説明

既設コンクリート杭の破砕排出装置

【課題】地中に残置されている既設コンクリート杭を破砕して撤去するための既設コンクリート杭の撤去装置であって、施工範囲の省力化を図り、作業場所や搬入場所を選ばず、低コストで効率的に撤去できるようにする。
【解決手段】既設コンクリート杭Cの外径より大きい内径を有する回転自在のリングカッター1と、そのリングカッター1の上端に取り付けてリングカッター1内に取り込んだ既設コンクリート杭Cの破砕とリングカッター1で切削された地盤Gの掘削を行う破砕カッター2と、その破砕カッター2の駆動部に取り付けて破砕物と掘削土砂を地上へ排出するスクリューコンベヤ3と、駆動部の後端に接続してリングカッター1と破砕カッター2を地中へ圧入できるようにするケーシング4と、地上に設置してケーシング4とスクリューコンベヤ3継ぎ足しながら地中へ垂直に圧入する圧入装置5とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤汚染防止の六価クロム除去対策として地中に残置されている既設コンクリート杭を破砕して撤去するための既設コンクリート杭の破砕排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、土壌汚染の問題から、セメントに含まれる六価クロムの除去対策が叫ばれている。すなわち、現在の家屋を解体して新築の建造物(家屋)を構築する場合、基礎がセメント系場所打ち杭で施工されていた旧構造物は、その基礎まで撤去し、後々の土壌汚染を回避する対策が必要となっている。そのためには、基礎を撤去して新しい六価クロム汚染の無い基礎を計画する必要がある。
【0003】
現在の対策技術としては、以下のようなものがある。
1)六価クロムと反応する薬剤を地中に注入して悪影響を防止し、既設コンクリート杭は地中に残置する改良工法。
2)大型の沈設機械で鋼管ケーシングを既設コンクリート杭の外周部に埋設後、内部の既設コンクリート杭を破砕して撤去し、ケーシング内部に良好な地盤支持力のある砕石や砂を埋め戻し、転圧等を施して置き換えを行う置換工法。
3)既設コンクリート杭の外周を深く掘削し、既設コンクリート杭にワイヤー等を掛けて大型クレーンで引き抜く工法。
4)人力中心の撤去工法。
【0004】
ところで、前記改良工法では、薬剤のコストが非常に高く、改良不完全の不安が残るという問題があった。前記置換工法と引き抜く工法では、周辺環境への影響として道路や進入路が狭い場合は大型の沈設機械やクレーンが搬入できず、隣接家屋の問題もあり、作業場所が制限されるという問題があった。前記人力中心の撤去工法では、作業者の労力と作業時間を著しく要し、撤去できる既設コンクリート杭は小型のものに限定され、深度が進めば地下水位以下の作業は困難を極めるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−272552号公報
【特許文献2】特開2007−332559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、施工範囲の省力化を図り、作業場所や搬入場所を選ばず、低コストで効率的に既設コンクリート杭を破砕排出できる既設コンクリート杭の破砕排出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 地中に残置されている既設コンクリート杭を破砕して排出するための既設コンクリート杭の破砕排出装置であって、地中へ圧入される筒状のケーシングの下端に既設コンクリート杭の外径より大きい内径を有する地盤切削用のリングカッターを回転自在に設け、そのリングカッター内に既設コンクリート杭を破砕する破砕カッターを回転自在に設け、リングカッターと破砕カッターを回転駆動させるカッター駆動手段を設け、破砕カッターの中央部に既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂を取り込む取込口を形成し、その取込口に既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂を地上へ搬送する排出管付きのスクリューコンベヤを取り付け、そのスクリューコンベヤを駆動させるコンベヤ駆動手段を設けたことを特徴とする、既設コンクリート杭の破砕排出装置
2) ケーシングと排出管付きのスクリューコンベヤが、所定長さのものを既設コンクリート杭の深さに応じて複数継ぎ足しできるようにしたものである、前記1)記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置
3) カッター駆動手段が、ケーシング内の下部に設けられ、リングカッターと破砕カッターを一体的に回転駆動させるものである、前記1)又は2)記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置
4) 破砕カッターをリングカッター内の奥部に設けた、前記1)〜3)いずれか記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置
5) 前記1)〜4)いずれか記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置のケーシングを地中へ垂直に圧入する圧入装置を地上に移設可能に設置した、既設コンクリート杭の撤去装置
6) 圧入装置が、地面に設置される移設可能なベースと、そのベースに立設したマストと、最後尾のケーシングに取り付けてマストに沿って上下動する押金具と、その押金具を上下動させる圧入ジャッキと、ベースに取り付けてリングカッター及びケーシングの圧入方向を定位置に保持する保持ガイドと、スクリューコンベヤの後端部に取り付けて既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂をケーシング外に排出する排出シュートとで構成し、その圧入装置の押金具にコンベヤ駆動手段を設けた、前記5)記載の既設コンクリート杭の撤去装置
7) コンベヤ駆動手段が、スクリューコンベヤを逆転させてスクリューコンベヤの後端部から投入した埋め戻し材を撤去跡に充填させる制御を備えたもので、そのスクリューコンベヤの逆転と並行して地中のケーシングとリングカッターと破砕カッターとスクリューコンベヤを圧入ジャッキで引き抜いて回収できるようにした、前記5)又は6)記載の既設コンクリート杭の撤去装置
8) 既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂の流動性を高める添加材又は置換え用の固化材を破砕カッターの位置に供給する供給手段を設けた、前記5)〜7)いずれか記載の既設コンクリート杭の撤去装置
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
1)リングカッター内で破砕した既設コンクリート杭の破砕物は掘削土砂とともに全て排出するから、従来技術の薬剤を使用する方法と比較して低コストで確実に処理でき、その後の六価クロムによる汚染の心配がない。
2)地上に設置した圧入装置で所定長さのケーシングとスクリューコンベヤを継ぎ足しながら地中に圧入させるから、従来技術の沈設機械と比較して装置を小型化できて作業場所を選ばず、移設も小型のクレーンで容易に行える。
3)既設コンクリート杭は破砕して撤去するから、従来技術のように既設コンクリート杭を引き上げる大型のクレーン等が不要で、装置の搬入場所を選ばない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例の撤去装置の説明図である。
【図2】実施例の破砕排出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1は実施例の撤去装置の説明図、図2は実施例の破砕排出装置の説明図である。図中、1はリングカッター、1aはカッター、2は破砕カッター、2aは駆動部、2bはモーター、2cは取込口、2dは注入路、3はスクリューコンベヤ、3aは軸付スクリュー、3bは排出管、3cは排出シュート、3dはモーター、4はケーシング、5は圧入装置、5aはベース、5bはマスト、5cは押金具、5dは圧入ジャッキ、5eは保持ガイド、6は添加材プラント、6a,6bは注入管、7はトラック、8はベルトコンベヤ、Aは撤去装置、Bは破砕排出装置、Cは既設コンクリート杭、Caは破砕物、Gは地盤である。
【0012】
図1,2に示すように、破砕排出装置Bのリングカッター1は、撤去しようとする既設コンクリート杭Cの外径より大きい内径に形成し、下端に複数のカッター1aを突設している。
【0013】
破砕カッター2は、外周用と内周用のものを破砕位置をずらして設け、これを回転駆動する駆動部2aとモーター2bとを備えている。駆動部2aの外径はリングカッター1と同径に形成し、スクリューコンベヤ3を取り付けるために中央部を貫通して取込口2cを形成するとともに、添加材を注入するための注入路2dを貫通している。その駆動部2aの回転部分にリングカッター1の上端を接続して破砕カッター2をリングカッター1内の奥部に配置し、リングカッター1と破砕カッター2が一体的に回転できるようにしている。
【0014】
スクリューコンベヤ3は、軸付スクリュー3aと排出管3bと排出シュート3cとモーター3dとで構成し、駆動部2aの貫通部分に挿入して取り付け、下端を取込口2cと連通している。軸付スクリュー3aと排出管3bは継ぎ足して連設できるようにしている。軸付スクリュー3aは正逆回転可能で、撤去時は正回転に制御され、埋め戻し時は逆回転に制御される。
【0015】
ケーシング4は、リングカッター1及び破砕カッター2の駆動部2aの外径と同径に形成している。最後尾用の軸付スクリュー3aと排出管3bは最後尾用のケーシング4に取り付け、排出シュート3cは最後尾用のケーシング4に下向きに貫通している。
【0016】
圧入装置5は、地面に設置されるベース5aと、そのベース5a上に立設したマスト5bと、最後尾用のケーシング4の上端部に取り付けてマスト5bに沿って上下動する押金具5cと、その押金具5cを上下動させる油圧式の圧入ジャッキ5dと、リングカッター1及びケーシング4の圧入方向を定位置に保持する保持ガイド5eとで解体可能に組み立てられている。圧入ジャッキ5dのストロークはケーシング4の1本分の長さを有している。圧入ジャッキ5dは押し引き可能で、撤去時は縮退するように制御され、撤去後の破砕排出装置Bの回収時は伸張するように制御される。
【0017】
本実施例では、圧入装置5を既設コンクリート杭Cの位置に設置し、トラック7を圧入装置5の隣接位置に配置し、そのトラック7の荷台と排出シュート3cの直下位置と間にベルトコンベヤ8をシーソー可能に設置する。添加材プラント6は圧入装置5の隣接位置に設置し、一方の注入管6aをケーシング4内に通して駆動部2aの注入路2dに接続するとともに、他方の注入管6bをケーシング4内に通してスクリューコンベヤ3の排出管3bの途中位置に接続する。保持ガイド5eは既設コンクリート杭Cの直上位置に固定し、リングカッター1の下端部を支持して圧入方向を保持する。
【0018】
モーター2b,3dを駆動して圧入ジャッキ5dを徐々に縮退させると、リングカッター1が地盤Gを環状に切削し、その切削された地盤Gと既設コンクリート杭Cがリングカッター1内に取り込まれて破砕カッター2で破砕される。このとき、既設コンクリート杭Cの破砕はリングカッター1内の奥部で行われるから、破砕物Caはリングカッター1で遮蔽されて地盤Gへは散乱しない。破砕物Caは掘削土砂とともに取込口2cから取り込まれて軸付スクリュー3aで上方へ搬送され、排出シュート3cからベルトコンベヤ8に排出されてトラック7の荷台に積み込まれる。そのケーシング4の圧入で下方へ移行する排出シュート3cの位置に合せてベルトコンベヤ8の角度を徐々に変える。破砕物Caや掘削土砂の流動性が低くて排出し難い場合は、添加材プラント6で泥水等の添加材を注入管6a,6bを通じて注入すると、リングカッター1内やスクリューコンベヤ3内の流動性が高まって迅速に排出できる。このときも、添加材はリングカッター1で遮蔽されて地盤Gへは漏液しない。
【0019】
圧入ジャッキ5dが縮み切るとモーター2b,3dを停止し、最後尾用のケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを先方から切り離し、圧入ジャッキ5dを元に伸張させるとともにベルトコンベヤ8を元の角度に戻す。そして、次のケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを継ぎ足して連設し、モーター2b,3dを駆動して圧入ジャッキ5dを縮退させる。これらの工程を繰り返すことで、地中に残置されている既設コンクリート杭Cが撤去されていく。
【0020】
撤去が終了するとモーター2bを停止するとともにモーター3dを逆転させ、砂や20〜40mm程の砕石チップ、細骨材等の埋め戻し材を排出シュート3cから図示しないチューブ等を通じて投入する。埋め戻し材は軸付スクリュー3aで下方へ搬送され、取込口2cから吐出されて既設コンクリート杭Cの撤去跡に充填される。この埋め戻し材を投入しながら圧入ジャッキ5dを徐々に伸張させ、ケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを地中から引き抜いていく。
【0021】
圧入ジャッキ5dが伸び切るとモーター3dを停止させ、最後尾用のケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを先方から切り離し、引き抜いたケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを回収する。そして、圧入ジャッキ5dを縮退させて最後尾用のケーシング4と軸付スクリュー3aと排出管3bを先方に接続してモーター3dを逆転させ、埋め戻し材を投入しながら圧入ジャッキ5dを伸張させる。これらの工程を繰り返すことで、破砕排出装置Bを引き抜きながら既設コンクリート杭Cの撤去跡が埋め戻し材で埋め戻される。また、埋め戻し材の投入に代えて、添加材プラント6でpHが中性の置換え用のゲル状の固化材を撤去跡に供給し、六価クロム汚染の無い杭を構築してもよい。施工が終了すると、圧入装置5を別の既設コンクリート杭Cの位置にクレーン等で移設し、引き抜いた破砕排出装置Bを再使用して撤去と埋め戻し又は杭の再構築が成される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の技術は、無筋コンクリートや鉄筋が細いPC杭、RC杭の撤去に利用される。
【符号の説明】
【0023】
1 リングカッター
1a カッター
2 破砕カッター
2a 駆動部
2b モーター
2c 取込口
2d 注入路
3 スクリューコンベヤ
3a 軸付スクリュー
3b 排出管
3c 排出シュート
3d モーター
4 ケーシング
5 圧入装置
5a ベース
5b マスト
5c 押金具
5d 圧入ジャッキ
5e 保持ガイド
6 添加材プラント
6a,6b 注入管
7 トラック
8 ベルトコンベヤ
A 撤去装置
B 破砕排出装置
C 既設コンクリート杭
Ca 破砕物
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に残置されている既設コンクリート杭を破砕して排出するための既設コンクリート杭の破砕排出装置であって、地中へ圧入される筒状のケーシングの下端に既設コンクリート杭の外径より大きい内径を有する地盤切削用のリングカッターを回転自在に設け、そのリングカッター内に既設コンクリート杭を破砕する破砕カッターを回転自在に設け、リングカッターと破砕カッターを回転駆動させるカッター駆動手段を設け、破砕カッターの中央部に既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂を取り込む取込口を形成し、その取込口に既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂を地上へ搬送する排出管付きのスクリューコンベヤを取り付け、そのスクリューコンベヤを駆動させるコンベヤ駆動手段を設けたことを特徴とする、既設コンクリート杭の破砕排出装置。
【請求項2】
ケーシングと排出管付きのスクリューコンベヤが、所定長さのものを既設コンクリート杭の深さに応じて複数継ぎ足しできるようにしたものである、請求項1記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置。
【請求項3】
カッター駆動手段が、ケーシング内の下部に設けられ、リングカッターと破砕カッターを一体的に回転駆動させるものである、請求項1又は2記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置。
【請求項4】
破砕カッターをリングカッター内の奥部に設けた、請求項1〜3いずれか記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の既設コンクリート杭の破砕排出装置のケーシングを地中へ垂直に圧入する圧入装置を地上に移設可能に設置した、既設コンクリート杭の撤去装置。
【請求項6】
圧入装置が、地面に設置される移設可能なベースと、そのベースに立設したマストと、最後尾のケーシングに取り付けてマストに沿って上下動する押金具と、その押金具を上下動させる圧入ジャッキと、ベースに取り付けてリングカッター及びケーシングの圧入方向を定位置に保持する保持ガイドと、スクリューコンベヤの後端部に取り付けて既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂をケーシング外に排出する排出シュートとで構成し、その圧入装置の押金具にコンベヤ駆動手段を設けた、請求項5記載の既設コンクリート杭の撤去装置。
【請求項7】
コンベヤ駆動手段が、スクリューコンベヤを逆転させてスクリューコンベヤの後端部から投入した埋め戻し材を撤去跡に充填させる制御を備えたもので、そのスクリューコンベヤの逆転と並行して地中のケーシングとリングカッターと破砕カッターとスクリューコンベヤを圧入ジャッキで引き抜いて回収できるようにした、請求項5又は6記載の既設コンクリート杭の撤去装置。
【請求項8】
既設コンクリート杭の破砕物と掘削土砂の流動性を高める添加材又は置換え用の固化材を破砕カッターの位置に供給する供給手段を設けた、請求項5〜7いずれか記載の既設コンクリート杭の撤去装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−226179(P2011−226179A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97840(P2010−97840)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(599111965)株式会社アルファシビルエンジニアリング (32)
【出願人】(505229391)ボーディング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】