説明

昆虫抵抗性管理のためのCRY1DaおよびCRY1Faタンパク質の併用

本発明は鱗翅類の昆虫を防除するための方法および植物を含み、前記植物は、昆虫(複数可)による抵抗性の発達を遅らせるか阻止するための、Cry1FaおよびCry1Daコア毒素含有タンパク質の組合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人は、食物用途およびエネルギー用途のためにトウモロコシを栽培する。人は、ダイズおよびワタを含む他の多くの作物も栽培する。昆虫は、植物を食べて損傷し、それによってこれらの人の努力を台無しにする。害虫を防除するために毎年何10億ドルも費やされ、害虫が与える損傷に対してさらに数10億ドルが失われる。合成有機化学殺虫剤は、害虫を防除するために用いられる主な手段であったが、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)に由来する殺虫性タンパク質などの生物殺虫剤が一部の領域である重要な役割を演じてきた。Bt殺虫性タンパク質遺伝子による形質転換を通して昆虫抵抗性植物を作出できたことにより、現代農業が革新され、殺虫性タンパク質およびその遺伝子の重要性および価値が高まっている。
【0002】
今日までに登録され商品化に至った昆虫抵抗性のトランスジェニック植物を作製するために、数種のBtタンパク質が用いられてきた。このBtタンパク質としては、トウモロコシのCry1Ab、Cry1Ac、Cry1FおよびCry3Bb、ワタのCry1AcおよびCry2Ab、ならびにジャガイモのCry3Aが挙げられる。
【0003】
これらのタンパク質を発現する市販製品は、2種のタンパク質の組合せ殺虫スペクトルが所望である場合(例えば、それぞれ鱗翅目害虫およびルートワームへの抵抗性を付与するために組み合わされた、トウモロコシのCry1AbおよびCry3Bb)を除き、または2種のタンパク質のそれぞれ独立した作用により、これらのタンパク質が感受性を示す昆虫集団での抵抗性の発達を遅らせるための手段として有用となる場合(例えば、オオタバコガのための抵抗性管理を付与するために組み合わされた、ワタのCry1AcおよびCry2Ab)を除いて、単一のタンパク質しか発現しない。
【0004】
すなわち、この技術の急速で広範囲な採用をもたらした昆虫抵抗性トランスジェニック植物の特質のいくつかは、これらの植物によって生成される殺虫性タンパク質に対する抵抗性を有害生物集団が発達させるという懸念も生む。高用量のタンパク質を、緩衝帯と組み合わせて、異なる毒素と交互にまたは同時利用で利用することを含め、Btに基づく昆虫抵抗性形質の有用性を保存するためのいくつかの戦略が提案されている(McGaugheyら (1998), "B.t. Resistance Management," Nature Biotechnol. 16:144-146)。
【0005】
あるタンパク質に対して発達した抵抗性が別のタンパク質に対する抵抗性を付与しない(すなわち、タンパク質に対する交差抵抗性がない)ように、IRMスタックで用いるために選択されるタンパク質は、それらの殺虫効果を独立して発揮する必要がある。例えば、「タンパク質A」に対する抵抗性について選択される有害生物集団が「タンパク質B」に感受性である場合、そこには交差抵抗性がなく、タンパク質Aおよびタンパク質Bの組合せがタンパク質A単独に対する抵抗性を遅らせるのに有効であろうと結論付けられるであろう。
【0006】
抵抗性を示す昆虫集団が存在しない場合、作用機構および交差抵抗性能力に関連すると推測される他の特性に基づいて評価を行うことができる。交差抵抗性を示す可能性のない殺虫性タンパク質を同定することにおける受容体媒介結合の有用性が示唆されている(van Mellaertら 1999)。この手法に特有の交差抵抗性の欠如の重要な予測因子は、殺虫性タンパク質が感受性昆虫種の受容体をめぐって競合しないことである。
【0007】
2つのBt毒素が同じ受容体をめぐって競合する場合には、毒素の1つがその受容体にもはや結合せず、したがって昆虫に対してもはや殺虫性でないように該昆虫におけるその受容体が突然変異するならば、該昆虫は他方の毒素(同じ受容体に競合的に結合する)にも抵抗性になる場合もある。すなわち、昆虫は両方のBt毒素に交差抵抗性であると言われる。しかし、2つの毒素が2つの異なる受容体に結合する場合には、これは昆虫がそれら2つの毒素に同時に抵抗性にならないことを示す指標であろう。
【0008】
Cry1Faは、ヨーロピアンコーンボーラー(ECB;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Huebner))およびフォールアーミーワーム(FAW;スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda))を含む多くの鱗翅目害虫の種の防除で有用であり、シュガーケーンボーラー(SCB;ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis))に対する活性を有する。TC1507イベントを含むトウモロコシ植物で生成されるようなCry1Faタンパク質は、FAW防除のための業界をリードする昆虫抵抗性形質を担う。Cry1Faは、Herculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWideStrike(商標)製品でさらに利用されている。
【0009】
受容体結合性アッセイでの検出のためのタンパク質を標識するのに利用できる最も一般的な技術がCry1Faタンパク質の殺虫活性を不活性化するので、Cry1Faタンパク質を用いる(競合的または相同的)受容体結合性試験を行う能力は制限される。
【0010】
さらなるCry毒素は、公式なB.t.命名委員会のウェブサイト(Crickmoreら; lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/)に記載されている。添付の付録Aを参照されたい。ほぼ60個の主要群の「Cry」毒素(Cry1〜Cry59)が現在あり、さらなるCyt毒素およびVIP毒素などがある。数字で表した各群の多くは大文字のサブグループを有し、大文字のサブグループは小文字のサブサブグループを有する。(例えば、Cry1はA〜Lを有し、Cry1Aはa〜iを有する)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一部、Cry1Faタンパク質の殺虫活性への抵抗性のために選択されるフォールアーミーワーム(スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda);FAW)集団が、Cry1Daタンパク質の殺虫活性に抵抗性でないという意外な発見に関する。当業者であればこの開示を考慮すると認識するように、これらの2つの殺虫性タンパク質またはその殺虫性部分を発現する植物は、これらの殺虫性タンパク質のいずれか単独に対する抵抗性の発達を遅らせるか阻止することにおいて有益となる。
【0012】
本発明は、Cry1FaおよびCry1DaがFAW由来の腸管内受容体の結合を互いに競合しないという発見によっても支えられる。
【0013】
本発明はまた、一部、基礎的な組であるCry1FaおよびCry1Da毒素を伴う3つ(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド」に関する。1つの好ましいピラミッドは、2つの有害生物FAWおよびECB(ヨーロピアンコーンボーラー;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis))に対する非交差抵抗性の活性を提供する少なくとも2つのタンパク質を提供する:Cry1Fa+Cry1Da+Cry1Abなどの1つまたは複数の抗ECB毒素。一部の好ましいピラミッドの実施形態では、選択される毒素は、FAWに対して3つの別々の作用様式を有する。これらの好ましい「3つの作用様式」のピラミッド組合せは、Cry1Fa+Cry1D+Vip3Ab、Cry1C、Cry1BeおよびCry1Eからなる群から選択される別の毒素/遺伝子である。これらの3つの毒素を生成する植物(およびそのような植物を植える土地)は、本発明の範囲内に含まれる。さらなる毒素/遺伝子を加えることもできるが、本発明によるこれらの特定の三重スタックは、都合よく、および意外にもFAWに対して3つの作用様式を提供する。これは、緩衝帯面積に対する要件を低減または除去するのを助けることができる。本発明は、単一の標的有害生物に対して互いに競合しない3つの殺虫性タンパク質(一部の好ましい実施形態ではCryタンパク質)の使用にも一般に関する。
【0014】
したがって、Cry1Daは、トウモロコシおよび他の植物(例えばワタおよびダイズ)のための3遺伝子組合せの場合のように用いられ得る。Cry1Da遺伝子は、例えばHerculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWideStrike(商標)などのCry1Fa製品に組み込まれ得る。したがって、Cry1Daの使用は、他の商品化タンパク質への淘汰圧を低減することにおいて有意となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】FAW(青色の棒)またはrFAW(紫色の棒)が食害したトウモロコシ葉部分への傷害(平均葉傷害%+SEM)を示す図。番号「5163」に続く全ての処理は、Cry1Daを含む構築物で形質転換された植物からの葉部分である。Cry1Daの発現が検出されなかった植物は、グラフの左端にまとめた。Cry1Daの発現が検出された植物は、グラフの中央にまとめた。非トランスジェニック(すなわち、陰性)対照はグラフの右端にあり、「B104」、「HiII」および「同質遺伝子系統」と表示される。Cry1Faを含む市販の近交系は、右の最初の処理(「Herculex I」と表示)であり、「同質遺伝子系統」と表示される非トランスジェニック対照と同じ遺伝的背景である。
【図2】Cry1Faコア毒素、Cry1Daコア毒素および125I標識Cry1Daコア毒素タンパク質によるスポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)BBMVへの結合のための競合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で報告されるように、トランスジェニックトウモロコシ(および他の植物;例えばワタおよびダイズ)で生成されたCry1Da毒素は、Cry1Fa活性への抵抗性を発達させたフォールアーミーワーム(FAW;Spodoptera frugiperda)を防除することにおいて非常に有効である。したがって、本発明は、一部、Cry1Faに抵抗性のフォールアーミーワームがCry1Daに感受性である(すなわち、交差抵抗性でない)という意外な発見に関する。
【0017】
本発明は、一部、Cry1Da毒素がCry1Fa抵抗性のフォールアーミーワームによる傷害から植物(メイズ植物など)を保護することにおいて有効であるという意外な発見にも関する。この有害生物の議論については、例えばTabashnik, PNAS (2008), vol. 105 no. 49, 19029-19030を参照。
【0018】
本発明は、フォールアーミーワームによる食害、またはCry1Fa抵抗性を発達させたフォールアーミーワーム集団によって引き起こされる傷害および収量減からトウモロコシおよび他の経済的に重要な植物種を保護するための、Cry1Da毒素の使用を含む。
【0019】
したがって、本発明は、フォールアーミーワームによるCry1Faおよび/またはCry1Daへの抵抗性の発達を阻止または軽減するためのIRMスタックを教示する。
【0020】
本発明は、Cry1Faコア毒素含有タンパク質およびCry1Daコア毒素含有タンパク質を生成する細胞を含む、鱗翅目害虫を防除するための組成物を提供する。
【0021】
本発明は、Cry1Faコア毒素含有タンパク質およびCry1Daコア毒素含有タンパク質の両方を生成するように形質転換された、微生物または植物細胞である宿主をさらに含む。対象cry1Faポリヌクレオチドおよび対象cry1Daポリヌクレオチドは、好ましくは非バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)プロモーター(複数可)の制御下にある(それに作動可能に連結する/それを含む)遺伝子構築物中にある。対象ポリヌクレオチドは、植物での強化された発現のためのコドン使用頻度を含むことができる。
【0022】
本発明は、鱗翅目害虫を防除する方法であって、前記鱗翅目害虫または前記鱗翅目害虫の環境を、Cry1Faコア毒素含有タンパク質を含み、さらにCry1Daコア毒素含有タンパク質を含む組成物の有効量と接触させることを含む方法を提供することがさらに意図される。
【0023】
本発明の実施形態は、植物で発現可能なCry1Daコア毒素含有タンパク質をコードする遺伝子および、植物で発現可能なCry1Faコア毒素含有タンパク質をコードする遺伝子を含むメイズ植物、およびそのような植物の種子を含む。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、Cry1Daコア毒素含有タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子およびCry1Faコア毒素含有タンパク質をコードする、植物による発現が可能な遺伝子が移入されたメイズ植物、およびそのような植物の種子を含む。
【0025】
昆虫受容体。実施例に記載されているように、放射性標識されたCry1Daコア毒素タンパク質を用いる競合的受容体結合性試験は、Cry1Daが結合するFAW昆虫組織に存在する高親和性結合部位によりCry1Faコア毒素タンパク質は競合しないことを示す。これらの結果は、Cry1FaおよびCry1Daタンパク質の組合せが、FAW集団でのCry1Faへの抵抗性の発達(および同様に、Cry1Daへの抵抗性の発達)を軽減する有効手段であること、および両タンパク質を発現するトウモロコシ植物でこの有害生物への抵抗性のレベルを増加させるであろうことを示す。
【0026】
したがって、上記および本明細書の他に記載のデータに一部基づき、Cry1DaおよびCry1Faタンパク質の同時生成(スタッキング)をFAWのための高用量IRMスタックを生成するために用いることができると考えられる。昆虫防除スペクトルを拡張するために、他のタンパク質をこの組合せに加えることができる。例えばトウモロコシでは、Cry1Abの追加は、ヨーロピアンコーンボーラーの防除のためのIRMピラミッドを形成する。
【0027】
別の展開オプションは、別の第三の毒素/遺伝子と組み合わせてCry1FaおよびCry1Daタンパク質を用いること、およびこれらの毒素のいずれかに対するFAWでの抵抗性の発達を軽減するためにこの三重スタックを用いることであろう。したがって、本発明の別の利用選択肢は、FAWが抵抗性集団を発達させることができる作物栽培地域で、これらのタンパク質の1つ、2つ、または3つ(以上)を用いることであろう。したがって、本発明は、一部、基礎となる組であるCry1FaおよびCry1Da毒素を伴う3つ(以上)の毒素の三重スタックまたは「ピラミッド」にも関する。1つの好ましいピラミッドは、2つの有害生物FAWおよびECB(ヨーロピアンコーンボーラー;オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis))に対する非交差抵抗性の活性を提供する少なくとも2つのタンパク質を提供する:Cry1Fa+Cry1Da+Cry1Abなどの1つまたは複数の抗ECB毒素(US20080311096を参照)。Cry1Fは両昆虫に活性である。他のECB毒素には、Cry1Be(USSN61/284,290を参照;2009年12月16日に出願)、Cry1I(USSN61/284,278を参照;2009年12月16日に出願)、Cry2Aa(USSN61/284,278を参照;2009年12月16日に出願)およびDIG−3(US201000269223を参照)が含まれる。一部の好ましいピラミッドの実施形態では、選択される毒素は、FAWに対して3つの別々の作用様式を有する。これらの好ましい「3つの作用様式」のピラミッド組合せは、Cry1Fa+Cry1D+Vip3Ab、Cry1C(USSN61/284,281を参照;2009年12月16日に出願)、Cry1BeおよびCry1E(USSN61/284,278を参照;2009年12月16日に出願)からなる群から選択される別の毒素/遺伝子である。これらの3つの毒素を生成する植物(およびそのような植物を植える土地)は、本発明の範囲内に含まれる。さらなる毒素/遺伝子を加えることもできるが、本発明によるこれらの特定の三重スタックは、FAWに対して3つの作用様式を都合よく、および意外にも提供する。これは、緩衝帯地所の要件を低減または除去するのを助けることができる。したがって、10エーカー以上のこのように植えられる圃場は、本発明に含まれる。
【0028】
したがって、Cry1Daは、現在新しい形質開発過程の開発Iにある、トウモロコシのための3遺伝子組合せの場合のように用いられ得る。Cry1Faは、Herculex(登録商標)、SmartStax(商標)およびWidesStrike(商標)製品中にある。したがって、Cry1Daの使用は、他の商品化タンパク質への淘汰圧を低減することにおいて有意となり得る。
【0029】
他のVip3毒素は、例えば、添付されている付録Aに記載されている。本明細書で開示または指摘される遺伝子およびタンパク質のいずれかの配列を得るために、それらのGENBANK番号を用いることもできる。
【0030】
米国特許第5,188,960号および米国特許第5,827,514号は、本発明の実施で使用するために適するCry1Faコア毒素含有タンパク質を記載する。米国特許第6,218,188号は、本発明で使用するために適するCry1Faコア毒素含有タンパク質をコードする植物最適化DNA配列を記載する。
【0031】
本発明に記載される毒素の組合せは、鱗翅目害虫を防除するために用いることができる。成体の鱗翅目、例えばチョウおよびガは、主に花蜜を食し、受粉の重要な実行者である。ほとんど全ての鱗翅目幼虫、すなわちイモムシは植物を食し、多くは重大な有害生物である。イモムシは、植物の葉の表面もしくは内部、または根部または茎を食し、植物から栄養を奪い、多くの場合植物の物理的支持構造物を破壊する。さらに、イモムシは果物、織物ならびに保存された穀物および小麦粉を食し、売物のこれらの商品を破壊するかそれらの価値を激減させる。本明細書で用いるように、鱗翅目害虫への言及は、幼虫期を含めた、鱗翅目害虫の様々なライフステージを指す。
【0032】
本発明の一部のキメラ毒素は、Bt毒素の完全なN末端コア毒素部分を含み、コア毒素部分の末端を過ぎたある場所で、タンパク質は異種プロトキシン配列への移行を有する。Bt毒素のN末端の殺虫活性毒素部分は、「コア」毒素と呼ばれる。コア毒素セグメントから異種プロトキシンセグメントへの移行は、ほぼ毒素/プロトキシン接合部で起こることができるか、代わりに、元のプロトキシンの部分(コア毒素部分を過ぎて伸長する)を保持することができ、異種プロトキシン部分への移行は下流で起こる。
【0033】
例えば、本発明の1つのキメラ毒素は、Cry1Daの完全なコア毒素部分(アミノ酸1〜601)および異種プロトキシン(アミノ酸602からC末端)である。好ましい一実施形態では、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。第二の例として、本発明の第二のキメラ毒素は、Cry1Daの完全なコア毒素部分(アミノ酸1〜619)および非相同プロトキシン(アミノ酸620からC末端)を有する。好ましい実施形態では、プロトキシンを含むキメラ毒素の部分は、Cry1Abタンパク質毒素に由来する。
【0034】
Bt毒素は、Cry1Fなどの特定のクラス内でさえ、長さおよびコア毒素部分からプロトキシン部分への移行の正確な位置が多少異なることを、当分野の技術者は認識する。一般的に、Cry1DaおよびCry1Fa毒素は、長さが約1150から約1200アミノ酸である。コア毒素部分からプロトキシン部分への移行は、完全長毒素の約50%から約60%の間で一般的に起こる。本発明のキメラ毒素は、このN末端コア毒素部分の全長を含む。したがって、キメラ毒素は、Cry1Fa Bt毒素タンパク質の完全長の少なくとも約50%、またはCry1Da Bt毒素タンパク質の完全長の少なくとも約50%を含む。これは、一般的に少なくとも約590アミノ酸である。プロトキシン部分に関して、Cry1Abプロトキシン部分の全長は、コア毒素部分の末端から分子のC末端まで伸びる。
【0035】
遺伝子および毒素。本発明による有用な遺伝子および毒素には、開示される完全長配列だけでなく、本明細書で具体的に例示される毒素の特徴的な殺虫活性を保持するこれらの配列の断片、変異体(variants)、突然変異体(mutants)、および融合タンパク質も含まれる。本明細書で用いるように、遺伝子の「変異体」または「変形形態(variations)」という用語は、同じ毒素をコードするか、殺虫活性を有する等価な毒素をコードするヌクレオチド配列を指す。本明細書で用いるように、用語「等価な毒素」は、標的有害生物に対して請求されている毒素と同じか実質的に同一である生物的活性を有する毒素を指す。
【0036】
本明細書で用いるように、「Revision of the Nomenclature for the Bacillus thuringiensis Pesticidal Crystal Proteins」、N. Crickmore, D.R. Zeigler, J. Feitelson, E. Schnepf, J. Van Rie, D. Lereclus, J. Baum, and D.H. Dean. Microbiology and Molecular Biology Reviews (1998) Vol 62: 807-813、により、境界は約95%(Cry1Faおよび1Da)、78%(Cry1FおよびCry1D)および45%(Cry1)の配列同一性を表す。これらのカットオフは、(Cry1FおよびCry1D毒素に対する)コア毒素だけに適用することもできる。
【0037】
活性毒素をコードする遺伝子は、いくつかの手段を通して同定し、得ることができることは、当分野の技術者に明らかとなるはずである。本明細書で例示される具体的な遺伝子または遺伝子部分は、培養株保管所に寄託されている分離株から得ることができる。これらの遺伝子、またはその部分もしくは変異体は、合成的に、例えば遺伝子合成装置を用いて構築することもできる。遺伝子の変形形態は、点突然変異を作製する標準技術を用いて、容易に構築することができる。また、これらの遺伝子の断片は、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを標準手順に従って用いることによって作製することができる。例えば、これらの遺伝子の末端からヌクレオチドを体系的に切断するために、Bal31などの酵素または部位特異的突然変異誘発を用いることができる。活性断片をコードする遺伝子は、様々な制限酵素を用いて得ることもできる。これらのタンパク質毒素の活性断片を直接的に得るために、プロテアーゼを用いることができる。
【0038】
例示される毒素の殺虫活性を保持する断片および同等物は、本発明の範囲内である。また、遺伝子コードの冗長性のため、様々な異なるDNA配列が本明細書で開示されるアミノ酸配列をコードすることができる。同じか実質的に同一である毒素をコードするこれらの代替DNA配列を作製することは、当業者の技術の範囲内である。これらの変異体DNA配列は、本発明の範囲内である。本明細書で用いるように、「実質的に同一」配列への言及は、殺虫活性に実質的な影響を及ぼさないアミノ酸の置換、欠失、付加または挿入を有する配列を指す。殺虫活性を保持するタンパク質をコードする遺伝子の断片も、この定義に含まれる。
【0039】
本発明により有用な毒素をコードする遺伝子および遺伝子部分を同定するためのさらなる方法は、オリゴヌクレオチドプローブを用いることによるものである。これらのプローブは、検出可能なヌクレオチド配列である。これらの配列は、適当な標識によって検出可能になることができるか、国際出願公開第93/16094号に記載されているように本来的に蛍光性にすることができる。当技術分野で周知であるように、プローブ分子および核酸試料が2つの分子間で強力な結合を形成することによってハイブリダイズする場合、プローブおよび試料は実質的な相同性を有すると合理的に仮定することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーションは、例えばKeller, G. H., M. M. Manak (1987) DNA Probes, StocktonPress, New York, N.Y., pp. 169- 170に記載されているような、当分野で周知の技術によってストリンジェント条件の下で行われる。塩濃度および温度の組合せの一部の例は、以下の通りである(ストリンジェンシーの低い順序で):室温で2×SSPEまたはSSC;42℃で1×SSPEまたはSSC;42℃で0.1×SSPEまたはSSC;65℃で0.1×SSPEまたはSSC。プローブの検出は、ハイブリダイゼーションが起こったかどうかを既知の方法で判定するための手段を提供する。そのようなプローブ分析は、本発明の毒素コード遺伝子を同定するための迅速な方法を提供する。本発明によるプローブとして用いられるヌクレオチドセグメントは、DNA合成装置および標準手順を用いて合成することができる。本発明の遺伝子を増幅するPCRプライマーとして、これらのヌクレオチド配列を用いることもできる。
【0040】
変異体毒素。本発明の特定の毒素が、本明細書で具体的に例示されている。これらの毒素は本発明の毒素の例示にすぎないので、本発明が例示毒素と同じか類似した殺虫活性を有する変異体または等価な毒素(および等価な毒素をコードするヌクレオチド配列)を含むことは容易に明らかなはずである。等価な毒素は、例示される毒素とのアミノ酸相同性を有する。このアミノ酸相同性は、一般的に75%を超え、好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超える。アミノ酸相同性は、生物的活性を担うか、最終的に生物的活性を担う3次元構造の決定に関与する毒素の重要な領域で最も高くなる。この点に関しては、それらの置換が活性に重要でない領域にあるか、分子の3次元構造に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換であるならば、特定のアミノ酸置換が許容され、予想することができる。例えば、アミノ酸は以下のクラスに入れることができる:無極性、無電荷極性、塩基性および酸性。1つのクラスのアミノ酸が同じ種類の別のアミノ酸で置換される保存的置換は、その置換が化合物の生物的活性を実質的に変更しない限り本発明の範囲内である。下記は、各クラスに属するアミノ酸の例のリストである。
【0041】
【表1】

【0042】
場合によっては、非保存的置換を加えることもできる。重要な因子は、これらの置換が毒素の生物的活性をあまり損なってはならないということである。
【0043】
組換え体宿主。本発明の毒素をコードする遺伝子は、多種類の微生物または植物宿主に導入することができる。毒素遺伝子の発現は、直接または間接的に、殺虫剤の細胞内での生成および維持をもたらす。本発明の両毒素を発現するBt株を作製するために、接合転移および組換え転移を用いることができる。他の宿主生物体を毒素遺伝子の一方または両方で形質転換し、次に相乗効果を達成するために用いることもできる。適する微生物宿主、例えばシュードモナス(Pseudomonas)で、微生物を有害生物の位置へ施用することができ、そこでそれらは増殖して摂取される。結果は、有害生物の防除である。あるいは、毒素遺伝子を受け入れる微生物は、毒素の活性を長引かせ、細胞を安定させる条件の下で処理することができる。毒性活性を保持する処理細胞は、次に標的有害生物の環境に施用することができる。
【0044】
Bt毒素遺伝子が適するベクターを通して微生物宿主に導入され、前記宿主が生きた状態で環境へ施用される場合、特定の宿主微生物が用いられることが必須である。対象の1つまたは複数の作物の「植物圏」(葉面、葉圏、根圏および/または根面)を占めることが知られている微生物宿主が選択される。これらの微生物は、特定の環境(作物および他の昆虫生息地)で野生型微生物とよく競合することが可能であるように、ポリペプチド殺虫剤を発現する遺伝子の安定した維持および発現を提供するように、および、望ましくは環境中での分解および不活性化からの殺虫剤の向上した保護を提供するように選択される。
【0045】
多数の微生物が、多種類の重要作物の葉面(植物葉の表面)および/または根圏(植物根を囲む土)に生息することが知られている。これらの微生物には、細菌、藻および真菌類が含まれる。特に関心があるものは、細菌、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)、エルウィニア属(Erwinia)、セラチア属(Serratia)、クレブシェラ属(Klebsiella)、キサントモナス属(Xanthomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、根粒菌属(Rhizobium)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、メチロフィリウス(Methylophilius)、アグロバクテナム属(Agrobactenum)、アセトバクター属(Acetobacter)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、アルトロバクター属(Arthrobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)、ロイコノストック属(Leuconostoc)およびアルカリゲネス属(Alcaligenes);真菌類、特に酵母、例えばサッカロミセス属(Saccharomyces)、クリプトコックス属(Cryptococcus)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、スポロボロミセス属(Sporobolomyces)、ロドトルラ属(Rhodotorula)およびオーレオバシジウム属(Aureobasidium)などの微生物である。特に関心があるものは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アグロバクテニウム・ツメファシエンス(Agrobactenium tumefaciens)、ロドシュードモナス・スフェロイデス(Rhodopseudomonas spheroides)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、リゾビウム・メリオチ(Rhizobium melioti)、アルカリゲネス・エントロファス(Alcaligenes entrophus)およびアゾトバクター・ビンランジ(Azotobacter vinlandii)のような植物圏細菌種;ならびにロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)、R.グルチニス(R. glutinis)、R.マリーナ(R. marina)、R.オーランチアカ(R. aurantiaca)、クリプトコックス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、C.ジフルエンス(C. diffluens)、C.ローレンチ(C. laurentii)、サッカロミセス・ロゼイ(Saccharomyces rosei)、S.プレトリエンシス(S. pretoriensis)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、スポロボロミセス・ロゼウス(Sporobolomyces roseus)、S.オドルス(S. odorus)、クルイベロミセス・ベロネ(Kluyveromyces veronae)およびオーレオバシジウム・ポルランス(Aureobasidium pollulans)などの植物圏酵母種である。色の着いた微生物が、特に関心がある。
【0046】
遺伝子の安定した維持および発現を可能にする条件の下で、毒素をコードするBt遺伝子を微生物宿主に導入するために、多種類の方法を利用できる。これらの方法は当業者に周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,135,867号に記載されている。
【0047】
細胞の処理。Bt毒素を発現するバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)または組換え体の細胞は、毒素活性を長引かせ、細胞を安定させるために処理することができる。形成される殺虫剤マイクロカプセルは、安定化され、マイクロカプセルが標的有害生物の環境へ施用されるときに毒素を保護する細胞構造の中にBt毒素(複数可)を含む。適する宿主細胞には、原核生物または真核生物のいずれかが含まれてよく、通常、哺乳動物などの高等生物体に有毒である物質を生成しない細胞に限定される。しかし、毒性物質が不安定であるか、哺乳動物宿主への毒性のいかなる可能性も避けるために施用量が十分に低い場合、高等生物体にとって有毒である物質を生成する生物体が用いられるかもしれない。宿主としては、原核生物および真菌類などの下等真核生物が特に関心がある。
【0048】
処理時、細胞は通常そのままの状態であり、胞子の形態ではなく実質的に増殖形であるが、一部の例では胞子を利用してもよい。
【0049】
微生物細胞、例えばB.t.毒素遺伝子(複数可)を含む微生物の処理は、その技術が毒素の特性に悪い影響を及ぼさず、毒素を保護する細胞の能力も低下させない限り、化学的または物理的な手段に、または化学的および/または物理的な手段の組合せによることができる。化学試薬の例は、ハロゲン化剤、特に原子番号17〜80のハロゲン原子である。より詳しくは、温和条件の下で、および所望の結果を達成するのに十分な時間、ヨウ素を用いることができる。他の適する技術には、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド;塩化ゼフィランおよび塩化セチルピリジニウムなどの消毒剤;イソプロピルおよびエタノールなどのアルコール;ルゴールヨウ素、ブアン固定液、様々な酸およびヘリー固定液などの様々な組織固定剤(Humason, Gretchen L., Animal Tissue Techniques, W. H. Freeman and Company, 1967を参照);または細胞が宿主環境に投与されるときに細胞で生成される毒素の活性を保存し、長引かせる物理的(熱)および化学的作用因子の組合せによる処理が含まれる。物理的手段の例は、ガンマ線放射およびX線放射などの短波長放射、凍結、UV照射、凍結乾燥である。微生物細胞の処理のための方法は、米国特許第4,695,455号および4,695,462号で開示され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
細胞は、環境条件への抵抗性を増強する強化された構造安定性を一般に有する。殺虫剤がプロ型である場合、細胞処理の方法は、標的有害生物の病原体による殺虫剤のプロ型から成熟型への加工を妨げないように選択されるべきである。例えば、ホルムアルデヒドはタンパク質を架橋し、ポリペプチド殺虫剤のプロ型の加工を妨げることができる。処理の方法は、毒素の生物学的利用能または生物活性の少なくとも実質的な部分を保持するべきである。
【0051】
生成のための宿主細胞の選択で特に関心がある特性には、B.t.遺伝子(複数可)を宿主に導入することの容易さ、発現系の入手可能性、発現効率、宿主での殺虫剤の安定性および補助的遺伝子能力の存在が含まれる。殺虫剤マイクロカプセルとして用いるための関心がある特性には、厚い細胞壁、着色および細胞内パッケージングまたは封入体形成などの殺虫剤保護特性;水性環境での生存;人畜毒性の欠如;摂取のための有害生物への誘引効果;殺滅の容易さおよび毒素を害さずに固着させること;などが含まれる。他の考慮事項には、製剤および取扱いの容易さ、経済性、貯蔵安定性などが含まれる。
【0052】
細胞の増殖。B.t.殺虫性遺伝子(複数可)を含む細胞宿主は、DNA構築物が選択有利性を提供し、細胞の実質的に全てまたは全てがB.t.遺伝子を保持するように選択培地を提供する、任意の便利な栄養培地で増殖させることができる。これらの細胞は、従来の方法に従って次に収穫することができる。あるいは、収穫する前に細胞を処理することができる。
【0053】
本発明の毒素を生成するB.t.細胞は、標準技術の培地および発酵技術を用いて培養することができる。発酵サイクルの終了後、最初に当技術分野で周知である手段によってB.t.胞子および結晶を発酵培養液から分離することによって細菌を収穫することができる。取扱いおよび特定の標的有害生物への施用を容易にするために、界面活性剤、分散剤、不活性担体および他の構成成分の添加によって、回収されたB.t.胞子および結晶を水和剤、濃厚液剤、粒剤または他の製剤に製剤化することができる。これらの製剤および施用手法は、全て当技術分野で周知である。
【0054】
製剤。誘引剤ならびにB.t.分離株の胞子、結晶および毒素、または本明細書で開示されるB.t.分離株から入手できる遺伝子を含む組換え体微生物を含む製剤化された餌粒剤は、土に施用することができる。製剤化された製品は、種子コーティングまたは作物サイクルの後期段階で根部処理もしくは植物全体処理として施用することもできる。B.t.細胞の植物および土壌処理は、様々な不活性の材料、例えば無機鉱物(フィロシリケート、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)または植物材料(粉末状の穂軸、籾殻、クルミ殻など)と混合することによって、水和剤、粒剤または粉剤として使用することができる。製剤は、展着助剤、安定化剤、他の殺虫性添加剤または界面活性剤を含むことができる。液体製剤は水性または非水性であってよく、フォーム、ゲル、懸濁液、乳剤などとして使用することができる。成分には、流体力学的剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤またはポリマーが含まれてよい。
【0055】
当分野の技術者によって認識されるように、特定の製剤の性質、特にそれが濃厚剤であるか直接的に用いられるものであるかによって、殺虫剤濃度は広く変動する。殺虫剤は少なくとも1重量%で存在し、100重量%であってもよい。乾燥製剤は約1〜95重量%の殺虫剤を有するが、液体製剤は一般に液相中に約1〜60重量%の固形分である。製剤は、1mgにつき約10から約10細胞を一般に有する。これらの製剤は、1ヘクタールにつき約50mg(液体または乾燥)から1kg以上で投与される。
【0056】
製剤は、噴霧、散粉、散水その他によって、鱗翅目害虫の環境、例えば葉または土へ施用することができる。
【0057】
植物の形質転換。本発明の殺虫性タンパク質の生成のための好ましい組換え体宿主は、形質転換された植物である。本明細書で開示されるようなBt毒素タンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野で周知である様々な技術を用いて植物細胞に挿入することができる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)の複製系および形質転換細胞の選択を可能にするマーカーを含む多数のクローニングベクターが、高等植物への外来遺伝子の挿入のための調製のために利用できる。ベクターは、例えば、とりわけpBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184を含む。したがって、Bt毒素タンパク質をコードする配列を有するDNA断片は、適する制限部位でベクターに挿入することができる。生じたプラスミドは、大腸菌(E. coli)への形質転換のために用いられる。大腸菌(E. coli)細胞は適する栄養培地で培養され、次に収穫され、溶解される。プラスミドを回収する。配列分析、制限酵素解析、電気泳動および他の生化学的分子生物学的方法が、分析方法として一般に実行される。各操作の後、用いたDNA配列を切断して次のDNA配列に連結することができる。各プラスミド配列は、同じか他のプラスミドにクローニングすることができる。植物への所望の遺伝子の挿入の方法に従い、他のDNA配列が必要なこともある。例えば、植物細胞の形質転換のためにTiまたはRiプラスミドが用いられるならば、TiまたはRiプラスミドT−DNAの少なくとも右の境界、しかし多くの場合右および左の境界が、挿入される遺伝子の隣接領域として連結されなければならない。植物細胞の形質転換のためのT−DNAの使用は集中的に研究されており、EP120516、Lee and Gelvin (2008)、Hoekema (1985)、Fraleyら, (1986)およびAnら, (1985)で十分に記載され、当技術分野でよく確立されている。
【0058】
挿入されたDNAが植物ゲノムに組み込まれると、それは比較的安定である。形質転換ベクターは、形質転換された植物細胞に、とりわけビアラホス、カナマイシン、G418、ブレオマイシンまたはハイグロマイシンなどの生物致死剤または抗生物質への抵抗性を付与する選択マーカーを通常含む。したがって、個々に使用されるマーカーは、挿入されたDNAを含まない細胞ではなく形質転換された細胞の選択を可能にするはずである。
【0059】
DNAを植物宿主細胞に挿入するために、多数の技術を利用できる。それらの技術には、形質転換因子としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)もしくはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を用いるT−DNAによる形質転換、融合、注射、微粒子銃(微小粒子衝撃)、またはエレクトロポレーションならびに他の可能な方法が含まれる。アグロバクテリウムが形質転換のために用いられる場合、挿入されるDNAは特別なプラスミド、すなわち中間型ベクターまたはバイナリーベクターのいずれかにクローニングされなければならない。中間型ベクターは、T−DNAの配列に相同的である配列のために、相同組み換えによってTiまたはRiプラスミドに組み込むことができる。TiまたはRiプラスミドは、T−DNAの転移のために必要なvir領域も含む。中間型ベクターは、アグロバクテリウムではそれ自身を複製することができない。中間型ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)によってアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に移動させることができる。バイナリーベクターは、大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウムの両方でそれ自身を複製することができる。それらは、左右のT−DNA境界領域によって組まれる選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは、アグロバクテリウムに直接に形質転換させることができる(Holstersら, 1978)。宿主細胞として用いられるアグロバクテリウムは、vir領域を運ぶプラスミドを含むものとする。vir領域は、植物細胞へのT−DNAの転移のために必要である。さらなるT−DNAが含まれてもよい。そのように形質転換される細菌は、植物細胞の形質転換のために用いられる。植物外植片は、植物細胞へのDNAの転移のために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)と都合よく培養することができる。選択のための抗生物質または生物致死剤を含んでもよい適する培地で、感染植物材料(例えば、葉片、茎、根の断片だけでなく、プロトプラストまたは懸濁培養細胞も)から完全体植物を次に再生させることができる。そのように得られる植物は、挿入されたDNAの存在について次に試験することができる。注射およびエレクトロポレーションの場合、プラスミドに特別に要求されるものはない。通常のプラスミド、例えばpUC誘導体を用いることができる。
【0060】
形質転換細胞は、植物内で通常の方法で増殖する。それらは胚細胞を形成することができ、後代植物へ形質転換形質(複数可)を伝えることができる。そのような植物は通常の方法で増殖させること、および同じ形質転換遺伝因子または他の遺伝因子を有する植物と交配することができる。生じる雑種個体は、対応する表現型特性を有する。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、植物は遺伝子で形質転換され、そこではコドン使用頻度が植物のために最適化されている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5380831号を参照。一部のトランケーションされた毒素が本明細書で例示されるが、130kDa型(完全長)毒素がコア毒素であるN末端半分およびプロトキシン「尾部」であるC末端半分を有することは、Bt技術の分野では周知である。したがって、適当な「尾部」を、本発明のトランケーションされた/コア毒素と用いることができる。例えば米国特許第6218188号および米国特許第6673990号を参照。さらに、植物で使用するための合成Bt遺伝子の作製方法が当技術分野で公知である(Stewart and Burgin, 2007)。好ましい形質転換植物の1つの非限定例は、Cry1Faタンパク質をコードする植物で発現可能な遺伝子を含み、さらにCry1Daタンパク質をコードする第二の植物で発現可能な遺伝子を含む稔性のメイズ植物である。
【0062】
近交系メイズ系統へのCry1FaおよびCry1Da決定形質(複数可)の転移(または遺伝子移入)は、回帰性の選抜育種、例えば戻し交配によって達成することができる。この場合には、所望の反復親が、Cry1FおよびCry1D決定形質のための適当な遺伝子(複数可)を運ぶドナーの近交系(一回親)と先ず交配される。この交配の後代は、次に反復親と戻し交配され、続いて生じる後代において、一回親から移される所望の形質(複数可)について選択される。所望の形質(複数可)の選択を伴う反復親との3世代、好ましくは4世代、より好ましくは5世代以上の戻し交配の後、後代は移される形質(複数可)を支配する遺伝子座が異型接合的になるが、ほとんどまたはほとんど全ての他の遺伝子については反復親と同様である(例えば、Poehlman & Sleper (1995) Breeding Field Crops, 4th Ed., 172-175、Fehr (1987) Principles of Cultivar Development, Vol. 1 : Theory and Technique, 360-376を参照)。
【0063】
昆虫抵抗性管理(IRM)戦略。例えばRoushらは、「ピラミッド化」または「スタッキング」とも呼ばれる、殺虫性トランスジェニック作物の管理のための2毒素戦略を概説している。(The Royal Society. Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. (1998) 353, 1777-1786)。
【0064】
彼らのウェブサイトで、米国環境保護庁(epa.gov/oppbppdl/biopesticides/pips bt_corn_refuge_2006.htm)は、標的有害生物に対して活性である単一のBtタンパク質を生成するトランスジェニック作物で用いるための非トランスジェニック(すなわち、非B.t.)緩衝帯(非Bt作物/トウモロコシの区域)を提供するための以下の要件を公表する。
「コーンボーラー保護Bt(Cry1AbまたはCry1F)トウモロコシ製品の特定の構造化要件は、以下の通りである:
構造化緩衝帯:
コーンベルトで20%の非鱗翅目Btトウモロコシ緩衝帯;
コットンベルトで50%の非鱗翅目Bt緩衝帯
ブロック
内部(すなわち、Bt圃場内)
外部(すなわち、任意交配を最大にするためにBt圃場から1/2マイル(可能であれば1/4マイル)以内に別個の圃場)
圃場内の帯状地
幼虫の移動の影響を低減するために、帯状地は少なくとも4列(rows)(好ましくは6列)の幅でなければならない」
【0065】
さらに、National Corn Growers Associationも、彼らのウェブサイト:(ncga.com/insect-resistance-management-fact-sheet-bt-corn)で、
緩衝帯要件に関して類似した指針を提供する。例えば:
「コーンボーラーIRMの要件:
・トウモロコシ畑地の少なくとも20%に緩衝帯雑種を植える
・綿花生産地では、緩衝帯は50%でなければならない
・緩衝帯雑種の1/2マイル以内に植えなければならない
・緩衝帯は、Bt圃場内に帯状地として植えることができる;緩衝帯の帯状地は少なくとも4列の幅でなければならない
・標的昆虫の経済的許容限界に到達する場合だけ、緩衝帯を従来の殺虫剤で処理することができる
・Btベースの噴霧可能な殺虫剤を緩衝帯トウモロコシで用いることはできない
・Btトウモロコシのあらゆる農場に適当な緩衝帯を設けなければならない」
【0066】
Roushら(例えば、1780頁および1784頁の右欄)によって述べられているように、標的有害生物に各々有効で、ほとんど交差抵抗性のない2つの異なるタンパク質のスタッキングまたはピラミッド化は、より小さな緩衝帯の使用を可能にする。成功したスタックは、緩衝帯10%未満の緩衝帯サイズが、単一(非ピラミッド化)形質のための約50%の緩衝帯と同等の抵抗性管理を提供することができることをRoushは示唆する。今日利用できるピラミッド化Btトウモロコシ製品については、米国環境保護庁は単一形質製品(一般に20%)についてよりもかなり低く(一般に5%)構造化された非Btトウモロコシの緩衝帯を設けることを要求している。
【0067】
Roushら(前掲)および米国特許第6,551,962号によってさらに論じられているように、圃場での様々な幾何学的栽植様式(上記のような)および袋入種子混合物を含む、緩衝帯のIRM効果を提供する様々な方法がある。
【0068】
上記の百分率または類似した緩衝帯比率は、対象の二重または三重のスタックまたはピラミッドのために用いることができる。単一の標的有害生物に対して3つの作用様式を有する三重スタックについては、目標は緩衝帯がゼロ(または、例えば5%未満の緩衝帯)である。これは、例えば10エーカー以上の商業用の土地に特にあてはまる。
【0069】
本明細書で参照または引用される全ての特許、特許出願、仮出願および刊行物は、それらがこの明細書の明白な教示と矛盾しない範囲で、参照により全体が組み込まれる。
【0070】
以下は、本発明を実施するための手法を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものと解釈されるべきでない。特記されない限り全ての百分率は重量によるものであり、全ての溶媒混合割合は容量によるものである。全ての温度は、摂氏温度である。
【0071】
具体的に示されるか含意されない限り、本明細書で用いられるように、用語「a」、「an」および「the」は「少なくとも1つ」を示す。
【実施例1】
【0072】
バイオアッセイデータ
トランスジェニックトウモロコシで発現されるCry1Da(pDAS5163)は、フォールアーミーワーム(FAW)、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)(J.E.Smith)による食害からの保護を提供する。同じ事象はCry1Faへの抵抗性を発達させたFAWを防除することにおいてより有効であり、おそらくFAW防除のための業界をリードする昆虫抵抗性形質であるTC1507イベントを含むトウモロコシ植物より明らかに優れる。
【0073】
我々は、Cry1Fa(組換え体蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)株DR1649からのタンパク質;プラスミドpDAB1817)およびCry1Da(組換え体蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)株DC782からのタンパク質)が、人工食バイオアッセイでFAWを防除することにおいて両方とも有効であること、ならびにその組合せの効力がそれらの個々の効力から予想されるものより大きいことも実証した。
【0074】
上記のデータに基づき、Cry1DaおよびCry1Faの同時発現は、FAW、他の重要なスポドプテラ(Spodoptera)属の種、およびおそらく他の鱗翅類有害生物のために高用量IRMスタックを生成することができる。スペクトルを拡張するために、他のタンパク質をこの組合せに加えることができる。例えばトウモロコシでは、Cry1Abの追加は、ヨーロピアンコーンボーラー(ECB)、オストリニア・ヌビラリス(Ostrinia nubilalis)(Hubner)のためのIRMスタックを形成する。
【0075】
図1に示すように、FAW(青色の棒)またはrFAW(紫色の棒)が食害したトウモロコシ葉部分への傷害(平均葉傷害%+SEM)。番号「5163」に続く全ての処理は、Cry1Daを含む構築物で形質転換された植物からの葉部分である。Cry1Daの発現が検出されなかった植物は、グラフの左端にまとめた。Cry1Daの発現が検出された植物は、グラフの中央にまとめた。非トランスジェニック(すなわち、陰性)対照はグラフの右端にあり、「B104」、「HiII」および「同質遺伝子系統」と表示される。Cry1Faを含む市販の近交系は、右の最初の処理(「Herculex I」と表示)であり、「同質遺伝子系統」と表示される非トランスジェニック対照と同じ遺伝的背景である。
【0076】
Cry1Daのトリプシン切断制限毒素のコード配列、およびCry1AbのC末端プロトキシン領域のコード配列からなるプロトキシンキメラを作製して、トウモロコシでの発現を指示することが可能な発現カセットに組み入れた(pDAS5163)。トウモロコシはアグロバクテリウム・ツメファシアンス(Agrobacterium tumefacians)を用いて形質転換され、Cry1Da/1Abキメラを含む事象が特定された。再生植物からの葉切片は、野生型フォールアーミーワーム(FAW)またはCry1Fa抵抗性であったフォールアーミーワーム集団(rFAW)からの幼虫で生物検定された。Cry1Da/1Ab形質転換植物は、FAWによる食害を確かに低減したが、2コピーのCry1Faを含む近交系ほど有効でなかった(図1)。(試験されたCry1Da事象は導入遺伝子についてヘミ接合性であったが、変換された近交系はTC1507イベントについてホモ接合性であった。)対照的に、Cry1Da/1Abを含む同じ事象は、rFAWによる食害を低減することにおいて、Cry1Faを含む近交系より一般に非常に有効であった(図1)。
【0077】
Cry1Fa(組換え体蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)株DR1649からのタンパク質;プラスミドpDAB1817)、Cry1Da(組換え体蛍光菌(P. fluorescens)株DC782からのタンパク質)および1:1(w:w)の2つの組合せの殺虫活性を、効力を評価するために用いられた標準の人工食バイオアッセイで試験した。LC50推定値およびLC50の上下限(95%)を生成したLOGIT分析(JMP(登録商標)8.0、SAS Inc.2008)を用いて、効力推定値を求めた。組合せの効力の期待値が各構成成分単独の効力を用いて計算される、Tabashnik (1992)によって記載される方法を用いて、相乗作用についての試験を実施した。推定された組合せの信頼上限が計算された期待効力より低い場合、組合せは相乗的とみなされる。フォールアーミーワーム(FAW)およびCry1Faに抵抗性であったフォールアーミーワームの集団(rFAW)の場合、組合せのLC50の信頼上限は推定された効力より低く(表1と2)、それによってこれらの2つの集団に対するCry1FaおよびCry1Daの組合せは相乗的であるという結論が導かれた。
【0078】
表1。野生型フォールアーミーワーム(FAW)、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)に対する、Cry1Fa、Cry1Da、および1:1(w:w)の2つの組合せの効力推定値、95%信頼区間の上下限(それぞれLCLおよびUCL)。最後の欄は、Tabashnik (1992). Tabashnik BE. Evaluation of synergism among Bacillus thuringiensis toxins. Applied and Environmental Microbiology 58[10], 3343-3346. 1992、によって記載される式を用いる、各タンパク質単独の効力に基づくLC50期待値を含む。期待値が組合せの信頼上限より高い場合、組合せは相乗的とみなされる。
【0079】
【表2】

【0080】
表2。Cry1Fa抵抗性フォールアーミーワーム(rFAW)、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)に対する、Cry1Fa、Cry1Da、および1:1(w:w)の2つの組合せの効力推定値、95%信頼区間の上下限(それぞれLCLおよびUCL)。最後の欄は、Tabashnik (1992)によって記載される式を用いる、各タンパク質単独の効力に基づくLC50期待値を含む。期待値が組合せの信頼上限より高い場合、組合せは相乗的とみなされる。
【0081】
【表3】

【実施例2】
【0082】
結合データの要約
FAWから単離されたブラシ縁膜小胞(BBMV)を用いて125I標識Cry1Daで実施された競合結合実験を下に記載する。これらの実験からの結果は、Cry1Daがその受容体にタイトに結合し、Cry1FaはCry1Daと結合部位をめぐって競合しないことを実証する。Cry1Daへの抵抗性がこれらの試験で観察される受容体への突然変異に基づくことができるならば、Cry1Faがそのような抵抗性集団を管理するか、そのような抵抗性の発達を軽減するための優れたIRM手段となるであろうことを、これらのデータは示唆する。Cry1Fa抵抗性のFAW(rFAW)によるバイオアッセイからの結果は、Cry1Daがこの集団で活性であることを実証する。総合すると、Cry1FaおよびCry1Daがいずれかの殺虫性タンパク質への抵抗性の発達を効果的に軽減するIRMスタックである可能性を、これらのデータは示唆する。
【0083】
125I Cry1Daがその受容体(複数可)にタイトに結合し、非標識のCry1Daがそれを効果的に分断することができることを、受容体結合性アッセイは示す。Cry1Ab、Cry1FaまたはCry1BeのいずれもFAW BBMVのその受容体部位(複数可)から125I Cry1Daを分断することができず、Cry1DaはCry1Ab、Cry1FおよびCry1Beが競合しない特有の結合部位をFAWの中腸に有することを示す。rFAWは野生型FAWと同じくらいCry1Daに感受性であるので、rFAW昆虫で変更される推定上の受容体部位はCry1Daが結合する受容体部位でないことをこれは示す。したがって、Cry1Daはその生物的活性を担う異なる標的部位で相互作用するので、それはCry1Faのための優れたスタッキングパートナーである。
【0084】
125I Cry1DaをFAW BBMVに加えたとき、非放射性標識Cry1Da自体だけが結合した125I Cry1Daを置換することができた。Cry1Fa、Cry1AbおよびCry1Beが、結合した125I Cry1DaをBBMVから置換することができないことは、FAW中腸においては、これらの異なるCry毒素の4つ全てがFAW幼虫に対して活性であるとしても、Cry1Fa、Cry1AbおよびCry1Beが相互作用しない特有の受容体部位にCry1Daが結合することを示した。
【実施例3】
【0085】
Cry1コア毒素および非相同的プロトキシンを含むキメラ毒素の設計
キメラ毒素。別のCry毒素のプロトキシン部分と融合している1つのCry毒素のコア毒素ドメインを利用するキメラタンパク質は、例えば、米国特許第5593881号および米国特許第5932209号で以前に報告されている。
【0086】
本発明のCry1Daキメラタンパク質変異体には、コア毒素部分の末端を過ぎたある点で非相同的デルタエンドトキシンプロトキシン部分と融合したCry1Da殺虫性毒素に由来するN末端コア毒素部分を含むキメラ毒素が含まれる。コア毒素から非相同的プロトキシン部分への移行は、ほぼ元のコア毒素/プロトキシン接合部で起こることができるか、代わりに、元のプロトキシンの部分(コア毒素部分を過ぎて伸長する)を保持することができ、非相同的プロトキシンへの移行は下流で起こる。変異体様式では、コア毒素およびプロトキシン部分は、それらが由来する元の毒素のアミノ酸配列を正に含むことができるか、お互いと融合したときにその部分の生物的機能を低下させず、強化することができる、アミノ酸付加、欠失または置換を含むことができる。
【0087】
例えば、本発明のキメラ毒素は、Cry1Daおよび非相同的プロトキシンに由来するコア毒素部分を含む。本発明の好ましい実施形態では、Cry1Da2に由来するコア毒素部分(594アミノ酸)は、Cry1Abデルタエンドトキシンに由来するプロトキシン部分を含む非相同的部分(545アミノ酸)と融合される。キメラタンパク質の1139アミノ酸配列は、本明細書でCry1Daと呼ばれる。Cry1Da2コア毒素変異体およびCry1Abに由来するプロトキシンを含む他のキメラ融合体は、本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【0088】
本発明の第二のキメラタンパク質は、Cry1Abデルタエンドトキシンに由来するプロトキシン部分を含む非相同的部分(545アミノ酸)と融合される、Cry1Faに由来するコア毒素部分(603アミノ酸)を含む。キメラタンパク質の1148アミノ酸配列は、本明細書でCry1Faと呼ばれる。
【実施例4】
【0089】
キメラタンパク質をコードする発現プラスミドの構築およびシュードモナス(Pseudomonas)での発現
完全長Cry1Daキメラタンパク質を生成するように遺伝子操作された蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現構築物pDOW2848の構築では、標準のクローニング法[例えばSambrookら, (1989)およびAusubelら, (1995)、およびその最新版に記載]を用いた。タンパク質生成は、米国特許第5169760号に開示される改変ラックオペロンの挿入を有する蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)株MB214(株MB101の誘導体;蛍光菌(P. fluorescens)生物型I)で実施された。基本的なクローニング戦略は、プラスミドベクターにCry1Daタンパク質をコードするDNA断片をサブクローニングすることを伴い、それにより、DNA断片はプラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、WI)からのPtacプロモーターおよびrrnBT1T2ターミネーターの発現制御下に置かれる。そのようなプラスミドの1つはpDOW2848と名付けられ、このプラスミドを抱えるMB214分離株はDpf150と名付けられる。
【0090】
振盪フラスコでの増殖および発現分析。特徴付けおよび昆虫バイオアッセイのためのCry1Daタンパク質の生成は、振盪フラスコで増殖させた蛍光菌(P. fluorescens)株Dpf150によって達成された。Ptacプロモーターによって作動させられるCry1Daタンパク質の生成は、米国特許第5527883号で前に記載される通りに行われた。微生物学的操作の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、Squiresら, (2004)、米国特許出願公開第20060008877号、米国特許出願公開第20080193974号および米国特許出願公開第20080058262号で入手できる。振盪させながら30度で24時間の最初のインキュベーションの後、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって発現を誘導した。培養物は、誘導時および誘導後の様々な時点で試料を採取した。細胞密度は、600nmでの光学密度(OD600)によって測定した。
【0091】
振盪フラスコ試料の細胞分画およびSDS−PAGE分析。各試料採取時に、試料の細胞密度をOD600=20に調節し、1mLの一定量を14000×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを−80度で冷凍した。EasyLyse(商標)細菌タンパク質抽出溶液(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies、Madison、WI)を用いて、冷凍振盪フラスコ細胞ペレット試料からの可溶性および不溶性分画を生成した。各細胞ペレットを1mLのEasyLyse(商標)溶液に再懸濁し、溶解緩衝液でさらに1:4に希釈し、振盪させながら室温で30分間インキュベートした。4度で20分間、溶解物を14,000rpmで遠心分離し、上清を可溶性分画として回収した。ペレット(不溶性分画)を等量のリン酸緩衝食塩水(PBS;11.9mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4)に次に再懸濁した。
【0092】
試料をβ−メルカプトエタノールを含む2×のLaemmli試料緩衝液と1:1に混合し(Sambrookら、上記)、5分間沸騰させた後、Criterion XTビス−トリス12%ゲル(Bio−Rad Inc.、Hercules、CA)に加えた。推奨されたXT MOPS緩衝液で電気泳動を実施した。製造業者(Bio−Rad)のプロトコルに従ってゲルをBio−Safeクマシー染色で染色し、Alpha Innotech Imagingシステム(San Leandro、CA)を用いて画像化した。
【0093】
封入体調製。SDSーPAGEおよびMALDIーMS(マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析)によって実証されるように、不溶性Bt殺虫性タンパク質を生成した蛍光菌(P. fluorescens)発酵からの細胞で、Cry1Daタンパク質封入体(IB)調製を実施した。蛍光菌(P. fluorescens)発酵ペレットを、37度水浴で解凍した。細胞を、溶解緩衝液[50mMトリス、pH7.5、200mM NaCl、20mM EDTAジナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸)、1%Triton X−100および5mMジチオスレイトール(DTT);5mL/Lの細菌プロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログ#P8465;Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を使用直前に加えた]中に25w/v%で再懸濁した。携帯ホモジナイザー(Tissue Tearor、BioSpec Products,Inc.、Bartlesville、OK)を最も低い設定で用いて、細胞を懸濁した。金属スパチュラで混合することによってリゾチーム(25mgのSigma L7651、ニワトリ卵白から)を細胞懸濁液に加え、懸濁液を室温で1時間インキュベートした。懸濁液を氷上で15分間冷却し、次にBranson Sonifier 250(50%衝撃周期、30%出力で2つの1分間のセッション)を用いて超音波処理した。細胞溶解を、鏡検によって検査した。さらなる25mgのリゾチームを必要に応じて加え、インキュベーションおよび超音波処理を繰り返した。鏡検による細胞溶解の確認の後、溶解物を11,500×gで25分間(4度)遠心分離してIBペレットを形成し、上清を廃棄した。IBペレットを100mLの溶解緩衝液で再懸濁し、携帯ミキサーでホモジナイズし、上記のように遠心分離した。上清が無色になり、IBペレットが堅く、オフホワイト色になるまで、再懸濁(50mL溶解緩衝液で)、ホモジナイゼーション、超音波処理および遠心によってIBペレットを繰り返し洗浄した。最終洗浄のために、IBペレットを2mMのEDTAを含む無菌濾過(0.22μm)蒸留水に再懸濁し、遠心分離した。最終ペレットを2mMのEDTAを含む無菌濾過蒸留水に再懸濁し、1mlの一定分量で−80度で保存した。
【0094】
IBペレットの1mLの一定分量を解凍して、無菌濾過蒸留水で1:20に希釈することによって、IB調製物中のタンパク質のSDS−PAGE分析および定量化を実行した。希釈試料を4×の還元試料緩衝液[250mMトリス、pH6.8、40%グリセロール(v/v)、0.4%ブロモフェノールブルー(w/v)、8%SDS(w/v)および8%β−メルカプトエタノール(v/v)]で次に沸騰させ、Novex(登録商標)4〜20%トリス−グリシン、12+2ウェルゲル(Invitrogen)に加え、1×のトリス/グリシン/SDS緩衝液(BioRad)で実行した。ゲルを200ボルトで60分間流し、次にクマシーブルー(45%メタノール、10%酢酸中に50%G−250/50%R−250)で染色し、蒸留水中の7%酢酸、5%メタノールで脱色した。標的バンドの定量化は、標準曲線を生成するのと同じゲルに流したウシ血清アルブミン(BSA)標準試料に対して、バンドの濃度測定値を比較することによって実行した。
【0095】
封入体の可溶化。PfクローンDPf150からのCry1Da封入体懸濁液の6mLを、エッペンドルフモデル5415C微量遠心装置の最高設定(約14,000×g)で遠心分離し、封入体をペレット化した。保存緩衝液上清を除去し、50mL円錐管内で、25mLの100mM炭酸ナトリウム緩衝液pH11で置換した。ピペットを用いて封入体を再懸濁し、撹拌して完全に混合した。管を4度の低振盪プラットホームに一晩置き、標的タンパク質を抽出した。抽出物を4度で30分間の30,000×gで遠心分離し、Amicon Ultra−15再生セルロース遠心濾過装置(30,000の分子量カットオフ;Millipore)を用いて、生じた上清を5倍に濃縮した。次に使い捨て式PD−10カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を用いて、10 mM CAPS[3−(シクロヘキサミノ)1−プロパンスルホン酸]pH10に試料緩衝液を変えた。
【0096】
封入体タンパク質の可溶化およびトリプシン活性化。一部の場合、PfクローンDPf150からのCry1Da封入体懸濁液を、エッペンドルフモデル5415C微量遠心装置の最高設定(約14,000×g)で遠心分離し、封入体をペレット化した。保存緩衝液上清を除去し、100mMのCAPS、pH11で置換して、約50mg/mLのタンパク質濃度を提供した。管を室温で3時間揺動させ、タンパク質を完全に可溶化させた。トリプシンを5%から10%の量(w:w、IB粉末の初期重量に基づく)で加え、4度で一晩揺動させながらのインキュベーションによって、または室温で90〜120分間揺動させることによって消化を達成した。不溶性物質を15分間の10,000×gでの遠心によって除去し、上清をMonoQ陰イオン交換カラム(10mm×10cm)に加えた。活性化Cry1Daタンパク質は、25カラム容量にわたる1M NaClの0%〜100%勾配によって溶出させた(SDS−PAGEによる測定、下記参照)。活性化タンパク質を含む分画をプールし、必要に応じて上記のAmicon Ultra−15再生セルロース遠心濾過装置を用いて10mL未満に濃縮した。次に、材料を、100mM NaCl、10%グリセロール、0.5%ツイーン20および1mM EDTAを含む緩衝液中のSuperdex200カラム(16mm×60cm)に通した。活性化(酵素によって切断された)タンパク質が65〜70mLで溶出することが、SDS−PAGE分析で判定された。活性化タンパク質を含む分画をプールし、上記の遠心濃縮装置を用いて濃縮した。
【0097】
ゲル電気泳動。還元剤として5mMのDTTを含むNuPAGE(登録商標)LDS試料緩衝液(Invitrogen)で1:50に希釈し、95度で4分間加熱することによって、濃縮タンパク質調製物を電気泳動のために調製した。0.2μg〜2μg/レーンの5つのBSA標準(標準曲線生成のため)と一緒に、試料を4〜12%NuPAGE(登録商標)ゲルの2反復のレーンに加えた。追跡用色素がゲルの底に到達するまで、MOPS SDSランニング緩衝液(Invitrogen)を用いて200Vの電圧を加えた。45%メタノール、10%酢酸中の0.2%クマシーブルーG−250でゲルを染色し、先ず45%メタノール、10%酢酸で短時間脱色し、次に7%酢酸、5%メタノールでバックグラウンドが消去されるまで十分に脱色した。脱色の後、ゲルをBioRad Fluor−S MultiImagerでスキャンした。機器のQuantity Oneソフトウェアv.4.5.2を用いてバックグラウンドを引いた染色タンパク質バンドの容量を得、保存溶液中のキメラCry1Daタンパク質の濃度を計算するために用いたBSA標準曲線を生成した。
【実施例5】
【0098】
Cry1FaおよびCry1Daコア毒素タンパク質の調製および競合的結合実験のためのスポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)ブラシ縁膜小胞の単離
以下の実施例は、昆虫腸組織での推定上の受容体へのCry1コア毒素タンパク質の競合結合を評価する。スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーワーム)から調製されるブラシ縁膜小胞(BBMV)に125I標識Cry1Daコア毒素タンパク質が高い親和性で結合すること、およびCry1Faコア毒素タンパク質がこの結合で競合しないことが示される。
【0099】
Cryタンパク質の精製。キメラCry1Daタンパク質をコードする遺伝子は、実施例4に記載の蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)発現株で発現された。同様にして、Cry1Faコア毒素(603アミノ酸)およびCry1Abプロトキシン(545アミノ酸)を含むキメラタンパク質をコードする遺伝子は、Pf系で発現された。Cry1Faの例では、発現プラスミドはpDAB1817と名付けられ、pDAB1817を抱える蛍光菌(P. fluorescens)株はDPf129と名付けられた。タンパク質を実施例4の方法によって精製し、完全長タンパク質から活性化コア毒素を生成するトリプシン消化を次に実施し、実施例4に記載の方法によって生成物を精製した。実験によりSDS−PAGEで測定されたように、トリプシン処理(活性化コア毒素)タンパク質の調製物は95%超純粋で、約65kDaの分子量を有した。本明細書で用いるように、Cry1Daタンパク質から調製された活性化コア毒素はCry1Daコア毒素タンパク質と呼び、Cry1Faタンパク質から調製された活性化コア毒素はCry1Faコア毒素タンパク質と呼ぶ。
【0100】
可溶性BBMVの調製および分画。タンパク質定量化およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の標準方法は、例えばSambrookら (1989)およびAusubelら (1995)、およびその最新版で教示される通りに用いた。
【0101】
終齢S.フルジペルダ(S. frugiperda)幼虫を一晩絶食させ、その後、氷上で15分間冷やしたのちに解剖した。中腸組織を体腔から取り出し、外皮に接着した後腸を残した。中腸を、仕入先の推奨通りに希釈したプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich P−2714)を追加した、9倍容量の氷冷ホモジナイゼーション緩衝液(300mMマンニトール、5mM EGTA、17mMトリス塩基、pH7.5)に入れた。15ストロークのガラス組織ホモジナイザーで組織をホモジナイズした。BBMVは、Wolfersberger (1993)のMgCl沈殿法によって調製した。簡潔には、300mMマンニトール中の等量の24mM MgCl溶液を中腸ホモジネートと混合し、5分間撹拌し、氷上で15分間静置させた。4度で15分間、2,500×gで溶液を遠心分離した。上清を保存し、元の容量の0.5倍希釈のホモジナイゼーション緩衝液にペレットを懸濁して再び遠心分離した。2つの上清を合わせ、4度で30分間、27,000×gで遠心分離してBBMV分画を形成した。ペレットをBBMV保存緩衝液(10mM HEPES、130mM KCl、10%グリセロール、pH7.4)に懸濁して、約3mg/mLのタンパク質濃度にした。タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を用いて測定した。QuantiChrom(商標)DALP−250アルカリ性ホスファターゼアッセイキット(Gentaur Molecular Products、Kampenhout、BE)を製造業者の説明書に従って用いて、試料を冷凍する前にアルカリ性ホスファターゼ(BBMV分画のマーカー酵素)を測定した。この酵素の比活性は、開始中腸ホモジネート分画で見られるものと比較して一般的に7倍増加した。BBMVを250μLの試料に等分し、液体窒素で瞬間冷凍し、−80度で保存した。
【0102】
電気泳動。還元(すなわち、5%β−メルカプトエタノール、BME)および変性(すなわち、2%SDSの存在下で90度で5分間加熱)条件の下で、SDS−PAGEによるタンパク質の分析を実行した。タンパク質を4%から20%のトリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(BioRad;Hercules、CA)のウェルに加え、200ボルトで60分間分離した。クマシーブリリアントブルーR−250(BioRad)で1時間の染色によってタンパク質のバンドを検出し、7%酢酸中の5%メタノールの溶液で脱色した。BioRad Fluro−S Multi Imager(商標)を用いてゲルを画像化し、分析した。タンパク質バンドの相対的な分子量は、ゲルの1つのウェルに加えられたBenchMark(商標)タンパク質ラダー(Life Technologies、Rockville、MD)の試料で観察された既知の分子量のタンパク質の移動度との比較によって決定した。
【0103】
Cry1Daコア毒素タンパク質のヨウ素化。精製されたCry1Daコア毒素タンパク質を、Pierce Iodination Beads(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)を用いてヨウ素化した。簡潔には、2つのlodination Beadsを500μLのPBS(20mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.5)で2回洗浄し、100μLのPBSを有する1.5mL遠心管に入れた。0.5mCiの125I標識ヨウ化ナトリウムを加え、構成成分を室温で5分間反応させ、次に1μgのCry1Daコア毒素タンパク質を溶液に加え、さらなる3〜5分間反応させた。Iodination Beadsから溶液をピペットで吸い取り、それを50mM CAPS、pH10.0、1mM DTT(ジチオスレイトール)、1mM EDTAおよび5%グリセロールで平衡させたZeba(商標)スピンカラム(Invitrogen)に加えることによって、反応を停止した。Iodination Beadsを10μLのPBSで2回洗浄し、洗浄溶液もZeba(商標)脱塩カラムに加えた。放射性溶液を1,000×gで2分間の遠心によってスピンカラムを通して溶出した。125I放射性標識Cry1Daコア毒素タンパク質を、50mM CAPS、pH10.0、1mM DTT、1mM EDTAおよび5%グリセロールに対して次に透析した。
【0104】
画像化。ヨウ素化されたCry1Daコア毒素タンパク質の放射純度は、SDS−PAGEおよび蛍光画像化によって測定した。簡潔には、製造業者の説明書に従ってBioRadゲル乾燥装置を用いて、SDS−PAGEゲルを乾燥させた。マイラー膜(厚さ12μm)で包み、Molecular Dynamics貯蔵蛍光スクリーン(35cm×43cm)の下でそれらを1時間露光させることによって、乾燥ゲルを画像化した。Molecular Dynamics Storm 820蛍光造影装置を用いてプレートを現像し、像はImageQuant(商標)ソフトウェアを用いて分析した。
【実施例6】
【0105】
スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)からのBBMVへの125I標識Cry1コア毒素タンパク質の結合
Cry1DaおよびCry1Faコア毒素タンパク質による結合アッセイで用いるためにBBMVタンパク質の最適量を決定するために、飽和曲線を生成した。0.5nMの125I放射性標識Cry1コア毒素タンパク質を、0μg/mLから500μg/mLのBBMVタンパク質の量と一緒に、結合緩衝液(8mM NaHPO、2mM KHPO、150mM NaCl、0.1%BSA、pH7.4)中で28度で1時間インキュベートした(0.5mLの全容量)。反応混合液の150μLを3反復で別々の1.5mL遠心管に採取し、室温で8分間の14,000×gで試料を遠心分離することによって、BBMVタンパク質に結合した125I標識Cry1コア毒素タンパク質を未結合の分画から分離した。上清を静かに除去し、氷冷結合緩衝液でペレットを3回洗浄した。ペレットを含む遠心管の底を切り離し、13×75mmガラス培養管に入れ、試料を各々ガンマ計数器で5分間数えた。得られたCPM(1分あたりのカウント数)からバックグラウンドCPM(BBMVタンパク質のない反応)を引いたものを、BBMVタンパク質濃度に対してプロットした。他の者(Luoら, 1999)によって報告された結果と一致して、結合アッセイで用いるBBMVタンパク質の最適濃度は、150μg/mLであると決定された。
【実施例7】
【0106】
Cry1DaおよびCry1Faのコア毒素タンパク質によるS.フルジペルダ(S. frugiperda)からのBBMVへの競合結合アッセイ
相同的および非相同的競合結合アッセイは、150μg/mLのS.フルジペルダ(S. frugiperda)BBMVタンパク質および0.5nMの125I放射性標識Cry1Daコア毒素タンパク質を用いて実施した。真の結合競合を保証するために、反応混合液に加えられた競合的非放射性標識Cry1Faコア毒素タンパク質の濃度は0.045nMから1000nMであって、放射性Cry1Daコア毒素タンパク質と同時に加えられた。インキュベーションを28度で1時間実施し、BBMVに結合した(特異的結合)125I標識Cry1Daコア毒素タンパク質の量を前記のように測定した。1,000nMの非放射性標識Cry1Daコア毒素タンパク質の存在下で得られたカウント数によって、非特異的結合を表した。100パーセントの全結合は、いかなる競合者Cry1Faコア毒素タンパク質もない場合の結合の量であるとみなされた。
【0107】
125I標識Cry1Daコア毒素タンパク質を用いる受容体結合性アッセイは、S.フルジペルダ(S. frugiperda)からのBBMVの上のその結合部位からこの放射性標識リガンドを置換するCry1Faコア毒素タンパク質の能力を判定した。Cry1Faコア毒素タンパク質が、1000nM(放射性結合リガンドの濃度の2000倍)という高い濃度で、結合した125I標識Cry1Daコア毒素タンパク質をその受容体タンパク質(複数可)から置換しなかったことを結果は示す。予想通りに、非標識のCry1Daコア毒素タンパク質は放射性標識Cry1Daコア毒素タンパク質をその結合タンパク質(複数可)から置換することができ、S字状用量反応曲線を示し、50%置換は5nMで起こった。
【0108】
したがって、Cry1Daコア毒素タンパク質は、Cry1Faコア毒素タンパク質に結合しないS.フルジペルダ(S. frugiperda)BBMVの結合部位と相互作用することが示されている。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cry1D殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1F殺虫性タンパク質をコードするDNAを含むトランスジェニック植物。
【請求項2】
請求項1に記載の植物の種子。
【請求項3】
Cry1D殺虫性タンパク質をコードするDNAおよびCry1F殺虫性タンパク質をコードするDNAが遺伝子移入されている、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
請求項3に記載の植物の種子。
【請求項5】
非Bt緩衝帯植物および請求項1に記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物は前記圃場の全ての作物植物の40%未満を構成する、圃場。
【請求項6】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の30%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項7】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の20%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項8】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の10%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項9】
前記緩衝帯植物が前記圃場の全ての作物植物の5%未満を構成する、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項10】
前記緩衝帯植物がブロックまたは帯状地にある、請求項5に記載の植物の圃場。
【請求項11】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子および請求項4に記載の複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の40%未満を構成する、種子混合物。
【請求項12】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の30%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項13】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の20%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項14】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の10%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項15】
前記緩衝帯種子が混合物の全ての種子の5%未満を構成する、請求項11に記載の種子混合物。
【請求項16】
種子を播いて請求項5に記載の植物の圃場を作製することを含む、昆虫によるCry毒素への抵抗性の発達を管理する方法。
【請求項17】
Cry1Abコア毒素を含むタンパク質をコードするDNAをさらに含む、請求項1に記載のトランスジェニック植物。
【請求項18】
非Bt緩衝帯植物および請求項17の複数のトランスジェニック植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物は前記圃場の全ての作物植物の約20%未満を構成する、圃場。
【請求項19】
約10%未満の緩衝帯植物を含む、請求項17に記載の複数の植物を含む植物の圃場。
【請求項20】
種子を播いて請求項19に記載の植物の圃場を作製することを含む、昆虫によるCry毒素への抵抗性の発達を管理する方法。
【請求項21】
Cry1Fコア毒素含有タンパク質およびCry1Dコア毒素含有タンパク質の両方の有効量を発現する細胞を含む、鱗翅類の有害生物を防除するための組成物。
【請求項22】
Cry1Fコア毒素含有タンパク質およびCry1Dコア毒素含有タンパク質の両方を発現するように形質転換された、微生物または植物細胞である宿主を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
鱗翅類の有害生物を防除する方法であって、前記有害生物に、または前記有害生物の環境に請求項21に記載の組成物の有効量を提示することを含む方法。
【請求項24】
同じ標的昆虫に対して殺虫性である3つの殺虫性Cryタンパク質を生成するトランスジェニック植物であって、前記昆虫は前記Cryタンパク質のいずれか1つへの抵抗性を発達させる能力を有し、各前記Cryタンパク質は前記標的昆虫の異なる腸管内受容体に結合する植物。
【請求項25】
前記昆虫がフォールアーミーワームである、請求項24に記載の植物。
【請求項26】
Cry1Faタンパク質と、Cry1Daタンパク質と、Vip3A、Cry1C、Cry1BeおよびCry1Eタンパク質からなる群から選択される第三のタンパク質とを生成するトランスジェニック植物。
【請求項27】
種子を播いて請求項26に記載の植物の圃場を作製することを含む、昆虫によるCry毒素への抵抗性の発達を管理する方法。
【請求項28】
非Bt緩衝帯植物および請求項26に記載の複数の植物を含む植物の圃場であって、前記緩衝帯植物は前記圃場の全ての作物植物の約10%未満を構成する、圃場。
【請求項29】
前記圃場が約5%未満の緩衝帯植物を含む、請求項28に記載の圃場。
【請求項30】
種子を播いて請求項28または29に記載の植物の圃場を作製することを含む、昆虫によるCry毒素への抵抗性の発達を管理する方法。
【請求項31】
非Bt緩衝帯植物からの緩衝帯種子および請求項26に記載の植物からの複数の種子を含む種子混合物であって、前記緩衝帯種子は混合物の全ての種子の10%未満を構成する、種子混合物。
【請求項32】
前記植物が10エーカーよりも多くを占める、請求項5、18および28のいずれか1項に記載の圃場。
【請求項33】
トウモロコシ、ダイズおよびワタからなる群から選択される、請求項1、2、17、24および26のいずれかに記載の植物。
【請求項34】
メイズ植物である、請求項1、2、17、24および26のいずれか1項に記載の植物。
【請求項35】
前記植物細胞が、前記Cry1D殺虫性タンパク質をコードする前記DNAおよび前記Cry1F殺虫性タンパク質をコードする前記DNAを含み、前記Cry1F殺虫性タンパク質が配列番号1と少なくとも99%同一であり、前記Cry1D殺虫性タンパク質が配列番号2と少なくとも99%同一である、請求項1、2、17、24、26、33および34のいずれか1項に記載の植物の植物細胞。
【請求項36】
前記Cry1F殺虫性タンパク質が配列番号1を含み、前記Cry1D殺虫性タンパク質が配列番号2を含む、請求項1、2、17、24、26、33および34のいずれか1項に記載の植物。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514768(P2013−514768A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544839(P2012−544839)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060815
【国際公開番号】WO2011/075587
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】