説明

映像信号処理装置

【課題】 入力特性をより適切に反映し、かつホワイトバランスが崩れることなく所定のレンジに制限して出力可能な映像信号処理装置を提供する。
【解決手段】 RGBの色信号は、最大値検出回路22により色信号の最大値Imaxが検出され、この最大値Imaxが制限すべき所定レベルよりも低い抑圧開始レベルVcs以上の場合、この最大値Imaxの値に応じて抑圧ゲイン作成部23により、抑圧ゲインGcを生成し、この抑圧ゲインGcにより、入力されるRGBの色信号を同時に抑圧することにより、ホワイトバランスが崩れることなく所定のレンジに制限して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGB等の色信号をホワイトバランスを崩すことなく適切に抑圧する映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TV受信機等の各種の映像表示を行う装置においては、RGB等の色信号を増幅し、表示装置のダイナミックレンジに適合させる処理を行う。
この種の装置として、例えば特開2002−64839号公報には、ホワイトバランスを崩さずにクリップ動作を行うピーククリップ回路が開示されている。
この従来例においては、RGBの3つの色信号における最大値を検出して、その最大値が表示可能なレベルを超える場合には、その最大値を表示可能なレベルまで減衰させ、他の2色にも同じ減衰量を適用することにより、ホワイトバランスを崩さないようにクリップする。
【特許文献1】特開2002−64839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例ではホワイトバランスを崩さないようにできるが、入出力特性が表示可能なレベル付近において不自然に変化する特性になってしまう。
具体的に説明すると、入力信号の最大レベルが表示可能なレベルに達しない場合にはそのまま出力される。
これに対して、入力信号の最大レベルが表示可能なレベルを超えた場合、減衰させる動作が作用し、その減衰の動作によって、入力信号は、そのレベルが例えば表示可能なレベルよりわずかに超える部分のレベルが、この表示可能なレベルより小さなレベルに減衰されてしまうことになる。
【0004】
このため、例えば1フレーム中のカラー画像に対応するRGBの3つの色信号が入力された場合において、それらの色信号における最大レベルが表示可能なレベル付近で上下に変動した場合、出力される信号はこの上下の変動特性を反映しないで、入力レベルが高い山となる部分が逆に低くなるように抑圧されてしまうことになる。
つまり、この従来例は、減衰の動作を行うか否かの境界付近における入力特性を適切に反映しない出力特性になってしまう場合がある。
【0005】
(発明の目的)
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、入力特性をより適切に反映でき、かつホワイトバランスが崩れることなく所定のレンジに抑圧して出力することができる映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の映像信号処理装置は、入力される複数の色信号における最大の信号レベルを検出する手段と、
前記入力される複数の色信号における信号レベルの抑圧を開始する抑圧開始レベルを設定する抑圧開始レベル設定手段と、
前記複数の色信号における最大の信号レベルが前記抑圧開始レベル以上となることを検出する検出手段と、
前記最大の信号レベルが前記抑圧開始レベルから前記抑圧開始レベルを超える所定レベルに達する範囲内で、前記最大の信号レベルを抑圧するゲインを用いて、前記複数の色信号を共通に抑圧する抑圧手段と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
上記構成により、最大の信号レベルが抑圧開始レベル未満では抑圧を行わないで、入力される複数の色信号をそのまま出力し、最大の信号レベルが抑圧開始レベル以上になると、抑圧手段は、最大の信号レベルを前記抑圧開始レベルからこの抑圧開始レベルを超える所定レベルまで抑圧すると共に、この抑圧を行うゲインで他の色信号も共通に抑圧することにより、ホワイトバランスが崩れることなく抑圧する。
また、抑圧を開始するレベルを制限すべき所定レベルよりも低い抑圧開始レベルから抑圧を開始することにより、入力特性をより適切に反映した出力特性を確保できるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入力特性をより適切に反映し、かつホワイトバランスが崩れることなく所定レベル以下に制限することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1ないし図5は本発明の実施例1に係り、図1は本発明の実施例1を備えたTV受信機の構成を示し、図2はTV受信機における実施例1の映像信号処理装置の構成を示し、図3は実施例1におけるRGB制限回路の構成を示し、図4はRGB制限回路における入出力特性を示し、図5は時間的に変化するRGBの色信号が入力された場合におけるRGB制限回路における出力動作例を示す。
図1に示すTV受信機1は、それぞれアンテナ2A及び2Bに接続されたデジタルTVチューナ3A及びアナログTVチューナ3Bを有し、デジタルTVチューナ3Aにより選局及び復調されたMPEG−2のトランスポートストリーム信号は、MPEG−2デコーダ4に入力され、MPEG−2に対する伸張等の復号化処理がされて生成されたデジタルの映像信号は、セレクトスイッチ5に入力される。
【0011】
また、アナログTVチューナ3Bにより復調された映像信号は、A/D変換器6を経てアナログ信号からデジタル信号に変換された後、セレクトスイッチ5に入力される。
また、VTR、DVD等の外部映像機器からの映像信号は、A/D変換器7を経てアナログ信号からデジタル信号に変換された後、セレクトスイッチ5に入力される。
セレクトスイッチは、ユーザによる選択操作により、入力される映像信号を選択して映像信号処理装置8に出力する。
この映像信号処理装置8には、映像信号が例えば輝度信号Yと色差信号Cb/Crの信号形態で入力される。
そして、この映像信号処理装置8は、入力信号に対して、垂直及び水平の強調や色変換、色変換されたRGBの3原色信号に対するダイナミックレンジ制限処理等の信号処理を行い、映像表示に適した信号に変換して、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等により構成されるデジタル表示デバイス9に出力する。このデジタル表示デバイス9は、デジタルTVチューナ3Aで受信等した映像をこのデジタル表示デバイス9の表示画面に表示する。
【0012】
図2は、この映像信号処理装置8の構成を示す。セレクトスイッチ5から入力される輝度信号Y及び色差信号Cb/Crは、垂直&水平(輪郭)エンハンス回路11に入力され、垂直方向及び水平方向の輪郭(あるいは構造)が強調された後、適応型コントラスト・明るさ&色制御回路12に入力される。
この適応型コントラスト・明るさ&色制御回路12は、輝度信号Yのコントラスト及び明るさの補正を行うと共に、この補正に適応して色差信号Cb/Cr側の補正制御も行うことにより、輝度信号Y及び色差信号Cb/Crの入出力特性を適切に補正して、色変換回路13に出力する。
この色変換回路13は、輝度信号Y及び色差信号Cb/CrからRGBの色信号(3原色信号)に変換した後、RGB制限回路14に出力する。このRGB制限回路14は、表示デバイス9の表示可能な階調範囲(ダイナミックレンジ)に合わせるために、より広いダイナミックレンジを有する入力信号のダイナミックレンジを抑圧する。
【0013】
このRGB制限回路14から出力されるRGBの色信号は、W/B&γ補正回路15に入力され、このW/B&γ補正回路15は、入力されるRGB信号をホワイトバランス(W/Bと略記)状態に調整すると共に、後段側のデジタル表示デバイス9の表示特性に対応したγ補正を行う。
このW/B&γ補正回路15から出力されるRGB信号は、ディザ回路16に入力され、このディザ回路16は、デジタル表示デバイス9による表示特性を良好にするために階調圧縮処理として、例えばディザ処理を行う。そして、このディザ回路16から階調圧縮されたRGBの出力信号は、デジタル表示デバイス9に入力され、このデジタル表示デバイス9の表示面には、映像信号処理装置8に入力された映像信号の映像がカラー表示される。
図3は、図2におけるRGB制限回路14の具体的な構成を示す。
【0014】
このRGB制限回路14は、mビットの入力信号としてのRGBの色信号をダイナミックレンジがnビットのRGBの出力信号に制限して出力する。ここで、m>nである。つまり、このRGB制限回路14の出力側には、(mより小さい)nビットのダイナミックレンジの表示素子があり、RGB制限回路14は、そのダイナミックレンジに適合させるように狭いダイナミックレンジに圧縮(抑圧)する。
入力端21a、21b、21cからそれぞれ入力されるR、G、Bの色信号は、最大値検出回路22に入力され、この最大値検出回路22は、このRGB制限回路14に入力されるR,G,Bの全色信号の最大値Imaxを検出する。
この最大値検出回路22により検出された色信号の最大値Imaxは、所定のレベル以上の信号レベルを抑圧することにより、そのダイナミックレンジを狭くするための抑圧ゲインを作成する抑圧ゲイン作成部23に入力される。
【0015】
この抑圧ゲイン作成部23は、最大の信号レベルに対して、その抑圧を開始する抑圧開始レベルVcsを設定するパラメータ入力部24と接続されている。
そして、ユーザは、このパラメータ入力部24のパラメータの値を変化することにより、そのパラメータが抑圧ゲイン作成部23内の抑圧開始レベル発生回路25に入力され、この抑圧開始レベル発生回路25は、パラメータの値に対応する抑圧開始レベルVcsの基準電位を発生する。
この抑圧開始レベルVcsは、この抑圧開始レベルVcs以上の色信号が入力された場合、全ての色信号を共通のゲインにより抑圧する抑圧ゲインGcを発生する抑圧ゲイン発生回路26に入力される。また、この抑圧ゲイン発生回路26には最大値検出回路22で検出された色信号の最大値Imaxも入力される。
【0016】
この抑圧ゲイン発生回路26は、入力される色信号の最大値Imaxのレベルに対応して、色信号の最大値Imaxのレベルが抑圧開始レベルVcsの時にはそのゲインが1となり、抑圧開始レベルVcsを超える値が大きくなる程、ゲインが小さくなる特性の抑圧ゲインGcを発生する。具体的には、色信号の最大値Imaxから抑圧開始レベルVcsを減算した値に対応した抑圧ゲインGcを発生する。
この抑圧ゲインGcは、切替スイッチ27を経て乗算器28a,28b、28cにそれぞれ入力される。
各乗算器28a,28b、28cは、入力端21a、21b、21cからそれぞれ入力されるR、G、Bの色信号も入力され、各乗算器28a,28b、28cは、切替スイッチ27を経て入力される抑圧ゲインGcと、R、G、Bの色信号とをそれぞれ乗算して出力する。
【0017】
また、抑圧ゲイン作成部23は、前記最大値検出回路22から出力される色信号の最大値Imaxが、抑圧開始レベルVcs以上か否かを判定する比較器29を有し、この比較器29は、最大値Imaxと抑圧開始レベルVcsとを比較して、例えばImax≧Vcsの場合に比較結果の切替信号Sc(図5(B)参照)を出力し、この切替信号Scにより切替スイッチ27の切替を制御する。
この切替スイッチ27の一方の接点aには、上記抑圧ゲインGcが入力され、他方の接点bには、乗算器28a,28b、28cをスルーさせた場合と同様に機能するように単位ゲイン発生回路(図3ではゲイン1と略記)30の単位のゲインG1が入力される。 また、乗算器28a,28b、28cから出力されるR,G,Bの色信号は、ダイナミックレンジクリップ回路(図3中ではDレンジクリップと略記)31に入力される。
【0018】
このダイナミックレンジクリップ回路31は、乗算器28a,28b、28cから出力されるR,G,Bの色信号における最大値が制限されるべき所定レベル、つまり2を超える場合には、この2の所定レベルVclでクリップして出力する。
図4は、図3のRGB制限回路14により、色信号の最大値Imaxが入力された場合における入出力特性を示す。
本実施例においては、色信号の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcsより小さい場合には、切替スイッチ27の接点bがONにされた状態となり、ゲイン1の入出力特性の状態となる。
従って、色信号の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcsより小さい場合には、入力された色信号の最大値Imaxはそのまま出力される。
【0019】
これに対して、色信号の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上の場合には、切替信号Scにより切替スイッチ27の接点aがONにされた状態となり、入力される色信号の最大値Imaxは、乗算器28i(28iは、色信号の最大値Imaxが入力される乗算器を表す)により抑圧ゲインGcと乗算されて出力される。
従って、色信号の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上の場合には、2点鎖線で示すゲイン1の場合の入出力特性から実線で示す入出力特性に変更される。また、最大値Imaxが所定レベルVcl以上になると、ダイナミックレンジクリップ回路31によりクリップされて所定レベルVcl以下の出力信号となる。
本実施例においては、抑圧ゲインGcは、抑圧開始レベルVcs以上となる色信号の最大値Imaxのレベル値に応じてその値が変化し、抑圧開始レベルVcsを超える値が大きい程、抑圧ゲインGcの値が略連続的に小さくなるように設定されている。
【0020】
この場合、抑圧を開始する抑圧開始レベルVcsでは、抑圧を行わない場合と同じ値、つまりゲイン1に設定されており、従って抑圧開始レベルVcsでは、抑圧を行わない場合と同じ値となる。
また、図4の入出力特性に示すように、入力レベルが増大した場合、その出力も増大する単調増加の特性を保つように抑圧ゲインGcが設定されている。
なお、本実施例においては、色信号の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上の場合には、このようにRGBの色信号を抑圧するが、抑圧された場合の最大値Imaxのレベルが、後段側で処理可能なダイナミックレンジを超えないように、ダイナミックレンジクリップ回路31において、図4に示す所定レベルVclでクリップして出力する。
【0021】
このような構成による本実施例の動作を説明する。ユーザは、TV受信機1において、セレクトスイッチ5による選択によりデジタルTV放送の映像信号、アナログTV放送の映像信号及び外部映像機器の映像信号の任意の映像信号を選択することができる。
選択された映像信号は、映像信号処理装置8により、垂直及び水平方向の輪郭強調や色変換、色変換されたRGB信号に対するデジタル表示デバイス9の表示可能な階調に合わせたRGBの色信号制限処理等の各種の信号処理が施された後、デジタル表示デバイス9の表示面に映像が表示される。
この場合、RGB制限回路14は、以下のような動作となる。図5(A)は、このRGB制限回路14に、時間的に変化して入力されるRGBの色信号を2点鎖線で示し、またこの場合における出力信号を実線で示している。
【0022】
また、図5(B)は、図5(A)の場合に対応して比較器29から出力される切替信号Scを示す。この切替信号Scが”H”になると、この切替信号Scにより乗算器28a、28b、28cに入力されるゲインがゲイン1からゲインGcに切り替えられる。そして、入力される信号に対する抑圧の動作が行われることになる。なお、図5における横軸は、時間の経過を示す。
図5(A)に示す例では、時刻t0から時刻t1まで、時刻t2から時刻t3まで、時刻t4以降では、色信号の最大値Imaxは、抑圧開始レベルVcs未満であり、この場合には切替信号Scが出力されない(”L”である)ため、乗算器28a、28b、28cは、入力信号に対してゲイン1を乗算して、出力する。
【0023】
このため、入力されるRGBの各色信号は、そのまま出力される。つまり、この場合には、図5(A)に示すように入力波形と出力波形が重なっている(2点鎖線は実線と重なっている)。
これに対して、色信号の最大値ImaxとなっているRの色信号は、時刻t1で抑圧開始レベルVcsとなり、この時刻t1からt2までの間、Rの色信号は、抑圧開始レベルVcs以上となる。
従って、図5(B)に示すようにこの時刻t1からt2において比較器29は、切替信号Scを出力し、抑圧ゲインGcが乗算器28a、28b、28cに入力されるようにする。
【0024】
上述したようにこのゲインGcは、抑圧開始レベルVcsではゲイン1であるが、抑圧開始レベルVcsを超える値が大きい程、そのゲインが1から小さくなるように設定されているため、このRの色信号が抑圧開始レベルVcsを超える値が大きい程大きく抑圧される。従って、2点鎖線で示すRの色信号は、実線で示すような波形に抑圧される。
この場合、この抑圧ゲインGcにより、このRの色信号の他のG,Bの色信号も同様に抑圧される。従って、本実施例によれば、ホワイトバランスを崩すことなく、抑圧開始レベルVcs以上となる色信号を抑圧することができる。
他の時刻t3からt4の場合においても、色信号の最大値が抑圧開始レベルVcs以上になると、抑圧ゲインGcにより共通に抑圧されることになる。
【0025】
このような動作となる本実施例によれば、ダイナミックレンジを制限すべき所定レベルVclより低いレベルの抑圧開始レベルVcsを設定し、入力される複数の色信号における最大値Imaxがこの抑圧開始レベルVcs以上になった場合には抑圧を開始すると共に、抑圧開始レベルVcsを超える値が大きい程、大きく抑圧する。
従って、図4に示した入出力の特性図に示すように入力特性をより適切に反映できる滑らかな出力特性となる出力信号を得ることができる。例えば、入力信号が(抑圧を行うか否かの境界となる)抑圧開始レベルVcsを連続的に横切る場合、出力信号も連続した波形となり、入力特性を従来例よりも適切に反映した出力信号を得ることができる。
また、最大値Imaxを抑制する場合のゲインにより、他の色信号も同時に抑圧することにより、ホワイトバランスが崩れることを防止できる。
【0026】
なお、図3に示すダイナミックレンジクリップ回路31は、図6で示す処理構成で実現する。入力されるRの色信号は、ダイナミックレンジクリップ回路31を構成する比較器51に入力され、制限レベルとなる2の所定レベルVclと比較されると共に、このRの色信号はスイッチ52の接点aに印加される。また、このスイッチ52の接点bには2の所定レベルVclの信号が印加され、比較器51の比較出力によりスイッチ52の接点切替が制御される。
つまり、Rの色信号のレベルが2の所定レベルVcl以下であると、スイッチ52の接点aを経てRの色信号がそのまま出力される。一方、Rの色信号が2の所定レベルVclを超えると、比較器51の比較出力によってスイッチ52は、接点bが選択される状態に切り替えられ、2の所定レベルVclに制限(クリップ)されたレベルの信号が出力される。なお、図6ではRの色信号の場合で示したが、G,Bの色信号の場合にも同様の構成である。
従って、図6の構成により、簡単な回路構成により、2の所定レベルVclに制限することができる。
【実施例2】
【0027】
次に図7及び図8を参照して本発明の実施例2を説明する。本実施例は、図3に示したRGB制限回路14の機能をソフトウェアで実現したものである。
図7は、図3のRGB制限回路14の機能を実現するCPU41により処理される処理部の構成を図3の構成と類似な表示形態にて示し、図8はCPU41により、RGBの色信号を抑圧することにより、そのダイナミックレンジを制限する処理方法を示すフローチャートを示す。
図7に示すようにmビットのR、G,B信号(それぞれRin,Gin、Binで示す)がCPU41に入力される。これらの入力信号Rin,Gin、Binは、抑圧ゲインを作成する抑圧ゲイン作成処理部42に入力される。
【0028】
そして、この抑圧ゲイン作成処理部42により生成された抑圧ゲインGcにより、乗算&クリップ処理部43において、入力信号Rin,Gin、Binと乗算され、さらに乗算された各信号は所定レベルVclでクリップして出力される。
抑圧ゲイン作成処理部42に入力された入力信号Rin,Gin、Binは、最大値検出処理部44において、入力信号Rin,Gin、Binの最大値Imaxが検出され、その最大値Imaxは、抑圧レベル算出処理部45に入力される。
そして、最大値Imaxと抑圧開始レベルVcsとを用いて、抑圧すべき信号レベル(抑圧レベルという)Vcが算出される。この抑圧レベル算出処理部45は、抑圧開始レベルVcsを決定するパラメータPcsが入力されることにより、抑圧レベルVcが設定される。
【0029】
例えば、抑圧レベルVcは、Vc=Imax−Vcs設定される。ここで、抑圧開始レベルVcsは、例えば2−Pcsである。
また、抑圧レベルVcは、0以下の場合には、0に設定される(後述のように抑圧レベルVcが0であると、抑圧ゲインは1となり、抑圧をしない場合と同じ処理結果となる)。従って、実際には抑圧レベルVcが0以上か否かの判定、つまり最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上か否かの判定処理を行っている。
この抑圧レベル算出処理部45により算出された抑圧レベルVcを用いて、抑圧ゲイン算出処理部46により抑圧ゲインGcが算出される。例えば、この抑圧ゲインGcは、
Gc=1−(Vc/2)+(Vc/2 (1)
である。
【0030】
本実施例では、このように抑圧ゲインGcの値を入力される入力信号Rin,Gin、Binの最大値Imaxから抑圧開始レベルVcsを減算した値(但しVc≧0)の2次関数を用いている。
この抑圧ゲインGcは、乗算&クリップ処理部43における乗算処理部47において、入力信号とそれぞれ乗算処理され、乗算処理により抑圧された色信号Rco、Gco、Bcoが生成される。
これらの色信号Rco、Gco、Bcoは、さらにクリップ処理部48において、2に相当するレベルVcl以下にクリップされ、nビット以下の出力信号Ro,Go,Boとして出力される。
【0031】
実施例1では、R、G、Bの色信号(入力信号)の最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上か否かに応じて、抑圧ゲインGcをゲイン1の場合と切り替えていたが、本実施例では最大値Imaxが抑圧開始レベルVcs以上か否か判定と、その判定結果により抑圧ゲインGcを設定する処理を含めて行うようにしている。
また、実施例1でも説明したが、本実施例においても最大値Imaxが抑圧開始レベルVcsに一致した時(つまりVc=0の時)には、式(1)から分かるように、抑圧ゲインGcが1となる条件を満たすように設定されている。
次に図8のフローチャートを参照して本実施例におけるCPU41によるRGBの色信号を制限(抑圧)する処理方法を説明する。
【0032】
ステップS1に示すようにCPU41は、このCPU41に入力されるR,G,Bの入力信号Rin,Gin、Binから各時刻における最大値Imaxを算出する。
そして、ステップS2に示すようにCPU41は、パラメータにより抑圧開始レベルVcsの設定(算出)とこの抑圧開始レベルVcsを用いて抑圧レベルVcの算出を行う。 次のステップS3においてCPU41は、抑圧レベルVcを用いて抑圧ゲインGcを算出する。
この抑圧ゲインGcを算出後、次のステップS4においてCPU41は、抑圧ゲインGcを入力信号Rin,Gin、Binに乗算して、入力信号Rin,Gin、Binに対する抑圧処理を行い、抑圧された色信号Rc、Gc、Bcを生成する。
【0033】
これらの色信号Rc、Gc、Bcは、次のステップS5において、所定レベルVcl以下となるようにクリップ処理されて出力される。そして、この処理の後、最初のステップS1に戻り、次の入力信号Rin,Gin、Binに対してステップS1からステップS5の処理ループを繰り返す。
このように動作する本実施例の効果は、実施例1と殆ど同様の効果を有する。つまり、入力信号Rin,Gin、Binの最大値Imaxから抑圧開始レベルVcsを減算した値が0未満では、抑圧ゲインGcはそのゲインが1となり、入力信号Rin,Gin、Binと乗算して入力信号Rin,Gin、Binがそのまま出力される。
【0034】
一方、入力信号Rin,Gin、Binの最大値Imaxから抑圧開始レベルVcsを減算した値が0以上では、式(1)の抑圧ゲインGcを入力信号Rin,Gin、Binと乗算して出力する。
従って、本実施例の場合にも、例えば入力信号Rin,Gin、Binが図5(A)の2点鎖線のように変化した場合には、図5(A)の実線で示すような波形となる出力信号Ro,Go,Boを得ることができる。
【0035】
従って、本実施例によれば、入力特性をより適切に反映できる滑らかな出力特性となる出力信号を得ることができる。また、最大値Imaxを抑圧する場合のゲインにより、他の色信号も同時に抑圧することにより、ホワイトバランスが崩れることを防止できる。 なお、例えば図3の抑圧ゲイン作成部における抑圧ゲイン発生回路26に入力される色信号の最大値Imaxを図9に示すようにクランプ回路51を用いて、その最大値が所定レベルVclとなるようにクランプするようにしても良い。
つまり、最大値Imaxは、比較器62に入力されると共に、スイッチ63を経て抑圧ゲイン発生回路26に入力される。そして最大値Imaxは、比較器62により所定レベルVclと比較され、所定レベルVcl以下ではスイッチ63を経て抑圧ゲイン発生回路26に入力される。
【0036】
一方、最大値Imaxが所定レベルVcl以上になると、スイッチ63が切り替えられて、所定レベルVclが抑圧ゲイン発生回路26に入力される。
このようにして抑圧ゲイン発生回路26に入力される色信号の最大値Imaxを所定レベルVcl以下となるようにクランプすると、この最大値Imaxがこの所定レベルVcl以上になった場合にも、この所定レベルVclに対応した抑圧ゲインGcが維持される。
このため、ダイナミックレンジクリップ回路31により所定レベルVcl以下の信号をクリップして出力する場合においても、確実にホワイトバランスが崩れることなく抑圧された信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1を備えたTV受信機の構成を示すブロック図。
【図2】TV受信機における実施例1の映像信号処理装置の構成を示すブロック図。
【図3】実施例1におけるRGB制限回路の全体構成図。
【図4】RGB制限回路における入出力特性を示す図。
【図5】時間的に変化するRGB信号が入力された場合におけるRGB制限回路における出力波形等を示す動作説明図。
【図6】ダイナミックレンジクリップ回路の構成を示す図。
【図7】本発明の実施例2におけるRGB制限処理を行う処理部の概略の構成図。
【図8】実施例2におけるRGB制限処理の動作手順を示すフローチャート。
【図9】変形例のRGB制限回路における主要部の構成を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1…TV受信機
3A…デジタルTVチューナ
3B…アナログTVチューナ
4…MPEG−2デコーダ
5…セレクトスイッチ
8…映像信号処理装置
9…デジタル表示デバイス
13…色変換回路
14…RGB制限回路
15…W/B&γ補正回路
16…ディザ回路
22…最大値検出回路
23…抑圧ゲイン作成部
24…パラメータ入力部
25…抑圧開始レベル設定部
26…抑圧ゲイン発生回路
27…切替スイッチ
28a、28b、28c…乗算器
29…比較器
31…ダイナミックレンジクリップ回路
41…CPU
代理人 弁理士 伊藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される複数の色信号における最大の信号レベルを検出する手段と、
前記複数の色信号における信号レベルの抑圧を開始する抑圧開始レベルを設定する抑圧開始レベル設定手段と、
前記複数の色信号における最大の信号レベルが前記抑圧開始レベル以上となることを検出する検出手段と、
前記最大の信号レベルが前記抑圧開始レベルから前記抑圧開始レベルを超える所定レベルに達する範囲内で、前記最大の信号レベルを抑圧するゲインを用いて、前記複数の色信号を共通に抑圧する抑圧手段と、
を具備することを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記抑圧開始レベルは、その値が変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記抑圧手段は、前記最大の信号レベルが前記抑圧開始レベル以上の場合、前記最大の信号レベルが前記抑圧開始レベルを超える値が大きい程、前記ゲインの値を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記複数の色信号は、RGBの3原色信号であることを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
前記抑圧手段は、前記最大の信号レベルが前記所定レベル以上の場合には前記所定レベルに対応した値のゲインにクランプすることを特徴とする請求項3に記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
前記映像信号処理装置は、TVチューナを有し、前記TVチューナにより選局されたチャンネルのTV信号から映像に対応する前記複数の色信号を生成するTV受信機を形成することを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項7】
さらに前記映像信号処理装置から出力される複数の色信号が入力されることにより、前記複数の色信号に対応する映像を表示する映像表示デバイスを有することを特徴とする請求項1に記載の映像信号処理装置。
【請求項8】
入力される複数の色信号における最大の信号レベルを検出する最大信号レベル検出ステップと、
検出された前記最大の信号レベルに基づいて前記複数の色信号を抑圧するための抑圧ゲインを設定する抑圧ゲイン設定ステップと、
前記最大の信号レベルが、第1の所定レベルから前記第1の所定レベルを超える第2の所定レベルに達する範囲内で、前記最大の信号レベルを抑圧するゲインを用いて、前記複数の色信号を共通に抑圧する信号抑圧ステップと、
を具備することを特徴とする色信号の抑圧方法。
【請求項9】
前記抑圧ゲイン設定ステップは、前記最大の信号レベルが、第1の所定レベル以下の時には前記ゲインを1に設定することを特徴とする請求項8に記載の色信号の抑圧方法。
【請求項10】
前記信号抑圧ステップは、前記最大の信号レベルから前記第1の所定レベルを減算した値が大きい程、前記ゲインの値を小さく設定することを特徴とする請求項8に記載の色信号の抑圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−179978(P2006−179978A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368214(P2004−368214)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】