説明

易剥離層を備えた包装容器

【課題】用済み後は簡単に表層部を剥離してベースの紙層とフィルムとを分離できてリサイクルが容易な環境改善に役立つ包装容器を提供する。
【解決手段】一面に非有機溶剤系の希釈された接着剤層13を介してプラスチックフィルム12層を剥離可能に積層された紙製ベース(板紙11)の複合シート10を用い、そのプラスチックフィルム12層が成形時の内面を含む表面となるようにして、所要形状に組立形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器の主として内面に非通気性あるいは耐水性の皮膜層を備えて、用済み後にその皮膜層を基材シートから剥離して分別処理できるようにされた、易剥離層を備えた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を使用目的に合わせて保存あるいは保持して需要者の手元に供給できるように機能させる包装容器については、既に種々の対策が施されて提供されている。例えば加工食品の包装容器として、弁当などの容器に用いられている板紙製の容器では、内容物に多くの水分や調味液体などを含んだものが詰め合わされて包装される。そのために、容器の内面には耐水性のコート層が設けられて、取扱われる期間に外部に内容物から浸出する液体や水分が漏れ出さないようにされた容器が使用されている。あるいは水分などを含んだ食品は、外装容器と別に内装されるプラスチック製のトレーに小分けして体裁よく包装できる容器が採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、保冷あるいは保温の機能を備える包装容器としては、容器を形成するシート材料に、発泡樹脂のシートと板紙とを張り合わせてなる複合シートを使用し、さらにこのシート材料で二重構造にされた容器などがある。そのほか、一般的に防水性や耐水性が要求される内容物を容器に直接収めて包装されるものとして、その主に一面に樹脂コート層が積層された包装材を用いた容器が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−137263号公報
【特許文献2】特開平9−300561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来知られている容器の内面に樹脂皮膜層を備えるものでは、その使用目的からして包装容器としての機能は十分達成できるものが得られている。しかしながら、その樹脂皮膜層は容器を作成するベースシートである板紙(ダンボールシートを含む)とその樹脂皮膜層とが一体化された材料でもって形成されている。そのために、使用済みとなって廃棄処分される容器は、複合シートのままで処分されることになり、リサイクルで資源を再活用するにはいささか問題がある。つまり、回収されるとしても樹脂皮膜が一体となって付着した紙であるために、そのまま再生紙原料として溶解するには多くの手数を要し、再生に要するコストが著しくアップするということから、十分な回収が行われないという問題点がある。
【0006】
また、前述のプラスチック製トレーなどと併用する容器にすれば、用済み後の処理に際して紙製部分とプラスチック部分とに分離して回収することが可能であるが、この場合はトレーを別途に作成する必要があることと、このトレーを紙製の容器内にうまく収めるための構造が外装容器に求められ、どうしてもコストアップになるという問題点がある。そのほかに、保冷・保温機能を有する容器の場合には、特殊な複合シートを必要とするためにそのベース材料が高価につくとともに、リサイクルするには未だ多くの難点があるという問題もある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、表層が剥離可能にされた樹脂フイルムでもって覆った複合のシートを用いて容器を構成し、用済み後は簡単に表層部を剥離してベースの紙層とフイルムとの分離ができて、リサイクルが容易な構成とされる易剥離層を備えた包装容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による易剥離層を備えた包装容器は、
紙製ベースシートの一面に非有機溶剤系の希釈された接着剤層を介してプラスチックフィルム層が剥離可能に積層された複合シートを用い、そのプラスチックフィルム層が成形時の内面を含む表面となるようにして、所要形状に組立形成されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
前記発明において、前記複合シートは、ベースシートの表面に印刷が施され、その表面に前記接着剤層を介して透明のプラスチックフィルム層が剥離可能に積層されているのがよい(第2発明)。
【0010】
前記第1発明または第2発明において、前記複合シートのベースシートは、板紙であるのがよい(第3発明)。また、そのベースシートとしてはダンボールシートであってもよい(第4発明)。
【0011】
また、前記発明において、前記複合シートの表面に剥離可能に積層されるプラスチックフィルム層は、生分解性のフィルムであるのが好ましい(第5発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製作される包装容器は、その一面に剥離容易なプラスチックフィルム層を備える紙製の複合シートが用いられ、組立形成される容器に所要の物品を収納して商品として供給するときには、容器を形成するシートの一面がプラスチックフィルム層で覆われているので、例えば収納する物品が水分を保有するものである場合でも、その水分が外部に浸出して容器が損傷するのを防止できる。そして、その内容物である商品を容器から取出して消費後に、包装容器を廃棄処分する際には、容器の一面に付着されているプラスチックフィルム層が剥離可能になっているので、そのプラスチックフィルム層を剥離するとプラスチックとベースシートである紙部分とが容易に分別できる。したがって、従来のようにそのまま廃棄して焼却処分に廻されることなく分別して廃棄でき、リサイクルを容易にすることが可能になり、資源の回収を促進させるとともに、環境改善に役立つという効果を奏するのである。
【0013】
また、第2発明の構成を採用することにより、剥離可能なプラスチックフィルムの積層をベースシートに対する印刷後に行うようにすることで、例えば加工された生食品の包装容器として使用する場合でも、その食品に対して印刷インク面が直接接しないで衛生的に取扱うことができる。また、第5発明のように、この剥離可能なフィルムに生分解性のプラスチック材を使用すれば、容器の廃棄に際して剥離分別したフィルムを回収して焼却することなく自然界に戻すことが可能になり、ベースシートのリサイクルとともに、環境破壊の改善に役立てられるという効果を奏するのである。そのほか、容器の組立構造に工夫を加えることで、環境にやさしい非通気性の容器を得ることが可能である。
【0014】
また、第3発明あるいは第4発明によれば、容器形成の前記複合シートにおいて、そのベースシートに板紙を使用することで、例えば水分を含む物品の包装容器として使用するのに耐水性が確保できるという利点がある。また、ベースシートとして例えば段山の小さいE段と呼ばれるダンボールシートなどを使用すると、環境にやさしくて強度が高く内容物の耐水機能の高い包装容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明による易剥離層を備える包装容器の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1には本発明による易剥離層を備える包装容器の一実施形態の包装容器を一部切欠き断面を付して表わす斜視図が示されている。図2には包装容器を形成するのに用いられる複合シートの拡大断面図が、図3には易剥離層のフィルムを剥離する態様を表わす図が、それぞれ示されている。
【0017】
本実施形態の包装容器1は、弁当や惣菜類など水分を多く含んだ食品を収容するのに用いられるものについて説明する。
【0018】
この包装容器1(蓋部については説明を省略している)は、内容物に対する耐水性を備えたもので、本体2の周囲を二重構造に形成されている。この容器1はシート材料を打抜いて得られたブランクを折目線に沿って折り曲げ組立てることにより本体2(身)が形成される。
【0019】
この容器の本体2を形成する材料のシート10は、図2に示されるように、板紙11の表面(一面)にプラスチックフィルム12が剥離可能に積層されたものを用いる。この板紙11とプラスチックフィルム12とにより複合されたシート(以下、複合シート10という)は、容器1の強度が得られる所要厚さの板紙11をベースシートとされ、その表面に所要の印刷が施されており、その印刷面上に非有機溶剤系の接着剤を希釈してなる接着剤層13が塗布形成され、その上面に透明なプラスチックフィルム12を一体的に貼着して形成されている。
【0020】
前記複合シート10は、ベースシート(板紙11)に対して施された印刷面(印刷インク層14)が好ましくは包装される食品に対して無害な成分のインクを用いて印刷される。そして、プラスチックフィルム12としては、バリアー性が高くて食品安全性のある材料のものが選択される。例えばポリブロピレンやポリエチレン樹脂などのフィルムが用いられ、透明性を高める上で厚さが可能な範囲で薄いものであるのが望ましい。そして、接着剤(接着剤層13)には非有機溶剤系の接着剤を希釈したものが使用される。この際の接着剤の希釈については、剥離性が容易に確保できるようにするのが好ましい。
【0021】
容器の本体2を形成するには、前述の複合シート10を用いて、周知の打抜き加工によって所要形状に打抜くと同時に折り曲げ線部分を印刻して容器のブランクを作成し、このブランクを折目線に沿って折り曲げて容器本体2を形成する。なお、この実施形態では、容器の本体2の側壁部によって組立時に形成されるコーナ部分3に相互に連結される折込みフラップ4を設けて、このコーナ部分3に外部と連通するような隙間が形成されないで組立てられる構造とするのがよい。
【0022】
このようにして組立形成される容器の本体2では、その容器1の内面部5が前面的に積層されたプラスチック層(プラスチックフィルム12)で覆われているので、水分を含んだ物品(この実施形態では弁当の白飯や惣菜など)からにじみ出る水分が不透水のフィルム層によって遮断され、壁面や底面を形成するベースシート(板紙11)を通じて外部に水分が滲み出ることなく保持される。また、熱の伝達もベースシートのみに較べて低減されるので、壁体の構造を二重構造とすることでさらに断熱性を高めて効果的に保温あるいは保冷することができる。
【0023】
また、容器1の内面部5は、前述のようにベースシートがプラスチックフィルム12層で覆われているので、容器1内に収容された物品が粘性のあるもので付着性が高くても、滲み込まないので取外しが容易である。
【0024】
本実施形態の容器1では、内容物を消費して容器1が不要になったならば、通常はそのまま嵩低くして廃棄処分されることになるが、容器1の内面部5(容器の表面)に形成されているプラスチックフィルム12層が剥離可能に付着されているので、そのフィルム層の端部(例えば容器形成時に生じるシートの切断部)を引き起こすと、図3に例示するように、接着剤層13の接着力が弱い状態にされているから、プラスチックフィルム12層が接着部分で剥離する。したがって、そのまま外力を加えてそのプラスチックフィルム12を引き剥がすとベースシート(板紙11)の面からそのプラスチックフィルム12を分離することができる。
【0025】
こうして容器1は、その内面部5ならびにそれに連なる表面部に付着していたプラスチックフィルム12層が剥離されると、その容器の本体2を構成している複合シート10が紙製のベースシート(板紙11)と剥離したプラスチックフィルム12とに分離されるので、それらを個々に分別して廃棄処分することができる。こうすれば、ほとんど汚れのないベースシートの紙は、そのまま整理して資源ごみとして回収することができる。また、汚れの付着するプラスチックフィルム12は、それを纏めて焼却ごみとして回収する。その結果、主要部分である紙ごみはリサイクルして再活用でき、汚れの激しいプラスチックフィルム12の部分は、本来ごく薄いフィルムであるから嵩低くなり、ゴミ回収に際しての容量を少なくでき、回収作業を容易にする。
【0026】
以上は板紙11をベースシートとした複合シート10による包装容器について説明したが、その複合シートとしては、板紙以外に段山の小さいE段と呼ばれるダンボールシートを使用して、その片面に印刷を施して、あるいは印刷することなく前記要領で薄いプラスチックフィルムを剥離可能に積層したものを用いることができる。このような複合シートを用いた場合、剛性の高い包装容器として水分を多く含んだ物品の包装容器に適用でき、使用済み後における紙資源のリサイクルを容易にすることができる。
【0027】
また、複合シートに用いるプラスチックフィルムには、生分解性樹脂(例えばポリ乳酸系やセルローズ系)を用いるようにすれば、容器使用後における廃棄処分に際して、プラスチックフィルムを剥離分別後は、これを自然力により分解させて消去することができ、環境汚染を防止するのに役立て得る。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、剥離可能なプラスチックフィルム層を備える紙製複合シートを用いて包装容器を製作することにより、包装物品の含有水分が包装容器外に浸出すること、あるいはその逆の外部から水分などのの侵入を防止でき、蓋体との組合わせによって簡単な構造で密閉容器を作成することができる。しかも使用済み後における容器の始末に際して資源の回収が容易に行える機能を備えた包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による易剥離層を備える包装容器の一実施形態の包装容器を一部切欠き断面を付して表わす斜視図
【図2】包装容器を形成するのに用いられる複合シートの拡大断面図
【図3】易剥離層のフィルムを剥離する態様を表わす図
【符号の説明】
【0030】
1 容器
2 容器の本体
5 容器の内面部
10 複合シート
11 板紙(ベースシート)
12 プラスチックフィルム
13 接着剤層
14 印刷インク層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製ベースシートの一面に非有機溶剤系の希釈された接着剤層を介してプラスチックフィルム層が剥離可能に積層された複合シートを用い、そのプラスチックフィルム層が成形時の内面を含む表面となるようにして、所要形状に組立形成されていることを特徴とする易剥離層を備えた包装容器。
【請求項2】
前記複合シートは、ベースシートの表面に印刷が施され、その表面に前記接着剤層を介して透明のプラスチックフィルム層が剥離可能に積層されている請求項1に記載の易剥離層を備えた包装容器。
【請求項3】
前記複合シートのベースシートは、板紙である請求項1または2に記載の易剥離層を備えた包装容器。
【請求項4】
前記複合シートのベースシートは、ダンボールシートである請求項1または2に記載の易剥離層を備えた包装容器。
【請求項5】
前記複合シートの表面に剥離可能に積層されるプラスチックフィルム層は、生分解性のフィルムである請求項1に記載の易剥離層を備えた包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225022(P2006−225022A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44253(P2005−44253)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(599148570)タマヤ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】