説明

映像の操作体感制御方法

【課題】ユーザが指定する注視領域に応じて切り出した映像をディスプレイ上に表示する際に使い勝手を良くする。
【解決手段】映像を蓄積する映像蓄積手段と、ユーザの操作に応じて注視領域を指定し、該注視領域のパン機能及びチルト機能の操作を行う注視領域指定手段と、映像蓄積手段に蓄積されている映像から注視領域指定手段における操作に応じて、注視領域を切り出す映像切り出し手段と、切り出された注視領域の映像を表示する表示手段とを備える映像処理装置における映像の操作体感制御方法であって、注視領域指定手段が、ユーザによるパン機能及びチルト機能の操作に応じて、パン機能及びチルト機能の初速と終速を表示手段における表示領域の各辺の割合によって設定するステップと、映像切り出し手段が、注視領域指定ステップにより設定されたパン機能及びチルト機能の初速と終速に基づき、映像蓄積部に蓄積されている映像を切り出すステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがインタラクティブに指定した注視領域に応じて映像を切り出し、様々なディスプレイ上に表示する際の操作体感を制御する映像の操作体感制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、HD(high definition)を超える高解像度の映像を、ユーザがインタラクティブに指定する注視領域に応じて切り出して、様々なディスプレイに表示できるようにした映像の配信方式が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この映像の配信方式において、注視領域サイズとディスプレイ装置上の表示領域サイズが異なるとき、図8に示すように、ROI(注視領域)画素上のパン機能の動きの表現(図8に示す例では、pan_v=1[ROI画素/sec])と、表示領域上のパン機能の動きの表現(図8に示す例では、pan_v=2[表示画素/sec])も異なる。このため、ユーザがインタラクティブに注視領域を指定する場合、ROI上の画素とディスプレイ上の画素の対応関係が変動してしまい、操作体感を制御することは単純ではない。
【0003】
従来の操作体感制御方法では、パン機能に関しては、1キーイベントに対して、ROIをn画素横移動(n:整数)するように指定し、チルト機能に関しては、1キーイベントに対して、ROIをn画素縦移動(n:整数)するように指定している。また、ズームイン機能に関しては、1キーイベントに対して、ROIサイズを(100−m)%に縮小(m:整数)するように指定し、ズームアウト機能に関しては、1キーイベントに対して、ROIサイズを(100+m)%に拡大(m:整数)するように指定している。すなわち、従来の操作体感制御方法では、パノラマ映像のような高解像度映像における注視領域の変更に係るユーザの操作上の体感を制御する際に、操作を特徴づけるパラメータを注視領域に対して絶対的な値として指定していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】井上雅之、木全英明、深澤勝彦、松浦宣彦、”インタラクティブ・パノラマ映像配信システムにおける配信方式の検討、”情報処理学会、オーディオビジュアル複合情報処理研究会、Vol.2010−AVM−69 No.9、2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の操作体感制御方法では、操作を特徴づけるパラメータを注視領域に対して絶対的な値として指定していたため、ユーザの指定する注視領域サイズに応じて、パン機能やチルト機能の速度体感が変化してしまい、注視領域サイズによらない速度体感をユーザに与えることができなかった。また、ズーム機能に関しても、従来の操作体感制御方法では、T[s]後にどのような倍率(品質体感)になるのかを制御することが困難であった。したがって、高解像度映像をユーザがインタラクティブに指定する注視領域に応じて切り出し、様々なディスプレイ上に表示する際の操作体感の制御方法が非常に使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユーザがインタラクティブに指定する注視領域に応じて切り出した映像を、様々なディスプレイ上に表示する際に、使い勝手の良い映像の操作体感制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、映像を蓄積する映像蓄積手段と、ユーザの操作に応じて注視領域を指定し、該注視領域のパン機能及びチルト機能の操作を行う注視領域指定手段と、前記映像蓄積手段に蓄積されている映像から前記注視領域指定手段における操作に応じて、前記注視領域を切り出す映像切り出し手段と、前記切り出された注視領域の映像を表示する表示手段とを備える映像処理装置における映像の操作体感制御方法であって、前記注視領域指定手段が、前記ユーザによるパン機能及びチルト機能の操作に応じて、前記パン機能及びチルト機能の初速と終速を前記表示手段における表示領域の各辺の割合によって設定する注視領域指定ステップと、前記映像切り出し手段が、前記注視領域指定ステップにより設定された前記パン機能及びチルト機能の初速と終速に基づき、前記映像蓄積部に蓄積されている映像を切り出す映像切り出しステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記注視領域指定手段が、前記初速と前記終速とを一致させることで、等速のパン機能及びチルト機能を表現することを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記注視領域指定手段が、前記終速に達するまでの時間を設定し、前記初速より前記終速を大きくすることで、加速するパン機能及びチルト機能を表現することを特徴とする。
【0010】
本発明は、映像を蓄積する映像蓄積手段と、ユーザの操作に応じて注視領域を指定し、該注視領域のパン機能及びチルト機能の操作を行う注視領域指定手段と、前記映像蓄積手段に蓄積されている映像から前記注視領域指定手段における操作に応じて、前記注視領域を切り出す映像切り出し手段と、前記切り出された注視領域の映像を表示する表示手段とを備える映像処理装置における映像の操作体感制御方法であって、前記注視領域指定手段が、前記ユーザの注視領域のズーム機能の操作に応じて、前記ズーム機能の初速と終速をズーム開始時からの所定時間経過後の前記注視領域サイズによって設定する注視領域指定ステップと、前記映像切り出し手段が、前記注視領域指定ステップにより設定された前記ズーム機能の初速と終速に基づき、前記映像蓄積部に蓄積されている映像を切り出す映像切り出しステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記注視領域指定手段が、前記初速と前記終速とを一致させることで、等速のズーム機能を表現することを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記注視領域指定手段が、前記初速より前記終速を大きくすることで、加速するズーム機能を表現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザがインタラクティブに指定する注視領域に応じて切り出した映像を様々なディスプレイ上に表示する際に、操作体感の制御を行うことが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す映像処理装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す映像処理装置の処理動作を示す説明図である。
【図4】図1に示す映像処理装置の処理動作を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示す映像処理システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図7】用語の定義を示す説明図である。
【図8】従来技術による映像処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による映像処理装置を説明する。図1は同実施形態における映像処理装置の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、ビデオカメラなどの撮像装置によって撮像された映像を外部から入力して蓄積する映像蓄積部であり、記憶装置等で構成する。符号2は、注視領域をユーザの操作によって指定する注視領域指定部である。符号3は、注視領域指定部2における指定に基づき、映像蓄積部1に蓄積された映像を切り出して出力する映像切り出し部である。符号4は、切り出された映像を表示すべき解像度の映像に変換して出力する映像変換部である。符号5は、映像変換部4から出力される解像度変換された映像を表示する表示部であり、ディスプレイ装置から構成する。
【0016】
次に、図2を参照して、図1に示す映像処理装置6の処理動作を説明する。図2は、図1に示す映像処理装置6の処理動作を示すフローチャートである。まず、映像蓄積部1は、ビデオカメラやビデオファイルから映像データを入力し(ステップS1)、入力した映像データを内部に蓄積する(ステップS2)。
【0017】
次に、ユーザが注視領域指定部2を操作して、注視領域指定を行う(ステップS3)。これを受けて、映像切り出し部3は、注視領域の指定に応じて、映像蓄積部1に蓄積された映像を切り出して映像変換部4へ出力する(ステップS4)。映像変換部4は、表示部5の解像度になるように切り出された映像の解像度変換を行って出力する(ステップS5)。表示部5は、映像変換部4から出力された映像を表示する(ステップS6)。ユーザが、さらに注視領域指定部2を操作して、注視領域指定を行った場合、ステップS3〜S6の処理動作を繰り返し行う。
【0018】
ここで、図7を参照して、以下の説明を簡単にするために、用語の定義を行う。図7は、用語の定義を示す説明図である。オリジナル画素とは、原画像の画素のことであり、ORG_widthは原画像の横の画素数であり、ORG_heightは原画像の縦の画素数である。ROIは注視領域のことである。ROI画素は、ROI内のオリジナル画素であり、ROI_widthは、ROI横の画素数、ROI_heightは、ROI縦の画素数である。また、表示画素は、ディスプレイ(表示部5)上の表示領域の画素であり、Window_widthは表示領域横の画素数、Window_heightは、表示領域縦の画素数である。
【0019】
次に、図3を参照して、ユーザによる注視領域指定(パン・チルト操作)の処理動作を説明する。図3は、ユーザによる注視領域指定(パン・チルト操作)の処理動作(ステップS3)を示す説明図である。注視領域をパン・チルト操作する場合、パンの設定方法は、時間T[s],x0[%],x1[%],y0[%],y1[%]をそれぞれ実数で指定する。例えば、T[s]で、初速(x0/100)Window_width[表示画素/s]から終速(x1/100)Window_width[表示画素/s]で表示画素上を移動させるように設定する。またチルトの設定は、T[s]で、初速(y0/100)Window_height[表示画素/s]から終速(y1/100)Window_height[表示画素/s]で表示画素上を移動させるように設定する。また、パン速度pan_v(t)[表示画素/s]と、チルト速度tilt_v(t)[表示画素/s]は独立に設定する。
【0020】
パン操作開始から時間T[s]経過後で、初速(x0/100)Window_width[表示画素/s]から終速(x1/100)Window_width[表示画素/s]で表示画素上を移動するように設定されたとき、パン開始からt[s]経過後のパン速度pan_v(t)は(1)式により算出される。
pan_v(t)=[((x1−x0)/100)(t/T)+(x0/100)](Window_width)[表示画素/s] ・・・(1)
【0021】
ここで、t、T、x0、x1はそれぞれ実数であり、tはパン操作開始からの経過時間、Tは設定時間、x0、x1はWindow_widthを100としたときの1[s]あたりの移動速度割合[%]を表している。(1)式により、x0=x1の時は等速移動、x0<x1の時は加速移動を設定することが可能になる。
【0022】
また、注視領域がチルト操作する場合、チルト操作開始からT[s]経過後で、初速(y0/100)Window_height[表示画素/s]から終速(y1/100)Window_height[表示画素/s]で表示画素上を移動するように設定されるとき、チルト開始からt[s]経過後のチルト速度tilt_v(t)は(2)式により算出される。
tilt_v(t)=[((y1−y0)/100)(t/T)+(y0/100)](Window_height)[表示画素/s] ・・・(2)
【0023】
ここで、t、T、y0、y1は実数であり、tはチルト操作開始からの経過時間、Tは設定時刻、y0、y1はWindow_heightを100としたときの1[s]あたりの移動速度割合[%]を表している。
【0024】
なお、パン・チルト操作を継続し続けると画像領域をはみ出してしまうため、ROIの重心は原画像の各辺を超えないこととする。
【0025】
次に、パン・チルト操作における各値の具体例を説明する。例えば、T=1,x0=10,x1=10,y0=10,y1=20と設定したとする。この場合、パン操作では、T=1[s]で、初速(10/100)Window_widthから終速(10/100)Window_widthで表示画素上を等速移動することになる。また、チルト操作では、T=1[s]で、初速(10/100)Window_heightから終速(20/100)Window_heightで表示画素上を加速移動することになる。
【0026】
パン速度pan_v(t)、チルト速度tilt_v(t)は独立に設定可能であるので、パン速度pan_v(t)は、pan_v(t)=[(10−10/100)(t/1)+(10/100)](Window_width)=0.1Window_width[表示画素/s]となるように制御が行われることになる。また、チルト速度tilt_v(t)は、tilt_v(t)=[(20−10/100)(t/1)+(10/100)](Window_height)=(0.1t+0.1)Window_height[表示画素/s]となるように制御が行われることになる。
【0027】
次に、図4を参照して、ユーザによる注視領域指定(ズーム操作)の処理動作を説明する。図4は、ユーザによる注視領域指定(ズーム操作)の処理動作を示す説明図である。注視領域をズーム操作する場合、T[s]、z0[%]、z1[%]、p[%]、q[%]を実数の設定値とすると、ズームアウト時、すなわち、ROI拡大時は、z0、z1>100と設定すればよく、等速拡大はz0=z1、加速拡大はz1>z0となる。
【0028】
ズームアウト開始から時間T[s]経過後で、ズーム開始時のROIサイズに対して、初期ROI拡大率z0(>100)%から終期ROI拡大率z1(>100)%で拡大すると設定すると、ROIサイズは(3)、(4)式により算出する。
【0029】
ROI_width(t)=[[((z1−z0)/100)(t/T)+(z0/100)]^(t/T)]ROI_width(t0)[ROI画素/s] ・・・(3) ROI_height(t)=[[((z1−z0)/100)(t/T)+(z0/100)] )]^(t/T)]ROI_height(t0)[ROI画素/s] ・・・(4)
ここで、^は、べき乗、tは、ズーム開始からの経過時間[s]、t0は、ズーム開始時刻[s]である。
【0030】
ズームイン時、すなわち、ROI縮小時はz0、z1<100と設定すればよく、等速ROI縮小はz0=z1、加速ROI縮小はz1<z0となる。ズームイン開始からT[s]経過後で、ズーム開始時のROIサイズに対して、初期ROI拡大率z0(<100)%から終期ROI拡大率z1(<100)%で縮小すると設定すると、ROIサイズは(3)、(4)式と同じ式により算出する。
【0031】
なお、ズーム操作に制限をかけるため、ROI縮小率上限はp%(p<100)、ROI拡大率上限はq%(q>100)とし、基準ROIサイズは(Window_width、Window_height)とすると、ROI縮小率上限ROI_limit、ROI拡大率上限ROI_limitは以下の(5)、(6)式により算出する。
【0032】
ROI_limit=(p/100)(Window_width)or(p/100)(Window_height)[ROI画素](p<100)(どちらか先に上限に達したときに停止) ・・・(5)
ROI_limit=(q/100)(Window_width)or(q/100)(Window_height)[ROI画素](q>100)(どちらか先に上限に達したときに停止) ・・・(6)
【0033】
次に、ズーム操作における各値の具体例を説明する。例えば、T[s],z0[%],z1[%],p[%],q[%]を実数で設定したとする。ズームアウトの場合は、ズーム開始時のROIサイズに対して、T=1[s]後に目指す、ROI拡大率z0=105%からROI拡大率z1=105%で等速拡大することになる。また、ズームインの場合は、ズーム開始時のROIサイズに対して、T=1[s]後に目指す、ROI拡大率z0=95%からROI拡大率z1=90%で加速縮小することになる。ROI縮小率上限は、p=50%(p<100)、ROI拡大率上限は、q=200%(p>100)となる。基準ROIサイズは、(Window_width,Window_height)=(1920,1080)となる。
【0034】
ズームイン、ズームアウトは独立に速度設定可能であるので、ROI_width(t)= [[((105−105)/100)(t/1)+(105/100)]^(t/1)]ROI_width(t0)=[1.05^t]ROI_width(t0)[ROI画素/s]となるように制御が行われることになる。また、ROI_width(t)= [[((90−95)/100)(t/1)+(95/100)]^(t/1)]ROI_width(t0)=[(−0.05t+0.95)^t]ROI_width(t0)[ROI画素/s]となるように制御が行われることになる。
【0035】
また、ROI縮小率上限ROI_limit=(50/100)(1920)or(50/100)(1080)=width960 or height540[ROI画素](p<100)となり、どちらか先に上限に達したときに停止することになる。また、ROI拡大率上限ROI_limit=(200/100)(1920)or(200/100)(1080)=width3840 or height2160[ROI画素](q>100)となり、どちらか先に上限に達したときに停止することになる。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による映像処理システムを説明する。図5は同実施形態における映像処理システムの構成を示すブロック図である。この図において、符号20は、映像データを配信する映像配信サーバであり、コンピュータ装置によって構成する。符号30は、映像の再生を行う映像再生クライアントであり、コンピュータ装置によって構成する。映像配信サーバ20と映像再生クライアントの間は通信ネットワークで結ばれている。
【0037】
図5において、符号11は、ビデオカメラなどの撮像装置によって撮像された映像を外部から入力して蓄積する映像蓄積部であり、記憶装置等で構成する。符号12は、注視領域をユーザの操作によって指定する注視領域指定部である。符号13は、注視領域指定部12における指定に基づき、映像蓄積部11に蓄積された映像を切り出して出力する映像切り出し部である。符号14は、切り出された映像を表示すべき解像度の映像に変換して出力する映像変換部である。
【0038】
符号15は、映像変換部14から出力される解像度変換された映像を表示する表示部であり、ディスプレイ装置から構成する。符号16は、映像切り出し部13から出力する映像データを映像再生クライアント30へ送信する映像送信部である。符号17は、映像送信部16から送信された映像データを受信して映像変換部14へ出力する映像受信部である。符号18は、注視領域指定部12において操作された注視領域の操作コマンドを送信するコマンド送信部である。符号19は、コマンド送信部18から送信された操作コマンドを受信して映像切り出し部13へ出力するコマンド受信部である。
【0039】
次に、図6を参照して、図5に示す映像処理システムの処理動作を説明する。図6は、図5に示す映像処理システムの処理動作を示すフローチャートである。まず、映像蓄積部11は、ビデオカメラやビデオファイルから映像データを入力し(ステップS11)、入力した映像データを内部に蓄積する(ステップS12)。
【0040】
次に、ユーザが注視領域指定部2を操作して、注視領域指定を行う(ステップS13)。これを受けて、コマンド送信部18は、注視領域指定を行うコマンドを送信する(ステップS14)。このコマンドは、コマンド受信部19が受信し、映像切り出し部13へ受け渡す(ステップS15)。これを受けて、映像切り出し部3は、注視領域の指定に応じて、映像蓄積部11に蓄積された映像を切り出す(ステップS16)。映像送信部16は、この切り出された映像データを映像再生クライアント30へ送信する(ステップS17)。
【0041】
次に、映像受信部17は、映像送信部16から送信された映像データを受信し、映像変換部14へ受け渡す(ステップS18)。これを受けて、映像変換部14は、表示部15の解像度になるように切り出された映像の解像度変換を行って出力する(ステップS19)。表示部15は、映像変換部14から出力された映像を表示する(ステップS20)。ユーザが、さらに注視領域指定部12を操作して、注視領域指定を行った場合、ステップS13〜S20の処理動作を繰り返し行う。
【0042】
なお、ステップS13おけるユーザの注視領域指定の処理動作は、図3、図4に示す処理動作と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
以上説明したように、パンおよびチルト時の初速と終速を画面解像度の横幅および縦幅を100%としたときの割合(%)で設定し、終速に達するまでの時間間隔T[s]を設定できるようにするとともに、ズーム時に、ズーム開始時のROIサイズからT[s]後に目指す倍率を2種類設定するようにしたため、高解像度映像をユーザがインタラクティブに指定する注視領域に応じて切り出し、様々な画面解像度を有するディスプレイ上に表示する際に、ユーザが注視領域を開始してから、t[s]後(t:実数)のパン・チルト速度や注視領域サイズ(注視領域の横幅、注視領域の縦幅)を制御することができる。このため、操作体感品質を制御することが可能となる。
【0044】
具体的には、以下の5つの操作体感制御を行うことが可能になる。
(1)注視領域の拡大率によらず、移動速度体感を同等にする。
(2)操作開始からT[s]経過後のパン、ズーム速度が設定できる。
(3)操作開始からT[s]経過するにつれて、パン、ズーム速度が加速するように設定ができる。
(4)操作開始からT[s]経過後のズームの倍率が予測できる。
(5)操作開始からT[s]経過するにつれて、ズーム時の倍率が加速するように設定ができる。
【0045】
このように、パノラマ映像のような高解像度映像における注視領域の変更に係るユーザの操作上の体感を制御する際に、操作を特徴づけるパラメータを注視領域に対して絶対的な値として指定していたものを相対的な値として指定することにより、使い勝手の良い体感が得られることが可能になる。
【0046】
なお、図1、図5における注視領域指定部2、12の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより映像の操作体感制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。
【0047】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0048】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ユーザがインタラクティブに指定した注視領域に応じて映像を切り出し、様々なディスプレイ上に表示する際の操作体感を制御することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、11・・・映像蓄積部、2、12・・・注視領域指定部、3、13・・・映像切り出し部、4、14・・・映像変換部、5、15・・・表示部、6・・・映像処理装置、16・・・映像送信部、17・・・映像受信部、18・・・コマンド送信部、19・・・コマンド受信部、20・・・映像配信サーバ、30・・・映像再生クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を蓄積する映像蓄積手段と、ユーザの操作に応じて注視領域を指定し、該注視領域のパン機能及びチルト機能の操作を行う注視領域指定手段と、前記映像蓄積手段に蓄積されている映像から前記注視領域指定手段における操作に応じて、前記注視領域を切り出す映像切り出し手段と、前記切り出された注視領域の映像を表示する表示手段とを備える映像処理装置における映像の操作体感制御方法であって、
前記注視領域指定手段が、前記ユーザによるパン機能及びチルト機能の操作に応じて、前記パン機能及びチルト機能の初速と終速を前記表示手段における表示領域の各辺の割合によって設定する注視領域指定ステップと、
前記映像切り出し手段が、前記注視領域指定ステップにより設定された前記パン機能及びチルト機能の初速と終速に基づき、前記映像蓄積部に蓄積されている映像を切り出す映像切り出しステップと
を有することを特徴とする映像の操作体感制御方法。
【請求項2】
前記注視領域指定手段が、前記初速と前記終速とを一致させることで、等速のパン機能及びチルト機能を表現することを特徴とする請求項1に記載の映像の操作体感制御方法。
【請求項3】
前記注視領域指定手段が、前記終速に達するまでの時間を設定し、前記初速より前記終速を大きくすることで、加速するパン機能及びチルト機能を表現することを特徴とする請求項1に記載の映像の操作体感制御方法。
【請求項4】
映像を蓄積する映像蓄積手段と、ユーザの操作に応じて注視領域を指定し、該注視領域のパン機能及びチルト機能の操作を行う注視領域指定手段と、前記映像蓄積手段に蓄積されている映像から前記注視領域指定手段における操作に応じて、前記注視領域を切り出す映像切り出し手段と、前記切り出された注視領域の映像を表示する表示手段とを備える映像処理装置における映像の操作体感制御方法であって、
前記注視領域指定手段が、前記ユーザの注視領域のズーム機能の操作に応じて、前記ズーム機能の初速と終速をズーム開始時からの所定時間経過後の前記注視領域サイズによって設定する注視領域指定ステップと、
前記映像切り出し手段が、前記注視領域指定ステップにより設定された前記ズーム機能の初速と終速に基づき、前記映像蓄積部に蓄積されている映像を切り出す映像切り出しステップと
を有することを特徴とする映像の操作体感制御方法。
【請求項5】
前記注視領域指定手段が、前記初速と前記終速とを一致させることで、等速のズーム機能を表現することを特徴とする請求項4に記載の映像の操作体感制御方法。
【請求項6】
前記注視領域指定手段が、前記初速より前記終速を大きくすることで、加速するズーム機能を表現することを特徴とする請求項4に記載の映像の操作体感制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−17071(P2013−17071A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149063(P2011−149063)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】