説明

方向検出装置および移動体位置特定装置

【課題】屋外の外乱光による影響を避けて屋外に設けられた投光機器の方向を正確に検出できるようにした方向検出装置を提供することにあり、光通信方式を適用して移動体の位置を正確に特定できるようにした移動体位置特定装置を提供する
【解決手段】複数のフォトダイオードが、互いに異なる指向性特性を有するように配設されており、当該フォトダイオードが受光した受光信号に含まれるデータ信号成分の大小に応じて路上通信機2の方向(路上通信機2からの受光方向)を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光された光信号の方向を検出する方向検出装置、および移動体の位置を特定する移動体位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光を応用した技術が確立されており様々な用途に使用されている。その中で、発光源の方向を検出するセンサが開発されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示されている技術によれば、光の入射方向を検知する方向検知用センサを単一の光検出素子によって形成し、この方向検知用センサを2つ組み合わせて光の入射方向を検知できるようにしている。
【0003】
他方、車車間の走行中の事故防止を図るため、路車間通信や車車間通信を行い自動的にブレーキ制御を行う安全装置が検討されている。このような安全装置を開発するには正確に位置を特定する技術が必要不可欠である。例えば車両用のナビゲーション装置は、GPS衛星から送信される情報と、車速情報と、角速度情報とを取得し、これらの情報に基づいてマップマッチングすることで車両位置を特定している。しかし、この方法では誤差が数十mと大きく、しかも電波条件や道路形状の条件により誤差が拡大することがあり、前記した安全装置に適用するには不十分である。
【0004】
位置を正確に特定するため、例えばVICS光ビーコンによる光通信方式を利用する方法が検討されている。この方法は、光通信エリアを検出することで移動体の位置を特定する方法である。しかし一般に、光通信エリアは広域に渡るため正確な位置を特定することができない。尚、例えば、VICS光ビーコンを利用した技術としては、光ビーコン通信エリア内で効率的な送受信特性を達成できるようにした構成が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平5−196496号公報
【特許文献2】特開平10−70512号公報
【特許文献3】特開2003−34188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、屋内で使用する場合には問題を生じないものの屋外で使用する場合には太陽光などの外乱光があると正確な方向を検出できなくなってしまう。また、上記特許文献2や3に開示されている技術を適用したとしても、移動体が光ビーコン通信エリア内に位置しているか否かは検出できるものの、何れの方向から光が投光されているかを検出できない。この場合、光ビーコン通信エリア内の何れの場所に位置しているかを把握することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、屋外の外乱光による影響を避けて屋外に設けられた投光機器の方向を正確に検出できるようにした方向検出装置を提供することにあり、光通信方式を適用して移動体の位置を正確に特定できるようにした移動体位置特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、複数の受光手段の受光信号のうちのデータ信号成分の大小に応じて投光機器の方向を検出するため、外乱光の悪影響を受けることなく投光機器の方向を検出できる。
【0008】
請求項5に係る発明によれば、検出手段が検出した複数の受光手段の受光信号のうちのデータ信号成分の大小と、走行距離特定手段が特定した移動体の走行距離とに応じて移動中の移動体位置を特定するため、外乱光の悪影響を受けることなく移動体の位置を正確に特定できる。
【0009】
請求項2または6に係る発明のように、受光手段を2つの受光器から構成することが望ましい。
請求項3または8に係る発明によれば、複数の受光器による受光信号の和信号または差信号を算出することに基づいて前記受光信号に含まれるデータ信号成分を抽出するため、外乱光の影響を取り除いてデータ信号成分を抽出できる。
【0010】
請求項4に係る発明によれば、検出手段が受光手段の受光信号から抽出したデータ信号成分によって同期検波するため、投光機器の方向を正確に検出できる。
請求項9に係る発明によれば、検出手段は、受光信号からデータ信号成分を抽出し当該抽出したデータ信号成分によって同期検波することによりデータ信号成分の大小を検出するため、データ信号成分の大小をより正確に検出できる。
【0011】
請求項7に係る発明によれば、移動体が通過領域を通過するときに、路側通信機および受光手段間の光通信時の進行方向に対する光通信角度が浅いほど第1受光器の受光信号が第2受光器の受光信号に比較して大きくなり、進行方向に対する光通信角度が深いほど第2受光器の受光信号が第1受光器の受光信号に比較して大きくなる。したがって、受光信号に含まれるデータ信号成分の大小比較結果に応じて移動体の位置を特定すると、移動体の位置を正確に特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をVICS(Vehicle Information and Communication System)車載器に適用した一実施形態について、図1ないし図8を参照しながら説明する。
図2は、VICS車載器の外観図を模式的に示しており、図3はVICS車載器の利用形態を模式的に示している。
【0013】
図2および図3に示すように、VICS車載器1は、例えば自動車(車両)C内のインストルメントパネル上に設置され、路面R上に設置された路側通信機2との間で光通信可能に構成されている。路側通信機2は、路面R上の所定範囲の通信可能エリアA(自動車Cの通過領域に相当)に向けて近赤外線による光ビーコンを送信するように構成されている。より具体的には、路側通信機2は、路面Rの上方に設置されており、自動車Cの進行方向Sとは逆方向で且つ路面R上の通信可能エリアAに向けて光ビーコンを送信する。路上通信機2は、マンチェスタ符号により符号化されたデータを、パルス振幅変調方式(PAM)を用いて変調した光変調信号により近赤外線の光ビーコンとして通信エリアAに向けて送信している。
【0014】
さらに具体的には、この光ビーコンの通信可能エリアAは、路側通信機2の手前約3.5mを中心とした所定範囲内であり、自動車Cがこの通信可能エリアAを通過している場合にかぎり、VICS車載器1はこの通信可能エリアA内において自動車Cの進行方向S側の情報を取得可能となる。
【0015】
VICS車載器1は、VICS光ビーコンを利用し、例えば進行方向Sの前方30km、後方1kmの一般道路と高速道路情報を受信することができる。また、VICS車載器1は、静的情報として現在位置情報、接続ネットワーク情報を受信できると共に、動的情報として緊急メッセージ情報、注意警戒情報、メッセージ情報、簡易図形情報、事象規制リンク情報、区間旅行時間情報、渋滞・旅行時間リンク情報、駐車場情報等を受信できる。VICS車載機1は方向検出装置、移動体位置特定装置、自車位置特定装置として機能する。
【0016】
図4は、VICS車載器1の縦断面図を模式的に示している。
この図4に示すように、VICS車載器1の内部には2つ(複数)のフォトダイオード(受光器)PD1、PD2が受光手段として設置されている。このうち、フォトダイオードPD1は、自動車Cの進行方向Sで且つ上方斜め方向に光軸P1を備えるように配設されており、当該方向の指向性が最も強くなるように設定されている。
【0017】
またフォトダイオードPD2も同様に、自動車Cの進行方向Sで且つ上方斜め方向に光軸P2を備えるように配設されており当該方向の指向性が高くなるように設定される。フォトダイオードPD1について最も高い指向性特性となる仰角θ1や、フォトダイオードPD2について最も高い指向性特性となる仰角θ2は、図1に示すように光信号の指向性を上下方向(高低方向)について規定しており、その関係は、θ1<θ2を満たすように設定されている。
【0018】
したがって、フォトダイオードPD1の受光特性は、フォトダイオードPD2の受光特性に比較して自動車Cの進行方向S側に高指向性特性を備えている。逆に、フォトダイオードPD2の受光特性は、フォトダイオードPD1の受光特性に比較して自動車Cの上方側に高指向特性を備えている。
【0019】
図5は、VICS車載器の電気的構成を概略的なブロック図によって示している。
この図5に示すように、VICS車載器1は、前述したフォトダイオードPD1およびPD2(受光器)並びにマイコン(制御回路)3を主として構成されており、フォトダイオードPD1およびPD2が受光した受光信号に応じて各種処理が行われるようになっている。
【0020】
具体的には、VICS車載器1は、フォトダイオードPD1およびPD2並びにマイコン3と共に、減算回路4、加算回路5、遅延回路6、波形整形回路7、同期検波回路8、コンパレータ9、データ検出回路10を備えており、フォトダイオードPD1およびPD2の受光信号をデータ信号に変換し、マイコン3が当該与えられたデータ信号に対して各種処理を行うように構成されている。
【0021】
減算回路4は、フォトダイオードPD2の受光信号からフォトダイオードPD2の受光信号を減算し、遅延回路6に出力する。加算回路5は、フォトダイオードPD1およびPD2の受光信号を加算し波形整形回路7に出力する。波形整形回路7は、加算回路5からの信号から直流成分を除去し2値化して同期検波回路8やデータ検出回路10に与える。遅延回路6は、波形整形回路7の処理時間分の遅延時間を生じさせて減算回路4から取得した信号を同期検波回路8に出力する。
【0022】
同期検波回路8は、遅延回路6からの信号を波形整形回路7の出力信号によって同期検波しコンパレータ9に出力する。コンパレータ9は、同期検波回路8の出力信号をデジタルデータ信号としてマイコン3に出力する。データ検出回路10は、波形整形回路7の出力信号からデータ信号成分を抽出しデジタルデータ信号Dとしてマイコン3に出力する。
【0023】
また、マイコン3には車速センサ11や表示器12が接続されている。マイコン3は、車速センサ11から車速パルスを取得することで車速情報を取得する。またマイコン3は、表示器12に対して各種表示内容を表示制御する。本実施形態の特徴には直接関係しないので説明を省略するが、VICS車載器1は光ビーコンの送信部も備えており、前述と同様に、マンチェスタ符号により符号化されたデータ信号を光データ信号として送信するように構成されている。
【0024】
尚、VICS車載器1は、その他にも通常のナビゲーション機能を備えていても良い。この場合、ジャイロセンサ、GPS(Global Positioning System)受信機、加速度センサ、地磁気センサ等の位置検出用の信号を検出可能なセンサ(何れも図示せず)を接続しており、地図データ入力器により地図データを入力してマップマッチング機能により現在位置を特定可能に構成される。この位置特性精度は、本実施形態の特徴部分の構成要素による位置特定精度よりも劣る。
【0025】
上記構成の作用について説明する。
図6(a)および図6(b)は、自動車Cが通信エリアA内に位置しているときの各電気的構成ブロックの出力信号の時間的変化を概略的に示している。特に、図6(a)は路上通信機2が自動車Cの上方に位置している場合(自動車Cが図1の領域Z2に位置している場合)の信号の時間変化を微視的に示している。また、図6(b)は路上通信機2が自動車Cの前方に位置している場合(自動車Cが図1の領域Z1に位置している場合)の信号の時間変化を微視的に示している。
【0026】
フォトダイオードPD1、PD2は、それぞれ路上通信機2から送信される近赤外線の光ビーコンを太陽光などの外来光と共に受光し光電変換する。フォトダイオードPD2による光電変換後の受光信号Shには、路上通信機2の光ビーコンに含まれるデータ信号分に加えて外来光の影響による所定レベルS0の直流分が重畳される。また、フォトダイオードPD1による光電変換後の受光信号Slにも同様に、外来光の影響により所定レベルS1の直流分が重畳される。
【0027】
主に太陽光が外来光としてフォトダイオードPD1やPD2に入射する場合、自動車Cが通信エリアA内を走行しているときには太陽光が略同一方向から入射することになる。この場合、フォトダイオードPD1、PD2は互いに指向性が異なるように配設されているため、重畳分の直流信号(所定レベルS0、S1)は互いに異なる値となる。
【0028】
また、路上通信機2が自動車Cの前方(上前方)に位置する領域Z1(図1参照)を自動車Cが走行しているときには、フォトダイオードPD1に入射する光ビーコンの光量がフォトダイオードPD2に入射する光ビーコンの光量に比較して多くなるため、図6(b)に示すように、フォトダイオードPD1の受光信号Slに含まれるデータ信号分(路上通信機2が送信する光変調信号の受光分)の振幅A2は、フォトダイオードPD2の受光信号Shに含まれるデータ信号分の振幅A1に比較して大きくなる。
【0029】
逆に、路上通信機2が自動車Cの上方に位置するような領域Z2(図1参照)を自動車Cが走行しているときには、フォトダイオードPD2に入射する光ビーコンの光量が、フォトダイオードPD1に入射する光ビーコンの光量に比較して多くなるため、図6(a)に示すように、フォトダイオードPD2の受光信号Shに含まれるデータ信号分の振幅A3は、フォトダイオードPD1の受光信号Slに含まれるデータ信号分の振幅A4に比較して大きくなる。
【0030】
この後、加算回路5が受光信号Shおよび受光信号Slを加算して信号S+(図5参照)を得る。この場合、路上通信機2が上方に位置している場合と前方に位置している場合とでは、ほぼ同一の振幅となるデータ信号成分を得る(図6(a)および図6(b)のS+参照)。
【0031】
同時に、減算回路4が受光信号Shから受光信号Slを減算して信号S−(図5参照)を得る。すると、路上通信機2が上方に位置している場合と前方に位置している場合とでは、同一の振幅で互いに逆位相となるデータ信号成分を得る(図6(a)および図6(b)のS−参照)。
【0032】
同期検波回路8が減算回路4の出力信号を同期検波するが、このとき、受光信号Shに含まれるデータ信号分の振幅が受光信号Slに含まれるデータ信号分の振幅よりも大きいときには正の信号を出力する。
【0033】
逆に、受光信号Slに含まれるデータ信号分の振幅が受光信号Shに含まれるデータ信号分の振幅よりも大きいときには負の信号を出力する。その後、コンパレータ9が、これらの出力信号を0と比較することでハイ信号、またはロウ信号のデジタル信号Baをマイコン3に出力する(図6(a)および図6(b)の信号Ba参照)。
【0034】
すなわち、自動車Cが通信エリアA内を走行すると、減算回路4の出力信号S−の振幅が基準位置で反転し、図8に示すように、同期検波回路8の出力信号Saが基準位置で反転する。図8に示すように、この反転タイミングにおいて車速パルスBnのカウント値iを検出することで、通信エリアA内の基準位置を特定できる。この場合、データ信号成分を抽出して検出できるため、外来光の影響を受けることなく走行位置を特定できる。
【0035】
尚、フォトダイオードPD1およびPD2による光の検出方向は、受光系回路を構成する素子の誤差の影響で誤差を生じることがある。また、フォトダイオードPD1およびPD2による光の検出方向に誤差を生じなくても、フォトダイオードPD1およびPD2の車室内取付位置(路面からの高さや自動車Cの車室内の前後方向取付位置)による誤差も発生する。このような場合、基準位置の特定に誤差を生じることがある。
【0036】
このような誤差を低減するため、フォトダイオードPD1およびPD2の受光指向性角度を調整可能に構成すると良い。具体的には、フォトダイオードPD1およびPD2の取付機構を設けて取付角度を調整すると良い。また、減算回路4や加算回路5による受光信号の加減算率(和信号または差信号の振幅に相当:フォトダイオードPD1およびPD2の受光感度)を調整可能に構成しても良い。また、マイコン3が、フォトダイオードPD1およびPD2の自動車C内における取付位置を記憶するように構成し、当該取付位置に応じて検出方向誤差の補正や基準位置特定誤差の補正を行うようにしても良い。このようにすることで、検出方向誤差を補正でき、正確に位置特定できる。
【0037】
以下、具体的な適用例について図1、図7を参照して説明する。
図7は、マイコンの動作を概略的なフローチャートにより示している。
この図7に示すように、マイコン3は起動されるとカウンタCnを0とすると共に、フラグFb、Flを0として設定して初期化し(ステップS0)、外部割込みを待機する。カウンタCnは車速を検出するために設けられるカウンタである。また、フラグFbは、コンパレータ9の出力デジタル信号Baの立ち上がり検出フラグを示しており、フラグFlは、データDの入力検出フラグを示している。外部割込みは、車速センサ11の信号Bnの立ち上がりや、コンパレータ9の出力信号Baの立ち上がりや、データDのマイコン3に対する入力に応じて発生する。
【0038】
自動車Cが道路を走行すると約400[mm]進む毎に車速パルス信号Bnが立ち上がる。マイコン3は、この車速パルス信号Bnの立ち上がりを検出したときには、以下のステップS2〜S7の処理を実行する。マイコン3は車速パルス信号Bnの立ち上がりを検出するとカウンタCnをインクリメントし(ステップS2)、フラグFb、Flの状態を確認する(ステップS3)。マイコン3は、フラグFb、Flが共に1に設定されている場合にはステップS4〜S7の処理を行うが、この条件を満たさない場合には外部割込みルーチンを抜けて通常処理を行う。
【0039】
他方、マイコン3は、ステップS1において、コンパレータ9の出力信号Baの立ち上がりを検出することで外部割込みを発生したときには、フラグFbに1をセットすると共にこのときのカウンタCnの値を位置対応カウンタ値Pbにセットする(ステップS8)。位置対応カウンタ値Pbは、基準位置(図1参照)を示すカウンタ値である。
【0040】
また、マイコン3は、データ検出回路10からデータDを入力検出することで外部割込みが発生したときには距離Lを入力設定し、フラグFlに1をセットする(ステップS9)。距離Lは、データDに含まれる内容であると共に、道路に設置される個別の路上通信機2毎に異なる値であり、例えばデータDに含まれる進行方向Sの道路情報の中で危険の伴う場所までの距離をあらわしている。この距離Lは、例えば図1に示すように、一旦停止「止まれ」を示す標識Tの存在位置までの距離を表している。
【0041】
前述したように、マイコン3は、フラグFb、Flが共に1にセットされていることを条件としてステップS4〜S7の処理を行う。マイコン3は、ステップS4において、位置検出カウンタ値Pbと、距離Lと、車速センサ11の車速パルスの周期を計測することにより得られた車速情報とに基づいて警告位置対応カウンタ値Pwを算出する(ステップS4)。この警告位置対応カウンタ値Pwは、一旦停止標識「止まれ」の手前地点で警告表示を行う地点(距離LO(図1参照)だけ離間した地点)に対応した車速パルスのカウント値に相当するものである。
【0042】
マイコン3は、ステップS5において、車速パルスのカウンタCnが警告位置対応カウンタ値Pw以上となり自動車Cが距離LO以上走行したと特定したことを条件として警告位置として特定し、表示器12の表示画面12aに対し警告表示制御を開始する(ステップS6)。実際には、マイコン3は距離LO(<L:図1参照)を走行したときに表示器12の表示画面12aに警告表示制御を行う。警告表示が一旦開始されれば、再度表示制御を開始する必要はないため、マイコン3はフラグFb、Flを共に0にセットする(ステップS7)。この表示制御は所定時間(例えば3秒間)保持される。自動車Cの搭乗者は、自動車Cが距離LOを走行した時点において一旦停止標識Tが進行方向Sに存在することを確認できる。これにより、一旦停止を促すことができ安全性が向上する。
【0043】
本実施形態によれば、互いに異なる指向性特性を有するように配設されたフォトダイオードPD1およびPD2が受光した受光信号に含まれるデータ信号成分の大小に応じて路上通信機2の方向(路上通信機2からの受光方向)を検出するため、たとえ太陽光などの外乱光が入射するようなことがあっても路上通信機2の方向を正確に検出できる。
【0044】
また、車速パルスを利用し自動車Cの走行距離を特定することにより警告位置(表示制御位置:移動体位置に相当)を特定するため、自動車Cの例えば移動中の位置を正確に特定できる。フォトダイオードPD1およびPD2による受光信号ShおよびSlの和信号、差信号を算出することによって受光信号に含まれるデータ信号Dを抽出するため、データ信号Dを簡単に抽出できる。
【0045】
同期検波回路8が、フォトダイオードPD1およびPD2の受光信号から抽出したデータ信号成分Bdによって同期検波するため、角度検出用および位置特定用の正負の直流信号を取得しやすくなり、データ信号成分の大小をより正確に検出できるようになり、路上通信機2の方向を正確に検出できる。
【0046】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示す変形もしくは拡張が可能である。
【0047】
投光機器は、路側通信機(VICS光ビーコン送信機)に限らず、他の光通信用投光機器でも良い。
信号Saがゼロクロスした時点で仰角を特定するようにしたが、信号Saのアナログ値を検出して仰角を特定すれば通信エリアA内の何れの位置を自動車Cが走行しているかを特定できる。
移動体は、自動車に限らず、他の車両(例えばオートバイ、自転車)や歩行者も含む。
自動車(車両)等に搭載された移動体用の電子機器に限らず、固定設置された機器にも適用できる。
【0048】
移動体の移動速度を車速パルスによって車速情報として検出したが、移動体の移動速度を他の方法で検出するようにしても良い。
車両内で走行位置を特定する自車位置特定装置に限らず、外部で車両走行位置を特定する装置に適用しても良い。走行位置を特定することに限らず、投光機器からの光の受光方向を検出する装置に適用しても良い。
フォトダイオードに代えてフォトトランジスタ等の他の受光手段を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体の位置特定の流れを模式的に示す説明図
【図2】装置の外観を示す図
【図3】路上通信機および装置の通信形態を示す図
【図4】受光手段の設置態様を概略的に示す断面図
【図5】装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図6】(a)(b)は時間的変化に応じた各信号波形を示す図(その1、その2)
【図7】動作を概略的に示すフローチャート
【図8】時間的変化に応じた各信号波形を示す図(その3)
【符号の説明】
【0050】
図面中、1はVICS車載器(方向検出装置、移動体位置特定装置)、2は路側通信機、3はマイコン(走行距離特定手段、検出手段)、PD1,PD2はフォトダイオード(受光器、受光手段)、Cは自動車(移動体)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる指向性特性を有するように配設され屋外に設けられた投光機器からの投光信号をそれぞれ受光する複数の受光手段と、
前記複数の受光手段がそれぞれ受光した受光信号に含まれるデータ信号成分の大小に応じて前記投光機器の方向を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする方向検出装置。
【請求項2】
前記複数の受光手段は、2つの受光器からなることを特徴とする請求項1記載の方向検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記複数の受光手段による受光信号の和信号または差信号を算出することに基づいて前記受光信号に含まれるデータ信号成分を抽出することを特徴とする請求項1または2記載の方向検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記受光信号からデータ信号成分を抽出し当該データ信号成分によって同期検波することにより方向を検出することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の方向検出装置。
【請求項5】
互いに異なる指向性特性を有するように配設され路側通信機からの投光信号をそれぞれ受光する複数の受光手段と、
前記複数の受光手段がそれぞれ受光した受光信号に含まれるデータ信号成分の大小を検出する検出手段と、
前記移動体の走行距離を特定する走行距離特定手段とを備えたことを特徴とする移動体位置特定装置。
【請求項6】
前記複数の受光手段は、第1および第2受光器からなることを特徴とする請求項5記載の移動体位置特定装置。
【請求項7】
前記路側通信機は、移動体の進行方向上方に配設され前記移動体の進行方向とは逆方向側で且つ当該移動体の通過領域に向けてデータ信号を光変調信号により送信するように構成され、
前記複数の受光手段は、移動体の進行方向側に高指向性特性を有するように配設された第1受光器と、前記第1受光器の指向性特性よりも移動体の上方側に高指向性特性を有するように配設された第2受光器とを備え、
前記検出手段は、前記第1および第2の受光器の受光信号に含まれるデータ信号成分の大小を検出することを特徴とする請求項5または6記載の移動体位置特定装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記複数の受光手段の受光信号の和信号または差信号を算出することに基づいて前記受光信号に含まれるデータ信号成分を抽出し当該データ信号成分の大小を検出することを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載の移動体位置特定装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記受光信号からデータ信号成分を抽出し当該抽出したデータ信号成分によって同期検波することによりデータ信号成分の大小を検出することを特徴とする請求項5ないし8の何れかに記載の移動体位置特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−64546(P2008−64546A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241522(P2006−241522)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】