説明

時刻表示機能付き衛星放送受信装置

【課題】 装置内に標準時計を持つことなく精度の高い時刻表示が可能な時刻表示機能付き衛星放送受信装置およびその動作に対応する衛星放送送信装置を提供する。
【解決手段】 衛星放送送信装置50の制御チャネル生成部52により基準時計51の基準時刻データがペイロードデータの一部として書き込まれた制御チャンネルを受信した時刻表示機能付き衛星放送受信装置10は、復調・誤り訂正部1の制御チャネル部1Aで制御チャンネルを復調および誤り訂正し、時刻情報抽出部2により制御チャンネルから基準時刻データを時刻情報として抽出し、表示時刻算出部4により遅延時間格納部3に格納されている遅延時間Tを加算して表示時間を算出し、復号・表示部5へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻表示機能付き衛星放送受信装置に関し、特に受信時に正確な時刻表示が可能な時刻表示機能付き衛星放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年実用化された衛星デジタル放送として、車などでの移動中にも受信可能なモバイル放送があり、その受信装置の1つとして手のひらサイズの携帯型受信装置が提供されている。このような受信装置で、MPEG−4(Moving Picture Experts Group phase 4)映像付き番組、AAC(Advanced Audio Coding)音声番組、データ情報サービスなどのモバイル放送の多彩なコンテンツを移動中であっても楽しむことができる。
【0003】
このようなモバイル放送などの衛星放送用受信装置に対する要求として、正確な時刻の表示がある。これは、従来、地上波アナログTV放送で画面に表示される時刻を利用して手元の時計の時刻合わせを行っており、同様の時刻合わせを衛星放送用受信装置を用いても行いたいというものである。元来、放送局は非常に正確な基準時計を備えており、この基準時計に基づく従来の地上波アナログTV放送における時刻表示は精度が高いものであった。
【0004】
ところが、MPEG−4などの圧縮符号化技術によってデジタル化された衛星デジタル放送の場合、送信装置における符号化に要する時間、地上と放送衛星との間を電波が往復する時間、受信装置における復号に要する時間などのために、画面に表示された時刻が実際の時刻に対して遅れるという問題があった。また、複数の放送チャンネル間で遅延時間が異なる場合があり、異なるチャンネルで表示される時刻情報にずれが生じるという問題があった。そこで、受信装置に標準時計を設け、この時計の時刻を画面に表示することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、標準時計に水晶発振などを用いても放送局の基準時計ほどの精度は得られない。また、限られたスペースしかない手のひらサイズの携帯型受信装置又は携帯電話型装置の場合、標準時計を装置内に追加することは実装上またはコスト上の問題があった。
【特許文献1】特開2004−88690号公報 (第6ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、装置内に標準時計を持つことなく精度の高い時刻表示が可能な時刻表示機能付き衛星放送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、衛星を経由して受信した放送信号を復調し、前記放送信号に含まれる放送局基準時刻情報に所定の遅延時間を付加して前記放送局基準時刻に一致した時刻を表示することを特徴とする時刻表示機能付き衛星放送受信装置が提供される。
【0008】
また、本発明の別の一態様によれば、ペイロードデータの一部に放送局基準時刻情報が書き込まれた制御チャンネルと放送チャンネルを有する衛星放送信号を復調する復調手段と、前記復調された前記制御チャネルから前記放送局基準時刻情報を抽出する時刻情報抽出手段と、前記抽出された前記放送局基準時刻情報に所定の遅延時間を付加して表示時刻を算出する表示時刻算出手段とを備えることを特徴とする時刻表示機能付き衛星放送受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衛星放送受信装置において、精度の高い時刻表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る時刻表示機能付き衛星放送受信装置および衛星放送送信装置による衛星デジタル放送システムの概略構成を示すブロック図である。なお、この衛星デジタル放送システムで放送されるデータには、コンテンツ情報からなる放送チャンネルと、受信機制御に使用される制御チャンネルが含まれる。
【0012】
本実施例の衛星放送送信装置50は、日本標準時刻に同期して制御される非常に高精度の時計である基準時計51から出力される基準時刻データが制御チャンネルのペイロードデータの一部として書き込まれた制御チャンネル生成部52と、放送チャンネルを生成する放送チャンネル生成部53と、制御チャンネルおよび放送チャンネルを変調および誤り訂正する変調・誤り訂正部54と、変調信号を放送信号として送出する送出部55と、送信アンテナ56と、を有する。
【0013】
本実施例の時刻表示機能付き衛星放送受信装置10は、衛星放送送信装置50から送信されたデジタル放送信号を放送衛星100を経由して受信する。
【0014】
時刻表示機能付き衛星放送受信装置10は、デジタル放送信号を受信アンテナ6で受信しチューナー部7で検波した信号を制御チャンネル部1Aおよび放送チャンネル部1Bに分離(例えば符号分割)して、制御チャンネル、放送チャンネルごとに復調および誤り訂正する復調・誤り訂正部1と、制御チャンネル部1Aで復調された制御チャンネルのペイロードデータの中から基準時刻データ格納部分のデータを時刻情報として抽出する時刻情報抽出部2と、衛星放送送信装置50の制御チャンネル生成部52で基準時刻を制御チャンネルへ格納してから時刻情報抽出部2で制御チャンネルから時刻情報を抽出するまでに要する遅延時間Tを格納している遅延時間格納部3と、時刻情報抽出部2から出力された時刻情報に遅延時間格納部3から読み出した遅延時間Tを加算して表示時刻を算出する表示時刻算出部4と、放送チャンネル部1Bで復調された放送チャンネルのデータを復調・誤り訂正部1で誤り訂正した映像、音声、データおよび表示時刻算出部4で算出された表示時刻を表示する復号・表示部5と、を有する。
【0015】
なお、復号・表示部5は、内蔵の復号部と、外付けの表示部とに分けてもよく、この外付けの表示部に表示を行うようにしてもよい。
【0016】
ここで、遅延時間格納部3に格納されている遅延時間Tは、次に述べる要素からなる。すなわち、衛星放送送信装置50において基準時刻データを制御チャンネル生成部52で制御チャンネルへ書き込んでから送信アンテナ56で送信するまでの処理に要する遅延時間T1、送信アンテナ56から放送衛星100へ電波が到達するまでに要する遅延時間T2、放送衛星100から時刻表示機能付き衛星放送受信装置10の受信アンテナ6へ電波が到達するまでに要する遅延時間T3、受信アンテナ6で受信した放送信号から時刻情報抽出部2で時刻情報を抽出するまでに要する遅延時間T4である。
【0017】
一般に、衛星デジタル放送では、受信品質を向上させるため、送信データがインターリーブ処理される。そのため、受信側ではデインターリーブ処理が行なわれる。このとき、放送チャンネルでは、放送チャンネルごとにインターリーブ時間が異なる場合がある。しかし、制御チャンネルは、インターリーブを行なわないか、または常に一定のインターリーブ時間でインターリーブ処理が行なわれる。そのため、制御チャンネルでは、衛星放送送信装置50における遅延時間T1は常に一定である。
【0018】
送信側の制御チャンネルの遅延時間が一定であるので、時刻表示機能付き衛星放送受信装置10における制御チャンネルの遅延時間も一定となる。したがって、時刻表示機能付き衛星放送受信装置10における遅延時間T4も受信装置の処理演算により決まる値であり、常に一定である。
【0019】
また、衛星放送の場合、放送衛星100は静止衛星軌道上の一定の点に位置するように制御されている。そのため、地上と放送衛星100との往復に要する遅延時間T2および遅延時間T3は常に一定である。
【0020】
したがって、遅延時間T1、遅延時間T2、遅延時間T3および遅延時間T4の和である遅延時間T(T=T1+T2+T3+T4)も常に一定の時間となる。これらの遅延時間T1、遅延時間T2、遅延時間T3および遅延時間T4は、予め算出することができるので、その値を求めて遅延時間Tを予め算出することができる。このようにして算出した遅延時間Tが遅延時間格納部3に格納されている。
【0021】
図2は、制御チャンネルのデータ構成の例を示す図である。ここでは、モバイル放送における制御チャンネルの構成を一例として示す。
【0022】
モバイル放送における制御チャンネルには、パイロットシンボル(PS)とペアとなった51個のデータ(D1〜D51)が含まれる。このデータのうち、D1は同期処理用のユニークワード、D2はフレームカウンタ、D23〜D26およびD47〜D50はリード・ソロモン符号パリティを格納することが規定されている。
【0023】
残りのD3〜D22およびD27〜D46がペイロードデータ領域となり、D51はデータ領域とされる。そこで、基準時刻データは、上記ペイロードデータ領域のデータの一部として格納する。
【0024】
各パイロットシンボル(PS)とデータのペアの時間幅は250μsと規定されているため、制御チャンネルの時間幅は12.75msとなる。また、モバイル放送では、6制御チャンネルで1スーパーフレームが構成されるため、1スーパーフレームの時間幅は76.5msとなる。なお、スーパーフレーム内における制御チャンネルはフレームカウンタの0から5で区別される。
【0025】
本実施例では、1スーパーフレーム中に1回、基準時刻データを格納するものとする。すなわち、予め定めた特定のフレームカウンタ値を持つ制御チャンネルに基準時刻データを格納するものとする。したがって、本実施例においては、76.5msに1回、基準時刻データが送信される。
【0026】
図3は、時刻表示機能付き衛星放送受信装置10における表示動作の例を示す図である。ここでは、遅延時間Tが10秒の場合を例として示す。
【0027】
いま、基準時計51が9時59分50秒(09:59:50)のときに、この基準時刻データ(09:59:50)が制御チャンネルに格納されたとする。この基準時刻データは、衛星放送送信装置50から送信され、放送衛星100を経由して表示機能付き衛星放送受信装置10で受信され、時刻情報抽出部2から時刻情報(09:59:50)として出力される。
【0028】
表示時刻算出部4は、この時刻情報(09:59:50)に、遅延時間格納部3から読み出した遅延時間T(10秒)を加算し、表示時刻(10:00:00)を算出する。このとき、衛星放送送信装置50において制御チャンネルへ基準時刻データを格納してから10秒が経過しているので、基準時計が示す時刻は10時00分00秒(10:00:00)となっている。すなわち、表示時刻算出部4において算出した表示時刻(10:00:00)は、基準時計が示す時刻(10:00:00)と一致する。
【0029】
したがって、表示時刻算出部4において算出した表示時刻(10:00:00)を復号・表示部5で表示すれば、基準時計と一致した正確な時刻を表示することができる。
【0030】
このとき、放送チャンネルで送信される映像データに重畳して画面上の一定位置に時刻を表示する場合、制御チャンネルと放送チャンネルの位相差を考慮して表示位置を調整する。
【0031】
図4は、モバイル放送における制御チャンネルと放送チャンネルの位相関係を示す図である。
【0032】
モバイル放送では、放送チャンネルのTS(トランスポートストリーム)は2TS長で構成される制御チャンネルから時間tx遅れて送信される。したがって、制御チャンネル上のt1時間の位置に格納された基準時刻データの位置は、放送チャンネルの先頭位置からはt2時間(t2=t1−tx)位置に相当する。制御チャンネルからの遅れ時間txは一定であるが、t2は放送チャンネルによって異なる。
【0033】
復号・表示部5の表示画面上の常に同じ位置に時刻表示を行う場合、復号された映像データに時刻表示データを重ね合わせて表示位置を調整する。
【0034】
このような本実施例の時刻表示機能付き衛星放送受信装置および衛星放送送信装置によれば、衛星放送送信装置側で有する非常に高精度の基準時計の基準時刻データをもとに時刻表示機能付き衛星放送受信装置で表示する表示時刻を算出するので、時刻表示機能付き衛星放送受信装置は、その内部に時計を持たなくとも精度の高い時刻表示を行うことができる。
【実施例2】
【0035】
図5は、本発明の実施例2に係る時刻表示機能付き衛星放送受信装置の構成の例を示すブロック図である。
【0036】
本実施例の時刻表示機能付き衛星放送受信装置20は、図1に示した実施例1の時刻表示機能付き衛星放送受信装置10に表示切り換え部8を追加したものである。そこで、図5において、図1と同じ機能を有するブロックには図1と同一の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0037】
表示切り換え部8は、外部から入力される切り換え信号により、復号・表示部5への時刻の表示のオン/オフ、表示を継続する時間の長さおよび表示のタイミングを切り換える。
【0038】
表示切り換え部8は、切り換え信号により時刻表示オンが指示されると、表示時刻算出部4から出力される表示時刻を復号・表示部5へ送出する。これにより、復号・表示部5に時刻が表示される。
【0039】
一方、切り換え信号により時刻表示オフが指示されると、表示切り換え部8は、表示時刻算出部4からの出力を復号・表示部5へ送出することを停止する。これにより、復号・表示部5には時刻が表示されなくなる。
【0040】
また、復号・表示部5に時刻を表示するときに、表示切り換え部8は、切り換え信号により時刻表示の継続時間の長さの切り換えを行なうようにする。これにより、例えば、連続して時刻表示を行なうか、所定の期間のみ時刻を表示するかの選択が可能となる。
【0041】
さらに、表示のタイミングの切り替えにより、表示切り換え部8は、所定の時刻に復号・表示部5に時刻を表示するようにする。これにより、例えば、毎正時に時報として時刻を表示することが可能となる。この場合、表示切り換え部8は、表示時刻算出部4の出力の分、秒のデータを監視しておき、これが00分00秒になったときに、そのときの表示時刻算出部4の出力を表示部5へ送出するようにすればよい。そして、例えば、分、秒のデータが00分10秒になったときに復号・表示部5への表示時刻算出部4の出力の送出を停止するようにすれば、復号・表示部5に10秒間のみ時刻表示が行なわれ、時報として用いることができる。
【0042】
このような本実施例の時刻表示機能付き衛星放送受信装置によれば、表示装置への時刻の表示形態を切り替えることができるので、時刻表示に対する使用者のさまざまな要求に応じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1に係る時刻表示機能付き衛星放送受信装置および衛星放送送信装置による衛星放送システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】制御チャンネルのデータ構成の例を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係る時刻表示機能付き衛星放送受信装置の表示動作の例を示す図。
【図4】制御チャンネルと放送チャンネルの位相関係の例を示す図。
【図5】本発明の実施例2に係る時刻表示機能付き衛星放送受信装置の構成の例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0044】
10、20 時刻表示機能付き衛星放送受信装置
1 復調・誤り訂正部
1A 制御チャンネル部
1B 放送チャンネル部
2 時刻情報抽出部
3 遅延時間格納部
4 表示時刻算出部
5 復号・表示部
6 受信アンテナ
7 チューナー部
8 表示切り替え部
50 衛星放送送信装置
51 基準時計
52 制御チャンネル生成部
53 放送チャンネル生成部
54 変調・誤り訂正部
55 送出部
56 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を経由して受信した放送信号を復調し、前記放送信号に含まれる放送局基準時刻情報に所定の遅延時間を付加して前記放送局基準時刻に一致した時刻を表示することを特徴とする時刻表示機能付き衛星放送受信装置。
【請求項2】
ペイロードデータの一部に放送局基準時刻情報が書き込まれた制御チャンネルと放送チャンネルを有する衛星放送信号を復調する復調手段と、
前記復調された前記制御チャネルから前記放送局基準時刻情報を抽出する時刻情報抽出手段と、
前記抽出された前記放送局基準時刻情報に所定の遅延時間を付加して表示時刻を算出する表示時刻算出手段と
を備えることを特徴とする時刻表示機能付き衛星放送受信装置。
【請求項3】
前記遅延時間が、衛星放送送信機における前記放送局基準時刻情報の前記制御チャネルへの書き込みから前記復調手段による前記制御チャネルの復号に至るまでの時間であることを特徴とする請求項2に記載の時刻表示機能付き衛星放送受信装置。
【請求項4】
前記表示時刻の表示のオン/オフ、表示継続時間の長さおよび表示のタイミングを切り換える表示切り換え手段を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の時刻表示機能付き衛星放送受信装置。
【請求項5】
前記表示時刻および前記復調手段で復調された前記放送チャンネルの映像、音声、データを表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする時刻表示機能付き衛星放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−158611(P2007−158611A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349634(P2005−349634)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】