説明

方法

本発明は、(i)随意選択的に、脂肪酸混合物を水素化する段階;(ii)該混合物を冷却し、結晶を形成させる段階;そして(iii)乾式分別によって、該混合物からアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を分離する段階を含む、直鎖及びアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を含む脂肪酸混合物からアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸の分離方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直鎖の脂肪酸からアルキル分岐を有する脂肪酸を分離する方法、そして特に、アルキル分岐を有する飽和脂肪酸を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキル分岐を有する脂肪酸は、直鎖の不飽和脂肪酸の触媒又は熱二量化の副生成物として生ずる。上記アルキル分岐を有する脂肪酸は、「イソステアリン酸」として知られている。イソステアリン酸は室温で液体であり、オレイン酸よりも酸化に対して安定性が良好であり、従って、潤滑剤エステル及び化粧品用途等の広範囲の適用領域内で販売される非常に有用な生成物である。イソステアリン酸はまた、イソステアリルアルコールを合成するために用いられる。イソステアリン酸は、いわゆるEmersol法で商業的に生産されている。
【0003】
Emersol法では、該脂肪酸混合物を有機溶媒に溶解させ、次いで、水平スクレイプド(scraped)晶出装置を用いて冷却する。冷却の際に形成する直鎖の脂肪酸結晶を、ロータリードラムフィルターを用いて、直鎖の不飽和脂肪酸、分岐を有する不飽和脂肪酸及び分岐を有する飽和脂肪酸から取り除く。次いで、蒸留段階の両分画から溶媒を取り除く。Emersol法は、エネルギー集約型であり、運用コストが高く、そして望ましくない有機溶媒の使用を必要とする。
【0004】
米国特許第4973431号明細書には、イソステアリン酸を生産するための湿式分離法が記載されている。該湿式分離法では、脂肪酸混合物をまた、水平のスクレイプド晶出装置を用いて冷却する。しかしその一方で、水及び界面活性剤の混合物である湿潤剤溶液を該脂肪酸に添加する。該直鎖の脂肪酸結晶を水性相中で懸濁させ、次いで、低温遠心分離機を用いて該混合物から分離する。次いで、該直鎖の脂肪酸を加熱し、懸濁液を分散させ(breaking up)、そして高温遠心分離機内で、界面活性剤から分離する。両タイプの遠心分離機を利用すると、保守コストが高くなる。界面活性剤を用いると、該湿式分離法のコストがさらに増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾式分別(dry fractionation)として公知である第三の技術が用いられ、不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸が分離されるが、該技術は、分岐を有する脂肪酸の分離には適用されていない。乾式分別には、晶出装置内で脂肪酸混合物を冷却し、次いで、メンブランフィルターを用いて、凝固化飽和脂肪酸のケーキから不飽和脂肪酸を圧搾することが含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今回、我々は、前述の課題を少なくとも1つ減少させるか、又は実質的に克服するアルキル分岐を有する脂肪酸の分離方法を見出した。
【0007】
従って、本発明は、直鎖及びアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を含む脂肪酸混合物から、アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を分離する方法を提供し、該方法には、下記;
(i)随意選択的に、脂肪酸混合物を水素化する段階;
(ii)該混合物を冷却し、結晶を形成させる段階;そして
(iii)乾式分別によって、該混合物からアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を分離する段階:
が含まれる。
【0008】
本発明はまた、下記;
(i) 3質量%未満の分岐を有するC14脂肪酸;
(ii) 2〜12質量%の範囲の分岐を有するC16脂肪酸;
(iii)55〜85質量%の範囲の分岐を有するC18脂肪酸;
(iv) 2〜12質量%の範囲の分岐を有するC20脂肪酸;
(v) 1〜8質量%の範囲の分岐を有するC22脂肪酸;そして
(vi) 直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比が、0.15〜0.5:1の範囲である:
を含むアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物を提供する。
【0009】
本発明で用いられる脂肪酸向けの原材料は、天然素材原料、例えば、トリグリセリドオイルであることが好ましく、そして動物源(例えば、獣脂)又は好ましくは野菜源でありうる。好適な脂肪酸には、ヒマワリ脂肪酸、大豆脂肪酸、オリーブ脂肪酸、菜種脂肪酸、アマニ脂肪酸、綿実脂肪酸、ベニバナ脂肪酸、トールオイル脂肪酸及び獣脂オレインが含まれる。比較的純粋な不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、及びエライジン酸を単離するか、又は比較的粗製の不飽和脂肪酸混合物を用いることができる。好適な不飽和の脂肪酸を購入可能である。これらの不飽和脂肪酸が、触媒又は熱二量化法を受ける。該二量化法の副生成物の一つは、アルキル分岐を有する不飽和脂肪酸、アルキル分岐を有する飽和脂肪酸、直鎖の飽和脂肪酸及び直鎖の不飽和脂肪酸の脂肪酸混合物の複合体であるモノマー分画として公知である。これが本発明の方法用の出発原料である。
【0010】
該脂肪酸混合物出発原料は、好ましくは20質量%超、さらに好ましくは30〜55質量%、特に35〜50質量%、そして特に40〜45質量%の範囲の飽和脂肪酸と、好ましくは30質量%超、さらに好ましくは45〜70質量%、特に50〜65質量%、そして特に55〜60質量%の範囲の不飽和脂肪酸とを含む(両者とも、存在する脂肪酸の総質量に基づく)。
【0011】
不飽和脂肪酸の量を減少させるために、該脂肪酸混合物を、当業者に公知の技術(例えば、ニッケル触媒を使用)を用いて水素化することができ、そうすることが好ましい。
該水素化脂肪酸混合物は、好ましくは90質量%超、さらに好ましくは93質量%超、特に95質量%超、そして特に97質量%超の飽和脂肪酸と、好ましくは0〜10質量%の範囲、さらに好ましくは7質量%未満、特に5質量%未満、そして特に3質量%未満の不飽和脂肪酸とを含む(両者とも、存在する脂肪酸の総質量に基づく)。
【0012】
該脂肪酸混合物は、下記;
(i)好適には35〜85質量%、好ましくは40〜65質量%、さらに好ましくは45〜60質量%、特に50〜57質量%、そして特に51〜55質量%の範囲のアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸;及び
(ii)好適には15〜65質量%、好ましくは35〜60質量%、さらに好ましくは40〜55質量%、特に43〜50質量%、そして特に45〜49質量%の範囲の直鎖のC12〜C24脂肪酸:
を含む(両者とも、存在する脂肪酸の総質量に基づく)。
【0013】
該直鎖及びアルキル分岐を有する脂肪酸混合物は、好ましくはC14〜C22、さらに好ましくはC16〜C22、特にC18〜C20、そして特にC18脂肪酸を含む。
該脂肪酸混合物は、全て、存在する脂肪酸の総質量に基づいて;
(i)好ましくは0〜5質量%の範囲、さらに好ましくは4質量%未満、特に3質量%未満、そして特に2質量%未満のC14脂肪酸を含み、そして/又は、
(ii)好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜35質量%、特に15〜30質量%、そして特に20〜25質量%の範囲のC16脂肪酸を含み、そして/又は、
(iii)好ましくは45質量%超、さらに好ましくは50〜75質量%、特に55〜65質量%、そして特に57〜63質量%の範囲のC18脂肪酸を含み、そして/又は、
(iv)好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%、特に6〜10質量%、そして特に7〜9質量%の範囲のC20脂肪酸を含み、そして/又は、
(v)好ましくは0〜12質量%、さらに好ましくは2〜10質量%、特に4〜8質量%、そして特に5〜7質量%の範囲のC22脂肪酸を含む。
【0014】
本発明の特に好ましい実施形態では、該脂肪酸混合物中に存在する直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比は、0.3〜2:1、好ましくは0.4〜1.5:1、さらに好ましくは0.5〜1.2:1、特に0.6〜1.0:1、そして特に0.7〜0.9:1の範囲であることが好適である。上記比は、本発明に従う方法を実行する前に、直鎖のC16飽和脂肪酸(すなわち、パルミチン酸)を、該脂肪酸混合物に添加することで調製でき、そしてそうすることが好ましい。添加するパルミチン酸の量は、脂肪酸混合物出発原料100gあたり、好ましくは0.5〜15、さらに好ましくは1〜10、特に3〜7、そして特に4〜6gの範囲である。
【0015】
本発明に従う方法では、該脂肪酸混合物出発原料は、液状にするために、好ましくは45℃超、さらに好ましくは48〜80℃、特に50〜70℃、そして特に52〜60℃の範囲に、最初に加熱することが好適である。該脂肪酸混合物出発原料を、該混合物のタイター(titre)(又は融点)よりも、好ましくは2〜20℃、さらに好ましくは5〜15℃、特に7〜13℃、そして特に9〜11℃高く加熱する。該脂肪酸混合物は、蒸留カラムから直接用いることができ、例えば、温度が110℃と高い場合には、該晶出装置に入れる前に上記好ましい温度範囲まで冷却させることが必要である。
【0016】
液体の脂肪酸混合物の結晶化は、好ましくは18℃未満、さらに好ましくは17℃未満、特に7〜16℃、そして特に5〜15℃の範囲に該脂肪酸混合物を冷却することで得られる。冷却速度は、該方法の効率に大きく影響し、そして本発明の実施形態のひとつでは、冷却は、好ましくは1〜30℃/時間、さらに好ましくは2〜15℃/時間、特に3〜8℃/時間、そして特に4〜6℃/時間の範囲で、回分様式で行われる。該回分式冷却法を、好ましくは1〜14、さらに好ましくは2〜12、特に6〜11、そして特に8〜10時間の範囲にわたり行う。
【0017】
あるいはそして好ましくは、連続冷却工程が用いられ、好適には15〜140℃/時間、好ましくは25〜100℃/時間、さらに好ましくは30〜70℃/時間、特に35〜60℃/時間、そして特に40〜55℃/時間の範囲の速度で冷却する。該連続冷却工程は、好ましくは0.1〜4、さらに好ましくは0.3〜3、特に0.5〜2、そして特に0.8〜1.2時間にわたり行われる。
【0018】
冷却工程の際、該直鎖の飽和脂肪酸の結晶化が生ずる。本発明の特に好ましい実施形態では、冷却段階後の該脂肪酸混合物の組成物には、15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%、特に25〜45質量%、そして特に30〜40質量%の範囲の液体脂肪酸と、45〜85質量%、さらに好ましくは50〜80質量%、特に55〜75質量%、そして特に60〜70質量%の範囲の固体脂肪酸が含まれる。さらに好ましい実施形態では、該固体の脂肪酸は、さらに一般的な針状構造とは逆の、板状の特性を有する結晶形状を有する。該板状結晶は、おおむね円形の形状であり、1〜3:1、好ましくは1〜2:1、さらに好ましくは1〜1.3:1、特に1〜1.2:1、そして特に1〜1.1:1の範囲の平均アスペクト比d1:d2(本明細書に規定する通りに測定)を有する(ここで、d1及びd2は、それぞれ、該結晶の長さ及び幅である)。本発明の好ましい実施形態では、好適には少なくとも40数量%、好ましくは少なくとも55数量%、さらに好ましくは少なくとも70数量%、特に少なくとも80数量%、そして特に少なくとも90数量%の結晶が、平均アスペクト比に関して与えられる上記好ましい範囲内のアスペクト比を有する。該板状結晶の平均奥行き(又はd3)は、結晶平均径(長さ平均及び幅平均の合計の半分((d1+d2)/2))の好ましくは1/3未満、さらに好ましくは1/4未満、特に1/50〜1/8、そして特に1/20〜1/10の範囲である。
【0019】
該板状結晶は、150〜600μm、好ましくは250〜500μm、さらに好ましくは300〜460nm、特に350〜440nm、そして特に380〜420nmの範囲の結晶平均径(本明細書に規定されるように測定)を有する。本発明の好ましい実施形態では、好適に少なくとも40数量%、好ましくは少なくとも55数量%、さらに好ましくは少なくとも70数量%、特に少なくとも80数量%、そして特に少なくとも90数量%の結晶が、結晶平均径に関して与えられる上記好ましい範囲内の結晶径を有する。
【0020】
好ましい板状結晶形状は、針状形状の結晶から作られるろ過ケーキよりもより空隙率の低い、ろ過ケーキ内の結晶のもろい(open)配列を生じさせる。
板状結晶から形成されるろ過ケーキは、液体/固体脂肪酸分離の同じ収率を得るためにより少ない液圧を必要とし、そして驚くべきことに、より純粋な生成物を生じさせる。
冷却後、好ましくは好適なフィルターを介して、該脂肪酸混合物をろ過する。該フィルタークロスは、好ましくはポリオレフィン、さらに好ましくはポリプロピレンの繊維(特に、ウィーブ形)から作られる。該繊維を、好ましくは疎水性材料、例えば、PTFEでコーティングすることができる。フィルタークロスの質量は、好ましくは200〜600、さらに好ましくは300〜500、そして特に350〜450g.m-2である。該フィルタークロスは、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜5、そして特に1〜2l.dm-2.分-1の範囲の透水性を有する。好適なフィルタークロスを購入できる。該フィルタークロスは、一般的に、フィルタープレス(これも購入可能である)内に収納される。
【0021】
該ろ過段階は、好ましくは加圧下で、さらに好ましくは5〜40、特に15〜35、そして特に25〜30バールの範囲で行われる。
本発明の方法に従って作成される該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物には、好ましくは70質量%超、さらに好ましくは73〜95質量%、特に77〜90質量%、そして特に80〜85質量%の範囲の分岐を有する脂肪酸と、30質量%未満、さらに好ましくは5〜27質量%、特に10〜23質量%、そして特に15〜20質量%の直鎖の脂肪酸が含まれる(両者とも、存在する脂肪酸の総質量に基づく)。
【0022】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物には、好ましくはC14〜C22、さらに好ましくはC16〜C22脂肪酸、特にC18〜C20、そして特にC18脂肪酸が含まれる。
該アルキル分岐を有する脂肪酸混合物には、全て、存在する脂肪酸の総質量に基づいて、下記;
(i)好ましくは0〜4質量%の範囲、さらに好ましくは3質量%未満、特に2質量%未満、そして特に1質量%未満の分岐を有するC14脂肪酸を含み、そして/又は、
(ii)好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは2〜12質量%、特に4〜10質量%、そして特に6〜8質量%の範囲の分岐を有するC16脂肪酸を含み、そして/又は、
(iii)好ましくは50質量%超、さらに好ましくは55〜85質量%、特に60〜80質量%、そして特に65〜75質量%の範囲の分岐を有するC18脂肪酸を含み、そして/又は、
(iv)好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは2〜12質量%、特に4〜10質量%、そして特に6〜8質量%の範囲の分岐を有するC20脂肪酸、そして/又は、
(v)好ましくは0〜12質量%、さらに好ましくは1〜8質量%、特に1.5〜6質量%、そして特に2〜4質量%の範囲の分岐を有するC22脂肪酸が含まれる。
【0023】
さらに、該アルキル分岐を有する脂肪酸混合物には、下記;
(i)好ましくは0〜18質量%、さらに好ましくは3〜12質量%、特に5〜10質量%、そして特に6〜8質量%の範囲の直鎖のC16脂肪酸、及び/又は、
(ii)好ましくは0〜10質量%の範囲、さらに好ましくは0.5〜6質量%、特に1〜4質量%、そして特に1.5〜3質量%の範囲の直鎖のC18脂肪酸:
が含まれる(両者とも、存在する脂肪酸の総質量に基づく)ことが好適である。
【0024】
該分岐を有する脂肪酸混合物中に存在する直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比は、好適には0.05〜1:1、好ましくは0.1〜0.7:1、さらに好ましくは0.15〜0.5:1、特に0.2〜0.4:1、そして特に0.25〜0.35:1の範囲である。
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物には、好ましくは90質量%超、さらに好ましくは92〜99.9質量%、特に95〜99.5質量%、そして特に96〜99質量%の範囲の飽和脂肪酸と、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜8質量%、特に0.5〜5質量%、そして特に1〜4質量%の不飽和脂肪酸とが含まれる(両者とも存在する脂肪酸の総質量に基づく)。
【0025】
本発明に従って作成されたアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸には、平均で、好ましくは3未満、さらに好ましくは2.5未満、特に1.05〜2、そして特に1.1〜1.4の炭素原子数(すなわち、側鎖が主にメチル基)を有するアルキル側鎖(最も長い線状分子鎖の炭素原子に直接結合している)が含まれる。本発明の好ましい実施形態では、側鎖基の50数量%超、さらに好ましくは60数量%超、特に70〜97数量%、そして特に80〜93数量%の範囲が、メチル基である。さらに好ましい実施形態では、分岐を有する脂肪酸の30数量%超、さらに好ましくは40数量%超、特に45〜90数量%、そして特に50〜80数量%には、単一のメチル側鎖が含まれる。
【0026】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好ましくは160〜220、さらに好ましくは175〜205、特に182〜196、そして特に187〜191mgKOHg-1の範囲の酸価(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好ましくは165〜220、さらに好ましくは175〜210、特に185〜200、そして特に191〜195mgKOHg-1の範囲のけん化価(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
【0027】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好ましくは10未満、さらに好ましくは7未満、特に0.5〜5、そして特に1〜3g.100g-1の範囲の不けん化率(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好ましくは8未満、さらに好ましくは6未満、特に0.5〜4、そして特に1〜3g(ヨウ素).100g-1の範囲のヨウ素価(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
【0028】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好適には0〜15℃、好ましくは0〜10℃、さらに好ましくは0〜8℃、特に0〜6℃、そして特に0〜4℃の範囲の曇り点(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸は、好適には250未満、さらに好ましくは150未満、特に100未満、そして特に50ハーゼン単位未満のカラー(本明細書に規定される通りに測定)を有する。
【実施例】
【0029】
次の比限定的例によって、本発明を具体的に説明する。別途提示のない限り、全ての部及び%は、質量部及び質量%である。
【0030】
本明細書において、次の試験を行った。
(i)酸価
A.O.C.S.公定法のTe 1a−64(1997年再承認)を用いて酸価を測定し、そして試料1g中の遊離脂肪酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数として表わした。
(ii)けん化価
A.O.C.S.公定法のTI 1a−64(1997年)を用いてけん化価を測定し、そして規定条件下において試料1gと反応する水酸化カリウムのmg数として規定した。
(iii)不けん化価
A.O.C.S.公定法のCa6b−53(1989年)を用いて不けん化価を測定した。
(iv)ヨウ素価
Wijs法(A.O.C.S.公定法、Tg 1−64(1993年))に従ってヨウ素価を測定し、そして規定試験条件下で、100gの試料に吸収されるヨウ素のg数として表わした。
(v)曇り点
A.O.C.S.公定法(Cc 6−25)に従って、曇り点を測定した。
(vi)カラー
ハーゼン単位(Pt−Coスケール)、ISO2211(1973年)における、カラー測定方法を用いて、カラーを測定した。
(vii)タイター
A.O.C.S.公定法、Tr1a−64(1989年)に従って、タイター(又は融点)を測定した。
(viii)脂肪酸の構成
ISO5508:1990(E)動物性及び植物性の脂肪及び油−脂肪酸のメチルエステルのガスクロマトグラフィーによる分析法を用いて、ガスクロマトグラフィーで脂肪酸の構成(鎖長、飽和/不飽和、直鎖/分岐)を決定した。
(ix)結晶サイズ
拡大した、偏向視覚化を併用した透過光線の下、光学顕微鏡(オリンパスBX60)を用いて該試料を観察し、板状結晶の粒子サイズを決定した。通常の顕微鏡試料台の代わりに、Linkham THMS 600の温度プログラム可能な試料台の上に、試料を置いた。結晶が溶解するまで、脂肪酸混合物の試料を25℃/分の速度で加熱した。溶解が生じた後、加熱を止め、そして結晶が生成するまで、該試料を冷却した(急速冷却は適用せず)。約50の結晶が各写真に表示されるように、適切な倍率で写真を作成した。透明なサイズグリッドを用いて、最小数の300の結晶を手動で測定した。上記測定から、結晶平均径を計算した。さらに、少なくとも50個の粒子の最高(長さ)及び最小(幅)の寸法から、結晶のアスペクト比を測定した。別法として、コンピュータ画像解析処理による測定を実施できる。
【0031】

例1
60℃の温度で、そして二量化法のモノマー分画から誘導された25kgの脂肪酸混合物を、ステンレス鋼構造の垂直バッチ晶出装置であって、ジャケット冷却器(jacketted cooling)と、該容器の内壁をこすることができる垂直に取り付けられたスターラーとを備えている装置に充填した。スラリーを形成させるため、該脂肪酸混合物を、5℃の温度まで、7時間の間、撹拌下で冷却させた。該スラリーを、ポリプロピレンフィルタークロスを備えているメンブランフィルタープレスにポンピングした。該フィルタープレス全体を冷却し、そして5℃の温度に保った。該フィルタープレスに液圧(フィルタープレス冷却流体を介して)を適用し、そして1バール/分の速度で、12バールの圧力まで該液圧を上げた。該フィルタープレスに存在する液相(ろ過物)を集めた。該フィルタープレス上の圧力を放出し、そして該固相残差を排出させ、そして集めた。
【0032】
得られたろ過物を分析し、そして下記の組成;
(i) 0.8質量%の分岐を有するC14脂肪酸;
(ii) 5.7質量%の分岐を有するC16脂肪酸;
(iii)74.3質量%の分岐を有するC18脂肪酸;
(iv) 6.6質量%の分岐を有するC20脂肪酸;
(v) 1.9質量%の分岐を有するC22脂肪酸;並びに
(vi) 5.2質量%の直鎖のC16脂肪酸;及び
(vii) 1.5質量%の直鎖のC18脂肪酸:
を有することを見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖及びアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を含む脂肪酸混合物からアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸の分離方法であって、下記;
(i)随意選択的に、該脂肪酸混合物を水素化する段階、
(ii)該混合物を冷却し、結晶を形成させる段階、そして
(iii)乾式分別によって、該混合物から該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を分離する段階、
を含む該分離方法。
【請求項2】
該脂肪酸混合物が、95質量%超の飽和脂肪酸と、5質量%未満の不飽和脂肪酸とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該脂肪酸混合物が、40〜65質量%のアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸と、35〜60質量%の範囲の直鎖のC12〜C24脂肪酸とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該脂肪酸混合物が、下記;
(i)4質量%未満のC14脂肪酸、及び/又は
(ii)10〜35質量%の範囲のC16脂肪酸、及び/又は
(iii)50〜75質量%の範囲のC18脂肪酸、及び/又は
(iv)3〜15質量%の範囲のC20脂肪酸、及び/又は
(v)2〜10質量%の範囲のC22脂肪酸、
を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該脂肪酸混合物が、15〜30質量%、好ましくは20〜25質量%の範囲のC16脂肪酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該脂肪酸混合物が、55〜65質量%、好ましくは57〜63質量%の範囲のC18脂肪酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該脂肪酸混合物中に存在する、直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比が、0.4〜1.5:1、好ましくは0.5〜1.2:1の範囲にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、73〜95質量%の範囲の分岐を有する脂肪酸と、5〜27質量%の範囲の直鎖の脂肪酸とを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、下記;
(i)3質量%未満の分岐を有するC14脂肪酸、及び/又は
(ii)2〜12質量%の範囲の分岐を有するC16脂肪酸、及び/又は
(iii)55〜85質量%の範囲の分岐を有するC18脂肪酸、及び/又は
(iv)2〜12質量%の範囲の分岐を有するC20脂肪酸、及び/又は
(v)1〜8質量%の範囲の分岐を有するC22脂肪酸、
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、4〜10質量%、好ましくは6〜8質量%の範囲の分岐を有するC16脂肪酸を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、60〜80質量%、好ましくは65〜75質量%の範囲の分岐を有するC18脂肪酸を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、下記;
(i)3〜14質量%の範囲の直鎖のC16脂肪酸、及び/又は
(ii)0.5〜6質量%の範囲の直鎖のC18脂肪酸、
を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、0.1〜0.7:1の範囲の質量比で存在する直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、90質量%超の飽和脂肪酸と、0〜10質量%の範囲の不飽和脂肪酸とを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、下記;
(i)175〜205mgKOH.g-1の範囲の酸価、及び/又は
(ii)175〜210mgKOH.g-1の範囲のけん化価、及び/又は
(iii)7g.100g-1未満の不けん化価、及び/又は
(iv)6g.100g-1未満のヨウ素価、及び/又は
(v)0〜10℃の範囲の曇り点、及び/又は
(vi)150ハーゼン単位未満のカラー値、
を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸が、0〜8℃、好ましくは0〜6℃の範囲の曇り点を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
冷却の際、板状結晶が形成される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該板状結晶が、1〜2:1の範囲の平均アスペクト比を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該板状結晶が、250〜500μmの範囲の結晶平均径を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
該脂肪酸混合物を、初めに、48〜80℃の範囲まで加熱する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該脂肪酸混合物を、7〜16℃の範囲の温度まで冷却する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該アルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸を、ろ過により分離する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
該脂肪酸混合物中に存在する直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比を、冷却段階の前又は冷却段階の際に、好ましくはパルミチン酸の添加によって調整する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
100gの脂肪酸混合物あたり0.5〜15gの範囲のパルミチン酸を添加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
下記;
(i)3質量%未満の分岐を有するC14脂肪酸、及び/又は
(ii)2〜12質量%の範囲の分岐を有するC16脂肪酸、及び/又は
(iii)55〜85質量%の範囲の分岐を有するC18脂肪酸、及び/又は
(iv)2〜12質量%の範囲の分岐を有するC20脂肪酸、及び/又は
(v)1〜8質量%の範囲の分岐を有するC22脂肪酸、及び/又は
(vi)0.15〜0.5:1の範囲の直鎖のC18飽和脂肪酸:直鎖のC16飽和脂肪酸の質量比、
を含むアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物。
【請求項26】
下記;
(i)3〜12質量%の範囲の直鎖のC16脂肪酸、及び/又は
(ii)0.5〜6質量%の範囲の直鎖のC18脂肪酸、
を含む、請求項25に記載のアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物。
【請求項27】
下記;
(i)170〜195mgKOH.g-1の範囲の酸価、
(ii)85〜210mgKOH.g-1の範囲のけん化価、
(iii)7g.100g-1未満の不けん化価、
(iv)6g.100g-1未満のヨウ素価、
(v)10℃未満の曇り点、及び
(vi)250ハーゼン単位未満のカラー値、
を有する、請求項25又は26に従うアルキル分岐を有するC12〜C24脂肪酸混合物。

【公表番号】特表2007−506824(P2007−506824A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527339(P2006−527339)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010634
【国際公開番号】WO2005/030693
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(500154113)ユニケマ ケミー ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【出願人】(503342708)アイシーアイ アメリカズ インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】