説明

旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置

【課題】 伸縮ブーム8が微小旋回角に設定されたブーム格納位置Bf,Brに旋回したことを分割リング式の回転位置検出手段を用いて検出可能にする。
【解決手段】
所定幅Sの絶縁区間s1,s3を挟んで複数の導電体T1,T2・・を配設した導電リング部材18と、導電リング部材18に摺動自在に接触しつつ伸縮ブーム8の旋回動に連動して回転する接触子19とを備えた旋回位置検出手段と、旋回位置検出手段からの検出信号L1,L2・・を受けてブーム格納位置検出信号LBf,LBrを出力する信号出力手段20とで構成され、接触子19の接触幅Saを導電リング部材18の絶縁区間s1,s3の幅Sより僅かに広く設定すると共に、絶縁区間s1,s3の位置をブーム格納位置Bf,Brに対応した位置に設定し、信号出力手段20は接触子19が導電リング部材18の絶縁区間s1,s3を挟んだ両側の導電体T1,T4に同時に接触した時にブーム格納位置検出信号LBf,LBrを出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮ブームを微小旋回角に設定したブーム格納位置に旋回させて格納するようにした旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮ブームを微小旋回角に設定したブーム格納位置に旋回させて格納するようにした旋回式作業機の一例として、図4に示す如きトラック1の運転室2後方位置(運転室2と荷台3間の車輌フレーム上)に小型のクレーン装置を架装した車載式クレーンAがある。当該車載式クレーンAは、トラック1の左右に張出して設置する一対のジャッキ装置4,4を備えた基台5と、当該基台5上に旋回自在に搭載した旋回ポスト6、当該旋回ポスト6の上部に起伏自在に枢支され起伏シリンダ7によって起伏駆動される伸縮ブーム8、旋回ポスト6あるいは伸縮ブーム8の基端部に取付けたウインチ装置9から引出したワイヤーロープ10によってブーム先端部8aから吊下げたフックブロック11とで構成している。
【0003】
そして、このように構成した車載式クレーンAは、一対のジャッキ装置4,4を設置してクレーンを安定支承した状態でフックブロック11に荷物を吊下げ、伸縮ブーム8を旋回駆動すると共に、伸縮ブーム8を起伏・伸縮駆動、並びにウインチ装置9を巻上げ巻下げ駆動してフックブロック11を目的とする位置まで移動させ、クレーン作業を行うようになっている。
【0004】
また、クレーン作業が終了して車載式クレーンAを格納する場合には、まず伸縮ブーム8をトラック前方Bfあるいは後方Brに設定したブーム格納位置に旋回させ、次に伸縮ブーム8を最縮小並びに最倒伏させると共に、フックブロック11をブーム先端部8aに当接したフック格納状態に巻上げて格納するようになっている(図4実線図示状態)。
【0005】
そして、この種の車載式クレーンAにおいて伸縮ブーム8を格納するためのブーム格納位置は、通常トラック1が走行移動する際の走行視認性を良くするためトラック1の前方あるいは後方の微小旋回角(通常、1〜2°)に設定されている。このため、作業者が手動操作により伸縮ブーム8を正確にブーム格納位置に停止させることは難しく、伸縮ブーム8がブーム格納位置に旋回したことを検出して表示等を行うブーム格納位置検出装置が望まれていた。
【0006】
また、この種の車載式クレーンAは、伸縮ブーム8の旋回方向(例えば、トラック1の前方に旋回した場合と後方に旋回した場合)によって作業性能が大きく変化するようになっている。このため、車載式クレーンAには、伸縮ブーム8の旋回領域(例えば、トラック前方に旋回した前方領域と後方に旋回した後方領域)毎にその旋回領域で伸縮ブーム先端部に吊下げ可能な許容吊上荷重Wmaxを設定しておき、伸縮ブーム先端部に吊下げた荷物の重量Wと、伸縮ブーム8の旋回領域に対応して求めた許容吊上荷重Wmaxとを比較し、前者の値Wが後者の値Wmaxを超え時にクレーンが転倒(あるいは損傷)する恐れのある作業状態であるとして警報やクレーンの作動を停止させる安全装置を装備したものが開発されていた。そして、この安全装置を装備した車載式クレーンAにおいては、旋回領域毎の許容吊上荷重Wmaxを求めるために、伸縮ブーム8が旋回した旋回領域を検出する検出手段が設けられていた。
【0007】
しかしながら、作業機の旋回位置検出装置として従来から一般的に用いられているカムとスイッチを用いたスイッチ式の旋回位置検出手段や、複数の旋回領域を検出可能な分割導電リング式の旋回位置検出手段(例えば、特許文献1参照)は、カムや導電リングの検出幅を1〜2°の微小角に設定することが機構上難しいという問題があった。そこで、近年1個のカムと当該カムの検出幅だけ離間配置した2個のスイッチを用いて微小旋回角の検出を可能にした旋回位置検出手段が開発され、使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭60−12496号公報
【特許文献2】特開2001−233588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された旋回位置検出手段は、前述した如く導電リングの検出幅を1〜2°の微小旋回角が検出可能な幅にすることが難しく、また特許文献2に記載された旋回位置検出手段は、高価なスイッチを2個使用する必要があるため装置が高価になる他、スイッチ相互の位置調節が難しく多くの調整工数を必要とするという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなしたものであり、微小旋回角に設定したブーム格納位置を検出可能なものでありながら、従来の旋回位置検出手段に比して安価に提供可能なブーム旋回位置検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、次の如き構成を有している。
【0011】
すなわち、本発明の請求項1における旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置は、伸縮ブームが微小旋回角に設定されたブーム格納位置に旋回したことを検出する旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置であって、
所定幅の絶縁区間を挟んで複数の導電体を配設した導電リング部材と、当該導電リング部材に摺動自在に接触しつつ伸縮ブームの旋回動に連動して回転する単一の接触子とを備えた旋回位置検出手段と、当該旋回位置検出手段からの検出信号を受けてブーム格納位置検出信号を出力する信号出力手段とで構成され、前記接触子の接触幅を導電リング部材の絶縁区間の幅より僅かに広く設定すると共に、当該絶縁区間の位置を前記ブーム格納位置に対応した位置に設定し、前記信号出力手段を接触子が絶縁区間を挟んだ両側の導電体に同時に接触した旋回位置検出手段の検出信号を受けてブーム格納位置検出信号を出力するよう構成している。
【0012】
このように構成したブーム旋回位置検出装置によれば、旋回位置検出手段における接触子の接触幅を導電リング部材の絶縁区間の幅より僅かに広く設定したので、接触子が絶縁区間上に旋回すれば当該接触子が絶縁区間を挟んだ両側の導電体に同時に接触して旋回位置検出手段から両導電体に接触した検出信号が出力されるのである。そして、この検出信号を受けた信号出力手段は、ブーム格納位置検出信号を出力して作業者に伸縮ブームがブーム格納位置に旋回したことを知らしめることができるのである。
【0013】
そして、このブーム旋回位置検出装置は、接触子が絶縁区間を挟んだ両側の導電体に同時に接触した検出信号を受けてブーム格納位置検出信号を出力するようになっているので、導電体や絶縁区間の幅に影響されることなく、接触子と絶縁区間の幅差に基づき微小角を検出することが可能になるのである。
【0014】
また、このブーム旋回位置検出装置は、この種の旋回式作業機に標準的に装備されている電気回転継ぎ手、すなわち下部基台と上部旋回ポスト間で旋回を許容しつつ電気信号を送受する電気回転継ぎ手の導電リング部材を、複数の角度検出用導電体を備えた導電リング部材に変更することで容易に改造することが可能であり、このように構成することにより比較的安価に提供することが可能になるのである。
【0015】
また、このブーム旋回位置検出装置は、接触子と絶縁区間の幅差に基づき微小角を検出するようになっているので、接触子と絶縁区間の幅を設計的に適切な値に設定すれば、作業機個々に検出位置の調整を行う必要がなくなり、調整工数の大幅な削減が可能になるのである。
【0016】
また、請求項2におけるブーム旋回位置検出装置は、導電リング部材の絶縁区間を挟んだ両側の導電体の検出幅を作業機の作業領域幅に対応した幅に設定すると共に、信号出力手段を接触子が何れか一つの導電体に接触した旋回位置検出手段の検出信号を受けて旋回領域検出信号を出力するよう構成している。
【0017】
このように構成したことにより、接触子が旋回して導電体に接触すれば、旋回位置検出手段から対応する導電体に接触した検出信号が出力され、これを受けた信号出力手段は旋回領域検出信号を出力するようになっている。そして、この旋回領域検出信号は、例えば作業機の安全装置に出力して許容吊上荷重Wmaxを算出するための旋回領域の切換信号として利用することが可能になるのである。そして、このように構成した場合には、微小旋回角のブーム格納位置と安全装置における作業領域を一つの旋回位置検出装置で検出することが可能になり、検出装置のコンパクト化と低コスト化が図れるのである。
【発明の効果】
【0018】
以上の如く構成した本発明のブーム旋回位置検出装置によれば、微小旋回角に設定されたブーム格納位置を、この種の旋回式作業機に標準的に装備されている電気回転継ぎ手の一部構成(導電リング部材と接触子の構成)を変更することで比較的安価に製作することが可能になるのである。また、微小旋回角を接触子と絶縁区間の幅差で検出するようになっているので、両部材の幅差を設計的に適切な値に設定すれば作業機毎に調整する必要がなくなり、調整工数の大幅な削減が可能になるのである。また、同時に安全装置の作業性能切換領域を検出可能にした場合には、検出装置のコンパクト化と低コスト化が図れるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、4分割構造の導電リング部材を用いて伸縮ブーム8がトラック1の前方と後方の2位置に設定した微小旋回角のブーム格納位置に旋回したブーム格納位置検出信号と、安全装置における作業機の作業性能を切換えるための切換信号として使用する旋回領域検出信号を出力可能にしたブーム旋回位置検出装置を例に、図1〜図4に基づき説明する。
【0020】
なお、以下の説明では、ブーム旋回位置検出装置の構成を中心に説明するものとし、背景技術の説明の中で用いたA,Bf,Br及び1〜11の各符号は、以下の説明でも同義のものとして援用して用いるものとする。
【実施例1】
【0021】
Aは、トラック1の運転室2後方位置(運転室2と荷台3間の車輌フレーム上)に架装した車載式クレーンである。当該車載式クレーンAは、トラック1の左右に張出して設置する一対のジャッキ装置4,4を備えた基台5と、当該基台5上に旋回自在に搭載した旋回ポスト6、当該旋回ポスト6の上部に起伏自在に枢支され起伏シリンダ7によって起伏駆動される伸縮ブーム8、旋回ポスト6あるいは伸縮ブーム8の基端部に取付けたウインチ装置9から引出したワイヤーロープ10によってブーム先端部8aから吊下げたフックブロック11とで構成している。
【0022】
このように構成した車載式クレーンAは、一対のジャッキ装置4,4を設置してクレーンを安定支承した状態でフックブロック11に荷物を吊下げ、伸縮ブーム8を旋回駆動すると共に、伸縮ブーム8を起伏・伸縮駆動し、更にウインチ装置9を巻上げ巻下げ駆動してフックブロック11に吊下げた荷物を目的とする位置まで移動させ、クレーン作業を行うようになっている。
【0023】
また、クレーン作業が終了すれば、まず伸縮ブーム8をトラック前方あるいは後方に設定したブーム格納位置、すなわち前方格納位置Bfあるいは後方格納位置Brの何れか一方に旋回させた後に、伸縮ブーム8を最倒伏状態に倒伏並びに最縮小状態に縮小させ、フックブロック11をブーム先端部8aに当接したフック格納状態に巻上げて格納するようになっている(図4実線図示状態)。
【0024】
車載式クレーンAのブーム格納位置は、通常トラック1の正面に設定した前方格納位置Bf(図4実線図示状態)と、荷台3上に設定した後方格納位置Br(同図一点鎖線図示状態)の2位置に設定されており、その格納幅はトラック1が走行する際の走行視界を確保するため通常1〜2°の微小角に設定されている。なお、伸縮ブーム8の格納位置は、車輌登録時の格納姿勢に格納するのを原則とするが、トラック1の荷台積載状態に応じて両格納位置Bf,Brを使い分けて格納することも可能になっている。また、車載式クレーンAを大型の荷箱付きトラックに架装した場合等には、前方格納位置Bfのみを設定するようになっている。
【0025】
図2において、12は基台5と旋回ポスト6間に介装された電気信号送受用の電気回転継ぎ手である。当該電気回転継ぎ手12は、この種の車載式クレーンAに標準的に装備されている電気回転継ぎ手と同様な構成であり、複数本の導電リング13a,13b,13c・・・を同心円状に配設したリング装着部材14と、当該リング装着部材14を回転自在に内装すると共に前記導電リング13a,13b,13c・・・に摺動自在に接触して電気信号の送受を行う接触子15a,15b,15c・・・を備えたケース本体16とで構成されている。当該電気回転継ぎ手12のリング装着部材14は、基台5側の旋回中心にボルト等によって固定的に取付けられている。また、ケース本体16は伸縮ブーム8の旋回動に連動して回転可能となるよう旋回ポスト6に係止具(図示せず)で取付けられている。これにより、旋回ポスト6が伸縮ブーム8と共に旋回すれば、基台5側に固定されたリング装着部材14に対し、旋回ポスト6に係止されているケース本体16が相対的に回転し、接触子15a,15b,15c・・・が導電リング13a,13b,13c・・・上を摺動して、基台5と旋回ポスト6間で電気信号の送受が行われるようになっている。なお、当該電気回転継ぎ手12は、基台5と旋回ポスト6間に作業機駆動用の作動油を給排する油圧回転継ぎ手(図示せず)が設けられているものにおいては、当該油圧回転継ぎ手に一体的に組み込んで構成することも可能である。また、ケース本体16を基台5側に、リング装着部材14を旋回ポスト6側に取付けて構成してもよい。
【0026】
17は、上記電気回転継ぎ手12における最外側の導電リング13aの外側位置に設けた旋回位置検出手段である。当該旋回位置検出手段17は、図2に示す如く電気回転継ぎ手12のリング装着部材14の最外側部14aに前記導電リング13a と同心状に配設された4分割構造の導電リング部材18と、当該導電リング部材18に摺動自在に接触して電気信号を送受するケース本体16に取付けられた接触子19とで構成されている。当該導電リング部材18は、所定幅Sの絶縁区間s1,s2・・を挟んでリング状に列設した4分割構造の導電体(前方右側に位置する右前方リングT1と、後方右側に位置する右後方リングT2、後方左側に位置する左後方リングT3、前方左側に位置する左前方リングT4)で構成している。また、前後に位置する絶縁区間s1,s3は、夫々前方格納位置Bfと後方格納位置Brに対応した位置に設けられており、その絶縁幅は接触子19の磨耗粉によりブリッジが生じない程度に狭く設定されている。また、接触子19はケース本体16に接地されると共に、各導電体T1,T2・・の検出信号L1,L2・・は信号線を介して後述する信号出力手段20に出力されるようになっている。
【0027】
接触子19は、一定の接触幅を有するカーボンブラシ等が用いられており、その接触幅Saは前後のブーム格納位置Bf,Brに対応した絶縁区間s1,s3の幅Sより広く設定(その幅差Sa−Sで、ブーム格納位置への旋回を検出している)されている。これにより、接触子19が4分割された各導電体T1,T2・・上に旋回した時には、従来の旋回位置検出手段と同様に接触子19が接触した導電体T1,T2・・に対応した検出信号L1,L2・・が信号出力手段20に出力されるようになっている。また、接触子19がブーム格納位置Bf,Brに対応した絶縁区間s1,s3上に旋回した時には、当該絶縁区間s1,s3を跨いで両側に位置する導電体、すなわち絶縁区間s1上に旋回した場合にはその両側の右前方リングT1と左前方リングT4に、また絶縁区間s3上に旋回した場合にはその両側の右後方リングT2と左後方リングT3に同時に接触し、対応する検出信号L1とL4、L2とL3が同時に信号出力手段20に出力されるようになっている(図1参照)。
【0028】
なお、この実施形態では、導電リング部材18の分割角度、すなわち各導電体T1,T2・・の検出領域角を略90°(略4等分)に設定した例について説明したが、この検出領域角は作業機の吊上性能に応じて、例えば前方作業時における領域角が後方作業時における領域角より小さい場合等には、夫々の領域角に対応した検出領域角になるよう設定すればよい。また、分割数も4分割に限定されるものでなく、必要に応じて分割数(例えば、6分割等)を変更することも可能である。
【0029】
信号出力手段20は、旋回位置検出手段12からの各検出信号L1,L2・・を受けて次の如く前後の格納位置検出信号LBf,LBrと、前後の旋回領域検出信号Lf,Lrを出力するようになっている。すなわち、当該信号出力手段20は、図1に示す如く旋回位置検出手段12からの各検出信号L1,L2・・を受けて、前方格納位置Bfに対応した絶縁区間s1の両側に位置する導電体T1,T4から同時に検出信号L1,L4が入力された時には前方格納位置検出信号LBfを出力し、後方格納位置Brに対応した絶縁区間s3の両側に位置する導電体T2,T3ら同時に検出信号L2,L3が入力された時には後方格納位置検出信号LBrを出力するようになっている。また、作業機の前方領域に対応する導電体T1と導電体T4の何れか一方から検出信号L1,L4が入力された時には前方旋回領域検出信号Lfを出力し、後方領域に対応する導電体T2と導電体T3の何れか一方から検出信号L2,L3が入力された時には後方旋回領域検出信号Lrを出力するようになっている。なお、この実施形態の場合には、絶縁区間s2の両側に位置する導電体T1と導電体T2から同時に検出信号L1,L2が入力された時と、絶縁区間s4の両側に位置する導電体T3と導電体T4から同時に検出信号L3,L4が入力された時には、信号出力手段20から格納位置検出信号が出力されないようになっている。なお、伸縮ブーム8をトラック1の側方に格納するよう構成した車載式クレーンAにおいては、この入力信号(検出信号L1,L2の同時入力と、検出信号L3,L4の同時入力)を使用して左右の側方格納位置検出信号を出力するように構成してもよい。
【0030】
21は、伸縮ブーム8が前後のブーム格納位置Bf,Brに旋回したことを作業者に知らせるための格納位置表示手段であり、信号出力手段20からの前後の格納位置検出信号LBf,LBrを受けて点灯表示する表示灯で構成している。これにより、作業者は伸縮ブーム8がブーム格納位置に旋回したことを表示灯の点灯で把握することができるのである。なお、当該格納位置表示手段21は、例示した表示灯ではなく、伸縮ブーム8を旋回駆動する旋回駆動装置(図示せず)の駆動を停止制御する旋回駆動停止制御手段(図示せず)で構成することも可能である。
【0031】
また22は、車載式クレーンAに装備された安全装置である。当該安全装置22は、伸縮ブーム8が旋回した旋回領域(例えば、クレーンの前方領域と後方領域)によって作業性能が大きく変化する車載式クレーンAに対応し、伸縮ブーム8の先端部から吊下げた荷物の重量Wと、伸縮ブーム8が旋回した旋回領域(この実施形態の場合は、前方領域と後方領域の2領域に設定している)に対応した許容吊上荷重Wmaxを比較し、前者の値Wが後者の値Wmaxを超え時にクレーンが転倒(あるいは損傷)する恐れのある作業状態であるとして警報やクレーンの作動を停止させるように構成している。そして、当該安全装置22は、この制御における許容吊上荷重Wmaxの算出のために前記信号出力手段20から入力された前後の旋回領域検出信号Lf,Lrを使用し、前方領域での許容吊上荷重Wmaxと後方領域での許容吊上荷重Wmaxを算出するようになっている。すなわち、信号出力手段20から前方旋回領域検出信号Lfが入力された時には伸縮ブーム8が前方領域に旋回して作業する際の許容吊上荷重Wmaxを算出し、同様に後方旋回領域検出信号Lrが入力された時には伸縮ブーム8が後方領域に旋回して作業する際の許容吊上荷重Wmaxを算出するようになっているのである。なお、この実施形態では前方と後方の2つの旋回領域検出信号Lf,Lrを出力する例について説明したが、これに限定されることなく前方領域を左右に分けて右側前方領域と左側前方領域を、後方領域を左右に分けて右側後方領域と左側後方領域を弁別して旋回領域検出信号を出力するよう構成してもよい。また、作業機の作業性能が全周同一で安全装置22の許容吊上荷重Wmaxを伸縮ブーム8の旋回領域に応じて切換える必要がない場合には、旋回領域検出信号Lf,Lrの出力機能を省略することも可能である。
【0032】
このように構成したブーム格納位置検出手段は、伸縮ブーム8が前方格納位置Bf(図1における旋回領域[1])に旋回すれば、旋回位置検出手段12の接触子19が前方格納位置Bfに対応した絶縁区間s1上に位置し、当該絶縁区間s1の幅より広く設定された接触子19が絶縁区間s1を挟んで両側に位置する導電体T1,T4に同時に接触し、対応した検出信号L1,L4が出力されるようになっている。そして、この検出信号L1,L4を受けた信号出力手段20は、伸縮ブーム8が前方格納位置Bfに旋回したと判断して前方格納位置信号LBfを出力し、格納位置表示手段21の表示灯を点灯させて作業者に報知するようになっている。これにより、作業者は伸縮ブーム8が前方格納位置Bfに旋回したことを把握でき、旋回操作を中止して伸縮ブーム8を前方格納位置Bf上に停止させる等の制御が可能になるのである。また、後方格納位置Br(同、旋回領域[5])に旋回した時も同様に、伸縮ブーム8が後方格納位置Brに旋回すれば、旋回位置検出手段12の接触子19が後方格納位置Brに対応した絶縁区間s3上に位置し、接触子19が絶縁区間s3を挟んで両側に位置する導電体T2,T3に同時に接触し、対応した検出信号L2,L3が出力されるようになっている。そして、この検出信号L2,L3を受けた信号出力手段20は、伸縮ブーム8が後方格納位置Brに旋回したと判断して後方格納位置信号LBrを出力し、格納位置表示手段21の表示灯を点灯させて作業者に報知するようになっている。これにより、作業者は伸縮ブーム8が後方格納位置Brに旋回したことを把握でき、旋回操作を中止して伸縮ブーム8を後方格納位置Br上に停止させる等の制御が可能になるのである。
【0033】
また、伸縮ブーム8がトラック1の前方領域(同、旋回領域[2]と[8])に旋回した時には、接触子19が前方に位置する導電体T1,T4の何れか一方に接触して、対応した検出信号L1あるいはL4が出力されるようになっている。そして、この検出信号L1あるいはL4を受けた信号出力手段20は、伸縮ブーム8が前方領域に旋回したと判断して安全装置22に前方旋回領域検出信号Lfを出力し、伸縮ブーム8が前方領域に旋回して作業する際の許容吊上荷重Wmaxを算出するようになっている。また、伸縮ブーム8が後方領域(同、旋回領域[4]と[6])に旋回した時も同様に、接触子19が後方に位置する導電体T2,T3の何れか一方に接触して、対応した検出信号L2あるいはL3が出力されるようになっている。そして、この検出信号L2あるいはL3を受けた信号出力手段20は、伸縮ブーム8が後方領域に旋回したと判断して安全装置22に後方旋回領域信号Lrを出力し、伸縮ブーム8が後方領域に旋回して作業する際の許容吊上荷重Wmaxを算出するようになっているのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置の構成を説明する説明図である。
【図2】同、旋回位置検出手段の構成を説明する説明図(平面図)である。
【図3】同、旋回位置検出手段の構成を説明する説明図(側面図)である。
【図4】車載式クレーンAの構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0035】
A 車載式クレーン、
1 トラック、
2 運転室、
3 荷台、
4,4 ジャッキ装置、
5 基台、
6 旋回ポスト、
7 起伏シリンダ、
8 伸縮ブーム、
9 ウインチ装置、
10 ワイヤーロープ、
11 フックブロック、
12 電気回転継ぎ手、
13a,13b・・ 導電リング、
14 リング装着部材、
15a,15b・・ 接触子、
16 ケース本体、
17 旋回位置検出手段、
18 導電リング部材、
19 接触子、
20 信号出力手段、
21 格納位置表示手段、
22 安全装置、
Bf 前方格納位置、
Br 後方格納位置、
S1,s2・・ 絶縁区間、
T1,T2・・ 導電体、
L1,L2・・ 検出信号、
LBf,LBr 格納位置検出信号、
Lf,Lr 旋回領域検出信号、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮ブームが微小旋回角に設定されたブーム格納位置に旋回したことを検出する旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置であって、
所定幅の絶縁区間を挟んで複数の導電体を配設した導電リング部材と、当該導電リング部材に摺動自在に接触しつつ伸縮ブームの旋回動に連動して回転する単一の接触子とを備えた旋回位置検出手段と、当該旋回位置検出手段からの検出信号を受けてブーム格納位置検出信号を出力する信号出力手段とで構成され、前記接触子の接触幅を導電リング部材の絶縁区間の幅より僅かに広く設定すると共に、当該絶縁区間の位置を前記ブーム格納位置に対応した位置に設定し、前記信号出力手段を接触子が絶縁区間を挟んだ両側の導電体に同時に接触した旋回位置検出手段の検出信号を受けてブーム格納位置検出信号を出力するよう構成したことを特徴とする旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置。
【請求項2】
前記導電リング部材の絶縁区間を挟んだ両側の導電体の検出幅を作業機の作業領域幅に対応した幅に設定すると共に、前記信号出力手段を接触子が何れか一つの導電体に接触した旋回位置検出手段の検出信号を受けて旋回領域検出信号を出力するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の旋回式作業機のブーム旋回位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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