説明

既設管の改築推進装置

【課題】塩化ビニール製管のような低耐荷力の既設管を改築する場合でも、切り屑を詰まらせることなく、スクリューによって円滑に排出できるようにする。
【解決手段】カッタヘッド20の面板24の前方に既設管50の内径よりもやや小さな径を有し、カッタヘッド20により破砕された既設管50の切り屑70の前方への移動を規制する制止円板24を配置し、カッタヘッド20による既設管50の切り屑70を面板24の後方に強制的に排出させる強制排出部を設け、さらに、面板24の後方でかつスクリュー18の先端の前方に位置する刃口に32切り屑70を細かく破砕する切り屑破砕部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開削せずに老朽化した埋設管を新たな更埋管に更新する改築推進工法を実施するための改築推進装置に係り、特に、既設管が塩ビ管等の低耐荷重管である場合に既設管をカッタで破砕したときに生じる切屑を詰まらせることなく円滑な推進を可能にする改築推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道、ガス等のライフラインとして地中に埋設されている管は、経年により老朽化が進むので、耐用年数を越えた管は、適時に新たな管に更新する必要がある。
このような既設管を更新するために、古くは、埋設箇所を地表から開削することで既設管を掘り出し、新たな管を埋設し直していた。近時は、開削することなく、既設管を破砕しながら、同時に更新管を推進する改築推進工法が開発されている。
【0003】
従来の既設管改築推進工法には種々のものがあるが、既設管を拡大しながら破砕して、その内側に更新管を推進する工法と、既設管をカッタで切削しながら更新管を推進する工法と、に大きく分けられる。
【0004】
このうち、前者の改築推進工法としては、例えば、特許文献1に開示されている工法がある。この改築推進工法は、既設管内部に先頭体を入れ、この先頭体を拡径させるとともに牽引装置により既設管内部を前進させながら既設管を拡大破砕し、その内側に更新管を推進していく工法である。この工法によれば、既設管の残骸が更新管の周囲に残存することになり、また、既設管の管径に対して、更新管の管径を大きくするには限界がある。
【0005】
これに対して、後者の推進工法には、例えば、特許文献2に開示されている工法がある。この改築推進工法で使用する先導管の先端には、既設管を破砕するためのカッタヘッドが取り付けられており、このカッタヘッドのカッタで既設管を破砕し、その破片および土砂は排土用のスクリューで発進抗に移送される。そして、推進機は、埋設管の破砕と同時に、新たな更新管に推進力を与え、破砕された埋設管の替わりに更新管を押し込んでいく。
【0006】
この改築推進工法によれば、既設管をカッターで破砕し、その切り屑を排出しながら更新管を推進していくことができるので、既設管が曲がっている場合にも更新管の埋設精度を確保でき、また、既設管の管径とは関係なく更新管を推進することができる利点がある。
【特許文献1】特開2006−132113号公報
【特許文献2】特開2006−249678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような改築推進工法が適用される既設管には、敷設された年代が古いのになると陶管であったり、ヒューム管であったり、あるいは、年代が下ると塩化ビニル製の管であったりというように様々な種類の管がある。このうち、陶管やヒューム管は、細かく破砕されるためカッターによる破砕に適しているが、塩化ビニル製の既設管は、カッターで切削すると、切り屑が連続して発生する。しかも、この切り屑は、既設管の内部に溜ってしまい、排土用のスクリューでも排出させることができない。とりわけ、粘土質の土質中に敷設された塩化ビニル製の埋設管を改築する場合には、切り屑の間に粘土が詰まって塊になって、カッターの刃口を詰まらせ、推進を継続することが不能になるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、塩化ビニール製管のような低耐荷力の既設管を改築する場合でも、切り屑を詰まらせることなく、スクリューによって円滑に排出することができ、切り屑のつまりによって推進不能になる事態を確実に防止することを可能とする既設管の改築推進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、地中に埋設された既設管をカッタヘッドで破砕しながら、同時に、先行させる先導管とともに新しい更新管を推進する既設管の改築推進装置において、前記カッタヘッドの面板の前方に配置され、前記既設管の内径よりもやや小さな径を有し、前記カッタヘッドにより破砕された既設管の切り屑の前方への移動を規制する制止円板と、前記カッタヘッドによる既設管の切り屑を前記面板の後方に強制的に排出させる強制排出部と、前記面板の後方でかつスクリューの先端の前方に位置する刃口に配置され、前記刃口に導出された切り屑を細かく破砕する切り屑破砕部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の好適な実施形態によれば、前記強制排出部は、前記円板を支持し前記面板からスクリュー軸と同軸に延びる延長軸に設けられた前記スクリューと同ピッチのピッチスクリューから構成される。
【0011】
また、本発明の好適な実施形態によれば、切り屑破砕部は、前記面板の背後の位置でスクリュー軸の先端部に取り付けられた破砕羽根と、前記破砕羽根の後方に間隔をおいて前記刃口のテーパ部に固定された固定板と、から構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩化ビニール製管のような低耐荷力の既設管を改築する場合でも、切り屑を詰まらせることなく、スクリューによって円滑に排出することができ、切り屑のつまりによって推進不能になる事態を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による既設管の改築推進装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の既設埋の改築推進機装置が適用される推進機を示す。
図1において、参照番号10は、推進機の全体を示す。この推進機10には、非開削で埋設管を地中に推進する工法で広く用いられる公知の推進機が利用される。参照番号50は老朽化した既設管である。この実施形態では、既設管50は、小口径低耐荷力管の代表的な管である塩化ビニル管が想定されている。参照番号60は、更新管を示している。この更新管60は、例えば、ヒューム管である。
【0014】
更新管60の始端位置には立坑14(以下、発進坑という)が掘削され、推進機10は発進坑14に運び込まれる。
推進機10においては、ベースとなるガイドフレーム15の上に推進機本体が移動可能に設置されている。この推進機本体の左右両側には、更新管60を押し出す推力を発生する油圧シリンダ16が配設されている。この油圧シリンダ16のピストンロッドの先端部は、反力受け17に固定されている。
【0015】
推進機本体10では、次のようなアタッチメントが接続されている。すなわち、アタッチメントは、螺旋状のブレードが軸方向に延びているスクリュー18と、このスクリュー18の先端に取り付けられるカッターヘッド20と、1本ずつ継ぎ足される更新管60と、先導管22とから構成されている。
【0016】
スクリュー18は、更新管60の内側のケーシング21に同軸に収容されており、推進機10の備える油圧モータの駆動トルクは図示しない中空式減速機を介してスクリュー18に伝えられる。これと同時に、更新管60には、推進機10から油圧シリンダ16で発生する推力が加えられる。なお、更新管60、ケーシング21およびスクリュー18は、推進が延びるにしたがって、1本づつ継ぎ足しながら推進作業が行われる。
【0017】
先頭の更新管60の先端には、先導管22が接続されている。そして、先導管22の先端には、カッターヘッド20が取り付けられている。このカッターヘッド20は、スクリュー18と一体で回転する。
【0018】
次に、図2は、既設管50をカッターヘッド20によって破砕したときに生じる切り屑を強制的に排出される機構を示す。
カッターヘッド20は、ヘッド本体を構成する円板状の面板24を有し、この面板24には、複数個のカッター26が半径方向にそって配列されている。
【0019】
面板24の中心には、延長軸27が自在継手28を介して連結されている。自在継手28を用いているのは、既設管50に対して更新管60が偏心している場合にも追従して対応できるようにするためである。この延長軸27は、スクリュー軸19と同軸になっている。この延長軸27の先端には制止円板29が取り付けられている。この制止円板29は、既設管50の内径よりもやや小さな径を有している円板である。既設管50の内周面と制止円板29との間にできる隙間を止水するため、制止円板29の外周部にはシール部材25がボルトを介して取り付けられている。このような制止円板29が面板24の前方に所定の距離をおいて配置されているため、カッタヘッド20のカッター26によって破砕された既設管50の切り屑は、制止円板50により前方への移動が規制されるようになっている。なお、制止円板29と面板24とにより仕切られた空間は、切り屑が一時的に貯まる空間になるため、推進機の推進能力や破砕能力に応じて適当な長さの延長軸27が用いられている。この実施形態では、延長軸の長さは約0.5メートルである。
【0020】
次に、面板24と制止円板29との間に一時的に溜まった切り屑を詰まらせることなくに後方に排出させるための手段について説明する。
図2に示すように、延長軸27には、面板24の前面における切り屑を強制排出させるためのスクリューブレード30が設けられている。この場合、スクリューブレード30は、スクリュー18のブレードとは同ピッチの関係にあり、スクリュー18と同様に切り屑を後方に向けて送るようになっている。
【0021】
次に、面板24の後方にある排出された切り屑を細かく破砕する手段について説明する。面板24の中央部には、土砂や切り屑を導入する開口31が形成されている。また、面板24の後方にあっては、スクリュー18への導入口を形成する刃口31が区画されており、土砂や切り屑はこの刃口32からスクリュー18に導入される。この刃口32は、スクリュー18側に向かって縮径していくテーパ部33を有している。
【0022】
スクリュー軸19には、面板24の背後に位置するように、破砕羽根34が取り付けられている。この破砕羽根34は、90度ごとに4枚取り付けられ、それぞれの破砕羽根34は、スクリュー18のブレードと同じ方向のピッチをもつように角度を付けて取り付けられている。そして、この破砕羽根34と協働して切り屑を細かく破砕する固定羽根35が破砕羽根34と所定の距離をおいてテーパ部33に固定されている。
【0023】
なお、図2において、参照番号36は、注水弁を示す。この注水弁36は、注水口を開閉する弁で、注水口からはスクリュー軸19と延長軸27の内部に形成されている水通路から供給される水がスクリューブレード30に向けて吐出される。
【0024】
本実施形態による既設管の改築推進装置は、以上のように構成されるものであり、次に、老朽化した塩化ビニル製の既設管50に沿って更新管60を推進し、下水道管を改築する工程を順を追って説明する。
まず、図1に示すように、既設管50の始端位置に発進坑14を掘削しておく。推進機10は発進坑14に設置する。
【0025】
推進機10でカッタヘッド20を回転させ、カッター26で既設管50を破砕しつつ推進機10の油圧シリンダ16のピストンロッドを伸長させて先導管22を押し込む。先導管22の推進を延ばしつつ、更新管60、スクリュー18、ケーシング20を順次継ぎ足しなから推進していく。
このようにして既設管50を破砕していくと、塩化ビニルなどの樹脂製の柔らかい材料からなる既設管50では、切り屑は短く切断されずにひも状に連続した長い切り屑になることが多い。
【0026】
図5に示すように、従来の改築推進装置では、切り屑70を排出させることが難しかったので、既設管50の内部に溜まる一方になる。しかも、切り屑70は、次第に丸まってきて、面板24の前には塊になった状態で溜まってくる。この切り屑70の塊は、土砂、とりわけ粘土質の場合には、粘土が切り屑の間の隙間に詰まると大きな塊となって、面板24の開口を閉塞させてしまう。こうなってしまうと、スクリューによる排土に支障が生じ、場合によっては、推進不能になるおそれがあった。
【0027】
これに対して、図2に示すように、本実施形態の改築推進装置では、面板24から前方に延びる延長軸27には、スクリューブレード30が設けられているので、次のようにして切り屑を強制的に後方に排出させることができる。
【0028】
既設管50の破砕を進行している間は、切り屑70が絶え間なく発生することになるが、面板24の前方には制止円板29があるため、切り屑70は制止円板29にあたってこれ以上前方に移動することはない。そして、スクリューブレード30は、スクリュー18と同じ方向のピッチになっており、スクリュー18といっしょに回転することで、面板24と制止円板29の間にある切り屑70を、既設管50の中に残留させることなく、面板24の開口31から後方に排出させる。なお、この間、注水弁36は開いており、水を注水することにより、ススクリューブレード30による切り屑と土砂の排出性を高めることができる。
【0029】
こうして切り屑70は面板24の後方に排出されると、スクリュー軸28に取り付けてある破砕羽根34と、刃口32に固定されている固定羽根35との協働により細かく剪断される。塩化ビニール製の既設管50の場合には、切り屑70は連続した長いものになる傾向があるが、刃口32での剪断により細かい断片にすることにより、スクリュー18での排出性が良好になり、途中でスクリュー18のブレードに絡まって排出できなくなるような事態を未然に防止することができる。また、排出性の向上により、土砂や切り屑の排出にバキュームポンプによる吸引方式を採用することも可能になり、より一層の排出性向上を実現することができる。
【0030】
次に、図3は、既設管50が先導管22に対して偏心しているときの切り屑排出作用を示す図である。
スクリュー軸19と延長軸27とは同軸になっていると同時に、延長軸27と制止円板29も同軸になっているので、既設管50が先導管22に対して偏心している場合には、スクリューブレード30は回転できなくなるおそれがある。
【0031】
この点、本実施形態のように、延長軸27が自在継手28を介して面板24と連結されているので、先導管22が偏心していても、その偏心に追従して延長軸27は傾くことができる。このため、スクリューブレード30を円滑に回転させて、切り屑の排出機能を維持することができる。
【0032】
次に、図4は、本発明の既設管の改築推進装置の他の実施形態を示す。
図2に示した実施形態では、切り屑70を強制的に排出される機構として、延長軸27にスクリューブレード30を設けた例を示したが、図4には、シリンダを用いて制止円板29を前後に移動させる機構が採用されている。
【0033】
この場合、一対のシリンダ38が駆動源に用いられている。延長軸27の先端部には、支持部材39が延長軸27と直角に取り付けられており、この支持部材39にシリンダ38のエンド側が取り付けられている。シリンダ38のピストンロッドの先端は制止円板29と連結されている。この場合、制止円板29にはスライドスリーブ40が取り付けれており、このスライドスリーブ40は延長軸27をガイドに摺動自在に嵌合するようになっている。なお、延長軸27は、制止円板29と自在継手を介して連結されていることは図2の実施形態と同様である。
【0034】
以上のようにブレードスクリュー30の替わりに、シリンダ38によって制止円板29を前後に移動させることによっても、切り屑70を面板24の前方に溜めることなく強制的に排出させることができる。すなわち、制止円板29を図中実線で示す位置から、面板24に近づけるようにして後方に移動させると、切り屑70は圧縮されながら押し出されるようにして面板24の開口31から排出される。刃口31に排出された切り屑70は、破砕羽根34と、固定羽根35との協働により細かく剪断されてから、スクリュー18で後方に送られる。
【0035】
以上、本発明に係る既設管の改築推進装置について、塩化ビニール製の既設管の改築推進工程を例にして説明したが、本発明は、塩化ビニール製の管以外にも適用可能なことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による既設管の改築推進装置の全体を側面図である。
【図2】本発明の既設管の改築推進装置による既設管の破砕作用を示す断面図である。
【図3】既設管に対して推進管が偏心している場合の既設管の破砕作用を示す断面図である。
【図4】本発明の改築推進装置の他の実施形態の要部を示す断面図である。
【図5】従来の既設管の改築推進装置における切り屑の発生状況を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 推進機
14 発進抗
15 ガイドフレーム
16 油圧シリンダ
18 スクリュー
19 スクリュー軸
20 カッターヘッド
22 先導管
24 面板
26 カッター
27 延長軸
28 自在継手
29 制止円板
30 スクリューブレード
34 破砕羽根
35 固定羽根
36 注水弁
50 既設管
60 更新管
70 切り屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設管をカッタヘッドで破砕しながら、同時に、先行させる先導管とともに新しい更新管を推進する既設管の改築推進装置において、
前記カッタヘッドの面板の前方に配置され、前記既設管の内径よりもやや小さな径を有し、前記カッタヘッドにより破砕された既設管の切り屑の前方への移動を規制する制止円板と、
前記カッタヘッドによる既設管の切り屑を前記面板の後方に強制的に排出させる強制排出部と、
前記面板の後方でかつスクリューの先端の前方に位置する刃口に配置され、前記刃口に導出された切り屑を細かく破砕する切り屑破砕部と、
を備えたことを特徴とする既設管の改築推進装置。
【請求項2】
前記強制排出部は、前記円板を支持し前記面板からスクリュー軸と同軸に延びる延長軸に設けられた前記スクリューと同ピッチのピッチスクリューからなることを特徴とする請求項1に記載の既設管の改築推進装置。
【請求項3】
前記延長軸は、前記面板と自在継手を介して連結されたことを特徴とする請求項2に記載の既設管の改築推進装置。
【請求項4】
前記強制排出部は、前記円板を支持し前記面板から延びる鉛直軸を案内にして、前記円板を前後に移動させるシリンダからなることを特徴とする請求項1に記載の既設管の改築推進装置。
【請求項5】
前記強制排出部は、前記空間内に注水するための注水弁を有し、前記円板の外周部には、止水ゴム板が取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の既設管の改築推進装置。
【請求項6】
切り屑破砕部は、前記面板の背後の位置でスクリュー軸の先端部に取り付けられた破砕羽根と、前記破砕羽根の後方に間隔をおいて前記刃口のテーパ部に固定された固定板と、からなることを特徴とする請求項1に記載の既設管の改築推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−121376(P2010−121376A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296822(P2008−296822)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】