説明

易開封食品包装袋用積層フィルムおよび易開封食品包装袋

【課題】 異物の侵入が防止でき、易開封性があり、結束具等により何度も包装袋の開閉できるという利便性を維持しながら、薄膜化に伴う剛性、溶断強度・衝撃強度の劣化がなく、包装材の減量化が可能な易開封食品包装袋用積層フィルムと、この積層フィルムからなる易開封食品包装袋を提供すること。
【解決手段】 プロピレン系樹脂を含有してなる表面層と、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂とを必須とし、50質量%以上が前記プロピレン系樹脂であり、5質量%以上が前記エチレン系樹脂であって、それらの合計が80質量%以上になるように配合してなる樹脂混合物からなる中間層と、1−ブテンとプロピレンとを必須とする1−ブテン系共重合体とメタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須とする共重合体を含有してなるヒートシール層を有する易開封食品包装袋用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物の侵入を防止できる易開封シール部を設けた食パン・菓子パン等の食品包装に好適であって、薄膜化に伴う強度等の劣化がない易開封食品包装袋用積層フィルムと、この積層フィルムからなる易開封食品包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食パン等の包装においては、消費者の安全意識の向上と、異物混入・改ざん防止対策の観点から、包装後に開口部をシールし密閉してから移送され販売されるようになってきている。このシール部分は、ユニバーサルデザインの観点から易開封性であることが求められており、更に内容物が複数個である場合や、単品包装であっても大きな食品を包装したものにおいては、開封時に破袋が起こらず、再封が可能な結束具(プラスチック板、テープ、紐など)を用いることによって、何度も開閉可能であることも要求されている。
【0003】
この様な要求に応えるため、本発明者らは既に易開封性の食品包装用多層フィルム及びこれから得られる易開封食品包装袋を提供している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、環境保護の観点から1996年に容器包装リサイクル法が施行されて以来、食品包装材の減量化が求められており、特に食品メーカーでは使用する包装材の数量に応じた再商品化委託料の支払いも要求され、包装材の薄膜化は緊急の課題となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−213065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情を鑑み、本発明の課題は、異物の侵入が防止でき、易開封性があり、結束具等により何度も包装袋の開閉できるという利便性を維持しながら、薄膜化に伴う剛性、溶断強度・衝撃強度の劣化がなく、包装材の減量化が可能な易開封食品包装袋用積層フィルムと、この積層フィルムからなる易開封食品包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系樹脂を含有してなる表面層と、プロピレン系樹脂とエチレン系樹脂とを特定割合で含有してなる中間層と、1−ブテン系共重合体とメタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレン−エチレン共重合体とを含有してなるヒートシール層と、を有する積層フィルムは、その全厚を従来品よりも薄く設計しても、溶断強度に優れ、容易にヒートシール可能であって且つ易開封性の開口部を有する食品包装用袋が得られ、更に食品用袋としての実用的な剛性と衝撃強度とを有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、プロピレン系樹脂を含有してなる表面層(A)と、プロピレン系樹脂(b1)とエチレン系樹脂(b2)とを必須成分とし、層を形成する樹脂成分の50質量%以上が前記プロピレン系樹脂(b1)であり、且つ同じく5質量%以上が前記エチレン系樹脂(b2)であって、(b1)と(b2)との合計が80質量%以上になるように配合してなる樹脂混合物からなる中間層(B)と、1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体(c1)と、メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)とを含有してなるヒートシール層(C)と、を有することを特徴とする易開封食品包装袋用積層フィルム、及び該積層フィルムのヒートシール層(B)を内側として溶融接着して製袋されたことを特徴とする、開口部を有する易開封食品包装袋を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の易開封食品包装袋用積層フィルムは、従来同じ用途で使用されていた積層フィルムよりも全厚を薄くした設計においても、ヒートシール樹脂層を内側として、このヒートシール層が溶融する温度以上でヒートシールや溶断シールすると、強固に接着し、従来と同様の強度を有する食品包装用袋が得られるうえに、得られた袋に食品を充填し、より低い温度、例えば100℃以下で開口部をヒートシールすることにより、ヒートシール温度が多少バラついてもシール強度の安定した易開封シールとなり、容易に食品が密封された易開封包装袋とすることができる。得られた易開封食品包装袋は、易開封シールがなされているため異物の侵入を防止でき、しかも、易開封シール部分で容易に開封でき、又、積層フィルムの中間層としてプロピレン系樹脂とエチレン系樹脂とを特定割合で配合した樹脂を用いていることから剛性・衝撃強度の劣化がなく、開封時等に袋が破損しないため、プラスチック板、テープ、紐等の結束具による再封が可能であり、更に袋上部を結束具で結束することにより従来のパン包装と同様の結束包装とすることができる。
【0010】
従って、本発明の易開封食品包装袋用積層フィルムを用いて得られる易開封食品包装袋は、パン、スナック、青果物等のツイストバッグ包装や横ピロー包装用としてその薄膜化を実現できるものであり、実用的価値は多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の積層フィルムは、プロピレン系樹脂を含有してなる表面層(A)と、プロピレン系樹脂(b1)とエチレン系樹脂(b2)とを必須成分とし、層を形成する樹脂成分の50質量%以上が前記プロピレン系樹脂(b1)であり、且つ同じく5質量%以上が前記エチレン系樹脂(b2)であって、(b1)と(b2)との合計が80質量%以上になるように配合してなる樹脂混合物からなる中間層(B)と、1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体(c1)と、メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)とを含有してなるヒートシール層(C)とを有するものである。
【0012】
表面層(A)用の樹脂として用いるプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体;プロピレンとエチレンとからなるランダム共重合体、プロピレンとエチレンとからなるブロック共重合体、プロピレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体等のプロピレン系共重合体;などのようなプロピレン系樹脂を挙げることができ、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。表面層(A)は前記プロピレン系樹脂を主成分としてなり、好ましくは75質量%以上含有してなるものであり、必要に応じて、エチレン−1−ブテン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン等の他の熱可塑性樹脂や各種の添加剤を混合して用いても良い。
【0013】
中間層(B)用の樹脂は、プロピレン系樹脂(b1)と、エチレン系樹脂(b2)とを混合してなり、必要に応じてその他の熱可塑性樹脂や各種の添加剤を混合して用いても良いが、中間層(B)を形成する樹脂全体に対してその50質量%以上がプロピレン系樹脂(b1)であり、同じくその5質量%以上がエチレン系樹脂(b2)であって、(b1)と(b2)との合計が樹脂全体の80質量%以上になるように用いることを必須とするものであり、70質量%以上がプロピレン系樹脂(b1)であって且つ10質量%以上がエチレン系樹脂(b2)であることが、積層フィルムの全厚を薄く設計した際の剛性と衝撃強度の劣化を容易に防止できる点から好ましい。
【0014】
前記プロピレン系樹脂(b1)としては、前述の表面層(A)で例示したプロピレン系樹脂を何れも好適用いることができ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、より剛性と衝撃強度とのバランスに優れた積層フィルムが得られる点から、プロピレンの単独重合体やプロピレンとエチレンとを必須成分として共重合したプロピレン系共重合体であることが好ましく、当該共重合体の場合は、特に後述するメタロセン系触媒を用いて得られるものを用いることが好ましい。
【0015】
前記エチレン系樹脂(b2)としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられ、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より剛性と衝撃強度のバランスに優れる積層フィルムが得られる点から、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0016】
ヒートシール層(C)用の樹脂は、1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体(c1)と、メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)とを混合したものである。その混合比率(c1)/(c2)としては、1/4〜1/1(質量比)の範囲であることが、得られる積層フィルムにおいて、ヒートシール温度や強度の調整が容易である、即ちヒートシール温度幅が広く、易開封シールとして適度なヒートシール強度が容易に得られることから好ましい。また、このとき用いる1−ブテン系共重合体(c1)としては、1−ブテン由来成分の含有率が50〜99モル%であるものが特に好ましい。
【0017】
前記メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)は、従来のチーグラー・ナッタ系触媒に代え、メタロセン系触媒を用いて重合した共重合体である。このメタロセン系触媒としては、例えば、メタロセン化合物とアルミノキサンとを含むメタロセン均一混合触媒、微粒子状の担体上にメタロセン化合物が担持されたメタロセン担持型触媒等が挙げられる。メタロセン担持型触媒については、特開平5−155931号公報、特開平8−104691号公報、特開平8−157515号公報及び特開平8−231621号公報等に開示されている。メタロセン系触媒で重合された樹脂は、分子量分布及び組成分布の均一性が高く、低分子量成分の含有率が少ないため、積層フィルムの全厚を薄く設計した際に生じる溶断シール強度の劣化を抑えることができるとともに、巻き質(生産時のワインダーでの巻き適正、即ち製膜直後の摩擦係数が低下することによって、滑りやすくなり、巻き取り時のシワ等の発生を抑えることができる事)が改質され、生産性が向上するものである。
【0018】
上記ヒートシール層(C)は、JIS K−1713に定めるヒートシール開始温度試験に準拠して測定したヒートシール開始温度が、表面層(A)のヒートシール開始温度よりも低いことが、食品包装袋の作製と易開封シール性が容易なことから好ましい。このため、本発明の積層フィルムとしては、表面層(A)とヒートシール層(C)の間のヒートシール開始温度差を30℃以上とすることが好ましく、なかでも35〜90℃とすることが特に好ましい。
【0019】
本発明の積層フィルムは、表面層(A)と中間層(B)とヒートシール層(C)とを(A)/(B)/(C)の順に積層してなる3層フィルムであって良いが、フィルムの剛性、耐寒性等と、生産性等を考慮し、中間層(B)を2層以上に分割することも可能で、全体の層構成が4層以上となっても何ら問題無い。
【0020】
本発明の積層フィルムの厚みは、なんら制限されるものではないが、従来同じ用途で使用される積層フィルムの厚みよりも5〜15%薄膜化することが可能であり、通常15〜50μmであり、なかでも20〜40μmの範囲で設計することが好ましい。また、ヒートシール層(C)の厚みは、通常0.1〜10μmであるが、なかでも1〜8μmの範囲になるように設計することが好ましい。
【0021】
本発明の積層フィルムが、(A)/(B)/(C)の順に積層してなる3層フィルムである場合、表面層(A)と中間層(B)の全厚に対する厚み比率は、各層の樹脂組成により異なり特に限定されないが、表面層(A)が通常10〜50%、好ましくは15〜45%であり、中間層(B)が通常30〜80%、好ましくは40〜70%である。
【0022】
本発明の積層フィルムの具体例としては、例えば、
(i)プロピレンとエチレンを必須成分としてなるプロピレン系共重合体を75重量%以上含有してなる表面層(A1)と、プロピレン単独重合体70質量%以上、直鎖状低密度ポリエチレンを10質量%以上含有してなる中間層(B1)と、1−ブテン系共重合体(c1)と、メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)とを、1/4〜1/1(質量比)で含有してなるヒートシール層(C1)とを、(A1)/(B1)/(C1)の順に、その平均厚さの比が2〜3:5〜6:1となるように積層してなる、厚さが25μmもしくは28μmで、底部にガゼットが入った袋(以下、底部ガゼット袋という。)用として好適な3層フィルム(I−1)、
(ii)プロピレン単独重合体を90重量%以上含有してなる表面層(A2)と、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体を70質量%以上、直鎖状低密度ポリエチレンを10質量%以上含有する中間層(B2)と、前記(C1)と同じヒートシール層(C2)とを、(A2)/(B2)/(C2)の順に、その平均厚さの比が2〜3:6〜7:1となるように積層してなる、厚さが25μmもしくは28μmで、ピロー包装袋用として好適な3層フィルム(I−2)、
(iii)プロピレン単独重合体および/またはプロピレンとエチレンを必須成分としてなるプロピレン系共重合体を80重量%以上含有してなる表面層(A3)と、プロピレンとエチレンとを必須成分としてなるプロピレン系共重合体を50質量%以上、直鎖状低密度ポリエチレンを10質量%以上含有してなる中間層(B3)と、前記(C1)と同じヒートシール層(C3)とを、(A3)/(B3)/(C3)の順に、その平均厚さの比が2〜3:5〜6:1となるように積層してなる、厚さが25μmもしくは28μmで、底部ガゼット袋用として好適な3層フィルム(I−3)、などが挙げられる。
【0023】
本発明の積層フィルムは、そのまま用いてもよいが、印刷による商品訴求力向上のために表面層(A)にコロナ放電処理をしてもよい。また、積層フィルムの各層の中には、必要に応じて酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、着色剤、シリカなどの添加剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲において適宜添加しても良い。
【0024】
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に限定されないが、なかでも共押出成形法や押出ラミネート法が好ましく、特に共押出成形法が好ましい。
【0025】
以下に、本発明の易開封食品包装袋およびその方法を食パン包装方法と各種パンの集積包装方法を例示することにより、説明する。
【0026】
(1)食パン包装方法
食パン包装方法用には、通常、前記した3層フィルム(I−1)または(I−3)を使用することが好ましい。3層フィルム(I−1)または(I−3)は、印刷された後、ヒートシール層が袋の内側になるようにして製袋機、例えばトタニ技研工業株式会社製HK−40等により底部ガゼット袋に加工する。この際、底部ガゼット袋のサイド部と底部ガゼット部(底部の折り込み部)の溶断シール強度が7.5〜30N/15mm、好ましくは12〜30N/15mmになるよう溶断シール温度や製袋速度を調整する。次いで、得られた底部ガゼット袋は、食パン自動充填機に供給され、食パン充填後、易開封性でかつヒートシール強度が0.1〜5N/15mm、好ましくは0.2〜3.5N/15mmとなる条件でヒートシールして、易開封性食パン包装袋とし、更に必要に応じて、袋の上部、好ましくは食パンの上部で易開封性シール部分またはその上もしくは下付近をプラスチック板、テープ、紐等の結束具を用い結束する。尚、易開封食品包装袋を製袋して、すぐに食品の包装を行ってもよいし、第三者により予め製袋された易開封食品包装袋を用意しておき、これを使用して食品の包装を行ってもよい。
【0027】
(2)複数の菓子パンの包装方法
バターロール等のような各種のパンの集積包装には、通常3層フィルム(I−2)を使用することが好ましい。3層フィルム(I−2)は、印刷された後、横ピロー型自動包装機、例えばフジキカイ株式会社製FW−3400αV型等に、ヒートシール層が袋の内側になるようにしてロール状形態で供給する。横ピロー型自動包装機では、フィルムのヒートシール面を重ね合わせてヒートシールして袋を作成しながらパンを内包させる。この際、該包装機によるピロー包装袋の底部と背貼り部のシール強度が7.5〜30N/15mm、好ましくは8〜20N/15mmになるようヒ−トシール温度や包装速度を調節する。次いで、易開封性でかつヒートシール強度が0.1〜5N/15mm、好ましくは0.2〜3.5N/15mmとなる条件でヒートシールして易開封性ピロー包装袋とし、更に必要に応じて、袋の上部、好ましくはパンの上部で、易開封性シール部分またはその上もしくは下付近をプラスチック板、テープ、紐等の結束具を用い結束する。
【0028】
尚、本発明で言う易開封性シールとは、袋のヒートシール部分から切り出した幅15mmの試験片のヒートシール強度を、引張試験機〔株式会社エー・アンド・デー製テンシロン〕を用いて、温度23℃、引張速度300mm/分の条件で測定した場合のヒートシール強度が0.1〜5N/15mmで、かつ、試験片の8割以上がフィルムの破断なしにシール面より剥離するヒートシールをいう。
【0029】
上記(1)や(2)の食品包装方法で、パン充填後のヒートシールを、易開封性でかつヒートシール強度が0.1〜5N/15mmとなるようにするシール温度やシール時間としては、シールパターンやシール圧力により異なり特に限定されないが、好ましくは65〜95℃で0.1〜2秒間、特に好ましくは70〜90℃で0.3〜1.5秒間である。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、例中の部および%は、特に断りのない限りすべて質量基準である。
【0031】
実施例1
表面層(A)として、プロピレン−エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:5.8%、密度:0.90g/cm、メルトインデックス(以下、MIという。):6g/10分間、融点140℃)90部と結晶性エチレン−1−ブテン共重合体(密度:0.88g/cm、MI:4g/10分、以下、「EBR」という。)10部とからなる混合物を、中間層(B)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm、MI:9g/10分間、融点163℃、以下、「HOPP−1」という。)90部と直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm、MI:4g/10分、以下、「LLDPE」という。)10部とからなる混合物を、ヒートシール層(C)として、プロピレン−1−ブテン共重合体(密度:0.90g/cm、MI:4g/10分間)40部とメタロセン触媒系プロピレン−エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:4.0%、密度:0.90g/cm、MI:7g/10分間、融点130℃)60部とからなる混合物を、それぞれ3台の押出機に供給し、ヒートシール層(A)と中間層(C)と表面層(B)の平均厚さが7、18、3μmとなるように共押出して、厚さ28μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0032】
実施例2
表面層(A)としてプロピレン−エチレンブロック共重合体(密度:0.90g/cm、MI:8g/10分間、融点160℃、以下、「BCOPP」という。)を、中間層(B)としてBCOPP90部とLLDPE10部とからなる混合物を用い、更に(A)/(B)/(C)の各層の厚みが9、16、3μmとなるようにする以外は実施例1と同様に行い、厚さ28μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0033】
実施例3
ヒートシール層(C)として、プロピレン−1−ブテン共重合体(密度:0.90g/cm、MI:4g/10分間)20部とメタロセン触媒系プロピレン−エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:4.0%、密度:0.90g/cm、MI:7g/10分間、融点130℃)80部とからなる混合物に代えた以外は実施例1と同様に行い、厚さ28μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0034】
実施例4
表面層(A)としてHOPP−1を用い、(A)/(B)/(C)の各層の厚さが9、16、3μmとなるようにした以外は実施例1と同様に行い、厚さ28μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0035】
実施例5
表面層(A)としてHOPP−1を用い、中間層(B)としてHOPP−1を95部とLLDPE5部との混合物を用い、(A)/(B)/(C)の各層の厚みが7、16、2μmとなるようにする以外は実施例2と同様にして厚さ25μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0036】
実施例6
表面層(A)として、HOPP−1を用い、中間層(B)として、HOPP−1を80部と低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm、融点:107℃、以下、「LDPE」という。)20部との混合物とする以外は実施例1と同様にして、厚さ28μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0037】
実施例7
表面層(A)として、HOPP−1を用い、中間層(B)として、HOPP−1を65部と中密度ポリエチレン(密度:0.93g/cm、融点126℃、以下、「MDPE」という。)35部との混合物とする以外は実施例1と同様にして、厚さ28μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0038】
実施例8
表面層(A)としてHOPP−1を用い、中間層(B)として、HOPP−1を50部とLLDPE50部との混合物を用い、(A)/(B)/(C)の各層の厚みが7、16、2μmとなるようにする以外は実施例2と同様にして厚さ25μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られた共押出多層フィルムの表面層(A)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギーが36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0039】
比較例1
中間層(B)としてプロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm、MI:9g/10分間、融点160℃、以下、「HOPP−2」という。)を、ヒートシール層(C)として、プロピレン−1−ブテン共重合体40部とチーグラー・ナッタ触媒系プロピレン−エチレン共重合体(エチレン由来成分含量:5.0%、密度:0.90g/cm、MI:7g/10分間)60部とからなる混合物を用い、(A)/(B)/(C)の厚さが7、20、3μmとなるようにする以外は実施例1と同様にして、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0040】
比較例2
比較例1と同一の構成にて、(A)/(B)/(C)の厚さが7、18、3μmになるように、厚さ28μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0041】
比較例3
中間層(B)としてHOPP−1を90部とLLDPE10部との混合物を用いる以外は、比較例2と同様にして、厚さ28μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0042】
比較例4
中間層(B)として、HOPP−1 97部とLLDPE3部との混合物を用いる以外は実施例1と同様にして厚さ28μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0043】
比較例5
中間層(B)として、HOPP−1 45部とLLDPE55部との混合物を用いる以外は実施例1と同様にして厚さ28μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムの表面層(A)に、表面層(A)の表面エネルギーが33mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0044】
上記で得られたフィルムについて、下記に基づいて評価を行なった。
剛性の測定
ASTM D−882に基づき、23℃における1%接線モジュラス(単位:MPa)を、フィルム製造時の押出方向(以下、「MD」という。)について、テンシロン引張試験機〔株式会社エー・アンド・デー製〕を用いて測定した。
【0045】
衝撃強度の測定
得られたフィルムを用い、23℃に状態調整された恒温室内で、サンプルを6時間保持した後、直径25.4mmの球状の衝撃頭を用いてフィルムインパクト法で測定した。
【0046】
溶断シール強度の測定
得られたフィルムのヒートシール層(C)を内側にしてフィルムを半折後、底部にガゼットを入れ、シール温度298℃(製袋温度)で溶断シールして製袋〔製袋機:トタニ技研工業(株)製HK−40、製袋速度:120枚/分〕して、縦:345mm(サイド部:245mm、ガゼット部:60mm)、横235mmのガゼット袋を得る。そして、得られた底部ガゼット袋5枚のガゼット部上部の両側のサイド部の中央から、15mm幅の試験片を1枚ずつ(1つの袋でそれぞれ2枚)合計でそれぞれ10枚を切り出し、23℃、引張速度300mm/分の条件でテンシロン引張試験機〔株式会社エー・アンド・デー製〕で引き剥がす時の最大荷重を測定し、溶断シール強度とした。
【0047】
シール強度の測定及び評価
得られたフィルムの2枚をシール層同士が接するように重ね合わせ、上部シールバーを温度80℃、下部シールバーは50℃に固定、圧力0.2MPaで幅10mmのシールバーにより、1.0秒間ヒートシールした後、放冷し、次いでヒートシールしたフィルムから15mm幅の試験片を切り取り、23℃、引張速度300mm/分の条件で、テンシロン引張試験機〔株式会社エー・アンド・デー製〕で引き剥がす時の最大荷重を測定し、その最大荷重をシール強度(単位:N/15mm)とした。
【0048】
巻き質の評価
フィルムの製品化には、成膜時に、ワインダー(製造ラインでのフィルム巻き取り装置)において、フィルム幅方向でシワの発生が無く均質に巻く事が必要である。そして、適正な巻き質を得るためには、製造上の巻き取り条件の最適化の他、フィルム表面(表裏面)の適度な滑り性も必要となる。この、フィルム表面(表裏面)の滑り性評価は、フィルム成膜直後(5分後)に、23℃中で、得られたフィルムのコロナ処理面と非処理面をについて、傾斜法(摩擦角測定機)にて試験片が滑り出す角度(θ)を測定し、摩擦係数値を得る。得られた値によって、下記評価基準に基づいて巻き質を評価した。
巻き質○:摩擦係数値:<1.1
巻き質△:摩擦係数値:1.1〜1.4
巻き質×:摩擦係数値:>1.4
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂を含有してなる表面層(A)と、
プロピレン系樹脂(b1)とエチレン系樹脂(b2)とを必須成分とし、層を形成する樹脂成分の50質量%以上が前記プロピレン系樹脂(b1)であり、且つ同じく5質量%以上が前記エチレン系樹脂(b2)であって、(b1)と(b2)との合計が80質量%以上になるように配合してなる樹脂混合物からなる中間層(B)と、
1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体(c1)と、メタロセン系触媒を用いて重合されたプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体(c2)と、を含有してなるヒートシール層(C)と、
を有することを特徴とする易開封食品包装袋用積層フィルム。
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂(b1)がプロピレンの単独重合体又はプロピレンとエチレンとを必須成分とするプロピレン系共重合体であり、前記エチレン系樹脂(b2)が直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1記載の易開封食品包装袋用積層フィルム。
【請求項3】
前記共重合体(c1)と(c2)との質量比(c1)/(c2)が15/60〜60/15となる割合で含有し、且つ前記共重合体(c1)中における1−ブテン由来成分の含有率が50〜99モル%である請求項1又は2記載の易開封食品包装袋用積層フィルム。
【請求項4】
厚さが15〜50μmの積層フィルムであり、かつ、ヒートシール層(C)の厚さが1〜8μmである、請求項1〜3の何れか1項記載の易開封食品包装袋用積層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の易開封食品包装袋用積層フィルムからなり、そのヒートシール層(B)を内側として溶融接着して製袋されたことを特徴とする、開口部を有する易開封食品包装袋。
【請求項6】
開口部を、その強度が0.1〜5N/15mmの範囲になるようにヒートシールされる請求項5記載の易開封食品包装袋
【請求項7】
底部にガゼットが入るように製袋された袋である請求項5又は6記載の易開封食品包装袋。
【請求項8】
パンの包装袋である請求項5〜7の何れか1項記載の易開封食品包装袋。

【公開番号】特開2011−201587(P2011−201587A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72113(P2010−72113)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】