説明

日射熱制御膜材

【課題】テント構造物用膜材に適して用いられ、採光性、遮熱性と断熱性とを兼備する薄型の日射熱制御膜材の提供。
【解決手段】断熱樹脂層と、その一面上に赤外線反射樹脂層を設けた可撓性積層体として、断熱樹脂層を、熱可塑性樹脂組成物からなる充実部と、気泡粒と殻壁粒子とからなる非充実部とで構成し、非充実部は気泡粒と殻壁粒子による90:10〜50:50混成体積比率とし、断熱樹脂層の体積に対する非充実部の占有総和を20〜50体積%とし、さらに気泡粒の内壁表面に殻壁粒子の表面の一部を露出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱制御機能と採光性を有する、テント構造物用膜材、トラック幌用膜材、ルーフィング材用膜材、フレキシブルコンテナ用膜材などの産業資材に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明の膜材は、遮熱性と断熱性と採光性とを兼備し、夏季においては日射による膜材からの蓄熱伝導を遮蔽する効果を有し、冬季には暖房熱を外気に逃がし難い効果を有する、特にテント構造物用に適し、省エネルギー性に優れた採光性膜材に関する。
【背景技術】
【0002】
遮熱性と断熱性とを兼備するシート状物の例として、発泡ウレタンや発泡スチレン等の可撓性のあるシート部材に、樹脂塗料中に酸化チタンやアルミナおよび酸化ケイ素等の熱反射機能を持つセラミックや無機化合物を混入してなる熱反射型塗料層を設けた遮熱シート(特許文献1)、殻壁粒子を含有する下塗材により形成される断熱性下塗層と、赤外線反射性有色粒子を含有する装飾性塗材により形成される装飾材層を設けた建築物外装面用の遮熱断熱積層体(特許文献2)、光触媒含有層、保護層、セラミックス粉を含む熱制御性樹脂層、及びセラミックス粉末を含む樹脂発泡層とからなるテント構造物用の遮熱性防汚膜材(特許文献3)、軟質ポリ塩化ビニル樹脂基材層上に、熱可塑性樹脂に顔料が含有されて700〜2100nmの波長域における日射反射率が30%以上となる赤外線反射樹脂層が形成され、防水シート基材層と熱反射樹脂層との間に熱可塑性樹脂を発泡してなる発泡樹脂層が形成された屋根用防水シート(特許文献4)、780〜1600nmの近赤外線領域において30%未満の日射吸収率と、50%以上の日射透過率を有する表面層と、380〜780nmの可視光線領域において80%以上の日射吸収率を有し、且つ、780〜1600nmの近赤外線領域において85%以上の日射反射率を有し、且つ発泡倍率が1.2〜5.0倍の発泡樹脂組成物からなる近赤外線領域光反射層を有する着色合成樹脂シート状物(特許文献5)などの提案がなされている。
【0003】
これらのシート状物はいずれも気泡を多数含有する樹脂発泡層を含む構成を必須とするものである。一般的に樹脂発泡層は、樹脂発泡層の厚さが大きいほど断熱効果に優れ、さらに気泡の径が大きく、より気泡含有量が大きいほど断熱効果に優れている。このような層が厚く、気泡含有量が大きい樹脂発泡層をテント構造物用膜材に応用することは断熱性付与に極めて効果的であるが、しかし、膜材厚が増大することでテントの採光性を阻害する問題、膜材同士の接合部強度低下の問題などから実用性に乏しいのが現状であった。
【0004】
従って樹脂発泡層を有するシート状物でありながら、採光性を有し、膜材同士の接合部強度低下の心配がなく、特にテント構造物用膜材に適して用いられ、遮熱性と断熱性とを兼備する薄型の日射熱制御膜材が望まれていたのであるが、今までに薄い厚さの樹脂発泡層で遮熱性と断熱性とを兼備するようなシートは存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−107480号公報
【特許文献2】特開2009−090527号公報
【特許文献3】特許第4341752号公報
【特許文献4】特開2006−316411号公報
【特許文献5】特開2009−255487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、採光性を有し、膜材同士の接合部強度低下の心配もないシートであって、特にテント構造物用膜材に適して用いられ、遮熱性と断熱性とを兼備する薄型の日射熱制御膜材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、断熱樹脂層と、その一面上に設けられた赤外線反射樹脂層とを有する可撓性積層体において、断熱樹脂層を、熱可塑性樹脂組成物からなる充実部と、気泡粒と殻壁粒子とからなる非充実部とで構成し、非充実部における気泡粒と殻壁粒子を90:10〜50:50の混成体積比率とし、また、断熱樹脂層の体積に対する非充実部の占有総和を20〜50体積%、気泡粒の内壁表面に殻壁粒子の表面の一部を露出するようにして、さらに、赤外線反射樹脂層に無機金属化合物粒子を含み、これによって可撓性積層体が、波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106)85%以上及び、日射熱取得率(JIS R3106)10%以下を兼備することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の日射熱制御膜材は、断熱樹脂層と、その一面上に設けられた赤外線反射樹脂層とを有する可撓性積層体であって、前記断熱樹脂層が、熱可塑性樹脂組成物からなる充実部と、気泡粒と殻壁粒子とからなる非充実部とからなり、前記非充実部が前記気泡粒と前記殻壁粒子による90:10〜50:50の混成体積比率、及び、前記断熱樹脂層の体積に対する前記非充実部の占有総和が20〜50体積%、及び前記気泡粒の内壁表面に前記殻壁粒子の表面の一部が露出してなり、さらに、前記赤外線反射樹脂層が無機金属化合物粒子を含んでいて、前記可撓性積層体が、波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106)85%以上及び、日射熱取得率(JIS R3106)10%以下を兼備することが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材に遮熱性、断熱性及び採光性とを兼備さ殻壁ことを可能とする。
【0009】
本発明の日射熱制御膜材は、前記断熱樹脂層と、前記赤外線反射樹脂層との間に、繊維織物からなる基布層を含んでいることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材を好適に日よけテントやテント構造物用膜材に用いることができる。
【0010】
本発明の日射熱制御膜材は、前記断熱樹脂層と、前記基布層との間に、接着樹脂層を含んでいることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材を好適に日よけテントやテント構造物用膜材に用いることができる。
【0011】
本発明の日射熱制御膜材は、前記赤外線反射樹脂層が、繊維織物からなる基布層を含んでいることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材を好適に日よけテントやテント構造物用膜材に用いることができる。
【0012】
本発明の日射熱制御膜材は、前記赤外線反射樹脂層の表面に防汚層が設けられていることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材を好適に日よけテントやテント構造物用膜材に用いることができる。
【0013】
本発明の日射熱制御膜材は、前記無機金属化合物粒子が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、三酸化アンチモン(Sb23)、酸化インジウム(In23)、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上であることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材に好適な遮熱性を付与することができる。
【0014】
本発明の日射熱制御膜材は、前記殻壁粒子が、ガラス、シラス、シリカ、セラミック、及び有機高分子物質から選ばれた1種以上を殻壁として、空気、窒素、酸素、キセノンから選ばれたいずれか1種の気体を封入保持していることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材に好適な断熱性を付与することができる。
【0015】
本発明の日射熱制御膜材は、前記気体が、10〜1000hPaに減圧されていることが好ましい。これによって本発明の日射熱制御膜材に好適な断熱性を付与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の日射熱制御膜材は、採光性を有し、膜材同士の接合部強度低下の心配もないシートであり、特に遮熱性と断熱性とを兼備することで、日よけテントやテント構造物用膜材に適して用いることができる。これによって夏季においては日射による膜材からの蓄熱伝導を遮蔽する効果を有し、冬季には暖房熱を外気に逃がし難い効果を有するので、極めて省エネルギー性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の日射熱制御膜材の一例の断面を示す図
【図2】本発明の日射熱制御膜材の一例の断面を示す図
【図3】本発明の日射熱制御膜材の一例の断面を示す図
【図4】本発明の日射熱制御膜材の一例の断面を示す図
【図5】本発明の日射熱制御膜材の一例の断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の日射熱制御膜材は、断熱樹脂層と、その一面上に設けられた赤外線反射樹脂層とを有する可撓性積層体であり、特に繊維織物からなる基布層を含むことが好ましい。この基布層を含む位置は、1).赤外線反射樹脂層と断熱樹脂層との間、または2).赤外線反射樹脂層内のいずれかであり、1).の具体的構成としては、赤外線反射樹脂層/基布層/断熱樹脂層、2).の具体的構成としては、赤外線反射樹脂層/基布層/赤外線反射樹脂層/断熱樹脂層が例示できる。特に1).の場合、基布層と断熱樹脂層との間に接着樹脂層を含む構成であってもよく、具体的構成としては、赤外線反射樹脂層/基布層/接着樹脂層/断熱樹脂層が例示できる。
【0019】
本発明の日射熱制御膜材の赤外線反射樹脂層、断熱樹脂層、及び接着樹脂層に使用する樹脂は各層それぞれ、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体樹脂、シリコン樹脂、シリコン系共重合体樹脂などの熱可塑性樹脂が使用でき、単独もしくは、2種以上併用してもよい。本発明においては赤外線反射樹脂層と断熱樹脂層とが同一の熱可塑性樹脂で構成されることが好ましく、これにより得られる膜材同士の高周波溶着接合性が確保されると同時に得られる膜材の屈曲耐久性がより向上する。また接着樹脂層を形成する場合には、接着樹脂層も同一熱可塑性樹脂を用いることによって得られる膜材の屈曲耐久性をより向上させることができる。時に本発明において好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂等である。本発明の日射熱制御膜材の赤外線反射樹脂層、断熱樹脂層、及び接着樹脂層にはそれぞれ有機顔料、無機顔料による着色が可能であり、必要に応じて可塑剤、安定剤、充填剤、紫外線吸収剤、接着剤、防炎剤、防黴剤、滑剤等を含むことができる。
【0020】
本発明の日射熱制御膜材の赤外線反射樹脂層、断熱樹脂層、及び接着樹脂層の各層は、特に基布層を含み、繊維織物に対してディッピングやコーティングによる含浸被覆、繊維織物に対してのフィルムラミネートによる積層被覆、及びこれらの加工方法の組み合わせによって形成される。ディッピング法、コーティング法は上記熱可塑性樹脂によるエマルジョンや塩化ビニル樹脂のペーストゾルの使用が好ましく、またフィルムラミネートでは、上記熱可塑性樹脂をカレンダー法により成形したフィルムやシート、或いはTダイス押出成形して得たフィルムやシートを用いることができる。本発明において赤外線反射樹脂層、断熱樹脂層、及び接着樹脂層の各層は防炎性付与の観点から塩素原子を多量に含有する塩化ビニル樹脂を使用することが好ましく、公知の可塑剤、防炎可塑剤、及び公知の防炎剤を含有する防炎組成であることが好ましい。
【0021】
本発明の膜材の基布層に使用する繊維織物を構成する繊維は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維、木綿、麻、ケナフなどの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が使用でき、これらは単独で、或いは2種以上の混用で用いてもよい。繊維糸条はマルチフィラメント、短繊維紡績、モノフィラメント、スプリットヤーン、テープヤーンなどいずれであってもよい。本発明に使用する繊維布帛は、織布、編布、不織布のいずれでもよいが、得られる装飾シートの寸法安定性及び寸法バランスとの観点から織布が好ましく、特に平織、綾織、繻子織、模紗織などが好ましい。これらの織布は、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の織布(空隙率は最大50%、好ましくは5〜30%)、及び非粗目状織布(糸条間に実質上間隙が形成されていない空隙率0〜3%織布)を包含する。これらの織布には、必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などの薬剤処理が施されたものを用いてもよい。
【0022】
本発明の膜材の赤外線反射樹脂層には、無機金属化合物粒子を含有し、赤外線反射樹脂層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、無機金属化合物粒子を0.5〜30質量部、特に1〜15質量部含有することが好ましい。用いる無機金属化合物粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、三酸化アンチモン(Sb23)、酸化インジウム(In23)、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上であることが好ましい。このようにして得られた赤外線反射樹脂層の波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106−1998年)は85%以上であることが好ましい。無機金属化合物粒子の含有量が0.5質量部未満だと得られる膜材の日射反射率(JIS R3106−1998年)が85%未満となることがあり、また含有量が30質量部を越えると得られる膜材の赤外線反射樹脂層が脆くなり、膜材同士の端部を重ね合わせて熱溶着し、これによって接合部を形成した場合に、十分な接合部強度が得られないことがある。赤外線反射樹脂層の厚さは0.05〜1.0mm、特に0.1〜0.35mmであることが好ましい。赤外線反射樹脂層の厚さが0.05mm未満だと得られる膜材の日射反射率(JIS R3106−1998年)が85%未満となることがあり、また膜材同士の端部を重ね合わせて熱溶着し、これによって接合部を形成した場合に、十分な接合部強度が得られないことがある。また赤外線反射樹脂層の厚さが1.0mmを越えると得られる膜材の質量が増して施工性を悪くすることがある。
【0023】
本発明の膜材の断熱樹脂層には、気泡粒と殻壁粒子による90:10〜50:50の混成体積比率による非充実部を、断熱樹脂層の体積に対する占有総和として20〜50体積%含有することが好ましく、さらにこの気泡粒の内壁表面には殻壁粒子の表面の一部が露出していることが好ましい。非充実部とは断熱樹脂層において気泡粒と殻壁粒子から形成された占有空間を意味するもので、非充実部に対して充実部とは断熱樹脂層において占める熱可塑性樹脂を意味する。非充実部に占める殻壁粒子の体積比率が10未満だと、得られる膜材の日射熱取得率(JIS R3106−1998年)10%を越えることがあり、また殻壁粒子の体積比率が50を超えると、得られる膜材の断熱樹脂層が脆くなり、膜材同士の端部を重ね合わせて熱溶着し、これによって接合部を形成した場合に、十分な接合部強度が得られないことがある。また、断熱樹脂層の体積に対する非充実部の占有総和が20体積%未満だと、得られる膜材の日射熱取得率(JIS R3106−1998年)10%を越えることがあり、また非充実部の割合が50体積%を超えると、得られる膜材の断熱樹脂層が脆くなり、膜材同士の端部を重ね合わせて熱溶着し、これによって接合部を形成した場合に、十分な接合部強度が得られないことがある。
【0024】
本発明の膜材の断熱樹脂層において、非充実部を構成する気泡粒として、その粒径は10〜1000μmの混成で、特に粒径50〜500μmの気泡粒で気泡粒全体の60%以上を占めることが好ましい。気泡粒の粒径の主体が10μm未満だと得られる膜材の断熱効果(日射熱取得率10%以下)が不十分となることがあり、また1000μmを超える気泡粒が主体だと、得られる膜材の断熱樹脂層の屈曲強度や摩耗強度を脆くすることがある。また非充実部を構成する殻壁粒子として、その粒子径は0.1〜100μmの混成で、特に粒子径1〜50μmの殻壁粒子で殻壁粒子全体の60%以上を占めることが好ましい。殻壁粒子の粒子径の主体が0.1μm未満だと、得られる膜材の断熱効果(日射熱取得率10%以下)が不十分となることがあり、また主体が100μmを超えると、得られる膜材の断熱樹脂層の屈曲強度や摩耗強度を脆くすることがある。また、気泡粒の内壁表面に殻壁粒子の表面の一部を多数個露出させることによって、本発明の膜材の断熱樹脂層厚を必要以上に厚く設定しなくとも、日射熱取得率を10%以下とする断熱効果を得ることができる。このような気泡粒は例えば、粒径500μmの気泡粒の内壁に粒子径25μmの殻壁粒子の表面の一部が多数露出した態様である。
【0025】
本発明の膜材の断熱樹脂層において、非充実部を構成する気泡粒は、熱可塑性樹脂中にアゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリルなどの熱分解型化学発泡剤を均一分散し、これを加熱して化学発泡剤を熱分解させ、化学発泡剤の分解ガス生成痕を気泡粒とする化学発泡、または粘性を有する熱可塑性樹脂を機械攪拌することで空気粒を強制的に巻込み、これを固化して気泡粒とする機械発泡のいずれかの方法によって形成することができる。この気泡粒は連続気泡であっても独立気泡のいずれであってもよく、連続気泡と独立気泡との混成であってもよい。本発明の膜材において断熱樹脂層の層厚は0.1〜2.0mm、特に0.5〜1mmが好ましい。層厚が0.1mm未満だと、得られる膜材の断熱効果(日射熱取得率10%以下)が不十分となることがあり、また層厚が2.0mmを超えると、得られる膜材の採光性を悪くすると同時に、膜材同士の端部を重ね合わせて熱溶着し、これによって接合部を形成した場合に、十分な接合部強度が得られないことがある。
【0026】
本発明の膜材の断熱樹脂層において、非充実部を構成する殻壁粒子は、ガラス、シラス、シリカ、セラミック(具体的にアルミナ、ジルコニア、アルミナシリケート)、及び有機高分子物質(具体的に塩化ビニリデン、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルースチレン共重合体樹脂)から選ばれた1種以上を殻壁として、空気、窒素、酸素、キセノンから選ばれたいずれか1種の気体を封入保持している粒子径が0.1〜100μmの範囲を有し、特に粒子径1〜50μmの範囲、かさ密度0.09〜0.37g/cm、真密度0.18〜0.52g/cmの殻壁粒子が好ましい。またさらに封入気体は10〜1000hPa、特に100〜1000hpa程度に減圧されていることが好ましく、このような殻壁粒子として例えば、ガラス殻壁を有し、内部に空気が封入された粒子、あるいはガラス殻壁を有し、内部に空気が10〜1000hPaの減圧状態で封入された粒子の使用によって本発明の膜材の断熱効果をより向上させることができる。これらの殻壁粒子の表面は断熱樹脂層における充実部(熱可塑性樹脂組成物)との密着性を向上させるために公知のシランカップリング剤(アクリル系、エポキシ系、アミノ系など)による表面処理、有機チタネート化合物により表面処理されていることが好ましい。
【0027】
本発明の膜材の断熱樹脂層において、気泡粒の内壁表面に殻壁粒子の表面の一部を多数個露出させた構成を得るには、予め殻壁粒子を配合した熱可塑性樹脂組成物に、前述の熱分解型化学発泡剤を均一分散し、これを加熱して化学発泡剤を熱分解させ、化学発泡剤の分解ガス生成痕を気泡粒とする化学発泡させること、または粘性を有する熱可塑性樹脂中、例えばペースト塩化ビニル樹脂ゾルやエマルジョン樹脂増粘物に殻壁粒子を配合して機械攪拌することで空気粒を強制的に巻込み、これを熱処理固化させて気泡粒とする機械発泡のいずれかの方法によって形成すればよい。このとき気泡粒と殻壁粒子の混成比率は90:10〜50:50体積%が好ましい。
【0028】
本発明の膜材の赤外線反射樹脂層の表面には防汚層が設けられていることが好ましく、防汚層の存在によって、波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106)85%以上を持続することを可能とする。防汚層を有さない場合には、本発明の膜材表面、すなわち赤外線反射樹脂層表面に煤塵汚れが経時的に蓄積することで赤外線反射樹脂層本来の機能を発揮できなくなることがある。本発明において好ましい防汚層は、i).酸化チタン(TiO)、過酸化チタン(ペルオキソチタン酸)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)から選ばれた1種以上の光触媒物質含有層、または、ii).アクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、及びフッ素系樹脂から選ばれた1種以上による防汚層、またはこれらにシリカ微粒子を含む防汚層である。防汚層としての光触媒物質含有層は、光触媒物質を10〜70質量%と、金属酸化物ゲル及び/又は金属水酸化物ゲルを25〜90質量%、またケイ素化合物を1〜20質量%含有する厚さ、0.1〜10μmの塗膜である。また光触媒物質は、その表面の一部が無機化合物によって光触媒不活性化された表面処理粒子であってもよい。防汚層を形成するアクリル系樹脂、アクリル−シリコン樹脂、フッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)、またはフッ素系樹脂(フルオロオレフィン共重合体樹脂)とアクリル系樹脂とのブレンド物にはシリカ微粒子を含むことが雨筋汚れ抑制効果に優れ好ましい。本発明の膜材同士の接合における十分な接合部強度を得るには、フッ素系樹脂100質量部に対してアクリル系樹脂を5〜75質量部ブレンドした組成物にシリカ微粒子5〜25質量部を配合した防汚層が好ましい。
【0029】
本発明の日射熱制御膜材に関して、図1〜5の可撓性積層体を一例として説明する。図1の可撓性積層体(1)は、断熱樹脂層(2)の1面上に赤外線反射樹脂層(3)が設けられている。断熱樹脂層(2)は充実部(2−1)及び非充実部(2−2)とから成り、充実部(2−1)は熱可塑性樹脂組成物(2−1−1)によって構成され、非充実部(2−2)は気泡粒(2−2−1)及び殻壁粒子(2−2−2)により構成されている。また赤外線反射樹脂層(3)は無機金属化合物粒子(3−1)を含んでいる。断熱樹脂層(2)において気泡粒(2−2−1)の内壁表面に殻壁粒子(2−2−2)の表面の一部が露出している(4)。図2の可撓性積層体(1)は、断熱樹脂層(2)と赤外線反射樹脂層(3)との間に繊維織物(5)が設けられている。図3の可撓性積層体(1)は、断熱樹脂層(2)と赤外線反射樹脂層(3)との間に繊維織物(5)が設けられ、繊維織物(5)と断熱樹脂層(2)との間に接着樹脂層(6)が設けられている。図4の可撓性積層体(1)は、繊維織物(5)の両面に赤外線反射樹脂層(3)が設けられ、その一方の赤外線反射樹脂層(3)面に断熱樹脂層(2)が設けられている。図5は図2の可撓性積層体(1)において、赤外線反射樹脂層(3)上にさらに防汚層(7)が設けられている。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験膜材の遮制御性、防汚性などは下記の試験方法により測定し、評価した。
1)日射熱取得率
膜材の日射熱取得率は、分光光度計V−670型(日本分光(株)製)を使用し、日射
透過率、日射吸収率を測定し、JIS R3106に準拠し式(1)に従って算出した。
日射熱取得率:η=a+b(1/αti)/(1/αti+1/αto)・・・(1)
αto : 屋外側表面の総合熱伝達率(常用値25W/m2K)
αti : 室内側表面の総合熱伝達率(常用値9W/m2K)
a : 日射透過率(%)
b : 日射吸収率(%)
c : 日射反射率(%)=100−〈日射透過率(%)+日射吸収率(%)〉
2)屋外曝露試験
たて(繊維織物の経糸方向)45cm×よこ(繊維織物の緯糸方向)30cmの膜材を、赤外線反射樹脂層形成面を表側にして、陽当たりの良い南向き傾斜30°方向に展張し、屋外汚れ試験を12ヶ月間行った。展張12ヶ月後の膜材の日射熱取得率を測定し、さらに未展張膜材との色差ΔE(JIS Z−8729)を求め、下記の判定基準にて防汚性の評価を行った。
※屋外展張は埼玉県草加市内において2月より開始した
1:ΔE=0〜1.9 :汚れがなく良好。初期の状態を維持している
2:ΔE=2〜3.5 :うすく汚れているが外観に支障はない
3:ΔE=3.6〜5.0:汚れと雨筋が目立つ
4:ΔE=5.1〜 :汚れと雨筋が酷く、外観に支障がある
3)環境試験
たて100cm・よこ100cm・高さ100cmの正方形枠の6面全てに膜材を装着した密閉体を構成し、恒温槽内で密閉体内部の気温を25℃にした後、この密閉体を10℃と40℃に、それぞれ温度設定された2つの恒温槽に移し、静置状態で密閉体内部の気温を密閉体内部に中央にぶら下げた温度センサーにより観察し、密閉体内部の気温がそれぞれの恒温槽内環境温度と同じ10℃、40℃と平衡するまでの時間を測定した。
【0031】
[実施例1]
繊維織物として、下記織組織のポリエステルマルチフィラメント平織物を用いた。
1111dtex(たて糸)×1111dtex(よこ糸)/(22本/inch×2
5本/inch)、質量:215g/m
この繊維織物の片面上に、下記配合1の軟質塩化ビニル樹脂組成物による厚さ0.18mmのカレンダー成形フィルムを170℃の熱条件で熱ラミネートして積層接着し、厚さ0.18mmの赤外線反射樹脂層を形成した。
<配合1> 軟質塩化ビニル樹脂配合組成物(1)
塩化ビニル樹脂(重合度1050) 100質量部
DOP(可塑剤) 50質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 15質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn(安定剤) 2質量部
酸化チタン(赤外線反射剤) 10質量部
※平均粒子径0.8〜1.2μmの粗粒子酸化チタン
【0032】
この赤外線反射樹脂層積層中間体の裏面側に、下記配合2のペースト塩化ビニル樹脂組成物(機械攪拌により気泡粒を含む発泡組成物)を厚さ1mmで均一コーティングし、この塗工物を180℃の熱風で2分間加熱して固化させて、厚さ1mmの断熱樹脂層を形成した。得られた断熱樹脂層形成中間体は充実部として塩化ビニル樹脂組成物を56体積%含み、非充実部として気泡粒及び殻壁粒子を44体積%含み、断熱樹脂層断面の拡大鏡観察により、気泡粒の内壁表面には殻壁粒子の表面の一部が多数個露出している状態であった。
<配合2> ペースト塩化ビニル樹脂配合組成物
塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 14質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn(安定剤) 2質量部
酸化チタン(着色剤) 8質量部
※平均粒子径0.1〜0.3μmの微粒子酸化チタン
シリコーンオイル(整泡剤) 2質量部
殻壁粒子(中空バルーン) 10質量部
※ガラス殻壁により、70体積%の空気を880hPaで内包
する平均粒子径25μmのカプセル球状粒子
※熱可塑性樹脂(ペースト塩化ビニル樹脂組成物)と殻壁粒子
の混成質量比率は100:5である。
【0033】
この膜材中間体の赤外線反射樹脂層表面に、下記配合3の樹脂組成物による厚さ3μmの防汚層を80メッシュグラビア塗工にて形成し、本発明の日射熱制御膜材を得た。
<配合3> 樹脂組成物
アクリル樹脂 100質量部
フルオロオレフィンビニルエーテル樹脂 100質量部
イソホロン系イソシアネート(硬化剤) 10質量部
シリカ(平均粒子径1μm) 20質量部
メチルエチルケトン(溶剤) 1000質量部
【0034】
実施例1の膜材は第5図に示した態様である。実施例1の膜材の日射透過率5.7%、日射反射率87.3%、日射熱取得率5.5%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率5.5%、日射反射率86.9%、日射熱取得率5.7%であり、10℃平衡時間82分、40℃平衡時間54分であった。
【0035】
[実施例2]
実施例1の膜材において、繊維織物と断熱樹脂層との間に下記配合4の軟質塩化ビニル樹脂配合組成物からなる接着樹脂層を設けた以外は全て実施例1と同一とした。接着樹脂層は下記配合4の軟質塩化ビニル樹脂組成物による厚さ0.12mmのカレンダー成形フィルムを用い、これを赤外線反射樹脂層積層中間体裏面側に170℃の熱条件で熱ラミネートして積層接着し、厚さ0.12mmの接着樹脂層を形成し、この接着樹脂層面上に実施例1の断熱樹脂層を設け、さらに赤外線反射樹脂層面上に実施例1の防汚層を設けて実施例2の膜材を得た。
<配合4> 軟質塩化ビニル樹脂配合組成物(2)
塩化ビニル樹脂(重合度1050) 100質量部
DOP(可塑剤) 50質量部
三酸化アンチモン(防炎剤) 15質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
Ba−Zn(安定剤) 2質量部
酸化チタン(着色剤) 4質量部
※平均粒子径0.1〜0.3μmの微粒子酸化チタン
【0036】
実施例2の膜材は第3図に示した態様に防汚層を追加した態様である。実施例2の膜材の日射透過率5.3%、日射反射率87.0%、日射熱取得率5.3%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率5.1%、日射反射率85.5%、日射熱取得率5.4%であり、10℃平衡時間89分、40℃平衡温度58分であった。
【0037】
[実施例3]
実施例1の膜材において、繊維織物と断熱樹脂層との間に配合1の軟質塩化ビニル樹脂配合組成物からなる赤外線反射樹脂層を設けた以外は全て実施例1と同一とした。実施例3の膜材は第4図に示した態様に防汚層を追加した態様である。実施例3の膜材の日射透過率5.3%、日射反射率88.6%、日射熱取得率5.4%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率5.2%、日射反射率86.3%、日射熱取得率5.5%であり、10℃平衡時間91分、40℃平衡温度62分であった。
【0038】
[実施例4]
実施例1の膜材から、繊維織物を省略した以外は全て実施例1と同一とした。実施例4の膜材は第1図に示した態様に防汚層を追加した態様である。実施例4の膜材の日射透過率7.7%、日射反射率87.9%、日射熱取得率6.6%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率7.0%、日射反射率86.2%、日射熱取得率7.0%であり、10℃平衡時間57分、40℃平衡温度38分であった。
【0039】
実施例1〜4の膜材は日射熱制御効果に優れ、屋外使用での汚れも付難いので経年劣化が少なく、従って本発明の膜材は夏季(例えば40℃の外気温)においては日射による膜材からの蓄熱伝導を遮蔽する効果を有し、冬季(例えば10℃の外気温)には暖房熱を外気に逃がし難い遮蔽効果を有する。
【0040】
[比較例1]
実施例1の膜材の断熱樹脂層において、配合2から殻壁粒子の配合を省略した以外は全て実施例1と同一とした。比較例1の膜材の日射透過率5.8%、日射反射率87.8%、日射熱取得率13.6%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率5.5%、日射反射率85.3%、日射熱取得率14.0%であり、10℃平衡時間65分、40℃平衡温度37分であった。
【0041】
[比較例2]
実施例1の膜材の断熱樹脂層において、配合2から気泡粒を省略して無発泡層とした以外は全て実施例1と同一とした。比較例1の膜材の日射透過率5.2%、日射反射率86.4%、日射熱取得率15.1%であった。また展張12ヶ月後の曝露汚れ評価レベルは「1」、日射透過率5.0%、日射反射率85.0%、日射熱取得率15.8%であり、10℃平衡時間49分、40℃平衡温度21分であった。
【0042】
比較例1と2の膜材は、防汚層を有していることで、曝露汚れ評価レベルは「1」であり採光性も十分であったが、比較例1の膜材では殻壁粒子が存在しないために十分な熱制御効果が発現されなかった。比較例1の膜材で実施例1の膜材と同等の熱制御効果を得るには断熱樹脂層の厚さを2mm(実施例1の断熱樹脂層の2倍)とする必要があった。(参考比較例1)参考比較例1の膜材では断熱樹脂層の厚さが2倍に増すことによる質量増で膜材が重くなるのみならず、採光性を著しく阻害する支障を生じていた。また比較例2の膜材では気泡粒が存在しない無発泡層であるために十分な熱制御効果が発現されなかった。比較例2の膜材で実施例1の膜材と同等の熱制御効果を得るには断熱樹脂層の厚さを3.5mm(実施例1の断熱樹脂層の3.5倍)とする必要があった。(参考比較例2)参考比較例2の膜材では断熱樹脂層の厚さが3.5倍に増すことによる質量増で膜材が重くなるのみならず、採光性を著しく阻害する問題を生じた。参考比較例1と2により、本発明の膜材(具体的に実施例1)は断熱樹脂層の厚さが薄くても優れた熱制御効果が得られることが比較証明された。参考比較例1と2において実施例1の膜材と同等の熱制御効果とは、日射反射率約87%、日射熱取得率約5%、10℃平衡時間約80分、40℃平衡温度約50分を得る性能である。従って比較例の膜材では夏季(例えば40℃の外気温)においては日射による膜材からの蓄熱伝導を遮蔽する効果に乏しく、冬季(例えば10℃の外気温)には暖房熱を外気に逃がし難い遮蔽効果に乏しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により得られる日射熱制御膜材は、遮熱性と断熱性と採光性とを兼備するので、夏季においては日射による膜材からの蓄熱伝導を遮蔽する効果を有し、冬季には暖房熱を外気に逃がし難い効果を有するので、特にテント構造物、トラック幌、コンテナバッグ、シートシャッター部材、建築構造物の部材、シートカバーに適し、省エネルギー効果が期待できる。
【符号の説明】
【0044】
1:可撓性積層体
2:断熱樹脂層
2−1:充実部
2−1−1:熱可塑性樹脂組成物
2−2:非充実部
2−2−1:気泡粒
2−2−2:殻壁粒子
3:赤外線反射樹脂層
3−1:無機金属化合物粒子
4:気泡粒(2−2−1)の内壁表面に殻壁粒子(2−2−2)の表面の一部が露出し
ている態様
5:繊維織物
6:接着樹脂層
7:防汚層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱樹脂層と、その一面上に設けられた赤外線反射樹脂層とを有する可撓性積層体であって、前記断熱樹脂層が、熱可塑性樹脂組成物からなる充実部と、気泡粒と殻壁粒子とからなる非充実部とからなり、前記非充実部が前記気泡粒と前記殻壁粒子による90:10〜50:50の混成体積比率、及び、前記断熱樹脂層の体積に対する前記非充実部の占有総和が20〜50体積%、及び前記気泡粒の内壁表面に前記殻壁粒子の表面の一部が露出してなり、さらに、前記赤外線反射樹脂層が無機金属化合物粒子を含んでいて、前記可撓性積層体が、波長300〜2500nmにおける日射反射率(JIS R3106)85%以上及び、日射熱取得率(JIS R3106)10%以下を兼備することを特徴とする日射熱制御膜材。
【請求項2】
前記断熱樹脂層と、前記赤外線反射樹脂層との間に、繊維織物からなる基布層を含んでいる、請求項1に記載の日射熱制御膜材。
【請求項3】
前記断熱樹脂層と、前記基布層との間に、接着樹脂層を含んでいる、請求項2に記載の日射熱制御膜材。
【請求項4】
前記赤外線反射樹脂層が、繊維織物からなる基布層を含んでいる、請求項1に記載の日射熱制御膜材。
【請求項5】
前記赤外線反射樹脂層の表面に防汚層が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の日射熱制御膜材。
【請求項6】
前記無機金属化合物粒子が、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、三酸化アンチモン(Sb23)、酸化インジウム(In23)、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズから選ばれた1種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の日射熱制御膜材。
【請求項7】
前記殻壁粒子が、ガラス、シラス、シリカ、セラミック、及び有機高分子物質から選ばれた1種以上を殻壁として、空気、窒素、酸素、キセノンから選ばれたいずれか1種の気体を封入保持している請求項1〜6のいずれか1項に記載の日射熱制御膜材。
【請求項8】
前記気体が、10〜1000hPaに減圧されている請求項7に記載の日射熱制御膜材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139937(P2012−139937A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10(P2011−10)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】