説明

昇降機構およびそれを備えた水周り家具

【課題】 本発明は昇降機構であって、本発明の課題は、使用者に極度な負担を掛けずに手動で昇降できる昇降機構を提供することである。
【解決手段】 キャビネット上に配置されるカウンタに設けられた開口部から進退可能に略垂直方向に昇降する可動体を有する昇降機構であって、
前記可動体が、一方に重りを吊り下げたワイヤと固定滑車を通して吊り下げられたことを特徴とする昇降機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンや洗面化粧台のカウンタ開口部から昇降する昇降機構に係り、特に水や油の飛散を防止するためのスクリーンの昇降機構に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
対面型キッチンのコンロ前には通常スクリーンが立てられている。このスクリーンは調理中に跳ねる油が対面側に飛散するのを防止する役割を果たす。ただし調理以外の時は調理し終えた料理の運搬、美観などの観点からスクリーンが出ていると邪魔であり、対面式キッチンの利点を失ってしまう。そこでスクリーンをカウンタ開口部から昇降させる方法が特開2008−246169や特開平10−205782や特許第3461867号で開示されている。
【0003】
特開2008−246169ではスクリーンがカウンター下に格納され、電動モータによって昇降する構造が開示されているが、リフォームでは新たに電源を確保する必要がある、カウンター下に駆動源や電源が必要であるなど設置に制約が出る。また電動モータのような駆動源や電動モータを制御するための装置も必要であり、高価な昇降機構となってしまう。
【0004】
また特開平10−205782ではスクリーンを使用者が手で持ち上げる構造が開示されいるが、スクリーンとしてガラス材を用いた場合、その重量は400mm×800mm×t4mmで約3.5kgとなり、その重量を手で持ち上げるのは使用者にかなりの負担を強いることになる。さらにコンロで火を使っている場合は危険を伴うことがある。
【0005】
また特許第3461867号にはスクリーンの昇降を軽減するバネによる負荷軽減装置が開示されているが、一定荷重を期待できるコンストンバネであったとしても、バネによる付勢力のばらつきがあり安定した使用感を達成できない。ここでばらつきとは、バネ自身の個体差、経年変化によるばらつきが考えられる。またバネは独特のキシミ音や起動時に重いことも使用感を悪くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−246169号公報(第7頁、第3図)
【特許文献2】特開平10−205782号公報(第3頁、第1図)
【特許文献3】特許第3461867号公報(第2頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、使用者に極度な負担をかけずに手動で昇降できる昇降機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、キャビネット上に配置されるカウンタに設けられた開口部から進退可能に略垂直方向に昇降する可動体を有する昇降機構であって、前記可動体が、一方に重りを吊り下げたワイヤと固定滑車を通して吊り下げられたことを特徴とする昇降機構である。
このような構成とすることで、可動体の重量を重りで相殺させることができ、使用者が昇降する際に力をあまり必要とせず、負担が少ない。また重りの重量は経年変化が無く、操作時の音も無く、起動時もスムーズであり、使用者の操作感は良好である。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、前記可動体をカウンタ下に格納した状態を保持できる格納保持装置と、該格納保持装置を解除する解除装置とを備え、前記重りが前記固定滑車を通じて前記可動体を引き上げる力が、前記可動体が前記固定滑車を通じて前記重りを引き上げる力より大きいことを特徴とする請求項1に記載の昇降機構とすることにより、格納保持装置を解除するだけで可動体が自動で上昇し、可動体を持ち上げるという負担がない。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、前記重りの重量が、前記可動体の重量よりも大きいことを特徴とする請求項1または2の何れか一項に記載の昇降機構が提供される。
これにより、簡便な構造により確実に前記可動体を上昇させることが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の発明によれば、前記可動体が上昇により頂点に達する手前に、衝撃緩和機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の昇降機構が提供される。
可動体が重量差により自動で上昇する場合、上限高さまで上昇して止まるときに衝撃がある。これを嫌がり使用者が最後に手で押さえて減速させることが予想されるが、請求項4の発明のように衝撃緩和機構を設ければ自動で減速するため、使用者の負担が少ない。
【0012】
また、請求項5記載の発明によれば、前記ワイヤを複数本備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の昇降機構とすることにより、可動体と重りをバランスよく連結することができ、昇降時に可動体や重りが傾いたりすることを防ぎスムーズに昇降することができ安定的に可動する。
【0013】
また、請求項6記載の発明によれば、前記重りは重量を調整するために取付けまたは取外しできる調整用重りを具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の昇降機構とすることにより、可動体の重量がばらつく場合には調整用重りによってバランスを調整できる。また、スクリーンの上昇速さや格納時の押し込み操作力を調整したり、可動体に収納物を収納できるなど重量が一定でない場合は、調整用重りにて重量のバランスを調整することができ、安定した動きを確保することができる。
【0014】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の昇降機構を備えたことを特長とする水周り家具とすることにより、例えばシステムキッチンのスクリーン、洗面化粧台の水跳ね防止パネルなどをカウンター下に収納することができ、美観を損なうことがない。
【0015】
ここで可動体とはシステムキッチンのスクリーンや洗面化粧台の水跳ね防止パネルや鏡など重量が一定のものとする。ここでいう重量が一定とは、歯ブラシ収納などの軽量物を収納する昇降棚など、収納物によってごくわずかな重量の変化があるものを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用者に極力負担をかけることなく、さらにはスムーズかつ安定的にスクリーンのような可動体を昇降させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るシステムキッチン10の前方斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシステムキッチン10の後方斜視図である。
【図3】スクリーン50が上昇した時の昇降機構70の内部をリビング側から見た斜視図である。
【図4】スクリーン50が格納された時の昇降機構70の内部をキャビネット側から見た斜視図である。
【図5】スクリーン50が上昇した時の開口部32周りの詳細断面図である。
【図6】スクリーン50が格納された時の開口部32周りの詳細断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る洗面化粧台110の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の第一の実施形態について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態のシステムキッチン10は、キャビネット11と、キャビネット11の上に配置されるカウンタ30と、カウンタ30の上に配置される調理器具であるコンロ12と、同じくカウンタ30の上に配置されるシンク13とを備えている。カウンタ30は、キャビネット11の背面化粧板14よりも後方に延出するカウンタ延出部31を備えている。さらにコンロ12およびシンク13の後方のカウンタ延出部31にはスクリーン50が立設している。またカウンタ延出部31には、スクリーン50をカウンタ30の下へ格納するためにスクリーン50が進退する開口部32が設けられ、カウンタ延出部31の下方側、且つキャビネット11の背面化粧板14の外側には、スクリーン50の格納スペースを有し、且つスクリーン50の昇降手段を搭載した昇降機構70が配置されている。なおスクリーン50は昇降機構70の一部である。
本実施形態では昇降機構70をキャビネット11の背面化粧板14外側に設けた例を示したが、カウンタ延出部31を設けずに昇降機構70をキャビネット11に内蔵してもかまわない。
【0019】
続いて図3および図4に示すように、昇降機構70は、構成部材を取付けるベースケース80と、これを覆う図示しないベースケース蓋と、スクリーン50と、スクリーン50の昇降をガイドする左右のメインレール71と、スクリーン50とメインレール71を連結する連結材72と、連結材72に取り付けられ、ワイヤを固定できるワイヤ用フック79と、そのワイヤ用フック79に一端を固定したワイヤ73と、ワイヤ73の他端に固定された重り74と、重り74の昇降をガイドする重りレール75と、ワイヤ73を巻き掛けた滑車76と、スクリーン50を格納状態に保持する格納保持手段としてスクリーン50に固定されたメス側ラッチ77aと、同じく格納保持手段としてベースケース80に固定されたオス側ラッチ77bと、連結材72に固定され上昇による頂点に達する手前で上昇速度を減速さて衝撃を緩和するピストン式のダンパー78と、ベースケース80の一部でダンパー78の先端が当接するダンパー受部81が備えられている。
【0020】
スクリーン50は、強化ガラス51と、略コの字形状で強化ガラス51の端面を保護する部材として、強化ガラス51の外周上端を保護するスクリーン上枠52と、左右両端を保護するスクリーン横枠53で構成され、スクリーン50は、強化ガラス51の左右下方にて連結材72と固定されている。
ラッチ77は、図4に示すようにオス側ラッチ77bのツメがメス側ラッチ77aの口に挿入されてある程度押込まれるとメス側ラッチ77aの口の中にあるフックが突出してオス側ラッチ77bのツメに引っかかり、抜けなくなる。またこの状態で再度押込むとメス側ラッチ77aのフックが後退してオス側ラッチ77bのツメが解放されることで抜ける構造となっている。ラッチ77のこの機構により、スクリーン50は格納状態で保持される。
【0021】
ここで可動体Aとしては、スクリーン50、ワイヤ用フック79、連結材72、メス側ラッチ77a、ダンパー78であり、可動体Aの重量は4kgであるとする。一方重り74の重量は可動体Aよりやや重くし、例えばその重量を4.15kgとし、重量差を150gに設定する。よって可動体Aは常に上昇する方向に力が作用している。なお、重量差150gの理由としては、後述するように下降時に使用者がスクリーンを押し込む力を小さくしたいこと、およびメインレール71や重りレール75や滑車76の摩擦抵抗に打ち勝ち可動体Aが上昇すること、および可動体Aの上昇速度が使用者に不快感を与えないこと、が挙げられる。つまり、重り74と可動体Aの重量差が大き過ぎると、下降時に使用者がスクリーンを押し込むのに大きな力が必要となる、またスクリーン50の上昇速度が速く使用者に恐怖感を与える。逆に荷重差が小さ過ぎると、スクリーン50がメインレール71と重りレール75と滑車76の摩擦抵抗に負けて上昇しない、またスクリーン50の上昇速度が遅く使用者に不快感を与える。
【0022】
図5は、スクリーン50が上昇した時の開口部32周りの詳細断面図である。図5に示すように、開口部32には、スクリーン50の昇降軌道の案内とスクリーン50上昇時のガタつきの防止、および開口部32からの昇降機構70内部への水の浸入を防止するため、開口部32の開口縁を覆うように支持部材33が備えつけられる。支持部材33は、カウンタ30の開口部32との当接面に接着剤によって接着され、カウンタ30上面より上方に3mm程度の段差ができるような構造とし、さらに支持部材33とカウンタ30とが当接する部分にはコーキング35の処理をすることによりカウンタ30上にこぼれた液体が昇降機構70内部に浸入しづらい構成となっている。
また、図6は、スクリーン50が格納された時の開口部32周りの詳細断面図である。図6に示すようにスクリーン50の格納状態では、スクリーン上枠52の上端が支持部材33の上面と略面一の高さに設定される。
また図5に示すようにカウンタ30の裏側にはカウンタ補強材34が開口部32を確保して取付けられている。またベースケース80のカウンタ補強材34との当接面は上方に折り曲げられ開口部32の開口木口面に当接するように形成されている。これにより開口部32に対するスクリーン50の設置位置を決めることができる。
【0023】
次に、システムキッチン10の使用シーンとスクリーン50の昇降動作の説明を通じて、本発明の作用と効果について説明する。
システムキッチン10のコンロ12やシンク13を使って調理作業を行う際、使用者は図4または図6に示す格納状態のスクリーン50を上昇させるために、手の指でスクリーン上枠52を押込むと、スクリーン50に固定されているメス側ラッチ77aの口にオス側ラッチ77bが押込まれ、ラッチが解除される。ラッチ解除に必要な押込み量は2mm程度である。ラッチ77が解除され使用者が手を離すと、可動体A側より重い重り74はその重量差でゆっくりと重りレール75に沿って下降し始め、滑車76に巻き掛けたワイヤ73を介して接続されている連結材72およびスクリーン50はメインレール71に沿って、開口部32および支持部材33よりカウンタ延出部31の上方に突出する。その後スクリーン50は徐々に速度を増して上昇し、頂点に達する手前でダンパー78の先端がダンパー受部81に当接することで減速を開始し、ダンパー78の先端が完全に押込まれるとスクリーン50は図3または図5の状態で停止する。こうして必要に応じてスクリーン50を上昇させることができる。
【0024】
調理が終了し図3または図5の状態のスクリーン50を格納する場合は、使用者はスクリーン上枠52を下方に押込むと、スクリーン50を含む可動体Aはメインレール71に沿って下降し、滑車76に巻き掛けたワイヤ73を介して連結している重り74は重りレール75に沿って上昇する。使用者の押込み力は可動体Aと重り74の重量差の150g程度であり、手を添える程度でスクリーン50を下降開始することができる。このまま使用者が押し続けて、図4または図6に示すようにスクリーン上枠52が支持部材33と略面一となると、スクリーン50に固定されたメス側ラッチ77aの口にベースケース80に固定したオス側ラッチ77bのツメが挿入され、さらに2mm程度押込むとメス側ラッチ77aのフックが突出しオス側ラッチ77bのツメに引っかかる。その後手を離すと再びスクリーン50は2mm程度上昇し、スクリーン上枠52と支持部材33の上面が略面一となったまま、保持される。
【0025】
この格納状態でカウンタ30に液体をこぼした場合は、支持部材33とカウンタ30の3mmの段差で液体が昇降機構70側に進入するのを防ぐ。
【0026】
また図4または図6に示すようにスクリーン50の格納状態において熱湯を入れた鍋が支持部材33の上に置かれていた場合には、使用者が鍋に気づかずスクリーン上枠52を押込んで上昇を開始しても、鍋と熱湯の重量が重り74と可動体Aの重量差150gより重ければ、スクリーン50は上昇することがない。よって鍋を不用意にひっくり返して熱湯がこぼれるという危険を回避することができる。
【0027】
本発明によれば、上昇したスクリーン50によってコンロ12使用時の油の飛散を防ぐことができ、またシンク13からの水跳ねを防止することができる。また、コンロ12やシンク13が片付いていない時、コンロ12やシンク13をリビング側から隠すことができる。また、コンロ12からの臭い、煙、熱などの拡散をスクリーン50が防ぐため、換気扇の補修力アップも期待できる。さらに、スクリーン50をカウンタ30下に格納した際には、カウンタ30上にはスクリーン上枠52の上端面と、支持部材33の突出部として3mmが存在するのみであり、システムキッチン10の作業における邪魔にはならない。更に、対面キッチンにおいては、スクリーン50を格納可能とすることで、本来のメリットであるオープンな空間を犠牲にすることなくシステムキッチン10の美観を保つことができる。
さらにその操作においては、上昇時はラッチ77aと77bを解除するだけで自動で上昇し、しかも上昇による頂点に達するの手前で減速して衝撃を緩和するため、使用者の負担はほとんど無く操作時の不快感も無い。下降時は使用者が約150gの荷重をスクリーン50に加えるだけであり、ほぼ使用者が手を添えるだけで下降するため、使用者の負担はほとんどない。
また重り74の重量は経年変化することも無く半永久的にこの操作感を維持できる。
またスクリーン50上に鍋などが戴置され誤って上昇操作した場合可動体Aと重り74の重量差である150g程度以上であればスクリーン50は上昇することがないため、鍋がひっくり返って熱湯がこぼれるといった危険を回避することができる。
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の第二の実施形態について説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る洗面化粧台110の前方斜視図である。
【0029】
本実施形態の洗面化粧台110は、キャビネット11と、キャビネット11の上に配置されるカウンタ30と、カウンタ30と一体成型されたボウル113とを備えている。カウンタ30には、ボウル113の両脇にスクリーン50が立設している。またカウンタ30には、スクリーン50が昇降するための開口部32が設けられ、且つキャビネット11は、スクリーン50の格納スペースを有し、且つスクリーン50の昇降手段を搭載した図示しない昇降機構70が配置されている。なおスクリーン50は昇降機構の一部である。
なお、本実施形態においても第一の実施形態と同様にスクリーン50が収納される昇降機構70をキャビネット11の外部に設けてもよい。この場合、昇降機構70はキャビネット11の側部に設けられることになる。
【0030】
昇降機構70の構成については、第一の実施形態と同様であるためここでは省略する。なお、スクリーン50を含む可動体Bと重りとの重量差は約150gとする。
【0031】
次に、洗面化粧台110の使用シーンとスクリーン50の昇降動作の説明を通じて、本発明の作用と効果について説明する。
洗面化粧台110で洗顔や洗髪を行う際、使用者は格納状態のスクリーン50を上昇させるために、手の指でスクリーン50上部を押し込みラッチを解除させる。使用者がスクリーン50上部から手を離すと、重りとスクリーン50の重量差で、重りはゆっくりと下降し、滑車に巻き掛けたワイヤを介して重りと接続されているスクリーン50は開口部32よりカウンタ30の上方に突出する。その後スクリーン50は徐々に速度を増して上昇し、頂点に達する手前でダンパー機構によって減速しながら停止する。こうして必要に応じてスクリーン50を上昇させ、洗顔、洗髪を行う。
【0032】
洗顔または洗髪中は、ボウル113の外側に水が飛び散ることが多いが、この飛散する水は、上昇したスクリーン50にあたるため、洗面化粧台110より外側の壁または床が水で濡れるのを防ぐ。
【0033】
洗顔または洗髪が終了しスクリーン50を格納する場合は、使用者はスクリーン50を下方に押込むことで、スクリーン50は下降し、ワイヤを介して連結している重りは上昇する。使用者の押込み力はスクリーン50を含む可動体Bと重りの重量差の150g程度であり、手を添える程度でスクリーン50を下降開始することができる。このまま使用者が押し続けて、スクリーン50上端がカウンター30の開口部32と略面一となると、スクリーン50はラッチに引っかかり、スクリーン50上端と開口部32が略面一となったまま、保持される。
【0034】
本発明によれば、スクリーン50によって水が壁や床に飛散するのを防ぎ、かつスクリーン50をカウンタ30下に格納することで、カウンタ30上にはスクリーン50上端面が略カウンタ30と面一で見えるだけであり、洗面化粧台110を通常使用する際に邪魔にはならない。更に、カウンター30が広い洗面化粧台110においては、スクリーン50を格納可能とすることで、本来のメリットであるオープンな空間を犠牲にすることなく洗面化粧台しいては洗面空間の美観を保つことができる。
さらにその操作においては、上昇時は格納保持手段を解除するだけで自動で上昇し、しかも上昇による頂点に達する手前で減速して衝撃を緩和するため、使用者の負担はほとんど無く操作時の不快感も無い。下降時は使用者が約150gの荷重をスクリーン50に加えるだけであり、ほぼ使用者が手を添えるだけで下降するため、使用者の負担はほとんどない。
また重りの重量は経年変化することも無く半永久的にこの操作感を維持できる。
【0035】
上記、二つの実施形態では、重りの重量を可動体より重くしたが、特にこれに限定するものではなく、重量が同じもしくは可動体側をわずかに重くしてもよい。この場合スクリーンを上昇させるためには、使用者は意図的にスクリーンを手で引き上げる必要があり、スクリーンの上に熱湯の入った鍋や、ガラス製のコップなどが戴置されていても、不用意にスクリーンを上昇させ、戴置物をひっくり返すことがない。なお、この場合はスクリーンを持ち上げる力は、可動体と重りの重量差であり、わずかな力で持ち上げることができる。また、可動体側を重くした場合はラッチを設ける場所を変更し、可動体を上昇位置で保持するための上昇保持手段として使用するとよい。
またダンパーは上昇時に機能するようにしているが、下降時に機能するようにしてもよいし、その両方であってもよい。下降時の衝撃を和らげるので操作感がより向上する。
また重り74は重量調整できる構造とするとさらによい。例えば追加用の重りをビスなどで固定できる構造が良い。こうすることでスクリーンに使う強化ガラスの重量誤差を吸収させることができ、現場でより安定した動作を確保できる。またメインレールや重りレールや滑車のわずかな摩擦抵抗の誤差も吸収させることができる。
【0036】
また、上記、二つの実施形態では可動体の重量を4kg、重りの重量を4.15kg、その重量差を150gとしたが、可動体および重りの重量および可動体と重りの重量差は実施の形態により、自由に変更することが出来る。メインレールや重りレールや滑車の摩擦抵抗、使用者が快適に使える上昇または下降時間の設定などを考慮し適正値に設定すればよい。
【0037】
また、上記、二つの実施形態では固定された固定滑車のみを使用した構造とし、可動体と重りの重量と移動量がほぼ同じであるが、この固定滑車とは別に動滑車を利用してもよい。動滑車を利用することで、例えば、重りの重量を軽する、または可動体のストロークを増やすことなどが可能となる。
また、上記、二つの実施形態では、重りと可動体を吊り下げるものとしてワイヤを使用したが、特にこれに限定するものではなく、ベルトやチェーンなど滑車に通して使用できるものであればよい。
【0038】
また、上記、二つの実施形態では可動体をスクリーンとしたが、昇降時に可動体側の重量が比較的一定のものであればこの昇降機構を流用できる。例えば洗面化粧台の鏡、カウンタから昇降する包丁差しや歯ブラシ入れなど収納機能を有する棚が考えられる。
また、その他の点についても本発明の域を脱さない範囲において、自由に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 システムキッチン
11 キャビネット
12 コンロ
13 シンク
14 背面化粧板
30 カウンタ
31 カウンタ延出部
32 開口部
33 支持部材
34 カウンタ補強材
35 コーキング
50 スクリーン
51 強化ガラス
52 スクリーン上枠
53 スクリーン横枠
70 昇降機構
71 メインレール
72 連結材
73 ワイヤ
74 重り
75 重りレール
76 滑車
77a メス側ラッチ
77b オス側ラッチ
78 ダンパー
79 ワイヤ用フック
80 ベースケース
81 ダンパー受部
82 突起プレート
110 洗面化粧台
113 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット上に配置されるカウンタに設けられた開口部から進退可能に略垂直方向に昇降する可動体を有する昇降機構であって、
前記可動体が、一方に重りを吊り下げたワイヤと固定滑車を通して吊り下げられたことを特徴とする昇降機構。
【請求項2】
前記可動体をカウンタ下に格納した状態を保持できる格納保持装置と、該格納保持装置を解除する解除装置とを備え、
前記重りが前記固定滑車を通じて前記可動体を引き上げる力が、前記可動体が前記固定滑車を通じて前記重りを引き上げる力より大きいことを特徴とする請求項1に記載の昇降機構。
【請求項3】
前記重りの重量が、前記可動体の重量よりも大きいことを特徴とする請求項1または2の何れか一項に記載の昇降機構。
【請求項4】
前記可動体が上昇により頂点に達する手前に、衝撃緩和機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の昇降機構。
【請求項5】
前記ワイヤを複数本備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の昇降機構。
【請求項6】
前記重りは重量を調整するために取付けまたは取外しできる調整用重りを具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の昇降機構。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の昇降機構を備えたことを特長とする水周り家具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−172438(P2010−172438A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17516(P2009−17516)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】