既存杭の軸力受け替え方法
【課題】仮設杭などの施工を行うことなく、且つ既存の基礎体に補強を要することなく、既存杭の軸力を受け替えることができる既存杭の軸力受け替え方法を提供する。
【解決手段】杭基礎T1の周辺地盤Gを掘削して既存杭1の一部を露出させ、既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように、又は外周面から中心軸O1側に向けて凹むように設置孔3を形成する。また、設置孔3内に挿入設置した仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を押圧させて既存基礎体2と既存杭1を支持するとともに既存杭1の残部1aを解体撤去する。さらに、地盤面G1上にコンクリートを打設して構築した新設基礎体6と既存基礎体2の間に新設躯体を設置する。そして、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存基礎体2と既存杭1の支持状態を解除するとともに、既存杭1の軸力を新設躯体に受け替える。
【解決手段】杭基礎T1の周辺地盤Gを掘削して既存杭1の一部を露出させ、既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように、又は外周面から中心軸O1側に向けて凹むように設置孔3を形成する。また、設置孔3内に挿入設置した仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を押圧させて既存基礎体2と既存杭1を支持するとともに既存杭1の残部1aを解体撤去する。さらに、地盤面G1上にコンクリートを打設して構築した新設基礎体6と既存基礎体2の間に新設躯体を設置する。そして、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存基礎体2と既存杭1の支持状態を解除するとともに、既存杭1の軸力を新設躯体に受け替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存建造物の免震改修等に用いる既存杭の軸力受け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちコンクリート杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築した既存の建造物の免震改修(基礎免震改修)等を行う場合には、杭基礎近傍に仮設の鋼管杭など(仮設杭)を打設して既存の基礎体に繋げ、既存杭の軸力の受け替えを仮設杭で行う方法が多用されている(例えば特許文献1[従来の技術]参照)。
【0003】
すなわち、仮設杭を既存の基礎体近傍に打設した後に、基礎体の下方の地盤を掘削して既存杭の一部を露出させ、仮設杭で基礎体ひいては上部構造を仮受け支持しながら、露出した既存杭の一部を解体撤去する。そして、既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体との間の空間に免震装置等の新設躯体を設置した後、仮設杭による仮受け支持状態を解除して、既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体及び新設躯体で既存の基礎体ひいては上部構造を支持させる。このように新設躯体を既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体上に設置することで、既存の建造物の免震改修等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の免震改修方法(従来の既存杭の軸力受け替え方法)においては、仮設杭が必要になるため、全体工期が長期化するとともに施工コストが高コストになるという問題があった。また、仮設杭の施工条件によっては既存の基礎体に補強が必要になる場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、仮設杭などの施工を行うことなく、且つ既存の基礎体に補強を要することなく、既存杭の軸力を受け替えることができ、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることを可能にする既存杭の軸力受け替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の既存杭の軸力受け替え方法は、杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築された建造物の既存杭の軸力を受け替える方法であって、前記杭基礎の周辺地盤を掘削し、前記既存杭の一部を露出させる地盤掘削工程と、露出した前記既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した前記既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように設置孔を形成する設置孔形成工程と、前記既存杭の軸力を仮受け支持する仮受け支柱と仮受けジャッキを前記設置孔内に挿入設置する仮受け支柱・ジャッキ設置工程と、前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキを押圧させて前記杭基礎の既存基礎体と前記既存杭を支持するとともに、前記露出した既存杭の少なくとも前記設置孔を挟んで両側又は片側に残された残部を解体撤去する残部解体撤去工程と、前記地盤掘削工程で掘削した地盤面上にコンクリートを打設して新設基礎体を構築する新設基礎体構築工程と、前記新設基礎体と前記既存基礎体の間に新設躯体を設置する新設躯体設置工程と、前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキによる前記既存基礎体と前記既存杭の支持状態を解除するとともに、前記既存杭の軸力を前記新設躯体に受け替える軸力受け替え工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の既存杭の軸力受け替え方法においては、露出した既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように形成された設置孔内に仮受け支柱と仮受けジャッキを設置し、これら仮受け支柱と仮受けジャッキを用いて既存杭の軸力を免震装置等の新設躯体に受け替えることができ、従来の仮設杭を用いて既存杭の軸力を受け替える場合と比較し、施工性(作業性)を向上させることが可能になる。また、仮設杭が不要であるため、既存の基礎体に対する補強も不要にすることが可能になる。これにより、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る既存建造物を示す図(免震改修等を行う前の既存建造物を示す図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る既存建造物の杭基礎を示す図(免震改修等を行う前の既存建造物の杭基礎を示す図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、設置孔内に仮受け支柱及び仮受けジャッキを設置した状態を示す図である。
【図4】図3のX1−X1線矢視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、残部を解体撤去し、新設基礎体を構築した状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、新設基礎体と既存基礎体の間に新設躯体(免震装置等)を設置し、新設躯体に既存杭の軸力を受け替えた状態を示す図(免震改修等を行った後の既存建造物を示す図)である。
【図7】図6のX1−X1線矢視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法について説明する。ここで、本実施形態は、杭と基礎体(既存杭と既存基礎体)からなる杭基礎を備えて構築された既存建造物の基礎免震改修等に用いる既存杭の軸力受け替え方法に関するものである。
【0012】
本実施形態の既存建造物Tは、図1及び図2に示すように、場所打ちコンクリート杭と基礎体(既存杭1と既存基礎体2)からなる杭基礎T1を備えて構築されている。
【0013】
そして、このような杭基礎T1を備えて構築された既存建造物Tの既存杭1の軸力を受け替える本実施形態の軸力受け替え方法では、はじめに、図2及び図3に示すように、杭基礎T1の既存基礎体2の下方の地盤Gを掘削し、既存杭1の杭頭側を露出させる。すなわち、杭基礎T1の周辺地盤Gを掘削し、既存杭1の一部を露出させる(地盤掘削工程)。
【0014】
次に、図3及び図4に示すように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように、既存杭1に貫通孔(設置孔)3を形成する(設置孔形成工程)。そして、このように形成した貫通孔3内に、既存杭1の軸力を仮受け支持するための仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置する(仮受け支柱・ジャッキ設置工程)。このため、貫通孔(設置孔)3は、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5の高さと幅に応じた大きさ(高さと幅)で形成される。
【0015】
次に、仮受けジャッキ5を伸長するように駆動し、貫通孔3の上端面と下端面(貫通孔3を挟んで軸線O1方向(中心軸O1方向)上下の既存基礎体2と既存杭1)に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を押圧させ、既存基礎体2と既存杭1を仮受け支柱4と仮受けジャッキ5で支持する。また、このように仮受け支柱4と仮受けジャッキ5で既存杭1を支持した段階で、図5に示すように、露出した既存杭1の貫通孔3を挟んで両側に残された残部1aを解体撤去する(残部解体撤去工程)。
【0016】
次に、図5に示すように、地盤掘削工程で掘削した地盤面G1上にコンクリートを打設して新設基礎体6を構築する(新設基礎体構築工程)。このとき、本実施形態では、地盤面G1から仮受け支柱4の上端よりも下方に新設基礎体6の上面(新設基礎体面)6aが配される厚さで新設基礎体6を構築する。すなわち、仮受けジャッキ5が埋設されることがなく、仮受け支柱4の一部が埋設されるように、新設基礎体6を構築する。
【0017】
このように新設基礎体6を構築した段階で、図6及び図7に示すように、新設基礎体6と杭基礎T1の既存基礎体2に上端と下端をそれぞれ繋げ、これら新設基礎体6と既存基礎体2の間に免震装置等の新設躯体7を設置する(新設躯体設置工程)。
【0018】
そして、仮受けジャッキ5を縮長するように駆動し、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存杭1の支持状態を解除する。これにより、既存杭1の軸力が新設躯体(免震装置等)7に受け替えられる(軸力受け替え工程)。
【0019】
したがって、本実施形態の既存杭の軸力受け替え方法においては、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように形成した貫通孔(設置孔)3内に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置し、これら仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を用いて既存杭1の軸力を免震装置等の新設躯体7に受け替えることができ、従来の仮設杭を用いて既存杭1の軸力を受け替える場合と比較し、施工性(作業性)を向上させることが可能になる。また、仮設杭が不要であるため、既存の基礎体2に対する補強も不要にすることが可能になる。これにより、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることが可能になる。
【0020】
本実施形態のように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通する貫通孔(設置孔)3を形成し、この貫通孔3内に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置する方法は(既存杭1の中心O1を部分切断して既存杭1中心に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置した場合には)、既存杭1の偏心圧縮による曲げひび割れを防止することが可能になる。
【0021】
本実施形態のように、既存杭1の中心O1を部分切断して既存杭1中心に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置した場合には、既存杭1のコンクリート許容支圧応力度を採用することが可能になり、安全に軸力の受け替えを行うことが可能になる。
【0022】
以上、本発明に係る既存杭の軸力受け替え方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
例えば、本実施形態では、本発明に係る設置孔が、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通する貫通孔3として形成されているものとしたが、例えば図8(a)、(b)、図9(a)〜(e)に示すように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1側に向けて凹むように設置孔3を形成し、このように形成した設置孔3内に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置し、仮受けジャッキ5を駆動して既存杭1を支持するようにしてもよい。そして、この場合には、露出した既存杭1の少なくとも設置孔3を挟んで両側又は片側に残された残部1aを解体撤去し、仮受けジャッキ5を駆動して仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存杭1の支持状態を解除することにより、本実施形態と同様、既存杭1の軸力を新設躯体7に受け替えることが可能である。
【0024】
また、本実施形態では、既存建造物Tの基礎免震改修を行いように、また、新設躯体7が免震装置であるものとして説明(図示)を行ったが、例えば図10に示すように地下階を増築する際に本発明を適用してもよく、このような地下階増築などの際には、図11に示すように、新設躯体7を柱(柱状体)としてもよい。
【0025】
さらに、本実施形態では、図5に示したように新設基礎体6の新設基礎体面6aから既存基礎体2の間の既存杭1を全て解体撤去するようにしているが、露出した既存杭1の設置孔3を挟んで両側又は片側に残された残部1aのみを解体撤去し、さらに、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を既存杭1の直上から離れた位置に盛り替えて、既存杭1の軸力を直接新設躯体(免震装置等)7に受け替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 既存杭(杭)
1a 残部
2 既存基礎体(基礎体)
3 貫通孔(設置孔)
4 仮受け支柱
5 仮受けジャッキ
6 新設基礎体
6a 新設基礎体面
7 新設躯体(免震装置等)
G 周辺地盤(地盤)
G1 地盤面
O1 既存杭の中心軸
T 既存建造物
T1 杭基礎
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存建造物の免震改修等に用いる既存杭の軸力受け替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ちコンクリート杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築した既存の建造物の免震改修(基礎免震改修)等を行う場合には、杭基礎近傍に仮設の鋼管杭など(仮設杭)を打設して既存の基礎体に繋げ、既存杭の軸力の受け替えを仮設杭で行う方法が多用されている(例えば特許文献1[従来の技術]参照)。
【0003】
すなわち、仮設杭を既存の基礎体近傍に打設した後に、基礎体の下方の地盤を掘削して既存杭の一部を露出させ、仮設杭で基礎体ひいては上部構造を仮受け支持しながら、露出した既存杭の一部を解体撤去する。そして、既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体との間の空間に免震装置等の新設躯体を設置した後、仮設杭による仮受け支持状態を解除して、既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体及び新設躯体で既存の基礎体ひいては上部構造を支持させる。このように新設躯体を既存杭の一部を解体撤去して形成した新設基礎体上に設置することで、既存の建造物の免震改修等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の免震改修方法(従来の既存杭の軸力受け替え方法)においては、仮設杭が必要になるため、全体工期が長期化するとともに施工コストが高コストになるという問題があった。また、仮設杭の施工条件によっては既存の基礎体に補強が必要になる場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、仮設杭などの施工を行うことなく、且つ既存の基礎体に補強を要することなく、既存杭の軸力を受け替えることができ、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることを可能にする既存杭の軸力受け替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の既存杭の軸力受け替え方法は、杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築された建造物の既存杭の軸力を受け替える方法であって、前記杭基礎の周辺地盤を掘削し、前記既存杭の一部を露出させる地盤掘削工程と、露出した前記既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した前記既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように設置孔を形成する設置孔形成工程と、前記既存杭の軸力を仮受け支持する仮受け支柱と仮受けジャッキを前記設置孔内に挿入設置する仮受け支柱・ジャッキ設置工程と、前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキを押圧させて前記杭基礎の既存基礎体と前記既存杭を支持するとともに、前記露出した既存杭の少なくとも前記設置孔を挟んで両側又は片側に残された残部を解体撤去する残部解体撤去工程と、前記地盤掘削工程で掘削した地盤面上にコンクリートを打設して新設基礎体を構築する新設基礎体構築工程と、前記新設基礎体と前記既存基礎体の間に新設躯体を設置する新設躯体設置工程と、前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキによる前記既存基礎体と前記既存杭の支持状態を解除するとともに、前記既存杭の軸力を前記新設躯体に受け替える軸力受け替え工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の既存杭の軸力受け替え方法においては、露出した既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように形成された設置孔内に仮受け支柱と仮受けジャッキを設置し、これら仮受け支柱と仮受けジャッキを用いて既存杭の軸力を免震装置等の新設躯体に受け替えることができ、従来の仮設杭を用いて既存杭の軸力を受け替える場合と比較し、施工性(作業性)を向上させることが可能になる。また、仮設杭が不要であるため、既存の基礎体に対する補強も不要にすることが可能になる。これにより、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る既存建造物を示す図(免震改修等を行う前の既存建造物を示す図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る既存建造物の杭基礎を示す図(免震改修等を行う前の既存建造物の杭基礎を示す図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、設置孔内に仮受け支柱及び仮受けジャッキを設置した状態を示す図である。
【図4】図3のX1−X1線矢視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、残部を解体撤去し、新設基礎体を構築した状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法において、新設基礎体と既存基礎体の間に新設躯体(免震装置等)を設置し、新設躯体に既存杭の軸力を受け替えた状態を示す図(免震改修等を行った後の既存建造物を示す図)である。
【図7】図6のX1−X1線矢視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る既存杭の軸力受け替え方法について説明する。ここで、本実施形態は、杭と基礎体(既存杭と既存基礎体)からなる杭基礎を備えて構築された既存建造物の基礎免震改修等に用いる既存杭の軸力受け替え方法に関するものである。
【0012】
本実施形態の既存建造物Tは、図1及び図2に示すように、場所打ちコンクリート杭と基礎体(既存杭1と既存基礎体2)からなる杭基礎T1を備えて構築されている。
【0013】
そして、このような杭基礎T1を備えて構築された既存建造物Tの既存杭1の軸力を受け替える本実施形態の軸力受け替え方法では、はじめに、図2及び図3に示すように、杭基礎T1の既存基礎体2の下方の地盤Gを掘削し、既存杭1の杭頭側を露出させる。すなわち、杭基礎T1の周辺地盤Gを掘削し、既存杭1の一部を露出させる(地盤掘削工程)。
【0014】
次に、図3及び図4に示すように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように、既存杭1に貫通孔(設置孔)3を形成する(設置孔形成工程)。そして、このように形成した貫通孔3内に、既存杭1の軸力を仮受け支持するための仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置する(仮受け支柱・ジャッキ設置工程)。このため、貫通孔(設置孔)3は、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5の高さと幅に応じた大きさ(高さと幅)で形成される。
【0015】
次に、仮受けジャッキ5を伸長するように駆動し、貫通孔3の上端面と下端面(貫通孔3を挟んで軸線O1方向(中心軸O1方向)上下の既存基礎体2と既存杭1)に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を押圧させ、既存基礎体2と既存杭1を仮受け支柱4と仮受けジャッキ5で支持する。また、このように仮受け支柱4と仮受けジャッキ5で既存杭1を支持した段階で、図5に示すように、露出した既存杭1の貫通孔3を挟んで両側に残された残部1aを解体撤去する(残部解体撤去工程)。
【0016】
次に、図5に示すように、地盤掘削工程で掘削した地盤面G1上にコンクリートを打設して新設基礎体6を構築する(新設基礎体構築工程)。このとき、本実施形態では、地盤面G1から仮受け支柱4の上端よりも下方に新設基礎体6の上面(新設基礎体面)6aが配される厚さで新設基礎体6を構築する。すなわち、仮受けジャッキ5が埋設されることがなく、仮受け支柱4の一部が埋設されるように、新設基礎体6を構築する。
【0017】
このように新設基礎体6を構築した段階で、図6及び図7に示すように、新設基礎体6と杭基礎T1の既存基礎体2に上端と下端をそれぞれ繋げ、これら新設基礎体6と既存基礎体2の間に免震装置等の新設躯体7を設置する(新設躯体設置工程)。
【0018】
そして、仮受けジャッキ5を縮長するように駆動し、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存杭1の支持状態を解除する。これにより、既存杭1の軸力が新設躯体(免震装置等)7に受け替えられる(軸力受け替え工程)。
【0019】
したがって、本実施形態の既存杭の軸力受け替え方法においては、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通するように形成した貫通孔(設置孔)3内に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置し、これら仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を用いて既存杭1の軸力を免震装置等の新設躯体7に受け替えることができ、従来の仮設杭を用いて既存杭1の軸力を受け替える場合と比較し、施工性(作業性)を向上させることが可能になる。また、仮設杭が不要であるため、既存の基礎体2に対する補強も不要にすることが可能になる。これにより、免震改修等を行う場合の全体工期の短期化、施工コストの低減を図ることが可能になる。
【0020】
本実施形態のように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通する貫通孔(設置孔)3を形成し、この貫通孔3内に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置する方法は(既存杭1の中心O1を部分切断して既存杭1中心に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置した場合には)、既存杭1の偏心圧縮による曲げひび割れを防止することが可能になる。
【0021】
本実施形態のように、既存杭1の中心O1を部分切断して既存杭1中心に仮受け支柱4及び仮受けジャッキ5を配置した場合には、既存杭1のコンクリート許容支圧応力度を採用することが可能になり、安全に軸力の受け替えを行うことが可能になる。
【0022】
以上、本発明に係る既存杭の軸力受け替え方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
例えば、本実施形態では、本発明に係る設置孔が、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1を通って貫通する貫通孔3として形成されているものとしたが、例えば図8(a)、(b)、図9(a)〜(e)に示すように、露出した既存杭1の外周面から中心軸O1側に向けて凹むように設置孔3を形成し、このように形成した設置孔3内に仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を挿入設置し、仮受けジャッキ5を駆動して既存杭1を支持するようにしてもよい。そして、この場合には、露出した既存杭1の少なくとも設置孔3を挟んで両側又は片側に残された残部1aを解体撤去し、仮受けジャッキ5を駆動して仮受け支柱4と仮受けジャッキ5による既存杭1の支持状態を解除することにより、本実施形態と同様、既存杭1の軸力を新設躯体7に受け替えることが可能である。
【0024】
また、本実施形態では、既存建造物Tの基礎免震改修を行いように、また、新設躯体7が免震装置であるものとして説明(図示)を行ったが、例えば図10に示すように地下階を増築する際に本発明を適用してもよく、このような地下階増築などの際には、図11に示すように、新設躯体7を柱(柱状体)としてもよい。
【0025】
さらに、本実施形態では、図5に示したように新設基礎体6の新設基礎体面6aから既存基礎体2の間の既存杭1を全て解体撤去するようにしているが、露出した既存杭1の設置孔3を挟んで両側又は片側に残された残部1aのみを解体撤去し、さらに、仮受け支柱4と仮受けジャッキ5を既存杭1の直上から離れた位置に盛り替えて、既存杭1の軸力を直接新設躯体(免震装置等)7に受け替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 既存杭(杭)
1a 残部
2 既存基礎体(基礎体)
3 貫通孔(設置孔)
4 仮受け支柱
5 仮受けジャッキ
6 新設基礎体
6a 新設基礎体面
7 新設躯体(免震装置等)
G 周辺地盤(地盤)
G1 地盤面
O1 既存杭の中心軸
T 既存建造物
T1 杭基礎
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築された建造物の既存杭の軸力を受け替える方法であって、
前記杭基礎の周辺地盤を掘削し、前記既存杭の一部を露出させる地盤掘削工程と、
露出した前記既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した前記既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように設置孔を形成する設置孔形成工程と、
前記既存杭の軸力を仮受け支持する仮受け支柱と仮受けジャッキを前記設置孔内に挿入設置する仮受け支柱・ジャッキ設置工程と、
前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキを押圧させて前記杭基礎の既存基礎体と前記既存杭を支持するとともに、前記露出した既存杭の少なくとも前記設置孔を挟んで両側又は片側に残された残部を解体撤去する残部解体撤去工程と、
前記地盤掘削工程で掘削した地盤面上にコンクリートを打設して新設基礎体を構築する新設基礎体構築工程と、
前記新設基礎体と前記既存基礎体の間に新設躯体を設置する新設躯体設置工程と、
前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキによる前記既存基礎体と前記既存杭の支持状態を解除するとともに、前記既存杭の軸力を前記新設躯体に受け替える軸力受け替え工程とを備えていることを特徴とする既存杭の軸力受け替え方法。
【請求項1】
杭と基礎体からなる杭基礎を備えて構築された建造物の既存杭の軸力を受け替える方法であって、
前記杭基礎の周辺地盤を掘削し、前記既存杭の一部を露出させる地盤掘削工程と、
露出した前記既存杭の外周面から中心軸を通って貫通するように、又は露出した前記既存杭の外周面から中心軸側に向けて凹むように設置孔を形成する設置孔形成工程と、
前記既存杭の軸力を仮受け支持する仮受け支柱と仮受けジャッキを前記設置孔内に挿入設置する仮受け支柱・ジャッキ設置工程と、
前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキを押圧させて前記杭基礎の既存基礎体と前記既存杭を支持するとともに、前記露出した既存杭の少なくとも前記設置孔を挟んで両側又は片側に残された残部を解体撤去する残部解体撤去工程と、
前記地盤掘削工程で掘削した地盤面上にコンクリートを打設して新設基礎体を構築する新設基礎体構築工程と、
前記新設基礎体と前記既存基礎体の間に新設躯体を設置する新設躯体設置工程と、
前記仮受けジャッキを駆動し、前記仮受け支柱と前記仮受けジャッキによる前記既存基礎体と前記既存杭の支持状態を解除するとともに、前記既存杭の軸力を前記新設躯体に受け替える軸力受け替え工程とを備えていることを特徴とする既存杭の軸力受け替え方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−57312(P2012−57312A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199141(P2010−199141)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(591078561)株式会社山下設計 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(591078561)株式会社山下設計 (4)
【Fターム(参考)】
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