷まし、実質的な純水の最終的な分離の前に数時間その状態にした。次に、図13に図示されるように、誘電泳動の際に抵抗発熱コイル46を介して熱を加え、デカン酸を凝固しないように30℃超に維持する。最後に、デカン酸よりも密度が大きな実質的な純水42は、試験管32の底に集められ、試験管32の底の孔から取り出され、図9に示されるように、貯水器44内に集められる。この第2実験には、エマルションが40、45、50、55、60、65、70、75及び80℃の温度まで加熱される実験が含まれた。最初の塩分含有量を3.5重量%で開始すると、脱塩された水は、頂部の動作温度に応じて、0.06%〜0.11%の塩分を含有し、収率は、エマルションから脱塩された水の0.4重量%〜2重量%であった(収率は、回収された水の重量を使用された溶媒の単位重量で除したものである)。かくして、この溶媒は、(第1実験において使用されたようなダイズ油よりも)かなり効率的であるのみならず、塩分の除去も、デカン酸に対してより一層効果的である。回収された水の塩分濃度は、農業用及び飲料用の水質基準の範囲内にある。図14は、結果を要約したものであり、異なる実験からの収率(丸)49と回収水の塩分濃度(三角)50がプロットされている。純水がデカン酸に溶解されたときの実験収率(四角)52もプロットされている。破線54は、「The Effect of Water on Solidification Points of Fatty Acids」(C.Hoerrら著、Journal of American Oil Chemists’Society、第19巻、126〜128頁、1942年)による溶解度のデータから計算した収率を表す。最後に、EPAの塩分限界が、図の底部において一点鎖線56として図示されており、WHOの塩分濃度がそのすぐ上に第2の一点鎖線58としてプロットされている。
【0047】
さらに、溶媒としてデカン酸を使用する別の利点は、デカン酸が30℃未満で固体であることであり、かくして、溶媒が回収された水の背後に不純物として残っている場合には、混合物を30℃未満で冷やし、固形の不純物から水を分離することによって、容易に取り除いてもよい。
【0048】
エネルギー消費を、方向性溶媒としてデカン酸を使用する工業的淡水化プロセスについて計算し、図15にまとめて示した。図15では、40、45、50、55、60、65、70、75及び80℃の予熱温度における実験結果からのエネルギー消費(丸)60が、逆浸透膜のエネルギー消費(白三角)62及び多段階フラッシュのエネルギー消費(菱形)64についての文献値と比較されている。エネルギー消費のこれらのプロットは、海水から塩分を除去するのに使用されるのに等価な電力の最大量を表している。電気が高温で発電プラントから得られるとすると、逆浸透膜のエネルギー消費(黒三角)66の実際の温度源も示されている。連続的な工業プロセスの数値に向けて実験結果を推定するため、80%の熱交換効率を仮定した。提案したプロセスについての仕事変換へのエネルギーは、熱機関を使用して得られる理論的最大値であるカルノー(Carnot)効率で行われた。実際には、熱機関は、ここで使用された低動作温度では効果的ではなく、実際の電気的な仕事の等価物は、計算されたものよりもさらに低くなるであろう。破線68は、再び「The Effect of Water on Solidification Points of Fatty Acids」(C.C.Hoerrら著、Journal of American Oil Chemists’Society、第19巻、126〜128頁、1942年)による溶解度のデータから計算したエネルギー消費に基づいている。
【0049】
本発明の実施形態の説明において、明瞭にするため、特定の述語が使用される。説明の目的のため、特定の用語は、同様な方法で動作して同様な結果を得る技術的及び機能的な等価物を少なくとも含むことを意図している。さらに、本発明の特定の実施形態が複数のシステムの要素又は方法の段階を含む幾つかの場合には、これらの要素又は段階は、単一の要素又は段階と置換してもよいし、同様に、単一の要素又は段階は、同じ目的に供する複数の要素又は段階と置換してもよい。さらに、種々の性質についてのパラメータが本発明の実施形態に対してここに規定されない限り、これらのパラメータは、特に明記されていない限り、1/100、1/50、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2、3/4等を乗じて(又は、2、5、10等の係数を乗じて)、又はそれらを丸めた近似値を乗じて調整されることができる。加えて、本発明がその特定の実施形態に関連して図示され説明されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなしに、形状及び細部において種々の置換及び代替を施してもよいことを理解するであろう。さらに、他の態様、機能及び利点も、本発明の範囲内にあり、本発明の全ての実施形態は、上述の利点の全てを達成し又は上述の特性の全てを所有することは必ずしも必要とはしない。さらに、一実施形態に関連してここで議論されている段階、要素、及び特徴は、他の実施形態に関連して同様に使用することができる。本文書の全体を通して引用された参考テキスト、雑誌、特許、特許出願等を含む参考文献の内容は、その全体が参考資料としてここに組み込まれる。これらの参考資料からの適当な構成要素、段階、及び特性を、必要に応じて、本発明の実施形態に含めてもよいし含めなくともよい。さらに、背景技術の項において明らかにされている構成要素及び段階は、本開示と一体化しており、本発明の範囲内における本開示のどこかに記載された構成要素及び段階に関連して使用され又はこれらと置換されることができる。方法の請求項において、段階が特定の順序で列挙されている(参照を容易にするため、連続した前置き文字を付加し又は付加しない)場合には、用語及び語句表現によって特に指定されたり暗示されたりしない限りは、これらの段階は、列挙された順序に時間的に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向性溶媒を使用して塩分溶液から水を分離するための方法において、
前記方向性溶媒、及び水と少なくとも1つの塩とを含む前記塩分溶液を提供するステップと、
前記方向性溶媒中に前記塩分溶液のエマルションを作るステップと、
前記塩分溶液との接触の前又は後に前記方向性溶媒を加熱して、前記方向性溶媒及び前記方向性溶媒中に溶解された前記塩分溶液からの水を含む第1相と、前記塩分溶液の高濃縮残部を含む第2相とを生成するステップと、
前記第1相を前記第2相から分離させるステップと、
前記方向性溶媒及び前記溶存水を含む前記第1相を前記塩分溶液の前記高濃縮残部から抽出し、又は前記塩分溶液の前記高濃縮残部を前記第1相から抽出するステップと、
抽出後に前記第1相を冷まして、前記方向性溶媒から水を沈降させるステップと、
前記沈降水を前記方向性溶媒から取り除くステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、水に溶解するが水溶性塩及び不純物に溶解しない化合物を含み、この化合物が、完全に又は実質的に水に不溶性であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、親水性の水酸化物基を有する化合物を含み、前記親水性の水酸化物基が、塩分溶液からの水に結合することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記親水性の水酸化物基が、カルボキシル基の一部であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記方向性溶媒が、前記カルボキシル基を包含するカルボン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記カルボン酸が、長さが6個〜13個の炭素鎖を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記カルボン酸がデカン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、30℃以下の温度で固体であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び塩分溶液を加熱する前に、前記方向性溶媒と前記塩分溶液を混合して前記エマルションを生成することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒を加熱した後に、前記方向性溶媒と前記塩分溶液を混合して前記エマルションを生成することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、誘電泳動を使用して、前記方向性溶媒から前記沈降水を分離することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、75℃以下の中温度熱源からのエネルギーを使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、40℃以下の低温度熱源からのエネルギーを使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び前記塩分溶液が、別のプロセスからの熱を使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び前記塩分溶液が、地熱又は太陽熱を使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、1.5%未満であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、0.14%未満であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、0.05%未満であることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記方向性溶媒を使用する前記塩分溶液からの水の分離が、多段階淡水化プロセスにおける第1段階である請求項1に記載の方法において、
高レベルの純度に到達するように、抽出後の前記沈降水を淡水化の第2段階に供することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、淡水化の前記第2段階が、逆浸透膜又はフラッシュ蒸発を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒を再使用して、塩分溶液から水を分離する前記方法を繰り返すことをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
方向性溶媒を使用して塩分溶液から水を分離するための方法において、
前記方向性溶媒、及び水と少なくとも1つの塩とを含む前記塩分溶液を提供するステップと、
前記方向性溶媒中に前記塩分溶液のエマルションを作るステップと、
前記塩分溶液との接触の前又は後に前記方向性溶媒を加熱して、前記方向性溶媒及び前記方向性溶媒中に溶解された前記塩分溶液からの水を含む第1相と、前記塩分溶液の高濃縮残部を含む第2相とを生成するステップと、
前記第1相を前記第2相から分離させるステップと、
前記方向性溶媒及び前記溶存水を含む前記第1相を前記塩分溶液の前記高濃縮残部から抽出し、又は前記塩分溶液の前記高濃縮残部を前記第1相から抽出するステップと、
抽出後に前記第1相を冷まして、前記方向性溶媒から水を沈降させるステップと、
前記沈降水を前記方向性溶媒から取り除くステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、水に溶解するが水溶性塩及び不純物に溶解しない化合物を含み、この化合物が、完全に又は実質的に水に不溶性であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、親水性の水酸化物基を有する化合物を含み、前記親水性の水酸化物基が、塩分溶液からの水に結合することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記親水性の水酸化物基が、カルボキシル基の一部であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記方向性溶媒が、前記カルボキシル基を包含するカルボン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記カルボン酸が、長さが6個〜13個の炭素鎖を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記カルボン酸がデカン酸を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、30℃以下の温度で固体であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び塩分溶液を加熱する前に、前記方向性溶媒と前記塩分溶液を混合して前記エマルションを生成することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒を加熱した後に、前記方向性溶媒と前記塩分溶液を混合して前記エマルションを生成することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、誘電泳動を使用して、前記方向性溶媒から前記沈降水を分離することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、75℃以下の中温度熱源からのエネルギーを使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒が、40℃以下の低温度熱源からのエネルギーを使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び前記塩分溶液が、別のプロセスからの熱を使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒及び前記塩分溶液が、地熱又は太陽熱を使用して加熱されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、1.5%未満であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、0.14%未満であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記抽出された沈降水の重量に基づく塩分含有量が、0.05%未満であることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記方向性溶媒を使用する前記塩分溶液からの水の分離が、多段階淡水化プロセスにおける第1段階である請求項1に記載の方法において、
高レベルの純度に到達するように、抽出後の前記沈降水を淡水化の第2段階に供することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、淡水化の前記第2段階が、逆浸透膜又はフラッシュ蒸発を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記方向性溶媒を再使用して、塩分溶液から水を分離する前記方法を繰り返すことをさらに含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−512092(P2013−512092A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541127(P2012−541127)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057448
【国際公開番号】WO2011/066193
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057448
【国際公開番号】WO2011/066193
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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