説明

映像表示装置

【課題】表示画面の別途加工及び部品の追加をすることなく、使用者には見易く覗き見者には見難い映像を表示して、覗き見を防止できる映像表示装置の提供。
【解決手段】表示画面106での表示条件の設定情報及び/又は表示画面106の特性情報を取得する表示環境情報取得部102と、映像信号の所定周波数以上の成分を抽出して映像信号を作成する高周波成分映像作成部103と、その作成した映像信号と合成する為の映像信号を作成する合成対象映像作成部104と、高周波成分映像作成部103及び合成対象映像作成部104が作成した映像信号を合成する表示映像合成部105とを備え、表示環境情報取得部102が取得した情報に基づき、高周波成分映像作成部103、合成対象映像作成部104又は表示映像合成部105が作成又は合成した映像信号を表示画面106に表示する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示する映像に処理を施して、表示画面が周囲から覗き見られても、表示している映像が見えないようにすることで、覗き見を防止する映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン及びノートパソコン等、映像表示装置を含む情報機器が普及し、市街地及び公共施設等の多数の第三者が存在する場所で、人に見られたくないメール又は書類の作成等を行う機会が増えて来た。
このような場所での映像表示装置の使用は、第三者から画面を覗き見される可能性があり、情報漏洩及びプライバシー侵害につながることがある。その為、そのような覗き見を防ぐものが多々考えられている。
例えば、端末の表示画面に貼って表示画面への斜めからの覗き込みを防止するシール、及びボタンを押すとコントラストを一様に下げることができる機能を有する端末等がある。
【0003】
特許文献1には、端末のディスプレイ部分に人間の存在を検出するセンサ及び距離センサを設置し、使用者以外の第三者が近くに居ることを検知した場合、第三者と端末との距離が一定値以内のときに、第三者から文字が見難くなるように、背景色と文字色のコントラストを小さくする技術が開示されている。第三者から文字を見難くする具体例としては、背景色が白で文字色が黒の表示状態から、背景色が白で文字色がグレーの表示に変えて、コントラストを低くして見難くする例が記載されている。
【0004】
特許文献2には、広視野角モードと狭視野角モードとを備え、狭視野角モードのときには、視野切り替えパネルの電圧制御を行って、斜めからコントラストの高い別の映像が見えるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−293062号公報
【特許文献2】特開2007−101606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、背景色と文字色とのコントラストを調整するだけであるので、モノクロームのテキスト表示時にしか適用できないという問題がある。また、使用者以外の第三者が傍にいるか否かの判定のみを行い、表示するコンテンツ及びディスプレイの特性等を考慮せずに、一律に処理をしているので、必要以上に使用者に見え難くなってしまう場合があるという問題もある。
特許文献2に開示された技術では、視野切り替えパネルをディスプレイ部分に別途設置する必要があり、その為の絶縁性基板、偏光板及び電極が通常の機器と比べて追加となる。その為、液晶パネルを2倍搭載することと同等であり、その分、部品コストの上昇及び消費電力の増加等のデメリットが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、表示画面を別途加工したり部品を追加することなく、表示環境や周囲の状況に応じて適切な映像処理を施すことにより、カラー表示にも適用でき、使用者には見え易く、覗き見者には見え難い映像を表示して、覗き見を防止できる映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既知の映像処理技術の1つとして、ハイブリッドイメージ(Hybrid Image)の映像処理技術がある。この技術は、ある映像の高周波成分と他の映像の低周波成分とを合成した場合、近くからみると、高周波成分の映像が見え、遠くから見ると低周波成分の映像が見える現象を利用する。
これは、人間の視覚特性を利用した映像処理技術である。人間の視覚は、近くでは周波数の高い映像が見え易く、遠くでは周波数の高い映像が見え難い為、代わりに周波数の低い映像が見えるようになるという特性がある。また、2つの物体が混じり合った映像から、1つの物体を視認すると、もう1つの物体は視認し難くなるとの特性も有している。
【0009】
図4は、このハイブリッドイメージの映像処理を施した映像例を示す説明図である。(a)は原画像であり、「ABCDE」の文字が表示されている。(a)の原画像の映像信号にハイパスフィルタをかけて高周波成分の映像としたものが(b)である。
また、(c)は別の原画像であり、「OPQRS」の文字が表示されている。(c)の原画像の映像信号にローパスフィルタをかけて低周波成分の映像としたものが(d)である。
【0010】
(b)の映像と(d)の映像とを合成した映像が(e)である。
(e)の映像を近くから見た場合の映像が(f)となる。ここでは、拡大して表示することで、近くから見た場合の映像の代わりとしている。(f)の映像では、高周波成分の「ABCDE」の文字が見え易く、低周波成分の「OPQRS」の文字が見え難くなっていることが分かる。
また、(e)の映像を遠くから見た場合の映像が(g)となる。ここでは、縮小して表示することで、遠くから見た場合の映像の代わりとしている。(g)の映像では、低周波成分の「OPQRS」の文字が見え易く、高周波成分の「ABCDE」の文字が見え難くなっていることが分かる。
【0011】
図5は、ハイブリッドイメージで使用するフィルタの周波数特性の例を示す特性図である。図5(a)は、ハイパスフィルタの周波数特性の例であり、図5(b)は、ローパスフィルタの周波数特性の例である。すなわち図4(a)の映像信号に、図5(a)に示す特性のフィルタをかけると、図4(b)の映像となり、図4(c)の映像信号に、図5(b)に示す特性のフィルタをかけると、図4(d)の映像となる。
【0012】
尚、ここでのハイパスフィルタ及びローパスフィルタは、ガウス関数を用いることが一般的である。また、フィルタの特性を示すパラメータとして、ゲインが0.5になる点の周波数をカットオフ周波数として定義されており、図5(a)でのfH、図5(b)でのfLに相当する。
ハイパスフィルタをかけた後の映像信号と、ローパスフィルタをかけた後の映像信号とを合成する際の周波数特性の例を図6に示す。ここでは、高周波成分の映像信号と低周波成分の映像信号との合成比が1:1の場合のフィルタ特性である。即ち、両者の最大のゲインが1になるように合成する場合の周波数特性である。
【0013】
このハイブリッドイメージ技術では、高周波成分の映像信号と低周波数成分の映像信号とを合成することにより、近くから見た場合と遠くから見た場合とで見え易い映像が異なる効果がある。
しかし、この技術を応用し、高周波成分の映像信号と低周波成分の映像信号とを合成するのではなく、高周波成分の映像信号と通常の映像信号とを合成することによる同様の効果もある。即ち、近くで見ると、通常の映像に高周波成分の映像を重畳した映像に見え、遠くから見ると、重畳した高周波成分が見え難く、通常の映像のみ見え易くなる効果もある。
【0014】
映像表示装置への覗き見を防止する場合には、先述した効果を利用すると、遠くの覗き見者には低周波成分の映像が見え、近くの使用者には高周波成分の映像が見える覗き見防止策となる。後述した効果を利用すると、遠くの覗き見者には通常の映像が見え、近くの使用者には通常の映像に高周波成分を重畳した映像が見える覗き見防止策となる。
即ち、どちらの効果にしても、映像表示装置の使用者にのみ見えるようにしたい映像を、高周波成分の映像とすることで覗き見防止策となる。
【0015】
本発明に係る映像表示装置は、映像信号を取得し、取得した映像信号を表示画面に表示する映像表示装置において、前記表示画面での表示条件の設定情報及び/又は前記表示画面の特性情報を取得する表示環境情報取得部と、前記映像信号の所定周波数以上の成分を抽出し、抽出した成分による映像信号を作成する高周波成分映像作成部と、該高周波成分映像作成部が作成した映像信号と合成する為の映像信号を作成する合成対象映像作成部と、前記高周波成分映像作成部が作成した映像信号、及び前記合成対象映像作成部が作成した映像信号を合成する表示映像合成部とを備え、前記表示環境情報取得部が取得した情報に基づき、前記高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を前記表示画面に表示するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
この映像表示装置では、映像信号を取得し、取得した映像信号を表示画面に表示する。表示環境情報取得部が、表示画面での表示条件の設定情報及び/又は表示画面の特性情報を取得し、高周波成分映像作成部が、映像信号の所定周波数以上の成分を抽出し、抽出した成分による映像信号を作成する。合成対象映像作成部が、高周波成分映像作成部が作成した映像信号と合成する為の映像信号を作成し、表示映像合成部が、高周波成分映像作成部が作成した映像信号、及び合成対象映像作成部が作成した映像信号を合成する。表示環境情報取得部が取得した情報に基づき、高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を表示画面に表示する。
【0017】
本発明に係る映像表示装置は、前記表示画面での表示条件の設定情報は、周囲からの覗き見防止機能をオン/オフする設定情報、覗き見防止レベルの設定情報、画面の明るさ設定情報、及び表示フォントサイズの設定情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る映像表示装置は、前記表示画面の特性情報は、視野角情報及び/又は自発光画面であるか否かの情報を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る映像表示装置は、使用者の視聴状況に関する情報及び/又は周囲の視聴状況に関する情報を取得する視聴状況情報取得部をさらに備え、該視聴状況情報取得部が取得した情報に基づき、前記高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を前記表示画面に表示するように構成してあることを特徴とする。
【0020】
この映像表示装置では、視聴状況情報取得部が、使用者の視聴状況に関する情報及び/又は周囲の視聴状況に関する情報を取得し、視聴状況情報取得部が取得した情報に基づき、高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を表示画面に表示する。
【0021】
本発明に係る映像表示装置は、前記使用者の視聴状況に関する情報は、前記使用者及び表示画面間の距離情報、前記使用者の周囲から視聴する覗き見者及び前記表示画面間の距離情報、前記覗き見者及び表示画面がなす角度の情報、前記使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報、並びに前記覗き見者の視線方向に関する情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0022】
この映像表示装置では、使用者の視聴状況に関する情報は、使用者及び表示画面間の距離情報、使用者の周囲から視聴する覗き見者及び表示画面間の距離情報、覗き見者及び表示画面がなす角度の情報、使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報、並びに覗き見者の視線方向に関する情報の少なくとも1つを含んでいる。
【0023】
本発明に係る映像表示装置は、前記周囲の視聴状況に関する情報は、前記表示画面の周囲の明るさ情報及び/又は該表示画面の揺れ具合に関する情報を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る映像表示装置によれば、表示画面を別途加工したり部品を追加することなく、表示環境や周囲の状況に応じて適切な映像処理を施すことにより、カラー表示にも適用でき、使用者には見え易く、覗き見者には見え難い映像を表示して、覗き見を防止できる映像表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る映像表示装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】フィルタのカットオフ周波数、及び映像の合成比を調整する場合のフィルタの周波数特性の例を示す特性図である。
【図3】本発明に係る映像表示装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図4】ハイブリッドイメージの映像処理を施した映像例を示す説明図である。
【図5】ハイブリッドイメージで使用するフィルタの周波数特性の例を示す特性図である。
【図6】ハイパスフィルタをかけた後の映像信号と、ローパスフィルタをかけた後の映像信号とを合成する際の周波数特性の例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る映像表示装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
この映像表示装置100は、映像データ取得部101、表示環境情報取得部102、高周波成分映像作成部103、合成対象映像作成部104及び表示映像合成部105を備えた構成となっている。
【0027】
ここでは、映像表示装置100は、携帯電話及びスマートフォン等の端末の一機能として組み込まれ、端末内のアプリケーションが映像を表示する際に、本発明が特徴とする機能を利用して映像を表示する例として説明するが、これに限った形態である必要はない。例えば、映像表示装置として独立して存在し、記録媒体又はネットワークから取得した映像に対して映像処理を施して、その処理結果を記録媒体に記録したり、ネットワーク等に転送したりする形態であってもよい。
【0028】
映像データ取得部101は、映像を表示する為の図示しないアプリケーション機器に接続し、アプリケーション機器が表示しようとする映像データ(映像信号)を入力映像データとして取得する。取得した入力映像データは、高周波成分映像作成部103及び合成対象映像作成部104に与える。
表示環境情報取得部102は、映像表示装置100が組み込まれた端末における表示条件の設定情報、及び端末の表示画面の特性情報(以下、これらをまとめて表示環境情報と記載)を取得する。取得した表示環境情報は、高周波成分映像作成部103、合成対象映像作成部104及び表示映像合成部105に与える。
【0029】
端末における表示条件の設定情報としては、周囲からの覗き見防止機能をオン/オフする設定情報、覗き見防止レベルの設定情報、画面の明るさ設定情報、及び表示フォントサイズの設定情報等がある。また、端末の表示画面の特性情報としては、視野角情報及び自発光画面であるか否かの情報等の表示画面の特性情報等がある。自発光画面の例としては、プラズマ、有機EL(Electro-Luminescent)、FED(Field Emission Display)及びSED(Surface-conduction Electron-emitter Display)のディスプレイがあり、自発光画面でないディスプレイの例としては液晶(LCD;Liquid Crystal Display)がある。
【0030】
高周波成分映像作成部103は、映像データ取得部101で取得した入力映像データに対して、表示環境情報取得部102で取得した表示環境情報、及び取得した入力映像データの内容に応じて、ハイパスフィルタをかける周波数範囲を調整して高周波成分の映像データを作成する。具体的には、前述のハイパスフィルタのカットオフ周波数を決定し、ハイパスフィルタをかける。作成した映像データは、表示映像合成部105に与える。
【0031】
合成対象映像作成部104は、表示環境情報取得部102で取得した表示環境情報、及び映像データ取得部101で取得した入力映像データの内容に応じて、高周波成分映像作成部103で作成した高周波成分の映像データと合成する為の映像データを作成する。
合成対象映像作成部104では、ハイブリッドイメージ技術における、高周波成分の映像データと合成する為の映像データを作成する。なお、前述したように、高周波成分の映像データと合成する為の映像データは、低周波成分の映像データでも良いし、通常の映像データでも良い。
【0032】
高周波成分の映像データに低周波成分の映像データを合成する場合は、予めローパスフィルタをかけた複数の映像データを図示しないメモリに格納しておき、複数の映像データから選択して読み出すことで、低周波成分の映像データを作成するようにしても良い。また、複数の原画像データをメモリに格納しておき、状況に応じて選択して読み出しローパスフィルタのかけ方を変えて、低周波成分の映像データを作成するようにしても良い。
【0033】
表示映像合成部105は、高周波成分映像作成部103で作成した高周波成分の映像データと、合成対象映像作成部104で作成した映像データとを合成する。具体的には、表示環境情報取得部102から与えられた表示環境情報に基づき、前述した2つの映像データの合成比を決定し、決定した合成比で2つの映像データを合成する。合成した映像データは、表示映像データとして表示画面106に与える。
表示画面106は、表示映像合成部105から与えられた表示映像データを画面に表示する。
【0034】
このような構成の映像表示装置100では、高周波成分映像作成部103のハイパスフィルタ及び合成対象映像作成部104のローパスフィルタの各カットオフ周波数、並びに表示映像合成部105における2つの映像データの合成比を決定する必要がある。これらの値により、使用者が見るべき映像が見易くなるのか、見難くなるのかの具合が変わる。言い換えると、覗き見者にも見え易くなるのか、見え難くなるのかの具合が変わることになる。即ち、覗き見防止の強度(覗き見防止レベル)を設定することができる。
【0035】
覗き見防止の強度は、状況毎に変えた方が良い。例えば、覗き見者が遠くに存在し、既に見難い状況にあるのに、覗き見防止の強度を強くする必要はない。強くすると使用者からも見難くなってしまうからである。
そこで、覗き見防止の強度を、取得した表示環境情報に応じて決定することが求められる。表示画面106の明るさ設定情報が有る場合には、明るい設定では覗き見者から見え易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に暗い設定では覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
【0036】
また、表示フォントサイズの設定情報が有る場合には、フォントサイズが大きい設定では文字も見え易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に小さい設定では覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
また、視野角情報が有る場合は、視野角が広いときには斜めからも見え易いので覗き見防止の強度を強くし、逆に狭いときには覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
また、自発光画面であるか否かの情報が有る場合は、自発光画面のときには斜めからも見え易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に他発光画面のときには覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
【0037】
また、覗き見防止レベルの設定情報が有る場合は、その情報に応じて所定の強度に設定すれば良い。また、不必要に覗き見防止機能が働かないように、覗き見防止機能のオン/オフの設定を設け、オンのときにのみこの覗き見防止機能が作動するようにしても良い。
これら複数の表示環境情報のうち、1つだけを使っても良いし、複数を組み合わせて覗き見防止の強度を決定しても良い。組み合わせる場合に、何れかの情報に重きを置いて決定しても良い。
【0038】
また、使用者が見るべき映像の性質に応じて、覗き見防止の強度を決定しても良い。例えば、使用者が見るべき映像の高周波成分が多いのであれば、そもそも覗き見者からは見え難いので、覗き見防止の強度を弱くし、逆に低周波成分が多いのであれば、覗き見防止の強度を強くすれば良い。
【0039】
図2は、覗き見防止の強度を調整する方法であり、フィルタのカットオフ周波数、及び映像データの合成比を調整する場合のフィルタの周波数特性の例を示す特性図である。
図2(a)は、高周波成分の映像データを作成する為のハイパスフィルタのカットオフ周波数を調整した場合の周波数特性の例である。調整前の周波数特性は図6であり、それと比較して、右下がりの曲線であるローパスフィルタの特性は変更なく、右上がりの曲線であるハイパスフィルタの特性は、調整前が点線で示され、調整後は、カットオフ周波数をfH1にした実線で示されている。
【0040】
このように、ハイパスフィルタのカットオフ周波数を大きくすることにより、使用者が見るべき映像の成分が減る為、使用者及び覗き見者からその映像がより見え難くなる。また、逆にハイパスフィルタのカットオフ周波数を小さくすると、使用者が見るべき映像の成分が増える為、使用者及び覗き見者からその映像がより見え易くなる。
【0041】
図2(b)は、映像データの合成比を調整した場合の周波数特性の例である。調整前の周波数特性は図6であり、それと比較して、右下がりの曲線であるローパスフィルタの特性は変更なく、右上がりの曲線であるハイパスフィルタの特性は、調整前が点線で示され、調整後は、ゲインを半分に設定した実線で示されている。即ち、高周波成分の映像データと低周波成分の映像データとの合成比を1:2に設定した例である。
【0042】
このように、ハイパスフィルタのゲインを小さくすることにより、使用者が見るべき映像の成分が減る為、使用者及び覗き見者からその映像がより見え難くなる。また、逆にハイパスフィルタのゲインを大きくすると、使用者が見るべき映像の成分が増える為、使用者及び覗き見者からその映像がより見え易くなる。ここでは、ハイパスフィルタ側のゲインを調整したが、ローパスフィルタ側のゲインを調整しても同様の効果が得られる。
また、高周波成分の映像データと通常の映像データとを合成する場合でも、このハイパスフィルタのゲインの調整及び合成比の調整により、使用者が見るべき映像を見易くするのか、見難くするのかの調整が可能である。
【0043】
(実施の形態2)
図3は、本発明に係る映像表示装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
この映像表示装置600は、図1に示す映像表示装置100に視聴状況情報取得部601が付加された構成となっている
視聴状況情報取得部601は、使用者の視聴状況に関する情報、及び端末周囲の視聴状況に関する情報(以下、これらをまとめて視聴状況情報と記載)を取得し、取得した視聴状況情報を、高周波成分映像作成部103、合成対象映像作成部104及び表示映像合成部105に与える。
【0044】
使用者の視聴状況に関する情報としては、使用者及び表示画面106間の距離情報、使用者の周囲から視聴する覗き見者及び表示画面106間の距離情報、覗き見者及び表示画面106の画面がなす角度の情報、使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報、並びに覗き見者の視線方向に関する情報等が有る。
端末周囲の視聴状況に関する情報としては、表示画面106の画面の周囲の明るさ情報、及び画面の揺れ具合に関する情報等が有る。
【0045】
使用者及び表示画面106間の距離情報、覗き見者及び表示画面106間の距離情報、覗き見者及び画面がなす角度情報、並びに使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報を取得するには、少なくともカメラが必要であるが、大半の端末では既にカメラを搭載しており、この備え付けのカメラを利用することができる。人物との距離を測るには、距離センサを別途設置する。また、覗き見者の視線方向に関する情報を取得するには、赤外線センサを別途設置する。周囲の明るさ情報及び画面の揺れ具合に関する情報等を取得するには、光センサ及び加速度センサ等を別途設置する。
映像表示装置600のその他の構成は、図1に示す映像表示装置100の構成と同様であるので、同一部分には同一符号を付して、説明を省略する。
【0046】
このような構成の映像表示装置600では、取得した視聴状況情報に応じて覗き見防止の強度を変えることは効果がある。
使用者及び表示画面106間の距離情報がある場合、距離が近いときは、使用者から見易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に遠いときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
また、覗き見者及び表示画面106間の距離情報がある場合、距離が近いときは、覗き見防止の強度を強くし、逆に遠いときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
【0047】
また、覗き見者及び表示画面106の画面がなす角度情報がある場合、角度が狭いときは、覗き見防止の強度を強くし、逆に角度が広いときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
また、使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報がある場合、両者の位置が近いときは、覗き見防止の強度を強くし、逆に両者の位置が遠いときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
【0048】
また、覗き見者の視線方向に関する情報がある場合、視線が表示画面106の画面を向いているときは、覗き見防止機能を作動させるようにし、逆に表示画面106の画面と異なる方向を向いているときは、覗き見防止機能を作動させないようにしても良い。
また、表示画面106の画面の周囲の明るさ情報がある場合、周囲が暗いときは、映像を見易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に周囲が明るいときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
【0049】
また、表示画面106の画面の揺れ具合に関する情報がある場合、画面があまり揺れていないときは、映像を見易いので、覗き見防止の強度を強くし、逆に画面が結構揺れているときは、覗き見防止の強度を弱くすれば良い。
これら複数の視聴状況情報のうち、1つだけを使用しても良いし、複数を組み合わせて覗き見防止の強度を決定しても良い。複数を組み合わせる場合に、何れかの情報に重きを置いて決定しても良い。また、視聴状況情報と上述した表示環境情報と使用者が見るべき映像の性質とを組み合わせて、覗き見防止の強度を決定しても良い。
映像表示装置600のその他の動作は、上述した実施の形態1の映像表示装置100の動作と同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
100,600 映像表示装置
101 映像データ取得部
102 表示環境情報取得部
103 高周波成分映像作成部
104 合成対象映像作成部
105 表示映像合成部
106 表示画面
601 視聴状況情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号を取得し、取得した映像信号を表示画面に表示する映像表示装置において、
前記表示画面での表示条件の設定情報及び/又は前記表示画面の特性情報を取得する表示環境情報取得部と、前記映像信号の所定周波数以上の成分を抽出し、抽出した成分による映像信号を作成する高周波成分映像作成部と、該高周波成分映像作成部が作成した映像信号と合成する為の映像信号を作成する合成対象映像作成部と、前記高周波成分映像作成部が作成した映像信号、及び前記合成対象映像作成部が作成した映像信号を合成する表示映像合成部とを備え、前記表示環境情報取得部が取得した情報に基づき、前記高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を前記表示画面に表示するように構成してあることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記表示画面での表示条件の設定情報は、周囲からの覗き見防止機能をオン/オフする設定情報、覗き見防止レベルの設定情報、画面の明るさ設定情報、及び表示フォントサイズの設定情報の少なくとも1つを含む請求項1記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記表示画面の特性情報は、視野角情報及び/又は自発光画面であるか否かの情報を含む請求項1又は2記載の映像表示装置。
【請求項4】
使用者の視聴状況に関する情報及び/又は周囲の視聴状況に関する情報を取得する視聴状況情報取得部をさらに備え、該視聴状況情報取得部が取得した情報に基づき、前記高周波成分映像作成部、合成対象映像作成部又は表示映像合成部が作成又は合成した映像信号を前記表示画面に表示するように構成してある請求項1から3迄の何れか1つに記載の映像表示装置。
【請求項5】
前記使用者の視聴状況に関する情報は、前記使用者及び表示画面間の距離情報、前記使用者の周囲から視聴する覗き見者及び前記表示画面間の距離情報、前記覗き見者及び表示画面がなす角度の情報、前記使用者及び覗き見者の位置関係に関する情報、並びに前記覗き見者の視線方向に関する情報の少なくとも1つを含む請求項4記載の映像表示装置。
【請求項6】
前記周囲の視聴状況に関する情報は、前記表示画面の周囲の明るさ情報及び/又は該表示画面の揺れ具合に関する情報を含む請求項4又は5記載の映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−237293(P2010−237293A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82797(P2009−82797)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】