説明

昇圧チョッパ装置

【課題】昇圧チョッパ動作に悪影響を与えることなく、複数の昇圧チョッパ回路を並列接続してなる昇圧チョッパ装置の小型化、軽量化、低コスト化を可能にする。
【解決手段】昇圧チョッパ装置2は、直流リアクトルL1とダイオードD1の直列回路とスイッチ素子SW1とコンデンサC1によって構成される第1の昇圧チョッパ回路と、直流リアクトルL2とダイオードD2の直列回路とスイッチ素子SW2とコンデンサC2によって構成される第2の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成を有している。第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2は、ロ字形のコアの2つの脚部にそれぞれ第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2の巻き線を減極性となるように巻回して構成されている。制御回路22は、2つのスイッチ素子SW1,SW2に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号をスイッチ素子SW1,SW2のオン期間が互いに重複するように出力して各スイッチ素子SW1,SW2を同時にオン・オフ動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の昇圧チョッパ回路を並列に接続してなる昇圧チョッパ装置に関し、特に、昇圧チョッパ動作に悪影響を与えることなく、複数の昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの部分を小型、軽量化して全体的に小型化、軽量化、低コスト化が可能な昇圧チョッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷に供給する電圧を昇圧させるための昇圧手段として、昇圧チョッパ回路が使用されている。そして、この昇圧チョッパ回路の出力電圧を大きくしたときに出力電圧を安定させるために、複数の昇圧チョッパ回路を並列接続することが行われている。
【0003】
例えば、特開平11-206112号公報には、並列接続された4個の昇圧チョッパ回路を有するスイッチングレギュレータが記載されている。図18は、このスイッチングレギュレータの具体構成を示す回路図である。
【0004】
このスイッチングレギュレータ100は、直流電源101が接続される入力端aと負荷116が接続される出力端bの間に直流リアクトルと転流用のダイオードとがこの順に直列に接続された直列回路が4個並列に接続されている。出力端bと接地点cとの間に平滑用のコンデンサ114が接続され、各直列回路の直流リアクトルとダイオードの各接続点d〜接続点gと接地点cとの間に4個の電界効果トランジスタ(以下FETと称する)110〜113がそれぞれ接続されている。4個のFET110〜113の各ゲートには、オン・オフ動作を制御するためのPWM制御回路115が接続されている。PWM制御回路115には出力端bの電圧Voが入力されている。
【0005】
4個の直流リアクトル102〜105及び4個のダイオード106〜109からなる4個の直列回路と4個のFET110〜113と平滑用のコンデンサ114とによって、直流電源101の電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路Aが構成されている。1個の直列回路と、その直列回路内の接続点に並列接続されたFETと、その直列回路の出力側(ダイオードのカソード)に接続されたコンデンサ114とによって昇圧動作が行われるから、昇圧チョッパ回路Aは、等価的に4個の昇圧チョッパ回路が並列に接続された構成となっている。
【0006】
昇圧チョッパ回路A内の1個の昇圧チョッパ回路、例えば、直流リアクトル102、ダイオード106、FET110及びコンデンサ114で構成される昇圧チョッパ回路は、FET110のオン期間に直流電源101から出力される直流エネルギーを一旦、直流リアクトル102に蓄積し、そのオン期間に続くオフ期間に直流リアクトル102に蓄積された直流エネルギーをコンデンサ114及び負荷116に放出する。他の3個の昇圧チョッパ回路も同様の動作を行う。
【0007】
PWM制御回路115は、昇圧チョッパ回路Aから出力される電圧が所定の昇圧電圧となるように、所定の駆動パルスを生成して4個のFET110〜113の各ゲートに入力する。具体的には、PWM制御回路115は、所定のデューティ比(オン期間/(オン期間+オフ期間))(例では75%)の駆動パルスを1/4周期ずつずらせて4個のFET110〜113の各ゲートに順次入力する動作を繰返す。
【0008】
上記のPWM制御回路115のFET110〜113に対する駆動パルスの制御により、FET110〜113は、デューティ比75%場合、1/4周期ずつずれて順番に1/4周期分だけオフ期間となる。この結果、FET110〜113のオン期間に直流リアクトル102〜105にそれぞれ蓄積された直流エネルギーは、順番にコンデンサ114に放出されて負荷116に供給される。
【0009】
上記のスイッチングレギュレータ100は、FET110〜113のオン期間に直流リアクトル102〜105にそれぞれ蓄積された直流エネルギーを順番にコンデンサ114に放出しながら負荷116に供給する構成であるので、実質的に昇圧チョッパ回路A内に並列に接続された4個の昇圧チョッパ回路を時分割で動作させる構成となっている。
【0010】
【特許文献1】特開平11-206112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のスイッチングレギュレータ100の昇圧チョッパ回路Aは、4個の昇圧チョッパ回路を単純に並列接続したものと考えられるので、同一性能を1個の昇圧チョッパ回路で構成する場合よりもその大きさや重量が増大するという問題がある。この問題は、比較的容量の大きい直流チョッパ装置を複数台並列に接続して更なる大容量の直流チョッパ装置を構成する場合には、装置全体の大きさや重量の増大だけでなく、製造コストも増大させるので重要である。
【0012】
なお、特許文献1には、PWM制御回路115によるFET110〜113の駆動制御によりコンデンサ114に流れる電流を均等化し、コンデンサ114に係る負担を軽減して低寿命を回避することしか記載されておらず、上記の問題については全く言及されていない。
【0013】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、複数の昇圧チョッパ回路を並列接続してなる昇圧チョッパ装置であって、昇圧チョッパ動作に悪影響を与えることなく、小型化、軽量化、低コスト化が可能な昇圧チョッパ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、等価的に、直流電源が接続される入力端と負荷が接続される出力端の間に直流リアクトルとダイオードとがこの順に直列に接続された複数の直列回路が並列に接続され、前記出力端と接地点との間にコンデンサが接続されるとともに、各直列回路の直流リアクトルとダイオードの接続点と前記接地点との間にそれぞれスイッチ素子が接続された回路と、前記複数のスイッチ素子のオン・オフ動作をそれぞれ集中制御する制御回路とで構成される昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、共通のコアに各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を同位相、若しくは所定の位相ずつずらせて出力することを特徴とする(請求項1)。
【0015】
なお、請求項1に記載の昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、リアクトル数分の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに減極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を同位相で出力するようにするとよい(請求項2)。ここに、デューティ比は、オン時間/(オン時間+オフ時間)で表されるように、オン・オフの1周期に占めるオン時間の割合である。
【0016】
また、請求項1に記載の昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、リアクトル数分の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに減極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を前記所定の位相ずつずらせて出力して各スイッチ素子を異なる期間にオン動作させるようにするとよい(請求項3)。
【0017】
また、請求項1に記載の昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、2本の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに加極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、前記制御回路は、所定のデューティ比のパルス信号を一方のスイッチ素子に出力し、そのパルス信号のレベルを反転したパルス信号を他方のスイッチ素子に出力して各スイッチ素子を互いにオン・オフ動作が逆になるように動作させるようにするとよい(請求項4)。
【0018】
また、請求項1に記載の昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、2本の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに加極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を前記所定の位相ずつずらせて出力するようにするとよい(請求項5)。
【0019】
また、請求項2〜5のいずれかに記載の昇圧チョッパ装置において、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、共通のコアに代えて、リアクトル数分の棒状の第1の磁性部材が中央に配置された棒状の第2の磁性部材の周囲に配置され、かつ、それらの両端部が当該第2の磁性部材の両端部にそれぞれ接続された構造を有する1個の鉄心からなる共通のコアに、各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成してもよい(請求項6)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、リアクトル数分の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコア、又は、リアクトル数分の棒状の第1の磁性部材が中央に配置された棒状の第2の磁性部材の周囲に配置され、かつ、それらの両端部が当該第2の磁性部材の両端部にそれぞれ接続された構造を有する1個の鉄心からなる共通のコアに、各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成されているので、各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルを、別々のコアに巻き線を巻いた単独の直流リアクトルで構成した場合に比べて、小型化、軽量化が可能になる。
【0021】
更に、請求項2に記載の発明によれば、各直流リアクトルの巻き線を共通のコアに減極性で巻き、制御回路は、複数のスイッチ素子に対し所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を同位相で出力するので、各スイッチ素子を同時にオン動作し、複数の昇圧チョッパ回路は、実質的に互いに干渉することなく同時に直流リアクトルへの直流エネルギーの蓄積動作及びその蓄積エネルギーのコンデンサへの放出動作を行うことになり、装置全体の昇圧性能を著しく損なうことがない。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、各直流リアクトルの巻き線を共通のコアに減極性で巻き、制御回路は、複数のスイッチ素子に対し所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を所定の位相ずつずらせて出力して各スイッチ素子を異なる期間にオン動作させるので、複数の昇圧チョッパ回路は、実質的に互いに干渉することなく時分割で直流リアクトルへの直流エネルギーの蓄積動作及びその蓄積エネルギーのコンデンサへの放出動作を行うことになり、装置全体の昇圧性能を著しく損なうことがない。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、各直流リアクトルの巻き線を共通のコアに加極性で巻き、制御回路は、所定のデューティ比のパルス信号を一方のスイッチ素子に出力し、そのパルス信号のレベルを反転したパルス信号を他方のスイッチ素子に出力して各スイッチ素子を互いにオン・オフ動作が逆になるように動作させるので、2つの昇圧チョッパ回路は、実質的に互いに干渉することなく、一方の昇圧チョッパ回路が直流リアクトルへの直流エネルギーの蓄積動作をすると、他方の昇圧チョッパ回路は直流リアクトルに蓄積した直流エネルギーのコンデンサへの放出動作を行う関係で同時に昇圧チョッパ動作を行うことになり、装置全体の昇圧性能を著しく損なうことがない。
【0024】
また、直流電源から入力される直流電流は、2つの昇圧チョッパ回路の各直流リアクトルに流れる電流を加算したものであるが、一方の昇圧チョッパ回路のスイッチ素子がオンのときには当該昇圧チョッパ回路の直流リアクトルに単調増加する電流が流れ、他方の昇圧チョッパ回路のスイッチ素子はオフであるので、当該直流リアクトルには単調減少する電流が流れるので、入力電流はほぼ平坦になり、その変動量を抑制することができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明によれば、各巻き線に電流が流れた際に当該巻き線が巻回された第1の磁性部材に生じる磁束が主として当該第1の磁性部材と第2の磁性部材とで構成される磁路を通るので、巻き線同士の相互インダクタンスを小さくすることができる。これにより、相互インダクタンスによる装置全体の昇圧性能への悪影響を低減することができる。
【0026】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る昇圧チョッパ装置の第1実施形態の等価的な電気回路の構成を示す図である。
【0029】
図1に示す昇圧チョッパ装置2は、直流電源1の電圧Vinを電圧Vo(≧Vin)に昇圧して負荷3に供給するものである。この昇圧チョッパ回路2は、直流電源1が接続される入力端aと負荷3が接続される出力端bの間に直流リアクトルと転流用のダイオードとがこの順に直列に接続された直列回路が2個並列に接続されている。出力端bと接地ラインcとの間に平滑用のコンデンサCが接続され、各直列回路の直流リアクトルとダイオードの各接続点d,eと接地ラインcとの間に2個のスイッチ素子SW1,SW2がそれぞれ接続されている。
【0030】
図1ではスイッチ素子SW1,SW2としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いているが、電界効果トランジスタであっても良い。スイッチ素子SW1,SW2の各制御端子(図1では、ゲート端子)には、オン・オフ動作を制御するための制御回路22が接続されている。制御回路22にはコンデンサCの両端電圧、すなわち、出力端bの電圧Voが入力されている。
【0031】
昇圧チョッパ回路の基本的な回路構成は、周知のように、直流リアクトルとダイオードの直列回路と、その直列回路内の接続点と接地ラインに接続されたスイッチ素子と、その直列回路の出力側(ダイオードのカソード)と接地ラインに接続された平滑用のコンデンサとによって構成される。従って、昇圧チョッパ装置2は、等価的に2個の昇圧チョッパ回路が並列に接続された構成となっている。
【0032】
すなわち、昇圧チョッパ装置2は、直流リアクトルL1とダイオードD1の直列回路とスイッチ素子SW1とコンデンサC1によって第1の昇圧チョッパ回路が構成され、直流リアクトルL2とダイオードD2の直列回路とスイッチ素子SW2とコンデンサC2によって第2の昇圧チョッパ回路が構成されている。なお、コンデンサC1とコンデンサC2は、出力端bと接地点cに並列接続されるから、図1では両コンデンサC1,C2を合成したコンデンサCを1個だけ記載している。
【0033】
また、直流リアクトルL1,L2は、図2に示すように、共通のコア211に一方の直流リアクトルL1(以下、「第1の直流リアクトルL1」という。)の巻き線212と他方の直流リアクトルL2(以下、「第2の直流リアクトルL2」という。)の巻き線213を巻回して構成されている。コア211は、2つの棒状部材の両端をそれぞれ接続した縦長のロの字型の形状を有している。コア211は、例えば、アモルファス合金からなる磁性部材で構成されている。長手の相対向する2つの棒状部分211a,211bは脚部であり、脚部211a,211bの両端を接続している部分211cは継鉄部である。
【0034】
各脚部211a,211bにそれぞれ第1の直流リアクトルL1の巻き線212と第2の直流リアクトルL2の巻き線213が巻回されている。巻き線212,213は、図3に示すように、互いに逆方向に巻回されている。すなわち、第1の直流リアクトルL1及び第2の直流リアクトルL2は、減極性の変圧器と同様の構造となっている。また、第1,第2の直流リアクトルL1,L2の巻き線の径及び長さは略同じで、第1,第2の直流リアクトルL1,L2の自己インダクタンスLL1,LL2は略同じ値としている。
【0035】
なお、第1の直流リアクトルL1及び第2の直流リアクトルL2は、共通のコア211に一体的に構成され、昇圧チョッパ装置2の製作上、1個の部品として扱われるので、図1では、第1,第2の直流リアクトルL1,L2全体を直流リアクトル21としている。また、直流リアクトル21内の第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2の左側の黒丸は、直流リアクトル21が減極性の変圧器と同様の構造であることを示している。
【0036】
制御回路22は、2個のスイッチ素子SW1,SW2のオン・オフ動作をそれぞれ集中制御する。制御回路22は、周波数及びデューティ比が同一の2つの駆動パルスS1,S2を生成し、各駆動パルスS1,S2を相互にハイレベル期間(スイッチ素子SW1,SW2をオンにする期間。以下、「オン期間」という。)が重複するようにスイッチ素子SW1(以下、「第1のスイッチ素子SW1」という。)とスイッチ素子SW2(以下、「第2のスイッチ素子SW2」という。)の各ゲート端子に供給する。以下、第1のスイッチ素子SW1に対する駆動パルスS1を「第1の駆動パルスS1」といい、第2のスイッチ素子SW2に対する駆動パルスS2を「第2の駆動パルスS2」という。
【0037】
なお、周知のように、昇圧チョッパ回路においては、駆動パルスの周期をT、スイッチ素子のオン期間をTON、オフ期間をTOFF、入力電圧をEin、出力電圧をEoutとすると、昇圧率β=Eout/Einは、β=T/TOFFで表される。そして、デューティ比DはTON/Tであるから、昇圧率β=T/TOFF=1/(1−D)>1で表され、出力電圧EoutはEin/(1−D)で表される。
【0038】
制御回路22は、周波数は固定し(例えば、約5kHzに固定)、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比Dを変化させて出力電圧Voを制御する。例えば、デューティ比D[%]が25%のとき、出力電圧Voはおよそ1.3Vinになり、デューティ比D[%]が50%のとき、出力電圧Voは2Vinになり、デューティ比D[%]が75%のとき、出力電圧Voは4Vinになる。なお、デューティ比D[%]は、デューティ比Dの%表示である。
【0039】
次に、第1実施形態の昇圧チョッパ装置2の動作について説明する。
【0040】
第1実施形態の昇圧チョッパ装置2は、第1,第2の直流リアクトルL1,L2を図2に示す直流リアクトル21で構成しているので、第1,第2の直流リアクトルL1,L2にそれぞれ電流が流れると、自己インダクタンスだけでなく相互インダクタンスが生じる。このため、巻き線212と巻き線213にそれぞれ電流IL1と電流IL2が流れると、第1の直流リアクトルL1のリアクトル電圧VL1(以下、「第1のリアクトル電圧VL1」という。)と第2の直流リアクトルL2のリアクトル電圧VL2(以下、「第2のリアクトル電圧VL2」という。)は、下記(1),(2)式で表される。なお、(1),(2)式において、LL1,LL2は自己インダクタンス、Mは相互インダクタンスである。また、巻き線212,213の抵抗分は無視している。
【0041】
【数1】

【0042】
第1のスイッチ素子SW1がオンになると、第1の直流リアクトルL1の電源側のP1端子の電位はVin、負荷側のP2端子はほぼ接地レベル(0v)になるから、第1の直流リアクトルL1には、第1のリアクトル電圧VL1が電源電圧Vinとバランスするように電流IL1が流れる。第2のスイッチ素子SW2がオンになったときの第2の直流リアクトルL2に流れる電流IL2についても同様である。
【0043】
そして、第1の直流リアクトルL1の自己インダクタンスLL1と第2の直流リアクトルL2の自己インダクタンスLL2は略同じであるので、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が同時にオンになるときは、過渡的な電流IL1と電流IL2の流れ方は略同じになり、LL1=LL2=L、dIL1/dt=dIL2/dt=dIL/dtとすると、第1,第2の直流リアクトルL1,L2には、下記(3)式を満たすように電流ILが流れる。
【0044】
【数2】

【0045】
上記(3)式は、第1,第2の直流リアクトルL1,L2の各自己インダクタンスを(L+M)とし、第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2の間で相互誘導が生じないように第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路を同時に動作させたときの関係式と等価である。
【0046】
従って、第1実施形態は、自己インダクタンスLの第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンスLの第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路を並列接続した回路を動作させているが、実質的に自己インダクタンス(L+M)の第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンス(L+M)の第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路とを互いに独立して動作させる構成となっている。
【0047】
一方、第1のスイッチ素子SW1がオフになると、そのオフ・タイミングにおける第1のリアクトル電圧VL1の極性が反転するので、第1の直流リアクトルL1の負荷側のP2端子の電圧は、(Vin+VL1)となり、この電圧(Vin+VL1)がダイオードD1を介してコンデンサC1に印加される。第2のスイッチ素子SW2がオフになった場合も同様で、第2のスイッチ素子SW2がオフになると、第2の直流リアクトルL2の負荷側のP4端子の電圧は、(Vin+VL2)となり、この電圧(Vin+VL2)がダイオードD2を介してコンデンサC2に印加される。
【0048】
従って、第1の直流リアクトルL1に流れる電流IL1は、第1のスイッチ素子SW1のオン期間でIONからIOFFまで単調増加し、第1のスイッチ素子SW1のオフ期間でIOFFからIONまで単調減少する三角波状の波形となる。第2の直流リアクトルL2に流れる電流IL2も電流IL1と同様の三角波状の波形となり、しかも電流IL1と同位相となる。
【0049】
図4〜図6は、第1実施形態の昇圧チョッパ装置2の電源供給動作を示す波形図で、第1,第2の駆動パルスS1,S2、第1,第2の直流リアクトルL1,L2に流れる電流IL1,IL2、入力電流Iin、接続点d,eの電圧Vd,Ve及び出力電圧Voの各波形を示したものである。図4は、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比D[%]を33%としたときのもの、図5は、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比D[%]を50%としたときのもの、図6は、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比D[%]を75%としたときのものである。
【0050】
図4〜図6に示すように、第1実施形態では、第1の直流リアクトルL1の電流IL1と第2の直流リアクトルL2の電流IL2は同一の波形を示し、自己インダクタンス(L+M)の第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンス(L+M)の第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路とが互いに独立して動作していることが分かる。
【0051】
また、第1実施形態では、直流電源1からの入力電流Iinが均等に二分されてそれぞれ第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路でそれぞれ独立して昇圧チョッパ動作に利用されるので、入力電流Iinの波形は、第1の直流リアクトルL1の電流IL1の三角波状の波形と第2の直流リアクトルL2の電流IL2の三角波状の波形を加算したものとなる。
【0052】
第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン期間における第1,第2の直流リアクトルL1,L2の電流IL1,IL2の傾斜角は、デューティ比Dに関係なく略同一であるから、オン期間が長いほど、電流IL1,IL2の変化幅(図4〜図6において、IONとIOFFの差)は大きくなる。従って、入力電流Iinの変化幅も、オン期間が長いほど、すなわち、昇圧率βが大きいほど、大きくなる。
【0053】
接続点d,eの電圧Vd,Veは、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2がオンになると、接地レベルcになるが、正確には第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のコレクタ−エミッタ間の電圧Vceとなる。一方、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2がオフになると、電圧Vd,Veは、入力電圧Vinにそのオフ・タイミングのときの第1,第2のリアクトル電圧VL1,VL2を加算した電圧となる。この電圧は、β・Vinで、電圧Vd,Veは、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオフ期間中、略β・Vinになっている。
【0054】
また、コンデンサCは大容量であるから、出力電圧Voはβ×Vinに保持される。なお
、デューティ比33%,50%,75%のとき、昇圧率βはそれぞれ1.5、2.0、4.0であるので、図4〜図6では、出力電圧Voはそれぞれ1.5×Vin、2×Vin、4
×Vinとなっている。
【0055】
第1実施形態を、第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2とを独立して製作し、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路とを完全に独立して並列接続した構造で第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2を同時にオン・オフ動作させる構成(以下、この構成を「標準構成」という。)と対比すると、第1実施形態は標準構成に対して、第1,第2の直流リアクトルL1,L2の自己インダクタンスがLから(L+M)に増加する点が相違すると考えられる。
【0056】
上記(3)式から明らかなように、自己インダクタンスが(L+M)のときのdIL/dtは、自己インダクタンスがLのときよりも小さくなる(すなわち、電流ILの傾斜はより緩やかになる)から、第1実施形態は、標準構成よりも第1,第2の直流リアクトルL1,L2に流れる電流IL1,IL2の傾斜を抑制することができるという特徴がある。
【0057】
2個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成では、入力電流Iinの波形が電流IL1,IL2の三角波状の各波形を加算したものになり、電流IL1,IL2の各波形の変動幅(IOFFとIONの差)が大きいほど、入力電流Iinの変動幅が大きくなるが、第1実施形態では、標準構成に対して入力電流Iinの変動幅を抑制できる利点がある。
【0058】
なお、第1実施形態では、2個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成について説明したが、上記のことは、3個以上の昇圧チョッパ回路を並列接続した場合にも適用できる。
【0059】
例えば、図7は、3個の昇圧チョッパ回路を並列接続し、デューティ比50%の駆動パルスで3個のスイッチ素子を同時にオン・オフ動作させた場合の電源供給動作を示す波形図である。なお、この場合の3個の直流リアクトルL1,L2,L3は、図8に示すように、共通のコア211’の各脚部211a’,211b’,211c’に互いに減極性となるように直流リアクトルL1,L2,L3の各巻き線212,213,214をそれぞれ巻回して製作される。
【0060】
図7に示すように、3個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成でも、第1〜第3の直流リアクトルL1,L2,L3の電流IL1,IL2,IL3は略同一の三角波状の波形となり、各リアクトルL1,L2,L3の負荷側の電圧も第1〜第3の駆動パルスS1,S2,S3のオン期間に接地レベルとなり、オフ期間にβ×Vinとなるように変化する。従って、3個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成でも実質的に第1〜第3の昇圧チョッパ回路を相互に独立して同時に動作させ、各昇圧チョッパ回路により昇圧電圧で直流エネルギーを負荷3に供給する動作をさせることができる。
【0061】
次に、本発明に係る昇圧チョッパ装置の第2実施形態について説明する。
【0062】
第2実施形態は、第1実施形態に対して第1,第2の駆動パルスS1,S2が異なるのみで、等価的な電気回路の構成は図1に示すものと同じである。従って、以下では、第1,第2の駆動パルスS1,S2による昇圧チョッパ装置の電源供給動作について、図9の波形図を用いて説明する。なお、図9は、第2実施形態の昇圧チョッパ装置2の電源供給動作を示す波形図で、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比を25%としたときのものである。
【0063】
第2実施形態では、制御回路22は、固定の周波数で所定のデューティ比の第1,第2の駆動パルスS1,S2を相互にオン期間が重複しないように第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2の各ゲート端子に供給する。具体的には、制御回路22は、同一駆動パルスを位相を180°ずつずらせて第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2にそれぞれ供給する。
【0064】
第1実施形態では、第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2が同時に直流エネルギーの蓄積とその蓄積エネルギーの放出とを繰り返すように、第1,第2の駆動パルスS1,S2と第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン・オフ動作を制御したので、上記(3)に示されるように、第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2との間の相互インダクタンスMはそれぞれ自己インダクタンスLを増加させるように作用した。
【0065】
第2実施形態では、デューティ比D[%]が50%より小さい場合、例えば、図9に示すように、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2は、(SW1,SW2):(オフ,オフ)→(オン,オフ)→(オフ,オフ)→(オフ,オン)→(オフ,オフ)を繰り返し、一方のスイッチ素子がオフのときに他方のスイッチ素子がオンになる。このため、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン期間に、上記(3)式を適用することはできない。
【0066】
第2実施形態では、一方のスイッチ素子がオン・オフ動作をするとき、他方のスイッチ素子は必ずオフ状態になっている。昇圧チョッパ回路は、スイッチ素子のオン期間に直流リアクトルに直流エネルギーを蓄積するように単調増加する電流ILが流れ、スイッチ素子のオフ期間に直流リアクトルに蓄積された直流エネルギーをコンデンサ及び負荷に放出するように単調減少する電流ILが流れる。従って、第2実施形態では、第1のスイッチ素子SW1がオンになるときは、第2のスイッチ素子SW2はオフになっているから、第2の直流リアクトルL2に蓄積された直流エネルギーをコンデンサC及び負荷3に放出するように単調減少する電流IL2が流れているときに、第1の直流リアクトルL1に直流エネルギーを蓄積するように単調増加する電流IL1が流れることになる。逆の場合も同様である。
【0067】
例えば、第2のスイッチ素子SW2がオフの状態では、第2の直流リアクトルL2の負荷側のP4端子の電圧Veは、(Vin+VL2)になる。第1のスイッチ素子SW1がオフ状態で第1の直流リアクトルL1に電流IL1が流れていなければ、第2の直流リアクトルL2の第2のリアクトル電圧VL2は、上記(2)式でdIL1/dt=0としたLL2・dIL2/dtで表され、しかもdIL2/dt<0であるので、第2の直流リアクトルL2の負荷側のP4端子が+極性となっている(例えば、図9の電圧Veの(a)の直前のタイミングのレベル参照)。
【0068】
この状態で、第1のスイッチ素子SW1がオンになると(例えば、図9の(a)のタイミング参照)、第1の直流リアクトルL1に直流電源1の電源電圧Vinが加わりdIL1/dt(>0)の電流IL1が流れるので、これにより第2の直流リアクトルL2に電源側のP3端子が+極性となるような電圧を誘起しようとして第2の直流リアクトルL2の電流IL2をゼロまで急激に低下させる。そして、電流IL2がゼロになると(図9の(b)のタイミング参照)、第1の直流リアクトルL1の電流IL1によりM・dIL1/dtの電圧が第2の直流リアクトルL2の両端に誘起される。
【0069】
M・dIL1/dtの電圧の極性はLL2・dIL2/dtの電圧とは逆極性であるから、第2の直流リアクトルL2には、電源側のP3端子が+極性となるようにM・dIL1/dtの電圧が誘起される。従って、第2の直流リアクトルL2の負荷側のP4端子の電圧Veは、第1のスイッチ素子SW1がオンのときには、ほぼゼロ(Vin−VL2≒0)になる(図9の電圧Veの(b)の直後のタイミングのレベル参照)。
【0070】
すなわち、第2のスイッチ素子SW2がオフになり、そのオフ期間に第2の直流リアクトルL2に蓄積された直流エネルギーがコンデンサC及び負荷3に放出されている状態で第1のスイッチ素子SW1がオンになると、直ちに蓄積エネルギーのコンデンサC及び負荷3への放出が停止され、その後は、第2のスイッチ素子SW2がオンになるまで第2の直流リアクトルL2には直流エネルギーは蓄積されず、コンデンサC及び負荷3にも放出されない。
【0071】
この結果、第2実施形態では、第1のスイッチ素子SW1のオン動作が、第2の昇圧チョッパ回路によるエネルギー供給動作を第1の昇圧チョッパ回路によるエネルギー供給動作に切り替える機能を果たすことになる。第1のスイッチ素子SW1がオフ状態で、第2のスイッチ素子SW2がオンになる場合(例えば、図9の(d)のタイミング参照)も同様である。
【0072】
すなわち、図9の波形図において、例えば、(a)のタイミングで第1のスイッチ素子SW1がオンになると、第1の直流リアクトルL1の電流IL1により第2の直流リアクトルL2に誘起されるM・dIL1/dtの電圧で第2の直流リアクトルL2からコンデンサC及び負荷3に放出されていた電流IL2が直ちに停止され、(b)のタイミングから第2のスイッチ素子SW2がオンになる(d)のタイミングまで第1の昇圧チョッパ回路によるエネルギー供給動作に切り替えられる。
【0073】
(b)から(d)の期間では、第1のスイッチ素子SW1がオフになる(c)のタイミングまで第1の直流リアクトルL1に直流エネルギーが蓄積され、第1のスイッチ素子SW1がオフになると、その蓄積エネルギーがコンデンサC及び負荷3に放出されるようになる。この蓄積エネルギーのコンデンサC及び負荷3への放出は、第2のスイッチ素子SW2がオンにならなければ、第1のスイッチ素子SW1が次にオンになる(f)のタイミングまで継続されるが、(d)のタイミングで第2のスイッチ素子SW2がオンになるので、第1の直流リアクトルL1からコンデンサC及び負荷3に放出されていた電流IL1は直ちに停止され、(e)のタイミングから第1のスイッチ素子SW1が次にオンになる(f)のタイミングまで第2の昇圧チョッパ回路によるエネルギー供給動作に切り替えられる。
【0074】
以上のような動作をすることにより、電圧Veは、以下のような波形の変化を繰返す。すなわち、電圧Veは、第1のスイッチ素子SW1がオンになると、ほぼゼロ(Vin−VL2≒0)になり、オン期間中、ほぼゼロ(Vin−VL2≒0)に保持されるが、第1のスイッチ素子SW1がオフになると、ほぼβ×Vin(Vin+VL2≒β×Vin)に反転し、その後、第2のスイッチ素子SW2がオンになり、昇圧チョッパ動作が第2のチョッパ回路に切り換えられると、一旦、接地レベルcに低下する。そして、第2のスイッチ素子SW2がオフになると、電圧Veは、β×Vinのレベルに復帰し、その後、第1のスイッチ素子SW1がオンになると、ほぼゼロ(Vin−VL2≒0)に低下する。
【0075】
電圧Vdも同様の波形の変化を繰返す。すなわち、電圧Vdは、第2のスイッチ素子SW2がオンになると、ほぼゼロ(Vin−VL1≒0)になり、オン期間中、ほぼゼロ(Vin−VL1≒0)に保持されるが、第2のスイッチ素子SW2がオフになると、ほぼβ×Vin(Vin+VL1≒β×Vin)に反転し、その後、第1のスイッチ素子SW1がオンになり、
昇圧チョッパ動作が第1のチョッパ回路に切り換えられると、一旦、接地レベルcに低下する。そして、第1のスイッチ素子SW1がオフになると、電圧Vdは、β×Vinのレベ
ルに復帰し、その後、第2のスイッチ素子SW2がオンになると、ほぼゼロ(Vin−VL1≒0)に低下する。
【0076】
なお、第2実施形態では、昇圧率βはβ=1/(1−N×D)(Nは昇圧チョッパ回路の並列台数)となる。従って、図9では、昇圧率β=1/(1−2×0.25)=2.0となっている。
【0077】
一方、第1の直流リアクトルL1の電流IL1は、第1のスイッチ素子SW1がオンになると、第2の直流リアクトルL2の電流IL2を急激にゼロにするように急上昇し、当該電流IL2がゼロになったタイミングからVin=L1×dIL1/dtを満たすように単調増加して第1の直流リアクトルL1に直流エネルギーを蓄積する。その後、第1のスイッチ素子SW1がオフになると、電流IL1は単調減少に転じ、蓄積した直流エネルギーをコンデンサC及び負荷3に放出する(図9の電流IL1の(a)〜(d)の期間の波形参照)。そして、第2のスイッチ素子SW2がオンになると、第2の直流リアクトルL2に電流IL2が流れ、これにより電流IL1は急激にゼロになる。
【0078】
第1の直流リアクトルL1の電流IL1は、第2のスイッチ素子SW2がオンして電流IL1がゼロになってから第1のスイッチ素子SW1がオンするまでは流れず、第1のスイッチ素子SW1がオンしてから第2のスイッチ素子SW2がオンするまで上記の変化を行い、以下、そのような変化を繰返す。
【0079】
第2の直流リアクトルL2の電流IL2も第1の直流リアクトルL1の電流IL1と同様の変化を行うが、第1のスイッチ素子SW1がオンして電流IL2がゼロになってから第2のスイッチ素子SW2がオンするまでは流れず、第2のスイッチ素子SW2がオンしてから第1のスイッチ素子SW1がオンするまで上記の変化を行う点が第1の直流リアクトルL1の電流IL1と異なる。
【0080】
第2実施形態では、各昇圧チョッパ回路が動作している期間では第1,第2の直流リアクトルL1,L2に流れる電流IL1,IL2の波形は三角の山形をしているので、電流IL1と電流IL2を加算した入力電流Iinの三角波状の波形の周期は、第1実施形態の入力電流Iinの三角波状の波形の周期に対して1/2となる。従って、第2実施形態では、第1実施形態よりも入力電流Iinの変動幅を小さくすることができる。その一方、第2実施形態は、各昇圧チョッパ回路が第1,第2の駆動パルスS1,S2の1/2周期毎に交互に間欠動作をするので、各昇圧チョッパ回路の駆動効率は第1実施形態よりも低下する。
【0081】
なお、デューティ比D[%]を50%にした場合は、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2は、(SW1,SW2):(オン,オフ)→(オフ,オン)を繰り返し、両スイッチ素子が同時に(オフ,オフ)となる期間はなくなる。
【0082】
図9の示す波形図において、デューティ比D[%]を25%から徐々に50%に増加させると、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が同時にオフになる期間(例えば、図9の(c)から(d)期間)が短くなるから、各昇圧チョッパ回路が昇圧チョッパ動作している期間のうち、直流リアクトルに蓄積した直流エネルギーをコンデンサC及び負荷3に放出する期間が減少することになる。デューティ比D[%]を50%にした場合は、コンデンサCへの直流エネルギーの放出期間がなくなった場合と考えられる。
【0083】
図10は、第2実施形態において、デューティ比D[%]を50%にした場合の波形図である。
【0084】
同図に示すように、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2がオンになる毎に、第1,第2の直流リアクトルL1,L2に流れる電流IL1,IL2が交互に切り換えられ、いずれか一方の電流が流れる。このことは、デューティ比を50%より小さくした場合も同じであるが、デューティ比を50%にした場合は、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン期間ではそれぞれ第1の直流リアクトルL1または第2の直流リアクトルL2への直流エネルギーの蓄積動作しか行われず、理論上はコンデンサC及び負荷3への直流エネルギーの放出は行われない。しかし、実際は、電流は瞬時に切り替わることはできないので、電流が切り替わるわずかな期間にコンデンサC及び負荷3へ直流エネルギーが一気に供給されることになり、そのときの昇圧比は非常に大きなものとなる。デューティ比を50%より大きくした場合も第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が同時にオフになる期間が生じないから、上記の動作は、デューティ比50%以上で同様に行われると類推することができる。従って、第2実施形態では、デューティ比D[%]を50%よりも小さい範囲で昇圧チョッパ動作を行う場合に適する。
【0085】
上記のように、第2実施形態は、第1実施形態とは異なり、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路が第1の駆動パルスS1又は第2の駆動パルスS2の1/2周期で交互に動作する構成となっている。
【0086】
第1実施形態では、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路が同時に昇圧チョッパ動作をするので、コンデンサCは、第1の昇圧チョッパ回路及び第2の昇圧チョッパ回路で共用できる大容量の素子を選択する必要があるが、第2実施形態では、コンデンサCが時分割で第1の昇圧チョッパ回路または第2の昇圧チョッパ回路に共用されるので、第1実施形態ほどの大容量の素子は要しない。
【0087】
なお、第2実施形態では、2個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成について説明したが、上記のことは、3個以上の昇圧チョッパ回路を並列接続した場合にも適用できる。
【0088】
例えば、図11は、3個の昇圧チョッパ回路を並列接続し、デューティ比20%の駆動パルスで3個のスイッチ素子を同時にオンしないようにオン・オフ動作させた場合の電源供給動作を示す波形図である。なお、この場合の3個の直流リアクトルL1,L2,L3の構成は、図8に示したものと同じである。また、図11では、昇圧率β=1/(1−3×0.20)=2.5となっている。
【0089】
図11に示すように、3個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成でも実質的に第1〜第3の昇圧チョッパ回路をそれぞれ1/3周期ずつ時分割で動作させ、各昇圧チョッパ回路により昇圧電圧で直流エネルギーを負荷3に供給する動作をさせることができることがわかる。
【0090】
なお、一般に、昇圧チョッパ回路の並列接続数をN個とすると、各昇圧チョッパ回路を等間隔で切り換え運転させるため、各昇圧チョッパ回路のスイッチ素子がオンになる期間は相互に360°/Nずつずらせるようにするとよい。このようにすれば、入力電流Iinの変動幅を効果的に抑制することができる。
【0091】
次に、本発明に係る昇圧チョッパ装置の第3実施形態について説明する。
【0092】
第3実施形態は、第1実施形態に対して直流リアクトル21の構造と第1,第2の駆動パルスS1,S2が異なる。直流リアクトル21の構造の相違点は、第1の直流リアクトルL1の巻き線212と第2の直流リアクトルL2の巻き線213が、図12に示すように、互いに同方向に巻回されている点である。すなわち、第3実施形態の第1の直流リアクトルL1及び第2の直流リアクトルL2は、加極性の変圧器と同様の構造となっている。
【0093】
従って、図示はしないが、第3実施形態の等価的な電気回路の構成は、図1において、直流リアクトル21内の第2の直流リアクトルL2の黒丸の位置をP4端子側に変更するか、直流リアクトル21内の第1の直流リアクトルL1の黒丸の位置をP2端子側に変更したものとなる。
【0094】
また、第3実施形態では、制御回路22は、固定の周波数でデューティ比50%の第1,第2の駆動パルスS1,S2を相互にオン期間が重複しないように第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2の各ゲート端子に供給する。なお、デューティ比50%の場合は、第1の駆動パルスS1がオンのときは第2の駆動パルスS2がオフになり、第1の駆動パルスS1がオフのときは第2の駆動パルスS2がオンになるから、同一の駆動パルスを位相を180°ずつずらせて第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2にそれぞれ供給する、若しくは、第1のスイッチ素子SW1に供給するデューティ比50%の駆動パルスのレベルを反転させて第2のスイッチ素子SW2に供給する構成であると言ってもよい。或いは、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を互いオン・オフが逆になるように供給する構成であると言ってもよい。
【0095】
第1実施形態の直流リアクトル21は、減極性の変圧器と同様の構造となっているのに対し、第3実施形態の直流リアクトル21は、加極性の変圧器と同様の構造となっているので、第1実施形態と同様に第1の駆動パルスS1と第2の駆動パルスS2を同位相にする(オン期間が重複するようにする)と、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が同時にオンになるときは、dIL1/dt=dIL2/dt=dIL/dt>0であるが、相互誘導により第1の直流リアクトルL1の両端に誘起される電圧M・dIL2/dtの極性は、第1実施形態の場合と逆になる。相互誘導により第2の直流リアクトルL2の両端に誘起される電圧M・dIL1/dtの極性も同様である。
【0096】
従って、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を同位相で供給すると、上記(3)式に相当する式は、下記(4)式となる。下記(4)式によれば、自己誘導により生じる電圧(L×dIL/dt)が相互誘導により生じる電圧(M×dIL/dt)により相殺されることなるから、実質的に第1の直流リアクトルL1の自己インダクタンスがLから(L−M)に減少したのと等価である。第2の直流リアクトルL2についても同様である。
【0097】
【数3】

【0098】
第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を同位相で供給した場合、例えば、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン期間では、上記(4)式を満たすように、非常に大きな変化率で第1,第2の直流リアクトルL1,L2にそれぞれ電流ILを流すことになる。従って、この場合は、この電流に耐え得る直流リアクトル21及び第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2及びダイオードD1,D2を設ける必要がある。
【0099】
一方、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を互いにオン・オフが逆になるように供給すると、第1のスイッチ素子SW1がオンしている(第1の直流リアクトルL1に直流エネルギーを蓄積している)ときには、第2のスイッチ素子SW2はオフしているので、第2の直流リアクトルL2に蓄積された直流エネルギーがコンデンサC及び負荷3放出され、第2のスイッチ素子SW2がオンしている(第2の直流リアクトルL2に直流エネルギーを蓄積している)ときには、第1のスイッチ素子SW1はオフしているので、第1の直流リアクトルL1に蓄積された直流エネルギーをコンデンサC及び負荷3に放出される。
【0100】
第1のスイッチ素子SW1のオン期間では、第1の直流リアクトルL1にdIL1/dt>0の電流IL1が流れ、第2の直流リアクトルL2にdIL2/dt<0の電流IL2が流れるが、相互誘導により第1の直流リアクトルL1に誘起される電圧(M・dIL2/dt)は自己誘導により第1の直流リアクトルL1に誘起される電圧(LL1・dIL1/dt)と同じ極性である。同様に、第2のスイッチ素子SW2のオン期間でも、第2の直流リアクトルL2にdIL2/dt>0の電流IL2が流れ、第1の直流リアクトルL1にdIL1/dt<0の電流IL1が流れるが、相互誘導により第2の直流リアクトルL2に誘起される電圧(M・dIL1/dt)は自己誘導により第2の直流リアクトルL2に誘起される電圧(LL2・dIL2/dt)と同じ極性である。
【0101】
従って、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を互いにオン・オフが逆になるように供給した場合、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン期間では、上記(3)式を満たすように、第1,第2の直流リアクトルL1,L2にそれぞれ電流ILが流れるから、正常な昇圧チョッパ動作が可能となる。しかも、この場合は、直流リアクトル21及び第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に対して、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を同位相で供給する場合のような電流ILの急激な変化を考慮する必要はない。
【0102】
このため、第3実施形態では、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を互いにオン・オフが逆になるように供給している。そして、上記のように、第3実施形態でも上記(3)式を満たすように、第1,第2の直流リアクトルL1,L2にそれぞれ電流ILが流れるから、第3実施形態も第1実施形態と同様に、実質的に自己インダクタンス(L+M)の第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンス(L+M)の第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路とを互いに独立して動作させる構成となっている。
【0103】
尤も、第3実施形態では、第1のスイッチ素子SW1がオンのときには第2のスイッチ素子SW2はオフで、第1のスイッチ素子SW1がオフのときは第2のスイッチ素子SW2はオンであるから、第1の直流リアクトルL1に直流エネルギーが蓄積されているときは第2の直流リアクトルL2から蓄積した直流エネルギーがコンデンサC及び負荷3に放出され、第1の直流リアクトルL1から蓄積された直流エネルギーがコンデンサC及び負荷3に放出されているときには第2の直流リアクトルL2に直流エネルギーが蓄積される動作が繰り返される。
【0104】
すなわち、第3実施形態は、第1実施形態と異なり、一方の昇圧チョッパ回路が直流エネルギーを蓄積しているときには他方の昇圧チョッパ回路が蓄積した直流エネルギーをコンデンサC及び負荷3に放出しており、直流エネルギーの蓄積と放出を互いに補完し合う関係で動作する。
【0105】
従って、第3実施形態の第1,第2の直流リアクトルL1,L2の電流IL1,IL2及び入力電流Iinの波形も第1実施形態と同様に三角波状の波形となるが、第3実施形態では、第1の直流リアクトルL1の電流IL1が単調増加しているときには第2の直流リアクトルL2の電流IL2が単調減少し、第1の直流リアクトルL1の電流IL1が単調減少しているときには第2の直流リアクトルL2の電流IL2が単調増加する関係となるから、電流IL1と電流IL2を加算した入力電流Iinの変動幅は第1実施形態に比べて小さくなる。
【0106】
図13は、第3実施形態の昇圧チョッパ装置2の電源供給動作を示す波形図で、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比を50%としたときのものである。
【0107】
図13の波形図と図5の波形図を対比すれば、明らかなように、図13の波形図は、図5の波形図において、第2の駆動パルスS2、第2の直流リアクトルL2の電流IL2及び接続点eの電圧Veの波形の位相を180°遅らせたものとなっている。
【0108】
第1の直流リアクトルL1の電流IL1と第2の直流リアクトルL2の電流IL2の波形は同一の三角波状で、電流IL2は電流IL1に対して180°遅れているから、第3実施形態では、電流IL1に電流IL2を加算した入力電流Iinの変動幅をほぼゼロにすることができる。また、電圧Vdが接地レベルのときには電圧Veはβ×Vinとなり、電圧Veが接地
レベルのときには電圧Vdはβ×Vinとなるから、電圧Vdの波形に電圧Vdの波形を重
畳した出力電圧Voの波形も変動が殆どなく、安定して昇圧レベルβ×Vinに保持するこ
とができる。
【0109】
なお、第3実施形態では、第1のスイッチ素子SW1及び第2のスイッチ素子SW2のオン・オフ動作が互い逆になるときに上記の動作を行うので、デューティ比を変化させて昇圧レベルを変化させる場合は、第1の駆動パルスS1と第2の駆動パルスS2は、第1のスイッチ素子SW1及び第2のスイッチ素子SW2のオン・オフ動作が互いに逆になるようにそれぞれ第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2に供給するとよい。すなわち、第3実施形態では、所定のデューティ比の駆動パルスが一方のスイッチ素子に供給され、その駆動パルスのレベルを反転して他方のスイッチ素子に供給するとよい。
【0110】
第3実施形態では、一方の昇圧チョッパ回路のデューティ比をD1(%)とすると、他方の昇圧チョッパ回路のデューティ比D2は(100−D1)(%)となる。昇圧チョッパ装置2の出力電圧Voは、デューティ比D1,D2の大きい方で決まると考えられるので、第3実施形態では、デューティ比50%以上で動作する。従って、第3実施形態は、デューティ比を50%よりも大きい範囲で昇圧チョッパ動作を行う場合に適する。
【0111】
次に、本発明に係る昇圧チョッパ装置の第4実施形態について説明する。
【0112】
第4実施形態は、第3実施形態の変形例で、第3実施形態に対して第1,第2の駆動パルスS1,S2が異なる。すなわち、第1,第2の駆動パルスS1,S2を第2実施形態と同様にしたものである。第4実施形態の制御回路22は、固定の周波数で所定のデューティ比の同一駆動パルスを位相を180°ずつずらせて第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2にそれぞれ供給する。ゆえに、第4実施形態においては、デューティ比50%を越える領域では、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオンの期間が存在し、デューティ比50%未満の領域では、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオフとなる期間が存在することになる。
【0113】
第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2のオン・オフ動作が互いに逆の期間の動作は、第3実施形態の場合と同じ動作となるので、ここでは、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオン及びオフとなる期間の動作について説明する。
【0114】
第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオン及びオフとなる期間は、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2に第1,第2の駆動パルスS1,S2を同位相で供給したときと同じことになり、上記(4)式が成り立つことになる。すなわち、実質的に第1の直流リアクトルL1の自己インダクタンス及び第2の直流リアクトルL2の自己インダクタンスがLから(L−M)に減少したのと等価となる。
【0115】
ゆえに、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオン及びオフとなる期間では、上記(4)式を満たすように、非常に大きな変化率で第1,第2の直流リアクトルL1,L2にそれぞれ電流ILを流すことになる。
【0116】
以上のようなことから、第4実施形態では、第3実施形態の動作に加えてデューティ比50%を越える領域では、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオンの期間が存在し、その期間に自己インダクタンス(L−M)の第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンス(L−M)の第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路が同時に第1の直流リアクトルL1及び第2の直流リアクトルL2に直流エネルギーが蓄積される動作が加わることになる。
【0117】
一方、デューティ比50%未満の領域では、第1のスイッチ素子SW1と第2のスイッチ素子SW2が両方ともオフとなる期間が存在し、その期間に自己インダクタンス(L−M)の第1の直流リアクトルL1を有する第1の昇圧チョッパ回路と自己インダクタンス(L−M)の第2の直流リアクトルL2を有する第2の昇圧チョッパ回路が同時にコンデンサC及び負荷3に直流エネルギーが放出される動作が加わることになる。
【0118】
図14は、第4実施形態のデューティ比50%を越える領域における昇圧チョッパ装置2の電源供給動作を示す波形図で、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比を75%としたときのものである。
【0119】
同図に示すように、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が両方ともオンになる期間が存在し、その期間に第1,第2の直流リアクトルL1,L2に流れる電流IL1,IL2が大きく跳ね上がるが、その後第1のスイッチ素子SW1もしくは第2のスイッチ素子SW2がオフになった際に、第1,第2の直流リアクトルL1,L2に蓄積された直流エネルギーがコンデンサC及び負荷3へ放出され、問題なく昇圧チョッパ動作が行われていることがわかる。
【0120】
図15は、第4実施形態のデューティ比50%未満の領域における昇圧チョッパ装置2の電源供給動作を示す波形図で、第1,第2の駆動パルスS1,S2のデューティ比を25%としたときのものである。
【0121】
同図に示すように、第1,第2のスイッチ素子SW1,SW2が両方ともオフになる期間、すなわち第1,第2の直流リアクトルL1,L2に蓄積された直流エネルギーが一気にコンデンサC及び負荷3へ放出される期間が存在するものの、その後第1のスイッチ素子SW1もしくは第2のスイッチ素子SW2がオンになった際に、第1の直流リアクトルL1もしくは第2のL2への直流エネルギーの蓄積動作が行われ、問題なく昇圧チョッパ動作が行われていることがわかる。
【0122】
第4実施形態は、第3実施形態のようなデューティ比の制約はないが、第3実施形態よりも入力電流Iinの変動幅が大きくなるという特徴がある。
【0123】
上記実施形態では、直流リアクトル21を図2や図8のように構成したが、図16や図17に示すように、構成してもよい。図16は、図2の直流リアクトル21の変形例であって、コア211の2つの脚部211a,211bの間に巻き線が巻回されない脚部215を設けたものである。一方、図17には、図8の直流リアクトル21’の変形例であって、コア211’の3つの脚部211a’,211b’,211c’の中央に巻き線の巻回されない脚部215’を設け、脚部211a’,211b’,211c’の両端をそれぞれ脚部215’の両端に接続したものである。
【0124】
図16に示す直流リアクトル21”では、巻き線212,213に電流が流れることによってコア211内に生じる磁界が主として脚部215を通ることになるので、第1の直流リアクトルL1と第2の直流リアクトルL2との間の相互インダクタンスMを低減することができる。図17に示す直流リアクトル21”も同様で、巻き線212,213,214に電流が流れることによってコア211’内に生じる磁界が主として脚部215’を通ることになるので、第1の直流リアクトルL1、第2の直流リアクトルL2及び第3の直流リアクトルL3との間の相互インダクタンスMを低減することができる。
【0125】
なお、、直流リアクトルの数が4個以上の場合は、図17において、脚部215’の周囲に直流リアクトルの数だけ脚部を配置し、それらの脚部の両端を脚部215’の両端に接続したコアを使用し、脚部215’の周囲の各脚部に各直流リアクトルの巻き線を巻回して直流リアクトル21”を製作すればよい。
【0126】
図16や図17に示す直流リアクトル21”を用いた場合は、各昇圧チョッパ回路の昇圧チョッパ動作における相互インダクタンスMの影響を低減することができる。
【0127】
上記のように、第1〜第4実施形態によれば、共通のコアに複数の巻き線を巻回して複数の直流リアクトルを一体的に構成し、その直流リアクトルの巻き線の極性に応じて複数のスイッチ素子のオン・オフ動作を適正に制御するようにしているので、各昇圧チョッパ回路の昇圧チョッパ動作に悪影響を与えることなく、昇圧チョッパ装置2の小型化、軽量化、低コスト化が可能になる。
【0128】
なお、上記のように、第1〜第4実施形態には昇圧チョッパ動作の特性に各実施形態に特有の特徴があるので、昇圧チョッパ装置2を適用する負荷3に応じて各実施形態を使い分けるようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明に係る昇圧チョッパ回路の第1実施形態の等価的な電気回路の構成を示す図である。
【図2】コアを共通にした2つの直流リアクトルの構造を示す斜視図である。
【図3】2つの直流リアクトルの巻き線の巻き方を説明するための図である。
【図4】第1実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比33%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図5】第1実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比50%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図6】第1実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比75%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図7】昇圧チョッパ装置を3個の昇圧チョッパ回路の並列接続とし、デューティ比50%の駆動パルスで駆動する第1実施形態の変形例の電源供給動作を示す波形図である。
【図8】3個の昇圧チョッパ回路を並列接続した構成とする場合の3個の直流リアクトルの構造を示す斜視図である。
【図9】第2実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比25%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図10】第2実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比50%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図11】昇圧チョッパ装置を3個の昇圧チョッパ回路の並列接続とし、デューティ比20%の駆動パルスで駆動する第2実施形態の変形例の電源供給動作を示す波形図である。
【図12】第3実施形態の2つの直流リアクトルの巻き線の巻き方を説明するための図である。
【図13】第3実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比50%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図14】第4実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比75%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図15】第4実施形態の昇圧チョッパ装置をデューティ比25%の駆動パルスで駆動したときの電源供給動作を示す波形図である。
【図16】コアを共通にした2つの直流リアクトルの構造の変形例を示す図である。
【図17】コアを共通にした3つの直流リアクトルの構造の変形例を示す図である。
【図18】従来の昇圧チョッパ装置の等価的な電気回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0130】
1 直流電源
2 昇圧チョッパ装置
21,21’,21” 直流リアクトル
211,211’ コア
212,213,214 巻き線
22 制御回路
L1 第1の直流リアクトル
L2 第2の直流リアクトル
D1、D2 ダイオード
SW1 第1のスイッチ素子
SW2 第2のスイッチ素子
C コンデンサ
3 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等価的に、直流電源が接続される入力端と負荷が接続される出力端の間に直流リアクトルとダイオードとがこの順に直列に接続された複数の直列回路が並列に接続され、前記出力端と接地点との間にコンデンサが接続されるとともに、各直列回路の直流リアクトルとダイオードの接続点と前記接地点との間にそれぞれスイッチ素子が接続された回路と、前記複数のスイッチ素子のオン・オフ動作をそれぞれ集中制御する制御回路とで構成される昇圧チョッパ装置において、
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、共通のコアに各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、
前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を同位相、若しくは所定の位相ずつずらせて出力することを特徴とする昇圧チョッパ装置。
【請求項2】
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、リアクトル数分の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに減極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、
前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を同位相で出力することを特徴とする請求項1に記載の昇圧チョッパ装置。
【請求項3】
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、リアクトル数分の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに減極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、
前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を前記所定の位相ずつずらせて出力して各スイッチ素子を異なる期間にオン動作させることを特徴とする請求項1に記載の昇圧チョッパ装置。
【請求項4】
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、2本の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに加極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、
前記制御回路は、所定のデューティ比のパルス信号を一方のスイッチ素子に出力し、そのパルス信号のレベルを反転したパルス信号を他方のスイッチ素子に出力して各スイッチ素子を互いにオン・オフ動作が逆になるように動作させることを特徴とする請求項1に記載の昇圧チョッパ装置。
【請求項5】
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、2本の棒状の磁性部材の両端を相互に接続してなる1個の鉄心で構成した共通のコアに加極性で各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成され、
前記制御回路は、前記複数のスイッチ素子に対し、所定のデューティ比の同一波形のパルス信号を前記所定の位相ずつずらせて出力することを特徴とする請求項1に記載の昇圧チョッパ装置。
【請求項6】
各昇圧チョッパ回路の直流リアクトルは、前記共通のコアに代えて、リアクトル数分の棒状の第1の磁性部材が中央に配置された棒状の第2の磁性部材の周囲に配置され、かつ、それらの両端部が当該第2の磁性部材の両端部にそれぞれ接続された構造を有する1個の鉄心からなる共通のコアに、各直流リアクトルの巻き線をそれぞれ巻いて構成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の昇圧チョッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−306786(P2008−306786A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149002(P2007−149002)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】