説明

日射遮蔽用合わせ構造体

【課題】高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さく、生産コストが安価で、かつ軽量で、色調調整の自由度の高い日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【解決手段】日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子として、一般式XB6(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子を製造し、当該6ホウ化物微粒子をプラスチックフィルム、シート等に分散させて中間膜とし、当該中間膜を有する中間層を、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させて日射遮蔽用合わせ構造体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用、建築用の窓材などとして用いられる日射遮蔽用合わせ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用などの安全ガラスとして、2枚の板ガラス間に日射遮蔽膜を挟み込んで合わせガラスを構成し、当該合わせガラスにより入射する太陽エネルギーを遮断して冷房負荷や人の熱暑感の軽減を目的としたものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の板ガラス間に、0.1μm以下の微細な粒径の酸化錫または酸化インジウムから成る熱線遮蔽性金属酸化物を含有した軟質樹脂層を介在させた、合わせガラスが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、少なくとも2枚の板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、この酸化物、窒化物、硫化物またはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散した中間層を設けた合わせガラスが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、TiO、ZrO、SnO、Inから成る微粒子と有機ケイ素または有機ケイ素化合物から成るガラス成分とを、透明板状部材の間に介在させた自動車用窓ガラスが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、少なくとも2枚の透明ガラス板状体の間に3層から成る中間層を設け、当該中間層のうち第2層にはSn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物またはSbやFのドープ物またはこれらの複合物を分散し、第1層と第3層の中間層は、樹脂層とした合わせガラスが提案されている。
【0007】
また、特許文献5には、日射遮蔽機能を有する中間層を2枚の板ガラス間に介在せしめてなる日射遮蔽合わせガラスであって、前記中間層は、LaB、CeB、PrB、NdB、GdB、TbB、DyB、HoB、YB、SmB、EuB、ErB、TmB、YbB、LuB、(La、Ce)B、SrBおよびCaBからなる群から選択された少なくとも1種の6ホウ化物微粒子を可塑剤に分散させた添加液と、ビニル系樹脂とからなる中間膜により形成されることを特徴とする日射遮蔽用合わせガラスが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−217500号公報(段落0018)
【特許文献2】特開平8−259279号公報(段落0012)
【特許文献3】特開平4−160041号公報(特許請求の範囲第1項、公報3頁右上欄9〜14行、公報3頁左下欄16行〜末行)
【特許文献4】特開平10−297945号公報(段落0018)
【特許文献5】特開2001−89202号公報(特許請求の範囲第1項、公報4頁段落0020)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らの検討によれば、特許文献1〜4に記載されている従来の合わせガラスは、
いずれも高い可視光透過率が求められたときの日射遮蔽機能は十分でなく、また日射遮蔽機能を有する微粒子の含有割合が多くコスト高なものであることに想到した。
さらに本発明者らの検討によれば、6ホウ化物の単位重量当たりの日射遮蔽能力は非常に高く、ITOやATOと比較して10分の1以下の使用量でその効果を発揮でき、さらにITOやATOと併用することによって、一定の可視光透過率を保ちながら日射遮蔽特性のみを一層向上させることができるのでコストも削減できることに想到した。また、当該6ホウ化物、当該6ホウ化物とITOやATOとの併用により、全微粒子の使用量を大幅に削減することができるので、中間膜や日射遮蔽膜の摩耗強度や耐候性を向上させることが可能となることに想到した。さらに当該6ホウ化物は、使用量を増すと可視光領域に吸収があるため、その添加量を制御することにより可視光領域の吸収を自由に制御でき、明るさ調整やプライバシー保護などの応用もできることに想到した。しかし、特許文献5に記載の合わせガラスでは、合わせ構造体の軽量化や色調調整の自由度が少ないことに想到した。
【0010】
本発明は、以上のような背景を基になされたものであり、その課題とするところは、高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さく、生産コストが安価で、かつ軽量で、色調調整の自由度の高い日射遮蔽用合わせ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明者等が鋭意研究を継続した結果、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含む中間膜を有する中間層を、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させた合わせ構造体とすることによって達成されることを見出すに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明は、
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含む中間膜を有する中間層を、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が、一般式XB (但し、Xは、Y、La、C
e、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子であることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0013】
本発明の第2の発明は、
日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間層を、日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックと、もう一方の板ガラスまたはプラスチックまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックと、から選ばれた合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が、一般式XB (但し、Xは、Y、La、C
e、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子であることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0014】
本発明の第3の発明は、
上記ホウ化物微粒子の粒子径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする第1または2の発明のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0015】
本発明の第4の発明は、
上記ホウ化物微粒子へ、さらに、
Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、
P、Ge、In、Snから成る群から選ばれた1種以上の元素からなる酸化物微粒子または/および複合酸化物微粒子、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.99)で表記されるタングステン酸化物微粒子、
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、
一般式M(1−G)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<E≦1.2、0<G≦1、2≦J≦3)で
表記される複合酸化物、の内の少なくとも1種以上の微粒子が加えられた混合体であることを特徴とする第1〜3の発明のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0016】
本発明の第5の発明は、
前記プラスチックが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂またはポリエステル樹脂またはポリエチレンテレフタレ−ト樹脂の、シートまたはフィルムであることを特徴とする第1〜4の発明いずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0017】
本発明の第6の発明は、
前記中間層は、1層以上の中間膜を有し、当該中間膜の少なくとも1層に、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が分散されていることを特徴とする第1〜5の発明いずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0018】
本発明の第7の発明は、
前記中間膜を構成する樹脂は、ビニル系樹脂であることを特徴とする第6の発明記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【0019】
本発明の第8の発明は、
前記中間膜を構成するビニル系樹脂は、ポリビニルブチラールまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする第7の発明に記載の日射遮蔽用合わせ構造体を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る日射遮蔽用合わせ構造体は、高い日射遮蔽機能を有しながらヘイズ値は小さく、生産コストが安価で、軽量の合わせ構造体とすることができるとともに、色調調整、UVカット等を行うことにより明るさ調整やプライバシー保護、UVカット等、の多機能合わせ構造体とすることも出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に関し、まず日射遮蔽機能を有する微粒子、次に当該日射遮蔽機能を有する微粒子を用いた日射遮蔽用合わせ構造体ついて詳細に説明する。
【0022】
1.日射遮蔽機能を有する微粒子
本発明に適用される日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子は、一般式XB (但し、
Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、Sr、およびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子が挙げられる。該微粒子は、粒子径が800nm以下で、格子定数が4.100〜4.160であり、かつ、国際照明委員会(CIE)が推奨しているL表色系(JIS Z 8729)における粉体色Lが30〜60、aが−5〜10、bが−10〜2であることが好ましい。このようなホウ化物微粒子を日射遮蔽用合わせ構造体へ適用した際、所望の光学特性を得ることができる。
【0023】
当該赤外線遮蔽材料の粒子径は、その使用目的によって適宜選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
【0024】
この粒子による散乱の低減を重視するときは、粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。その理由は、粒子の粒子径が小さければ幾何学散乱またはミー散乱による400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できるからである。即ち、粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。さらに、粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
【0025】
本発明の日射遮蔽機能を発揮するホウ化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性向上の観点から好ましい。
また、上記ホウ化物微粒子が、さらにSb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Snから成る群から選ばれた1種以上の元素からなる酸化物微粒子、複合酸化物微粒子、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.99)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、一般式M(1−G)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<E≦1.2、0<G≦1、2≦J≦3)で表記される複
合酸化物の内の少なくとも1種以上の微粒子、との混合体として用いることが、日射遮蔽特性の観点から好ましい。
【0026】
一般式M(1−G)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカ
リ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<E≦1.2、0<G≦1、2≦J≦3)で
表記される複合酸化物がある。但し、G=1の場合は、タングステンが含まれず、A元素を主体とした複合酸化物となる。
【0027】
一般に、WOや、MoO、Nb、Ta、V、TiO、MnO中には有効な自由電子が存在しないため、導電性が無く(または、小さく)、伝導電子による近赤外線領域の光の吸収(反射)も無い(または、少ない)。しかし、これらの物質へ、M元素を添加し、一般式M(1−Y)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<X≦1.2、0<Y
≦1)で表記される複合酸化物微粒子とすると、当該M元素は、WまたはA元素の酸化物構造中に伝導電子を放出し、自らは陽イオンになる。
そして、当該放出された伝導電子は、近赤外線領域の光を吸収(反射)する効果があり、また、当該複合酸化物微粒子の導電性にも寄与する。尤も、PtO、PdO、ReO等は、M元素の添加が無くても導電性を示すものがあるが、M元素を添加することで更に伝導電子が増加し、近赤外線領域の吸収(反射)や導電特性が向上する。
【0028】
これら、A元素、タングステン、酸素で構築される母体構造は、A元素およびタングステンから選択される1種類の元素と酸素とで構築されていても良いし、複数の元素と酸素とで構築されていても良い。当該A元素またはタングステンと、酸素とで構成された構造の空隙にM元素が添加されると、伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電特性に効果がある。
【0029】
前記M(1−G)なる組成の複合酸化物微粒子において、Eの範囲は0<E≦1.2が好ましい。E>0であれば、M元素により伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電特性の効果が発揮される。Eの値が1.2以下であれば、M元素を含む不純物の生成が回避され、特性の低下を防止できるので好ましい。
【0030】
前記M(1−G)なる組成の複合酸化物微粒子において、Gの範囲は0<G≦1が好ましい。G=0であってもM元素が存在していれば、伝導電子が生成され、近赤外線吸収や導電性特性が発揮されるが、当該複合酸化物中にタングステンと異なるA元素が存在することで、当該複合酸化物の光学特性を変化させることができるなど、従来にない特長を発揮させることができるので、0<Gであることが好ましい。A元素の好ましい添加量は、目的によって変化するが、1以下であることが好ましい。G≦1であれば、過剰なA元素が存在することに起因するA元素を含む不純物が生成しないので、当該複合酸化物の特性低下を回避できるからである。
【0031】
まず、G<1の場合について説明する。
上述のM(1−G)なる組成の複合酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該複合酸化物微粒子の可視光領域における光の透過特性が向上し、近赤外領域における光の吸収特性も向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1
を参照しながら説明する。図1において、符号1で示すW(または、A元素)O単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号2で示すM元素が配置されて1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。これは、所謂、六方晶タングステンブロンズ構造と呼ばれる構造である。
【0032】
可視光領域における光の透過特性を向上させ、近赤外線領域における光の吸収特性を向上させる効果を得るためには、複合酸化物微粒子中に、図1で説明した単位構造(W(または、A元素)O単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中にM元素が配置された構造)が含まれていれば良く、当該複合酸化物微粒子が、結晶質であっても非晶質であっても構わない。
【0033】
この六角形の空隙にM元素の陽イオンが添加されて存在すると、他の結晶構造と比べて可視光領域おける光の透過特性が向上し、近赤外線領域おける光の吸収特性が向上するので好ましい。また、導電性用途からの観点においても、当該複合酸化物微粒子の可視光領域における光の吸収が少ないために、多量に使用しても可視光透過率の低下が少なく、可視光透過型導電性材料としての導電性を向上させるのに有効である。ここで、一般的には、イオン半径の大きなM元素を添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちの1種類以上を添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これら以外の元素でも、W(または、A元素)O単位で形成される六角形の空隙にM元素が存在すれば良く、前記元素に限定される訳ではない。
【0034】
前記タングステンブロンズ構造において、六方晶の結晶構造を有する複合酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、M元素の添加量は、0.2以上、0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33程度である。M元素の値が0.33となることで、タングステンブロンズ構造において、M元素が六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。このとき、タングステンブロンズ構造のタングステンサイトがA元素で置換されていたり、A元素とタングステンのブロンズ構造が共存、またはおのおの単独で存在しても構わない。
【0035】
また、タングステンブロンズ構造において、上述した六方晶以外の、正方晶、立方晶のタングステンブロンズ構造も赤外線遮蔽材料として有効である。結晶構造によって、近赤外線領域の光の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶より正方晶、正方晶より六方晶と吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それとともに可視光領域の光の吸収特性は、六方晶が最も少なく、正方晶、立方晶の順で大きくなる。従って、より可視光領域の光を透過し、より近赤外線領域の光を遮蔽させたい用途には、六方晶のタングステンブロンズ構造を用いることが好ましい。このとき、タングステンブロンズ構造のタングステンサイトがA元素で置換されていたり、A元素のブロンズ構造が共存しても構わない。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、添加元素の種類や、添加量によって変化するものであるので、適宜、試験を行って最適解を求めれば良く、本発明がこれに限定されるわけではない。
【0036】
次に、G=1の場合について説明する。
上述のM(1−G)なる組成の複合酸化物微粒子において、G=1の場合は、MAOとなりタングステンを含まない材料となる。しかし、当該タングステンを含まない材料においても、M元素が添加されることで電子が生成し、上述のM(1−G)(但し、G<1)の場合と同様の機構により伝導電子の生成による導電特性の発現や、近赤外域の光遮蔽が起きるので、上述のタングステンを含む場合(G<1の場合)と、同様に扱うことができる。
【0037】
2.日射遮蔽機能を有する微粒子の製造方法
ホウ化物微粒子は、例えば、固相反応法や蒸発急冷法、プラズマCVD法などの気相法で製造することができる。
尚、一例として固相反応法を説明するが、上記粉体特性を具備するものであれば製造方法は限定されるものでない。
以下、固相反応法によるLaB(ホウ化ランタン)の製造方法を説明する。
まず、ホウ素化合物とランタン化合物に還元剤を添加し、これらを高温で反応させてホウ化ランタンを生成する。但し、通常の反応条件では粒子径が800nmを越える粗大な粉末になり所望の光学特性が得られない。そこで、粒径分布制御のため、例えば、後工程においてジェットミルやビーズミルのようなメカニカル法によって粉砕したり、または、粒成長抑制剤を添加して調製する。
このような方法により、粒子径が800nm以下のホウ化ランタン微粒子を得ることができる。
【0038】
また、上記ホウ化物微粒子は、国際照明委員会(CIE)が推奨しているL表色系(JIS Z8729)における粉体色Lが30〜60、aが−5〜10、bが−10〜2の範囲内にあるものが適用される。尚、日射遮蔽体に適用されるホウ化物微粒子はその表面が酸化していないことが好ましいが、通常得られるものは僅かに酸化していることが多く、また、微粒子の分散工程で表面酸化が起こることはある程度避けられない。しかし、その場合でも日射遮蔽効果を発現する有効性に変わりはない。但し、この酸化の度合いが一定限度を超えると遮蔽効果が著しく減少することも事実であり、上記粉体色の特性範囲は粒子表面酸化の度合いと関連していると考えられる。
また、一例として6ホウ化物微粒子(一般式XB)を挙げれば、結晶としての完全性が高いほど大きい日射遮蔽効果が得られる。しかし、結晶性が低くX線回折で極めてブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合がXとBの結合から成り立って、粒子径が400nm以下で、格子定数が4.100〜4.160で、かつ、粉体色がLが30〜60、aが−5〜10、bが−10〜2の範囲内であるならば所望の日射遮蔽効果を発現することが可能である。
また、一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子および一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子との製造方法について説明する。
【0039】
(a)一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子の製造方法
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸索、2.0<z/y <3.0)で
表されるタングステン酸化物微粒子は、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス雰囲気下で焼成することにより得られる。ここで、原料として用いるタングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステンには、特に制限は無い。
【0040】
但し、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、または六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を焼成してタングステン酸化物微粒子を製造する場合、該焼成温度は、所望とする微粒子と光学特性の観点から200℃以上1000℃以下とすることが好ましい。該焼成温度が200℃以上1000℃以下の範囲にあると、所望の光学特性を有するタングステン酸化物微粒子を製造することが出来る。焼成時間は、焼成温度に応じて適宜選択すればよいが、10分間以上5時間以下で十分である。
【0041】
次に、前記タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タン
グステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物を焼成して調製したタングステン酸化物微粒子へ酸素空孔を生成させるために、当該タングステン酸化物微粒子を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成する。ここで、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどのガスを用いることができ、還元性としては、水素やアルコールなどのガスを用いることができる。
【0042】
そして、当該タングステン酸化物微粒子を、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成する場合、不活性ガス中の還元性ガスの濃度は焼成温度に応じて適宜選択すれば特に限定されないが、好ましくは20vol%以下、より好ましくは10vol%以下、さらに好ましくは7〜0.01vol%である。不活性ガス中の還元性ガスの濃度が20vol%以下であると、当該タングステン酸化物微粒子の急速な還元を回避することができ、日射遮蔽機能を有しないWOの生成を回避できる。
【0043】
当該タングステン酸化物微粒子へ酸素空孔を生成させる際の処理温度は、雰囲気に応じて適宜選択すればよいが、不活性ガス単独の場合は日射遮蔽用微粒子としての結晶性や隠ペイ力の観点から650℃を超え、1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下である。一方、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスの場合は、還元性ガス濃度に応じてWOが生成しない温度を適宜選択すればよい。さらに、不活性ガス単独と、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスという、両雰囲気下で行う2ステップ反応の場合は、例えば1ステップ目に不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下、100℃以上650℃以下で焼成し、2ステップ目に不活性ガス雰囲気下、650℃を超え1200℃以下で焼成することも日射遮蔽特性の観点から好ましい。このときの焼成処理時間は温度に応じて適宜選択すればよいが、5分以上5時間以下で十分である。
【0044】
(b)一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒
子の製造方法
【0045】
一般式MxWyOz(但し、Mは前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0<z/y≦3.0)で表される複合タングステン酸化物微粒子は
、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物と、M元素の酸化物または/及び水酸化物の粉体と、を乾式混合した混合粉体を不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、1ステップ目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成しさらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下において焼成すると言う2段の焼成を行うことにより得られる。また、前記タングステン化合物に替えて、(a)にて製造したタングステン酸化物微粒子を用いても良い。
【0046】
当該複合タングステン酸化物微粒子の異なる製造方法として、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、から選ばれる1種以上のタングステン化合物と、前記M元素の塩を含む水溶液と、を湿式混合した混合液を乾燥して得た乾燥粉を、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、1ステップめで不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、さらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下で焼成するという2段の焼成を行うことによっても得られる。また、前記タングステン化合物に替えて、(a)にて製造したタングステン酸化物微粒子を用いても良い。
【0047】
上述したように、添加するM元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちから選択される1種類以上の元素が好ましい。これらの元素は、いずれも複合タングステン酸化物微粒子の日射遮蔽特性の向上、耐候性の向上を図ることができるが、日射遮蔽特性を向上させる観点からはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属に属する元素が好ましく、耐候性を向上させる観点からは、4B族元素、5B族元素が好ましい。
【0048】
タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物微粒子、から選ばれる1種以上へ乾式混合法を用いてM元素を添加するときの、M元素の化合物としては酸化物、水酸化物が好ましい。このM元素の酸化物、水酸化物と、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステン、アルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分解した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物微粒子、から選ばれる1類以上と、を乾式混合する。当該乾式混合は、市販のらいかい機、ニーダー、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等で行えばよい。
【0049】
また、当該乾式混合法とは異なる混合方法として、タングステン酸(HWO)、タングステン酸アンモニウム、六塩化タングステンをアルコールに溶解した六塩化タングステンに水を添加して加水分析した後溶媒を蒸発させたタングステンの水和物、タングステン酸化物微粒子、から選ばれる1類以上へ、前記M元素の塩を水溶液化したものを湿式混合法により混合した後、乾燥して乾燥粉を得ることとしても良い。この場合、前記M元素の塩は特に限定されるものでなく、例えば硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩などが挙げられる。前記湿式混合後の乾燥温度や時間は特に限定されるものでない。
【0050】
次に、前記複合タングステン酸化物微粒子へ酸素空孔を生成させるために、不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下1ステップで焼成するか、または、1ステップ目で不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス雰囲気下で焼成し、さらに2ステップ目で不活性ガス雰囲気下において焼成するという2段の焼成を行う。当該焼成処理に用いる不活性ガス単独または不活性ガスと還元性ガスとの混合ガス、不活性ガス中の還元性ガスの濃度、焼成処理温度は、前記(a)にて説明した不活性ガスまたは還元性ガスの種類、不活性ガス中の還元性ガスの濃度、焼成処理温度と同様で良い。
【0051】
(c)一般式M(1−G)で表記される複合酸化物微粒子の製造方法
一般式M(1−G)で表記される複合酸化物は、出発原料を不活性ガス雰囲気、または/及び還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0052】
タングステンおよびA元素の出発原料は、タングステンまたはA元素を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、酸化物、酸化物の水和物、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物、各金属単体、から選択されるいずれか1種類以上があげられる。また、有機化合物、2種類以上の金属元素を含有する化合物(例えば、タングステン酸ナトリウム等)でも良い。工業的製造方法としては、各種塩を用いで、水や溶剤に混合して使用すると、好ましい。
【0053】
また、前記一般式M(1−G)で表記される複合酸化物微粒子のうち、M元素の出発原料はM元素を含んで入ればよく、A元素の出発原料はA元素を含んでいればよく、特に限定されないが、好ましい例として、塩化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、過酸化物から選択されるいずれか1種類以上があげ
られる。また、有機錯体、2種類以上の金属元素を含有する化合物(例えば、タングステン酸ナトリウム等)でも良い。工業的製造方法としては、炭酸塩、水和物等を使用すると、加熱還元時に不純物を生成しないため好ましい。
【0054】
前記タングステンW、前記A元素、前記M元素のそれぞれの出発原料のうち、溶液化できるもの(塩化物や硝酸塩など)は溶液化して混合し出発原料とすることで、十分な混合を実現することができ好ましい。
ここで、前記タングステンおよびA元素の出発原料、及びM元素の出発原料を混合した後の熱処理条件としては、250℃以上が好ましい。250℃以上で熱処理されて得られた膜は、十分な近赤外線吸収力や導電性を有する。
熱処理雰囲気は、Ar、N等の不活性ガスを用いることが良い。また還元性ガスとしては、アンモニアや水素ガスが使用可能である。
水素ガスを用いる場合には、還元雰囲気の組成として、水素ガスが体積比で0.1%以上が好ましく、さらに好ましくは1%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
【0055】
3.日射遮蔽用合わせ構造体
次に、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含む中間膜を有する中間層を、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板間に中間層を介在させた日射遮蔽用合わせ構造体、および、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間層を、少なくとも日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックと、もう一方の板ガラスまたはプラスチックまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体について説明する。
【0056】
まず、合わせ板は、中間層をその両側から挟み合わせる板であり、可視光領域において透明な板ガラス、シート状やフィルム状のプラスチック、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚が用いられる。尚、当該プラスチックの材質は、当該日射遮蔽用合わせ構造体の用途に合わせて適宜選択されるが、例えば、自動車等の輸送機器に用いる場合は、当該輸送機器の運転者や搭乗者の透視性を確保する観点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂といった透明樹脂が好ましい。
【0057】
日射遮蔽機能を有する中間層の形態例として、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させる中間膜で構成する形態1と、2層以上の中間膜から成り、少なくともその内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させる形態2と、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側面に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層を形成し、当該日射遮蔽層に中間膜を重ねる形態3と、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上または延性フィルム基板の内部に形成した日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、中間膜または2層以上の積層した中間膜とで構成される形態4と、中間層が、前記板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の一方の内側面に、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の前記接着剤層を接着させ、さらに、前記積層体の前記剥離層側へ前記積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜と、を有している形態5と、日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させない中間膜または2層以上の中間膜とで構成する形態6、とがある。
【0058】
ここで、中間膜を構成する材料としては、光学的特性、力学的性質、材料コストの観点から合成樹脂であることが好ましく、ビニル系樹脂であることがさらに好ましい。さらには、同様の観点から、ビニル系樹脂の中でもポリビニルブチラールまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
以下、中間膜としてビニル系樹脂を用いた場合を例としながら、各形態例毎に説明する。
【0059】
(形態1)
中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子と中間膜とで構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液を、ビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合せることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
尚、上記説明では、可塑剤中に日射遮蔽機能を有する微粒子を分散させる例について説明したが、日射遮蔽機能を有する微粒子を可塑剤でない適宜溶媒に分散した分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤は別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。
これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストが安価であり、かつ2枚の板ガラスで構成された合わせ構造体よりも軽量な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。
【0060】
(形態2)
中間層が、2層以上の中間膜を有し、少しなくともその内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子が含有される中間膜により構成される日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない他の中間膜のシートと積層させるか、または、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない2層の中間膜のシート間に介在させ、これを板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の間に挟み込んで貼り合せることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
尚、形態1と同様に、日射遮蔽機能を有する微粒子を可塑剤に分散させるのではなく、適宜溶媒に分散された分散液をビニル系樹脂に添加し、可塑剤を別に添加する方法でビニル系樹脂組成物を調製してもよい。
これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
当該方法によれば、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートと、板ガラス、プラスチックから選ばれた2枚の合わせ板との接着性を上げることができるので、日射遮蔽用合わせ構造体の強度が適度に高まり好ましい。
また、例えば、少なくとも片面にスパッタ法等によってAl膜やAg膜等を形成したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを作製し、当該PETフィルムを、上記中間膜間に介在させて中間層を構成したり、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することとしてもよい。これら、フィルムの介在や添加剤の添加により、UVカット、色調調製等の機能付加を行うことができる。
【0061】
(形態3)
中間層が、少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側面に形成された日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、当該日射遮蔽層に重ねられた中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
可塑剤若しくは適宜溶媒に日射遮蔽機能を有する微粒子が分散された添加液へ、適宜なバインダー成分(シリケート等の無機バインダーまたはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等)を配合して塗布液を調整する。この調製された塗布液を用いて、
少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内側に位置する面へ日射遮蔽膜を形成する。次に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを、前記日射遮蔽膜が形成された少なくとも一方の板ガラスまたはプラスチックの内面側と、日射遮蔽膜が形成されていないもう一方の板ガラスまたはプラスチックまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチック間に挟み込んで貼り合せることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
【0062】
当該方法によれば、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が、赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートに適宜な添加剤を添加することで、UVカット、色調調製等の機能付加を行うことができる。
【0063】
(形態4)
中間層が、延性を有する樹脂フィルム基板の片面上、または、延性フィルム基板の内部に形成した日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層と、中間膜または2層以上の積層した中間膜とを有する日射遮蔽用合わせ構造体は、例えば、以下のようにして製造される。
【0064】
延性フィルム基板の片面上に形成する場合は、例えば、可塑剤若しくは適宜溶媒に日射遮蔽機能を有するに微粒子が分散された塗布液、若しくは前記添加液に適宜バインダー成分(シリケート等の無機バインダーまたはアクリル系、ビニル系、ウレタン系の有機バインダー等)を配合して調製した塗布液を用いて延性を有する樹脂フィルムの片面に日射遮蔽膜を形成する。樹脂フィルム基板の片面上に日射遮蔽膜を形成する際、樹脂フィルム表面は樹脂バインダーとの結着性向上を目的として、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー層コート処理などによる表面処理を施してもよい。一方、延性フィルム基板の内部に形成する場合は、樹脂フィルムの融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合する。さらに、樹脂に混合後ペレット化し、各方式でファイルやボードを形成することが可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などにより形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよく、樹脂に対するタングステン系酸化物の微粒子量は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。次に、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない樹脂組成物をシート状に成形して中間膜のシートを得、この中間膜のシートを前記いずれかの樹脂フィルム基板側に接触するように配置するか、または、前記いずれかの日射遮蔽層が付与された樹脂フィルムを2枚の中間膜の間に配置し、これを板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ版の間に挟み込んで貼り合せることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。ここで、2層以上の積層した中間膜の内の1層に日射遮蔽機能を有する微粒子を含有させても勿論よい。
【0065】
当該方法によっても、日射遮蔽用合わせ構造体中における日射遮蔽膜の膜厚を薄く設定することができる。そして、当該膜厚を薄く設定することにより、日射遮蔽膜が赤外線の吸収効果に加えて反射効果も発揮するので、日射遮蔽特性の向上を図ることができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を、安価な生産コストで製造することができる。
【0066】
さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加
することで、UVカット、色調調製等の機能付加を行うことができる。
【0067】
(形態5)
中間層が、前記板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックから選ばれた2枚の合わせ板の一方の内側面に、接着剤層、前記日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層、剥離層の順に積層された積層体の前記接着剤層を接着させ、さらに、前記積層体の前記剥離層側へ前記積層体と重なり合う中間膜または2層以上の積層した中間膜と、を有している日射遮蔽用合わせ構造体(すなわち、当該日射遮蔽用合わせ構造体は、「一方の合わせ板/接着剤層/日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層/剥離層/中間膜または2層以上の積層した中間膜/他方の合わせ板」の構造を有している。)は、例えば、以下のようにして製造される。
【0068】
フィルム基板(例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素などの合成樹脂フィルム、紙、セロファンなどが挙げられる。)の一方の面に剥離層(例えば、ワックス、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールなど)を形成し、この剥離層上に日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる日射遮蔽層を形成し、この日射遮蔽層上に接着剤層(例えば、ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルーエチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。)を形成して積層体とし転写フィルムを得る。この転写フィルムの接着剤層を一方の板ガラスまたはプラスチックの合わせ板の内側面に加圧下で接着した後、前記転写フィルムからフィルム基板を剥離する。すると、剥離層の効果により積層体よりフィルム基板のみが剥離される。このフィルム基板の剥離の後、上述した中間膜または2層以上の積層した中間膜を介して、剥離層が露出した積層体と重なり合うように、もう他方の板ガラスまたはプラスチックまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックの合わせ板の内側面と加圧下で接着させることにより日射遮蔽用合わせ構造体とする方法が挙げられる。
【0069】
当該方法によれば、容易に膜厚の薄い日射遮蔽層を製造することができ、さらに、剥離層や接着剤層へ、適宜な添加剤を加えることで、UVカット、色調調整等の機能付加を行うことができる。
【0070】
(形態6)
中間層が、日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれないビニル系樹脂中間膜により構成された日射遮蔽用合わせ構造体は、以下のようにして製造される。例えば、可塑剤をビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形して中間膜用シートを得る。次に、日射遮蔽用微粒子を樹脂フィルムに練り込むときは、樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合する。さらに、樹脂に混合後ペレット化し、各方式でファイルやボードを形成することが可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などにより形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよく、樹脂に対する日射遮蔽用微粒子の量は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。また、練り込む樹脂は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であるが、例えばPET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、などが挙げられる。前記中間膜用シートを、少なくとも日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチックと、もう一方の板ガラスまたはプラスチックまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含むプラスチック間に挟み
込んで貼り合せる。
【0071】
このとき、日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜のシートに適宜な添加剤を添加することにより、UVカット、色調調製等の機能付加を行うことができる。これにより高い日射遮蔽特性を有し、ヘイズ値は小さい日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。さらに当該方法は、日射遮蔽用合わせ構造体の製造が容易で、生産コストが安価で、かつ2枚の板ガラスで構成された合わせ構造体よりも軽量な日射遮蔽用合わせ構造体を製造することができる。
【0072】
4.日射遮蔽用合わせ構造体の製造方法
日射遮蔽機能を有する上記微粒子を可塑剤または適宜溶媒に分散する方法は、微粒子が可塑剤または適宜溶媒中に均一に分散できる方法であれば任意である。例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散等の方法を挙げることができ、上記微粒子を可塑剤または適宜溶媒に均一に分散することによって本発明の日射遮蔽用合わせガラスの製造に適用される上記添加液または塗布液が調製される。
【0073】
日射遮蔽機能を有する上記微粒子を分散させる溶媒としては特に限定されるものではなく、日射遮蔽膜を形成する条件およびビニル系樹脂組成物を調製する際に配合されるビニル系樹脂等に合わせて適宜選択することが可能である。例えば、水やエタノ−ル、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン等のケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。また、必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、上記塗布液中における微粒子の分散安定性を一層向上させるため、各種の界面活性剤、カップリング剤等の添加も勿論よい。
【0074】
また、上記ビニル系樹脂の可塑性を調整する可塑剤についても特に限定されず、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、エポキシ脂肪酸モノエステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキソエート、セバシン酸ジブチル、ジブチルセバケート等が挙げられる。
【0075】
また、上記ビニル系樹脂としては、例えばポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、塩化ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−グリシジルアクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリ酢酸ビニルエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール−ポリビニルブチラール混合物等が挙げられるが、ガラスやプラスチックとの接着性、透明性、安全性などの観点からポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールやエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0076】
次に、日射遮蔽機能を有する微粒子が含まれる中間膜用シートまたは日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間膜用シートの形成方法には公知の方法が用いられ、例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。特に日射遮蔽機能を有する微粒子とビニル系樹脂組成物が含まれる前者の中間膜用シートにおいて、上記ビニル系樹脂組成物は、例えば日射遮蔽機能を有する微粒子が可塑剤に分散された添加液をビニル系樹脂に添加し、混練して上記微粒子が均一に分散して成るものであり、このように調製されたビニル系樹脂組成物をシート状に成形することがで
きる。尚、ビニル系樹脂組成物をシート状に成形する際には、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽材等を配合してもよい。また、シートの貫通性制御のために接着力調整剤(例えば金属塩)を配合してもよい。また、本発明の合わせ構造体の製造方法は、上述した合わせ構造体の構成をとる方法であれば、限定されるものではない。
【0077】
日射遮蔽機能を有する微粒子をプラスチックに分散させたシートあるいはフィルムを作製する時には、所望する光学特性と使用するプラスチックの機械的強度を勘案して日射遮蔽機能を有する微粒子含有量を決める必要がある。
日射遮蔽用微粒子を樹脂フィルムに練り込むときは、樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合することが好ましい。さらに、樹脂に混合後ペレット化し、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法などによりフィルムやボードを形成することが可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的に応じて適宜選定すればよく、樹脂に対する日射遮蔽用微粒子の量は、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましく、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて決定する。また、練り込む樹脂は、上記したように、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であるが、例えばPET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、などが挙げられる。
また、日射遮蔽機能を有する微粒子が含有される中間膜は、例えば、日射遮蔽機能を有する微粒子を可塑剤に分散した添加液を、ビニル系樹脂に添加してビニル系樹脂組成物を調製し、このビニル系樹脂組成物をシート状に成形することで中間膜のシートを得る。このときの樹脂に対する日射遮蔽用微粒子の量は、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。このときのシートの厚さは、使用目的に応じて適宜選定し、樹脂に対する日射遮蔽用微粒子の量は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて決定する。
【0078】
5.日射遮蔽体形成用分散液の製造方法
日射遮蔽用合わせ構造体へ好個に適用できる日射遮蔽体形成用分散液の製造方法について説明する。
本発明に係る日射遮蔽体形成用分散液は、溶媒と日射遮蔽用微粒子とを含有し、当該日射遮蔽用微粒子が当該溶媒中に分散している日射遮蔽体形成用分散液である。この日射遮蔽用微粒子は、前記した一般式XB(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、Sr、およびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子を含む。また、当該日射遮蔽用微粒子を含む粉体、その粉体色がL表色系において、Lが30〜60、aが−5〜10、bが−10〜2であることが好ましい。そして、前記溶媒中に分散された当該ホウ化物微粒子の分散微粒子径は800nm以下である。前記溶媒中に分散されるホウ化物微粒子の分散微粒子径が800nm以下まで十分細かく、かつ、均一に分散した日射遮蔽体形成用分散液を適用することにより、高い日射遮蔽特性を有する日射遮蔽体を得ることができる。
【0079】
ここで、日射遮蔽体形成用分散液中における、当該ホウ化物微粒子の分散粒子径について簡単に説明する。ホウ化物微粒子の分散粒子径とは、溶媒中に分散しているホウ化物微粒子が凝集して生成した凝集粒子の径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、ホウ化物微粒子分散液からホウ化物微粒子の単体や凝集体が存在する状態のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした大塚電子(株)社製ELS−8000にて測定することで求めることができる。
【0080】
当該日射遮蔽体形成用分散液において、前記ホウ化物微粒子の分散粒径は800nm以下であることが望ましい。分散粒径が800nm以下であると、得られた日射遮蔽体が単調に透過率の減少した灰色系の膜や成形体(板、シートなど)になってしまうことを回避
でき、高い日射遮蔽特性を示すからである。さらに、当該日射遮蔽体形成用分散液が凝集した粗大粒子を多く含んでいなければ、これら粗大粒子が光散乱源となって曇り(ヘイズ)を発生させ、可視光透過率が減少する原因となるのを回避することができるので好ましい。
【0081】
なお、当該ホウ化物微粒子を溶媒へ分散させる方法は、均一に分散できる方法であれば特に限定されず、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどを用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。これらの器材を用いた分散処理によって、ホウ化物微粒子の溶媒中への分散と同時にホウ化物微粒子同士の衝突等による微粒子化も進行し、ホウ化物粒子をより微粒子化して分散させることができる(すなわち、粉砕・分散処理される)。
【0082】
さらに、前記Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Snから成る群から選ばれた1種以上の元素からなる酸化物微粒子、複合酸化物微粒子、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.99)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、一般式M(1−G)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<E≦1.2、0<G≦1、2≦J≦3)で表記される複合酸化物の内の少なくと
も1種以上の微粒子を前記日射遮蔽体形成用分散液へ添加して、当該分散液中の溶媒中に分散させるのも好ましい構成である。
【0083】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液は、無機バインダーまたは/及び樹脂バインダーを含む構成とすることができる。無機バインダーや樹脂バインダーの種類は特に限定されるものではない。例えば、当該無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、または、アルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物またはオルガノシラザンが挙げられ、また、当該樹脂バインダーとして、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが利用できる。また、前記日射遮蔽体形成用分散液において、ホウ化物微粒子を分散した溶媒は特に限定されるものではなく、塗布・練り込み条件、塗布・練り込み環境、さらに、無機バインダーや樹脂バインダーを含有させたときはバインダーに合わせて適宜選択すればよい。
【0084】
当該溶媒としては、例えば、水やエタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテルなどのエーテル類、エステル類、アセトン、メチルエチフケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、インブチルケトンなどのケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。または必要に応じて酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。さらに、分散液中の微粒子の分散安定性を一層向上させるためには、各種の界面活性剤、カップリング剤などの添加も勿論可能である。
【0085】
さらに、前記日射遮蔽体形成用分散液を用いて透明基材上に被膜を形成したとき、当該膜の導電性は、当該タングステン酸化物微粒子の接触個所を経由した導電パスに沿って得られる。そこで、例えば、前記日射遮蔽体形成用分散液中の界面活性剤やカップリング剤の量を加減することで当該導電パスを部分的に切断することができ、例えば10Ω/□以上の表面電気抵抗値とすることで、膜の導電性を低下させることは容易である。また、前記日射遮蔽体形成用分散液中の無機バインダーまたは/及び樹脂バインダーの含有量の加減によっても当該膜の導電性を制御できる。
【0086】
次に、前記日射遮蔽体形成用分散液を適宜な透明基材上に塗布して被膜を形成する場合、当該塗布方法は特に限定されない。当該塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、ロールコート法、流し塗りなど、分散液を平坦かつ薄く均一に塗布できる方法であればいずれの方法でもよい。
【0087】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液中に無機バインダーとして、珪素、ジルコニウム、チタン、または、アルミニウムの金属アルコキシド及びその加水分解重合物を含む場合、分解液の塗布後の基材加熱温度を100℃以上とすることで、塗膜中に含まれるアルコキシドまたはその加水分解重合物の重合反応を殆ど完結させることができる。重合反応を殆ど完結させることで、水や有機溶媒が膜中に残留して加熱後の膜において可視光透過率の低減の原因となることを回避できることから、前記加熱温度は100℃以上が好ましく、さらに好ましくは分散液中の溶媒の沸点以上である。
【0088】
また、前記日射遮蔽体形成用分散液中に樹脂バインダーを使用した場合は、それぞれの樹脂バインダーの硬化方法に従って硬化させればよい。例えば、樹脂バインダーが紫外線硬化樹脂であれば紫外線を適宜照射すればよく、また常温硬化樹脂であれば塗布後そのまま放置しておけばよい。
【0089】
また、日射遮蔽体形成用分散液が樹脂バインダーまたは無機バインダーを含まない場合、透明基材上に得られる被膜は、前記ホウ化物微粒子のみが堆積した膜構造になる。そして当該被膜はこのままでも日射遮蔽効果を示す。しかし、この膜上へ、さらに珪素、ジルコニウム、チタン、またはアルミニウムの金属アルコキシドやこれらの部分加水分解縮重合物などの無機バインダー、または樹脂バインダーを含む塗布液を塗布して被膜を形成して多層膜とするとよい。当該構成を採ることにより、前記塗布液成分が第1層のタングステン酸化物微粒子の堆積した間隙を埋めて成膜されるため、膜のヘイズが低減して可視光透過率が向上し、また微粒子の基材への結着性が向上する。
【0090】
以上のようにして成膜された、透明基材とこの上に形成された被膜とで構成される本発明に係る日射遮蔽体は、ホウ化物微粒子が前記被膜内に適度に分散しているため、膜内を結晶が緻密に埋めた鏡面状表面をもつ物理成膜法による酸化物薄膜に比べて可視光領域での反射が少なく、ギラギラした外観を呈することが回避できる。その一方で、可視域から近赤外域にプラズマ周波数をもつため、これに伴うプラズマ反射が近赤外域で大きくなり日射遮蔽性に優れている。
【0091】
また、当該被膜の可視光域における反射をさらに抑制したい場合には、ホウ化物微粒子が分散された被膜の上に、SiOやMgFのような低屈折率の膜を成膜することにより、容易に視感反射率1%以下の多層膜を得ることができる。
【0092】
また、本発明に係る日射遮蔽体へ、さらに紫外線遮蔽機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの粒子、有機系のベンソフェノンやベンソトリアゾールなどの少なくとも1種以上を添加してもよい。
【0093】
また、当該日射遮蔽膜の可視光透過率を向上させるために、さらにATO、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、インジウム錫複合酸化物などの粒子を混合してもよい。これらの透明粒子は、添加量を増やすと750nm付近の透過率が増加する一方、近赤外線を遮蔽するため、可視光透過率が高く、かつ日射遮蔽特性のより高い日射遮蔽体が得られる。
【実施例】
【0094】
以下に、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、各実施例および比較例においては、日射遮蔽用合わせ構造体を、合わせ構造体と略記する。尚、各実施例において、合わせ構造体の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用いて測定した。さらに、各合わせ構造体の重量を測定し、2枚の板ガラスで合わせ構造体を作製した比較例3の重量を100%として、これに対する相対的な割合として実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例2の構造体の重量%を求めた。
【0095】
(実施例1)
六ホウ化ランタン(LaB)粒子20重量%、高分子系分散剤5重量%、トルエン75重量%を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーで24時間分散処理することにより、平均分散粒子径86nmのLaB分散液を調製した(A液)を調製した。
【0096】
次に、得られた分散液(A液)をポリビニルブチラールに添加し、そこへ可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレートを加え、微粒子aの濃度が0.02重量%、ポリビニルブチラール濃度が71.1重量%となるように中間膜用組成物を調製した。調製された該組成物をロールで混練して、0.76mm厚のシート状に成形し中間膜を作製した。作製された中間膜を中間層として、100mm×100mm×約2mm厚のグリーンガラス基板と、ポリカーボネートの間に挟み込み、80℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cmのオートクレーブにより本接着を行い、合わせ構造体Aを作製した。
【0097】
図2の一覧表に示すように、合わせ構造体Aの可視光透過率78.0%のときの日射透過率は55.7%で、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0098】
(実施例2)
グリーンガラスをクリアガラスに替えた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る合わせ構造体Bを、作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例2の合わせ構造体Bの可視光透過率82.0%のときの日射透過率は58.4%で、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0099】
(実施例3)
実施例1で調製した0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを、日射遮蔽微粒子を含有しない2枚の中間膜用ポリビニルブチラールシート間に介在させ3層構造を有する中間層とした以外は、実施例1と同様にして合わせガラス化して実施例3に係る合わせ構造体Cを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例3の合わせ構造体Cの可視光透過率78.0%のときの日射透過率は55.6%であり、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0100】
(実施例4、5)
LaB粒子に替えて、CeB粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る合わせ構造体Dを、NdB粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る合わせ構造体Eを、作製した。なお、CeBおよびNdBの平均分散粒子径は、両方とも85nmであった。
図2の一覧表に示すように、実施例4に係る合わせ構造体Dにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は68.5%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であり、実施例5に係る合わせ構造体Eにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は60.8%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0101】
(実施例6)
実施例1のLaB分散液(A液)をポリカーボネート樹脂にLaB濃度が0.005重量%となるように添加し、ブレンダー、二軸押し出し機で均一に溶融混合した後、Tダイを用いて厚さ2mmに押し出し成形し、LaB微粒子が樹脂全体に均一に分散した日射遮蔽体(熱線遮蔽ポリカーボネートシート)を得た。該日射遮蔽体と、もう一方のグリーンガラス基板との間に0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを中間層として挟み込んだ以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体Fを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例6に係る合わせ構造体Fにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は59.3%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0102】
(実施例7)
実施例6において、ポリカーボネート樹脂の替わりにポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は、実施例6と同様にして厚さ2mmに押し出し成形し、LaB微粒子が樹脂全体に均一に分散した日射遮蔽体(熱線遮蔽ポリエチレンテレフタレートシート)を得た。該日射遮蔽体と、もう一方のグリーンガラス基板との間に0.76mm厚の中間膜用ポリビニルブチラールシートを中間層として挟み込んだ以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体Gを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例7に係る合わせ構造体Gにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は59.4%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は72.6%であった。
【0103】
(実施例8)
平均粒子径約21nmのアンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子20重量%、トルエン75重量%、分散剤5重量%を混合し、0.15mmφのガラスビーズと共に容器に充填した後、1.5時間のビーズミル分散処理することにより、平均分散粒子径76nmのATO分散液を調製した(B液)。
前記実施例1で調製したLaB分散液(A液)とATO分散液(B液)を混合し、ポリカーボネート樹脂にLaB濃度が0.004重量%、ATO濃度が0.20重量%となるように添加した以外は、実施例6と同様にして合わせ構造体Hを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例8に係る合わせ構造体Hにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は60.5%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0104】
(実施例9)
平均粒子径約27nmのインジウム錫酸化物(ITO)粒子20重量%、トルエン66重量%、分散剤14重量%を混合し、0.15mmφガラスビーズと共に容器に充填した後、2時間のビーズミル分散処理を施して、平均分散粒子径75nmのITO酸化物粒子
分散液(C液)を調製した。次に、実施例1で調製した分散液(A液)とITO酸化物粒子分散液(C液)を混合し、ポリカーボネート樹脂にLaB濃度が0.0018重量%、ITO濃度が0.082重量%となるように添加した以外は、実施例6と同様にして合わせ構造体Iを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例9に係る合わせ構造体Iにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は54.1%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%でであった。
【0105】
(実施例10)
ポリビニルブチラールに代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体とした以外は実施例1と同様にして実施例14に係る合わせ構造体Jを作製した。
図2の一覧表に示すように、実施例10に係る合わせ構造体Jにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は55.7%、ヘイズ値は0.3%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。
【0106】
(比較例1〜3)
実施例8のATO分散液(B液)のみをポリカーボネート樹脂に添加し、ポリカーボネート樹脂中のATO濃度を0.60重量%とした以外は、実施例6と同様にして、合わせ構造体K(比較例1)を作製した。
実施例9のITO分散液(C液)のみをポリカーボネート樹脂に添加し、ポリカーボネート樹脂中のITO濃度を0.19重量%とした以外は、実施例6と同様にして、合わせ構造体L(比較例2)を作製した。
実施例1のポリカーボネートをグリーンガラス基板に替えた以外は、実施例1と同様にして合わせ構造体M(比較例3)を作製した。
【0107】
図2の一覧表に示すように、比較例1に係る合わせ構造体Kにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は59.4%で、ヘイズ値は0.4%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。比較例2に係る合わせ構造体Lにおいて、可視光透過率78.0%のときの日射透過率は54.2%で、ヘイズ値は0.4%、比較例3に係る合わせ構造体Mに対する重量は74%であった。比較例3に係る合わせ構造体Mにおいて、可視光透過率77.0%のときの日射透過率は48.1%で、ヘイズ値は0.3%であった。
【0108】
上述した、実施例および比較例の評価結果より、比較例1のATOを含有する合わせ構造体、比較例2のITOを含有する合わせ構造体と比較して、より微量のホウ化物微粒子を添加した実施例1〜7の合わせ構造体は、同等の透明性と日射遮蔽機能を発揮する。さらに、日射遮蔽機能を有する微粒子として、ホウ化物微粒子と、ATO・ITOとを併用する場合には、実施例8や実施例9の合わせ構造体に示すように、それらの添加量を大幅に削減でき、コストメリットが大きい。さらに、一方を板ガラス、他方をプラスチックとした合わせ構造体である実施例1〜実施例10の重量は、両方を板ガラスとした比較例3よりも軽量であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】六方晶結晶構造の模式的な平面図
【図2】本発明の実施例および比較例に係る日射遮蔽用合わせ構造体の日射遮蔽特性一覧表である。
【符号の説明】
【0110】
1.W(または、A元素)O単位
2.M元素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含む中間膜を有する中間層を、板ガラス、プラスチックおよび日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた板と、プラスチック、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた板との、合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が、一般式XB(但し、Xは、Y、La、C
e、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子であることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項2】
日射遮蔽機能を有する微粒子を含まない中間層を、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックの板と、板ガラス、プラスチック、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子を含むプラスチックから選ばれた板との、合わせ板間に介在させて成る日射遮蔽用合わせ構造体であって、
日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が、一般式XB(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ba、SrおよびCaから選択される少なくとも1種以上の元素)で表される6ホウ化物微粒子であることを特徴とする日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項3】
上記ホウ化物微粒子の粒子径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項4】
上記ホウ化物微粒子へ、さらに、
Sb、V、Nb、Ta、W、Zr、F、Zn、Al、Ti、Pb、Ga、Re、Ru、P、Ge、In、Snから成る群から選ばれた1種以上の元素からなる酸化物微粒子または/および複合酸化物微粒子、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.99)で表記されるタングステン酸化物微粒子、
一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.0、2.0<z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子、
一般式M(1−G)(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、A元素は、Mo、Nb、Ta、Mn、V、Re、Pt、Pd、Tiのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0<E≦1.2、0<G≦1、2≦J≦3)で
表記される複合酸化物、
の内の少なくとも1種以上の微粒子が加えられた混合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項5】
前記プラスチックが、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂またはポリエステル樹脂またはポリエチレンテレフタレ−ト樹脂の、シートまたはフィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項6】
前記中間層は、1層以上の中間膜を有し、当該中間膜の少なくとも1層に、日射遮蔽機能を有するホウ化物微粒子が分散されていることを特徴とする請求項1記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項7】
前記中間膜を構成する樹脂は、ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項6記載の日射遮蔽用合わせ構造体。
【請求項8】
前記中間膜を構成するビニル系樹脂は、ポリビニルブチラールまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の日射遮蔽用合わせ構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−290460(P2008−290460A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144289(P2008−144289)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願2005−267437(P2005−267437)の分割
【原出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】