説明

映像評価方法および映像評価システム

【課題】
立体ディスプレイの視域、解像度、歪み、色ムラや輝度ムラを効率良く評価する。
【解決手段】
計測装置が立体映像を観察可能な範囲である視域を計測する第1のステップと、計測装置が立体映像の解像度を計測する第2のステップと、計測装置が立体映像の歪みを計測する第3のステップと、計測装置が立体映像の色ムラまたは輝度を計測する第4のステップと、を備える。第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップの順序、または、第1のステップ、第2のステップ、第4のステップ、第3のステップの順序で立体映像を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像評価方法および映像評価システムに関し、特に、立体ディスプレイの映像評価の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの映像評価には様々な方法がある。例えば、特許文献1では、通常のデジタルカメラを用いてディスプレイの輝度ムラや色ムラを計測する方法が開示されている。また、非特許文献1では、従来の輝度計ではディスプレイの1点の輝度しか計測できなったことに対して、ディスプレイの輝度を面単位で計測できる輝度計が開示されている。また、非特許文献2では、ディスプレイの1点が周囲に発する光線状態を計測できる装置が開示されている。
【0003】
立体ディスプレイを明確に対象とした映像評価方法は立体ディスプレイ分野自体が発展途上であるためにまだ少ないのが現状であるが、非特許文献3では、様々な高さに様々な太さの縞模様を立体映像として表示し、その縞模様の見え方から立体映像の解像度を計測する方法が開示されている。また、非特許文献4では、様々な高さに様々な周期の正弦波模様を立体映像として表示し、その正弦波模様の見え方から立体映像の解像度を計測する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−2800号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】上松 幹夫, 後藤泰史, 門脇 豊, “2次元色彩輝度計CA-2000のインパルス表示型ディスプレイ測定技術”, コニカミノルタテクノロジーレポート, Vol.4, pp. 65-68, 2007.
【非特許文献2】T. Leroux, P. Boher, T. Bignon, D. Glinel and S. Uehara, "VCMaster3D: A New Fourier Optics Viewing Angle Instrument for Characterization of Autostereoscopic 3D Displays," SID 09 DIGEST, pp. 115-118, June 2009.
【非特許文献3】H. Liao, M. Iwahara, T. Koike, N. Hata, I. Sakuma and T. Dohi, "Scalable High-resolution Integral Videography Autostereoscopic Display with a Seamless Multiprojection System," Applied Optics, Vol. 44, No. 3, pp. 305-315, 2005.
【非特許文献4】T. Saishu, K. Taira, Y. Momonoi, R. Fukushima and Y. Hirayama, "Resolution Measurement of Autostereoscopic 3-D Displays with Lenticular Sheet," Proc. of IDRC 2008, pp. 233-236, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、画面全体の輝度ムラや色ムラを評価するために、通常のデジタルカメラの個体差を補正した上でディスプレイ面を撮影するものである(図1)。
【0007】
しかし、この技術では、画面全体の評価画像は一度に取得できるものの、複数の方向から見た画面の状態を計測するためには、カメラの位置をその都度移動する必要がある。そのような移動をすると、移動のコストが発生するだけでなく、移動の誤差も発生するため、ディスプレイごとに計測環境が異なってしまい、製品の映像評価を行う場合には好ましくない。また、必要な視点分の台数のカメラを用意し、それらを並べて計測することも可能であるが(図2)、必要な視点数が多い場合には装置を用意するコストが増大する他、カメラの個体差は計測する日時や環境にも影響を受けるため、計測作業のたびに全台数のカメラの補正を行う必要があり、やはりコストが増大してしまう。
【0008】
非特許文献1に記載の技術は、特許文献1と同様に、計測装置の設置位置からディスプレイの画面全体を一度に計測することができる技術である。対物レンズとCCDセンサの間に色分解用の光学フィルタと光量調節用のNDフィルタを設置した構成となっており、カメラで画像を取得するのと同様に2次元的な輝度分布や色度分布を取得することができる。
【0009】
しかし、特許文献1と同様に、複数の方向から見た画面の状態を計測するためには複数台の計測装置を用いるか、設置位置の移動が必要となる。また、色彩輝度計であるため、ディスプレイが平面視ディスプレイではなく立体視ディスプレイである場合には幾何学的な立体感の計測に用いることは難しい。
【0010】
非特許文献2に記載の技術は、計測装置設置位置からディスプレイのある1点から周囲に発せられる光線を一度に計測することができる技術である(図3)。図3の例では点303を複数の方向から見た状態を一度に計測することができることになる。色収差のない異なるレンズの組み合わせとCCDセンサを用いて、ディスプレイから発せられる光線の角度に応じた情報を2次元画像として取得することができる。例えば、非特許文献2に記載の装置は、ディスプレイ面から15mm離れた位置に装置を設置し、直径4mmの部分から周囲±50°の範囲内に発せられる光線を角度分解能0.03°以下の精度で計測することができる。
【0011】
しかし、非特許文献2に記載の技術ではディスプレイ面の一部分に対してしか一度に計測できないため、ディスプレイの画面全体を計測するためには、複数台の計測装置を用いるか、設置位置の移動が必要となる(図4)。
【0012】
以上に述べた課題は、通常の平面ディスプレイにも当てはまるが、とりわけ立体ディスプレイにおいて重要である。何故ならば、立体ディスプレイでは視点に応じて異なる角度から見た画像が得られるため、複数の箇所から一度に計測することが特に求められるからである。
【0013】
さらに、非特許文献3および4については以下に述べる課題がある。
【0014】
非特許文献3に記載の技術は、立体ディスプレイ100の解像度を評価するための技術である。図14のように、様々な高さに様々な太さの縞模様の画像1406を表示し、その立体映像1401〜1405を観察者1400が目視することで立体映像の高さごとに表現可能な解像度を計測する技術である(図14)。
【0015】
しかし、非特許文献3は、様々な視点位置における解像度の計測には言及していない。また、図15に示すような適当な立体映像コンテンツ1500を表示して観察者1400が目視しているだけであり、系統的な技術とはなっていない(図15)。
【0016】
非特許文献4に記載の技術は、立体ディスプレイ100の解像度を評価するための技術であり、様々な高さに様々な周期の正弦波模様の画像1601を表示し、その立体映像をデジタルカメラ1600で撮影して画像解析をすることで立体映像の高さごとに表現可能な解像度を計測する技術である(図16)。
【0017】
しかし、非特許文献3と同様に、様々な視点位置における解像度の計測には言及していない。また、他の評価基準の計測方法には言及していない。
【0018】
以上のように、従来技術では立体ディスプレイの性能を表す様々な基準を系統的に評価する方法は言及されていない。立体ディスプレイを製品化する際には設計値による性能基準だけでなく、品質保証のためにも実機の実測評価が重要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一実施態様は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
【0020】
即ち、表示装置と、表示装置の表示映像を計測する計測装置と、表示装置と計測装置の間に配置された複数のレンズを有するレンズアレイと、を備えるシステムにおける映像評価方法であって、計測装置は、レンズアレイを通して得られる複数の表示映像の映像評価を行う。
【0021】
また、本発明の別の一実施態様は、以下の構成を備える。即ち、表示装置と、表示装置が表示する立体映像を計測する計測装置と、を備えるシステムにおける映像評価方法であって、計測装置が立体映像を観察可能な範囲である視域を計測する第1のステップと、計測装置が立体映像の解像度を計測する第2のステップと、計測装置が立体映像の歪みを計測する第3のステップと、計測装置が立体映像の色ムラまたは輝度を計測する第4のステップと、を備える。また、第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップの順序、または、第1のステップ、第2のステップ、第4のステップ、第3のステップの順序で立体映像を計測する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ディスプレイの画像評価、特に立体視ディスプレイの画像評価を簡易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】特許文献1および非特許文献1の技術を説明する図
【図2】特許文献1および非特許文献1の技術を説明する図
【図3】非特許文献2の技術を説明する図
【図4】非特許文献2の技術を説明する図
【図5】実施形態の概観図
【図6】計測装置の設定基準を説明する模式図
【図7】レンズアレイを説明する図
【図8】ディスプレイの設置方法を説明する図
【図9】レンズアレイのレンズ配置の例を示す図
【図10】計測装置のブロック図
【図11】計測装置の動作フロー図
【図12】計測システムのブロック図
【図13】計測システムの動作フロー図
【図14】非特許文献3の技術を説明する図
【図15】非特許文献3の技術を説明する図
【図16】非特許文献4の技術を説明する図
【図17】実施形態の概観図
【図18】計測装置のブロック図
【図19】計測装置の動作フロー図
【図20】計測システムのブロック図
【図21】計測システムの動作フロー図
【図22】視域計測の模式図
【図23】視域評価方法を説明する図
【図24】視域の模式図
【図25】視域計測の模式図
【図26】解像度計測の模式図
【図27】歪み計測の模式図
【図28】色ムラ、輝度ムラ計測の模式図
【図29】立体ディスプレイ各種評価基準の評価フロー図
【図30】視域再計測の模式図
【図31】レンズアレイカメラを用いた視域計測の模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。それぞれの図において同じ符号は同じものを示す。
【実施例1】
【0025】
図5は本実施例の概観図である。カメラ501とディスプレイ100の間にレンズアレイ502を設置し、レンズアレイ502のカメラ側に結像されるディスプレイ100の実像群503をカメラ501によって撮影する。レンズアレイ502を構成する各レンズを凸レンズとすると、凸レンズの効果によりディスプレイ100とレンズを挟んで反対側にディスプレイ100の実像が結像される。ディスプレイ100の表示面をレンズ側に向けて設置することで、ディスプレイ面全体の実像を結像させることができる。レンズアレイ502の各レンズに関して同様の現象が成り立つため、レンズアレイ502を構成する凸レンズの個数分だけ実像群503が結像されることになる。また、各レンズとディスプレイ100の相対位置がそれぞれ異なるため、ディスプレイ100から各レンズに入る光線群もそれぞれ異なるものとなり、各実像は対応するレンズの位置から見たディスプレイ100の光線情報を表したものとなる。
【0026】
以上をまとめると、レンズアレイ502を構成する各レンズによって結像されたディスプレイ面の各実像は、各レンズのディスプレイ100に対する位置が異なるため、それぞれ異なる方向からディスプレイ100を観察した状態となっており、一ヶ所から一台のカメラによって、複数の方向からディスプレイ面を見た状態を撮影できるようになる。
【0027】
次に、図10〜図13を用いて計測システムの具体的な構成や動作について説明する。
【0028】
図10は計測装置のブロック図である。計測装置の一例としてデジタルカメラ501のブロック図を示しているが、デジタルカメラには多様な方式があるため、各構成要素やその動作も一例として説明する。1000はデジタルカメラの撮像レンズであり、被写体から射出される光線を屈折させ、像を結ぶ働きをする。1001はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、光線情報を電気信号に変換する撮像素子である。1002はアナログ・デジタル変換回路であり、CCD1001で生成されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。1003は信号処理部であり、CCD1001から取り込んだ画像データに色調補正や解像度変換、圧縮処理などの画像処理を加え、必要に応じて各種インターフェースから画像データを出力する。また、撮像レンズ1000やCCD1001の制御を行う。1004は信号入力部であり、撮影環境や画質の設定を信号処理部1003に入力する他、シャッターを押すことによる撮影タイミングの入力も行う。1005はDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、CCD1001から取り込んだ画像データを記憶し、画像処理の際にも必要に応じてデータを記憶する。1006はフラッシュメモリであり、画像処理のプログラムを記憶しておく。1007はCCD制御部であり、信号入力部1004から信号処理部1003に撮影命令がなされると、CCD1001を駆動する。1008はレンズ制御部であり、信号入力部1004から信号処理部1003に入力された撮影環境の設定に従って撮像レンズ1000を制御する。1009はCPU(Central Processing Unit)であり、信号処理部1003において、プログラムの実行、インターフェースの制御など装置全体の制御を行う。1010は画像処理部であり、DRAM1005に記憶した画像データに対して色調補正や画質の調整を行う他、必要に応じて画像圧縮も行う。1011はUSB(Universal Serial Bus)インターフェースであり、PCに画像データを出力したり、PCと計測装置の間で相互通信を行ったりする。PCからも信号入力部1004と同様の制御信号を入力することも可能である。1012はメディアインターフェースであり、画像処理を施した画像データを記録メディアへ出力したり、記録メディアから画像データを計測装置に取り込んだりする。1013は画像出力部であり、画像処理を施した画像データを計測装置に搭載されたLCD(Liquid Crystal Display)などの映像表示モニタに出力する。必要に応じて、撮影環境などの設定情報も映像表示モニタに出力する。
【0029】
図11は計測装置の動作フロー図である。計測装置を用いて画像を撮影する処理に関して動作を説明する。ステップS1100は画像信号取得処理であり、信号入力部1004は撮影開始信号と、撮影者が設定した撮影環境設定や画質設定を信号処理部1003に入力する。信号処理部1003は撮影環境設定に従ってレンズ制御部1008を通して撮像レンズ1000を制御する。また、信号処理部1003はCCD制御部1007を通してCCD1001を駆動し、CCD1001は撮像レンズ1000を通して得られた光線情報を画像信号に変換する。この画像信号はアナログ・デジタル変換回路1002によってデジタル画像信号に変換され、信号処理部1003によってDRAM1005に記憶される。尚、信号入力部1004から入力される信号は、PCなどの外部装置よりUSBインターフェース1011などを介して信号処理部1003に入力されることもあり、以降のステップでも同様とする。ステップS1101は画像処理であり、信号処理部1003は信号入力部1004から入力された画質設定に基づいて、DRAM1005に記憶された画像データに対して画像処理を施す。例えば色調補正、解像度変換、ノイズ除去などが挙げられる。これらの画像処理はフラッシュメモリ1006に記憶されているプログラムをCPU1009が実行することによって施され、画像処理後の画像データはDRAM1005に記憶される。ステップS1102は圧縮処理であり、信号処理部1003は信号入力部1004から入力された画質設定に基づいて、DRAM1005に記憶された画像データに画像圧縮処理を施す。画像データは静止画であっても動画であっても良い。これらの画像圧縮処理はフラッシュメモリ1006に記憶されているプログラムをCPU1009が実行することによって施され、画像圧縮処理後の画像データはDRAM1005に記憶される。また、画質設定によっては圧縮処理を行わない場合もある。ステップS1103は画像出力処理であり、信号処理部1003は信号入力部1004から入力された画質設定に基づいて、DRAM1005に記憶された画像データを指定出力先に出力する。例えば、USBインターフェース1011よりPCなどの外部装置に出力したり、メディアインターフェース1012より外部記録媒体に出力したり、画像出力部1013より計測装置に装着されたLCDに出力したりする。また、計測装置内部にHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を持つ場合には、HDDに出力することもある。
【0030】
図12は計測システム全体のブロック図である。デジタルカメラなどの計測装置501と計測対象のディスプレイ100の間にレンズアレイ502を設置し、計測装置501とディスプレイ100を、演算装置1200を用いて制御し、所望の画像を撮影し、演算装置1200を用いてディスプレイ100の画質評価を行う。計測装置501の撮像レンズの光軸がレンズアレイ502、ディスプレイ100の中心を通過することが望ましく、それを実現するために例えばレーザー光1202を発する墨出し機などの基準軸表示装置1201を用いると良い。また、演算装置1200は例えばPCを用いれば良く、画像出力部1203、信号処理部1204、RAM1205、HDD1206、USBインターフェース1207、CPU1208などから構成されることが望ましい。画像出力部1203は、信号入力部1204からの指示に従い、計測用画像をディスプレイ100に出力する。計測用画像の例としては、輝度ムラや色ムラの評価を行う場合は全面白などの一様な画像を、幾何的な評価を行う場合は白・黒や赤・青や赤・シアンなどの色からなる、様々な太さの縞模様を成す画像を、計測対象のディスプレイ100の映像表示形式に応じて表示することが考えられる。計測用画像は、プログラムで生成しても良いし、HDD1206にあらかじめ記憶しておいても良い。信号入力部1204は、計測開始を指示したり、計測内容の指示をしたりする。例えば、HDD1206に格納されている計測用のスクリプトをマウスやキーボードを操作して起動させると良い。RAM1205は、画像解析などの演算時にデータを保持する。HDD1206は、計測用画像や、計測装置501から取り込んだ画像や、解析用プログラムや計測用スクリプトを記憶する。USBインターフェース1207は、計測装置501に制御信号を送信したり、計測装置501から撮影画像データを受信したりする。CPU1208は、プログラムの実行、インターフェースの制御など装置全体の制御を行う。
【0031】
図13は計測システムの動作フロー図である。計測システムの各要素の設置を行い、画像を取得し、画像の解析をする計測処理に関して動作を説明する。ステップS1300は設置位置決定処理であり、ディスプレイ100とレンズアレイ502と計測装置501を計測のために固定する処理である。ディスプレイ100と計測装置501の間にレンズアレイ502を設置するが、厳密性は必要ないものの、計測装置501の撮像レンズの光軸上にディスプレイ100の中心とレンズアレイ502の中心を合わせることが望ましく、そのためには例えば墨出し機などの基準軸表示装置1201を用いてレーザー光1202で基準となる軸を示した上で、ディスプレイ100、レンズアレイ502、計測装置501を設置すると良い。また、それぞれの設置間隔は、後述する基準に基づいて決定する。基準軸表示装置1201は、本ステップ終了後にはシステムから除外しても構わない。また、ディスプレイ100、レンズアレイ502、計測装置501は例えば三脚やディスプレイスタンドなどを用いて手動で固定すれば良い。ステップS1301は画像撮影処理であり、演算装置1200を用いて計測装置501とディスプレイ100を制御し、画像評価に必要な画像を取得し、HDD1206に保存する。計測装置501の具体的な動作フローは図11にて説明している。計測用の画像はHDD1206に保存しておいたものを画像出力部1203から出力しても良いし、HDD1206に保存しておいた画像生成プログラムをCPU1208が実行することによって生成されたものを画像出力部1203から出力しても良い。ステップS1302は画像解析処理であり、ステップS1301で取得してHDD1206に保存した画像に対して画質評価プログラムをCPU1208が実行し、ディスプレイ100の輝度ムラや色ムラ、幾何的な歪みや立体映像の視点の切り替わり方などの観点で画像解析を行う。HDD1206に保存した画像には、レンズアレイ502と各レンズを通して見たディスプレイ100の画面が含まれている。ディスプレイ100、レンズアレイ502、計測装置501の設置位置や大きさやレンズスペック、そして計測装置501の撮影環境が既知であれば、画像内のレンズ領域およびディスプレイ領域は算出が可能である他、画像処理を施して各領域を抽出することも可能である。また、計測用の画像として特定のパターン画像などディスプレイ座標を示す画像を表示して撮影しておくことで、その撮影画像を用いて、画像解析用画像における各レンズ領域に対応するディスプレイ領域の座標を得ることもできる。それらの情報を元に、各レンズを通して見たディスプレイ100の輝度ムラや色ムラ、幾何学的な歪みなどの現象がディスプレイ座標においてどのように分布しているのかを解析することができる。 ここで、図5におけるディスプレイ100とレンズアレイ502の距離、およびレンズアレイ502とカメラ501の距離、そしてレンズアレイ502のレンズの焦点距離や大きさや個数、カメラ501の撮像レンズの大きさに関して、画質評価をするために十分な情報量を持つ条件を与える。輝度ムラや色ムラの評価に関しては撮影されたディスプレイ画面の一部が欠けていても解析方法によっては十分な場合があるが、特に立体視ディスプレイの立体感の評価に関しては幾何学的な評価を伴う場合もあることから、複数方向分まとめて撮像した全てのディスプレイ画面に関して欠けのない画像を取得できることが好ましい。尚、カメラのピントは合わせることができるものとする。
【0032】
以降、図6〜図8を用いて計測装置の設定基準について例を挙げて説明する。図6は図5の様子を側面から見た模式図である。まず、ディスプレイ100の表示面とレンズアレイ502とカメラ501のフィルム面がそれぞれ平行になるように設置する。また、ディスプレイ100の表示面の中心およびレンズアレイ502の中心をカメラの光軸603が通るように設置する。レンズアレイは本実施例では図7に示すような、同じ半径、同じ焦点距離のレンズを縦3個、横3個、格子状に並べたものを例に採る。また、レンズアレイ502のレンズ形状は正方形や六角形などを用いても構わない。レンズアレイ502は図7に示すようにレンズ502a、レンズ502b、レンズ502cの中心を通過する軸602を図6の軸602に一致させるように設置されているとする。図6ではレンズアレイ502のレンズ502a、レンズ502b、レンズ502cのみが図示されている。ディスプレイ100はレンズ502aによって実像503aを結び、レンズ502bによって実像503bを結び、レンズ503cによって実像503cを結ぶ。
【0033】
図6においてディスプレイ100の大きさをD、ディスプレイ100とレンズアレイ502の距離をA、レンズアレイ502とカメラ501の撮像レンズの距離をC、実像同士の間隔をGとする。レンズアレイ502とディスプレイ100の、カメラの光軸603を中心とする回転方向の配置関係は任意とする。その配置関係を任意とすると、ディスプレイの存在する領域は、ディスプレイ100の表示面の中心すなわちカメラの光軸603を軸として回転した時にディスプレイ100が通過する領域となり、図8に示すような円形領域800となる。以降は、ディスプレイ100の平面的な大きさを円形領域800として考えると、ディスプレイ100の図6における大きさDは、ディスプレイ100の幅をW、高さをHとすると、対角線の長さD=√(WD+HD)となる。
【0034】
また、レンズアレイ502の大きさをL、各レンズの直径を2r、レンズアレイの一辺に並ぶレンズの個数をNとする。すなわちL=2Nrである。また、レンズアレイ502の各レンズの焦点距離をf、カメラの撮像レンズの半径をrとする。実像を結像させることからA>fを前提とする。
【0035】
まず、撮影条件の一つとして、全ての実像同士が重複部を持たないようにすることを考える。輝度ムラ、色ムラ、立体感のどれを評価する場合にも、実像同士が重なった状態で撮影されてしまうと、画質評価が困難になるためである。この条件は、図6の隣り合う実像同士の距離Gが0以上であればよく、そのような条件は次式で与えられる。
【数1】


ディスプレイ100のサイズD、レンズの半径rと焦点距離fを設定した上でレンズアレイ100とディスプレイ100の距離Aを数1に従って設定すれば良い。
【0036】
しかし、実像の発する光線は物体の場合とは異なり方向が限られており、条件次第では、カメラ501とレンズアレイ502の距離Cによらずに実像の一部分の光線がカメラ501の方向に全く行かない状態となり、結果として撮影されたディスプレイ画像の一部が欠けてしまうことになる。そこで次は、全ての実像の全ての部分の光線がカメラ501に向かう条件を考える。この条件は、光軸603から一番遠いレンズ502aによる実像503aの上端の部分が発する光線群のうち下端の光線である光線601が軸602となす角θが90°より大きければよく、そのような条件は次式で与えられる。
【数2】


この条件は数1の条件よりも厳しいものとなっているため、数2の条件を満たせば、数1の条件も自動的に満たすことになる。
【0037】
しかし、数2の条件はカメラ501の位置によっては実像の光線がカメラ501の撮像レンズに入射せず、結果としてやはり撮影されたディスプレイ画像の一部が欠けてしまうことになる。そこで次は、全ての実像の光線がカメラ501の撮像レンズに入射する条件を考える。この条件は、光線601がカメラ501の撮像レンズの上端以下に入射すればよく、そのような条件はまずカメラ501とレンズアレイ502の距離Cに関して次式で与えられ、
【数3】


この式を満たした上で、次式で与えられる。
【数4】


この条件は数2の条件よりも厳しいものとなっているため、数4の条件を満たせば、数2の条件も、数1の条件も自動的に満たすことになる。
【0038】
定性的には、レンズ半径は大きく、レンズアレイとディスプレイの距離は近づけすぎず、レンズは広角のもの、すなわち焦点距離の小さなもの、とすると良い。
【0039】
本実施例では、レンズアレイ502は縦3個、横3個を格子状に並べたものを用いているが、縦4個、横4個などの場合でも同様の方針で条件を設定することができる。また、縦3個、横4個などの縦横で個数が違う場合でも、光軸603から一番遠いレンズに関して同様の方針で条件を設定すれば良い。また、レンズの配置も格子状だけでなく、図9に示すようなデルタ配置などを用いることができる。
【0040】
また、設置誤差やレンズスペックの誤差に関しては、既述した条件式を、余裕を持って満たすような設定とすれば吸収できる他、設置後に実像上の座標とカメラ撮像画像上の座標の対応関係を取るような手順を踏むことでも吸収できる。
【0041】
本実施形態によれば、レンズアレイカメラを用いることでディスプレイを複数の方向から見た状態の画像を、一ヶ所から一度に撮影することができる。また、カメラ、レンズアレイ、ディスプレイの設置位置やレンズアレイのスペックを適した状態とすることで画質評価に適した画像を取得することができる。
【0042】
尚、A、Cを大きくするほどディスプレイ領域が欠けることなく撮影することができるが、A、Cが大きくなるとカメラ撮像画像上のディスプレイ領域が小さくなり過ぎ、画像解析が困難となる。数4の条件では、Cを大きくするほどAの下限は小さくなるが、Cを大きくすることで広い撮影環境を必要となる他、カメラ撮像画像上のディスプレイ領域が小さくなることにもつながる。そこで、AとCの設定バランスについて例を挙げる。まず、数4の下限を数5に示すようにAminとして定義する。
【数5】


この時、例えば撮影距離を小さくするならば、距離Aと距離Cの和、すなわち数6に示すF(C)を最小にするCを求めた上でAを設定すると良い。
【数6】


また、撮像画像上のディスプレイ領域を大きくするならば、実像の大きさと距離Cとの比、すなわち数7に示すG(C)を最大にするCを求めた上でAを設定すると良い。
【数7】

【実施例2】
【0043】
次に、実施例2について説明する。本実施例は、基本的に実施例1の構成、機能を備えるものであり、これに更なる構成、機能を付加したものである。
【0044】
図17は本実施例の概観図である。立体ディスプレイ100に適宜立体映像やパターン画像を表示し、それらを計測装置1700によって撮影する。計測装置1700はデジタルカメラやデジタルビデオカメラを用いればよい。立体映像は観察者の位置によって見え方が変わるため、計測装置1700を立体ディスプレイ100の周囲で動かして様々な方向から撮影することで立体ディスプレイ100の表示性能を詳細に評価することができる。立体ディスプレイ100に表示される立体映像やパターン画像は評価する性能基準によって異なり、詳細は後述する。また、後述するように、計測装置1700で撮影した画像データはPCなどの演算装置に取り込まれ、解析される。
【0045】
尚、1台の計測装置1700の代わりに複数台の計測装置を同時に別の位置に設置、撮影したり、計測装置1700と立体ディスプレイ100の間にレンズアレイを設置してレンズアレイ越しに撮影したりして、複数の異なる視点から立体ディスプレイ100を見た画像を同時に取得して計測作業を簡略化することもできる。
【0046】
次に、図18〜図21を用いて計測システムの具体的な構成や動作について説明する。
【0047】
図18は計測装置のブロック図である。計測装置の一例としてデジタルカメラ1700のブロック図を示しているが、デジタルカメラには多様な方式があるため、各構成要素やその動作も一例として説明する。1800はデジタルカメラの撮像レンズであり、被写体から射出される光線を屈折させ、像を結ぶ働きをする。1801はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、光線情報を電気信号に変換する撮像素子である。1802はアナログ・デジタル変換回路であり、CCD1801で生成されたアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。1803は信号処理部であり、CCD1801から取り込んだ画像データに色調補正や解像度変換、圧縮処理などの画像処理を加え、必要に応じて各種インターフェースから画像データを出力する。また、撮像レンズ1800やCCD1801の制御を行う。1804は信号入力部であり、撮影環境や画質の設定を信号処理部1803に入力する他、シャッターを押すことによる撮影タイミングの入力も行う。1805はDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、CCD1801から取り込んだ画像データを記憶し、画像処理の際にも必要に応じてデータを記憶する。1806はフラッシュメモリであり、画像処理のプログラムを記憶しておく。1807はCCD制御部であり、信号入力部1804から信号処理部1803に撮影命令がなされると、CCD1801を駆動する。1808はレンズ制御部であり、信号入力部1804から信号処理部1803に入力された撮影環境の設定に従って撮像レンズ1800を制御する。1809はCPU(Central Processing Unit)であり、信号処理部1803において、プログラムの実行、インターフェースの制御など装置全体の制御を行う。1810は画像処理部であり、DRAM1805に記憶した画像データに対して色調補正や画質の調整を行う他、必要に応じて画像圧縮も行う。1811はUSB(Universal Serial Bus)インターフェースであり、PCに画像データを出力したり、PCと計測装置の間で相互通信を行ったりする。PCからも信号入力部1804と同様の制御信号を入力することも可能である。1812はメディアインターフェースであり、画像処理を施した画像データを記録メディアへ出力したり、記録メディアから画像データを計測装置に取り込んだりする。1813は画像出力部であり、画像処理を施した画像データを計測装置に搭載されたLCD(Liquid Crystal Display)などの映像表示モニタに出力する。必要に応じて、撮影環境などの設定情報も映像表示モニタに出力する。
【0048】
図19は計測装置の動作フロー図である。計測装置を用いて画像を撮影する処理に関して動作を説明する。ステップS1900は画像信号取得処理であり、信号入力部1804は撮影開始信号と、撮影者が設定した撮影環境設定や画質設定を信号処理部1803に入力する。信号処理部1803は撮影環境設定に従ってレンズ制御部1808を通して撮像レンズ1800を制御する。また、信号処理部1803はCCD制御部1807を通してCCD1801を駆動し、CCD1801は撮像レンズ1800を通して得られた光線情報を画像信号に変換する。この画像信号はアナログ・デジタル変換回路1802によってデジタル画像信号に変換され、信号処理部1803によってDRAM1805に記憶される。尚、信号入力部1804から入力される信号は、PCなどの外部装置よりUSBインターフェース1811などを介して信号処理部1803に入力されることもあり、以降のステップでも同様とする。ステップS1901は画像処理であり、信号処理部1803は信号入力部1804から入力された画質設定に基づいて、DRAM1805に記憶された画像データに対して画像処理を施す。例えば色調補正、解像度変換、ノイズ除去などが挙げられる。これらの画像処理はフラッシュメモリ1806に記憶されているプログラムをCPU1809が実行することによって施され、画像処理後の画像データはDRAM1805に記憶される。ステップS1902は圧縮処理であり、信号処理部1803は信号入力部1804から入力された画質設定に基づいて、DRAM1805に記憶された画像データに画像圧縮処理を施す。画像データは静止画であっても動画であっても良い。これらの画像圧縮処理はフラッシュメモリ1806に記憶されているプログラムをCPU1809が実行することによって施され、画像圧縮処理後の画像データはDRAM1805に記憶される。また、画質設定によっては圧縮処理を行わない場合もある。ステップS1903は画像出力処理であり、信号処理部1803は信号入力部1804から入力された画質設定に基づいて、DRAM1805に記憶された画像データを指定出力先に出力する。例えば、USBインターフェース1811よりPCなどの外部装置に出力したり、メディアインターフェース1812より外部記録媒体に出力したり、画像出力部1813より計測装置に装着されたLCDに出力したりする。また、計測装置内部にHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置を持つ場合には、HDDに出力することもある。
【0049】
図20は計測システム全体のブロック図である。デジタルカメラなどの計測装置1700と計測対象のディスプレイ100を設置し、計測装置1700とディスプレイ100を、演算装置2000を用いて制御し、所望の画像を撮影し、演算装置2000を用いてディスプレイ100の画質評価を行う。計測装置1700はディスプレイ100を様々な方向から撮影するために手動またはロボットなどを用いて自動で撮影位置を変更する。計測装置1700とディスプレイ100の距離は、ディスプレイ面または計測対象のパターン画像が撮影画像内で欠けないような距離とすることが望ましい。また、演算装置2000は例えばPCを用いれば良く、画像出力部2001、信号処理部2002、RAM2003、HDD2004、USBインターフェース2005、CPU2006などから構成されることが望ましい。画像出力部2001は、信号入力部2002からの指示に従い、計測用画像をディスプレイ100に出力する。計測用画像の例としては、輝度ムラや色ムラの評価を行う場合は全面白などの一様な画像などを、幾何的な評価を行う場合は白・黒や赤・青や赤・シアンなどの色からなる、様々な太さの縞模様を成す画像や、各面の色が異なる多面体画像などを、計測対象のディスプレイ100の映像表示形式に応じて表示することが考えられる。計測用画像は、プログラムで生成しても良いし、HDD2004にあらかじめ記憶しておいても良い。信号入力部2002は、計測開始を指示したり、計測内容の指示をしたりする。例えば、HDD2004に格納されている計測用のスクリプトをマウスやキーボードを操作して起動させると良い。RAM2003は、画像解析などの演算時にデータを保持する。HDD2004は、計測用画像や、計測装置1700から取り込んだ画像や、解析用プログラムや、計測用スクリプトや、解析済みのディスプレイ評価基準データを記憶する。USBインターフェース2005は、計測装置1700に制御信号を送信したり、計測装置1700から撮影画像データを受信したりする。CPU2006は、プログラムの実行、インターフェースの制御など装置全体の制御を行う。
【0050】
図21は計測システムの動作フロー図である。計測システムが画像を取得し、画像の解析をする計測処理に関して動作を説明する。ステップS2100は画像撮影処理であり、演算装置2000を用いて計測装置1700とディスプレイ100を制御し、画像評価に必要な画像を取得し、HDD2004に保存する。計測装置1700の具体的な動作フローは図19にて説明している。計測用の画像はHDD2004に保存しておいたものを画像出力部2001から出力しても良いし、HDD2004に保存しておいた画像生成プログラムをCPU2006が実行することによって生成されたものを画像出力部2001から出力しても良い。また、計測用の画像は、HDD2004に保存しておいた解析済みのディスプレイ評価基準データを元に画像生成プログラムを用いて生成することでより精度や効率の良い評価ができるようになる。ステップS2101は画像解析処理であり、ステップS2100で取得してHDD2004に保存した画像に対して画質評価プログラムをCPU2006が実行し、ディスプレイ100の輝度ムラや色ムラ、幾何的な歪みや立体映像の解像度や視域という観点で画像解析を行う。HDD2004に保存した画像には、ディスプレイ100の表示する映像が映っており、既存の技術によって撮影画像内の映像表示領域の算出が可能である他、計測用の画像として特定のパターン画像などのディスプレイ座標を示す画像を表示して撮影しておくことで、その撮影画像を用いて、撮影画像の座標系と映像表示領域の座標系の対応関係を得ることもできる。それらの情報を元に、ディスプレイ100の輝度ムラや色ムラ、幾何学的な歪みなどの現象がディスプレイ座標においてどのように分布しているのかを解析することができる。また、立体映像の解像度や視域に関しても、特定のパターン画像を撮影した画像を解析することで算出することができる。これらの輝度ムラ、色ムラ、歪み、解像度、視域の計測、解析方法は更に後述する。
【0051】
以下、図22〜図27を用いて立体ディスプレイの性能を表す基準である、立体映像を観察することができる範囲である視域、立体映像の解像度、立体映像の歪み、立体映像の色ムラや輝度ムラの計測、評価方法に関してそれぞれ説明する。尚、以降で用いる計測装置は既存のキャリブレーション手法により計測装置の個体差を表す内部パラメタと計測装置の位置と向きを表す外部パラメタは得られるものとする。
【0052】
図22〜図25を用いて、視域の計測、評価方法に関して説明する。まず視域について説明する。立体映像を観察することができる範囲が視域であり、立体映像が立体に見える要因として視差があり、視差は両眼視差と運動視差に分類される。両眼視差は右目と左目に違う画素から起因する光線が入ることによって発生し、映像が飛び出して見えるように人間の脳が知覚する。運動視差は視点位置を動かすことで目に違う画素から起因する光線が順次入ることによって発生し、映像が視点位置に応じて変化する様子を知覚させる。つまり、実際に目の前で物体を見ているように、視点を動かすことで動かす前には見えなかった物体の側面が見えるようになるような効果を生じる視差である。以降で計測する視域は、運動視差によって映像が変化する範囲とする。
【0053】
図22は視域計測の模式図である。ディスプレイ100に立方体または直方体の立体映像2200を表示する。幅を22W、高さを22H、奥行きを22Dとする。高さ22H>0とする。底面の大きさに関して、幅22W、奥行き22Dは任意でもよいが、正方形22W=22Dとすると評価が容易となる。また、幅22W、奥行き22Dは小さくするほどディスプレイ100の詳細な範囲を評価することになるが、小さすぎると計測装置1700で撮影することが困難になる。また、ディスプレイ領域における表示位置は中央とする。但し、後述するように立体ディスプレイ方式によってはディスプレイ領域の中央と周辺部など位置によって性能が異なる場合もあり、中央以外に表示しても構わない。高さ22Hに関しては、後述する立体映像の解像度、すなわち高さ方向の表示限界を評価した後であればその高さ以内に設定すればよく、解像度を評価する前であれば設計値から推定できる値より低くすればよい。また、この高さ22Hが高すぎると立体映像の上面がぼやけてしまうが、わずかなぼやけであれば以降の解析に影響はないため、厳密性は必要ない。計測装置1700の位置は立体映像2200が撮影画像内で小さくなり過ぎない程度の距離であれば厳密性は必要ない。立体映像2200は、上面2201と側面2202の色を違うものとする。例えば互いに補色である青と黄、シアンと赤、などがよい。尚、立体映像2200は円柱、六角柱など、ディスプレイ面に平行な面とそれに垂直な面からなる構造を用いてもよい。その場合も、ディスプレイ面に平行な上面とそれに垂直な側面の色を違うものとする。また、上面と異なる色であれば側面は全て同じ色である必要はない。以上のように設定した立体映像2200をディスプレイ100に表示し、計測装置1700を経路2204のように動かしながら立体映像を撮影する。経路2204は立体映像2200の真上2203を中央として通過する180°の円弧状とするが、厳密性は必要ない。計測装置1700が静止画のみ撮影可能である場合は、動かしながら複数枚の画像を撮影し、動画を撮影可能である場合は、経路2204を移動している間、撮影し続ける。また、その際には経路2204を行ったり来たりせずに、またできるだけ等速度で移動しながら撮影することが好ましい。この経路2204だけでなく、点2203を通りディスプレイ面に垂直な線を中心として経路2204を90°回転した経路2205に対しても同様の撮影をするなど、ディスプレイ100の上方の空間を通過するできるだけ多くの経路から撮影をする。立体ディスプレイの方式が左右のみの視差を持つ場合にはその視差に沿った左右方向の経路のみでもよいが、左右だけでなく上下や斜めなど全ての方向に視差を持つフルパララックス方式の場合には少なくとも経路2204と経路2205からの撮影は行う。
【0054】
図23は視域評価方法を説明する図である。図22を用いて説明したような計測を行うと、S2300〜S2303のように撮影位置に応じた立体映像の画像を撮影することができる。S2300は立体映像2200を真上2203から撮影した画像であり、上面2201だけが見えている。S2301は経路2204に沿ってややディスプレイ面側に計測装置1700を移動して撮影した画像であり、上面2201だけでなく側面2202も見えている。S2302はS2301よりも更に計測装置1700をディスプレイ面側に移動して撮影した画像であり、上面2201の見えている面積が減り、側面2202の見えている面積が増えている。S2303は側面2202しか見えてない画像であるが、立体ディスプレイの視域が180°、すなわちディスプレイ面を含む平面上の位置2206(2207)まで視域があることになり、現実的にはそのような立体ディスプレイの実現は難しい。視差が滑らかに設定できている立体ディスプレイならば、点2203から点2207まで移動する間にS2300→S2301→S2302と滑らかに撮影画像が変化する。そして、点2207に到達する前に上面2201と側面2202の見え方が変化しなくなる、映像が乱れる、映像が見えなくなる、という位置が存在し、その位置が視域の限界となる。そのような位置は撮影画像の解析により得られる。例えば色の異なる上面2201と側面2202の撮影画像中での面積比を解析するとよい。また、立体ディスプレイの方式によってはS2300→S2301→S2300のように同じ見え方を繰り返した後に見え方が変化しなくなる、映像が乱れる、映像が見えなくなる、という位置に到達するものもあり、その場合は真上2203を中心としてS2300→S2301と変化する範囲だけを視域と定義してもよいし、繰り返しがなくなる位置を視域と定義してもよく、用途によって使い分ければよい。このように視域の限界点を多数の撮影経路に対して得ることにより、図24に示すような概円錐状の視域2400が得られる。運動視差に関しては遠距離であっても認識できることが知られているため、ディスプレイ上方の限界値は示していないが、後述する立体ディスプレイの解像度の評価結果から、例えばある特定の太さの線が見える位置を上限としてもよい。
【0055】
上述したように、立体ディスプレイの方式によってはディスプレイ面の位置によって視域が異なる場合がある。その場合は立体映像2200の位置を様々な位置に変更した上で上記の計測方法を実行すればよいが、図25に例示するように互いに側面が重ならない位置にまとめて複数個の立体映像2200a〜2200eを表示した上で上記の計測方法を実行してもよい。また、その場合は各立体映像の色が異なるようにすると解析が容易になる。また、このように複数か所の評価を行った場合は、それぞれの位置に対して視域を定義してもよいし、全ての視域の和集合を立体ディスプレイの視域と定義してもよい。尚、既に立体映像の歪みや色ムラを評価した後であれば、その情報を元に計測対象の立体映像を補正することで評価の精度を上げることができる。
【0056】
解像度の計測、評価方法に関して説明する。既存の評価手法では縞模様の面をディスプレイ面に平行となるように表示し、真上からのみ評価をしていたが、立体ディスプレイの方式によっては立体映像の解像度は視点位置に依存する場合があるため、真上からだけでなく周囲の視点からも評価することが望ましい。視点、すなわち計測装置1700の位置を斜めに移動した場合の計測では、図26に示すように縞模様の面2600を計測装置1700の光軸2601と垂直に交わるように設置し、光軸2601に沿って面2600の位置を動かせばよい。撮影位置をあらかじめ決めておけばその縞模様の面2600の準備は容易であるが、もし任意の移動位置で撮影をするのであれば、計測装置1700の位置や向きを既存のキャリブレーション手法で取得した上で、その情報に基づいて縞模様の面2600を生成すればよい。また、移動範囲は、既に視域を評価した後であれば、その視域の範囲に限定することができ、効率が良くなる。また、既に立体映像の歪みを評価した後であれば、縞模様の歪みをあらかじめ補正しておくことで評価の精度を上げることができる。
【0057】
歪みの計測、評価方法に関して説明する。立体映像の幾何的な歪みは立体ディスプレイの方式に依存するだけでなく、立体映像のレンダリングに誤りがある場合にも発生する。歪みの評価方法の例を、図27を用いて説明する。既存の技術により撮影画像の座標系と映像表示領域の座標系の対応関係を得ることができることを利用する。以降、この手法を空間コード化法と呼ぶ。まずディスプレイ100の表示面すなわち高さ0の位置、そしてディスプレイ100の大きさと等しい大きさの面を表す立体映像2700に対して空間コード化法を実行する。それにより、高さ0の位置の幾何的な歪みがわかる。以降は、立体映像2700をディスプレイ面に対して平行移動しながら同様の操作を繰り返すことで各高さの幾何的な歪みがわかる。それぞれの高さにおいて得られた歪みを組み合わせることでディスプレイ100の上下の空間に表示する立体映像の幾何的な歪みを評価することができる。この平行移動の移動幅を細かくし、平面に対する歪み評価の回数を増やすことで精度は向上する。立体ディスプレイにおける幾何的な歪みは立体ディスプレイの発する光線群の分布や画素割り当てに強く依存するため、ここまでの計測でも歪みの評価は可能であるが、同じ立体映像2700に対して計測装置1700を傾けるか、立体映像2700を傾けて同様の計測を行うことで更に精度は向上する。尚、既に立体映像の視域を評価した後であれば、その視域の範囲に限定することができ、効率が良くなる。また、立体映像の解像度を評価した後であれば、空間コード化法に用いるコード画像の細かさを最適化できる他、立体映像2700を動かす上限下限も決めることができ、精度向上、効率化に繋がる。
【0058】
色ムラや輝度ムラの計測、評価方法に関して説明する。立体映像の色ムラや輝度ムラは立体ディスプレイの方式に依存するだけでなく、立体映像のレンダリングの誤りや、レンズなどの光学系の個体差や色収差、映像表示部の個体差や劣化などにも起因する。一般に平面ディスプレイに対する色ムラや輝度ムラの計測は非特許文献1に記載の技術を用いたり、ディスプレイ画面全体に白だけの画像や赤だけ、緑だけ、青だけの画像を表示し、目視や計測装置によって色の変化を評価したりする方法がある。立体ディスプレイに対しても、図27で説明したような計測方法において立体画像2700を図28のような白だけの画像2800などに置き換えて高さごとに色ムラや輝度ムラを評価することでディスプレイ100の上下の空間に表示する立体映像の色ムラや輝度ムラを評価することができる。また、図27で説明したような計測方法と同様に、立体映像2800に対して計測装置1700を傾けるか、立体映像2800を傾けて同様の計測を行うことで更に精度は向上する。尚、既に立体映像の視域を評価した後であれば、その視域の範囲に限定することができ、効率が良くなる。また、既に立体映像の歪みを評価した後であれば、ムラ分布の評価精度を上げることができる。
【0059】
以上のようにして立体ディスプレイの各評価基準を計測することができる。また、各基準の中で視域を最初に計測することで他の基準の評価を効率化することができる。更に、解像度、歪み、色ムラや輝度ムラを評価した後にそれらの情報を用いて視域を再計測することで視域の評価精度を上げることができる。
【0060】
以下では上記したような各評価基準の評価順序例を、動作フロー図29を用いて説明する。
【0061】
ステップS2900は視域計測・評価処理であり、図22〜図25に記載の方法で立体ディスプレイ上の計測用立体映像2200を計測し、その見え方を解析して視域データを得る。しかし、この際にはまだ立体ディスプレイの解像度が把握できていないことから、どのくらいの高さ22Hを持つ計測用立体映像2200を表示すれば良いかはわかっておらず、あまり高いものを表示すると立体映像がぼやけてしまって解析が困難になってしまう。従って、設計値から想定される高さよりやや小さい高さを採用したり、計測用立体映像2200の上面2201と側面2202の判別が付く範囲で比較的小さい高さを採用したりすることで、撮影した画像の解析に困難を来たさないような工夫をする。また、小さめの高さを採用した場合は、計測装置1700を立体ディスプレイに近づけて撮影画像内の計測用立体映像が大きくなるようにするとよい。但し、計測装置1700を立体ディスプレイに近づけると、立体ディスプレイ表示面が広い場合には計測装置1700の位置取りが難しくなる他、手ぶれなど計測装置1700の移動に関するノイズの影響が大きくなる。また、立体映像の歪みや色ムラの影響によって計測用立体映像2200が想定の形状に対してズレを持っている可能性もある。以上より、本ステップS2900で得られる視域は精度が高いものとは言えない。しかし、視域の限界位置では計測用立体映像2200の上面2201と側面2202の見え方の変化が特徴的であることは低精度であっても把握は可能であるため、以降の計測時の評価範囲(=計測装置を動かす範囲)の目安として使うことは可能である。
【0062】
ステップS2901は解像度計測・評価処理であり、図26に記載の方法で立体ディスプレイ上の計測用立体映像2600を計測し、その見え方を解析して立体映像の高さごとの解像度データを得る。すなわち、どのくらいの高さまでならぼやけのない立体映像を表示できるかがわかる。この際には、視域外を計測する必要はないことからステップS2900で得られた視域データを元に計測装置1700を動かすべき範囲を制限することができ、計測時間の短縮をすることができる。
【0063】
ステップS2902は歪み計測・評価処理であり、図27に記載の方法で立体ディスプレイ上の計測用立体映像2700を計測し、その見え方を解析して立体映像の高さごとの歪みデータを得る。この際には、ステップS2901と同様に、視域外を計測する必要はないことからステップS2900で得られた視域データを元に計測装置1700を動かすべき範囲を制限することができ、計測時間の短縮をすることができる。また、ステップS2901で得られた解像度データを元に縞模様などのパターン画像をベースとした計測用立体映像2700の模様の細かさをより適したものにすることができ、歪みデータの精度が向上する。
【0064】
ステップS2903はムラ計測・評価処理であり、図28に記載の方法で立体ディスプレイ上の計測用立体映像2800を計測し、その見え方を解析して立体映像の高さごとの色ムラや輝度ムラのデータを得る。この際には、ステップS2901と同様に、視域外を計測する必要はないことからステップS2900で得られた視域データを元に計測装置1700を動かすべき範囲を制限することができ、計測時間の短縮をすることができる。また、ステップS2902で得られた歪みデータを元に幾何学的な歪みを補正することができるため、色ムラや輝度ムラの分布の精度が向上する。
【0065】
尚、ステップS2902とステップS2903の順序は逆にしても構わない。その場合は、ステップS2901で得られた解像度データを元に、図28に記載の計測用立体映像2800を動かす範囲を効果的な範囲に限定し、ステップS2903における評価時間を短縮することができる。あまり多く上下に動かしたとしても、解像度が十分にない高さまで動かしてしまうと計測用立体映像2800がぼやけてしまい、十分なムラ評価をすることができない。その次にステップS2902に対応した歪み計測・評価を行うが、その際には色ムラ・輝度ムラデータを用いて計測用立体映像を補正することで評価の精度を向上できる。
【0066】
ここまでで視域、解像度、歪み、色ムラ・輝度ムラのデータを得ることができたが、ステップS2900で説明したように視域データは高精度とは言えないため、ステップS2901〜ステップS2903で得られたデータを元にステップS2904では視域を再計測・再評価する。本ステップは高精度を要しない場合には省略しても良いが、立体ディスプレイのスペック表現として用いる場合には高精度のデータであることが好ましい。視域の再計測・再評価も図22〜図25に記載の方法を用いるが、計測用立体映像2200の高さ22Hを、ステップS2901で得た解像度データを元にできるだけ大きくすることができる。大きい計測用立体映像を用いることで計測装置1700を立体ディスプレイに近づける必要がなくなる。また、ステップS2902で得た歪みデータを元に計測用立体映像2200の形状を正確なものに補正することができる。また、ステップS2903で得た色ムラ・輝度ムラデータを元に計測用立体映像2200の色調を補正することで上面2201と側面2202の見え方の変化をより判定しやすくなる。また、ステップS2900で図24に記載の視域2400が概略的に得られていることから、計測装置1700を図30の経路3000に示すように視域の限界位置と予測される領域に沿うようにある程度の上下動を伴いながら動かすことで、より効率良く大量の視域データを取得することができる。
【0067】
以上のようにすることで高精度な視域データを得ることができるようになる。
【0068】
また、ステップS2901やステップS2902はそれより後で得られたデータを元に再度実行することで精度を向上させた後にその先のステップへ進んでもよい。例えば、ステップS2902で歪みデータを得た後に、フロー2905に従って再度ステップS2901で解像度計測・評価処理を行う。その際には、解像度データを計測・評価するための計測用立体映像2600の縞模様を、ステップS2902で得た歪みデータを用いて補正することで更に精度の良い解像度データを得ることができる。また、例えば、ステップS2903で色ムラ・輝度ムラデータを得た後に、フロー2906に従って再度ステップS2901で解像度計測・評価処理を行う。その際には、計測用立体映像2600の縞模様の濃淡などの画質を色ムラ・輝度ムラデータを用いて補正することで更に精度の良い解像度データを得ることができる。そして更にステップS2902で歪み計測・評価処理を行う際も、精度の向上した解像度データを用いることができ、色ムラ・輝度ムラデータを用いた補正により計測用立体映像2700の画質も向上することから、精度の良い歪みデータを得ることができる。また、フロー2907に従って、ステップS2904で得られた精度の向上した視域データを元に再度ステップS2901〜ステップS2903を実行することで、解像度、歪み、ムラの視域の境界部付近の精度が向上する。例えばステップS2900で得られた概略的な視域を用いる場合には、視域の外側の性質の悪い部分もまとめて計測・評価してしまう可能性があり、それは視域内の評価にも影響が出る可能性がある。また逆に、視域の内側であってもそこまで計測せずに処理を進めてしまう可能性もある。そのような計測ミスをより精度の高い視域データを用いることで減らすことができるようになる。また、フロー2908に従って、最初にステップS2909のディスプレイの法線方向のみの解像度計測・評価を行うことでステップS2900の視域計測・評価の精度を上げることも可能である。ここでいう法線方向とは図26の点2203のようにディスプレイ100の真上方向、ディスプレイ100に正対する観察者の方向である。この方向は視域内に入っていると想定することは自然であるため、視域データを得る前から解像度計測・評価を行っても問題のない方向と考えられる。この方向の解像度データを得ることで、視域の計測用立体映像2200の高さ22Hをどのくらいまで大きくしてもぼやけずに視域計測をすることができるかがわかるようになり、ステップS2900における視域計測・評価の精度が向上する。
【0069】
以上のように、立体ディスプレイの評価は、(1)視域計測・評価、(2)解像度計測・評価、(3)歪み計測・評価、(4)ムラ計測・評価、または、(1)視域計測・評価、(2)解像度計測・評価、(3)ムラ計測・評価、(4)歪み計測・評価、の順序で行うことが望ましい。
【0070】
また、視域計測・評価、解像度計測・評価、歪み計測・評価、ムラ計測・評価を行った後、再度視域計測・評価を行うことが望ましい。
【0071】
尚、上記各評価手法における計測装置1700には実施例1に記載のレンズアレイカメラを用いることができる。特に解像度、歪み、色ムラ・輝度ムラの計測においては立体ディスプレイの様々な観察位置からの画質評価を行う必要があるため、レンズアレイカメラを用いて撮影回数を減らすことは評価処理の簡易化のために重要である。また、立体ディスプレイの視域を計測する際にも、計測装置1700としてビデオカメラを用い、動画を撮影して解析することで細かい視域評価が可能となるが、非常にデータ量が多いため、解析コストは増大する。そのため、計測装置1700としてデジタルカメラを用い、撮影位置を動かしながら静止画を多数撮影してそれらの多視点画像を解析する手法も解析コストの削減という観点では意義がある。その際に、レンズアレイカメラを用いることで撮影回数を減らすことができる。
【0072】
また、視域の限界位置をおおよそ推定できることもでき、例えば図31に示すように、経路3105上の撮影位置3106における撮影画像3107において、レンズアレイ502の中の経路3105に沿ったレンズ列3100のレンズ群を通して撮影された、計測用立体映像2200に対応した画像群3101の中に、同じ見え方の画像群3102がある場合を考える。通常、立方体状の物体を経路3105に沿って上方から下方に向かって撮影すると物体の上面と側面の見え方は滑らかに変化していくため、異なる視点に対応する各レンズに対応する画像群は全て見え方が異なるべきであるが、同じ見え方の画像群3102が存在するということは立体ディスプレイの視域として定義外の部分から撮影した視点があるということを意味する。尚、立体ディスプレイの方式により視域としての定義外の部分では、画像が見えなくなる場合、画像が乱れる場合、徐々に見え方が変化していた画像が逆に戻っていくように変化する場合なども起こりうる。この時、撮影位置3106の経路3105に沿った回転位置をθ、画像群3102に対応するレンズ群のうちレンズアレイの端ではない方のレンズ3104の位置をθ+θ+θ、そのレンズに隣接する、画像群3102とは見え方の違う画像に対応するレンズ3103の位置をθ+θとすると、経路3105に沿った視域の限界位置φはθ+θ≦φ≦θ+θ+θと推定できる。θは既存のカメラ位置推定技術から得られ、θとθはレンズアレイ502の設置位置とレンズの大きさから得られる。図29のフロー図におけるステップS2900に示す最初の概略的な視域計測・評価においてはこのようにレンズアレイカメラを用いておおよその視域データを短時間で取得し、ステップS2904に示す視域再計測・再評価においてはビデオカメラを用いて詳細なデータを取得する、というように使い分けることもできる。
【符号の説明】
【0073】
100:ディスプレイ、101、102、301、302、1600、1700:計測装置、303、304:ディスプレイ上の点、502:レンズアレイ、502a、502b、502c、900、3103、3104:レンズ、503、503a、503b、503c:実像、601:光線、602:カメラの光軸に垂直な軸、603:カメラの光軸、800:円形領域、1000、1800:撮像レンズ、1001、1801:CCD、1002、1802:アナログ・デジタルコンバータ、1003、1803:信号処理部、1004、1204、1804、2002:信号入力部、1005、1805:DRAM、1006、1806:フラッシュメモリ、1007、1807:CCD制御部、1008、1808:レンズ制御部、1009、1208、1809、2006:CPU、1010、1810:画像処理部、1011、1207、1811、2005:USBインターフェース、1012、1812:メディアインターフェース、1013、1203、1813、2001:画像出力部、1200、2000:演算装置、1201:基準軸表示装置、1202:レーザー光、1205、2003:RAM、1206、2004:HDD、1400:観察者、1401、1402、1403、1404、1405、1500:立体映像、1406、2600、2700:縞模様画像、1601:正弦波画像、2200、2200a、2200b、2200c、2200d、2200e:計測用立体映像、2201:立体映像上面、2202:立体映像側面、2203、2206、2207、3106:計測経路上の点、2204、2205、3000、3105:計測経路、2400:視域、2601:計測装置の光軸、2800:単色画像、3100:レンズ群、3101、3102:画像群、3107:撮影画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、前記表示装置の表示映像を計測する計測装置と、前記表示装置と前記計測装置の間に配置された複数のレンズを有するレンズアレイと、を備えるシステムにおける映像評価方法であって、
前記計測装置は、前記レンズアレイを通して得られる複数の表示映像の映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の映像評価方法であって、
前記計測装置は、前記表示装置が表示する一つの表示映像について、前記レンズアレイを通して一度に得られる複数の表示映像の映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の映像評価方法であって、
前記表示装置の表示画面から前記レンズアレイまでの距離A、前記表示装置の表示画面の対角線上の長さをD、前記レンズアレイが有するレンズの半径をr、前記レンズの焦点距離をfとした場合に、
A≧fD/2r
を満たすように、前記表示装置、前記レンズアレイ、前記計測装置を配置して映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項4】
請求項3記載の映像評価方法であって、
前記レンズアレイと前記計測装置の撮像レンズまでの距離をC、前記レンズアレイの一辺に並ぶレンズの個数をN、前記計測装置の撮像レンズの焦点距離をrとした場合に、
C>f(N−r/r)
を満たすように、前記表示装置、前記レンズアレイ、前記計測装置を配置して映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の映像評価方法において、
前記レンズアレイの一辺の長さをLとした場合に、
A≧{0.5fC(D+2rN)}/{rC+f(r−rN)}
を満たすように、前記表示装置、前記レンズアレイ、前記計測装置を配置して映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか記載の映像評価方法であって、
前記計測装置は、輝度ムラ、色ムラまたは幾何的歪みについて映像評価することを特徴とする映像評価方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか記載の映像評価方法であって、
前記表示装置は、立体映像を表示する立体ディスプレイ表示装置であることを特徴とする映像評価方法。
【請求項8】
表示装置と、前記表示装置の表示映像を計測する計測装置と、前記表示装置と前記計測装置の間に配置された複数のレンズを有するレンズアレイと、を備える映像評価システムであって、
前記計測装置は、前記レンズアレイを通して得られる複数の表示映像の映像評価を行うことを特徴とする映像評価システム。
【請求項9】
表示装置と、前記表示装置が表示する立体映像を計測する計測装置と、を備えるシステムにおける映像評価方法であって、
前記計測装置が前記立体映像を観察可能な範囲である視域を計測する第1のステップと、
前記計測装置が前記立体映像の解像度を計測する第2のステップと、
前記計測装置が前記立体映像の歪みを計測する第3のステップと、
前記計測装置が前記立体映像の色ムラまたは輝度を計測する第4のステップと、を備え、
前記第1のステップ、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップの順序、または、前記第1のステップ、前記第2のステップ、前記第4のステップ、前記第3のステップの順序で前記立体映像を計測することを特徴とする映像評価方法。
【請求項10】
請求項9に記載の映像評価方法であって、
前記第2のステップでは、前記第1のステップの計測結果を用いて前記立体映像の解像度を計測し、
前記第3のステップでは、前記第1のステップと第2のステップの計測結果を用いて前記立体映像の歪みを計測し、
前記第4のステップでは、前記第1のステップと第2のステップの計測結果を用いて前記立体映像の色ムラまたは輝度を計測することを特徴とする映像評価方法。
【請求項11】
請求項9または10記載の映像評価方法であって、
前記第1のステップ、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップを実行した後、
前記第2のステップ、前記第3のステップまたは前記第4のステップの計測結果を用いて再度前記立体映像の視域を計測する第5のステップを備えることを特徴とする映像評価方法。
【請求項12】
請求項11記載の映像評価方法であって、
前記第5のステップを実行した後、
前記第5のステップの計測結果を用いて、前記第2のステップ、前記第3のステップまたは前記第4のステップを実行することを特徴とする映像評価方法。
【請求項13】
請求項9から12の何れかに記載の映像評価方法であって、
前記第1のステップでは、前記計測装置が上面と側面の色が異なる多面体の立体映像を用いて視域を計測することを特徴とする映像評価方法。
【請求項14】
請求項13に記載の映像評価方法であって、
前記第1のステップでは、前記計測装置が前記立体映像の上面と側面の面積比の変化を用いて視域を計測することを特徴とする映像評価方法。
【請求項15】
請求項9から14の何れかに記載の映像評価方法であって、
前記計測装置は、前記表示装置と前記計測装置の間に配置された複数のレンズを有するレンズアレイを通して得られる映像を計測することを特徴とする映像評価方法。
【請求項16】
請求項15に記載の映像評価方法であって、
前記計測装置は、前記表示装置が表示する一つの表示映像について、前記レンズアレイを通して一度に得られる複数の表示映像の映像評価を行うことを特徴とする映像評価方法。
【請求項17】
表示装置と、前記表示装置が表示する立体映像を計測する計測装置と、を備えるシステムにおける映像評価方法であって、
前記表示装置が上面と側面の色が異なる多面体の立体映像を表示するステップと、
前記計測装置が前記多面体の立体映像を用いて視域を計測するステップと、を備えることを特徴とする映像評価方法。
【請求項18】
請求項17に記載の映像評価方法であって、
前記計測装置は、前記立体映像の上面と側面の面積比の変化を用いて視域を計測することを特徴とする映像評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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