説明

易引裂き性包装材及び易開封性包装袋

【課題】強度に優れ、かつ、機械の流れ方向(MD)に直線引裂き性を有するために開封性に優れた、易引裂き性包装材と易開封性包装袋を提供する。
【解決手段】シーラント層を含む少なくとも3層からなるラミネートフィルム22,24,25において、最外層が最大配向角30°以上の二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ、シーラント層に隣接するフィルム層が直線引裂きズレ量10mm以下の直線引裂き性を有する延伸フィルムであって、この延伸フィルムとシーラント層の間のラミネート強力が2.5N/cm以上である易引裂き性包装材。この易引裂き性包装材のシーラント層同士を、易引裂き方向が袋の引裂き方向となるように熱融着させて製袋してなる易開封性包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度に優れ、かつ機械の流れ方向(MD)に直線引裂き性を有するために開封性に優れた、易引裂き性包装材及び易開封性包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品、雑貨等の包装には、二軸延伸されたプラスチックフィルム層と熱融着が可能なシーラント層とをラミネートした2層以上からなる包装袋が使用されている。このような包装袋には、通常ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の二軸延伸フィルムに、ポリオレフィン系樹脂等のシーラント層をラミネートし、シーラント層同士を熱融着することにより製袋して使用されているが、特にバリアー性や強度、またさらなる機能を付与するために、3層以上の構成でラミネートされ製袋して使用される場合も多い。例えば、ボイル、レトルト食品等では、ポリエステル系二軸延伸フィルム(A)、ポリアミド系二軸延伸フィルム(B)、アルミ箔(C)、シーラント層(D)を構成成分として、A/B/C/D、A/C/B/D、A/C/D、A/B/D、A/A/D等の包材構成で製袋品が作られ、使用されている。
【0003】
ところで、近年包装袋にもユニバーサルデザインの考え方が取り入れられ、消費者に対し開封が容易な包装袋への要望が強くなってきた。つまり、包装袋に対する特性として、強度と開封時の易引裂き性の一見相反すると思われる2つの特性を兼備していることが要求される。従来、易開封性を付与する手段としてVノッチやUノッチを付けたり、包装袋表面やシール部分への微細な傷加工がなされてきた。
【0004】
しかしながら、このような従来の方法では、引裂けたとしても必要以上に大きな力を要したり、直線的に引裂けないというトラブルがしばしば発生する。特に引裂き性は延伸フィルムの配向方向に大きく影響される。一般にテンター法により生産される二軸延伸フィルムの場合、ボーイング現象によりその配向方向は一様ではない。つまり、配向方向はフィルムの中央部では機械の流れ方向に直交する方向(TD)にほぼ重なり、フィルムの両端に向かって次第にTDからずれてくる。このため、ミルロールの端部のフィルム、つまり、配向角の大きい延伸フィルムを含むラミネート品を半折して作製した製袋品は開封時に表裏が大きくずれる現象が発現することがある。このことにより開封時に内容物が飛散したりして衣類を汚したり、特にレトルト食品では加熱調理されている場合、内容物が熱くなっているため火傷の原因となるトラブルに繋がることがあった。
【0005】
このため、延伸フィルムを構成するマトリックスに相分離構造を呈する成分を添加することによって、延伸フィルムの配向方向によらず直線的に引裂くことができる素材が実用化されている(特許文献1、2)。
【0006】
一方で、シーラント層を含む3層からなる包材構成においては、この直線引裂き性を製袋品に付与するために、中間の延伸フィルム層の配向を考慮した包材構成が検討されている(特許文献3)。しかしながら、最外層の延伸フィルムの配向によっては、依然表裏ズレが発生することがあり、安定した効果は得られない。また、シーラント層を含む少なくとも3層からなる包材構成においては、シーラントに隣接する位置に直線的に引裂ける素材を配した検討がなされている(特許文献4)。しかし、シーラント層との界面のラミネート強力が十分でない場合、開封時にシーラント層が伸びながら引裂ける現象が発生し、引裂き抵抗感が大きくなる問題があった。
【0007】
従って、結果的にシーラント層を含む3層からなる包材構成においては、安定した直線引裂き性を得るために、中間層の延伸フィルムだけでなく、最外層の延伸フィルムの配向までを考慮する必要があった。しかしながら、この直線引裂き性を付与したいがために、延伸フィルムの配向角を規定して選択的に使用するのは、コスト、供給面で大きな問題がある。
【特許文献1】特開平7−113015号公報
【特許文献2】特開平10−168293号公報
【特許文献3】特開2002−127339号公報
【特許文献4】特許第2845685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

本発明は、上記の問題を解決し、強度に優れ、かつ、機械の流れ方向(MD)に直線引裂き性を有するために開封性に優れた、易引裂き性包装材及び易開封性包装袋を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、3層以上で構成されたラミネートフィルムにおいて、最外層に配向角の大きい延伸フィルムを使用した場合でも、直線引裂き性を有する素材を使用し、その位置を特定し、かつラミネート強力を検討することで、前記課題を解決できることを見出して本発明に到達した。 すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
【0010】
(1)シーラント層を含む少なくとも3層からなるラミネートフィルムにおいて、最外層が最大配向角30°以上の二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ、シーラント層に隣接するフィルム層が直線引裂きズレ量10mm以下の直線引裂き性を有する延伸フィルムであって、シーラント層とこれに隣接する直線引裂き性を有する延伸フィルムとのラミネート強力が2.5N/cm以上であることを特徴とする易引裂き性包装材。
(2)直線引裂き性を有する延伸フィルムの引裂き方向が二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向に直交するようにラミネートされてなることを特徴とする上記(1)記載の易引裂き性包装材。
(3)直線引裂き性を有する延伸フィルムにおいて、シーラント側とラミネートする面の濡れ張力が48mN/m以上であって、かつ、この面とシーラント層とをエステル系接着剤を使用してドライラミネートすることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の易引裂き性包装材。
(4)上記(1)から(2)に記載された易引裂き性包装材のシーラント層同士を、易引裂き方向が袋の引裂き方向となるように熱融着させて製袋してなることを特徴とする易開封性包装袋。
【発明の効果】
【0011】

本発明の易引裂き性包装材を用いて、易引裂き方向が袋の引裂き方向となるようにシーラント層同士を熱融着させて製袋することにより、強度に優れ、安定した直線引裂き性と開封性を有する易開封性包装袋が得られ、この包装袋は、食品、医薬品、化粧品、雑貨等の包装用として好適に使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の易引裂き性包装材は、シーラント層を含む少なくとも3層で構成されており、最外層が最大配向角30°以上の二軸延伸ポリエステルフィルムであって、最内層であるシーラント層に隣接するフィルム層が直線引裂き性を有しているラミネートフィルムである。つまり、表基材となる最大配向角30°以上の二軸延伸ポリエステルフィルムと、少なくとも一層の中間材とシーラント層よりなる、少なくとも3層で構成されており、シーラント層に隣接するフィルム層(以下、単にフィルムXという場合がある。)が直線引裂き性を有しているラミネートフィルムである。
【0014】
次に、本発明の易引裂き性包装材を構成するそれぞれの層について説明する。まず、最外層の二軸延伸ポリエステルフィルムは、配向角の最大値が30°以上のものを使用する。配向角がこの値より小さい方が直線引裂き性には有利であるが、本発明は、延伸フィルムの中央部から外れた部分、つまり配向角の大きな延伸フィルムを用いても安定した直線引裂き性が得られる易引裂き性包装材の提供を目的としている。また、本発明において、配向角とは、フィルム中での高分子鎖の主配向軸(配向方向)とTDとのなす角を示している。配向角は白色光を光源として、日本光学社製の偏光顕微鏡を用い、その最消光値から主配向軸とフィルム軸方向との狭角を求め、配向角(°)とした。なお、主配向軸はTDを0°、MDを90°とした。
【0015】
上記二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは特に制限されるものではないが、通常1〜100μm、好ましくは5〜25μmである。
【0016】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、公知の方法によって製造されたものであればよい。二軸延伸方法としては、例えばテンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法、チューブラー法等が挙げられる。
【0017】
二軸延伸ポリエステルフィルムには、片面又は両面に、ガスや水蒸気に対するバリアー性、密着強度特性等の付与を目的として、各種機能層が形成されていてもよい。例えば、バリアー性付与を目的として、蒸着加工によって酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの酸化物層が形成されていてもよいし、コーティング加工によってポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等の樹脂層が形成されていてもよい。
【0018】
次に、本発明の易引裂き性包装材を構成する直線引裂き性を有するフィルム、すなわち直線引裂き性フィルムXは、直線的に容易に引裂かれ得る性能をMDに有するフィルムである。このような性能を有するフィルムは公知のものであってよく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられるが、好ましくは、ポリエステルフィルムやポリアミドフィルムである。
【0019】
上記のフィルムXは、直線引裂きズレ量が10mm以下の直線引裂き性を有することが必要である。引裂きズレ量が10mmより大きいと、本発明の目的とする直線引裂き性能が得られない。
【0020】
まず、フィルムXがポリエステルフィルムの場合について説明する。このような直線引裂き性を有するポリエステルフィルムには変性型や分散型があるが、特に好ましくは前記特許文献2に記載されている変性ポリエステルフィルムである。
【0021】
変性ポリエステルフィルムとは、例えば重量平均分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)単位を5〜20質量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(質量比)の割合で混合した原料を用いて製造されたフィルムである。
【0022】
また、上記で使用するPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られたものであり、さらに他の成分を共重合して得られたものであってもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸等のオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物が挙げられる。
【0023】
次に、変性PBTは、PBTの重合工程においてPTMGを添加し、重縮合して得られるものであってもよいし、PBTとPTMGを押出機で溶融混練することによって得られるものであってもよい。
【0024】
また、変性ポリエステルフィルムの原料樹脂には、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート等の他のポリマーを混合することができる。
【0025】
変性ポリエステルフィルムを製造するには、まず、例えば、変性PBTとPETを混合したものを押出機に投入し、加熱溶融した後、Tダイのダイオリフィスからシート状に押し出し、未延伸シートを製造する。Tダイのダイオリフィスから押し出されたシートは、静電印加キャスト法等により冷却ドラムに密着して巻きつけて冷却し、次に、温度90〜140℃で、縦横にそれぞれ3.0〜5.0倍の倍率で延伸し、さらに温度210〜245℃で熱処理して変性ポリエステルフィルムを得る。二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で二軸延伸して変性ポリエステルフィルムを製造してもよい。
【0026】
前記のような変性ポリエステルフィルムとしては、市販のユニチカ(株)社製ポリエステルフィルム「エンブレットPC」が好適に使用される。
【0027】
次に、フィルムXがポリアミドフィルムの場合について記述する。本発明におけるポリアミドとは、脂肪族ポリアミドとポリメタキシリレンアジパミド(MXD)とが混合されたものが挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン12等が挙げられるが、特に好ましくはナイロン6である。これらは、ホモポリマーの他、それぞれの単位を90モル%程度以上含有するコポリマーでも用いることもできる。
【0029】
本発明におけるポリアミドフィルムは、前記脂肪族ポリアミドをマトリックスとして、MXDを、脂肪族ポリアミド/MXD=55/45〜95/5(質量比)の割合で混合した原料を用いて製造されたフィルムである。
【0030】
ポリアミドフィルムを製造するには、まず、前記のような脂肪族ポリアミドとMXDとの混合物を押出機に投入し、通常240〜300 ℃で加熱溶融した後、Tダイから押し出し、冷却ドラムに密着させて急冷し、未延伸シートを得る。続いて、得られた未延伸シートを温度150〜220℃で、縦横2.8倍以上の倍率で延伸し、さらに温度190〜220℃で熱処理してポリアミドフィルムを得る。
【0031】
上記のようにして得られるフィルムXの厚みは特に制限されるものではないが、通常1〜100μm、好ましくは5〜25μmである。
【0032】
ポリアミドフィルムの二軸延伸方法としては、テンター同時二軸延伸法、ロールとテンターによる逐次二軸延伸法のいずれでもよい。また、チューブラー法で二軸延伸して製造することもできる。
【0033】
上記のようなポリアミドフィルムとしては、市販のユニチカ(株)社製ポリアミドフィルム「エンブレムNC」が好適に使用される。
【0034】
また、フィルムXには片面又は両面に、ガスや水蒸気に対するバリアー性、密着強度特性等の付与を目的として、各種機能層が形成されていてもよい。例えば、バリアー性付与を目的として、蒸着加工によって酸化アルミニウムや酸化ケイ素等の酸化物層が形成されていてもよいし、コーティング加工によってポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール等の樹脂層が形成されていてもよい。
【0035】
フィルムX、つまり直線引裂き性を有するフィルムはシーラントに隣接することが必要である。例えば、A/B/Dなるラミネートフィルムから作られる製袋品の場合、この製袋品に易開封性を付与するためには、表基材であるA又はシーラントに隣接する中間材Bのいずれかに直線引裂き性を有する素材を選択する方法が考えられるが、Aに直線引裂き性を有する素材を使用した場合、Bのフィルム配向によって引裂き性が阻害されてしまう。詳しくは、フィルムは分子配向の方向に引裂きやすい性質があるが、これを製袋した場合、配向がクロスすることとなり、開封の際、右利きの人が引裂く場合と、左利きの人が引裂く場合では、直線性が異なると共に、引裂き抵抗感が増し、安定した開封性が得られない。経験的に3層以上の構成では、理由は不明であるが、シーラント層の隣のフィルム層がラミネートフィルム全体の引裂き性を支配することが知られている。このことから、シーラント層に隣接する延伸フィルムの配向を規定することで、直線引裂き性を付与する手法が採用されている。
【0036】
ところが、前記手法の場合、シーラント層を除く2層が延伸フィルムであるため、引裂き性はこれら2枚の延伸フィルムの配向方向に大きく影響される。例えば、最外層の延伸フィルムの配向方向が、中間層の延伸フィルムの配向方向とクロスする場合、これらが打ち消し合うことにより、製袋品にした場合の引裂き性に及ぼす影響は小さくなる。逆に、最外層と中間層の延伸フィルムの配向方向がクロスしない場合、その影響は大きくなり、引裂き性を著しく阻害する要因となる。つまり、最外層の延伸フィルムの配向の程度によっては、安定した直線引裂き性が得られない。したがって、直線引裂き性を有する延伸フィルムを使用し、これをラミネートフィルムの引裂き性に最も支配的となるシーラント層の隣に配することが必要となる。このことによって、最外層のフィルムの配向の程度によらず、つまり配向角が大きい場合であっても、安定した直線引裂き性が得られるのである。
【0037】
本発明におけるフィルムXとシーラント層の間のラミネート強力は2.5N/cm以上が必要であり、特に3N/cm以上が好ましい。ラミネート強力が2.5N/cmよりも小さいと、引裂き時に加わる応力によって、引裂いた部分のフィルムエッジでフィルムXとシーラント層との間が剥離すると共に、シーラントが伸びながら引裂ける現象が発生し、引裂き抵抗感が大きくなる。
【0038】
最後に、本発明の易引裂き性包装材を構成するシーラント層は、熱融着できる樹脂であればいずれでもよい。そのようなシーラント層材料としては、従来から公知の熱融着性樹脂が使用可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー等が挙げられる。また、シーラント層の厚みは15〜80μm程度が一般的に好適に使用できる。シーラント層が薄くなると、包材本来の密封機能が低下しやすく、一方、厚くなると、軟包装材用途に使用し難くなる場合がある。
【0039】
本発明の易引裂き性包装材は、シーラント層を含む少なくとも前記3層をラミネートすることにより得ることができる。この場合、延伸フィルムXはMDに直線引裂き性を有するため、その引裂き方向が二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向に直交するようにラミネートする必要がある。
【0040】
各フィルム間のラミネート方法としては、一般的な方法であるドライラミネート法、押出しラミネート法及びこれらの組合せ等の方法が採用されるが、これに限定されるものではない。ただし、特に引裂き性に影響を及ぼすフィルムXとシーラント層とのラミネートには、密着性の観点からフィルムXのシーラントとラミネートする面の濡れ張力が48mN/m以上であることが好ましく、かつ、エステル系接着剤を使用したドライラミネート法を採用することが好ましい。ラミネートする際には、それぞれのフィルム層の片面又は両面にコロナ処理をして使用することが好ましい。
【0041】
フィルムXの片面に、ガスや水蒸気に対するバリアー性等の付与を目的として、各種機能層が形成されている場合には、密着力の観点から、フィルムXの機能層が形成されていない面をシーラント層とラミネートするのが好ましい。
【0042】
このようにして得られる本発明の易引裂き性包装材は、包装材を構成するフィルムXの直線引裂き性によって、容易にかつ安定して直線的に引裂くことができる。
【0043】
本発明の易引裂き性包装材は、シーラント層同士を内側にして、包装材の引裂き方向が製袋品の引裂き方向となるように熱融着して製袋され、次いで、製袋品のシール部を裂く部分にノッチや傷等の加工が施される。ノッチの形態や傷加工の方法は、一般的に採用されているものであれば、特に限定されるものではない。
【0044】
このようにして得られる本発明の易開封性包装袋は、引裂きズレをほとんど起こすことなく容易に、かつ安定して直線的に開封することができるので、食品、医薬品、化粧品、雑貨等の包装袋として好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料と、各物性の評価、測定方法は、次の通りである。
(1)配向角
偏光顕微鏡(ニコンOPTIPHOT−POL)を用い、20℃×65%RHにて配向角を測定した。配向角の測定は、二軸延伸ポリエステルフィルムのTDに対し、両端部(いずれも端部から10mmの箇所)と中央部の3箇所で行い、その最大値を求めた。
(2)フィルムXの直線引裂き性
フィルムXをMD25cm×TD4cmとなるように短冊状にサンプリングし、TDの中央部分(両側から2cmの部分)にMDに沿って5cmの切り込みを入れる。この切り込みの片側をロードセルのチャックに把持し、引っ張り速度2.5m/分にて15cm引裂いた時のTDのズレ量を測定した。
(3)包装袋の直線引裂き性
(包装袋の作製)
ラミネートフィルムのMDが包装袋の引裂き方向となるように、縦150mm×横200mmの包装袋を作製した。詳しくは、図2に示すように、縦150mm×横800mmのラミネートフィルム22をシーラント層が対面するようにTDの中央で二つに折り、さらにTDの中央線23で切って、折り目を有する連結ラミネートフィルム24と折り目を有しない一対のラミネートフィルム25を得た。これらのラミネートフィルムの三方を熱融着して、一方に袋口を設けた2つの包装袋(シール幅10mm)を得た。ラミネートフィルム24から得られた包装袋をα、ラミネートフィルム25から得られた包装袋をβとする。
(測定方法)
図1(a)に示すように、包装袋におけるTDのシール部に5mmの切り込み11を30mm間隔で入れ、MDに左手前c、右手前dにそれぞれ5回づつ引裂きパネラーテストを行った。次いで図1(b)に示すように引裂き開始点よりMDに100mmの位置で、上のフィルムと下のフィルムとの間のズレ量を測定し、右手前、左手前での平均値を求めた。その平均値の大きい方の数値を直線引裂き性の指標とした。評価基準は以下の通りである。
【0046】
○:ズレ量平均値が10mm以下である。
【0047】
×:ズレ量平均値が10mmを超えている。
(4)易引裂き性
図1(a)に示すように、包装袋におけるTDのシール部に5mmの切り込み11を30mm間隔で入れ、MDに左手前と右手前にそれぞれ3回づつ引裂ってパネラーテストを行い、次の2段階で評価した。
【0048】
○:スムーズに引裂ける。
【0049】
×:スムーズに引裂くことができず、引裂いたフィルム端部においてシーラント層と隣接するフィルム層との間で剥離し、シーラントが伸びた状態である。
(5)ラミネート強力
20℃×65%RHの環境下、ラミネートフィルムをMD100mm×TD15mmの短冊状に切り出し、フィルムXとシーラント層との間をピンセットを用いてMDに30mm剥離する。50N測定用のロードセルとサンプルチャックを取り付けた引張試験機(島津製作所社製AG−100E)を用い、剥離したそれぞれの端部を固定した後、測定者自身で試験片が「T型」に保たれるようにしながら、引張速度300mm/分にてMDに50mm剥離し、その際の平均値を読み取る。測定は各サンプル5回づつ行い、その平均値をラミネート強力とする。
(6)使用したフィルム等
ポリエステルフィルム(一般タイプ):厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、エンブレットPET−12)。
【0050】
ポリアミドフィルム(一般タイプ):厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製、エンブレムON−15)。
【0051】
直線引裂き性ポリエステルフィルム:厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製、エンブレットPC−12)。エンブレットPC−12はMDに直線引裂き性を有している。
【0052】
直線引裂き性ポリアミドフィルム:厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製、エンブレムNC−15)。エンブレムNC−15はMDに直線引裂き性を有している。
【0053】
ポリプロピレンフィルム:厚さ50μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、トーセロCP RXC−18)。
【0054】
ポリエチレンフィルム:厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ社製、トーセロT.U.X FCS)。
【0055】
アルミニウム箔:厚さ7μmのアルミニウム箔(昭和アルミニウム社製、アルミ箔 1N30)。
(7)使用したフィルムの配向角
PET1:厚さ12μm、幅820mmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET−12)は、その最大値が38°であった。
PET2:厚さ12μm、幅820mmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET−12)は、その最大値が10°であった。
ON1:厚さ15μm、幅840mmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製エンブレムON−15)は、その最大値が32°であった。
ON2:厚さ15μm、幅840mmの二軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ社製エンブレムON−15)は、その最大値が20°であった。
(8)使用した接着剤/硬化剤
A525/A52(三井武田ケミカル社製)
実施例1
PET1にA525/A52を3.0g/mとなるように塗布して、エンブレムNC−15を引裂き方向がPET1の幅方向に直交するようにドライラミネートにより貼り付け、続いて同じ接着剤を同様に前記エンブレムNC−15に塗布し、これにトーセロCP RXC−18をドライラミネートにより貼り付けた後、エージングを40℃で3日間行って、ラミネートフィルム(易引裂き性包装材)を得た。
【0056】
得られた易引裂き性包装材から前記のようにして易開封性包装袋を作成し、評価を行なった。
実施例2
エンブレムNC−15をエンブレットPC−12に、トーセロCP RXC−18をトーセロT.U.X FCSにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例3
PET1とエンブレムNC−15の間に、ドライラミネートによってアルミ箔1N30をラミネートし、接着剤の塗布量を3.0g/mから4.0g/mに、エージング3日間を7日間に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
比較例1
エンブレムNC−15をON2に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
比較例2
エンブレットPC−12をPET2に変更した以外は、実施例2と同様に行った。
比較例3
PET1とエンブレットPC−12の貼り付け順番を入れ換えた以外は、実施例2と同様に行った。
比較例4
アルミ箔 1N30とエンブレムNC−15の貼り付け順番を入れ換えた以外は、実施例3と同様に行った。
比較例5
A525/A52の塗布量を1.5g/mに変え、エージング時間を1日としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
比較例6
PET1をPET2に変更した以外は、比較例3と同様に行った。
比較例7
PET1をエンブレットPC−12に、ON2をON1に変更した以外は、比較例1と同様に行った。
参考例1
PET1をPET2に変更した以外は、実施例2と同様に行った。
【0057】
実施例1〜3、比較例1〜4及び参考例1〜3で得られた包装袋等の評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜3で得られた易引裂き性包装材は、機械の流れ方向(MD)に直線引裂き性を有するため、この包装材で作成した包装袋は、開封性に優れたものであった。
【0059】
一方、直線引裂き性を有する延伸フィルムを使用しない比較例1及び2、直線引裂き性を有する延伸フィルムが最外層を形成する比較例3、直線引裂き性を有する延伸フィルムがシーラント層に隣接しない比較例4,6,7、およびシーラント層とこれに隣接する直線引裂き性を有する延伸フィルムとのラミネート強力が2.5N/cm未満の比較例5で得られた包装袋は、いずれも直線引裂き性が劣るものであった。また、直線引裂き性を有する延伸フィルムとシーラント層の間のラミネート強力が低い場合には、引裂き抵抗が大きいものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0060】

【図1】(a)及び(b)は、包装袋の評価方法を説明するための概略説明図である。
【図2】本発明の易引裂き性包装材を用いて包装袋を製造する手順を説明するための概略流れ図である。
【符号の説明】
【0061】

11 切り込み
22,24,25 ラミネートフィルム
23 TDの中央線
α、β 包装袋


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層を含む少なくとも3層からなるラミネートフィルムにおいて、最外層が最大配向角30°以上の二軸延伸ポリエステルフィルムであり、かつ、シーラント層に隣接するフィルム層が直線引裂きズレ量10mm以下の直線引裂き性を有する延伸フィルムであって、シーラント層とこれに隣接する直線引裂き性を有する延伸フィルムとのラミネート強力が2.5N/cm以上であることを特徴とする易引裂き性包装材。
【請求項2】
直線引裂き性を有する延伸フィルムの引裂き方向が二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向に直交するようにラミネートされてなることを特徴とする請求項1記載の易引裂き性包装材。
【請求項3】
直線引裂き性を有する延伸フィルムにおいて、シーラント側とラミネートする面の濡れ張力が48mN/m以上であって、かつ、この面とシーラント層とをエステル系接着剤を使用してドライラミネートすることを特徴とする請求項1又は2に記載の易引裂き性包装材。
【請求項4】
請求項1から3に記載された易引裂き性包装材のシーラント層同士を、易引裂き方向が袋の引裂き方向となるように熱融着させて製袋してなることを特徴とする易開封性包装袋。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−34845(P2009−34845A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199117(P2007−199117)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】