説明

既設管更生工法

【課題】管ライニング材とセグメントを用いて既設管を更生するとともに、強度を持たせて自立管としても機能させる既設管更生工法を提供する。
【解決手段】既設管10内に、セグメント1を周方向並びに管長方向に連結して得られるセグメントからなる更生管12を構築する。そのあと、セグメントからなる更生管12内に液状の硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材2を挿入して該管ライニング材を該更生管の内周面に押し当てた状態で硬化性樹脂を硬化させ、セグメントからなる更生管の内周面を前記管ライニング材でライニングする。このような構成では、既設管内にセグメントからなる更生管と管ライニング材からなる更生管とが構築され、地震など大きな衝撃が加わっても、破壊ないし損傷が少ない強度を顕著に向上させた自立管を構築することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水管、農業用水管、電力管、通信管などの既設管を更生するための既設管更生工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された上下水管等の管路が老朽化した場合、該管路を地中から掘出することなく、その内周面にライニングを施して管路を補修する管ライニング工法が知られている。この管ライニング工法では、外周面が気密性の高いフィルムで被覆された可撓性の管状樹脂吸収材に硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材が流体圧によって管路内に反転により挿入され、又は引き込みにより挿入される。管ライニング材は管路内周面に押圧された状態で加温され、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂が硬化されて管路の内周面にライニングが施される(特許文献1)。
【0003】
一方、大口径の既設管を更生するために、セグメントを既設管の周方向及び管長方向に順次連結して更生管として組み立て、この更生管の外周と既設管の内壁面の隙間にグラウト材などの充填材を充填し硬化させて複合管を構築する既設管の更生方法が下記の特許文献2、3などにより知られている。
【0004】
この更生管の単位部材となるセグメントは、内面板、側板、端板で画成されたプラスチックで一体成形したブロックとして形成されており、適当に補強板、リブを設けてセグメントの強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−165158号公報
【特許文献2】特開2003−214098号公報
【特許文献3】特開2005−299711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の熱硬化性樹脂を含浸させたライニング材を用いた管更生、あるいはボックスカルバートの更生では、更生管などに強度を持たせようとすると、ライニング材を厚くしなければならず、多量の樹脂を必要とするので、ライニング材搬送途中に樹脂が硬化してしまうのを防止するために多量の氷や冷却水などの冷却媒体が必要になる。その結果、コストが上昇すると共に、施工工事が困難になるという問題があった。
【0007】
また、セグメントを用いた更生管や、ボックスカルバートなどの敷設物の更生では、更生管や更生構造物として組み立てたときの各セグメント部材の既設管等に向かう外周面は、むきだしになっている。既設管と更生管又は更生構造物の間にグラウト材などの充填材が充填されるにしても、既設管等の破損が激しい場合には、充填材に直接外部から衝撃が加わることがあり、充填材の強度が弱いことから更生管等の損傷も激しくなるという問題があった。また、セグメントを用いた更生管では、周方向には、内部骨格構造が少なく、外力あるいはウォーターハンマーなどの内部圧力に対して変形を起こし易くなる。さらに技術背景で記載したプラスチックで一体成形したブロック状に形成されているセグメントでは、セグメント強度を増大させるには、板厚を変更しなければならず、また樹脂成形用に金型を製作すると莫大なコストがかかるという欠点があった。
【0008】
いずれにしても、従来の更生管では、既設管の修復には適しているが、外部又は内部から大きな衝撃を受けた場合には、損傷ないし破壊してしまう場合があり、自立管としては、その強度が不十分であった。
【0009】
本発明の課題は、このような問題を解決するもので、ライニング材とセグメントを用いて既設管を更生するとともに、強度を持たせて自立管としても機能させることが可能な既設管更生工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)は、
既設管内に更生管を構築して既設管を更生する既設管更生工法であって、
既設管内に、セグメントを周方向並びに管長方向に連結して得られるセグメントからなる更生管を構築し、
既設管と前記セグメントからなる更生管との間の間隙に充填材を注入し、
前記セグメントからなる更生管内に液状の硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材を挿入して該管ライニング材をセグメントからなる更生管の内周面に押し当てた状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、セグメントからなる更生管内に管ライニング材からなる更生管を構築し、
既設管を、セグメントからなる更生管と管ライニング材からなる更生管の2層の更生管で更生することを特徴とする。
【0011】
また、本発明(請求項4)は、
既設管内に更生管を構築して既設管を更生する既設管更生工法であって、
既設管内に液状の硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材を挿入して該管ライニング材を既設管の内周面に押し当てた状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、既設管内に管ライニング材からなる更生管を構築し、
前記管ライニング材からなる更生管内に、セグメントを周方向並びに管長方向に連結して得られるセグメントからなる更生管を構築し、
前記管ライニング材からなる更生管とセグメントからなる更生管との間の間隙に充填材を注入し、
既設管を、管ライニング材からなる更生管とセグメントからなる更生管の2層の更生管で更生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、既設管内に異なる部材による2層の更生管、つまりセグメントからなる更生管とライニング材からなる更生管とが敷設され、既設管と2層の更生管を一体化させた複合管を構築することができるので、地震など大きな衝撃が加わっても、破壊ないし損傷が少ない強度を顕著に向上させた自立管を構築することが可能となる。
【0013】
最初に、既設管内にセグメントからなる更生管を構築し、そのセグメントに、隣接するセグメントとの間に間隙を発生させる凹部を形成しておくと、更生管の内周面をライニング材でライニングしたとき、該間隙に流れ込んだライニング材の硬化性樹脂により隣接する各セグメントが接着する。従って、更生管の内周面がライニングされるとともに、隣接するセグメント同士が接着し、各セグメントが堅固に結合されて一体化するので、更に堅固な複合管が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明に使用されるセグメントの構造を示した斜視図、(b)は背面から見たセグメントの斜視図である。
【図2】セグメントを周方向に連結して得られる管ユニットの外観を示した斜視図である。
【図3】管長方向に連結したセグメントを示す上面図である。
【図4】既設管内にセグメントを用いて更生管を敷設したときの既設管の断面図である。
【図5】既設管内に組み立てられたセグメントからなる更生管を示す斜視図である。
【図6】セグメントからなる更生管を既設管内に構築し更に該更生管の内周面を管ライニング材でライニングする方法を示した説明図である。
【図7】管ライニング材の構成を示す斜視図である。
【図8】図6で示す方法で更生された既設管の断面図である。
【図9】内周面に樹脂流入用の凹部が形成されたセグメントの斜視図である。
【図10】図9に示すセグメントを周方向に連結して得られる管ユニットの斜視図である。
【図11】図9に示すセグメントを周方向並びに管長方向に連結して得られる更生管の内周面を示す説明図である。
【図12】(a)は図9に示すセグメントを用いて更生管を既設管内に組み立て、更に更生管の内周面を管ライニング材でライニングしたときの既設管の断面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
【図13】セグメントに樹脂流入用の凹部を形成する他のセグメントの内周面を示す説明図である。
【図14】セグメントの他の実施例を示す斜視図である。
【図15】図14のセグメントを用いて既設ボックスカルバート内に更生ボックスカルバートを構築したときの複合管を示す斜視図である。
【図16】管ライニング材でライニングされた既設管内にセグメントを組み立てて更生管を構築する方法を示した説明図である。
【図17】図16に示す方法で更生された既設管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、ここでは円管として構成される既設管における実施例を説明するが、管長方向に直交する断面形状が矩形など円形以外の形状の既設管にも本発明を適用できることは勿論であり、更に、前記断面形状が管として閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形、凹字形など片側が開いた形状である場合にも管と見なして本発明を適用することができる。また、本発明により更生される既設管は、上下水道などの地中に埋設された流路や、農業用水管、マンホール、電力管、通信管、ボックスカルバート等の構造物、あるいは地上のトンネルなどの種々の構造物を含むものである。
【実施例1】
【0016】
図1(a)、(b)には、既設管を更生する更生管の単位組み立て部材となるセグメント1が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側のそれぞれ縁部に垂直に立設された側板102、103と、同内面板101の管長方向に延びる両端のそれぞれ縁部に垂直に立設された端板104、105とをプラスチック材を用いて一体に成形したブロック状の部材である。セグメント1の側板102、103並びに端板104、105は同じ高さで内面板101の周縁を四方から包囲する外壁板となっている。セグメントは、円周を複数等分する所定角度、例えば5等分する72度の円弧状に湾曲した形状となっているが、円弧型ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0017】
セグメント1の機械的強度を補強するために、側板102,103の内側で内面板101の上面に垂直に、側板と同様な複数の内部板(補強板)106、107が側板102、103と平行に設けられる。また、側板102,103の内側面と内部板106,107の両側面には、それぞれの変形を防ぐために側方に張り出した凸板103b,106b,107bが複数箇所に形成され、リブ構造となってセグメント1の強度を高めている。
【0018】
側板102、103には、セグメントを管長方向に連結するボルトやネジなどの連結部材を挿通するための挿通穴102a、103aが周方向に複数形成されている。また、内部板106にも、該連結部材を挿通するための複数の挿通穴106aが形成されている。挿通穴106aの径は、挿通穴102a,103aの径より小さくなっている。さらに、内部板107には、複数の切り欠き部107aが形成されている。また、端板104、105には、セグメント1どうしを周方向に連結するためにボルトを通す穴104a、105aが複数形成される。
【0019】
内面板101、側板102,103、端板104,105、それに内部板106、107、並びに各凸板は、いずれも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0020】
各セグメント1は、その端板104と105の外側面を密着させ、ボルト6(図3)を挿通穴104a、105aに挿通させてナット(不図示)を螺合させ、両端板104、105を締め付けることにより、周方向に連結される。
【0021】
セグメント1の周方向の連結は、各内面板101の内周面が均一な面となるように、また各側板102、103の外側面がそれぞれ同一面となるように、行われるので、セグメント1を順次周方向に連結させると、図2に示すようなリング状の閉じた所定の短い長さの管体100(以下、管ユニットという)を組み立てることができる。管ユニット100は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅Dで輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき管の内径より小さな値となっている。セグメント1は、この管ユニット100を、径方向Rに沿った切断面で周方向に複数個に分割(好ましくは等分)したときに得られる部材に相当する。
【0022】
なお、図2では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107、凸板などの補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。また、この明細書において、管長方向とは図2で管ユニット100の管の長さ方向に延びる矢印Xで示した方向を、径方向とは、管ユニット100の中心軸に向かう放射状の矢印Rで示した方向を、周方向とは管ユニット100の円の周方向をいう。
【0023】
図3には、1セグメントあたり複数のナットと長ボルトを用いてセグメント1ないし管ユニット100を管長方向へ連結する状態が図示されている。
【0024】
ナット42は、側板102、103の穴102a、103aを通過でき、内部板106の穴106aは通過できないような大きさである。長ボルト41は、ボルト頭41aが側板102、103の穴102a、103aを通過でき、内部板106の穴106aは通過できず、ボルト芯41bは、側板102、103の穴102a、103a、内部板106の穴106a、内部板107の切り欠け部107aを通過できるようになっている。
【0025】
セグメントの管長方向の連結には、まずナット42をセグメント1に固定する。この固定は、ナット42を側板102の穴102aに通して内部板106に当接させ、反対側からボルト43をナット42にねじ込んで、ナット42をセグメント1の内部板106に固定することにより行われる。このとき、ナット42は側板102から突出し、その突出量が、図3で符号tで示すように、連結される他のセグメントの側板103の板厚より大きくなっている。ナット42のセグメント1への固定は、図2に示したように、セグメント1を周方向に連結した後に行ってもよく、あるいは最初にセグメント1にナット42を固定してから、セグメントを周方向に連結して管ユニット100を構成するようにしてもよい。
【0026】
続いて、ナット42が固定されたセグメント1と、そのセグメントに連結しようとする他のセグメント1を、各内面板101の内周面が均一な面となるように、また側板102の穴102aから突出しているナット42を他のセグメント1の側板103の穴103aに通し、両セグメント1の側板102、103を密着させる。この状態で、図3で矢印で示したように、長ボルト41を、他のセグメント1の側板102の穴102a、内部板106の穴106a、内部板107の切り欠き107aに通しナット42にねじ込んで、両セグメント1、1を締め付け管長方向に連結する。
【0027】
なお、管ユニットないしセグメントの管長方向の連結は、図3に示した方法以外の種々の方法で、例えば、特許文献3に示したような連結部材を介して行うこともできる。
【0028】
図4には、既設管10内に敷設されたセグメント1からなる更生管12が図示されている。セグメント1は、マンホール11に搬入されて、周方向に順次連結して管ユニット100が組み立てられ、既設管10内に運ばれる。管ユニット100のセグメント1は、図3に示した方法、あるいは他の公知の方法で他の管ユニット100のセグメント1と管長方向に連結される。なお、図3、図4からわかるように、各管ユニット100は、各管ユニットを構成するセグメント1の周方向の隣接部1aが互いにずれるように連結される。このような連結によりセグメントからなる更生管の強度を高めることができる。
【0029】
以上のようにして、管ユニット100を管長方向に順次連結することにより内周面が均一な更生管12を既設管10内に敷設することができる。敷設された更生管12が図5にも斜視図として図示されている。更生管12と既設管10間の間隙と、更生管12の各セグメントの側板と端板に囲まれた空間には、グラウト材からなる充填材13が注入されるので、更生管12は十分な強度を持って既設管10と一体化される。
【0030】
本発明では、既設管10を更に強度を持たせて更生するために、セグメントからなる更生管12の内周面を管ライニング材を用いてライニングする。この方法が図6に図示されている。
【0031】
管ライニング材2は、図7に示したように、可撓性の管状樹脂吸収材201の外周面(反転後は内周面となる)をポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又は塩化ビニール等の気密性の高いプラスチックフィルムからなる柔軟なチューブ202で被覆した柔軟な管状ライニング材である。管状樹脂吸収材201は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチック繊維を用いた不織布、織布、あるいはマット;あるいはガラス繊維を用いた織布、あるいはマット;あるいは上記プラスチック繊維とガラス繊維を組み合わせた不織布、織布、あるいはマットからなり、管状樹脂吸収材201には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又はエポキシ樹脂などの液状の未硬化の熱硬化性樹脂が含浸される。熱硬化性樹脂の代わりに、あるいは熱硬化性樹脂と共に、光硬化性樹脂を、管状樹脂吸収材201に含浸させることもできる。
【0032】
管ライニング材2の先端部2aは、図6に示したように、閉じられ、後端部2bは開かれており、マンホール11内に設置された圧力容器20の下端部に形成された開口部に対して気密性をもって結合される。
【0033】
圧力容器20には、エアコンプレッサー21がパイプ22を介して接続されている。また、圧力容器20の下方部には、排水パイプ23が設けられており、この排水パイプ23には、地上に設置された温水ポンプ25に接続された温水ホース24が接続されている。温水ポンプ25はパイプ26を介して蒸気槽27の下部に接続され、後述するように、硬化中の管ライニング材2の下部に滞留する温水28を蒸気槽27に供給する。蒸気槽27は不図示のヒーターにより加熱され、内部の温水28が沸騰して蒸気29が発生する。蒸気槽27の上部にはパイプ30を介して蒸気ポンプ31が接続されており、この蒸気ポンプ31には蒸気ホース32が接続されている。
【0034】
蒸気ホース32は圧力容器20に気密性をもって接続され、管ライニング材2内に挿入されて、その先端部32aがロープ33によって管ライニング材2の先端部2aと結合される。蒸気ホース32は、管ライニング材2が挿入されるにつれて更生管12内に挿入される。蒸気ホース32には多数の噴出口32bが形成されており、その噴出口32bを介して、蒸気がミスト34として管ライニング材2に向けて噴出される。
【0035】
このような構成において、管ライニング材2は、圧力容器20内に収納されて(あるいは外部から気密に圧力容器20内に供給される)、その開放端2bが圧力容器20の下端部に形成された開口部に気密に取り付けられる。圧力容器20内にエアコンプレッサー21から圧縮空気を供給すると、管ライニング材2は反転しながら更生管12内に挿入されていく。
【0036】
管ライニング材2が所定長さ挿入されると、蒸気槽27の蒸気29が蒸気ポンプ31により蒸気ホース32に供給される。管ライニング材2は圧縮空気により円形に膨張して更生管12の内周面に押し付けられた状態になっており、この状態で、蒸気ホース32の噴射口32bから蒸気がミスト34として管ライニング材2に吹き付けられるので、管ライニング材2に含浸された熱硬化性樹脂が硬化し、セグメントからなる更生管12の内周面にライニングが施される。
【0037】
管ライニング材2に噴射された蒸気は下方に温水28として貯留し、この温水が排水パイプ23などを介して蒸気槽27に戻されて再び加熱され、蒸気として蒸気ホース32に供給される。従って、温水の循環システムが形成されるので、省エネルギーを可能にするライニングが施される。また、蒸気はミストとして噴出されるので、均一に樹脂を硬化させることができる。
【0038】
更生管12内で硬化した管ライニング材2はその端部2a、2bが切断され、セグメントからなる更生管12と一体化された管ライニング材2からなる更生管が形成される。
【0039】
なお、上述した例では、管ライニング材を反転により既設管内に挿入しているが、引き込みにより挿入することもできる。また、蒸気により熱硬化性樹脂を硬化させているが、温水そのもの又は温水をミストにしてあるいはシャワリングさせて噴射させ、硬化させることもできる。温水ミストあるいは温水シャワリングにより管ライニング材2を硬化させる場合には、蒸気槽27に代えて温水槽を用い、蒸気ホース32に代えて、多数の噴射口のある温水ホースを用いるようにする。樹脂を硬化させる熱媒に熱風を用いる場合には、熱風を供給して管ライニング材を硬化させる。また、樹脂吸収材201内に光硬化性樹脂を含浸させる場合には、熱媒に代えて、紫外線などの光を管ライニング材に照射し、管ライニング材を硬化させる。
【0040】
このように、本発明では、図8に示したように、既設管10内に異なる部材による2層の更生管、つまり管ライニング材2からなる更生管と、セグメント1からなる更生管12が敷設される。更生管12と既設管10は充填材13を介して一体化されており、また管ライニング材2に含浸された樹脂は更生管12のセグメントと接着するので、既設管10と、セグメントからなる更生管12と、管ライニング材2からなる更生管が一体となった複合管が構築され、地震など大きな衝撃が加わっても、破壊ないし損傷が少ない大強度の自立管が得られる。自立管として要求される強度によっては、つまり、それほど強度が要求されない場合には、管ライニング材を薄くすることもできるので、管ライニング材による更生工事を円滑に、また早く行うことが可能となる。また、管ライニング材を厚くする場合には、セグメントの内部骨格構造を少なくすることができるので、安価なセグメントを用いた更生管を構築することができる。
【実施例2】
【0041】
管ライニング材2の管状樹脂吸収材201に含浸されている樹脂は、接着剤として機能するので、この樹脂を用いてセグメント同士を接着させれば、セグメントからなる更生管の強度を高めることができる。
【0042】
そのために、図9に示したように、セグメント1の内周板101の内周面の四方外周を低くし、樹脂の通路となる凹部(へこみ)101aを形成する。凹部101aは、内周板101の外周四方に形成するのではなく、その一方、2方又は3方だけに形成するようにしてもよい。このようにセグメントの内周面に凹部を形成しておくと、セグメントを周方向及び管長方向に連結したとき、図10、図11に示したように、隣接するセグメント1、1間に凹部101aによる間隙(ギャップ)1bが形成される。
【0043】
このようなセグメントを用いて既設管内に更生管を組み立てたあと、図6に示したように管ライニング材2を挿入して、圧縮空気を供給して膨張させ、管ライニング材2をセグメントの内周面(更生管12の内周面)に押圧すると、管状樹脂吸収材201に含浸されていた液状の硬化性樹脂は、セグメント1の凹部101aにより形成された間隙1b内に流れ出し、図12(a)、(b)に示したように、セグメント1の間隙1bないし凹部101aに管状樹脂吸収材201の樹脂14が貯留するようになる。
【0044】
この状態で、管ライニング材2を加熱あるいは光照射すると、管状樹脂吸収材201に含浸されていた樹脂が硬化することにより、更生管12の内周面がライニングされる。それと同時に、セグメント1の間隙1bないし凹部101aに流れ込んだ樹脂14も硬化するので、隣接するセグメント同士が接着され、各セグメントが堅固に結合されて一体化する。従って、管ライニング材2によるライニングにより更生管12の厚みが増加するだけでなく、更生管12を構成するセグメントが一体になる分も含めて作用する内外圧に対して強度のある構造が得られる。
【0045】
また、セグメントの接着強度次第で、セグメントを管長方向に連結するボルト41とナット42(図3)の数を減少させたり、あるいはボルトとナットによる連結を省略することができ、工事を短縮化して工費を顕著に減少させることができる。なお、セグメント1の間隙1bないし凹部101aに樹脂が流れ込むので、この分量を考量して管状樹脂吸収材201の樹脂含浸量を多くしておく。
【0046】
なお、セグメント1の内周面に形成する凹部101aは、セグメントの四方外周部だけでなく、図13に示したように、側部に矩形状の凹部101bを形成したり、あるいは溝状の凹部101cを形成して隣接するセグメントの接着に使用される樹脂が流れ込む隙間を多くすることもできる。また、凹部ないし溝の形状、大きさは、図示したものに限定されるものでなく、隣接するセグメントとの間に樹脂が流れ込む間隙を形成できるものであれば、任意の形状、大きさにすることができる。
【0047】
また、樹脂が流れ込む間隙は、セグメントの内周面に形成するのではなく、図14に示したように、セグメントの側板、端板に形成することができる。
【0048】
図14に示すセグメント5は、図15に示したように、断面が矩形状の既設ボックスカルバート50を更生するもので矩形を4分割して得られる直角に屈曲した形状を有している。セグメント5は、セグメント1と同様に、内面板501、側板502、503、端板504、505をプラスチックで一体に成形したもので、強度を持たせるために、セグメント1と同様に、内部板(不図示)が設けられており、リブ構造となっている。側板502、503、端板504、505には、それぞれセグメント5を周方向、管長方向に連結するためのボルトを挿通するための穴502a、504a、505a(側板503の穴は不可視)が形成されている。
【0049】
セグメント5では、側板502と端板504に樹脂が流れ込む凹部502b、504bが形成される。凹部502b、504bの占める面積は、側板502、端板504の全面積の半分ないしそれ以上となっている。また、側板503と端板505は、均一な平坦な面となっている。
【0050】
セグメント1と同様に、セグメント5を、周方向並びに管長方向にボルト、ナットなどを用いて連結して既設ボックスカルバート50内に更生ボックスカルバート51(図15)を敷設することができる。このとき、図15には図示されていないが、既設ボックスカルバート50と更生ボックスカルバート51の間隙には、グラウト材などの充填材が充填され、既設ボックスカルバート50と更生ボックスカルバート51が一体化される。
【0051】
セグメント5を周方向に連結すると、セグメント5の端板504と他のセグメント5の端板505が当接することから、その間に凹部504bによる間隙が形成され、またセグメントを管長方向に連結すると、セグメント5の側板502と他のセグメント5の側板503が当接することからその間に凹部502bによる間隙が形成される。
【0052】
この状態で、図6に示した方法で管ライニング材2と同様な構成のライニング材2’を更生ボックスカルバート51内に挿入して圧縮空気により膨張させ、ライニング材2’を更生ボックスカルバート51の内周面に押圧すると、管状樹脂吸収材に含浸されていた液状の硬化性樹脂は、セグメント5の凹部502b、504bにより形成された間隙に流入する。ここで、ライニング材2’を加熱あるいは光照射すると、管状樹脂吸収材に含浸されていた樹脂が硬化することにより、更生ボックスカルバート51の内周面がライニングされるとともに、凹部502b、504bに流れ込んだ樹脂も硬化するので、隣接するセグメント同士が接着され、各セグメントが堅固に結合されて一体化し、上述したのと同様な効果が得られる。
【0053】
なお、セグメントはプラスチックでできており、高熱には弱いので、管ライニング材2あるいはライニング材2’を加熱するとき、蒸気ミストを冷却するか、熱風をかけるかあるいは蒸気ホースから温水を供給し、温水ミストを噴出してライニング材2、2’の熱硬化性樹脂を硬化させるようにしてもよい。また、セグメントの材質、つまりプラスチックの特性に応じて、蒸気や温水などの熱媒の温度を設定するようにしてもよい。
【実施例3】
【0054】
実施例1、2では、既設管内に最初にセグメントからなる更生管を敷設し、その後に、管ライニング材によるライニングを行って2層の更生管を構築したが、逆に、最初に、管ライニング材を用いて既設管の内周面をライニングし、その後に、ライニングされた既設管内にセグメントからなる更生管を組み立てて2層構造にしてもよい。この方法が図16に図示されている。
【0055】
図6に示したのと同様な方法で、管ライニング材2が既設管10内に挿入され、圧縮空気により膨張されて既設管10の内周面に押圧される。この状態で、加熱あるいは光照射により管状樹脂吸収材201に含浸されていた樹脂が硬化して既設管10の内周面が管ライニング材2によりライニングされる。この状態が図16に図示されている。
【0056】
続いて、セグメントを周方向に連結して得られる管ユニット100をマンホール11からライニングされた既設管10内に搬入し、管ユニット100を管長方向に連結してセグメント1からなる更生管12を構築する。この更生管12の組み立て方は、図2、3に示したのと同様な方法で行われる。
【0057】
更生管12が組み立てられると、図17に示したように、既設管10のライニング面と更生管12間の間隙13、並びに更生管12の各セグメントの側板と端板に囲まれた空間に、グラウト材からなる充填材が注入され、ライニングされた既設管10と更生管12が堅固に結合して両管が一体化する。
【0058】
以上のようにして、既設管10の内部に管ライニング材からなる更生管とセグメントからなる更生管が敷設され、実施例1、2と同様に、既設管、2層の更生管が一体化した複合管を構築することができ、強度のある自立管を敷設することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 セグメント
2 管ライニング材
5 セグメント
10 既設管
11 マンホール
12 更生管
13 充填材
14 樹脂
20 圧力容器
27 蒸気槽
32 蒸気ホース
41 ボルト
42 ナット
43 ボルト
50 既設ボックスカルバート
51 更生ボックスカルバート
100 管ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内に更生管を構築して既設管を更生する既設管更生工法であって、
既設管内に、セグメントを周方向並びに管長方向に連結して得られるセグメントからなる更生管を構築し、
既設管と前記セグメントからなる更生管との間の間隙に充填材を注入し、
前記セグメントからなる更生管内に液状の硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材を挿入して該管ライニング材をセグメントからなる更生管の内周面に押し当てた状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、セグメントからなる更生管内に管ライニング材からなる更生管を構築し、
既設管を、セグメントからなる更生管と管ライニング材からなる更生管の2層の更生管で更生することを特徴とする既設管更生工法。
【請求項2】
前記セグメントに、隣接するセグメントとの間に間隙を発生させる凹部が形成され、該間隙に流れ込んだ管ライニング材の硬化性樹脂により隣接する各セグメントが接着されることを特徴とする請求項1に記載の既設管更生工法。
【請求項3】
前記管ライニング材を硬化させる温度をセグメントの材質に応じて設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の既設管更生工法。
【請求項4】
既設管内に更生管を構築して既設管を更生する既設管更生工法であって、
既設管内に液状の硬化性樹脂を含浸してなる管ライニング材を挿入して該管ライニング材を既設管の内周面に押し当てた状態で硬化性樹脂を硬化させることにより、既設管内に管ライニング材からなる更生管を構築し、
前記管ライニング材からなる更生管内に、セグメントを周方向並びに管長方向に連結して得られるセグメントからなる更生管を構築し、
前記管ライニング材からなる更生管とセグメントからなる更生管との間の間隙に充填材を注入し、
既設管を、管ライニング材からなる更生管とセグメントからなる更生管の2層の更生管で更生することを特徴とする既設管更生工法。
【請求項5】
前記管ライニング材に含浸される硬化性樹脂が、熱及び/又は光により硬化する樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の既設管更生工法。
【請求項6】
前記管ライニング材が反転あるいは引き込みにより管内に挿入されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の既設管更生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−106677(P2011−106677A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286881(P2010−286881)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2009−158311(P2009−158311)の分割
【原出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】