説明

映像再生装置及び映像再生装置の制御方法

【課題】 スロー再生中に入力映像のフレームレートが変化した場合、フレームレートの変化の前後でスロー再生速度を一定に保つことが可能な映像再生装置及び映像再生装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 フレームレートの値を取得し、スロー再生制御部109は変化後のフレームレートで、設定されたスロー再生速度でスロー再生するために必要な各フレームの表示時間を算出する。そして、スロー再生制御部109は動画デコード部106に対して各フレームを算出した表示時間間隔で表示するように指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像のスロー再生が可能な映像再生装置及び映像再生装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、1つの映像ストリームデータ中に複数のフレームレートの映像を符号化することができるH.264/SVC(Scalable Video Coding)技術が規格化されている。この技術によれば、標準的な30fps(flame per second)の映像に対して、たとえば480fpsなどの高いフレームレートの映像を付加して符号化することが出来るようになる。さらに、H.264/SVCでは映像中の特定期間にのみ高フレームレートの映像を付加することも可能である。つまり、野球中継の映像コンテンツにおいて、映像コンテンツ中のバッティングのシーンのみ高フレームレートな映像を付加して符号化することができる。
【0003】
なお、映像コンテンツの特殊再生時の再生速度を適応的に制御する技術としては、字幕などの付加情報の情報量に基づいて再生速度を制御するものがある(特許文献1参照)。また、映像ストリームデータのビットレートに基づいて再生速度を制御する技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164969号公報
【特許文献2】特開2008−227744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な表示機器では、映像表示におけるリフレッシュレートが60Hzであることが多いが、最近では、より高速な表示が可能な120Hzや240Hzに対応する表示機器も登場してきている。また、携帯電話などの携帯機器ではリフレッシュレートが15Hzや30Hzであることが一般的である。なお、リフレッシュレートとは1秒あたりの画像(フレーム)表示回数を示すものである。
【0006】
例えば、30fpsの映像コンテンツを60Hzの表示機器で表示する場合は1フレームを2度繰り返したり、2つのフレームから補間処理によりフレーム間に新規のフレームを生成したりすることで、毎秒30枚のフレームを実質的に60フレームとしている。
【0007】
対して、映像が表示機器のリフレッシュレートよりも高いフレームレートを有している場合には、全てのフレームを表示機器のリフレッシュレートで表示すると、見た目には実際の動きよりもゆっくりした動き(これをスローモーション、または単にスローと称する)として映る。例えば、480fpsの映像を60Hzの表示機器で全てのフレームを表示した場合には、1秒あたり480枚のフレームが480÷60=8秒で表示されることになるので、実際の動きよりも8倍遅く見えることになる。つまり、実際には1秒の間の動きを8秒かけてスローモーションで表示することを意味している。反対に、表示機器のリフレッシュレートよりも高いフレームレートを有する映像を実時間と等しい速度で再生するには、フレームを間引いて表示することが考えられる。例えば、480fpsの映像を60Hzの表示機器に等速(1倍速)で表示する場合には、8枚につき1枚のフレームを周期的に抽出して表示すればよいことになる。
【0008】
従って、表示機器のリフレッシュレートとは異なるフレームレートを有する映像コンテンツであっても、表示機器のリフレッシュレートにあわせて、実時間と等速の再生を行うことが可能である。
【0009】
このように、映像コンテンツをスローモーションとして再生する、いわゆるスロー再生をする場合、映像コンテンツが有するフレームレートと、表示機器のリフレッシュレートに基づいて、再生処理を制御する必要がある。つまり、スロー再生中に入力映像のフレームレートがシーンによって動的に変化する場合には、変化を検出し、変化の内容に基づいてスロー再生処理の制御をする必要がある。
【0010】
しかし、現在の映像再生装置のスロー再生機能は、スロー再生中に入力映像のフレームレートが変化することを想定しておらず、フレームレートの変化を検出し、変化の内容に基づいてスロー再生処理を制御していなかった。
【0011】
また、上述した特許文献1に開示の技術は、特殊再生における再生速度は制御しているが、再生速度の制御にあたっては、字幕などの付加情報の情報量を参照しており、フレームレートの変化に基づいた制御を行っていない。上述した特許文献2に開示の技術は、特殊再生における再生速度は制御しているが、再生速度の制御にあたっては、映像データのビットレートを参照しており、フレームレートの変化に基づいた制御を行っていない。
【0012】
そこで、本発明は、スロー再生中の映像コンテンツのフレームレートの変化を検出してスロー再生処理を制御するにあたり、フレームレートの変化の前後でスロー再生速度を一定に保つことが可能な映像再生装置及び映像再生装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の映像再生装置は、映像データのスロー再生制御が可能な映像再生装置であって、再生する符号化映像データのフレームレートの値を当該符号化映像データの属性情報から取得する取得手段と、ユーザから指示されたスロー再生の再生速度と、前記取得手段が取得した前記符号化映像データのフレームレートの値とを用いて、当該符号化映像データを前記再生速度で再生するための、前記符号化映像データを復号して得られるフレーム単位の表示時間を算出する制御手段と、前記算出されたフレーム単位の表示時間に基づいて前記符号化映像データを復号するとともに、復号で得られたフレームを、当該フレームを表示する表示部のリフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行するデコード手段と、を有し、前記再生速度でのスロー再生中に、スロー再生している映像データのフレームレートが変化したことを前記取得手段が検出した場合、前記制御手段は、変化後のフレームレートで前記再生速度のスロー再生を行うことが可能なフレーム単位の表示時間を算出し、前記デコード手段は、前記変化後のフレームレートに対応して算出されたフレーム単位の表示時間を用いて、前記符号化映像データを復号するとともに、当該復号で得られたフレームを、前記リフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、スロー再生中の映像コンテンツのフレームレートの変化を検出してスロー再生処理を制御するにあたり、フレームレートの変化の前後でスロー再生速度を一定に保つことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の各実施例に係る映像再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係るフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係るフローチャートである。
【図4】本発明の実施例3に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例について説明する。本実施例の映像再生装置は、リフレッシュレートが60Hzの表示パネルで表示する映像を再生する装置である。したがって、表示パネルと別体として設けられた映像コンテンツの再生装置であっても良いし、表示パネルとプレーヤが同一の筐体に設けられているタイプの映像再生装置であっても良い。
【0018】
再生対象の映像コンテンツは、MPEG2 TS(Transport Stream)形式のストリームデータである。このMPEG2 TSのストリームデータには、H.264/SVCで符号化された映像ストリームデータと音声ストリームデータが多重化されている。このストリームデータを単に符号化映像データと称する。
【0019】
図1は、実施例1に係る映像再生装置100の構成を示すブロック図である。蓄積部101は映像コンテンツとしての符号化映像データを蓄積する。符号化映像データは、放送や通信といった手段で受信し、蓄積部101に蓄積するものとする。入力部102は蓄積部101に蓄積されているMPEG2 TSで符号化された符号化映像データを読み出し、分離部103へ出力する。
【0020】
分離部103は入力された符号化映像データから映像ストリームデータと音声ストリームデータを分離する。その後、分離部103は分離した映像ストリームデータを動画デコード部106とフレームレート検出部108へ、音声ストリームデータを音声デコード部104へそれぞれ出力する。
【0021】
音声デコード部104は、入力された音声ストリームデータを復号し、復号した音声データを音声出力部105へ出力する。音声出力部105は、入力した音声データをスピーカへ出力する。
【0022】
動画デコード部106は、入力された映像ストリームデータを映像データに復号し、復号した映像データを映像合成出力部107へ出力する。復号した映像データはフレーム単位の映像データである。動画デコード部106は、表示パネルのリフレッシュレートと同期するように、フレーム単位の映像データのフレームレートを60fpsとするような補間処理または間引き処理を行う。通常再生時には、復号した映像データの各フレームを実時間と等しい速度となるような補間処理または間引き処理を実行する。一方、スロー再生時には、スロー再生制御部109によって指示されたフレームの表示間隔となるように、フレームの補間処理および間引き処理を実行する。映像合成出力部107は、復号された映像データとUI制御部110から出力されたグラフィクスデータを合成し、合成したデータを表示パネル(表示部)へ出力する。
【0023】
フレームレート検出部108は、入力された映像ストリームデータを解析し、入力されたフレームレートの値を検出する。また、フレームレートの値が変化した場合には、変化した旨をスロー再生制御部109に通知する。入力したH.264/SVCの映像ストリームデータには、符号化データに対するヘッダデータとして、シーケンス全体の符号化に関わる情報であるSPS(Sequence Parameter Set)が含まれる。フレームレートの値は、このSPSから取得する。また、映像ストリームデータのSPSを常に監視し続けることで、フレームレートの値の変化を検出することができる。なお、フレームレートの値は、映像ストリームデータのSPSに限らず、映像ストリームデータのフレームレートを示すことが可能な属性情報であれば、どのような情報に含まれていても良い。
【0024】
スロー再生制御部109は、フレームレート検出部108が検出したフレームレートの値を参照し、動画デコード部106に対してスロー再生を指示する制御コマンドを出力する。スロー再生制御部109が制御コマンドを出力するタイミングは、ユーザからスロー再生指示があった場合と、スロー再生中に入力映像のフレームレートの値が変化した場合である。ユーザからスロー再生指示があった場合には、UI制御部110を介してユーザからのスロー再生指示を受信し、スロー再生の制御コマンドを動画デコード部106に出力する。スロー再生中に入力映像のフレームレートの値が変化した場合には、フレームレート検出部108からフレームレートが変化した旨の通知を受信し、スロー再生の制御コマンドを動画デコード部106に出力する。スロー再生制御部109の詳細な処理については後述する。
【0025】
UI制御部110は、ユーザからの指示や、映像再生装置100の内部状態に応じて、ユーザへ提示するメニューなどのグラフィクスデータを生成し、映像合成出力部107へ出力する。また、UI受信部111からのスロー再生指示等の指示情報を、スロー再生制御部109へ出力する。UI受信部111は、ユーザからの入力を受け付け、UI制御部110へユーザから入力された指示情報を出力する。
【0026】
続いて、スロー再生の開始処理について説明する。スロー再生はユーザの指示によって開始される。また、スロー再生速度もユーザから指定される。
【0027】
スロー再生制御部109はUI制御部110から、スロー再生開始指示とスロー再生速度の入力を受ける。また、スロー再生制御部109はフレームレートの値をフレームレート検出部108から入力される。スロー再生制御部109はスロー再生速度(SP)と、フレームレートの値(FR)とを用いて、1/(SP×FR)の値を各フレーム単位の表示時間(TM)として算出する。そして、復号した映像データの各フレームを、算出した表示時間毎に表示するよう、動画デコード部106へ指示する。
【0028】
動画デコード部106は入力した映像ストリームデータを復号し、復号した映像データの各フレームをTM毎に出力するように補間処理または間引き処理を行う。具体例として、映像のフレームレートが120fpsであり、ユーザから1/4倍でスロー再生するように指示を受けた場合について説明する。1/4倍のスロー再生とは、実時間における1秒間の映像を4秒かけて再生するようなスロー再生のことである。FRが120fpsであり、SPが1/4倍であるため、TMは1/(120×1/4)=1/30秒となる。スロー再生制御部109は各フレームを1/30秒間隔で表示するよう動画デコード部106へ指示する。動画デコード部106は入力映像の各フレームを1/30秒間隔で処理し、表示パネルのリフレッシュレートである60fpsに適応させるために、1枚のフレームを2回繰り返して出力するような補間処理を実行する。
【0029】
続いて、本発明の特徴的な処理である、スロー再生中に入力映像のフレームレートの値が変化した際の制御について説明する。図2は、スロー再生中にフレームレートの値が変化した際の処理を示す。以下では、具体例としてフレームレートの値が120fpsの映像を1/4倍でスロー再生していたときに、フレームレートの値が480fpsに変化した場合について説明する。
【0030】
ステップS101で、フレームレート検出部108は入力映像のフレームレートの値が変化したことを検出し、変化したフレームレートの値を取得する。さらに、フレームレートの値が変化したことと、変化前後のフレームレートの値をスロー再生制御部109へ出力する。
【0031】
ステップS102で、スロー再生制御部109はフレームレートの変化前の値をFR1とし、変化後のフレームレートの値をFR2として設定する。具体例でいえば、FR1が120fpsであり、FR2が480fpsである。
【0032】
ステップS103で、スロー再生制御部109は現在のスロー再生速度をSP1として設定する。具体例でいえばSP1は1/4倍である。ステップS104で、スロー再生制御部109は1/(FR2×SP1)を各フレームの表示時間TMとして算出する。そして、スロー再生制御部109は動画デコード部106に対して各フレームをTM間隔で表示するように指示する。具体例でいえば、各フレームの表示時間TMは1/(480×1/4)=1/120秒となる。
【0033】
その後、ステップS105で、動画デコード部106は復号した入力映像の各フレームをTM間隔で表示し、表示パネルのリフレッシュレートである60fpsに適応させるために、フレームの補間処理もしくは間引き処理を実行する。具体例でいえば、動画デコード部106は、フレームレートの変化前は各フレームを1/30秒間隔で表示するために1枚のフレームを2回繰り返して表示していた。しかし、フレームレート変化後では各フレームを1/120秒間隔で表示するために2枚につき1枚のフレームを周期的に抽出して表示する処理(間引き処理)を実行する。以上の処理によって、映像再生中に入力映像のフレームレートの値が変化した後についても、変化前と同様に、実時間の1/4倍の速度にてスロー再生を行うことができる。
【0034】
以上、本実施例によれば、スロー再生中の映像コンテンツのフレームレートの値が変化した場合でも、フレームレートの変化後も変化前と同じ再生速度にてスロー再生を行うことができる。これによって、入力映像のフレームレートの変化によってスロー再生速度が変化してしまい、映像を視聴しているユーザに対して違和感を与えることを防ぐことができる。
【0035】
なお、本実施例においては、図2のステップS104において、スロー再生制御部109はフレームレートの値が変化した後の各フレームの表示時間TMを算出して決定したが、このときTMの上限を設定してもよい。具体的には、スロー再生速度SP1の値と、変化後のフレームレートの値の組み合わせによっては、算出される表示時間TMがスロー再生に適さないほど大きい値になってしまう場合がある。例えば、スロー再生速度SP1が1/32倍であるときに、フレームレートの値が30fpsに変化すると、変化後の各フレームの表示時間TMは1.07秒程度の値となる。この場合、1枚のフレームが1秒以上表示されるため、スロー再生というよりも静止画のスライドショーやコマ送りのような再生になってしまい、望ましい再生とは言えない。このため、表示時間TMの上限の値を例えば1/15秒とし、算出した結果がそれよりも大きくなる(フレーム単位の表示時間が長時間になる)場合には、常に1/15秒を表示時間TMの値とするような制御をしてもよい。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。上述した実施例1は、映像データのフレームレートの値が変化しても、映像の実時間に対するスロー再生速度が変化しないようにするものであった。対して、本実施例はフレームレートの値が変化したことに従い、スロー再生中の各フレームの表示間隔を変化前の表示間隔と同一にすることに特徴を有する。つまり、フレームレートの変化前後で、実時間に対するスロー再生速度は変化することになる。
【0037】
実施例2における映像再生装置の構成は、図1で示した実施例1の映像再生装置の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0038】
図3は、実施例2における、スロー再生中にフレームレートの値が変化した際の処理を示す。以下では、具体例としてフレームレートの値が120fpsの映像を1/4倍速でスロー再生していたときに、映像のフレームレートの値が480fpsに変化した場合について説明する。120fpsの映像を1/4倍速でスロー再生しているので、各フレームは1/30秒間隔で表示している。したがって、フレームレートの値が480fpsに変化しても、各フレームを1/30秒間隔で表示することが求められる。
【0039】
ステップS201からステップS203は上述した実施例1における図2のフローチャートのステップS101からステップS103と等しい制御であるので説明を省略する。
【0040】
ステップS204で、スロー再生制御部109はフレームレートの値が変化した後のスロー再生速度SP2=FR1/FR2×SP1を求める。具体例でいえば、変化後再生速度SP2は(120/480)×1/4=1/16倍と算出する。
【0041】
ステップS205で、スロー再生制御部109は1/(FR2×SP2)を各フレームの表示時間TMとして算出する。スロー再生制御部109は動画デコード部106に対して各フレームをTM間隔で表示するように指示する。具体例でいえば、各フレームの表示時間TMは1/(480×1/16)=1/30秒となる。
【0042】
ステップS206で、動画デコード部106は復号した入力映像の各フレームをTM間隔で表示し、パネルのリフレッシュレートである60fpsに適応させるために、補間処理もしくは間引き処理をする。具体例でいえば、動画デコード部106は、変化前は各フレームを1/30秒間隔で表示するために1枚のフレームを2回繰り返して出力していた。変化後も各フレームを1/30秒間隔で表示するために1枚のフレームを2回繰り返して出力する。
【0043】
以上の処理によって、フレームレートの値が変化した後については1/16倍でスロー再生することで、変化前と同様に各フレームの表示時間を1/30秒とするようなスロー再生を行うことができる。
【0044】
以上、本実施例によれば、スロー再生中の映像コンテンツのフレームレートの値が変化した場合、変化後においても変化前と同じ各フレームの表示時間にてスロー再生を行うことができる。これによって、入力映像のフレームレートの値が大きく変化した場合には、単位時間あたりのフレーム数が多くなったことを利用し、変化前の映像に比べて再生速度を実質的に低速にし、より詳細なスロー再生を行うことができる。反対に、入力映像のフレームレートの値が小さく変化した場合には、単位時間あたりのフレーム数が少なくなったことによって、スロー再生というよりもコマ送りのような再生になってしまうことを低減することができる。
【0045】
なお、本実施例においては、図3のステップS204において、スロー再生制御部109はフレームレートの値が変化した後のスロー再生速度SP2を算出して決定したが、このときSP2の値の上限を設定してもよい。具体的には、スロー再生速度SP2の値が1倍より大きくなるとスロー再生ではなく、早送り再生になってしまう。これに対応するために、上限の値を0.8倍とし、算出した結果がそれより大きくなる場合は常に0.8倍を再生速度とするような制御をしてもよい。
【実施例3】
【0046】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。上述した実施例1および2は、フレームレートの値が大きくなるような変化と小さくなるような変化において同じ処理を行うものであった。対して、本実施例はフレームレートの値が大きくなるような変化と、小さくなるような変化とでスロー再生処理を分岐させることに特徴を有する。
【0047】
実施例3における映像再生装置の構成は、図1で示した実施例1の映像再生装置の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
図4は、実施例3における、スロー再生中にフレームレートの値が変化した際の処理を示す。以下では、具体例としてフレームレートの値が120fpsの映像を1/4倍でスロー再生していたときに、フレームレートの値が480fpsに変化した場合と、60fpsに変化した場合について説明する。
【0049】
ステップS301からステップS303は上述した実施例1における図2のフローチャートのステップS101からステップS103と等しい制御であるので説明を省略する。
【0050】
ステップS304で、スロー再生制御部109はFR2がFR1より大きいか、それとも、FR2がFR1より小さいかを比較により判定する。FR2がFR1より大きい場合はステップS307へ、FR2がFR1より小さい場合はステップS305へ処理を進める。具体例でいえば、120fpsから480fpsへ変化した場合はステップS307へ、120fpsから60fpsへ変化した場合はステップS305へ処理を進める。
【0051】
ステップS305で、スロー再生制御部109はFR1/FR2×SP1をフレームレートの値が変化した後のスロー再生速度SP2と決定する。具体例でいえば、120fpsから60fpsへ変化した場合は、120/60×1/4=1/2倍をスロー再生速度SP2とする。
【0052】
ステップS306で、スロー再生制御部109は1/(FR2×SP2)を各フレームの表示時間TMと算出する。スロー再生制御部109は動画デコード部106に対して各フレームをTM間隔で表示するように指示する。具体例でいえば、120fpsから60fpsへ変化した場合は、各フレームの表示時間TMは1/(60×1/2)=1/30秒となる。
【0053】
ステップS307で、スロー再生制御部109は1/(FR2×SP1)を各フレームの表示時間TMと算出する。スロー再生制御部109は動画デコード部106に対して各フレームをTM間隔で表示するように指示する。具体例でいえば、120fpsから480fpsに変化した場合は、各フレームの表示時間TMは1/(480×1/4)=1/120秒となる。
【0054】
ステップS308において、動画デコード部106は復号した入力映像の各フレームをTM間隔で表示し、表示パネルのリフレッシュレートである60fpsに適応させるために、補間処理もしくは間引き処理をする。具体例でいえば、動画デコード部106は、フレームレート変化前は各フレームを1/30秒間隔で表示するために1枚のフレームを2回繰り返して表示していた。480fpsに変化した場合は、各フレームを1/120秒間隔で表示するために2枚につき1枚のフレームを周期的に抽出して表示する。60fpsに変化した場合は、各フレームを1/30秒間隔で表示するために1枚のフレームを2回繰り返して表示する。
【0055】
以上の処理によって、フレームレートが120fpsから480fpsへ大きくなった場合には、変化前と同様に1/8倍のスロー再生速度にてスロー再生を行うことができる。反対に、フレームレートが120fpsから60fpsへ小さくなった場合には、再生速度を1/2倍とする事で変化前と同様に各フレームの表示時間を1/30秒とするようなスロー再生を行うことができる。
【0056】
以上、本実施例によれば、スロー再生中の映像コンテンツのフレームレートの値が変化した場合、フレームレートが大きくなる変化と、小さくなる変化のそれぞれで処理を切り換えることができる。これによって、入力映像のフレームレートの値が大きくなる変化をした場合には、変化後の各フレームの表示時間を短くすることで、スロー再生速度を一定に保つことができる。反対に、フレームレートの値が小さくなる変化をした場合には、スロー再生速度を速くすることで、変化後の各フレームの表示時間が変化前より長くなることで、望ましくないスロー再生になることを低減できる。
【0057】
なお、以上の各実施例で説明した構成要素及び処理は、ハードウェアで実装してもよいし、ソフトウェアで実装してもよいし、その組み合わせで実装してもよい。これらの構成要素及び処理の一部又は全部を実装するソフトウェア(プログラム)、及びこれを格納した記憶媒体も、本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データのスロー再生制御が可能な映像再生装置であって、
再生する符号化映像データのフレームレートの値を当該符号化映像データの属性情報から取得する取得手段と、
ユーザから指示されたスロー再生の再生速度と、前記取得手段が取得した前記符号化映像データのフレームレートの値とを用いて、当該符号化映像データを前記再生速度で再生するための、前記符号化映像データを復号して得られるフレーム単位の表示時間を算出する制御手段と、
前記算出されたフレーム単位の表示時間に基づいて前記符号化映像データを復号するとともに、復号で得られたフレームを、当該フレームを表示する表示部のリフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行するデコード手段と、を有し、
前記再生速度でのスロー再生中に、スロー再生している映像データのフレームレートが変化したことを前記取得手段が検出した場合、前記制御手段は、変化後のフレームレートで前記再生速度のスロー再生を行うことが可能なフレーム単位の表示時間を算出し、前記デコード手段は、前記変化後のフレームレートに対応して算出されたフレーム単位の表示時間を用いて、前記符号化映像データを復号するとともに、当該復号で得られたフレームを、前記リフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行することを特徴とする映像再生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、変化後のフレームレートに応じて算出した表示時間が、予め定めた上限の表示時間よりも長時間となる場合には、前記上限の表示時間を変化後のフレームレートに対応するフレーム単位の表示時間として決定することを特徴とする請求項1に記載の映像再生装置。
【請求項3】
前記制御手段は、変化前のフレームレートと変化後のフレームレートと再生速度とを用いて、変化後のフレームレートに対応する変化後再生速度を算出することが可能であり、
前記再生速度でのスロー再生中に、スロー再生している映像データのフレームレートが変化したことを前記取得手段が検出した場合、前記制御手段は、変化前のフレームレートと変化後のフレームレートを比較し、変化後のフレームレートが変化前のフレームレートよりも高いフレームレートである場合には、前記変化後のフレームレートで前記再生速度のスロー再生を行うことが可能なフレーム単位の表示時間を算出し、変化後のフレームレートが変化前のフレームレートよりも低いフレームレートである場合には、前記変化後のフレームレートに対応する変化後再生速度を算出し、当該変化後再生速度のスロー再生を行うことが可能なフレーム単位の表示時間を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の映像再生装置。
【請求項4】
映像データのスロー再生制御が可能な映像再生装置の制御方法であって、
再生する符号化映像データのフレームレートの値を当該符号化映像データの属性情報から取得する取得ステップと、
ユーザから指示されたスロー再生の再生速度と、前記取得ステップで取得した前記符号化映像データのフレームレートの値とを用いて、当該符号化映像データを前記再生速度で再生するための、前記符号化映像データを復号して得られるフレーム単位の表示時間を算出する制御ステップと、
前記算出されたフレーム単位の表示時間に基づいて前記符号化映像データを復号するとともに、復号で得られたフレームを、当該フレームを表示する表示部のリフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行するデコードステップと、を有し、
前記再生速度でのスロー再生中に、スロー再生している映像データのフレームレートが変化したことを前記取得ステップで検出した場合、前記制御ステップでは、変化後のフレームレートで前記再生速度のスロー再生を行うことが可能なフレーム単位の表示時間を算出し、前記デコードステップでは、前記変化後のフレームレートに対応して算出されたフレーム単位の表示時間を用いて、前記符号化映像データを復号するとともに、当該復号で得られたフレームを、前記リフレッシュレートに適応させるための補間処理または間引き処理を実行することを特徴とする映像再生装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244328(P2011−244328A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116396(P2010−116396)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】