説明

暖冷房システム及びユニット建物

【課題】簡単な構成で有効な熱利用が可能な暖冷房システムを提供する。
【解決手段】熱源であるヒートポンプ2と、床下空間13に設置されてヒートポンプ2からの熱搬送流体が経由する蓄熱タンク4と、ユニット建物1の非居室12に設置される非居室用放熱器3とを備えている。
そして、熱搬送流体は、蓄熱タンク4を経由した後に非居室用放熱器3を経由してヒートポンプ2に戻るように接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプを使用した暖冷房システム、及びそれを備えたユニット建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプを使用して建物の暖冷房をおこなう空調システムが知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
この特許文献1には、深夜電力を使ってヒートポンプによって温められた湯を貯湯タンクに貯留し、その湯を媒体に使って床暖房をおこなうシステムが開示されている。
【0004】
一方、ヒートポンプによって水を温める場合、供給される水の水温が低いほどヒートポンプの成績係数(COP)が高くなり、エネルギー効率が良くなることが知られている。そこで、特許文献1では、貯湯タンクに複数の湯取り出し口を設け、複雑な給湯制御をおこなうことにより、エネルギー効率を向上させている。
【0005】
また、特許文献2には、居室の床を暖めるために供給された流体を、居室に流した後に廊下などの非居室の床に流してからヒートポンプに戻すことで、流体に与えた熱量を充分に有効利用するとともに、ヒートポンプの運転効率を向上させることができるヒートポンプ式暖房装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−294251号公報
【特許文献2】特開2003−90547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の構成では、配管が複雑になるとともに、貯湯タンクの全体構成が大型化するため、設置できる場所が限られてくる。また、複雑な制御をおこなう装置が必要となるため、コストも高くなる傾向にある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構成で有効な熱利用が可能な暖冷房システム、及びそれを備えたユニット建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の暖冷房システムは、熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する床下熱交換器と、建物の非居室に設置される非居室内熱交換器とを備え、前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器を経由した後に前記非居室内熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の暖冷房システムは、熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する蓄熱器と、建物の非居室に設置される非居室内熱交換器とを備え、前記熱搬送流体は、前記蓄熱器を経由した後に前記非居室内熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の暖冷房システムは、熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する床下熱交換器と、建物の非居室の床に近接して設置される非居室用熱交換器とを備え、前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器を経由した後に前記非居室用熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の暖冷房システムは、熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する蓄熱器と、建物の非居室の床に近接して設置される非居室用熱交換器とを備え、前記熱搬送流体は、前記蓄熱器を経由した後に前記非居室用熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする。
【0012】
また、前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器又は前記蓄熱器を経由した後に、建物の居室に設置される居室内熱交換器を少なくとも一つ経由して前記非居室内熱交換器又は前記非居室用熱交換器に至るように構成することができる。
【0013】
さらに、前記床下熱交換器は、前記熱搬送流体からの熱を蓄熱可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、前記蓄熱器は、前記熱搬送流体の熱と前記床下空間の空気との熱交換が可能に構成されていてもよい。
【0015】
さらに、前記非居室用熱交換器は、前記床に設けられた開口部の蓋部又は連通部を有する蓋部の下方の前記床下空間に形成することができる。
【0016】
また、前記床下熱交換器又は前記蓄熱器が設置される前記床下空間は、床と底盤コンクリートと側壁コンクリートとに囲まれた建物の最下階の床下空間であって、前記側壁コンクリートには断熱材が取り付けられているのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のユニット建物は、上記いずれかの暖冷房システムを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された本発明の暖冷房システムでは、ヒートポンプからの熱搬送流体が、床下熱交換器又は蓄熱器と建物の非居室内又はその床に近接して設置される非居室内熱交換器又は非居室用熱交換器とを経由してヒートポンプに戻される。
【0019】
このため、通常、居室よりも自然室温が低い非居室に非居室内熱交換器又は非居室用熱交換器で放熱又は吸熱できるので、充分に熱交換された熱搬送流体をヒートポンプに戻すことができ、高いエネルギー効率によってヒートポンプを稼働させることができる。
【0020】
さらに、非居室内熱交換器は、空気と直接、熱交換をおこなうので、即効性に優れ、効率よく熱搬送流体の熱交換をおこなうことができる。
【0021】
また、非居室用熱交換器を、自然室温の低い非居室の床に近接して設置すれば、床を介した直接的な暖冷房をおこなうことができる。特に、床に設けられた開口部の蓋部の近傍に非居室用熱交換器を設けることで、局所的かつ効率的な暖冷房をおこなうことができる。さらに、床や床下空間に非居室用熱交換器を配置することで、非居室空間を有効に利用することができる。
【0022】
また、居室内熱交換器を居室に設置することで、熱搬送流体を居室の暖房や冷房にも使用することができる。
【0023】
さらに、蓄熱器又は床下熱交換器を蓄熱可能な構成にすることで、コストの低い深夜電力を使って暖冷房をおこなうための蓄熱をおこなうことができる。他方、蓄熱器を、熱搬送流体の熱と床下空間の空気との熱交換が可能な構成とすることで、床下空間の空気を暖めたり、冷やしたりして床を介した暖冷房をおこなうことができる。
【0024】
また、床下空間を断熱構造にすることで、床下熱交換器によって暖めたり、冷やしたりした空気を床に効率良く伝達させることができる。
【0025】
さらに、このような暖冷房システムを備えたユニット建物は、建物全体を効率よく暖冷房することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態の暖冷房システムを備えたユニット建物1の全体構成を説明する説明図である。
【0028】
まず、構成から説明すると、このようなユニット建物1は、基礎断熱として構築される底盤コンクリート1bと、その側縁に立設される側壁コンクリート1cと、さらにその上に立設される外壁部1dと、その外壁部1dの上端開口を塞ぐ天井部1eとから主に構成される。
【0029】
そして、この天井部1eと外壁部1dとに囲まれる空間は、床部1aによって床下空間13と屋内としての室内とが区切られている。この床部1aは、床下空間13からの熱又は冷気が伝達され易いように、断熱材が貼り付けられていない構成となっている。また、この室内は、内壁部1fなどで区切られて、リビングルーム、寝室、ダイニングルームなどの居室11と、廊下、洗面所などの非居室12とが形成されている。
【0030】
また、側壁コンクリート1cの床下空間13側には、グラスウールなどの断熱材6が貼り付けられており、床下空間13の熱や冷気が屋外に移動し難い断熱構造となっている。
【0031】
そして、本実施の形態の暖冷房システムは、屋外に設置される熱源であるヒートポンプ2と、床下空間13に設置される蓄熱可能に構成された床下熱交換器としての蓄熱タンク4と、非居室12の床部1a上に設置される非居室内熱交換器としての非居室用放熱器3と、ヒートポンプ2と蓄熱タンク4と非居室用放熱器3とを繋ぐ循環管路(21,22,23)とから主に構成される。
【0032】
この循環管路は、ヒートポンプ2と蓄熱タンク4とを繋ぐ往路管21と、蓄熱タンク4と非居室用放熱器3とを繋ぐ中継管22と、非居室用放熱器3とヒートポンプ2とを繋ぐ復路管23とから主に構成される。これらの循環管路は、主に床下空間13を通って配管されており、移動中に循環管路から漏出する熱によっても床下空間13の空気を暖めることができる。
【0033】
ヒートポンプ2は、熱を低温物体と高温物体との間で移動させることで加熱又は冷却をおこなう装置で、二酸化炭素などの熱媒を循環させながら圧縮・膨張をおこなうことで、熱を吸収したり、熱を放出したりして、その熱媒に接する物体(ここでは熱搬送流体)を加熱したり、冷却したりする。このヒートポンプ2の熱媒と熱交換をおこなう熱搬送流体には、水や不凍液などの流体が使用できる。
【0034】
そして、ヒートポンプ2の熱媒と熱交換した熱搬送流体は、往路管21から流れ出し、蓄熱タンク4の内部に貯留され、放熱して温度が少し下がった熱搬送流体は中継管22を通って非居室用放熱器3に送られ、非居室12の空気中に放熱することで充分に温度を下げた後に復路管23を通ってヒートポンプ2に戻ることになる。また、ヒートポンプ2の内部では、熱搬送流体と熱交換した熱媒は大気と熱交換をおこなって、再び加熱された熱媒と熱交換した熱搬送流体が再び往路管21から流れ出す。
【0035】
この蓄熱タンク4は、プラスチックなどの合成樹脂材料によって外殻が形成されたタンクであって、その内部に熱搬送流体が充填されることで蓄熱が可能になるように構成されている。
【0036】
また、非居室用放熱器3は、熱搬送流体の熱と非居室12の空気との熱交換をおこなう装置であり、その実施例を図2に示した。
【0037】
図2(a)は、非居室用放熱器3として設置される格子型放熱器3Aの斜視図であり、洗面所の壁などに取り付けることができる。また、梯子のように形成された横材には、タオルや洗濯物などを掛けたりすることができる。一方、図2(b)は、非居室用放熱器3として設置されるパネル型放熱器3Bの斜視図であり、廊下やトイレの壁の下部に配置することができる。
【0038】
さらに、このような薄形の格子型放熱器3Aやパネル型放熱器3Bを壁などに沿って配置するのであれば、空間を占有する容積が少ないうえに、放熱器を意識させないようなデザインにすることもできる。
【0039】
ところで、一般的には、リビングなどの人が長時間過ごす居室11と、洗面所や廊下など一時的に利用する非居室12とでは、窓の大きさや向きの違いによって、暖房を一切おこなわなくても平均的な自然室温に差がある。
【0040】
図3は、1月の晴れた日に計測された暖房のない居室11と非居室12の自然室温を示したグラフである。ここで、一点鎖線の曲線T1は外気温を示し、実線の曲線T2は非居室12の非居室室温T2を示し、破線の曲線T3は居室11の居室室温T3を示している。また、二点鎖線で挟まれた気温17℃〜24℃の範囲は、人が生活する上での適温範囲TCを示している。
【0041】
この図3によると、居室室温T3は早朝に10℃前後になるものの日中は23℃まで上がるのに対し、非居室室温T2は早朝の温度は居室室温T3と同程度であっても、最高でも17℃程度にしかならず夜も冷え込むことになる。このような傾向は日当たりと間取りから大部分の住宅において共通するものである。
【0042】
他方、ヒートポンプ2の成績係数(COP)は、圧縮式ヒートポンプの暖房の場合、「暖房出力(すなわち、放出する熱量)」を「熱媒になされる必要動力(すなわち、熱媒を圧縮する圧縮機を作動させる電力)」で除した値であり、放出する熱量が多いほど、成績係数(COP)は大きくなってエネルギー効率は良くなる。すなわち、ヒートポンプ2から送り出された熱搬送流体は、暖房に使用した後に、できるだけ放熱させて温度を下げた状態でヒートポンプ2に戻す方がエネルギー効率を良くすることができる。
【0043】
そこで、本実施の形態では、熱搬送流体をヒートポンプ2に戻す直前に、自然室温の低い非居室12の非居室用放熱器3で充分に放熱させることによって、熱搬送流体の温度を下げて高効率でヒートポンプ2を稼働させる。
【0044】
また、この非居室12での放熱によって、非居室12の室温を上げることができる。すなわち、居室11と非居室12との間などの室間の温度差が5℃以上あると、暖かい居室11から温度の低い非居室12に移動した際に、血管が収縮するヒートショックが発生し、体が強いストレスを受けるおそれがあるので、居室11と非居室12との温度差を少なくして建物全体でヒートショックが起きないようにするのが望ましい。
【0045】
そして、このように建物内の居室11と非居室12との温度差を少なくするためには、ユニット建物1全体の温度、特に室間の温度差を考慮した暖冷房システムにする必要がある。
【0046】
ここで、例えば非居室12の自然室温に合わせた暖冷房システムにすると日中暖まり過ぎて過剰暖房になるおそれがあり、居室11の自然室温に合わせた暖冷房システムにすると非居室12で充分な室温を確保することができなくなるおそれがある。
【0047】
そこで、本実施の形態の暖冷房システムでは、床下空間13に配置された蓄熱タンク4からの放熱によって床下空間13の空気を暖め、床部1aを介して居室11及び非居室12の最低室温を全体的に上昇させるとともに、非居室12は非居室用放熱器3からの放熱によって適温範囲TCに入るように暖める。また、居室11の温度は、別途、設置したエアコン5などによって、快適な温度(長時間在室する部屋の快適温度は21℃〜24℃)になるように適宜、調整すればよい。
【0048】
次に、本実施の形態の暖冷房システムを、ヒートポンプ2から排出される熱搬送流体の流れに着目して説明する。なお、ここでは、暖房をおこなう場合について説明するが、冷房の場合も同様の流れになる。
【0049】
まず、ヒートポンプ2で加熱された熱媒と熱交換した熱搬送流体は、往路管21から流れ出し、蓄熱タンク4に向けて送り出される。そして、この蓄熱タンク4に熱搬送流体が貯留されることによって熱が蓄熱されることになる。また、このような蓄熱は、電気料金の安い深夜電力を使っておこなうと経済的である。
【0050】
この蓄熱タンク4は、放熱を常時おこなうので、床下空間13の空気がこの放熱によって暖められて、床下空間13の温度及び床部1aを介してその熱が伝達される居室11及び非居室12の基礎室温が上昇することになる。
【0051】
他方、この蓄熱タンク4で放熱をおこないすぎると、熱搬送流体の温度が下がりすぎて、床下空間13の空気の熱を奪うことになりかねないので、所定の温度まで熱搬送流体の温度が下がった時点で、中継管22を通して熱搬送流体を非居室用放熱器3に送る。この時点での熱搬送流体の温度は、ヒートポンプ2から供給されたときよりも低下しているが、冬期の外気温や非居室12の自然室温などに比べると充分に高い温度を保っている。
【0052】
そこで、非居室用放熱器3によって非居室12の空気と熱交換をおこなわせ、熱搬送流体の熱を充分に放出させる。この非居室用放熱器3の内部では、熱交換部が蛇行しており、非居室12の空気と接触することによって熱交換が効率良くおこなわれる。
【0053】
すなわち、蓄熱タンク4と非居室放熱器3とにおける熱交換によって2度の放熱がおこなわれた熱搬送流体は、復路管23を通ってヒートポンプ2に戻されることになるが、その直前に自然室温の低い非居室12の空気と熱交換した熱搬送流体は、充分に温度が低下している。
【0054】
次に、本実施の形態の暖冷房システムの作用について説明する。
【0055】
このように構成された本実施の形態の暖冷房システムでは、ヒートポンプ2からの熱搬送流体が、蓄熱タンク4と非居室用放熱器3とを経由してヒートポンプ2に戻される。この熱搬送流体の熱エネルギーは、輸送による損失もあるため、充分に有効利用することが資源の節約にもつながることになる。
【0056】
そして、熱搬送流体の持つ熱エネルギーを床下空間13に放出させて暖めれば、床部1aを暖めることができ、この温度が上昇した床部1aからの輻射熱によって居室11及び非居室12を暖房することができる。このように床下空間13を暖めることによって、ユニット建物1の躯体を保温して建物全体の基礎温度を上昇させることができる。
【0057】
また、蓄熱タンク4からの放熱によって床下空間13を暖めた熱搬送流体は、非居室用放熱器3で充分に放熱した後にヒートポンプ2に戻すようにすれば、ヒートポンプ2を高いエネルギー効率で稼働させることができる。
【0058】
また、非居室用放熱器3は、空気と直接、熱交換をおこなうので、非居室12の室温を素早く上昇させることができる。さらに、自然室温の低い非居室12の空気とであれば効率よく熱搬送流体の熱交換をおこなうことができる。
【0059】
そして、ヒートポンプ2の運転効率を向上させるためにおこなう非居室用放熱器3の放熱によって、自然室温の低い非居室12の室温を上昇させることができるので、部屋間の温度差によって発生するヒートショックを抑えることができる。
【0060】
また、この蓄熱タンク4は、配管も少なく、簡単な構成にできるので、床下空間13であっても充分に設置することができる。
【0061】
さらに、床下空間13をコンクリートで囲んで断熱材6を配置した断熱構造にすることで、蓄熱タンク4によって効率よく床下空間13の空気を暖めることができ、その暖かい空気が床部1aに伝達して居室11及び非居室12の床暖房をおこなうことができる。
【0062】
以上の暖冷房システムは、暖房時を中心に記載したが、冷房時に蓄熱タンク4に冷水を蓄えた場合においても、本実施の形態の暖冷房システムであれば、同様の効果を得ることができる。また、夏場においては、非居室12は、エアコンなどで別途、冷房されていないので、冷房の効いた居室11などに比べて室温が高く、充分に熱搬送流体の冷熱を吸熱させて熱交換することができる。
【0063】
さらに、このような暖冷房システムを備えたユニット建物1は、建物全体の暖冷房をエネルギー効率の良いものにすることができる。
【実施例1】
【0064】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0065】
図4は、実施例1の暖冷房システムを備えたユニット建物1の全体構成を説明する説明図である。
【0066】
この実施例1の暖冷房システムは、居室11に居室内熱交換器としての居室用放熱器7が配置されており、この居室用放熱器7によって居室11の暖房をおこなうことができる点で前記実施の形態と相違している。
【0067】
この居室用放熱器7は、蓄熱タンク4と非居室用放熱器3との間に接続される。また、蓄熱タンク4と居室用放熱器7とは中継管22aで繋がれ、居室用放熱器7と非居室用放熱器3とは中継管22bで繋がれる。
【0068】
そして、この実施例1の暖冷房システムでは、ヒートポンプ2から供給された熱搬送流体が蓄熱タンク4を介して床下空間13を暖めた後に、居室用放熱器7に送られる。
【0069】
このように熱搬送流体を居室用放熱器7に送って居室11の暖房をおこなう場合は、蓄熱タンク4で熱搬送流体の温度が下がり過ぎることがないように制御する。また、居室11の室温が高く、暖房の必要がないときには、熱搬送流体は居室用放熱器7を経由させることなく非居室用放熱器3に送ることができる。
【0070】
そして、居室用放熱器7で放熱させて居室11の暖房に使用された熱搬送流体は、中継管22bを通して非居室用放熱器3に送られ、非居室用放熱器3からの放熱によって非居室12の室温を上昇させることができる。
【0071】
このように、ヒートポンプ2で加熱された熱搬送流体が、蓄熱タンク4、居室用放熱器7で充分に暖房に利用された後に、非居室用放熱器3に送られて残りの熱が放出されるので、資源を消費して作り出された熱エネルギーを有効に利用することができる。
【0072】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例2について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0074】
図5は、実施例2の暖冷房システムを備えたユニット建物1の全体構成を説明する説明図である。
【0075】
この実施例2の暖冷房システムは、非居室12の下方の床下空間13に非居室用熱交換器としてのガラリ用放熱器8が配置されており、このガラリ用放熱器8によって非居室12の暖房をおこなうことができる点で前記実施の形態及び実施例1と相違している。
【0076】
そして、この実施例2では、ガラリ用放熱器8の真上の床部1aに開口部1gが設けられており、この開口部1gには蓋部としてのガラリ81が嵌め込まれている。このガラリ81は、連通部としてのスリット81aを有している。
【0077】
なお、この開口部1gには、図6に示すような格子状のアルミ蓋82などの熱伝導性の高い材料で成形された蓋部を設置してもよい。このアルミ蓋82も、連通部としてのスリット82aを有している。
【0078】
また、非居室12が、図6に示すようなトイレや洗面所であれば、人が立つ位置がほとんど決まっているので、開口部1gは、人が連続して居る時間が長くなる位置又はその近傍に設けるとよい。
【0079】
そして、この実施例2の暖冷房システムでは、ヒートポンプ2から供給された熱搬送流体が蓄熱タンク4を介して床下空間13を暖めた後に、ガラリ用放熱器8に送られる。ここで、蓄熱タンク4は、居室11の下方寄りに設置され、主に居室11の床部1aを暖めるのに利用される。
【0080】
一方、熱搬送流体がガラリ用放熱器8に送られると、ガラリ用放熱器8との熱交換によって暖められた床下空間13の空気は、ガラリ81のスリット81aを通って非居室12に流れ込む。そして、このガラリ81の上又は近傍にいる人は、その流れ込んだ暖かい空気によって直接的に足元が暖められるので、ガラリ用放熱器8による放熱量がそれほど多くなくても、暖房として充分に機能させることができる。
【0081】
すなわち、床部1aに設けられた開口部1gのガラリ81又はアルミ蓋82の近傍にガラリ用放熱器8を設けることで、局所的かつ効率的な暖冷房をおこなうことができる。
【0082】
さらに、床下空間13にガラリ用放熱器8を配置することで、トイレや洗面所などの通常、狭くなりがちな非居室12内を放熱器で占有されることがなく、非居室12空間を有効に利用することができる。
【0083】
また、ヒートポンプ2で加熱された熱搬送流体が、蓄熱タンク4で充分に暖房に利用された後に、ガラリ用放熱器8に送られて残りの熱が放出されるので、資源を消費して作り出された熱エネルギーを有効に利用することができる。さらに、ガラリ用放熱器8で充分に放熱した後にヒートポンプ2に戻すようにすれば、ヒートポンプ2を高いエネルギー効率で稼働させることができる。
【0084】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0085】
以下、前記した実施例2とは別の形態の実施例3について説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0086】
この実施例3の暖冷房システムは、非居室12の床部1aに開口部1gを設ける点で実施例2と同じであり、その開口部1gには図7に示すように非居室用熱交換器としての埋設型放熱器9が嵌め込まれている。
【0087】
この埋設型放熱器9は、開口部1gと略同一の平面視形状の本体部92と、その本体部92の内部に蛇行して配置される埋設管91とから主に構成される。この本体部92は、アルミなどの熱伝導性の高い材料で成形するとよい。
【0088】
また、この埋設管91は、一端が熱搬送流体を送り込む中継管22に接続され、他端がヒートポンプ2に向けて熱搬送流体を送り出す復路管23に接続される。
【0089】
そして、中継管22から埋設管91に熱搬送流体が送り込まれると、その熱が本体部92に伝達され、床面の一部を形成する本体部92の表面が暖かくなる。
【0090】
ここで、この埋設型放熱器9が配置される位置が、非居室12において人が連続して居る位置であれば、このような局所的な加熱であっても、充分に暖房として機能させることができる。
【0091】
さらに、床部1aに埋設型放熱器9を組み込むことで、トイレや洗面所などの通常、狭くなりがちな非居室12内に放熱器を設置しなくても暖冷房が可能になり、非居室12空間を有効に利用することができる。
【0092】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0093】
例えば、前記実施の形態及び前記実施例では、建物の最下層の床下空間13に蓄熱タンク4を設置したが、これに限定されるものではなく、例えば2階の床下空間に蓄熱タンク4を設置するような形態であってもよい。
【0094】
さらに、前記実施の形態では熱搬送流体を水として説明したが、これに限定されるものではなく、熱を搬送できるものであればいずれの流体を使用してもよい。また、ヒートポンプ2の内部で圧縮・膨張させる熱媒を熱搬送流体とすることもできる。
【0095】
また、前記実施例1では、蓄熱タンク4と非居室用放熱器3との間に、1つの居室用放熱器7を配置したが、これに限定されるものではなく、複数の居室用放熱器7や非居室用放熱器3を、他の居室11や非居室12に配置することができる。
【0096】
さらに、蓄熱タンク4、居室用放熱器7又は非居室用放熱器3には、ファンなどを取り付けて放熱量を制御することができる。
【0097】
また、前記実施例1では、蓄熱タンク4は前記実施の形態で説明したのと同様に放熱が可能な構成として説明したが、これに限定されるものではなく、床下空間13の空気とは熱交換をおこなわない断熱材で覆われた蓄熱器であってもよい。このように蓄熱器を断熱構造にすれば、必要なときにだけ居室用放熱器7などで放熱させるなどして放熱量を容易に制御することができる。
【0098】
さらに、前記実施例2では、蓋部の連通部としてスリット81a,82aを設けたが、これに限定されるものではなく、連通部として複数の貫通孔を有する蓋部であってもよい。
【0099】
また、前記実施例2又は3では、蓄熱タンク4は前記実施の形態で説明したのと同様に蓄熱可能に構成された床下熱交換器として説明したが、これに限定されるものではなく、蓄熱機能を備えていない床下熱交換器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の最良の実施の形態の暖冷房システムを配置したユニット建物の構成を説明する説明図である。
【図2】非居室用放熱器を例示する図であって、(a)は格子型放熱器の斜視図、(b)はパネル型放熱器の斜視図である。
【図3】居室と非居室の自然室温の一日の推移を説明するグラフである。
【図4】実施例1の暖冷房システムを配置したユニット建物の構成を説明する説明図である。
【図5】実施例2の暖冷房システムを配置したユニット建物の構成を説明する説明図である。
【図6】実施例2で説明する蓋部としてアルミ蓋を使用する構成を示した断面図である。
【図7】実施例3の埋設型放熱器の構成を説明する図であって、(a)は斜視図、(b)は床部の開口部に組み込まれた状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 ユニット建物(建物)
11 居室
12 非居室
13 床下空間
1a 床部(床)
1b 底盤コンクリート
1c 側壁コンクリート
1g 開口部
2 ヒートポンプ
3 非居室用放熱器(非居室内熱交換器)
4 蓄熱タンク(蓄熱器、床下熱交換器)
6 断熱材
7 居室用放熱器(居室内熱交換器)
8 ガラリ用放熱器(非居室用熱交換器)
81 ガラリ(蓋部)
81a スリット(連通部)
82 アルミ蓋(蓋部)
82a スリット(連通部)
9 埋設型放熱器(非居室用熱交換器、蓋部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する床下熱交換器と、建物の非居室に設置される非居室内熱交換器とを備え、
前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器を経由した後に前記非居室内熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項2】
熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する蓄熱器と、建物の非居室に設置される非居室内熱交換器とを備え、
前記熱搬送流体は、前記蓄熱器を経由した後に前記非居室内熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項3】
熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する床下熱交換器と、建物の非居室の床に近接して設置される非居室用熱交換器とを備え、
前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器を経由した後に前記非居室用熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項4】
熱源であるヒートポンプと、床下空間に設置されて前記ヒートポンプからの熱搬送流体が経由する蓄熱器と、建物の非居室の床に近接して設置される非居室用熱交換器とを備え、
前記熱搬送流体は、前記蓄熱器を経由した後に前記非居室用熱交換器を経由して前記ヒートポンプに戻ることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項5】
前記熱搬送流体は、前記床下熱交換器又は前記蓄熱器を経由した後に、建物の居室に設置される居室内熱交換器を少なくとも一つ経由して前記非居室内熱交換器又は前記非居室用熱交換器に至ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の暖冷房システム。
【請求項6】
前記床下熱交換器は、前記熱搬送流体からの熱を蓄熱可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は3に記載の暖冷房システム。
【請求項7】
前記蓄熱器は、前記熱搬送流体の熱と前記床下空間の空気との熱交換が可能に構成されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の暖冷房システム。
【請求項8】
前記非居室用熱交換器は、前記床に設けられた開口部の蓋部又は連通部を有する蓋部の下方の前記床下空間に形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の暖冷房システム。
【請求項9】
前記床下熱交換器又は前記蓄熱器が設置される前記床下空間は、床と底盤コンクリートと側壁コンクリートとに囲まれた建物の最下階の床下空間であって、前記側壁コンクリートには断熱材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の暖冷房システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の暖冷房システムを備えたことを特徴とするユニット建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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