説明

映像投影システム

【課題】専用スクリーンやスクリーン・プロジェクタ間の接続等も不要でありながらも、立体物の変形及び/又は変位状態に応じて映像の補正を行うことが出来る映像投影システムを提供する。
【解決手段】映像補正部ISは、可視光映像に重ねて投影された不可視光映像を撮影した不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、立体物OBJの投影面が傾いていないと判断すれば、投影用の映像データを補正せず、一方、投影面が傾いていると判断すれば、アフィン変換や台形補正などを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像投影システムに関し、例えばレーザビーム等を走査して映像を表示するタイプの映像投影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、スクリーンを回転するモータの駆動量をモニターすることで、スクリーンの変形/変位の状態を検出し、スクリーンが変形/変位しても、それに応じてプロジェクタの投影映像を観測者にとって歪みのない自然なものに補正して投影することが可能な画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−180965号公報
【特許文献2】特開2005−277900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の技術では、スクリーンの状態を正確に検知するために、状態検知部が、スクリーンを回転させるモータと作動制御装置との間に介在しており、作動制御装置からモータに印加される電圧を図示しない電圧検知部によって検知し、この検知結果に基づいてスクリーンの向きを検知するようになっている。つまり特許文献1の技術では、機械的に変形/変位を制御可能な専用スクリーンが必要であり、かつその専用スクリーンの変形/変位状態を取得するために、スクリーンと投影装置とが接続されていなければならないという制約がある。又、装置構成が大がかりとなり、小型の投影装置には適用が困難である。
【0005】
一方、特許文献2には、立体的に変形するスクリーンの表面形状に応じて2次元の投影データを補償するデータ補償部を設け、そのデータ補償部により補償された投影データにしたがってスクリーンに画像を投影し、また、データ補償部がスクリーンに対するプロジェクタの相対的な位置を考慮して、2次元の投影データを補償することにより、スクリーンに表示する画像を変更することができ、また、スクリーンに対するプロジェクタの相対的な位置が変更されても、適正な画像をスクリーンに表示することができる技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術によれば、形状検出部が、例えば、エンコーダを用いて、アクチュエータにおけるモータの回転量を監視することによって、スクリーンを変位させるアクチェータの駆動量をモニターすることで、スクリーンの変形/変位の状態を検出している。つまり特許文献2の技術では、機械的に変形/変位制御可能な専用スクリーンが必要であり、かつその専用スクリーンの変形/変位状態を取得するために、スクリーンと投影装置とが接続されていなければならないという制約がある。又、装置構成が大がかりとなり、小型の投影装置には適用が困難である。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、専用スクリーンやスクリーン・プロジェクタ間の接続等も不要でありながらも、立体物の変形及び/又は変位状態に応じて映像の補正を行うことが出来る映像投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の映像投影システムは、
立体物に映像を投影する映像投影システムであって、
前記立体物に対して可視光映像を投影する可視光投影部と、
前記可視光映像上に不可視光映像を重畳させて投影する不可視光投影部と、
前記不可視光映像を含む領域を撮影する不可視光撮影部と、
前記不可視光撮影部からの信号に基づいて、前記可視光映像内に置かれた前記立体物の変形及び/又は変位状態の認識を行う形状認識部と、
前記形状認識部の認識結果に基づいて前記可視光映像を補正する映像補正部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記不可視光投影部が、前記可視光映像上に不可視光映像を重畳させて投影するので、観察者は不可視光に邪魔されずに可視光映像を楽しむことができ、又、前記不可視光撮影部が、前記不可視光映像を含む領域を撮影し、前記形状認識部が、前記不可視光撮影部からの信号に基づいて、前記可視光映像内に置かれた前記立体物の変形及び/又は変位状態の認識を行うので、前記映像補正部が、前記形状認識部の認識結果に基づいて前記可視光映像を補正することができ、これにより専用スクリーンやスクリーン・プロジェクタ間の接続等も不要でありながらも、立体物の変形及び/又は変位状態に応じて映像の補正を適切に行うことができる。尚、「可視光」とは、例えば波長帯域が700nm以下の光をいい、「不可視光」とは、波長帯域が700nmを超える光をいうものとするが、両者の境は700nmに限られない。
【0010】
請求項2に記載の映像投影システムは、請求項1に記載の発明において、前記立体物が、経時的に変形及び/又は変位することを特徴とする。本発明によれば、前記立体物が、経時的に変形及び/又は変位する場合にも、これに追従して映像の補正を適切に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の映像投影システムは、請求項1又は2に記載の発明において、前記可視光投影部は、出射光を走査することで映像を投影し、前記形状認識部は、三角測量による距離情報の取得を用いて形状認識を行うことを特徴とする。出射光を走査することで映像を投影するものとして、レーザスキャンタイプの映像投影システムが開発されている。このようなレーザスキャンタイプの映像投影システムでは、異なる3色の光を出射するレーザが設けられているので、これに加えて赤外レーザを搭載することで、本発明を構成できる。
【0012】
請求項4に記載の映像投影システムは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記立体物は多面体であり、前記形状認識部は、前記不可視光撮影部からの信号に基づいて前記多面体の面を認識し、前記映像補正部は、前記形状認識部の認識結果に基づき、前記多面体の面ごとに独立した映像となるよう可視光映像を補正することを特徴とする。これにより、例えば多面体の各面に異なる映像を投影するとともに、面の傾きに応じて、投影される映像を補正できる。
【0013】
請求項5に記載の映像投影システムは、請求項4に記載の発明において、前記多面体が直方体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用スクリーンが不要であり、スクリーンとプロジェクタと間の接続も不要であるにも関わらず、スクリーンが変形/変位しても、それに応じてプロジェクタの投影映像を観測者にとって歪みのない自然なものに補正して投影することが可能な映像投影システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態による映像投影システムPSの概略構成を示すブロック図である。
【図2】映像投影システムPSの具体的構成を示すブロック図である。
【図3】光スキャナ9の詳細な構成を示す平面図である。
【図4】2次元走査ミラー15の図2のIV-IV方向の断面図である。
【図5】2次元走査ミラー15を用いたレーザビームWの偏向を行う状態を表示する図である。
【図6】映像補正の態様を示すフローチャートである。
【図7】直方体を回転軸線方向に見た図である。
【図8】単位角度毎に回転する直方体の面に投影した映像を示す図である。
【図9】直方体の面に投影した映像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態による映像投影システムPSの概略構成を示すブロック図である。図1において、映像投影システムPSは、立体物OBJに対して可視光映像を投影する可視光投影部PJ1と、前記可視光映像上に不可視光映像を重畳させて投影する不可視光投影部PJ2と、前記不可視光映像を含む領域を撮影する不可視光撮影部(ここでは赤外線カメラ)CAと、前記不可視光撮影部からの信号に基づいて、前記可視光映像内に置かれた立体物OBJの変形及び/又は変位状態の認識を行う形状認識部MRと、形状認識部MRの認識結果に基づいて前記可視光映像を補正する映像補正部ISとを備える。ここでは、映像と画像の用語を同義で用いる。
【0017】
より具体的に、映像投影システムPSを説明する。図2は、映像投影システムPSの具体的構成を示すブロック図である。映像投影システムPSは、例えば光スキャナプロジェクタに搭載され、レーザ光源7(7r,7g,7b,7IR)、コリメータCL(CLr、CLg、CLb、CLIR)、レーザ制御部100、ダイクロミラー8(8r,8g,8b、8IR)、ハーフミラーHF、検出器PD、光スキャナ9(走査部)、位相検出部110、及び同期信号出力部120を備えている。
【0018】
駆動手段としてのレーザ制御部100は、フレームメモリ2、映像処理用メモリ3,ラインバッファメモリ4、表示コントローラ5、駆動部である変調器6(6r,6g,6b,6IR)、ドライバ13及びシステムコントローラ14を備え、レーザ光源7を制御する。
【0019】
フレームメモリ2は、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、主映像の映像データ(以下、「主映像データ」と表す。)を1フレーム単位で一時的に記憶する。ここで、主映像としては、例えば、映画、テレビ番組等が挙げられる。なお、主映像データは、例えばR,G,Bの色成分からなるカラーの映像データとするが、モノクロの映像データであってもよい。
【0020】
映像処理用メモリ3に記憶された映像データは、表示映像の歪みを補正する処理等を施される。
【0021】
ラインバッファメモリ4は、映像処理用メモリ3の第1の領域と第2の領域から交互に、水平方向の複数ライン単位で順次に出力される主映像データを記憶する。
【0022】
映像補正部ISの機能を備える表示コントローラ5は、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、フレームメモリ2への1フレームの主映像データの書き込み制御、形状認識部MRからの形状情報に基づく映像処理用メモリ3における映像処理、映像処理用メモリ3からラインバッファメモリ4への映像データの書き込み制御、及びラインバッファメモリ4から映像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる制御等を行う。ここで、ライバッファメモリ4に記憶された映像データは、R色成分が変調器6rに出力され、G色成分が変調器6gに出力され、B色成分が変調器6bに出力され、赤外成分が変調器6IRに出力される。
【0023】
具体的には、表示コントローラ5は、同期信号出力部120から垂直同期信号が入力されると、1フレーム分の主映像データをフレームメモリ2に記憶させる。また、ラインバッファメモリ4に、記憶された副映像データの先頭の1ライン分を記憶させる。そして、ラインバッファメモリ4に記憶された副映像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる。
【0024】
そして、水平同期信号が入力されると、ラインバッファメモリ4に次の1ライン分の副映像データを記憶させ、ラインバッファメモリ4から次の1ライン分の副映像データを1画素単位で順次に変調器6に出力させる。これにより、立体物OBJに主映像データで強度が変調されたレーザビームがラスター走査され、主映像が表示されることになる。ラスター走査が画面右下まで行われれば、再びレーザビームを画面左上まで戻す。その間に、フレームバッファ2には新たな映像データが読み込まれ、上述のようにして、次の映像を表示する準備がなされる。以上を繰り返すことで、複数枚の映像を表示できる。
【0025】
変調器6(6r,6g,6b,6IR)は、それぞれラインバッファメモリ4から1画素単位で順次に出力される映像データのR,G,B,IR(赤外)成分を用いて、レーザ光源7r,7g,7b,7IRから射出されるR,G,B、赤外光のレーザビームの強度を変調する。
【0026】
レーザ光源7r,7g,7b、7IRは、例えば、レーザダイオードにより構成され、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤外光のレーザビームを射出する。コリメータCLr、CLg、CLb、CLIRは、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤外光のレーザビームを平行ビームに変換する。レーザ光源7r,7g,7bが可視光投影部を構成し、レーザ光源7IRが不可視光投影部を構成する。
【0027】
ダイクロミラー8(8r,8g,8b、8IR)は、レーザ光源7r,7g,7b、7IRから射出されたレーザビームを合波して、一本のレーザビームWにする。検出器PDは、検出面を有し、ハーフミラーHFにより反射されたレーザビームWの一部を検出する。
【0028】
光スキャナ9は、例えば2次元の光スキャナにより構成され、水平同期信号及び垂直同期信号に基づいて、レーザビームWを2次元的に走査(ラスター走査)し、立体物OBJに映像を表示する。立体物OBJは、ラスター走査されるレーザビームWが投影されて、映像を表示させる。
【0029】
検出器PDは、レーザ光源7r,7g,7bから射出されるレーザビームの強度を各々モニタし、モニタ信号を変調器6r,6g,6bに出力する機能も有する。なお、変調器6r,6g,6bは、このモニタ信号から、レーザビームの強度の時間平均値が既定値になるようにレーザ光源7r,7g,7bをAPC(auto power control)制御する。これにより、レーザビームの発振強度が安定化されると共に、レーザ光源7の破損が防止される。
【0030】
センサである位置検出部(PR)12は、例えば赤外発光ダイオード等の発光素子及びフォトトランジスタ等の受光素子を含むフォトリフレクタにより構成され、発光素子から出力された光を対象物であるミラー部16(図3参照)に当て、反射光を受光素子で検出し、ミラー部16の水平方向及び垂直方向の傾斜角度を示す検出信号をシステムコントローラ14及び位相検出部110に出力する。尚、位置検出部12は、光スキャナ9の圧電素子(ピエゾ)の抵抗を測定するタイプのものでも良い。
【0031】
システムコントローラ14は、主映像を表示しない場合、映像を表示しない黒映像を表示するように表示コントローラ5に指示する。又、システムコントローラ14は、ドライバ13を介して光スキャナ9への駆動信号を出力する。
【0032】
位相検出部110は、位置検出部12により検出された検出信号を用いてミラー部16の水平方向及び垂直方向の傾斜角度を検出する。
【0033】
同期信号出力部120は、位相検出部110により検出されたミラー部16の傾斜角度に基づいて水平同期信号及び垂直同期信号を表示コントローラ5に出力する。ここで、同期信号出力部120は、位相検出部110により検出された水平方向の傾斜角度が1ラインの走査を開始する角度となった場合に水平同期信号を出力すればよい。また、同期信号出力部120は、位相検出部110により垂直方向の傾斜角度が1フレームの先頭の1ラインの走査を開始する角度となった場合に垂直同期信号を出力すればよい。
【0034】
不可視光撮影部CAは、赤外光映像を撮影できる赤外光カメラであって、スクリーンである立体物OBJに投影された不可視光映像を含む領域を撮影する。形状認識部MRは、不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、三角測量の原理により、可視光映像内に置かれた立体物OBJの変形及び/又は変位状態の認識を行う。映像補正部IS(表示コントローラ5)は、形状認識部MRの認識結果に基づいて、映像処理メモリ3内の主映像データを補正する。
【0035】
尚、特開2003−346130号公報等に開示された三角測量を用いた技術により、立体物OBJに投影された赤外光映像を、不可視光撮影部CAの撮像素子で撮像し、画素毎に映像投影システムPSから立体物OBJまでの距離を求めることができる。
【0036】
次に、光スキャナ9の動作について説明する。図3は、光スキャナ9の詳細な構成を示す平面図である。光スキャナ9は、2次元走査ミラー15により構成され、2次元走査ミラー15を固定する固定枠70と、固定枠70の内側に可動部分として枠状に形成された可動枠30と、可動枠30の内側に形成された方形状のミラー部16とを備えている。
【0037】
ミラー部16は、ミラー部16の中心を通るY軸に沿って外方へ延びるトーションバー21,22を介して、Y軸方向の両側から可動枠30に弾性的に支持されている。また、可動枠30は、Y軸に直交し、ミラー部16の中心を通るX軸近傍の端部30a,30b,30c,30dのそれぞれに一端が接続された曲がり梁41,42,43,44により、X軸の両側から固定枠70に弾性的に支持されている。これらの固定枠70、曲がり梁41〜44、可動枠30、ミラー部16、及びトーションバー21,22は、シリコン基板の異方性エッチングにより一体的に形成されている。
【0038】
また、ミラー部16の表面には、金やアルミニウム等の金属薄膜による反射膜が形成されており、入射光線の反射率が高められている。また、曲がり梁41,42,43,44の表面には、電気−機械変換素子である圧電素子51,52,53,54が接着等により貼り付けられ、4つのユニモルフ部61,62,63,64が形成されている。曲がり梁41〜44は、圧電素子51〜54の曲げ変形により、可動枠30にY軸及びX軸回りに独立に傾動トルクを作用させ、可動枠30をY軸及びX軸を2軸で回動させる。
【0039】
ここで、可動枠30の回動動作について図4を用いて説明する。図4(a)〜(e)は2次元走査ミラー15の図3のIV-IV方向の断面図である。なお、図4(a)は静止時を示し、図4(b)〜(e)は駆動時を示している。
【0040】
図4(a)に示すように、圧電素子51,52の表裏には、それぞれ上部プラス(+)電極511,521、下部マイナス(−)電極512、522が設けられており、上部(+)電極511(521)と下部(−)電極512(522)との間に分極反転を起こさない範囲で交流電圧を印加することで、圧電素子51、52を伸縮させ、ユニモルフ部61,62を厚み方向に変位させる。同様に、圧電素子53,54の表裏には、それぞれ上部(+)電極531,541(図略)、下部(−)電極532,542(図略)が設けられている。
【0041】
最初に、X軸回りの回動動作について説明する。ドライバ13が圧電素子51に伸びる方向の電圧を印加し、圧電素子52に圧電素子51と逆位相の縮む方向の電圧を印加すると、ユニモルフ部61,62の一端は、固定枠70に固定・保持されているので、図4(b)に示すように、ユニモルフ部61は下方に曲がり、一方、ユニモルフ部62は上方に曲がる。同様に、圧電素子53,54にも圧電素子51,52とそれぞれ同じ位相の電圧を印加すると、ユニモルフ部63は下方に曲がり、一方、ユニモルフ部64は上方に曲がる。
【0042】
これにより、可動枠30にはX軸を中心とした傾動トルクが作用し、可動枠30はX軸を中心として矢印P方向に傾く。また、圧電素子51〜54に、図4(b)の場合とは逆位相の電圧を印加すると、前述と同様の原理で、図4(c)に示すように、可動枠30にはX軸を中心とした傾動トルクが作用し、X軸を中心として矢印Q方向に傾く。そして、圧電素子51〜54にこのような位相関係を保った交流電圧を印加すると、ユニモルフ部61〜64は、交流電圧に追従して上下方向の振動を繰り返し、可動枠30にシーソー的な傾動トルクが作用され、可動枠30はX軸を中心として所定変位角度まで回転振動する。
【0043】
次に、Y軸回りの回動動作について説明する。ドライバ13が圧電素子51,52のいずれにも伸びる方向の電圧を印加すると、それぞれのユニモルフ部61,62の一端は、固定枠70に固定・保持されているので、図4(d)に示すように、いずれも下方に曲がる。一方、圧電素子53、54に圧電素子51、52と逆位相の縮む方向の電圧を印加すると、図4(e)に示すように、ユニモルフ部63、64はいずれも上方に曲がる。これにより、可動枠30にはY軸を中心とした傾動トルクが作用し、可動枠30はY軸を中心として傾く。
【0044】
そして、圧電素子51〜54にこのような位相関係を保った交流電圧を印加すると、ユニモルフ部61〜64は、交流電圧に追従して上下方向の振動を繰り返し、可動枠30にシーソー的な傾動トルクが作用し、可動枠30はY軸を中心として所定変位角度まで回転振動する。
【0045】
このように、ドライバ13から4つのユニモルフ部61〜64にそれぞれ所定の電圧を印加することにより、可動枠30によって支持されているミラー部16のX軸及びY軸周りの傾きを任意に制御することができる。また、曲がり梁41〜44は、Y軸及びX軸を挟んで対称に配置され、曲がり梁41〜44に設けられたそれぞれの圧電素子51〜54は、同じ位相あるいは互いに180度異なる逆位相の駆動信号で駆動されるようにしたので、可動枠30を片振れなしにY軸及びX軸の2軸で独立して回動させることができる。
【0046】
次に、2次元走査ミラー15を用いたレーザビームWの偏向を行う方法について、図5を用いて説明する。レーザ光源7から射出されたレーザビームWを2次元走査ミラー15でラスター走査して映像を生成する。
【0047】
ここで、水平方向の走査周波数は例えば30kHz、垂直方向の走査周波数は例えば60Hz程度である。また、ミラー部16の水平、垂直方向の傾斜角度はそれぞれほぼ±10度である。また、ミラー部16の水平走査は正弦波の駆動電圧を用いた機械共振振動を行うことから、水平方向の走査領域の左右の周辺部は水平走査速度が極端に低下する。そのため、図5に示すように、映像表示領域17の水平域は、走査領域18の全てを使用せずに少し内側の領域としている。
【0048】
次に、映像投影システムPSの動作について説明する。電源が投入されると、システムコントローラ14は、表示コントローラ5に、黒映像データをラインバッファメモリ4へ出力するように指示する。
【0049】
上述したように、入力される映像データに応じて、ラインバッファメモリ4への映像データが書き込まれる。
【0050】
変調器6は、レーザ光源7を発振させ、ラインバッファメモリ4から映像データを1画素単位で読み出し、読み出した映像データを用いてレーザ光源7から射出されるレーザビームを変調する。
【0051】
レーザ光源7から射出された3本のレーザビームはダイクロミラー8により一本のレーザビームWに合波され、ミラー部16に入射する。
【0052】
レーザビームWは、走査駆動されるミラー部16によりラスター走査され、立体物OBJ上に投影され、これにより高精細な映像を形成できる。このとき、可視光映像に重ねて赤外光映像が立体物OBJに投影されるが、観察者が気づくことはない。
【0053】
以下、立体物OBJを直方体として、映像補正の態様を図6のフローチャートに基づいて説明する。まず、ステップS101で、形状認識部MRは、立体物OBJの面に投影された不可視光映像を含む領域を撮影した不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、三角測量の原理により、直方体OBJの形状情報を取得する。ここでは、形状情報とは例えば直方体OBJの回転角度である。
【0054】
図7は、直方体OBJを真上から見た図であり、直方体OBJの中心軸Xを中心とする回転角度をθと定義する。直方体OBJの投影面SC1(SC2)は、回転角度θに依存して傾きが変化する。更にステップS102で、映像補正部ISが、可視光映像に対して形状情報に基づいた補正を行う。
【0055】
より具体的には、まず形状認識部MRが、不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、撮影した面内にエッジED(面同士の境界)がないか検出する。エッジ検出は、立体物OBJに対して水平に赤外光をスキャンしてゆき、画素毎に距離を測定したときに、列内で最も近接した近接画素を求めるようにして画面全体のスキャンを行う。このとき、近接画素が縦に並んでいた場合、これをエッジとして検出できる。ここで、図7に点線で示すようにエッジがない場合には、映像補正部ISは、不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、投影面が傾いていないと判断できるので、投影用の映像データを補正しない。
【0056】
一方、形状認識部MRが、撮影した面内にエッジEDがあると検出した場合、映像補正部ISは、投影面が2面あると認識して、2つの面SC1,SC2に異なる映像を投影するよう、映像補正部ISに信号を出力する。かかる場合、投影面SC1,SC2は異なる方向に傾いているので、その傾き角に応じて、不可視光撮影部CAからの信号に基づいて、異なる映像データに対して、それぞれアフィン変換や台形補正(特開2010−130181号公報参照)などを行う。このとき、傾き角θに応じて、アフィン変換の変換係数は変化させる。その後、ステップS103で、可視光投影部PJ1が補正された可視光映像を投影する。これにより、投影面SC1,SC2それぞれに、適切に補正された映像を投影することで、観察者が遠近法で自然に映像を観察できるようになる。
【0057】
以上より明らかであるが、撮影した画面内におけるエッジEDが、投影面の境界を表し、その検出により投影映像の追従が行われ、またエッジEDの両側で異なる映像が表示されるということである。即ち、図8に示すように、本実施の形態の映像投影システムPSにより直方体OBJに投影を行ったとき、観察者に第1の投影面SC1が正対した状態(a)では、第1の投影面SC1全体に最初の映像IMG1が補正されない状態で投影される。ここから、直方体OBJを回転させてゆくに連れて、エッジEDが検出され始め、第1の投影面SC1上の映像IMG1が追従して幅が狭くなりつつ補正されてゆき、それと同時に観察者の視界に入ってくる第2の投影面SC2に、次の映像IMG2が補正されて投影されるようになる((b)〜(d))。直方体OBJの回転に伴い、第2の投影面SC2上の次の映像IMG2の幅が広がってゆき((e)、(f))、更に直方体OBJが90度回転した時点で、エッジEDが検出されなくなり、観察者に第2の投影面SC2が正対した状態になる(g)ので、最初の映像IMG1は消え失せて、第2の投影面SC2全体に補正されない映像IMG2が投影されることとなる。つまり、直方体OBJを連続して回転させることで、何の映像も形成されていない直方体OBJの各面上に、回転角90度毎に、異なる映像が次々に形成されてゆき、自動紙芝居のような効果を得ることができる。
【0058】
特に図9の例では、直方体OBJを手で回転させると、回転に応じて直方体OBJの側面に独立した映像が投影されるものである。映像は直方体OBJの側面ごとに4種類用意されている。直方体OBJに映像をそのまま投影すると映像は歪んでしまうため、映像補正部により、観察者から映像が自然に見えるように補正されることとなる。
【0059】
尚、LED光源などを用いた通常の映像投影システムを用いて立体物へ映像を投影する場合、立体物上のすべての点でピントがあった映像を投影することはできないが、本実施の形態では、光源としてレーザー光源を用いることで、距離に関わらずフォーカスフリーを実現し、立体物のどの位置でもピントがあった映像を投影できる。ある程度焦点深度が大きい映像投影システムならばこのような効果は得られるが、本実施の形態のようなレーザー光源を用いた映像投影システムが特に好ましい。
【符号の説明】
【0060】
2 フレームメモリ
3 映像処理用メモリ
4 ラインバッファメモリ
6,6r,6g,6b,6IR 変調器
7,7r,7g,7b,7IR レーザ光源
8,8r,8g,8b,8IR ダイクロミラー
9 光スキャナ
10 スクリーン
12 位置検出部
14 システムコントローラ
15 2次元走査ミラー
16 ミラー部
17 映像表示領域
18 走査領域
110 位相検出部
120 同期信号出力部
CA 不可視光撮影部
IS 映像補正部
MR 形状認識部
OBJ 立体物
PJ1 可視光投影部
PJ2 不可視光投影部
PS 映像投影システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物に映像を投影する映像投影システムであって、
前記立体物に対して可視光映像を投影する可視光投影部と、
前記可視光映像上に不可視光映像を重畳させて投影する不可視光投影部と、
前記不可視光映像を含む領域を撮影する不可視光撮影部と、
前記不可視光撮影部からの信号に基づいて、前記可視光映像内に置かれた前記立体物の変形及び/又は変位状態の認識を行う形状認識部と、
前記形状認識部の認識結果に基づいて前記可視光映像を補正する映像補正部とを備えることを特徴とする映像投影システム。
【請求項2】
前記立体物が、経時的に変形及び/又は変位することを特徴とする請求項1記載の映像投影システム。
【請求項3】
前記可視光投影部は、出射光を走査することで映像を投影し、前記形状認識部は、三角測量による距離情報の取得を用いて形状認識を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の映像投影システム。
【請求項4】
前記立体物は多面体であり、前記形状認識部は、前記不可視光撮影部からの信号に基づいて前記多面体の面を認識し、前記映像補正部は、前記形状認識部の認識結果に基づき、前記多面体の面ごとに独立した映像となるよう可視光映像を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の映像投影システム。
【請求項5】
前記多面体が直方体であることを特徴とする請求項4記載の映像投影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255883(P2012−255883A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128411(P2011−128411)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】