説明

昇降圧回路及び昇降圧回路制御方法

【課題】内部損失を増加させることなく昇圧動作と降圧動作とを動作させることができる昇降圧回路及び昇降圧回路制御方法を提供すること
【解決手段】本発明にかかる昇降圧回路は、入力端子1とチョークコイル3との間に接続されるスイッチ素子2と、チョークコイル3とグランドとの間に接続されるスイッチ素子7とを有し、スイッチ素子2及び7のオンオフ状態を切り替えて、入力端子1に入力される入力電圧を昇降圧し出力電圧を生成する出力電圧生成回路15と、第1のパルス信号をスイッチ素子2へ出力する第1のスイッチ制御部と、第1のパルス信号のデューティーを検知するデューティー検知回路32と、検知されたデューティーに応じて、第2のパルス信号のスイッチ素子7への出力を制御する第2のスイッチ制御部と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降圧回路及び昇降圧回路制御方法に関し、特にスイッチ制御を用いた昇降圧回路及び昇降圧回路制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリー寿命を延ばすためにデジタルスチルカメラのセット(以下、カメラセットとする)の低消費電力化に伴い、マイコンなどに電源を供給する電源回路に昇降圧回路が使われている。その理由を以下に説明する。カメラセットに搭載されているマイコンの電源電圧は3.3Vであり、カメラセットの電源としてリチウムイオン二次電池を用いることが一般的である。通常リチウムイオン二次電池は一個で最大4.2Vの電圧を出力する。リチウムイオン二次電池の出力電圧は、電力消費により低下する。また、リチウムイン二次電池は、低い電圧(例えば1.5V)まで使用するほどバッテリー寿命が延びる。そのため、リチウムイオン二次電池1個からカメラセットの電源としてマイコン用の電源電圧3.3Vを得るには、電源回路により、リチウムイオン二次電池の電圧が1.5Vから3.3Vの範囲では昇圧変換、リチウムイオン二次電池の電圧が3.3Vから4.2Vの範囲では降圧変換をおこなう必要がある。また、カメラセットに搭載される昇降圧回路においても、電力効率向上の要求が高まってきている。
【0003】
特許文献1には、電力損失の低減を目的とし、昇圧回路の動作率を低減して電力損失の低減を実現している点が開示されている。図8を用いて、特許文献1に開示されている電源装置(昇降圧回路)の構成について説明する。図8に示す電源装置123は次の構成を有する。電圧源101の一端には、入力端子102を介して第1スイッチング素子105の一端が接続されている。第1スイッチング素子105は、外部からの信号によりオンオフ動作を行うように構成され、電界効果トランジスタ(以下、FETとする)を用いる。また、入力端子102には接地端子103との間に平滑コンデンサー104が接続されている。なお、電源装置123の接地端子103は、電圧源101や負荷113等の電力系配線の接地側と接続されている。
【0004】
第1スイッチング素子105の他端には、接地端子103との間に第1整流素子106が接続されている。従って、第1整流素子106は、第1スイッチング素子105と電圧源101の他端との間で、第1スイッチング素子105と直列接続される。なお、第1整流素子106はダイオードからなり、接地端子103側がアノード側になるように接続される。
【0005】
第1スイッチング素子105と第1整流素子106との接続点には、インダクタンス素子107の一端が接続されている。インダクタンス素子107の他端と、電源装置123の出力端子111との間に第2整流素子109が接続されている。なお、第2整流素子109も第1整流素子106と同様にダイオードで構成され、インダクタンス素子107側がアノード側になるように接続される。また、出力端子111は、負荷113の一端に接続される。そのため、第2整流素子109は、インダクタンス素子107と負荷113の一端との間で、インダクタンス素子107と直列接続される。
【0006】
インダクタンス素子107と第2整流素子109との接続点と、接地端子112との間に第2スイッチング素子108が接続されている。この接地端子112は、前記した接地端子103と共通に接続されている。また、接地端子112には負荷113の他端、すなわち接地側が接続されている。従って、第2スイッチング素子108は、インダクタンス素子107と第2整流素子109との接続点、および負荷113の他端の間に接続される。なお、第2スイッチング素子108も第1スイッチング素子105と同様にFETで構成されている。また、出力端子111と接地端子112との間には、平滑コンデンサー110が接続されている。第1スイッチング素子105と第2スイッチング素子108とには、これらをオンオフ駆動する制御回路122が制御系配線を用いて接続されている。また、電源装置123は、負荷113に安定した電圧を出力する動作を行うために、出力端子111の電圧(以下、出力電圧Voという)を読み込む制御系配線も接続されている。さらに、制御回路122の接地側も接地端子112に接続されている。
【0007】
ここで、制御回路122の詳細構成と各部の動作について説明する。まず、出力電圧Voは、制御回路122に内蔵した誤差増幅器120に入力される。一方、誤差増幅器120には基準電圧源121の基準電圧も入力される。従って、誤差増幅器120は、基準電圧に対する実際の出力電圧Voの差を増幅して出力する。誤差増幅器120の出力は、PWM比較器118に入力される。
【0008】
一方、PWM比較器118には三角波発生器119から発生される所定の周期の三角波も入力される。なお、三角波の所定の周期は、必要な昇降圧特性が得られるように適宜決定すればよい。これらにより、PWM比較器118は、誤差増幅器120の出力に応じて決定されるオンオフ周期T、オン時比率Dのオンオフ信号SW1を生成する。このオンオフ信号SW1は、第1スイッチング素子105に出力される。そのため、第1スイッチング素子105は、オン時比率Dでオンオフ駆動することになる。なお、オン時比率Dは、オンオフ周期Tに対する第1スイッチング素子105のオン期間の比と定義する。
【0009】
PWM比較器118の出力は、さらに、アンド回路115の一方の入力端子に入力されるとともに、タイマ117、および反転回路116を介して他方の入力端子に入力される。アンド回路115は、両者の入力信号の論理積を取って第2スイッチング素子108に出力する。このような構成から、第2スイッチング素子108へ出力されるオンオフ信号SW2は、次のようになる。
【0010】
まず、PWM比較器118からアンド回路115に直接入力される波形は、前記した第1スイッチング素子105のオンオフ信号SW1と同じである。一方、タイマ117はPWM比較器118の出力がオンになった時点をトリガとして、既定期間txの間、オン信号を出力する。タイマ117からの出力信号Xは、反転回路116により反転され、アンド回路115に入力される。従って、反転回路116の出力は、既定期間txの間はオフで、それ以外はオンの信号となる。
【0011】
このような、PWM比較器118と反転回路116とからの入力に応じて、アンド回路115は、両方の入力がオンの時のみオン信号を出力する。ゆえに、PWM比較器118がオン信号を出力すると同時に反転回路116の出力はオフになる。そのため、アンド回路115の出力はオフのままとなる。その後、既定期間txが経過した後は、反転回路115の出力がオンになるので、アンド回路115の出力は、その時のPWM比較器118の出力と同じになる。以上のようなアンド回路115の出力が、第2スイッチング素子108のオンオフ信号SW2である。
【0012】
次に、このような電源装置123の動作について、図9を参照しながら説明する。なお、図9で(a)が第1スイッチング素子105のオンオフ信号の波形図を、(b)がタイマ117の出力信号の波形図を、(c)が第2スイッチング素子108のオンオフ信号の波形図を、(d)がVi>Voの時のインダクタンス素子107の電流における波形図を、(e)がVi<Voの時のインダクタンス素子107の電流における波形図を、それぞれ示す。従って、これらの図において、横軸は時刻tである。また、図9はオン時比率Dが大きい場合を示す。
【0013】
オン時比率Dが大きい場合について述べる。図9(a)に示すように、時刻t101で第1スイッチング素子105のオンオフ信号SW1がオンになったとする。この時、PWM比較器118の出力がオン信号になるため、これを受け、タイマ117は図9(b)に示すように、オン信号の出力を開始する。この出力信号Xは、反転回路116により反転されるので、アンド回路115には時刻t101でオフ信号が入力されることになる。従って、アンド回路115の出力、すなわち第2スイッチング素子108のオンオフ信号SW2は、PWM比較器118の出力にかかわらず、図9(c)に示すように、時刻t101でオフを維持する。
【0014】
このように、時刻t101では第1スイッチング素子105のみがオンであるので、電圧源101がインダクタンス素子107と第2整流素子109を介して負荷113に接続された状態となる。ここで、入力電圧Viと出力電圧Voの関係がVi>Voの場合は、図9(d)に示すように、インダクタンス素子107に流れる電流Iは経時的に増加し、Vi<Voの場合は、図9(e)に示すように、電流Iは経時的に減少する。いずれの場合も電流Iは正であるので、負荷113に電流Iが供給される。この時、第2スイッチング素子108はオフであるので、電源装置123の損失が少ない状態となる。
【0015】
その後、時刻t101から既定期間txが経過した時刻t102に至ると、タイマ117は図9(b)に示すように、オフ信号を出力する。この時、図9はオン時比率Dが大きい場合であるので、第1スイッチング素子105は図9(a)に示すように、オンのままである。従って、PWM比較器118からアンド回路115に入力される信号もオンを維持する。
【0016】
一方、時刻t102でタイマ117の出力信号Xがオフになると、反転回路116の出力はオンになり、この信号がアンド回路115に入力される。従って、アンド回路115の両方の入力にオン信号が入力されているので、アンド回路115の出力信号はオンになる。ゆえに、時刻t102で第2スイッチング素子108は、図9(c)に示すようにオンになり、インダクタンス素子107の電流Iは、図9(d)、(e)に示すように、増加していく。その結果、第2スイッチング素子108における内部損失が増加するものの、後述するように電源装置123の昇圧比Vo/Viは大きくなる。
【0017】
その後、時刻t103で、第1スイッチング素子105のオン時比率Dにより決定されたオン期間が終了し、図9(a)に示すように第1スイッチング素子105がオフになる。その結果、アンド回路115はオフ信号を出力するので、図9(c)に示すように、第2スイッチング素子108もオフになる。従って、時刻t103では第1スイッチング素子105と第2スイッチング素子108が同期してオフになる。
【0018】
これにより、負荷113へはインダクタンス素子107の電力が供給されるため、図9(d)に示すように、時刻t103以降ではインダクタンス素子107の電流Iが経時的に減少する。なお、この時は第1スイッチング素子105と第2スイッチング素子108が両方オフのため、これらの内部損失は発生しない。その後、時刻t104になれば、再び時刻t101と同じ動作を行い、以後、時刻t101からt104の動作を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−296747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図8に示す第1スイッチング素子105のオン時比率Dが大きい場合において、電源装置123は、入力電圧Viより高い出力電圧Voを出力しようとすると、第2スイッチング素子108のオン時比率D2を大きくする必要がある。また、電源装置123は、入力電圧Viより高い出力電圧Voを出力し、かつ、負荷電流が大きい時は、負荷電流が小さい時のオン時比率D2よりもさらに、オン時比率D2を大きくする必要がある。
【0021】
ここで、電源装置123が入力電圧Viより高い出力電圧Voを出力し、かつ、負荷113に大きい負荷電流を供給できるように、オン時比率D2を設定した場合を考えるとし、この時のオン時比率D2をオン時比率D2aとする。D2=D2aと設定した場合、負荷電流が大きい状態においては、オン時比率D2aは、電源装置123が出力電圧Voと負荷電流を供給するために必要な第2スイッチング素子108のオン時比率となっているので、電源装置123の内部損失を増加させることは無い。
【0022】
ところが、上述のように電源装置123は、オン時比率D2=オン時比率D2aとしてオン時比率D2を大きく設定した状態で負荷電流が減少した場合に、負荷電流の変化に応じてオン時比率D2は変化しない。そのため、電源装置123の内部損失を増加させてしまう。つまり、昇圧動作の実行が不要な場合においても、昇圧動作が実行されてしまう。負荷電流が減少した場合の電源装置123が出力電圧Voを供給するために必要な第2スイッチング素子108のオン時比率D2をオン時比率D2bとすると、オン時比率D2aとオン時比率D2bの関係はD2a>D2bであるので、{(D2a−D2b)×オンオフ周期T}の時間、電源装置123が昇圧動作をおこなうことによる電力損失が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様にかかる昇降圧回路は、入力端子とチョークコイルの一端との間に接続される第1のスイッチ素子と、前記チョークコイルの他端とグランド端子との間に接続される第2のスイッチ素子とを有し、当該第1及び第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることにより、当該入力端子に入力される入力電圧を昇圧又は降圧し、出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第1のパルス信号を前記第1のスイッチ素子へ出力する第1のスイッチ制御部と、前記第1のパルス信号のデューティー比を検知するデューティー検知回路と、前記検知されたデューティー比に応じて、前記第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御する第2のスイッチ制御部と、を備えるものである。
【0024】
このような昇降圧回路を用いることにより、第1のパルス信号のデューティーを検知することができる。そのため、検知したデューティーに応じて、第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御することができる。これにより、デューティーに応じた昇圧動作と降圧動作とを制御することができる。
【0025】
本発明の第2の態様にかかる昇降圧回路制御方法は、入力端子とチョークコイルの一端との間に接続される第1のスイッチ素子と、前記チョークコイルの他端とグランド端子との間に接続される第2のスイッチ素子とを有し、前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第1のパルス信号を前記第1のスイッチ素子へ出力し、前記第1のパルス信号のデューティーを検知し、前記検知されたデューティーに応じて、前記第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御するものである。
【0026】
このような昇降圧回路を用いることにより、第1のパルス信号のデューティーを検知することができる。そのため、検知したデューティーに応じて、第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御することができる。これにより、デューティーに応じた昇圧動作と降圧動作とを制御することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、内部損失を増加させることなく昇圧動作と降圧動作とを動作させることができる昇降圧回路及び昇降圧回路制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1にかかる昇降圧回路の構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作を説明した図である。
【図3】実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作を説明した図である。
【図4】実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作を説明した図である。
【図5】実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作を説明した図である。
【図6】実施の形態2にかかる昇降圧回路の構成図である。
【図7】実施の形態2にかかる昇降圧回路の動作を説明した図である。
【図8】特許文献1にかかる電源装置の構成図である。
【図9】特許文献1にかかる電源装置の動作を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1を用いて本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の構成例について説明する。図1の昇降圧回路は、入力端子1と、トランジスタ2と、チョークコイル3と、抵抗器4と、フライホールダイオード5及び6と、トランジスタ7と、コンデンサー8と、抵抗器9及び10と、出力端子11と、スイッチ制御部12と、クロック生成回路13と、セレクター26と、デューティー検知回路32とを備えている。入力端子1と、トランジスタ2と、チョークコイル3と、抵抗器4と、フライホールダイオード5及び6と、トランジスタ7と、コンデンサー8と、抵抗器9及び10と、出力端子11とにより構成される回路を出力電圧生成回路15とする。
【0030】
入力端子1には、入力電圧Viが入力される。スイッチ素子であるトランジスタ2は、入力端子1とチョークコイル3との間に接続される。トランジスタ2がオン状態となることにより、入力端子1とチョークコイル3とが導通状態になり、入力電圧Viがチョークコイル3の一端に印加される。
【0031】
チョークコイル3は、入力電圧Viが印加されることにより、L×I/2のエネルギーを蓄積する。Lは、チョークコイル3のインダクタンスであり、Iは、コイルに発生する電流である。フライホールダイオード5は、チョークコイル3に発生した電流を整流するため、チョークコイル3の一端と、グランドとの間に接続されている。抵抗器4は、トランジスタ2が接続されているチョークコイル3の一端とは異なるチョークコイル3の端子に接続されている。抵抗器4は、チョークコイル3に発生した電流を電圧に変換して、抵抗器4の両端に接続されているスイッチ制御部12へ出力する。
【0032】
スイッチ素子であるトランジスタ7は、抵抗器4の端子と、グランド端子との間に接続されている。なお、トランジスタ7は、チョークコイル3が接続されている抵抗器4の一端とは異なる抵抗器4の端子に接続されている。トランジスタ7がオン状態となることにより、抵抗器4及びトランジスタ7を介して、チョークコイル3の一端がグランド電位に設定される。
【0033】
フライホールダイオード6は、チョークコイル3に発生した電流をコンデンサー8へ出力する。抵抗器9及び10は、出力端子11から出力する出力電圧を分圧してスイッチ制御部12へ出力する。クロック生成回路13は、タイミングが異なる降圧用クロックと昇圧用クロックとを生成し、降圧用クロックをスイッチ制御部12へ出力し、昇圧用クロックをセレクター26へ出力する。セレクター26は、昇圧用クロックとLレベル信号(グランド電位)とのいずれかを選択して、昇圧用セット信号を生成し、スイッチ制御部12へ出力する。
【0034】
スイッチ制御部12は、降圧用クロック及び昇圧用セット信号と、抵抗器9及び10により出力電圧が分割された後の電圧と、抵抗器4に発生した電圧とに基づいて生成されるPWM信号をトランジスタ2、トランジスタ7及びデューティー検知回路32へ出力する。PWM信号は、トランジスタ2及びトランジスタ7のオン状態及びオフ状態の切り替えを制御する。デューティー検知回路32は、トランジスタ2に入力されるPWM信号を受け取る。デューティー検知回路32は、PWM信号のデューティーを検知し、検知結果をデューティー検知信号としてセレクター26へ出力する。セレクター26は、昇圧用クロックと、Lレベル信号とを受け取り、デューティー検知回路32の制御によって、入力のどちらか一方をスイッチ制御部12へ出力する。
【0035】
続いて、スイッチ制御部12の詳細な構成例について説明する。スイッチ制御部12は、誤差増幅器20と、SLOPE回路21及び22と、比較器23と、電流検出回路24と、比較器25と、RSラッチ27及び28と、インバータ29〜31と、を備えている。SLOPE回路21、比較器23、RSラッチ27及びインバータ29は、降圧制御回路を構成する。また、SLOPE回路22、比較器25、RSラッチ28、インバータ30及びインバータ31は、昇圧制御回路を構成する。
【0036】
誤差増幅器20は、プラス端子側に基準電圧が入力され、マイナス端子側に抵抗器9及び10により分圧された分圧電圧aが帰還電圧として入力される。本図においては、帰還電圧を記号aにより示している。基準電圧は、出力端子11から出力される目標出力電圧に基づいて定められる。目標出力電圧をVgとすると、基準電圧は、適当な係数αを乗算したαVgと定めることができる。また、出力端子11から出力される電圧をVo、抵抗器9の抵抗値をR9、抵抗器10の抵抗値をR10とすると、帰還電圧は、Vo×R10/(R9+R10)と定めることができる。スイッチ制御部12は、帰還電圧を基準電圧αVgに近づけるように制御を行う。誤差増幅器20は、αVgとVo×R10/(R9+R10)の差分を増幅した電圧値を、SLOPE回路21及び22へ出力する。SLOPE回路21及び22は、誤差増幅器20から出力された電圧を基準として、一定の傾きをもった電圧を発生させる。つまり、SLOPE回路21及び22は、誤差増幅器20から出力された電圧を、時間とともに減少させる。SLOPE回路21は、発生させた電圧を比較器23へ出力し、SLOPE回路22は、発生させた電圧を比較器25へ出力する。
【0037】
比較器23は、SLOPE回路21から出力された電圧と、電流検出回路24から出力された電圧とを比較して、Hレベル信号もしくはLレベル信号をRSラッチ27へ出力する。電流検出回路24から出力された電圧とは、抵抗器4を流れる電流により発生した電圧である。比較器23は、SLOPE回路21から出力される電圧が、電流検出回路24から出力される電圧を下回った場合に、Hレベル信号をRSラッチ27へ出力する。また、比較器23は、SLOPE回路21から出力される電圧が、電流検出回路24から出力される電圧を上回っている場合には、Lレベル信号をRSラッチ27へ出力する。
【0038】
比較器25は、SLOPE回路22から出力された電圧と、電流検出回路24から出力された電圧とを比較して、Hレベル信号もしくはLレベル信号をRSラッチ28へ出力する。比較器25は、SLOPE回路22から出力される電圧が、電流検出回路24から出力される電圧を下回る場合に、Hレベル信号をRSラッチ28へ出力する。また、比較器25は、SLOPE回路22から出力される電圧が、電流検出回路24から出力される電圧を上回る場合には、Lレベル信号をRSラッチ28へ出力する。
【0039】
RSラッチ27は、比較器23から出力されるHレベルもしくはLレベル信号を、RSリセット端子において受け取る。また、RSラッチ27は、クロック生成回路13から出力される降圧用クロックを、セット端子において受け取る。RSラッチ28も同様に、比較器25から出力されるHレベルもしくはLレベル信号を、リセット端子において受け取る。また、RSラッチ28は、セレクター26から出力される昇圧用セット信号を、セット端子において受け取る。RSラッチ27は、セット端子及びリセット端子において受け取った信号を用いてHレベル信号もしくはLレベル信号を生成する。そして、RSラッチ27は、Hレベル信号もしくはLレベル信号をSLOPE回路21及びインバータ29へ出力する。RSラッチ27から出力される信号に基づくSLOPE回路21の動作については、後に詳述する。RSラッチ28も同様に、セット端子及びリセット端子において受け取った信号を用いてHレベル信号もしくはLレベル信号を生成する。そして、RSラッチ28は、Hレベル信号もしくはLレベル信号をSLOPE回路22及びインバータ30へ出力する。
【0040】
インバータ29は、RSラッチ27から受け取ったHレベル信号もしくはLレベル信号を反転して、トランジスタ2へ出力する。インバータ29からトランジスタ2へ出力する信号を降圧PWM信号とし、本図においては、記号bを用いて示している。また、トランジスタ2は、PMOSトランジスタである。そのため、インバータ29から、トランジスタ2に対して、Lレベル信号が出力された場合、トランジスタ2はオン状態となる。インバータ29から、トランジスタ2に対して、Hレベル信号が出力された場合、トランジスタ2はオフ状態となる。
【0041】
インバータ30は、RSラッチ28から受け取ったHレベル信号もしくはLレベル信号を反転して、インバータ31へ出力する。インバータ31は、取得した信号を反転して、トランジスタ7へ出力する。インバータ31からトランジスタ7へ出力する信号を昇圧PWM信号とし、本図においては、記号cを用いて示している。また、トランジスタ7は、NMOSトランジスタである。そのため、インバータ31から、トランジスタ7に対して、Hレベル信号が出力された場合、トランジスタ2はオン状態となる。インバータ31から、トランジスタ7に対して、Lレベル信号が出力された場合、トランジスタ7はオフ状態となる。
【0042】
続いて、図2を用いて本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作について説明する。具体的には、入力電圧Viが、出力電圧Voに近い場合の本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作について説明する。図2中のd及びeは、降圧用クロック及び昇圧用クロックの出力状態を示している。図2中のfは、デューティー検知信号の出力状態を示している。図2中のgは、昇圧用セット信号の出力状態を示している。図2中のhはスイッチ制御部12内における、誤差増幅器20と、SLOPE回路21と、SLOPE回路22と、電流検出回路24と、の出力電圧を示している。図2中のb及びcは、トランジスタ2及びトランジスタ7へ出力される降圧PWM信号及び昇圧PWM信号の出力状態を示している。また、図2では降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが95%になっている場合を示している。
【0043】
デューティー検知回路32は、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが90%より大きい場合にはセレクター26へHレベル信号を出力し、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが90%より小さい場合にはセレクター26へLレベル信号を出力する。図2では降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが95%になっている場合を示しているので、デューティー検知回路32は、セレクター26へHレベル信号を出力する。デューティー検知回路32が降圧PWM信号のロウ幅のデューティーを検知する時の値は、90%に限定されるものではなく、0%より大きい値から100%以下の値の間で選択可能である。
【0044】
セレクター26は、デューティー検知信号がHレベル信号の場合には昇圧用クロックをRSラッチ28へ出力し、デューティー検知信号がLレベル信号の場合にはLレベル信号をRSラッチ28へ出力する。図2ではデューティー検知信号がHレベル信号なので、セレクター26は昇圧用クロックをRSラッチ28へ出力する。
【0045】
クロック生成回路13は、降圧用クロックと昇圧用クロックとを出力する。降圧用クロックと昇圧用クロックとは、任意の位相差及び同一の周波数を有している。
【0046】
降圧用クロックが立ち上がると、RSラッチ27の出力が、Hレベル信号にセットされ、その反転信号である降圧PWM信号が立ち下がる(時刻t1、t5)。SLOPE回路21は、降圧PWM信号がLレベル信号である期間のみ、誤差増幅器20の出力電圧を開始点として、一定の傾きをもって立ち下がる電圧を出力する。SLOPE回路21から出力される電圧が立ち下がっていくと、SLOPE回路21から出力される電圧と電流検出回路24から出力される電圧との電位が逆転する。これにより、比較器23の出力がHレベル信号となり、RSラッチ27がリセットされる。
【0047】
RSラッチ27がリセットされることにより、RSラッチ27からは、Lレベル信号が出力され、インバータ29を介してトランジスタ2へ出力される降圧PWM信号が立ち上がる(時刻t4)。また、SLOPE回路21は、降圧PWM信号が立ち上がるタイミングにおいて、立ち下がり動作を止めて、誤差増幅器20から出力される電圧を出力する。SLOPE回路21は、RSラッチ27から出力される信号がHレベルからLレベルに変化することを検出する。これにより、SLOPE回路21は、降圧PWM信号の立ち上がり又は立ち下がりタイミングを得ることができる。
【0048】
次に、昇圧用セット信号が立ち上がると、RSラッチ28の出力が、Hレベル信号にセットされ、昇圧PWM信号が立ち上がる(時刻t2)。SLOPE回路22は、昇圧PWM信号がHレベル信号である期間のみ、誤差増幅器20の出力電圧を開始点として、一定の傾きをもって立ち下がる電圧を出力する。この時、SLOPE回路22において電圧が立ち下がる傾きは、SLOPE回路21において電圧が立ち下がる傾きに対して急峻になるように設定する。SLOPE回路22から出力される電圧が立ち下がっていくと、SLOPE回路22から出力される電圧と電流検出回路24から出力される電圧との電位が逆転する。これにより、比較器25の出力がHレベル信号となり、RSラッチ28がリセットされる。
【0049】
RSラッチ28がリセットされることにより、RSラッチ28からは、Lレベル信号が出力され、インバータ30及び31を介してトランジスタ7へ出力される昇圧PWM信号が立ち下がる(時刻t3)。また、SLOPE回路22は、昇圧PWM信号が立ち下がるタイミングにおいて、立ち下がり動作を止めて、誤差増幅器20から出力される電圧を出力する。SLOPE回路22は、RSラッチ28から出力される信号がHレベルからLレベルに変化することを検出することにより、昇圧PWM信号が立ち下がるタイミングを得ることができる。
【0050】
また、図2に示したように、降圧用クロックと昇圧用クロックのタイミングをずらす、つまり位相をずらすことにより、降圧PWM信号の立ち下がりタイミングと、昇圧PWM信号の立ち上がりタイミングをずらすことができる。また、降圧PWM信号がLレベル信号である期間内に、昇圧PWM信号をLレベルからHレベル信号へ立ちあげた後にHレベル信号からLレベル信号へ立ち下げる。さらに、昇圧PWM信号がLレベル信号である期間内に、降圧PWM信号をLレベル信号からHレベル信号へ立ちあげた後にHレベル信号からLレベル信号へ立ち下げる。SLOPE回路21及び22において電圧を立ち下げる際の傾き又は降圧用クロックと昇圧用クロックの位相のずれは、上述したPWM信号の動作をするように設定される。
【0051】
以上の動作により、時刻t1と時刻t2との間は、トランジスタ2がオン状態となり、トランジスタ7がオフ状態となっている。これより、チョークコイル3に電流が発生し、エネルギーが蓄積される。フライホールダイオード6へは、入力電圧Viとチョークコイル3に蓄積されたエネルギーによる電圧とを加えた電圧が印加される。また、フライホールダイオード6は、順バイアス状態となり、コンデンサー8へ放電が行われる。また、時刻t2と時刻t3との間は、トランジスタ2がオン状態となり、トランジスタ7もオン状態となっていることから、トランジスタ7及び抵抗器4を介して、チョークコイル3の一端がグランド電位に設定される。そのため、入力電圧Viは、全てチョークコイル3に印加され、チョークコイル3に流れる電流が増加する。よって、チョークコイル3へ蓄積するエネルギーがさらに増加する。この状態で、時刻t3と時刻t4との間に、トランジスタ7がオフ状態となると、チョークコイル3に接続されているフライホールダイオード6は、入力側端子に入力電圧Viとチョークコイル3に蓄積されたエネルギーによる電圧とを加えた電圧が印加される。また、フライホールダイオード6は、順バイアス状態となり、コンデンサー8への放電が行われる。上記の動作は、入力電圧Viを昇圧させる昇圧動作となる。
【0052】
時刻t4と時刻t5との間は、トランジスタ2がオフ状態となることから、チョークコイル3に対する入力電圧Viの印加がなくなる。また、トランジスタ7もオフ状態となる。これより、フライホールダイオード6の入力側端子にはチョークコイル3に蓄積されたエネルギーによる電圧のみ印加され、コンデンサー8への放電が行われる。そのため、時刻t3と時刻t4との間と比較して、入力電圧Viが取り除かれている分、降圧動作を行うこととなる。時刻t5以降は、上記動作を繰り返す。
【0053】
このように、入力電圧Viが、出力電圧Voに近い場合、昇降圧動作を繰り返し、所望の出力電圧Voを得るように制御する。
【0054】
続いて、図3を用いて、本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作について説明する。具体的には、入力電圧Viが、出力電圧Voよりも十分に大きい場合の動作について説明する。図3のbからhに示す波形の説明は図2のbからhと同様である。入力電圧Viが十分に大きい場合、誤差増幅器20と、SLOPE回路21と、比較器23と、電流検出回路24と、RSラッチ27と、インバータ29とから構成される回路のPWM制御によって、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーは90%よりも十分小さい値となるようにする。従って、デューティー検知回路32の出力はLレベル信号となる。セレクター26は、デューティー検知信号がLレベル信号なので、RSラッチ28へLレベル信号を出力する。RSラッチ28は、セット端子にLレベル信号が入力されているのでLレベル信号を出力し、昇圧PWM信号は、インバータ30及び31を介して、Lレベル信号となる。
【0055】
また、SLOPE回路22は、RSラッチ28の出力がHレベルとなる期間がないので、立下り動作をおこなわず、誤差増幅器20の出力電圧と等しい電圧を出力する。比較器25は、SLOPE回路22の出力電圧と、電流検出回路24の出力電圧とが(SLOPE回路22出力電圧)>(電流検出回路24の出力電圧)の関係にあるのでLレベル信号を出力する。
【0056】
降圧用クロックが立ち上がると、RSラッチ27の出力が、Hレベル信号にセットされ、その反転信号である降圧PWM信号が立ち下がる(時刻t1、t3)。SLOPE回路21は、降圧PWM信号がLレベル信号である期間のみ、誤差増幅器20の出力電圧を開始点として、一定の傾きをもって立ち下がる電圧を出力する。SLOPE回路21から出力される電圧が立ち下がっていくと、SLOPE回路21から出力される電圧と電流検出回路24から出力される電圧との電位が逆転する。これにより、比較器23の出力がHレベル信号となり、RSラッチ27がリセットされる。
【0057】
RSラッチ27がリセットされることにより、RSラッチ27からは、Lレベル信号が出力され、インバータ29を介してトランジスタ2へ出力される降圧PWM信号が立ち上がる(時刻t2)。また、SLOPE回路21は、降圧PWM信号が立ち上がるタイミングにおいて、立ち下がり動作を止めて、誤差増幅器20から出力される電圧を出力する。SLOPE回路21は、RSラッチ27から出力される信号がHレベルからLレベルに変化することを検出する。これにより、降圧PWM信号が立ち上がるタイミングを得ることができる。時刻t3以降は、上記動作を繰り返す。
【0058】
以上のように、入力電圧Viが、出力電圧Voよりも十分に大きい場合、デューティー検知回路において、降圧PWM信号のデューティーを検知することにより、降圧動作のみを行うことができる。つまり、昇圧制御回路により、昇圧動作が実行されることはない。
【0059】
続いて図4を用いて、本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作について説明する。具体的には、入力電圧Viが、出力電圧Voよりも十分に小さい場合の動作について説明する。図4のbからhに示す波形の説明は図2のbからhと同様である。
【0060】
降圧用クロックが立ち上がると、RSラッチ27の出力が、Hレベル信号にセットされ、その反転信号である降圧PWM信号が立ち下がる(時刻t1)。SLOPE回路21は、降圧PWM信号がLレベル信号である期間のみ、誤差増幅器20の出力電圧を開始点として、一定の傾きをもって立ち下がる電圧を出力する。
【0061】
ただし、SLOPE回路21の出力電圧は降圧用クロックの1周期以上の時間連続して立ち下がることはなく、次の降圧用クロックが立ち上がるタイミングにおいて、立ち下がり動作を止めて、誤差増幅器20から出力される電圧を出力する。また、それと同時にSLOPE回路21は、次の立ち下がり動作を開始する(時刻t1、4)。
【0062】
時刻t1でRSラッチ27の出力がHレベル信号にセットされた後、比較器23は、SLOPE回路21の出力電圧と、電流検出回路24の出力電圧とが(SLOPE回路21出力電圧)>(電流検出回路24の出力電圧)の関係にあるのでLレベル信号を出力する。
【0063】
したがって、時刻t1以後RSラッチ27はリセットされず、降圧PWM信号はLレベルを維持する。降圧PWM信号がLレベルを維持すると、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーは100%となるので、デューティー検知回路32は、セレクター26へHレベル信号を出力する。セレクター26は、デューティー検知信号がHレベルなので、昇圧用クロックをRSラッチ28へ出力する。
【0064】
次に、昇圧用セット信号が立ち上がると、RSラッチ28の出力が、Hレベル信号にセットされ、昇圧PWM信号が立ち上がる(時刻t3、t6)。SLOPE回路22は、昇圧PWM信号がHレベルである期間のみ立ち下がり動作を行う。つまり、SLOPE回路22は、昇圧PWM信号がHレベル信号である期間のみ、誤差増幅器20の出力電圧を開始点として、一定の傾きをもって立ち下がる電圧を出力する。この時、SLOPE回路22において電圧が立ち下がる傾きは、SLOPE回路21において電圧が立ち下がる傾きに対して急峻になるように設定する。SLOPE回路22から出力される電圧が立ち下がっていくと、SLOPE回路22から出力される電圧と電流検出回路24から出力される電圧との電位が逆転する。これにより、比較器25の出力がHレベル信号となり、RSラッチ28がリセットされる。
【0065】
RSラッチ28がリセットされることにより、RSラッチ28からは、Lレベル信号が出力され、インバータ30及び31を介してトランジスタ7へ出力される昇圧PWM信号が立ち下がる(時刻t2、t5)。また、SLOPE回路22は、昇圧PWM信号が立ち下がるタイミングにおいて、立ち下がり動作を止めて、誤差増幅器20から出力される電圧を出力する。SLOPE回路22は、RSラッチ28から出力される信号がHレベルからLレベルに変化することを検出することにより、昇圧PWM信号が立ち下がるタイミングを得ることができる。時刻t6以降は、時刻t3からt6の動作を繰り返す。
【0066】
以上のように、入力電圧Viが、出力電圧Voよりも十分に小さい場合、デューティー検知回路において、降圧PWM信号のデューティーを検知することにより、昇圧動作のみを行うことができる。つまり、降圧制御回路により、降圧動作が実行されることはない。
【0067】
続いて、図5を用いて本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路の動作について説明する。具体的には、入力電圧Viと出力電圧VoがVi≒Voで負荷電流が変化した場合タイミングチャートである。さらに厳密に言えばVi>VoでかつViとVoの電圧差が小さい時に負荷電流が変化した場合のタイミングチャートである。
【0068】
図5d及びeは、降圧用クロック及び昇圧用クロックの出力状態を示している。図5fは、デューティー検知信号の出力状態を示している。図5gは、昇圧用セット信号の出力状態を示している。図5hはスイッチ制御部12内における、誤差増幅器20と、SLOPE回路21と、SLOPE回路22と、電流検出回路24と、の出力電圧を示している。図5b及びcは、トランジスタ2及びトランジスタ7へ出力される降圧PWM信号及び昇圧PWM信号の出力状態を示している。図5i、j、kはそれぞれ昇降圧回路の入力電圧Vi、昇降圧回路の出力電圧Vo、負荷電流の状態を示している。
【0069】
はじめに、図5の時刻t1からt2の期間について説明する。降圧PWM信号は、ViとVoと負荷電流とが一定であるので、一定のデューティーとなる。また図5において降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが85%であると仮定する。降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが90%より大きい場合はHレベル信号、小さい場合はLレベル信号を出力するように設定されているとすると、デューティー検知回路32は、Lレベル信号を出力する。セレクター26は、デューティー検知信号がLレベルとなるので、Lレベル信号を出力し、昇圧用セット信号はLレベル信号となる。
【0070】
次に時刻t2からt3の期間について説明する。時刻t2において負荷電流は小さい状態から大きい状態へと変動する。負荷電流が変動して大きい状態になると、出力電圧Voが一瞬低下する。また、負荷電流が大きくなることから、チョークコイル3から出力される電流も増加し、電流検出回路24から出力される電圧が増加する。さらに、出力電圧Voが低下したことにより、誤差増幅器20から出力される電圧が増加する。さらに、低下した出力電圧Voを元にもどすために降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが増加する。図5では95%のデューティーに増加すると仮定する。その他、デューティー検知信号と、昇圧用セット信号と、昇圧PWM信号と、Viとは変動しない。
【0071】
次に時刻t3からt4の期間について説明する。デューティー検知回路32は、時刻t3において、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが時刻t2から時刻t3の期間における90%より大きくなったことを受けてHレベルに立ち上がる。セレクター26は、デューティー検知信号がHレベルとなると、昇圧用クロックを出力し、昇圧用セット信号は昇圧用クロックと等しくなる。その他、降圧PWM信号と、Viと、Voと、負荷電流とは変動しない。
【0072】
以上の説明より、本発明の実施の形態1にかかる昇降圧回路は、降圧PWM信号のデューティーを検知することにより、負荷電流の変化を検知でき、デューティー検知回路の検知結果に応じて昇圧用セット信号を断続的に発生することにより、降圧回路と昇圧回路の同時動作を制御することが可能であり、電力効率の低下を改善することができる。つまり、負荷電流の増加により、低下する出力電圧Voを増加させるために、効果的に昇圧動作を実行することができる。また、時刻t1からt2のように、負荷電流の増加がない場合には、昇圧動作を行うことはないため、内部損失の発生を防止することができる。
【0073】
なお、デューティー検知回路が検知する降圧PWM信号のロウ幅のデューティーは0%より大きい値から100%以下の値の間で選択でき、必要な昇降圧特性が得られるように適宜決定すればよい。
【0074】
(実施の形態2)
続いて、図6を用いて本発明の実施の形態2にかかる昇降圧回路の構成例について説明する。昇降圧回路は、出力電圧生成回路15と、スイッチ制御部43と、クロック生成回路13と、セレクター26と、デューティー検知回路32とを備えている。出力電圧生成回路15は、図1における出力電圧生成回路15に対して、抵抗器4を備えていない点において異なる。その他の構成は、図1と同様であるため詳細な説明を省略する。また、クロック生成回路13、セレクター26及びデューティー検知回路32は、図1と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0075】
スイッチ制御部43は、誤差増幅器20と、比較器23及び25と、RSラッチ27及び28と、インバータ29〜31と、ノコギリ波回路41及び42と、を備えている。以下、主に図1におけるスイッチ制御部12との差異点を説明する。図1におけるスイッチ制御部12と同様の構成、動作については詳細な説明を省略する。
【0076】
誤差増幅器20は、aを用いて表わされる帰還電圧と、基準電圧との差分を増幅した電圧値を、比較器23のマイナス端子へ出力する。ノコギリ波回路41は、比較器23のプラス端子へ電圧を出力する。ノコギリ波回路41は、出力電圧を所定の時間中増加させ、さらに所定の時間中減少させて出力する。ノコギリ波回路41は、出力電圧を、ノコギリの刃の形状のような波形に制御して出力する。また、ノコギリ波回路41は、RSラッチ27がHレベル信号を出力している間、ノコギリの刃の形状のような波形を出力する。ノコギリ波回路41は、RSラッチ27がLレベル信号を出力している間、一定の電圧値を有する電圧を出力する。比較器23、RSラッチ27及びインバータ29の構成については、図1と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0077】
また、ノコギリ波回路42も、ノコギリ波回路41と同様に、ノコギリの刃の形状のような波形を出力する。この場合、ノコギリ波回路42は、ノコギリ波回路41よりも、より鋭角な形状を有する波形を出力する。RSラッチ28、インバータ30及びインバータ31の構成は、図1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0078】
続いて、図7を用いて本発明の実施の形態2にかかる昇降圧回路の動作について説明する。具体的には、入力電圧Viと出力電圧VoがVi≒Voで負荷電流が変化した場合タイミングチャートである。さらに厳密に言えばVi>VoでかつViとVoの電圧差が小さい時に負荷電流が変化した場合のタイミングチャートである。
【0079】
図7b〜gは、図5と同様の出力状態を示しているため、詳細な説明を省略する。図7hは、誤差増幅器20、ノコギリ波回路41及びノコギリ波回路42の出力状態を示している。
【0080】
はじめに、図7の時刻t1からt2の期間について説明する。降圧PWM信号は、ViとVoと負荷電流とが一定であるので、一定のデューティーとなる。また図7において降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが85%であると仮定する。降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが90%より大きい場合はHレベル信号、小さい場合はLレベル信号を出力するように設定されているとすると、デューティー検知回路32は、Lレベル信号を出力する。セレクター26は、デューティー検知信号がLレベルとなるので、Lレベル信号を出力し、昇圧用セット信号はLレベル信号となる。
【0081】
次に時刻t2からt3の期間について説明する。時刻t2において負荷電流は小さい状態から大きい状態へと変動する。負荷電流が変動して大きい状態になると、出力電圧Voが一瞬低下する。さらに、出力電圧Voが低下したことにより、誤差増幅器20から出力される電圧が増加する。ここで、図6の昇降圧回路においては、抵抗器4を用いた電流の変動を検出していないため、図1の昇降圧回路よりも、誤差増幅器20の出力電圧が増加するタイミングが遅くなる。さらに、低下した出力電圧Voを元にもどすために降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが増加する。図5では95%のデューティーに増加すると仮定する。その他、デューティー検知信号と、昇圧用セット信号と、昇圧PWM信号と、Viとは変動しない。
【0082】
次に時刻t3からt4の期間について説明する。デューティー検知回路32は、時刻t3において、降圧PWM信号のロウ幅のデューティーが時刻t2から時刻t3の期間における90%より大きくなったことを受けてHレベルに立ち上がる。セレクター26は、デューティー検知信号がHレベルとなると、昇圧用クロックを出力し、昇圧用セット信号は昇圧用クロックと等しくなる。その他、降圧PWM信号と、Viと、Voと、負荷電流とは変動しない。
【0083】
以上の説明より、本発明の実施の形態2にかかる昇降圧回路は、降圧PWM信号のデューティーを検知することにより、負荷電流の変化を検知でき、デューティー検知回路の検知結果に応じて昇圧用セット信号を断続的に発生することにより、降圧回路と昇圧回路の同時動作を制御することが可能であり、電力効率の低下を改善することができる。つまり、負荷電流の増加により、低下する出力電圧Voを増加させるために、効果的に昇圧動作を実行することができる。また、時刻t1からt2のように、負荷電流の増加がない場合には、昇圧動作を行うことはないため、内部損失の発生を防止することができる。
【0084】
また、図1における昇降圧回路と比較して抵抗器4を有さないため、誤差増幅器20の出力電圧が増加するタイミングが遅れるが、抵抗器4を有さない分簡易な回路構成にて昇降圧回路を実現することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 入力端子
2 トランジスタ
3 チョークコイル
4 抵抗器
5 フライホールダイオード
6 フライホールダイオード
7 トランジスタ
8 コンデンサー
9 抵抗器
10 抵抗器
11 出力端子
12 スイッチ制御部
13 クロック生成回路
15 出力電圧生成回路
20 誤差増幅器
21 SLOPE回路
22 SLOPE回路
23 比較器
24 電流検出回路
25 比較器
26 セレクター
27 RSラッチ
28 RSラッチ
29 インバータ
30 インバータ
31 インバータ
32 デューティー検知回路
41 ノコギリ波回路
42 ノコギリ波回路
101 電圧源
102 入力端子
103 接地端子
104 平滑コンデンサー
105 第1スイッチング素子
106 第1整流素子
107 インダクタンス素子
108 第2スイッチング素子
109 第2整流素子
110 平滑コンデンサー
111 出力端子
112 接地端子
113 負荷
115 アンド回路
116 反転回路
117 タイマ
118 PWM比較器
119 三角波発生器
120 誤差増幅器
121 基準電圧源
122 制御回路
123 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子とチョークコイルの一端との間に接続される第1のスイッチ素子と、前記チョークコイルの他端とグランド端子との間に接続される第2のスイッチ素子とを有し、当該第1及び第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることにより、当該入力端子に入力される入力電圧を昇圧又は降圧し、出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、
前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第1のパルス信号を前記第1のスイッチ素子へ出力する第1のスイッチ制御部と、
前記第1のパルス信号のデューティーを検知するデューティー検知回路と、
前記検知されたデューティーに応じて、前記第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御する第2のスイッチ制御部と、を備える昇降圧回路。
【請求項2】
前記第1のパルス信号を生成するために用いられる第1のクロック信号と、前記第2のパルス信号を生成するために用いられ、前記第1のクロック信号と位相が異なる第2のクロック信号とを生成するクロック信号生成部をさらに備える請求項1記載の昇降圧回路。
【請求項3】
前記デューティー検知回路において検知されたデューティーが予め定められた値以上である場合、前記第2のクロック信号を前記第2のスイッチ制御部へ出力し、前記デューティー検知回路において検知されたデューティーが予め定められた値未満である場合、グランド電位を前記第2のスイッチ制御部へ出力するセレクター回路と、をさらに備える、請求項2記載の昇降圧回路。
【請求項4】
前記第1のスイッチ制御部は、
前記第2のスイッチ素子がオフ状態になっている間に、前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることにより入力電圧を降圧させ、
前記第2のスイッチ制御部は、
前記第1のスイッチ素子がオン状態になっている間に、前記第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えることにより入力電圧を昇圧させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の昇降圧回路。
【請求項5】
前記出力電圧に基づいて定められる帰還電圧と目標出力電圧に基づいて定められる第1の基準電圧との差分を増幅し出力する誤差増幅器と、
前記チョークコイルから出力される電流の変化に基づいて定められる第2の基準電圧を生成する電流検出回路と、をさらに備え、
前記第1及び第2のスイッチ制御部は、
前記誤差増幅器及び前記電流検出回路の出力結果に基づいて前記第1及び第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態との切り替えを行う、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の昇降圧回路。
【請求項6】
入力端子とチョークコイルの一端との間に接続される第1のスイッチ素子と、前記チョークコイルの他端とグランド端子との間に接続される第2のスイッチ素子とを有し、前記第1のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第1のパルス信号を前記第1のスイッチ素子へ出力し、
前記第1のパルス信号のデューティーを検知し、
前記検知されたデューティーに応じて、前記第2のスイッチ素子のオン状態とオフ状態とを切り替えるために用いられる第2のパルス信号の前記第2のスイッチ素子への出力を制御する、昇降圧回路制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−110153(P2012−110153A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257951(P2010−257951)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】