説明

施肥機の肥料落下口の開閉シャッタ装置

【課題】PTO軸のクラッチを入・切する制御操作と、肥料の落下口を開閉作動させる制御操作とを、一方の制御操作を行えば、他方の制御操作が、連動して同時に自動的に行われるようにする。
【解決手段】施肥機の回転作動部に、回転数検知器Kを設け、その回転数検知器Kが、回転作動部の作動に適応する所定の回転数以上の回転数を検知したときに、シャッタプレートsを開とするよう電動モータMを正転側に作動させ、所定の回転数以下の回転数を検知したときに、シャッタプレートsを閉とする逆転側に電動モータMを作動さすよう、回転数検知器により電動モータMを制御せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの車体の後部に施肥機の機体を装架し、その施肥機の肥料を収容するホッパ内に設けたアジテータと、ホッパの底部の肥料落下口の下方に設けた散布羽根とを、トラクタの出力軸から導かれる回転動力により回転させて、肥料落下口から落下する肥料を散布羽根により散布する形態の施肥機における肥料落下口を開閉する開閉装置についての改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホッパの内部に施肥機の機体をトラクタの車体に装架し、機体に装備せる肥料を攪拌するように軸支するアジテータと、前記ホッパの底部の肥料落下口の下方に、その落下口から落下する肥料を散布するように軸支する散布羽根とを、前記トラクタのPTO軸から導く回転動力により駆動する形態の施肥機は、通常、図1に示しているように、施肥機Aを支持機枠aに支架して、その支持機枠aを、トラクタTの車体の後部に設けられた三点リンク式の連結ヒッチのトップリンクt1とロアリンクt2とに連結支架して、施肥機Aを直装的にトラクタに装架し、その施肥機Aのホッパb内に設けたアジテータcの回転軸と、ホッパb底部の肥料落下口dの下方に配設した散布羽根eの回転軸とを、前記支持機枠aに支架せる減速ミッションケースf内の伝導機構に連繋し、その減速ミッションケースfの前面側に設けた前記伝導機構の入力軸gを、伝導軸を介してトラクタTのPTO軸に伝導して、このトラクタTのPTO軸により駆動させ、また、ホッパb底部の肥料落下口dには、図2にあるようシャッタプレートsの回転作動で該落下口dを開・閉する開閉シャッタ装置Sを設け、その開閉シャッタ装置Sは、シャッタプレートsに、電動モータMの作動により該シャッタプレートsを回動させる作動機構hを連繋して、電動モータMを作動させることで落下口dを開とする作動と閉とする作動とを行わせるように構成している。
【0003】
この形態の施肥機Aは、圃場に施肥する作業を行うとき、まず、トラクタTを圃場の施肥すべき範囲の端まで走行させ、そこに一たん停止して、電動モータMを作動させて肥料落下口dを開き、駆動がオフの状態に切り換え制御されているトラクタTのPTO軸をクラッチレバーの操作により駆動がオンの状態に切り換えて、PTO軸を駆動回転させ、それの回転動力を、減速ミッションケースf内の伝導機構を介して、ホッパb内のアジテータcの回転軸等の回転作動部とに伝導して回転させ、これにより、開とした肥料落下口dから落下する肥料が、圃場に散布される状態とし、この状態としたところでトラクタTを走行させて、散布すべき範囲を順次移動させることで、肥料を圃場の散布すべき範囲に対し端から順次施肥していくように施肥作業を行う。
【0004】
この施肥の作業中に、トラクタTが圃場の端に位置するようになるなどで、その場所に一時停止するようになったときは、同じ場所へ肥料が重ねて散布されることを避けるため、肥料落下口の開閉シャッタ装置Sを作動させて肥料落下口を閉じ、肥料の散布作業を一時停止する。このとき、トラクタTのPTO軸も回転停止の状態に切り換え、これにより、回転作動部の回転を停止させておく。これは、肥料落下口が閉塞された状態で、ホッパ内のアジテータを回転させてホッパ内の肥料の攪拌を行わせると、粒状に生成されている肥料が破砕されて粉状になり、散布羽根による散布飛散を不能にしてしまうからである。
【0005】
トラクタを停めて、散布作業を一時停止させた後、再びトラクタを走行させて肥料の散布作業を行うときは、作業を始める際に行った、電動モータをスイッチ操作により作動させての肥料落下口を開く作動と、回転が停止の状態に制御されているトラクタのPTO軸を、回転状態とする操作制御とを行い、これにより、施肥作業のための態勢を施肥機に準備させてから、トラクタを走行させての施肥作業を続行させるようにしている。
【0006】
この形態の施肥機には次の問題となる点がでてきている。
第1には、作業中に、散布作業を一時停止するときに行う、肥料落下口を閉の状態へ切り換える操作と、トラクタのPTO軸を駆動オフの状態へ切り換える操作とを、トラクタの操縦座席の周囲に配設してあるスイッチと操作レバーとを各別に操作することで行うことから、この切り換え操作の作業を繁雑にして、操作する人に作業負荷を大きくしている点である。
【0007】
第2には、肥料の落下口を閉とする作動と、トラクタのPTO軸を駆動オフの状態へ切り換える作動とが、各別に行われることで、これらの作動の間に、時間差があり、トラクタのPTO軸を駆動オフにする作動の操作を先にしたときは、肥料の落下口が“閉”となるまでの間、肥料の無駄な漏出が生じる。また、肥料の落下口を“閉”とする作動の操作を先にしたときは、トラクタのPTO軸の駆動をオフとするまでの間、落下口が閉じた状態でホッパ内のアジテータが攪拌作動が行われることで肥料の粉砕が生じるようになる点である。
【0008】
第3には、作業中に、散布作業を一時停止させた後、再び散布作業を開始するとき、肥料の落下口を“開”の状態とする切り換え作動の操作と、トラクタのPTO軸を駆動オンの状態とする切り換え作動の操作を、各別に行うことで、この場合にも、前述した問題が同様に生じてくる点である。
【0009】
第4には、電動モータの作動により肥料の落下口を開閉する開閉手段が、落下口の閉と落下口を開とするように構成してあって、落下口の開度の調整は、マニュアル操作で行われるようになっていることから、作業中に、肥料の散布量を調整するときは、トラクタを一時停止させて、マニュアルの開度調整操作を行うことになるので、前述の散布作業を一時停止する場合に行う落下口を開・閉に切り換える操作と、トラクタのPTO軸の駆動のオン・オフを切り換える操作との二つの操作にこの開度調整の操作が加えられることになって、作業負荷を一層大きくする点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、従来の施肥機に生じている上述の問題が、従来の施肥機では、作業中の一時停止時に行う、肥料の落下口を開閉させるためにその落下口に設けた開閉装置を開閉作動させる電動モータの制御操作と、アジテータ等の回転作動部を駆動状態と停止状態とに切り換えるためにそれらの駆動軸となっているPTO軸のクラッチを入・切する制御操作との、2つの制御操作を、各別に、かつ、順次連続させて行わなければならないことに起因して生じていることから、前述の問題を解決するために対策手段として、この2つの制御操作のうちの、一方の制御操作を行えば、他方の制御操作が、連動して同時に自動的に行われるようになるため、トラクタのPTO軸の駆動を入・切する操作を行うことで、同時に肥料の落下口を開閉させる制御操作が自動的に行われるように施肥機を構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するための手段として、
施肥機Aの機体を支持せるフレームaをトラクタTの車体に連結ヒッチを介して装架し、機体に装備せるホッパb内部に軸支せるアジテータcの回転軸等の回転作動部を、トラクタTのPTO軸に伝導機構を介し伝導して駆動せしめる施肥機Aにおいて、肥料の落下口dに付設の開閉シャッタ装置Sをを開閉作動させる電動モータMを、正逆に回転するモータとし、電動モータMの駆動回路Zには、オンに作動することで、電動モータMをシャッタプレートsが開となる側に作動する正転側に駆動せしめるリレースイッチR1と、オンに作動することで、電動モータMをシャッタプレートsが閉とする側に作動する逆転側に駆動せしめるリレースイッチR2と、を接続させて設け、回転作動部には、その回転作動部の回転数を検知する回転数検知器Kを設け、その回転数検知器Kが、回転作動部の作動に適応する所定の回転数以上の回転数を検知したときに、リレースイッチR1を働かせてシャッタプレートsを開とするよう電動モータMを正転側に作動させ、前記所定の回転数以下の回転数を検知したときに、リレースイッチR2を働かせてシャッタプレートsを閉とする逆転側に電動モータMを作動さすよう、回転数検知器により電動モータMを制御せしめて、PTO軸のクラッチの入・切操作により落下口dの開閉作動が行われるようにしたことを特徴とする施肥機の肥料落下口の開閉シャッタ装置を提起するものである。また、これに併せて、
肥料の落下口dに付設の開閉シャッタ装置Sのシャッタプレートsを開閉作動させる電動モータMは、回転量に応じたパルス量を発振する正・逆転型のパルスモータM’とし、肥料の落下口dの開度量は、その開度量とするまでシャッタプレートsを移動させる電動モータMの回転量となるパルス量として、前記電動モータMを制御するコントローラCに設定し、回転数検知器Kが、回転作動部の作動に適応する所定の回転数と同等またはその回転数以上の回転数を検知したときには、電動モータMが、シャッタプレートsを、設定した開度量となる位置まで開とする側に移動さす回転量となるパルス量分の回転作動して、落下口dを設定した開度量に開口し、前記所定の回転数以下の回転数を検知したときには、電動モータMが、シャッタプレートsを閉とする側に、設定した開度量に対応するパルス量分を回転作動して落下口dを閉とするよう、回転数検知器により電動モータMを制御せしめて、PTO軸のクラッチの入・切操作により落下口dの開閉作動が行われるようにしたことを特徴とする施肥機の肥料落下口の開閉シャッタ装置を提起するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明手段は、肥料の落下口の開閉を、トラクタのPTO軸の回転数に応じて自動的に行わすようにしているのだから、肥料の落下口の開閉操作を単独で行う必要がなく、トラクタのPTO軸の駆動の入切操作で、同時に肥料落下口の開閉操作が行えるようになり、トラクタのPTO軸の入り切りと肥料落下口の開閉操作を簡略にでき、作業負荷を軽減する。また、PTO軸の入切操作と肥料落下口の開閉操作とを、時間差がない状態で行えるので肥料の無駄な漏れを軽減する。さらに、不要な肥料攪拌の時間がなくなるので、肥料の粉砕や作業動力を軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転作動部を、トラクタのPTO軸からの伝導動力で駆動する形態の施肥機の、トラクタの後部に連結装架した状態の側面図である。
【図2】同上の施肥機の縦断側面図である。
【図3】本発明手段を実施せる施肥機の、縦断側面図である。
【図4】同上施肥機の肥料落下口に設けた開閉シャッタ装置部の平面図である。
【図5】同上の肥料落下口の開閉シャッタ装置の分解した斜視図である。
【図6】同上の開閉シャッタ装置の電動モータの駆動回路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の態様を、実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0015】
図3は、本発明手段を実施せる施肥機の、縦断側面図を示す。施肥機Aは、図3においては、トラクタを省略して、施肥機Aだけを示しているが、施肥機Aを支持せしめた支持機枠aを、トラクタの車体に連結ヒッチを介し装架して、施肥機Aに装備せるホッパb内部に軸支せるアジテータcの回転軸などの回転作動部を、トラクタのPTO軸に伝導機構を介し伝導して駆動せしめる形態の施肥機である。また、この実施例においては、回転する散布羽根eを有する形式の施肥機を例示しているが散布羽根eを持たないライムソーワの形式の施肥機も含む。
【0016】
施肥機Aを支持して、トラクタTの車体の後部に設けられているトップリンクヒッチ及びロアリンクヒッチ等の連結ヒッチに対して連結して装架せしめるための支持機枠aは、同図3において、一点鎖線において輪郭だけを示し、また、肥料が投入されるホッパbは、上半側を省略して下半側だけを示している。
【0017】
ホッパb内部に軸支せるアジテータcは、ホッパbの中心部位に配位した縦方向の軸10の周面から突出するステー11に支持されて、その軸10の回転によりホッパbの円錐状に形成された下部側の傾斜壁の内面に沿い回動するスクレパー状に形成してあり、回転軸となるその軸10の下端側は、支持機枠aに支架せる減速ミッションケースfの上面側に軸支した出力軸20に連結してあって、減速ミッションケースfの前端側に設けた入力軸gに、トラクタTのPTO軸から回転動力が伝導されることで、減速ミッションケースf内に収蔵せる伝導機構を介し出力軸20が駆動回転することにより、図3において太線の矢印で示している方向に旋回して、肥料ホッパb内の肥料を攪拌するよう作動する。
【0018】
ホッパb底部の肥料の落下口dの下方に軸支せる散布羽根eは、前記減速ミッションケースfの上面側に突出させた出力軸20に、回転中心となるボス部30を嵌挿した状態としてケースfの上面側に載架し、そのボス部30を前記出力軸20に嵌着することで、前述のアジテータcと同様に、PTO軸から伝導される回転動力により駆動されて回転し、ホッパb底部に開設した肥料の落下口dから落下してくる肥料を上面側に受け止め、回転により振り出して散布するように作動する。
【0019】
ホッパbの底部に設けられる肥料の落下口dは、図4にあるように、ホッパbの底部の底板40の左右(図において上下)の両側部位で、前方(図において右方)に偏る部位に、左右に対称するよう配位して形設してある開口41と、この底板40の下面側に摺接するように設けられるシャッタプレートsに開設した調節穴50とが、重合することで形成されている。
【0020】
各落下口dの下面側には、図5に示しているように、底板40に対称させて設けた2つの開口41のうちの一方の開口41に重合させる調節穴50を設けたシャッタプレートsと、他方の開口41に重合させる調節穴50を設けたシャッタプレートsとが、それぞれホッパbの底板40の下面に摺接して回動するように2枚重ねの積層状態に配設され、これらシャッタプレートsが、電動モータMにより駆動される作動機構hを介し回動することで、シャッタプレートsに設けた調節穴50と底板40に設けた開口41との重合度を変更することにより落下口dの開度が調節され、また、重合度を零にすることで全閉状態となり、そっくり重合することで全開状態となるようにしてある。
【0021】
底板40に設けた2つの開口41・41に対し、それぞれの調節穴50を対向させるよう床板40下面に積層重合状態に配設している2枚のシャッタプレートs・sは、それぞれ図5に示しているように、ホッパbの底板40に設けた中心穴42に嵌挿される軸受ブッシュ43の外周に対して、嵌合していく中心円51を設けた円板状に形成してあって、それぞれ、前記軸受ブッシュ43に回転自在に嵌合し、軸受ブッシュ43に下方から嵌装する座金52、止め輪53により組み付け保持され、そして、これら2枚のシャッタプレートsには、それらの各周縁部の一部で、対称する部位に放射方向に突出させた作動片s’が設けられ、これらに連結ロッド60がそれぞれ連結し、それら連結ロッド60に、電動モータMにより作動する作動機構hが連繋してあって、この作動機構hの作動により、左右の連結ロッド60が同調して前後に動くことで、2枚のシャッタプレートsがそれぞれ逆向きに同じ角度量回動して、それらプレートsに設けてある調節穴50と、底板40の開口41との重合度を変更させて、2つの肥料の落下口dが同期して開閉作動するようにしてある。
【0022】
作動機構hは、上端部が、前述の左右の連結ロッド60の各後端部に連結し、下端側が、支持機枠aに軸架せる支軸61に回転自在に嵌装せるリンクスリーブ62に一体的に連結して、支軸61中心に前後に回動する左右のリンクアーム63・63と、
基端側が、前記左右のリンクアーム63・63のうちの一方のリンクアーム63に長穴64と連繋ピン65を介して連繋し、中間部が、前記支軸61に平行させて支持機枠aに装架せる支軸66に軸支され、先端側が、扇形のギヤプレート67aに形成してあって、そのギヤプレート67aの回動により下端側が前後に回動する作動アーム67と、
支持機枠aに組み付け支架した取付台a’に支持せしめた減速機68の出力軸に取り付けられて前述のギヤプレート67aの周縁の扇形のギヤ部Gに噛み合って回転する小ギヤ69と、
この小ギヤ69を駆動回転させるよう前記取付台a’に装架して前記減速機68の入力軸に出力軸を連繋せしめた電動モータMと、からなる。
【0023】
そして、モータMが、正転側に回転することで、小ギヤ69が図5において左回りに回転すると、ギヤプレート67aのギヤ部Gが下方に送り出されて、作動アーム67が支軸66中心に前方に回動し、連繋ピン65と長穴64を介して連繋するリンクアーム63を前方に回動させて連結ロッド60を前方に押し出し、下層側のシャッタプレートsを右回りに回転させて、それに開設している調節穴50を、それの先端側が、底板40の左側に開設してある左方の開口41と上下に重合し尾端側が底板40の右側に開設している右方の開口41と重合する状態とする。
【0024】
また、一方のリンクアーム63の回動で、リンクスリーブ62を介し他方のリンクアーム63が同調して前方に回動し、右方の連結ロッド60を前方に押し出し、上層側のシャッタプレートsを左回りに回転させ、該プレートsに開設してある調節穴50を、それの先端側が、ホッパ底板40の右側に形設してある右方の開口41の下方に重合するよう位置し、尾端側が底板40の左側に開設してある左方の開口41の下方に重合するように位置する状態とする。そして、これにより、座板40に設けた開口41とシャッタプレートsに設けた調節穴50とにより形成される2つの落下口d・dを同時に開口させた状態とする。
【0025】
また、電動モータMが逆転側に回転すると、小ギヤ69が右回りに回転して、ギヤプレート67aの扇形のギヤ部Gを上方に送り上げて、左右の作動アーム67・67を、引き戻すよう後方に回動させ、左右の連結ロッド60を手前に引き寄せ、上下に重なる2枚のシャッタプレートsを、右側のプレートsにあっては右回りに、左側のプレートsにあっては左回りに回転させ、それらに設けてある調節穴50が、図5において、実線で示している状態位置を占め、座板40の右方の開口41を上層側のシャッタプレートsのプレート部で塞ぎ、左方の開口41を下層側のシャッタプレートsのプレート部で塞ぐ状態とし、左右の落下口d・dを同時に閉とした状態とするようにしてある。
【0026】
このようにシャッタプレートを開閉さす開閉シャッタ装置Sを駆動する作動機構hを作動させる電動モータMは、この例においては、正逆転型の電動モータとしてあり、かつ、開閉シャッタ装置の駆動手段となるこの電動モータMのオン・オフ制御が、トラクタTのPTO軸の駆動をオン・オフするクラッチの入・切の作動に連動して行われるようにしている。
【0027】
電動モータMは、それに電流を導くコードが、ハーネスHにより、トラクタTの車体に装架したコントローラCに接続し、トラクタTの車体に装架してあるバッテリーBからコードを経て導かれる電流を、コントローラCに組み込まれている制御回路により制御して、駆動回路Zをコントロールすることにより回転作動するようにしてある。そして、そのコントローラCに組み込まれている駆動回路Zには、オンに作動することで、電動モータMを、シャッタプレートsが落下口dを開とする側に作動していくようにする回転方向である正転側に駆動せしめるリレースイッチR1と、オンに作動することで、電動モータMを、シャッタプレートsが落下口dを閉とする側に作動していくようにする回転方向である逆転側に駆動せしめるリレースイッチR2と、が接続させて設けてあり、また、施肥機Aの回転作動部である散布羽根eの下面側の部位には、その散布羽根eの回転数を検出する回転センサk1と、検出した回転数を発信する回転センサk2と、よりなる回転数検知器Kを設けて、この回転数検知器Kを、コントローラCにハーネスHによりコントローラCに接続し、検出した回転数の信号をコントローラC内に組み込まれているマイコン(マイクロコンピュータ)に送信し、その回転数が、散布羽根eが所定の散布作用を果たすのに充分な回転数を基準として、この回転数以下の、所定の散布作用を果たし得ない低い回転数となったときに、前記マイコンによる処理により、駆動回路Zに設けたリレースイッチR2に、それをオンに作動させる信号を送り、そのスイッチR2のオン作動で、電動モータMを逆転側に回転させてシャッタプレートsを閉側に作動させて落下口dを閉じさせ、また、回転数検知器Kが前記所定回転数またはそれ以上の回転数を検出したときには、マイコン処理により駆動回路Zに設けたリレースイッチR1にそれをオンに作動させる信号を送り、電動モータMを、正回転側に回転させて、シャッタプレートsを開側に作動させて落下口dを開口させるようにしてあって、これにより、トラクタTのPTO軸のクラッチを切りとする操作を行って、PTO軸に対する動力の伝導を遮断すると、それにより施肥機の回転作動部である散布羽根eの回転数が低下してくることにより、落下口dのシャッタプレートsが閉側に作動して落下口dを閉じ、また、PTO軸のクラッチを入りとする操作を行うと、それにより施肥機の回転作動部である散布羽根eの回転数が所定の回転数に上昇してくることにより、シャッタプレートsが開側に作動して落下口dを開口するようになって、PTO軸の駆動をオン・オフする作動に連動してシャッタプレートsの開・閉作動が行われる。
【0028】
このように、シャッタプレートsが、PTO軸の入り切り作動に連動して落下口dの開閉作動を行うとき、シャッタプレートsを作動させる電動モータMは、シャッタプレートsが、落下口dを閉とする状態位置及び開とする状態位置の、回動作動のエンドとなる位置まで回動してきて、その回動作動のエンドを規制するように設けられる規制部材(図示省略)に衝合して回動作動をストップさせたときに、その規制部材に付設の発信装置から発信する信号により駆動回路Zがオフに制御されることで、駆動が遮断されるようにしてあり、これにより、シャッタプレートsは、落下口dを開口した状態位置と閉塞した状態位置にそれぞれ保持固定されるようになる。
【実施例2】
【0029】
この例は、基本的な構成態様については、前述の実施例1と変わりがなく、同様の構成となっているもので、落下口dの開閉作動が、PTO軸を入り・切りする操作に連動して行われるようにしているものであって、電動モータMによる作動機構hの作動により、シャッタプレートsに開閉作動を行わせることで落下口dを開閉させるようにしているものであるが、開口させたときに落下口dの開度が、所望の開度量に設定でき、かつ、所望の開度量に変更・調節できるようにしている例である。
【0030】
この例においては、電動モータMは、回転量に応じたパルス量を発振する正逆転型のパルスモータとしてある。
【0031】
そして、電動モータMの作動により、作動機構hを、小ギヤ69→扇形のギヤ部G→作動アーム67→リンクアーム63→連結ロッド60の順に作動させてシャッタプレートsを回動させ、そのプレートsに設けてある調節穴50と底板40に設けてある落下口dとの重合度を変更することで、行う落下口dの開閉作動において、シャッタプレートsを開とする側に回動させて落下口dを開口させたときの、その落下口dの開度面積である開度量(開口度)は、その開度量とするまでシャッタプレートsを回動させた電動モータMの回転量に対応することから、この電動モータMの回転量となるパルス量として算定し、これを、電動モータMを制御させるコントローラCに設定してある。
【0032】
これにより、電動モータMが、それの駆動回路ZのリレースイッチR1のオン作動により、シャッタプレートsを開側に回動させるよう作動したときには、このコントローラCに設定したパルス量だけ電動モータMを回転して、落下口dを、規定した開度量まで開口させるようになり、落下口dを閉とするときには、電動モータMが前記パルス量だけ逆に回転して、シャッタプレートsを全閉の状態位置まで回動させる。
【0033】
このコントローラCに設定しておくパルス量は、図3にあるように、コントローラCの器体7に設けた表示器70に、デジタル数字で表示されるようにしてある。そして、このパルス量は、器体7に設けた開度調整スイッチ71の操作により、任意に変更調節し得るようにしてある。
【0034】
この開度調整スイッチ71を操作して、設定するパルス量を変更すれば、変更して設定したパルス量に対応する回転量だけ電動モータMが回転するようになって、落下口dを開としたときの開度を変更させるようになる。
【0035】
この開度調整スイッチ71によりパルス量を変更する操作作動は、PTO軸の“入り”“切り”の操作に係わりなく、PTO軸が駆動されている施肥作業中においても行えるようにしてある。
【0036】
作業中に、開度調整スイッチ71を操作して、設定してあったパルス量を増大または減少させようと変更したときは、コントローラC内にセットしてあるマイコンによる制御処理により、電動モータMが、設定してあったパルス量と変更したパルス量との差分のパルス量に対応する回転量だけ、正転側または逆転側に回転作動して、変更した開度とするようにしてある。
【0037】
72は電源の入切を操作するようコントローラCの器体7に組み付けた電源スイッチ、73はPTO軸を入切操作したときに、開閉シャッタ装置Sが連動して作動する状態と、開閉シャッタ装置Sは連動せず、PTO軸の入切だけが単独で行われる状態とに切り換えできるようコントローラCに設けた連動切換スイッチ、74は、連動切換スイッチ73の操作により、PTO軸を非連動の状態としたときに、開閉シャッタ装置Sを単独で作動させるよう設けたシャッタ開閉スイッチである。
【0038】
これらスイッチは、図6の回路説明図により説明すれば、次のように作用する。電源スイッチ72を入れると、電源投入リレー80が開き、回路用電源回路81に電気が流れ、マイクロコントローラ82に電源が流れる。同時にマイクロコントローラ82からリレー駆動回路83に信号が入り、リレーが働き電源投入リレー80は、入りのままで「電源入り状態」に保持される。
【0039】
開度調整スイッチ71で開度設定して、シャッタ開閉スイッチ74を開にすると、電動モータMからのパルスがエンコーダフィルター84で整理されマイクロコントローラ82内でカウンタによりカウントされ設定された開度と同等なパルス数になるまで、リレー駆動回路83へ信号がながれ、駆動回路ZのリレースイッチR1をオンに作動させてモータMを回転させ、落下口dを開く。
【0040】
連動切換スイッチ73の操作でPTO連動をOFFとしてあれば、上記の動きでシャッタsは開いたままですが、PTO連動がONならば、回転センサ(回転数検知器)Kが設定回転数以上を検出していれば、落下口dは開いたままであるが、回転センサKが設定回転数以下を検出すれば、原点復帰(=シャッタ閉)作動に移行する。
【0041】
作業がおわり、シャッタ開閉スイッチ74を閉にしたとき、またはPTO連動がONで回転センサKが設定回転数以下を検出すれば、モータMは原点復帰(=シャッタ閉)処理をする。
【0042】
原点復帰処理は次の様に行われる。まず、モータMは、逆回転(シャッタ閉じる方向)に動きます。ある短時間内にモータMからのパルス変化がなくなる(=大ギヤプレートが0点位置にあたり、モータが逆転しなくなる状態)(=シャッタ閉じる)まで動く。パルス変化がなくなったらモータMは停止する。
【符号の説明】
【0043】
A 施肥機
B バッテリー
C コントローラ
H ハーネス
G ギヤ部
K 回転数検知器
M 電動モータ
M’ パルスモータ
R1 R2 リレースイッチ
S 開閉シャッタ装置
T トラクタ
Z 駆動回路
a 支持機枠
a’ 取付台
b ホッパ
c アジテータ
d 肥料落下口
e 散布羽根
f 減速ミッションケース
g 入力軸
h 作動機構
k1 k2 回転センサ
s シャッタプレート
s’ 作動片
t1 トップリンク
t2 ロアリンク
10 軸
11 ステー
20 出力軸
30 ボス部
40 底板
41 開口
42 中心穴
43 軸受ブッシュ
50 調節穴
51 中心円
52 座金
53 止め輪
60 連結ロッド
61 支軸
62 リンクスリーブ
63 リンクアーム
64 長穴
65 連繋ピン
66 支軸
67 作動アーム
67a ギヤプレート
68 減速機
69 小ギヤ
7 器体
70 表示器
71 開度調整スイッチ
72 電源スイッチ
73 連動切換スイッチ
74 シャッタ開閉スイッチ
80 電源投入リレー
81 回路用電源回路
82 マイクロコントローラ
83 リレー駆動回路
84 エンコーダフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥機(A)の機体を支持せるフレーム(a)をトラクタ(T)の車体に連結ヒッチを介して装架し、機体に装備せるホッパ(b)内部に軸支せるアジテータ(c)の回転軸等の回転作動部を、トラクタ(T)のPTO軸に伝導機構を介し伝導して駆動せしめる施肥機(A)において、肥料の落下口(d)に付設の開閉シャッタ装置(S)を開閉作動させる電動モータ(M)を、正逆に回転するモータとし、電動モータ(M)の駆動回路(Z)には、オンに作動することで、電動モータ(M)をシャッタプレート(s)が開となる側に作動する正転側に駆動せしめるリレースイッチ(R1)と、オンに作動することで、電動モータ(M)をシャッタプレート(s)が閉とする側に作動する逆転側に駆動せしめるリレースイッチ(R2)と、を接続させて設け、回転作動部には、その回転作動部の回転数を検知する回転数検知器(K)を設け、その回転数検知器(K)が、回転作動部の作動に適応する所定の回転数以上の回転数を検知したときに、リレースイッチ(R1)を働かせてシャッタプレート(s)を開とするよう電動モータ(M)を正転側に作動させ、前記所定の回転数以下の回転数を検知したときに、リレースイッチ(R2)を働かせてシャッタプレート(s)を閉とする逆転側に電動モータ(M)を作動さすよう、回転数検知器により電動モータ(M)を制御せしめて、PTO軸のクラッチの入・切操作により落下口(d)の開閉作動が行われるようにしたことを特徴とする施肥機の肥料落下口の開閉シャッタ装置。
【請求項2】
肥料の落下口(d)に付設の開閉シャッタ装置(S)のシャッタプレート(s)を開閉作動させる電動モータ(M)は、回転量に応じたパルス量を発振する正・逆転型のパルスモータ(M’)とし、肥料の落下口(d)の開度量は、その開度量とするまでシャッタプレート(s)を移動させる電動モータ(M)の回転量となるパルス量として、前記電動モータ(M)を制御するコントローラ(C)に設定し、回転数検知器(K)が、回転作動部の作動に適応する所定の回転数と同等またはその回転数以上の回転数を検知したときには、電動モータ(M)が、シャッタプレート(s)を、設定した開度量となる位置まで開とする側に移動さす回転量となるパルス量分回転作動させて、落下口(d)を設定した開度量に開口し、前記所定の回転数以下の回転数を検知したときには、電動モータ(M)が、シャッタプレート(s)を閉とする側に、設定した開度量に対応するパルス量分回転作動させて落下口(d)を閉とするよう、回転数検知器により電動モータ(M)を制御せしめて、PTO軸のクラッチの入・切操作により落下口(d)の開閉作動が行われるようにしたことを特徴とする請求項1記載の施肥機の肥料落下口の開閉シャッタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−78376(P2011−78376A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234922(P2009−234922)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000132909)株式会社タカキタ (34)
【Fターム(参考)】