説明

時計装置

【課題】商用交流電源の周期性を利用しながらも、商用交流電源の電圧波形の乱れによる影響を受けにくく、精度の高い時刻の計時が可能な時計装置を提供する。
【解決手段】計時カウンタ11は、単位時間ずつ時刻を進めて計時する。期間設定カウンタ12は、商用交流電源1の電圧波形の複数周期に相当する歩進時間の時限を繰り返し歩進時間の時限終了時点の前後にそれぞれ規定の捕捉期間を設定する。時刻調整部13は、捕捉期間内で商用交流電源1の電圧極性の反転が検出されると、計時カウンタ11が計時する時刻を単位時間だけ進め、さらに、期間設定カウンタ12に次の歩進時間の時限開始を指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻合わせを自動的に行う時計装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、商用交流電源の電源周期は高い精度で管理されているから、この周期を利用した時計が種々提案されている。とくに日本国内の多くの電力会社では、一部の離島などを除いて、電圧波形の周期は協定世界時(UTC)と同期して正確に管理されている。
【0003】
この種の時計装置としては、商用交流電源の電源周波数と同周波数の信号の立ち上がりを検出し、隣接する立ち上がりの時間間隔を、内部発振器からの出力を計数するパルスカウンタで計測する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、パルスカウンタのリセット時の計数値で商用交流電源の状態を検出し、商用交流電源の通電時には、パルスカウンタのリセットに応じた信号により基準信号を作成する旨の記載がある。
【0004】
また、商用交流電源の電圧波形を整形したパルスを取り出し、このパルスの時間間隔を内部カウンタの計数値とし、内部カウンタの計数値が規定した下限値以上のときに、1つインクリメントする技術も知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
商用交流電源の電圧波形の周期性を利用する技術のほか、水晶振動子やセラミック振動子を用いた発振回路を用いて基準クロックを生成し、この基準クロックの計数により時刻を計時する技術も知られている。パーソナルコンピュータなどの内蔵時計は、この種の技術を採用しているが、クオーツ時計のような高い精度を要求されるものを除けば、月差は30sec程度になるものが多い。したがって、この種の技術は、時刻を設定した後に長時間使うと、経過時間に伴って真の時刻からの誤差が大きくなる。さらに、協定世界時(UTC)に基づく時刻を報知している送信局からの標準電波を受信するなどして時刻合わせを行う電波時計のような時計装置も提供されている。協定世界時に基づく時刻情報は、インターネットのような広域網を通して得ることも可能である。
【0006】
上述のように、水晶振動子やセラミック振動子を用いる時計装置は、一般には商用交流電源の電圧波形の周期よりも精度が低く、高精度の時計装置を製造しようとすれば高コストになるという問題がある。一方、電波時計のように外部から時刻情報を取得する構成では、電波を受信するか広域網に接続するための通信機能が必要であって、高コストになるという問題が生じる。さらに、この種の時計装置を自動検針用のメータに用いる場合を想定すると、メータが金属製の筐体や収納ボックスを備えている場合には、電波が筐体によって遮断され、通信の障害になるという問題を生じる。
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載された技術を採用することによって、水晶振動子やセラミック振動子を用いた時計装置および外部から時刻情報を取得する時計装置の上述のような問題は、商用交流電源の電圧波形の周期性を利用すれば解消すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−58189号公報
【特許文献2】実開平5−52791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された技術は、商用交流電源の1周期毎に周期を確認しているから、商用交流電源に混入するノイズの影響によって計時している時刻に誤差が生じやすいという問題を有している。すなわち、電圧波形の歪みの影響を受けやすいという問題を有している。
【0010】
一方、特許文献2に記載された技術では、商用交流電源の電圧波形の整形を行ったパルスの周期について下限を設定してあり、パルスの周期が下限以上であるときに、商用交流電源の1周期と判断する技術が記載されている。この構成により、商用交流電源にノイズが混入していても、ノイズの影響が軽減されることになる。ただし、パルスの周期について下限のみを設定しているから、商用交流電源の電圧波形の乱れによりパルスの周期が長くなる場合には、対応できず、計時している時刻の精度を維持できない可能性がある。
【0011】
本発明は、商用交流電源の周期性を利用しながらも、商用交流電源の電圧波形の乱れによる影響を受けにくく、精度の高い時刻の計時が可能な時計装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、単位時間ずつ時刻を進めて計時する計時手段と、商用交流電源の電圧波形の複数周期に相当する歩進時間の時限を繰り返し歩進時間の時限終了時点の前後にそれぞれ規定の捕捉期間を設定する期間設定手段と、捕捉期間内で商用交流電源の電圧極性の反転が検出されると計時手段の時刻を単位時間だけ進めるとともに期間設定手段に次の歩進時間の時限開始を指示する時刻調整手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
期間設定手段は、計時手段が時限する歩進時間の時限終了の時点の前後において、それぞれ商用交流電源の電源周期の半周期以上かつ1周期以下の期間を捕捉期間として設定するのが好ましい。
【0014】
時刻調整手段は、捕捉期間において規定した向きへの極性の反転が検出されないときに、捕捉期間の終了時点で計時手段に次の歩進時間の時限開始を指示し、計時手段は、捕捉期間の2分の1の時間をオフセット分として歩進時間から減算した時間を次の歩進時間として時限するのが好ましい。
【0015】
時刻を計時するリアルタイムクロックと、リアルタイムクロックが計時している時刻を計時手段が計時している時刻により更新する時刻修正手段とをさらに備えていてもよい。
【0016】
この場合、リアルタイムクロックが計時する時刻について推定される誤差と計時手段が計時する時刻について推定される誤差とを監視する時間差監視手段をさらに備え、時刻修正手段は、リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて、リアルタイムクロックについて時間差監視手段が監視している推定される誤差のほうが計時手段について時間差監視手段が監視している推定される誤差よりも大きいと判断されるときに、リアルタイムクロックが計時する時刻を更新することが好ましい。
【0017】
また、時刻修正手段は、リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて計数値が0に初期化された後、捕捉期間内で規定した向きへの極性の反転が検出されないときに計数値に1が加算される不検出カウンタを備え、リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて不検出カウンタの計数値が0であるときにだけ、リアルタイムクロックの時刻を計時手段の時刻により更新することが好ましい。
【0018】
あるいはまた、時刻修正手段は、リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて計数値が0に初期化された後、捕捉期間内で規定した向きへの極性の反転が検出されないときに計数値に1が加算される不検出カウンタを備え、時間差監視手段は、リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて、不検出カウンタの計数値に所定値を乗じた値を計時手段が計時する時刻について推定される誤差とし、リアルタイムクロックの更新からの経過時間とリアルタイムクロックの時刻の精度との積をリアルタイムクロックが計時する時刻について推定される誤差とするようにしてもよい。
【0019】
さらに、リアルタイムクロックの時刻を更新した履歴を記録する履歴記憶手段と、履歴記憶手段に記録された履歴を用いて所定期間におけるリアルタイムクロックの誤差を求める誤差検出手段とをさらに備え、誤差検出手段が求めた所定期間の誤差を用いてリアルタイムクロックが計時する時刻を所定期間ごとに更新するようにしてもよい。
【0020】
時刻修正手段は、商用交流電源の電源周期を監視し電圧波形の位相の遅れまたは進みが最大または最小になった時点の時刻を用いてリアルタイムクロックが計時している時刻を更新する構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成によれば、商用交流電源の周期性を利用しながらも、商用交流電源の電圧波形の乱れによる影響を受けにくく、精度の高い時刻の計時が可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の動作説明図である。
【図4】同上の動作説明図である。
【図5】同上の処理手順を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に説明する実施形態の全体構成を図1に示す。図1に示す時計装置2は、時刻を計時するために、計時カウンタ(計時手段)11を備えた処理部10とリアルタイムクロック24とを備える。ただし、リアルタイムクロック24は必須ではなく、処理部10のみで時刻を計時してもよい。すなわち、時計装置2は、処理部10を備えていれば時刻を計時することができる。
【0024】
時計装置2は、商用交流電源1に接続装置3を介して接続される。時計装置2をコンセントに接続して用いる場合は、接続装置3はコンセントに接続されるプラグになる。また、時計装置2を商用交流電源1の配電網に常時接続して用いる場合は、接続装置3は電線が直接接続される端子になる。端子は、ねじ付き端子、速結端子などどのような構成でもよい。
【0025】
商用交流電源1は、時計装置2の内部回路に電力を供給するために用いられるだけでなく、商用交流電源1の電圧変化の周期性を利用して時刻の計時にも用いられる。
【0026】
時計装置2は、内部回路に商用交流電源1からの電力を供給するために、商用交流電源1から受電した交流電力を直流電力に変換する電源部23を備える。時計装置2において、商用交流電源1から受電した電力を用いて内部回路に電力を供給する構成は必須ではなく、バッテリなどの別の電源から内部回路への電力を供給してもよい。
【0027】
また、商用交流電源1の電圧変化の周期を検出するために、時計装置2は、商用交流電源1の電圧極性を検出する極性検出部(極性検出手段)21を備える。極性検出部21としては、たとえば、コンパレータ(電圧比較回路)を用いて基準電圧(0ボルト付近の電圧)と商用交流電源1の電圧とを比較し、さらにコンパレータの出力をサンプリングして出力値が反転するタイミングを抽出する構成を用いる。コンパレータは、商用交流電源1の電圧が基準電圧よりも高い期間に出力をHレベルにし、商用交流電源1の電圧が基準電圧よりも低い期間に出力をLレベルにする矩形波を出力する。
【0028】
この極性検出部21では、図2(a)に示す商用交流電源1の電圧極性に応じて、コンパレータから図2(b)のように値が変化する矩形波が出力される。すなわち、デューティ比が略50%の矩形波が得られる。さらに、この矩形波を一定周期でサンプリングすると、サンプリング値は0(Lレベル)と1(Hレベル)とになるから、時系列において隣接する2回のサンプリング値が「0」から「1」に変化した時点を、商用交流電源1の電圧極性が負から正に変化した変化点として検出する。
【0029】
なお、ノイズなどにより隣接する2回のサンプリング値が「0」から「1」に変化する可能性があるから、サンプリング値に対してデジタル的にフィルタ処理(平滑処理)を行ってもよい。たとえば、隣接する複数個(たとえば、5個の)のサンプリング値の移動平均を用いることによりノイズなどにより生じる異常値の影響を軽減する。また、以下の説明では電圧極性の変化点として、商用交流電源1の電圧極性が負から正に変化する変化点を用いるが、正から負に変化する変化点を用いてもよい。また、上述したコンパレータの出力は、商用交流電源1の電圧極性が負のときに0(Lレベル)、正のときに1(Hレベル)としているが、この関係は逆でもよい。
【0030】
極性検出部21は上述した構成に限定されるものではなく、矩形波の立ち上がりエッジを検出する微分回路のようなエッジ検出回路を用いて、電圧極性の変化点を検出することもできる。また、矩形波の立ち上がりエッジをエッジ検出回路で検出し、エッジ検出回路の出力について波形整形を行うためにシュミット回路やワンショット回路を付加した構成を採用してもよい。
【0031】
極性検出部21により検出される電圧極性の変化点は、プログラムに従って動作するプロセッサを用いて構成された処理部10に入力される。処理部10は、単位時間(たとえば、1sec)ずつ時刻を進めて計時する計時カウンタ11と、計時カウンタ11による単位時間の計時のタイミングを、商用交流電源1の電圧極性が切り替わるタイミングに同期させる時刻調整部(時刻調整手段)13とを備える。
【0032】
ところで、日本国内の多くの電力会社では、商用交流電源1の電源周期(電圧波形の周期)が、協定世界時に同期する高い精度で管理されている。したがって、計時カウンタ11における単位時間の計時を、商用交流電源1の電源周期に同期させることによって、計時カウンタ11は、高い精度で時刻の計時を行えると考えられる。ただし、本実施形態では、商用交流電源1の電源周期に対して、計時カウンタ11が時刻を計時する単位時間が大幅に長い。そのため、単位時間において電圧極性は多数回反転する(商用交流電源1の周波数が50Hzであれば100回反転し、周波数が60Hzであれば120回反転する)。このことから、商用交流電源1の電圧極性が反転しても、どのタイミングで処理部10の計時を同期させるかを単純に決めることができない。
【0033】
そのため、本実施形態では、処理部10として、商用交流電源1の電圧波形の複数周期に相当する一定の歩進時間の時限を繰り返し次の歩進時間の時限開始に伴って単位時間ずつ時刻を進めて計時する構成を採用している。また、歩進時間の時限終了時点の前後にそれぞれ規定の捕捉期間を設定するとともに、捕捉期間内での電圧極性の変化に同期させて歩進時間の時限を開始させている。すなわち、捕捉期間を定めることによって、捕捉期間で検出される電圧極性の変化点にのみ計時カウンタ11の計時を同期させることになる。なお、本実施形態では、一例として歩進時間を1sec(商用交流電源1が50Hzであれば50周期)として説明する。
【0034】
処理部10は、捕捉期間を定めるために、期間設定カウンタ(期間設定手段)12を備えている。期間設定カウンタ12は、時計装置2に設けた基準信号生成部22から出力される基準信号を計数する。基準信号には、処理部10を構成しているプロセッサを動作させるクロック信号を用いるか、クロック信号を適切に分周して生成した信号を用いる。したがって、基準信号は、たとえば、クロック信号が20MHzであれば、20000分の1に分周することによって、商用交流電源1の電源周期よりも十分に短い周期(たとえば、1msec)になる。期間設定カウンタ12は、この基準信号を計数して捕捉期間を設定する。
【0035】
ところで、プロセッサを動作させるクロック信号は、水晶振動子またはセラミック振動子を用いているから、周期の安定度は比較的高いが、製品ごとの周期にはばらつきがあり、時刻の計時に用いるには精度がやや不足している。一般に、製品ごとのクロック信号の周期のばらつきは、商用交流電源1の電源周期の変動よりも大きい。
【0036】
いま、計時カウンタ10が計時する単位時間を1secとし、基準信号の周期を1msecとすれば、単位時間は基準信号の1000個分に対応することになる。ただし、商用交流電源1の電源周波数が50Hzであれば1周期は20msecであり、商用交流電源1の電源周波数が60Hzであれば1周期は16.7msecである。したがって、20個程度の基準信号が発生する期間に、商用交流電源1の電圧極性が1〜2回反転する。
【0037】
上述の関係を考慮して、期間設定カウンタ12では、図3に示すように、歩進時間Tsの時限終了時点の前後に、商用交流電源1の電圧極性が1〜2回反転する捕捉期間Tcを設定している。具体的には、歩進時間Tsの時限終了時点の前後に、商用交流電源1の電源周期の1周期未満の期間として捕捉期間Tcを設定する。また、捕捉期間Tcは、歩進時間Tsの時限終了時点の前後に、商用交流電源1の電源周期の半周期以上に設定するのが望ましい。時刻調整部13では、この捕捉期間Tcにおいて、商用交流電源1の電圧極性が所定の向きに反転(たとえば、負から正に反転)したときに、反転時点をもって次の歩進時間Tsの時限を開始するように期間設定カウンタ12に指示する。また、処理部10では、次の歩進時間Tsの時限を開始する際に単位時間だけ時刻を進める。
【0038】
たとえば、上述のように、単位期間が1secであり、基準信号の周期が1msecである場合に、捕捉期間Tcを歩進時間Tsの時限終了時点の前後に10msecずつ設定する場合を想定する。歩進時間Tsは単位時間と等しく設定する。したがって、捕捉期間Tcは、歩進時間Tsの時限開始後に990msecが経過してから1010msecが経過するまでの範囲になる。いま、計時カウンタ11の計時している時刻が「11:59:55」であって、捕捉期間Tcにおいて、電圧極性が負から正に変化したとする。このとき、計時カウンタ11は電圧極性の変化時点で時刻を「11:59:56」に進め、期間設定カウンタ12は次の歩進時間Tsの時限を開始する。
【0039】
上述の動作において、捕捉期間Tcとして、歩進時間Tsの時限終了時点の前後に設定する期間の下限値を、商用交流電源1の電源周期の半周期としている。捕捉期間Tcの下限値をこのように設定することにより、捕捉期間Tcは電源周期の1周期分以上の期間になり、商用交流電源1の電圧極性の変化点をほぼ確実に検出することができる。なお、捕捉期間Tcは電源周期の半周期以下に設定することも可能であるが、この場合は、起動直後など、一度も電源極性の変化点を捕捉することができていない場合などには、捕捉期間Tcにおいて電圧極性の変化点を検出できなくなる確率が増加することになる。
【0040】
上述の動作から明らかなように、時刻の計時は、計時カウンタ11が歩進時間Tsの時限開始の回数を計数することにより行われる。また、歩進時間Tsの時限は、基準信号生成部22が出力する基準信号を期間設定カウンタ12が計数することにより行われる。
【0041】
ところで、捕捉期間Tcを長く設定すると、捕捉期間Tc内に商用交流電源1の電圧極性の変化が2回以上検出されることになり不都合である。したがって、捕捉期間Tcは、商用交流電源1の電圧極性の変化が1回だけ検出される程度に設定される。たとえば、商用交流電源1の電源周波数が50Hzである場合、捕捉期間Tcは20msecに設定することが望ましい。
【0042】
ただし、商用交流電源1の電源周期の変動があると捕捉期間Tcにおいて電圧極性の変化点が検出されないことがある。さらに、商用交流電源1の瞬停やノイズなどの原因により商用交流電源1の電圧極性の変化点が捕捉期間Tc内において検出されない可能性もある。
【0043】
このような場合に備えて、時刻調整部13は、期間設定カウンタ12の計数値が終了値(捕捉期間Tcの終了を示す計数値)に達するまでに極性検出部21が電圧極性の変化点を検出しない場合は、計時カウンタ11の計数値を強制的に単位時間だけ進める。すなわち、期間設定カウンタ12の計数値が終了値に達している場合、計時カウンタ11の計数値を前回進めてから歩進時間Ts以上の時間が経過しているとみなせる。したがって、この時点で単位時間だけ時刻を進めることは妥当であって、電圧極性に関する条件が満たされていなくとも、計時カウンタ11の計数値を強制的に増加させるのである。
【0044】
ただし、捕捉期間Tcの終了時点で計時カウンタ11の計数値を単位時間だけ進めているから、この時点から歩進時間Tsを計時した場合、今回の捕捉期間Tcの中央付近で電圧極性の変化点が検出された場合に比べると、次の捕捉期間Tcが大きくずれることになる。つまり、捕捉期間Tcに電圧極性の変化点が検出された場合と検出されない場合とでは、次の捕捉期間Tcに、捕捉期間Tcの半分の時間程度のずれが生じる可能性がある。
【0045】
そこで、捕捉期間Tc内に商用交流電源1の電圧極性の変化が検出されなかった場合には、期間設定カウンタ11の初期値を0にするのではなく、捕捉期間Tcの半分の時間であるオフセット時間Tfを初期値に設定する。すなわち、図4に示すように、次の歩進時間Tsの計時を、通常の歩進時間Tsよりもオフセット時間Tfだけ短くして時限する。この動作は、通常の歩進時間Tsからオフセット時間Tfを減算して歩進時間Tsの計時を行うことと等価である。
【0046】
たとえば、基準信号の周期を1msecとし、捕捉期間Tcを20msecとする場合は、オフセット時間は10msecであり、期間設定カウンタ12に設定される初期値は10になる。したがって、今回の捕捉期間Tcの終了時点から期間設定カウンタ12の計数値が990になるまで時限すると、今回の捕捉期間Tcの終了時点から980msecが経過した時点が次の捕捉期間Tcの開始時点になる。同様に次の捕捉期間Tcの終了時点は、今回の捕捉期間Tcの終了時点から1000msecが経過した時点になる。
【0047】
このように、捕捉期間Tcにおいて電圧極性の変化点が検出されない場合でも、電圧極性の変化点が検出されたとみなして計時カウンタ11による時刻の計時を進めるから、計時カウンタ11では時刻を失うことなく、継続して計時を行うことができる。この場合、歩進時間Tsを少なくとも1回時限する期間において単位時間の精度はやや低下するが、次の捕捉期間Tcで電圧極性の変化点を検出することができれば、精度の低下が波及することはない。
【0048】
以下では、図5を参照して動作を説明する。まず、計時カウンタ11に時刻の初期値を入力する(S1)。時刻の初期値は、たとえばリアルタイムクロック24から取得する。なお、リアルタイムクロック24の時刻は、工場出荷時などに適宜の方法で設定されているものとする。ここに、図1に示す時計装置2は、商用交流電源1からの給電が停止した状態でも動作を維持するように、電池(リチウム電池など)によるバックアップ電源26から給電されていてもよい。この場合、リアルタイムクロック24は、商用交流電源1からの給電が停止した状態でも時刻を計時する動作を維持する。同様に、処理部10および基準信号生成部22も商用交流電源1からの給電が停止した状態でもバックアップ電源26からの給電が継続しているかぎりは時刻を計時する。
【0049】
次に、期間設定カウンタ12の計数値が0に初期化される(S2)。期間設定カウンタ12は、捕捉期間Tcの開始時点と終了時点とに対応する開始値と終了値とが設定され、さらに基準信号の計数を開始する初期値が設定される。上述のように、歩進時間Tsを1secとし、基準信号の周期を1msecとする場合であって、歩進時間Tsの終了時点の前後にそれぞれ10msecの捕捉期間Tcを設定する場合を例とすれば、開始値は990、終了値は1010になる。
【0050】
要するに、歩進時間Tsに相当する基準信号の個数に対して、歩進時間Tsの終了前の捕捉期間Tcに相当する基準信号の個数を減算して開始値に用い、歩進時間Tsの終了後の捕捉期間Tcに相当する基準信号の個数を加算して終了値に用いる。なお、上述の開始値、終了値は、商用交流電源1の電源周波数が50Hzの場合と60Hzの場合とのどちらでも用いることができる。
【0051】
上述したように、捕捉期間Tcは、歩進時間Tsの終了時点の前後に電源周期の半周期以上かつ1周期未満で設定するのが望ましいから、50Hzに対する捕捉期間Tcは20〜40msecであり、60Hzに対する捕捉期間Tcは16.7〜33.3msecになる。よって、捕捉期間Tcが20〜33.3msecであれば50Hzと60Hzとで共用できる。言い換えると、開始値は984〜990の範囲で選択でき、終了値は1010〜1016の範囲で選択できる。
【0052】
図5に示すように、期間設定カウンタ12の計数値を0に初期化(つまり、初期値を0に設定)した後(S2)、基準信号の1周期分の時間(1msec)を待って(S3)、期間設定カウンタ21の計数値に1を加える(S4)。この動作は期間設定カウンタ12の計数値が開始値になるまで繰り返される(S5:yes)。その後、期間設定カウンタ12の計数値が終了値に達する前に(S5:no、S6:no)、極性検出部21が電圧極性の変化点(ここでは、負から正への変化点)を検出した場合(S7:yes)、計時カウンタ11の計数値を単位時間(ここでは、1sec)だけ進める(S8)。また、このとき、次の歩進時間Tsの時限を行うために、期間設定カウンタ12の初期値を0に設定し、ステップS3に戻って基準信号の計数を続ける。
【0053】
ところで、上述したように、捕捉期間Tcにおいて電圧極性の変化点が検出されない場合がある(S6:yes)。この場合、計時カウンタ11の計数値を強制的に単位時間だけ進めるようにしてある(S9)。このとき、期間設定カウンタ12の初期値は、0にせずに、捕捉期間Tcの半分の時間であるオフセット時間Tfに設定する(S9)。すなわち、基準信号の周期を1msecとし、捕捉期間Tcを20msecとする場合は、ステップS8において期間設定カウンタ12の初期値(オフセット時間Tf)を10に設定する。
【0054】
以上説明したように、処理部10は、基本的には比較的精度の低いクロック信号に基づいて生成された基準信号を計数することにより時刻を計時し、計時している時刻をクロック信号よりも周波数の管理精度が高い商用交流電源1の周期により補正している。すなわち、期間設定カウンタ12で基準信号を計数することによって、単位時間にほぼ等しい歩進時間Tsを計時することができるが、微小な誤差が生じる可能性があるから、この誤差分を商用交流電源1の周期により補正しているのである。
【0055】
その結果、処理部10の時刻は、商用交流電源1が通電されている間は、商用交流電源1の電源周期の精度で計時される。一方、商用交流電源1の停電などによって電圧極性の変化点を検出することができない場合でも、バックアップ電源26により処理部10の動作が継続するから、バックアップ電源26が電力を供給するかぎりは、計時カウンタ11で計時している時刻が失われることがない。要するに、商用交流電源1から給電されている場合は時刻の計時を精度よく行い、商用交流電源1から給電されない場合は時刻の計時を行う精度は下がるが時刻を計時する機能は維持するので、時刻の計時について柔軟な対応が可能になる。
【0056】
また、上述のように、捕捉期間Tcを設定して電圧極性の変化点を検出しているから、商用交流電源1の電源周波数を検出する必要がない。しかも、電圧極性の変化点を検出するための捕捉期間Tcを限定して設定しているから、簡単な構成で商用交流電源1の周期性を時刻補正に利用することができる。言い換えると、電源周波数の判別をせずに時刻の計時を即時に行なうことができるから、計時カウンタ11を即時に起動して時刻を計時することができる。その上、商用交流電源1の電源周波数を用いないから、電源周波数の誤検出に伴う問題の発生を回避できる。
【0057】
ところで、時計装置2には、図1に示すように、計時カウンタ11を備える処理部10とは別に、リアルタイムクロック24を設けることができる。リアルタイムクロック24は、独立して時刻(年月日を含む)を計時し、工場出荷時あるいは装置の設置時に時刻合わせが行われる。さらに、本実施形態では、リアルタイムクロック24が計時する時刻を、計時カウンタ11が計時する時刻によって更新する機能を時計装置2に設けている。すなわち、処理部10は、計時カウンタ11が計時している時刻によりリアルタイムクロック24の時刻を更新する時刻修正部(時刻修正手段)14を備える。
【0058】
時刻修正部14は、リアルタイムクロック24が時刻を計時する精度やリアルタイムクロック24の用途に応じて、時刻を修正するタイミングが適宜に設定される。一例としては、リアルタイムクロック24が計時する時刻を、1時間ごとあるいは1日ごとなど定期的に更新する場合がある。また、リアルタイムクロック24の時刻の更新は不定期に行うようにしてもよい。
【0059】
いま、設備機器の動作状態を遠隔監視を行う場合や、電力メータやガスメータのようなメータ類の遠隔検針を行う場合を想定する。このような場合には、検針の時刻を計時するためにリアルタイムクロック24を設備機器やメータ類に設ける必要がある。このような目的でリアルタイムクロック24を使用する際には、高精度かつ高価なリアルタイムクロック24を用いることはできず、時刻を計時する精度は犠牲にしても安価なリアルタイムクロック24を採用せざるを得ないことがある。
【0060】
この種のリアルタイムクロック24は、月差が30sec〜3min程度であり、十分に高い精度が得られているとは言えない。一方、商用交流電源1の電源周期は、協定世界時に対する誤差が月間で10sec程度に収まるように調整されていることが多い。したがって、処理部10が計時する時刻の誤差も月間で10sec以内の誤差になる。このことを利用し、処理部10に時刻修正部14を設け、処理部10が計時している時刻でリアルタイムクロック24の時刻を修正すれば、リアルタイムクロック24が計時する時刻を高精度に維持することができる。
【0061】
ところで、計時カウンタ11が計時する時刻は、上述のように月差で10sec以内になるとしても、電源周期は1日において一時的に10sec程度の誤差を生じる場合がある。
【0062】
これに対して、リアルタイムクロック24は、1ヶ月で30sec〜3min程度の誤差を生じるというものの外乱の影響は受けにくいから、誤差の程度を推定することができる。たとえば、リアルタイムクロック24の月差が仮に60secであるとすれば、日差は2sec程度になる。
【0063】
リアルタイムクロック24で計時している時刻の誤差よりも計時カウンタ11で計時している時刻の誤差のほうが大きいと推定される場合には、計時カウンタ11の時刻でリアルタイムクロック24の時刻を更新する処理は行わないことが望ましい。計時カウンタ11が計時する時刻でリアルタイムクロック24の時刻を更新するか否かの判断は、計時カウンタ11に設けた時間差監視部(時間差監視手段)15において行う。
【0064】
なお、リアルタイムクロック24が計時する時刻の誤差が、計時カウンタ11で計時している時刻の誤差よりも小さいと推定される場合に、計時カウンタ11の時刻をリアルタイムクロック24が計時している時刻で更新する構成を採用してもよい。
【0065】
上述の動作では、リアルタイムクロック24の時刻を計時カウンタ11が計時している時刻で更新するか否かを、更新からの経過時間に基づいて判断している。これに対して、以下に説明するように、計時カウンタ11が計時している時刻の信頼性に基づいて更新するか否かの判断をしてもよい。
【0066】
この場合、計時カウンタ11が計時している時刻の信頼性を評価するために、上述した捕捉期間Tcに商用交流電源1の電圧極性の変化点を検出しなかった回数を用いる。そのため、図1に示すように、捕捉期間Tcに電圧極性の変化点が検出できなかった場合に計数値に1が加算される不検出カウンタ17を処理部10に設ける。不検出カウンタ17の計数値は、期間設定カウンタ12の初期化(図5のS2)の際に併せて0に初期化される。また、図5に示すステップS6において期間設定カウンタ12の計数値が終了値に達したときに(S6:yes)、不検出カウンタ17の計数値に1が加算される。すなわち、図5のステップS9において不検出カウンタ17の計数値に1を加算する。
【0067】
この動作から明らかなように、不検出カウンタ17の計数値は、電圧極性の変化点を捕捉期間Tcに検出できなかった回数の記録である。すなわち、不検出カウンタ17の計数値が0であるときには、処理部10が計時する時刻の信頼性は、商用交流電源1の電源周期と同程度であると推定することができる。
【0068】
したがって、リアルタイムクロック24の更新のタイミングになった時点で、不検出カウンタ17の計数値が適宜に設定された閾値以下である場合にのみ、計時カウンタ11の時刻によるリアルタイムクロック24の時刻の更新を行うようにしてもよい。不検出カウンタ17の計数値に対する閾値の最小値は0であり、この場合、電圧極性の変化点を検出できない捕捉期間Tcが一度も生じなかったときにだけリアルタイムクロック24の時刻を計時カウンタ11の時刻で更新することになる。ただし、閾値は更新のタイミングに応じて適宜に設定することができ、リアルタイムクロック24の更新のタイミングの期間が長いほど閾値を大きくするのが望ましい。
【0069】
不検出カウンタ17の計数値は、リアルタイムクロック24の更新のタイミングごとに、更新の有無にかかわらず0に初期化される。このように、リアルタイムクロック24を更新するタイミングになったときに、不検出カウンタの計数値により処理部10の時刻の信頼性を評価するので、処理部10の時刻を信頼できる場合にのみリアルタイムクロック24の時刻を更新することになる。
【0070】
時計装置2は、リアルタイムクロック24の時刻を更新したときに、更新の履歴を記録する履歴記憶部(履歴記憶手段)25を備える。履歴記憶部25は、リアルタイムクロック24の時刻を処理部10の時刻で更新したときに、更新の時刻を記録する。履歴記憶部25に記録した更新の履歴を用いる技術については後述する。
【0071】
上述の動作では、真の時刻に対して計時カウンタ11が計時している時刻の誤差は、不検出カウンタ17の計数値をN(正の整数)とすれば、最大でも捕捉期間Tcの2分の1の時間のN倍である(捕捉期間Tcを20msecとすれば、10msec×N)。50Hzと60Hzとの商用交流電源1に共用する場合に、捕捉期間Tcは20〜33.3msecであるから、処理部10の時刻の誤差は、N=100としても最大で1〜1.7secである。
【0072】
一方、リアルタイムクロック24は日差が1〜6sec(月差で30sec〜3min)であり、仮に日差を2secとすれば、リアルタイムクロック24の時刻を前回更新してから1日経過した時点では誤差は2secである。したがって、N≦100であれば、リアルタイムクロック24の時刻の誤差よりも計時カウンタ11の時刻の誤差のほうが小さいと言える。この例のように、不検出カウンタの計数値と捕捉期間Tcの長さとから推定される計時カウンタ11の時刻の誤差を求めると、リアルタイムクロック24について推定される誤差と比較することができる。そして、時刻修正部14では、処理部10の時刻の誤差のほうが小さいと判断できる場合に、リアルタイムクロック24の時刻を更新することが望ましい。
【0073】
時刻修正部14において上述の判断を行うことによって、リアルタイムクロック24の時刻の更新を行うか否かを決定すれば、計時カウンタ11が計時している時刻の信頼性が高い場合にのみ、リアルタイムクロック24の時刻を更新することになる。すなわち、リアルタイムクロック24の補正を高精度に維持することができる。
【0074】
上述の動作例では、捕捉期間Tcの2分の1の時間に不検出カウンタ17の計数値を乗じて計時カウンタ11の時刻の誤差を評価しているが、捕捉期間Tcの2分の1の時間に代えて、適宜に設定した係数(たとえば、0.1)を用いてもよい。これは、電圧極性の変化点を検出できない場合でも、実際には、捕捉期間Tcの2分の1の時間の誤差が生じる場合は少なく、誤差が1msec程度に収まる場合が多いからである。
【0075】
ところで、時計装置2は、上述のように、リアルタイムクロック24を更新した時刻を記録する履歴記憶部25を備えている。具体的には、履歴記憶部25に記録する情報は、更新時点において計時カウンタ11が計時している時刻と、リアルタイムクロック24が計時している時刻とである。したがって、履歴記憶部25には両者の関係が履歴として記憶される。このことから、履歴記憶部25に長期間に亘って記録された履歴を用いると、処理部10が計時する時刻(商用交流電源1の電源周期に基づく時刻)と、リアルタイムクロック24が計時する時刻との誤差の傾向を判断することができる。処理部10は、このような誤差の傾向を判断するために誤差検出部(誤差検出手段)16を備える。
【0076】
リアルタイムクロック24は、水晶振動子やセラミック振動子を用いて生成した一定周期のパルスをカウンタで計数して計時する構成であり、計時の単位とする期間に対応付けてカウンタで計数するパルス数を調節することができる。つまり、計時する時間の進みや遅れを1ppm程度の単位で調整する機能を備える。たとえば、パルスの周波数が1MHzであってパルスの周期が(1000000分の1)secあれば、計時の単位とする期間が1secである場合に1000000個のパルスを計数することになる。これに対して、パルスの周期が(999999分の1)secであれば、計時の単位である1secの期間に対応させるには、1000001個のパルスを計数することになる。
【0077】
一方、リアルタイムクロック24を更新したときの計時カウンタ11の時刻とリアルタイムクロック24の時刻との差を履歴記憶部25に記憶した履歴から統計的に求めると、リアルタイムクロック24の進みや遅れの具体値を求めることができる。たとえば、計時カウンタ11の進みや遅れは商用交流電源1の電源周波数に依存するから、長期間においては、計時カウンタ11には進みや遅れはほとんど生じないとみなすことができる。これに対して、リアルタイムクロック24は内部で発生させるパルスの周期の誤差によって進みや遅れに一定の傾向が生じると考えられる。したがって、誤差検出部16において、履歴記憶部25に記憶した履歴を用いることにより、リアルタイムクロック24の進みあるいは遅れを検出することができる。しかも、誤差検出部16では、所定の期間における進み時間あるいは遅れ時間を知ることができる。
【0078】
そこで、所定の期間(たとえば、1ヶ月)ごとに、計時カウンタ11の計時する時刻とリアルタイムクロック24の計時する時刻との差分を求めると、この差分は所定の期間におけるリアルタイムクロック24の進みあるいは遅れの時間ということができる。ここで、所定の期間ごとに差分を求めるだけではなく、所定の期間ごとに求めた差分の平均値を求めると、リアルタイムクロック24の進みあるいは遅れの時間をより正確に求めることができる。
【0079】
リアルタイムクロック24の進みあるいは遅れを調整する際の単位(上述の例では1ppm)と、所定の期間におけるリアルタイムクロック24の進みあるいは遅れの時間との関係は容易に求めることができる。したがって、上述のように、所定の期間における進みあるいは遅れの時間がわかれば、調整のための単位数を求めることができる。すなわち、所定の期間における進みあるいは遅れの時間がTxであり、所定の期間における調整の単位に対応した時間がTkであるとすれば、調整の単位数はTx/Tkとして求めることができる。
【0080】
たとえば、リアルタイムクロック24で用いるパルスの周期が1ppmだけ変化するとすれば、1ヶ月では約2.6secの変化が生じる。また、上述のようにして求めた処理部10の時刻とリアルタイムクロック24の時刻との差分が、1ヶ月で30secであったとする。この場合、リアルタイムクロック24の進みあるいは遅れを12(≒30÷2.6)ppm調整することにより、リアルタイムクロック24の進みあるいは遅れを低減させ、リアルタイムクロック24で計時する時刻の精度を高めることができる。
【0081】
ところで、時刻修正部14において、リアルタイムクロック24の時刻を計時カウンタ11の時刻で更新する条件は、以下のように設定してもよい。ここでは、計時カウンタ11が計時している時刻とリアルタイムクロック24が計時している時刻との差分を求め、リアルタイムクロック24が計時する時刻の進み側と遅れ側とについて前記差分にそれぞれ閾値を設定している。すなわち、計時カウンタ11とリアルタイムクロック24とがそれぞれ計時する時刻の差分を定期的に求め、求めた差分がいずれかの閾値に達したときに、リアルタイムクロック24の時刻を更新するのである。
【0082】
ここまで説明したように、計時カウンタ11が計時する時刻の精度は、商用交流電源1の電源周期の精度に依存している。すなわち、計時カウンタ11の時刻の精度は、電力会社における電源周期の制御に依存している。もし、電源周期が理想的な周期よりも延長されているケースにおいては、理想的な電源周期である場合に対して位相の遅れが1日で2sec(50Hzであれば200π)程度になる可能性がある。商用交流電源1では、位相が一定以上(50Hzであれば1000π程度以上)にずれた場合には電源周期を短くする制御が行われ、商用交流電源1の電源位相の誤差は10sec程度以内に維持されるような制御がなされるケースがある。
【0083】
上述のように、商用交流電源1の電源周期は変動しているから、計時カウンタ11が計時を開始したタイミングによっては、計時カウンタ11が計時する時刻は進み側と遅れ側とにそれぞれ10sec程度の誤差を生じることになる。ただし、長期間であれば、電源周期は、真の時刻に対して一定時間(ここでは、10sec)以上の誤差を生じることはない。
【0084】
商用交流電源1の電源周期が上述のように変動しているケースにおいては、電圧波形の位相の遅れが最大になった時点、または位相遅れが最小になった時点を検出すれば、つまり、電源周期の誤差の大きさを判断すれば、電力会社による電源周期の修正開始時点あるいは修正終了時点においてリアルタイムクロック24の時刻を更新することができることになる。修正開始時点や修正終了時点の時刻は、電力会社の管理している時刻に基づいていると考えられるために、から精度が高く、リアルタイムクロック24の時刻をこの時刻に合わせると、リアルタイムクロック24が計時する時刻の精度を高めることができる。
【0085】
ここで、リアルタイムクロック24が計時する時刻の誤差は、一般的には時間経過に伴って累積する。リアルタイムクロック24が計時する時刻には誤差が累積しているから、誤差は直線的に増加する。このことを利用し、リアルタイムクロック24が計時する時刻の誤差が、電力会社が電源周期の修正を行うと予想される値(たとえば、10sec)になったときに、計時カウンタ11で計時している時刻によってリアルタイムクロック24の時刻を更新する。リアルタイムクロック24の時刻の更新を、計時カウンタ11の時刻の誤差が最大になると推定される時点に実施することにより、リアルタイムクロック24の時刻の更新に用いる計時カウンタ11の時刻を、電力会社が管理している時刻に近づけることが可能となる。その結果、リアルタイムクロック24の時刻を、電力会社側が管理している時刻に近づけることが可能になる。
【0086】
なお、上述の動作において、期間設定カウンタでは周期が1msecである基準信号を計数する例を示したが、基準信号の周期は適宜に選択すればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 商用交流電源
11 計時カウンタ(計時手段)
12 期間設定カウンタ(期間設定手段)
13 時刻調整部(時刻調整手段)
14 時刻修正部(時刻修正手段)
15 時間差監視部(時間差監視手段)
16 誤差検出部(誤差検出手段)
21 極性検出部(極性検出手段)
24 リアルタイムクロック
25 履歴記憶部(履歴記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位時間ずつ時刻を進めて計時する計時手段と、商用交流電源の電圧波形の複数周期に相当する歩進時間の時限を繰り返し歩進時間の時限終了時点の前後にそれぞれ規定の捕捉期間を設定する期間設定手段と、捕捉期間内で商用交流電源の電圧極性の反転が検出されると前記計時手段の時刻を単位時間だけ進めるとともに前記期間設定手段に次の歩進時間の時限開始を指示する時刻調整手段とを備えることを特徴とする時計装置。
【請求項2】
前記期間設定手段は、前記計時手段が時限する歩進時間の時限終了の時点の前後において、それぞれ商用交流電源の電源周期の半周期以上かつ1周期以下の期間を捕捉期間として設定することを特徴とする請求項1記載の時計装置。
【請求項3】
前記時刻調整手段は、捕捉期間において規定した向きへの極性の反転が検出されないときに、捕捉期間の終了時点で前記計時手段に次の歩進時間の時限開始を指示し、前記計時手段は、捕捉期間の2分の1の時間をオフセット分として歩進時間から減算した時間を次の歩進時間として時限することを特徴とする請求項1又は2記載の時計装置。
【請求項4】
時刻を計時するリアルタイムクロックと、前記リアルタイムクロックが計時している時刻を前記計時手段が計時している時刻により更新する時刻修正手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の時計装置。
【請求項5】
前記リアルタイムクロックが計時する時刻について推定される誤差と前記計時手段が計時する時刻について推定される誤差とを監視する時間差監視手段をさらに備え、前記時刻修正手段は、前記リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて、前記リアルタイムクロックについて前記時間差監視手段が監視している推定される誤差のほうが前記計時手段について前記時間差監視手段が監視している推定される誤差よりも大きいと判断されるときに、前記リアルタイムクロックが計時する時刻を更新することを特徴とする請求項4記載の時計装置。
【請求項6】
前記時刻修正手段は、前記リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて計数値が0に初期化された後、捕捉期間内で規定した向きへの極性の反転が検出されないときに計数値に1が加算される不検出カウンタを備え、前記リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて前記不検出カウンタの計数値が0であるときにだけ、前記リアルタイムクロックの時刻を前記計時手段の時刻により更新することを特徴とする請求項4記載の時計装置。
【請求項7】
前記時刻修正手段は、前記リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて計数値が0に初期化された後、捕捉期間内で規定した向きへの極性の反転が検出されないときに計数値に1が加算される不検出カウンタを備え、前記時間差監視手段は、前記リアルタイムクロックの時刻を更新するタイミングにおいて、前記不検出カウンタの計数値に所定値を乗じた値を前記計時手段が計時する時刻について推定される誤差とし、前記リアルタイムクロックの更新からの経過時間と前記リアルタイムクロックの時刻の精度との積を前記リアルタイムクロックが計時する時刻について推定される誤差とすることを特徴とする請求項5記載の時計装置。
【請求項8】
前記リアルタイムクロックの時刻を更新した履歴を記録する履歴記憶手段と、前記履歴記憶手段に記録された履歴を用いて所定期間における前記リアルタイムクロックの誤差を求める誤差検出手段とをさらに備え、前記誤差検出手段が求めた所定期間の誤差を用いて前記リアルタイムクロックが計時する時刻を所定期間ごとに更新することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の時計装置。
【請求項9】
前記時刻修正手段は、商用交流電源の電源周期を監視し電圧波形の位相の遅れまたは進みが最大または最小になった時点の時刻を用いて前記リアルタイムクロックが計時している時刻を更新することを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の時計装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate