説明

映像射撃シミュレータ

【課題】 性能を向上できる映像射撃シミュレータを提供する。
【解決手段】 火器5の弾道に対応する指向性の光を照射する発光手段7、弾着位置計測手段3、命中判定データを記憶した記憶手段、訓練映像の再生を制御し、弾丸が命中したか否かを判別し、この判別結果に応じて再生する訓練映像を切り替える映像制御手段17、操作手段21を備え、記憶手段には、複数のストーリーに対応する訓練映像のデータが記録されており、操作手段21は、そのとき再生している映像とは異なる場面に切り替えるためのブランチ指令スイッチを有し、映像制御手段17は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中にブランチ指令スイッチが操作されブランチ指令が発せられると、このブランチ指令スイッチからのブランチ指令に対応するデータを記憶手段から検索し、投影手段3で投影する訓練映像をこの検索した訓練映像に切り替える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影した映像を用いて射撃などの訓練を行う映像射撃シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
投影した映像を用いて射撃などの訓練を行う映像射撃シミュレータとして、訓練映像を投影する投影手段、この投影手段からの訓練映像が投射され、標的スクリーンなどによって形成される訓練映像投射面などを備えたものが考えられている。このような映像射撃シミュレータでは、銃や模擬銃などといった火器に取り付けられた発光手段を用い、それらの銃のトリガーなどを操作することにより、発光手段が、それらの銃などの弾道に対応する指向性の光を照射する。そして、この発光手段からの光が当たった訓練映像投射面の位置を着弾位置情報として弾着位置計測手段で検出し、検出した着弾位置情報に基づいて命中か否かを判定する。
【0003】
このような映像射撃シミュレータにおいて、検出した着弾位置情報に基づいて命中か否かを判定したときに、投影手段で投影している映像を切り替えて着弾位置を表示できる映像射撃シミュレータや命中か否かに応じて投影する映像を切り替える映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献1、2参照)、威嚇射撃ができる映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献3参照)、投影された映像のひずみを補正することで着弾位置の検出制度を向上した映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
【0004】
さらに、訓練を受けている者に対して反撃の模擬弾を発射する映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献5参照)、訓練を受けている者の挙動に応じて異なるストーリーの映像に切り替わる映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献6参照)、発光手段からの光に光学的特性を変えることで複数の者が訓練を受けることができるようにした映像射撃シミュレータ(例えば、特許文献7参照)、映像射撃シミュレータではないが、火器以外の攻撃用具、例えば竹刀などを用いて、その攻撃などの効果判定をするシミュレータ(例えば、特許文献8参照)なども提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3298043号公報(第4−6頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−150705号公報(第3−5頁、第1図)
【特許文献3】特開2004−324974号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献4】特開2004−12066号公報(第5−16頁、第1図)
【特許文献5】特開2003−75097号公報(第4−7頁、第1図)
【特許文献6】特開2002−90092号公報(第3−4頁、第1、2図)
【特許文献7】特開平11−6700号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献8】特開2003−79945号公報(第3−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の映像射撃シミュレータでは、訓練を受ける者つまり訓練者が、訓練映像を数回見るとストーリーを覚えてしまい、次の場面が予測できてしまい緊張感のある訓練を継続できない状態となってしまう。これは、訓練者の挙動に応じて異なるストーリーの映像に切り替わる映像射撃シミュレータでも、自分の動作などから次の場面が予測できてしまい、同じ状態である。このため、回数を重ねても訓練のストーリーを訓練者が予測し難い訓練が可能となり、緊張感を継続できるような訓練性能を向上した映像射撃シミュレータが必要とされている。
【0007】
本発明の課題は、訓練性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の映像射撃シミュレータは、訓練映像が投射される訓練映像投射面に訓練映像を投影する投影手段と、火器の弾道に対応する指向性の光を照射する発光手段と、訓練映像投射面の発光手段からの光の位置を着弾位置情報として検出する弾着位置計測手段と、訓練映像及び弾着位置計測手段で検出した着弾位置情報に基づいて命中か否かを判定するための命中判定データを記憶した記憶手段と、この記憶手段に記憶されたデータを検索して訓練映像の再生を制御し、弾着計測手段から送られてきた着弾位置情報と記憶手段に記録されている命中判定データとに基づいて弾丸が命中したか否かを判別し、この判別結果に応じて再生する訓練映像を切り替える映像制御手段と、この映像制御手段に操作者の指令を与える操作手段とを備え、記憶手段には、複数のストーリーに対応する訓練映像のデータが記録されており、操作手段は、そのとき再生している映像とは異なる場面に切り替えるためのブランチ指令スイッチを有し、映像制御手段は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中にブランチ指令スイッチが操作されブランチ指令が発せられると、このブランチ指令スイッチからのブランチ指令に対応するデータを記憶手段から検索し、投影手段で投影する訓練映像をこの検索した訓練映像に切り替える構成とすることにより上記課題を解決する。
【0009】
このような構成とすることにより、例えば訓練映像に任意の場面に分岐点つまりフレームを設け、そこまでを予め設定されたブランチ指令が可能な場面とし、その分岐点までに教官がブランチ指令スイッチを押すことにより、それ以降の映像を異なるストーリーに分岐させ場面を切り替えることが可能になる。したがって、訓練映像のストーリーが何種類にもなり、訓練者がストーリーを予測でき難くなるため、緊張感を継続した訓練などが可能となり、訓練性能を向上できる。
【0010】
また、ブランチ指令スイッチは、そのとき再生している訓練映像とは異なる複数の場面の中から切り替える場面を選択して切り替えるものであり、映像制御手段は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中に前記ブランチ指令スイッチが操作されブランチ指令が発せられると、このブランチ指令スイッチで選択されたブランチ指令に対応するデータを記憶手段から検索して投影手段で投影する訓練映像を切り替える構成とする。このような構成とすれば、複数のストーリーから、教官が選択したストーリーに分岐させることが可能になる。したがって、訓練映像のストーリーの展開がより複雑になり、訓練者がよりストーリーを予測でき難くなるため、訓練性能をより向上できる。
【0011】
さらに、実際の犯行の抑止、犯人の検挙などにおける動作では、銃などの火器を用いるだけでなく、警棒や警杖などを使用する場合もある。しかし、従来の映像射撃シミュレータでは、警棒や警杖などを使用した訓練はできず、また、竹刀などの攻撃用具を用いるシミュレータでは、その攻撃などの効果判定をするだけであり訓練に用いることはできない。
【0012】
そこで、本発明の映像射撃シミュレータは、警棒または警杖といったような、訓練を受ける者が使用する棒状部材を備え、この棒状部材は、手で握る握り部に、手で握ったことを検出する圧力検出手段を有し、映像制御手段手は、棒状部材の圧力検出手段からの信号に基づいてこの信号に対応するデータを憶媒体から検索して投影手段で投影する訓練映像を切り替える構成とする。また、棒状部材を備え、この棒状部材は、この棒状部材が動いたことを検知する軸センサを有し、映像制御手段手は、棒状部材の軸センサからの信号に基づいてこの信号に対応するデータを憶媒体から検索して投影手段で投影する訓練映像を切り替え、場面を切り替える構成とする。さらに、棒状部材が動いたことを検知する軸センサとして、3軸以上の軸センサを用いる構成とする。これらの構成とすることにより、警棒または警杖などの棒状部材による訓練も可能になり、また、訓練映像のストーリーの種類がさらに多くなるため、訓練性能をさらに向上できる。
【0013】
また、実際には、複数のグループで対応するため一人での訓練と異なる状況が発生するばあいもある。そこで、発光手段は、この発光手段の発光部に、照射される光の形状を決定するフィルターを有し、弾着位置計測手段は、訓練映像投射面に照射された光の形状に基づいて該光を照射した発光手段を識別し、この発光手段を識別した識別情報に関連づけて着弾位置情報を映像制御手段に出力する構成とする。このように、発光手段の発光部のフィルターによって、訓練映像投射面に発光手段から照射される光の形状を三角や丸や四角や星型などに変更すれば、弾着位置計測手段で、形状によって複数の訓練者の弁別ができ、訓練性能を一層向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、映像射撃シミュレータの訓練性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの一実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの概略構成を模式的に示す図である。図2は、本発明を適用してなる映像射撃シミュレータで用いる発光手段の概略構成を模式的に示す断面図である。図3は、本発明を適用してなる映像射撃シミュレータで用いる警棒の概略構成を模式的に示す図である。図4は、発明を適用してなる映像射撃シミュレータのブランチ機能を説明するフロー図である。
【0016】
本実施形態の映像射撃シミュレータは、図1に示すように、訓練映像を標的スクリーン1に投影する投影装置3を床に設置している。投影装置3は、天井などに設置することもできる。標的スクリーン1は、本実施形態において訓練映像投射面となるものであり、直接投影が可能であれば壁や天井などを訓練映像投射面として用いることもできる。また、標的スクリーン1を用いて訓練映像投射面を形成する場合、その大きさは、例えば80インチから150インチまでの範囲のものなどを使用することができ、投影装置3と標的スクリーン1までの位置関係などにより適宜選択できる。本実施形態では、投影装置3は、標的スクリーン1のほぼ正面に設置しているが、標的スクリーン1のほぼ正面に設置するだけでなく、標的スクリーン1の正対したスクリーン端に設置しても台形補正の制御を行うことなどにより正常な四角形の訓練映像を標的スクリーン1に投影できる。
【0017】
本実施形態では、訓練を受ける者つまり訓練者が使用する実銃5には、指向性を有する光を照射する発光装置7が内蔵されている。そして、発光装置7は、訓練者が実銃5のトリガーを引いたときに、実銃5の弾道に対応する指向性の光を発光する。発光装置7は、実銃5に装填可能な構造になっており、図2に示すように、発光素子7a、発光素子7aの光の進行方向に対して前面側に設置されて照射する光の形状をかえるフィルター7bを備えている。
【0018】
さらに、本実施形態の発光装置7は、発光素子7aとフィルター7bとの間に設置されたレンズ7c、光の進行方向に対して発光素子7aの後方に設置されて発光素子7aに電圧を印加して駆動するための駆動回路7d、駆動回路7dの電力源となる電池7e、実銃5のトリガーに連動して、電池7eの駆動回路7dへの接続及び遮断を制御するスイッチ回路7fなども備えている。なお、発光装置7は、指向性があれば、例えばレーザ光や赤外線といったような様々な光、光源を利用することができる。
【0019】
投影装置3の周辺に設置する弾着位置計測装置9、本実施形態では投影装置3の横に設置している弾着位置計測装置9は、図1に示すように、カメラ部9aを有し、カメラ部9aで発光装置7から標的スクリーン1に照射された光を撮影して検知し、標的スクリーン1の訓練映像投射面での着弾位置情報として着弾座標を計算する。さらに、本実施形態の弾着位置計測装置9は、カメラ部9aで撮影した映像に基づき着弾座標を計算した光の形状を、カメラ部9aの画素により形状判別を行う。したがって、本実施形態の弾着位置計測装置9は、計算した着弾座標に、その着弾座標を照射した発光装置7を弁別するための識別情報を関連づけて出力する。
【0020】
したがって、本実施形態の映像訓練シミュレータでは、複数の発光装置7を備えた実銃5を用い、複数の訓練者が訓練を行う場合でも、フィルター7bによって標的スクリーン1に照射される光の形状を、例えば三角、丸、四角、星型などといったように変えることで、算出された着弾座標がどの訓練者の射撃によるものかを弁別可能になる。
【0021】
本実施形態の映像射撃シミュレータは、実銃5を用いた訓練の他に、警棒または警杖などの防御や攻撃に用いる棒状部材を使用した訓練を行うこともできる。ここでは、警棒11を例として説明を行う。警棒11は、図3に示すように、実物の警棒の握り部11aに圧力センサ11bを取り付け、先端部11cに3軸以上の軸センサ11dを取り付けている。また、警棒11の握り部11aには、圧力センサ11bや軸センサ11dからの信号を無線により送信する発信装置11eを設置している。このように本実施形態の警棒11は、警棒11の握り部11aの握り具合、警棒11を振ったときの振動や警棒11を振った方向などを検知し、その信号を発信装置11eから出力する。
【0022】
標的スクリーン1の周りには、図1に示すように、訓練者の状況を監視するカメラ13や、このカメラ13とほぼ同じ位置に設置された発射装置15などが設けられている。発射装置15は、球状の玉を発射するものであり、その球状の玉の発射方向を変更可能に形成されている。これらの投影装置3、発光装置7、弾着位置計測装置9、警棒11、カメラ13、発射装置15は、適宜、有線または無線でデータや信号の授受が可能にコンピュータ17に接続されている。
【0023】
コンピュータ17は、データやプログラムなどを記憶するための記憶手段となる記憶媒体、または、記憶手段として各種の携帯可能な記憶媒体などの読み出しや書き込みを行う装置を内蔵している。さらに、コンピュータ17には、訓練映像の音声信号を増幅するアンプ18や、このアンプ18で増幅された訓練映像の音声を出力するスピーカ19、カメラ13で撮影した映像や操作画面などを表示し、表示手段と操作手段を兼ねたタッチパネル21、訓練結果の出力を行うプリンタなどが電気的に接続されている。本実施形態では、表示手段と操作手段を兼ねたタッチパネル21を用いているが、表示手段となるモニタと操作手段となるキーボードとマウスを用いる構成などにすることもできる。
【0024】
また、本実施形態では、コンピュータ17によって、カメラ13や発射装置15の動作を自動制御できるようになっている。さらに、本実施形態では、コンピュータ17にジョイスティック25が電気的に接続されており、ジョイスティック25の操作により、遠隔操作でカメラ13や発射装置13の動作を手動制御できるようにもなっている。このように、本実施形態の反撃手段は、カメラ13、発射装置15、コンピュータ17、ジョイスティック25などで構成されている。加えて、本実施形態では、コンピュータ17に、警棒11からの信号を受信するための受信装置27が電気的に接続されている。
【0025】
コンピュータ17は、映像制御手段としての機能を果たすプログラムを有しており、内蔵する記憶媒体から記憶された訓練映像のデータを検索して再生を制御する。このような映像制御手段となるコンピュータ17は、着弾を検知したフレームに最も近いフレームで、弾着位置計測装置9で算出した着弾座標と、記憶媒体に記憶された命中範囲のデータや非命中範囲のデータとを比較照合し、命中したか否かを判別する制御、この命中したか否かを判別する制御での判定結果に基づき、その後に再生する映像を判別し、判別した訓練映像に対応するデータを記憶媒体から検索して再生させる制御、そして、標的スクリーン1の訓練映像投射面上の着弾座標に対応する位置に着弾マークを表示する制御などを行う。
【0026】
本実施形態のコンピュータ17は、操作手段となるタッチパネル21による操作の制御や操作性の制御を行う操作制御手段としての機能を果たすプログラム、そして、この操作制御手段に関連し、操作手段となるタッチパネル21に数種類のブランチ映像から所望のブランチ映像を選択可能にするブランチ指令スイッチを表示する機能を果たすプログラムを有している。
【0027】
教官などの映像訓練シミュレータの操作を行う人によって、訓練映像のうち、例えば図4に示すように、メイン映像101の再生中で、ブランチ映像起点までの間に予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中、すなわち、ブランチ選択可能時間の間に、ブランチ指令スイッチによってブランチ映像を選択する操作が行われると、コンピュータ17は、その選択されたブランチ映像に対応するブランチ指令を発し、このブランチ指令に対応するアドレス、フレーム、または、時間などの分岐条件によって内蔵する記憶媒体から映像のデータを検索する。そして、コンピュータ17は、ブランチ映像起点になると、投影装置3で投影する訓練映像を、メイン映像から、この検索したアドレス、フレームまたは時間からの映像の再生に切り替え、訓練映像の場面をメイン映像101から選択されたブランチ映像、例えばブランチ映像201またはブランチ映像203に切り替える。
【0028】
訓練者が、図1に示すように、訓練映像中の標的に向けて実銃5を構えてトリガーを引き発光装置7を発光させると、発光装置7からの光が標的スクリーン1に照射される。標的スクリーン1上に照射された光を弾着位置計測装置9がカメラ部9aで撮影した画像に基づいて検知し、その標的スクリーン1上に照射された光の位置、つまり、着弾座標の計算を行う。さらに、弾着位置計測装置9は、画素によって標的スクリーン1上に照射された光の形状判別を行い、計算した着弾座標に、その着弾座標を照射した発光装置7を弁別するための識別情報を関連づけてコンピュータ17に出力する。
【0029】
コンピュータ17は、弾着位置計測装置9からの着弾座標を受信すると、内蔵している記憶媒体に記録されている命中範囲と非命中範囲のデータから標的スクリーン1上に発光装置7からの光が照射された時点の映像フレームに最も近いフレームを選択し、命中範囲と非命中範囲のデータから抽出したデータと、弾着位置計測装置9からの着弾座標を比較照合して命中したか否かを判別しその判別結果に応じて命中映像または非命中映像の一方を選択して記憶媒体から検索し、投影装置3で再生を行う制御を行う。
【0030】
このとき、コンピュータ17は、例えば図4に示すように、射撃前の映像がブランチ映像201で、射撃が命中の場合にはブランチ映像201の命中映像201aを再生する。一方、射撃が非命中の場合にはブランチ映像201の非命中映像201bを再生する。同様に、射撃前の映像がブランチ映像203で、射撃が命中の場合にはブランチ映像203の命中映像203aを再生する。一方、射撃が非命中の場合にはブランチ映像203の非命中映像203bを再生する。
【0031】
また、訓練者が射撃を行ったとき、コンピュータ17は、弾着位置計測装置9からの着弾座標に基づいて、標的スクリーン1上の訓練映像に着弾マークを表示させる制御を行う。さらに、本実施形態の映像射撃シミュレータでは、複数の訓練者が訓練を行う場合、訓練者と、その訓練者が用いる実銃5に装填された発光装置7の光の形状を対応づける識別情報を予めコンピュータ17に登録しておくことにより、コンピュータ17は、登録した識別情報と、弾着位置計測装置9からの識別情報とに基づいて着弾座標がどの人が射撃したものか判別を行う。
【0032】
本実施形態の映像射撃シミュレータでは、警棒11も備えており、警棒や警杖を用いた訓練を行うこともできる。訓練者が警棒11を持ち、訓練映像や訓練形態にあわせて警棒11を振ると、握り部11aを手で握る力が強くなったことを圧力センサ11bが検知することや、警棒11が振られたことを軸センサ11dが検知する。そして、警棒11が振られたことを知らせる信号、また、本実施形態では3軸以上の軸センサ11dを取り付けているため、その軸センサ11dが検知した警棒11が振られた方向の情報に対応する信号なども発信装置11eにより送信する。
【0033】
コンピュータ17に内蔵する記憶装置は、警棒または警杖を使用するブランチ映像205が記憶されており、コンピュータ17は、図4に示すように、警棒または警杖を使用する場合、警棒または警杖を使用するブランチ映像205を記憶装置から検索し、投影装置3で投影する訓練映像を、メイン映像から、この検索したアドレス、フレームまたは時間からの映像の再生に切り替える。
【0034】
そして、コンピュータ17は、受信装置27を介して、警棒11が振られたことを知らせる信号、警棒11が振られた方向の情報に対応する信号を受信すると、内蔵している記憶媒体に記録されている有効範囲と非有効範囲のデータから標的スクリーン1上に警棒11が振られた時点の映像フレームに最も近いフレームを選択し、有効範囲と非有効範囲のデータから抽出したデータと、警棒11からの警棒11が振られたタイミングの信号や警棒11が振られた方向に対応する信号とを比較照合して、その警棒11の使用が有効範囲であるか否かを判別する。
【0035】
言い換えれば、本実施形態では、コンピュータ17は、警棒11が振られた方向の信号に基づいて、警棒が正しい方向に振られているか、有効範囲であるかの判定を行う。そして、コンピュータ17は、この判定結果に応じて有効範囲映像または非有効範囲映像の一方を選択して記憶媒体から検索し、投影装置3で再生を行う制御を行う。このとき、コンピュータ17は、例えば図4に示すように、警棒や警杖を使用するブランチ映像205を再生しているので、警棒11の使用が有効範囲である場合にはブランチ映像205の有効範囲映像205aを再生する。一方、警棒11の使用が非有効範囲の場合にはブランチ映像205の非有効範囲映像205bを再生する。
【0036】
なお、本実施形態では、警棒や警杖を使用するブランチ映像を用いるか否かは、シナリオ構成により、タッチパネル21に表示されたスイッチなどによって使用有り、使用無しを選択できるようにしている。また、圧力センサ11bと軸センサ11dは、少なくとも一方を設けることで、警棒または警杖を用いた訓練を行うことができる。また、圧力センサや軸センサの他に、加速度センサや受光素子などのうちの少なくとも1つを設けて警棒や警杖が振られたことや、その方向などを検知することもできる。しかし、本実施形態のセンサ11dのように軸センサを設ければ、警棒または警杖の振られた方向を判定して、その方向に基づいて有効範囲か否かを判定できるため、より正確な訓練ができるようになる。さらに、警棒または警杖の振られた方向の判定精度を向上する上では、本実施形態のセンサ11dのように3軸以上の軸センサを用いることが望ましい。
【0037】
本実施形態の反撃手段は、カメラ13、発射装置15、コンピュータ17、ジョイスティック25などで構成されているが、訓練映像を再生しているときに反撃するフレーム起点がくると、コンピュータ17は、カメラ13からの訓練者の状況や位置を示す訓練者の監視映像などに基づいて、発射装置15に玉を自動発射させる自動反撃制御を行う機能を果たすプログラムを有している。この自動反撃制御は、訓練映像で予め指定された開始フレームまたは時間から終了フレームまたは時間までに適切な範囲に着弾を検知しない場合、終了フレームまたは時間、つまり、反撃自動起点フレーム到達時に発射装置15に発射信号を送信し発射装置15より球状の玉を射出するものである。
【0038】
さらに、本実施形態の反撃手段は、教官などが手動で反撃を、つまり、発射装置15から玉の射出を行えるようになっている。反撃手段を構成するカメラ13からの訓練者の状況の監視映像は、タッチパネル21で表示されている。教官は、ジョイスティック25によってカメラ13及び発射装置15を移動させて方向を操作し、適宜ジョイスティック25に設けられたトリガーボタンなどを押すことで、遠隔操作で、発射装置15から玉を発射できる。
【0039】
コンピュータ17は、このような映像制御手段や操作制御手段としての機能を果たしたり、カメラ13からの訓練者の状況を撮影した映像をタッチパネル21に表示する制御、発射装置15の操作を行う制御や発射装置15に反撃するフレーム起点が来ると発射装置15に玉を自動発射させるための通信を行う制御を行ったりする制御のための手段としての機能を果たすプログラムを有しているだけでなく、様々な制御のための手段としての機能を果たすプログラムを有している。
【0040】
例えば、着弾と同時に射撃音を出力する制御、投影装置3と標的スクリーン1との位置関係に応じて標的スクリーン1の訓練映像投射面の中心と四隅を読み取って台形補正を行う制御、映像の中心と四隅を読み取り着弾時の着弾座標を補正する制御、訓練結果をプリンタ23に印字するための印字制御などといった従来の映像射撃訓練シミュレータと同様の様々な制御のための手段としての機能を果たすプログラムも有している。
【0041】
本実施形態のコンピュータ17が内蔵する記憶媒体は、メイン映像とブランチ指令スイッチによって選択可能なブランチ映像とからなる訓練映像のデータ、命中範囲データ、有効範囲データ、訓練映像を管理しているテキストデータ、命中範囲を管理しているテキストデータ、有効範囲を管理しているテキストデータ、反撃自動を管理しているテキストデータ、映像ブランチを管理しているテキストデータ、警棒や警杖の訓練映像内の使用範囲を管理しているテキストデータなどを有している。これらのテキストデータは、種々の制御における判別、判定を行うデータとなっている。
【0042】
このように、本実施形態の映像射撃シミュレータの記憶媒体では、メイン映像や各ブランチ映像に対して映像を分岐させるデータアドレス、分岐点フレーム、または、訓練映像開始後の時間などをテキストデータなどの別ファイルで管理し、この時間より任意の時間の前の訓練映像より、言い換えれば、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中に、映像ブランチの選択を可能にしている。映像ブランチの選択が可能な任意の時間、つまり、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の範囲も、同様に、テキストデータなどで管理している。さらに、射撃の命中や非命中、警棒や警杖の使用の有効や非有効の範囲、そして、射撃の命中や非命中及び警棒や警杖の使用の有効や非有効によって分岐するアドレス、フレーム、または、時間などもまた、テキストデータなどで管理している。
【0043】
なお、訓練映像のメイン映像だけでなく、ブランチ映像もシナリオにより数種類や複数のブランチに分岐させた構成にすることもできる。このようなブランチの構成を一つの訓練映像に何通りも設け、ブランチ選択スイッチを用いていくつもあるブランチ映像を選択できるようにすることにより、テキストデータより指定したアドレスやフレーム、時間などからブランチ映像を再生することができるようになり何種類ものストーリーを展開できるようになる。
【0044】
このように、本実施形態の映像射撃シミュレータでは、コンピュータ17に内蔵する記憶媒体に、複数のストーリーに対応する訓練映像のデータが記録されており、操作手段となるタッチパネル21には、そのとき再生している映像とは異なる場面に切り替えるためのブランチ指令スイッチが表示される。映像制御手段となるコンピュータ17は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中にタッチパネル21のブランチ指令スイッチが操作され、ブランチ指令が発せられると、このブランチ指令スイッチからのブランチ指令に対応するデータを記憶媒体から検索し、投影装置3で投影する訓練映像をこの検索したブランチ映像に切り替え、場面を切り替える。
【0045】
このため、予め設定されたブランチ指令が可能な場面で、教官がタッチパネル21のブランチ指令スイッチを押すことにより、それ以降の映像を異なるストーリーに分岐させることが可能になる。したがって、訓練映像のストーリーが何種類にもなり、訓練者がストーリーを予測でき難くなるため、緊張感を継続した訓練などが可能となり、訓練性能を向上できる。
【0046】
さらに、本実施形態の映像射撃シミュレータでは、ブランチ指令スイッチは、訓練映像を再生中のブランチ映像とは異なる複数のブランチ映像に切り替え、場面を切り替えることができる。したがって、複数のストーリーから、教官が選択したストーリーにさらに複雑に分岐させることが可能になる。したがって、訓練映像のストーリーの展開がより複雑になり、訓練者がよりストーリーを予測でき難くなるため、訓練性能をより向上できる。
【0047】
加えて、本発明の映像射撃シミュレータでは、警棒または警杖などの棒状部材を用いた訓練も行うことができる。このため、訓練映像のストーリーが一層複雑になり、訓練性能をさらに向上できる。さらに、警棒または警杖などの棒状部材を用いることにより、拳銃などの火器以外の装備品も使用する訓練が行えるようになり、より多様で、よりリアルな訓練が可能となる。
【0048】
さらに、実際には、複数のグループで対応するため一人での訓練と異なる状況が発生するばあいもある。しかし、本実施形態の映像射撃シミュレータでは、発光手段は、この発光手段の発光部に、照射される光の形状を決定するフィルターを有し、光を照射した発光手段を識別できるようになっている。したがって、着弾を示す光の形状によって複数の訓練者の弁別ができ、訓練性能を一層向上できる。また、さらにリアルで、さらに実践的な訓練が可能になる。
【0049】
加えて、従来の映像射撃シミュレータでも、複数の訓練者の訓練ができるものがあるが、その映像射撃シミュレータでは、実銃を改造することにより弁別用のID素子と射撃用の素子の2種類を発光させることにより弁別及び着弾を判定している。しかし、2種類の素子を用いるため、電力消費の問題があるうえ、ケーブルなどによる有線接続が必要、改造が必要という問題もある。しかし、本実施形態の映像射撃シミュレータでは、実銃を改造することなく装着できる発光装置をもちいているうえ、発光装置からの光の形状で複数の訓練者の弁別を行うため、素子は1つにすることができる。したがって、電力消費、有線接続が必要、実銃の改造が必要という問題の発生を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では、1台のコンピュータ17が、記憶手段を内蔵し、映像制御手段、操作制御手段、その他の制御手段の役割を果たしている。しかし、各制御手段や記憶手段を一体に構成する必要はなく、適宜の複数のユニットに分けて構成することもできる。
【0051】
このように、本発明は、本実施形態の構成の映像射撃シミュレータに限らず、 投影手段、発光手段、弾着位置計測手段、記憶手段、映像制御手段、操作手段、ブランチ指令スイッチなどを有していれば、様々な構成、構造、形態で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの一実施形態の概略構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの一実施形態で用いる発光手段の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの一実施形態で用いる警棒の概略構成を模式的に示す図である。
【図4】本発明を適用してなる映像射撃シミュレータの一実施形態におけるブランチ機能を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0053】
1 標的スクリーン
3 投影装置
5 実銃
7 発光装置
9 弾着位置計測装置
9a カメラ部
11 警棒
13 カメラ
15 発射装置
17 コンピュータ
21 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練映像が投射される訓練映像投射面に訓練映像を投影する投影手段と、火器の弾道に対応する指向性の光を照射する発光手段と、前記訓練映像投射面の前記発光手段からの光の位置を着弾位置情報として検出する弾着位置計測手段と、訓練映像及び前記弾着位置計測手段で検出した着弾位置情報に基づいて命中か否かを判定するための命中判定データを記憶した記憶手段と、該記憶手段に記憶されたデータを検索して訓練映像の再生を制御し、前記弾着位置計測手段から送られてきた着弾位置情報と前記記憶手段に記録されている命中判定データとに基づいて弾丸が命中したか否かを判別し、該判別結果に応じて再生する訓練映像を切り替える映像制御手段と、該映像制御手段に操作者の指令を与える操作手段とを備え、
前記記憶手段には、複数のストーリーに対応する訓練映像のデータが記録されており、前記操作手段は、そのとき再生している映像とは異なる場面に切り替えるためのブランチ指令スイッチを有し、前記映像制御手段は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中に前記ブランチ指令スイッチが操作されブランチ指令が発せられると、該ブランチ指令スイッチからのブランチ指令に対応するデータを前記記憶手段から検索し、前記投影手段で投影する訓練映像を該検索した訓練映像に切り替えてなる映像射撃シミュレータ。
【請求項2】
前記ブランチ指令スイッチは、そのとき再生している訓練映像とは異なる複数の場面の中から切り替える場面を選択して切り替えるものであり、前記映像制御手段は、予め設定されたブランチ指令が可能な場面の再生中に前記ブランチ指令スイッチが操作されブランチ指令が発せられると、該ブランチ指令スイッチで選択されたブランチ指令に対応するデータを前記記憶手段から検索して前記投影手段で投影する訓練映像を切り替えてなることを特徴とする請求項1に記載の映像射撃シミュレータ。
【請求項3】
訓練を受ける者が使用する棒状部材を備え、該棒状部材は、手で握る握り部に、手で握ったことを検出する圧力検出手段を有し、前記映像制御手段手は、前記棒状部材の圧力検出手段からの信号に基づいて該信号に対応するデータを前記憶手段から検索して前記投影手段で投影する訓練映像を切り替えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の映像射撃シミュレータ。
【請求項4】
訓練を受ける者が使用する棒状部材を備え、該棒状部材は、該棒状部材が動いたことを検知する軸センサを有し、前記映像制御手段手は、棒状部材の軸センサからの信号に基づいて該信号に対応するデータを前記憶手段から検索して前記投影手段で投影する訓練映像を切り替えてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の映像射撃シミュレータ。
【請求項5】
前記発光手段は、該発光手段の発光部に、照射される光の形状を決定するフィルターを有し、前記弾着位置計測手段は、前記訓練映像投射面に照射された光の形状に基づいて該光を照射した発光手段を識別し、該発光手段を識別した識別情報に関連づけて着弾位置情報を前記映像制御手段に出力してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の映像射撃シミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−139379(P2007−139379A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337298(P2005−337298)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】