説明

暖房便座装置

【課題】 使用者の臀部が触れる便座表面をむらなく加熱させることを課題とする。また、便座の殆どの表面に対応した裏面の凹曲面に貼り付けが行える面状ヒーターを備えた暖房便座装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 発熱体パターン15を内側絶縁シート17と外側絶縁シート18で覆って面状ヒーター7を構成する。面状ヒーター7は便座本体3の裏面の形状に追随させるため、内周領域71と外周領域73に複数の切り込み9,10が形成され、面状ヒーター7は中間領域72から内周領域71と外周領域73に突出した複数の突出部77,78を形成することにより、便座本体3をむら無く加熱して暖めることができる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は暖房便器装置に関するものであり、特に、着座者が着座する便座本体の表面を均一に暖房するようにした暖房便座装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座は用便のために所定時間着座して使用するので、中央開口部の内周縁と便座の外周縁は比較的小さな曲率の凸曲面を形成し、使用者(着座者)の臀部や大腿部に痛みや違和感が発生しないようにしている。また、便座の内周縁と外周縁の中間にあっては使用者の着座姿勢での大部分の体重を支えることから、例えば、椅子の座面のように比較的平面に近い大きな曲率の凸曲面となっている。場合によっては、部分的に凹曲面を有するなどして、部分的な痛みや疲労感、違和感等が生じない形状となっている。
【0003】
この場合、便座の内周縁と外周縁およびその中間の曲率そのものは、使用者の体型の違いや着座姿勢の違い等を考慮して、各部位で必要に応じて徐々に変化させたものとなっていて、すわり心地が良くなるように工夫されている。
【0004】
従来ではこのような形状の便座を暖めるために、面全体で発熱する面状ヒーターが知られている。面状ヒーターは温度のムラが少なく、ヒーター部の厚さを細いニクロム線を耐熱繊維等に巻き付けて発熱体とし軟質の電気絶縁樹脂を被覆したチュービングヒーターよりも薄くすることが出来るので、便座用ヒーターとして優れている。しかし、面状ヒーターは面状の抵抗体に絶縁部材で覆った構造を取る必要があるので、便座の内面のような複雑な凹曲面に対しては絶縁部材を可撓性の大きいものにすれば曲面への追随性は向上しても、内部の抵抗体が引っ張られて変形してしまい、便座の暖房には温度ムラが発生してしまう。この場合、絶縁部材を可撓性の良くない硬い材質にすれば、抵抗体の変形等は防ぐことが出来るが便座の裏面の曲面への追随性が悪化して、便座の内外周縁の内表面等で面状ヒーターそのものが便座の裏面から部分的に浮き上がったり、貼り付けた時にしわが寄ったりすることが起こり得るので、表面温度にムラが生じる。
【0005】
従来の暖房便座装置は、細長い面状発熱体の長辺の両側に一対の電極を設け、便座の外周側に配置された電極と共に面状発熱体を複数に分割する為の切り込みを入れて、便座の裏側の凹面に沿うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、便座の平面形状に略等しい形状の面状ヒーターの内周と外周の両縁部から交互に放射状の切り込みを複数形成して便座の裏面に貼り付け、これらの交互の切り込みによって面状ヒーターは、隣り合う切り込み間で複雑な異なった形状を成し、便座の裏面の3次元的曲面に沿うようにしたものが知られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
更には、複数の矩形小片に分割された面状ヒーターを便座に複数配設して一体に形成して、外部から供給される電源を便座の内外周縁に設け、一対の環状中継線を通じて、各面状ヒーターの電極を並列に接続し、各面状ヒーターを便座の裏面の形状に沿うようにしたものが知られている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】実開昭57−4195号公報
【特許文献2】実案平2−19117号公報
【特許文献3】特開2006−122151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される暖房便座装置は、切り込みによって分割される各面状ヒーターは電極間の長さを同一に保つことが必要である。その一方で便座の形状は前方から後方に向かうに従って幅が広くなっているものが殆どである。このことから、後方の領域においては、面状ヒーターが設けられない範囲が出来てしてしまい、使用者(着座者)の身体が便座に触れたとき、冷たく感じるということが起こり得る。
【0009】
特許文献2に示される暖房便座装置は、一枚の面状ヒーターを複数の連続した面状ヒーター片になるよう、内周縁と外周縁の交互に切り込みを入れて、1枚の面状ヒーターを便座の有する3次元曲面になじませる必要がある。この場合、内周縁及び外周縁の側壁に沿った形で面状ヒーターの各ヒーター片を曲げて貼り付けるには、細かい間隔で内周縁と外周縁とで交互に切り込みを入れる必要がある。その結果、面状ヒーターはジグザグに連続した短冊のような形状になってしまい、便座への面状ヒーターの貼り付け作業が非常に困難となってしまう。比較的粗い間隔で面状ヒーターに切り込みを入れた場合には、便座の裏面への面状ヒーターの貼り付け作業は可能であるが、便座の内周縁及び外周縁の側壁付近の凹部形状となった面に面状ヒーターの各ヒーター片を曲げて貼り付けなければならない。このため、3次元凹曲面に面状ヒーターの接着面が十分になじまず、やがて面状ヒーターが裏面より浮き上がったり、よじれが生じたりする不具合が発生してしまう。
【0010】
特許文献3に示される暖房便座装置は、複数の矩形小片に分割された小片面状ヒーターに通電させるために特許文献2と同様に便座の内外周縁に一対の環状中継線を設けている。この領域には面状ヒーターを配置出来ないことから、内周縁及び外周縁の側壁の付近は温度が低いという不具合が生じる。
【0011】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑みてなされたものであり、使用者の臀部が触れる便座表面をむらなく加熱させることを課題とする。また、便座の殆どの表面に対応した裏面の凹曲面に貼り付けが行える面状ヒーターを備えた暖房便座装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために講じた手段は、発熱体と該発熱体に対して絶縁を行う絶縁部材を有し、前記発熱体に通電を行うことにより着座者が着座する前記便座本体の暖房を行う面状ヒーターを前記便座本体の裏面に備えた暖房便座装置において、前記面状ヒーターは、前記便座本体の中央に位置する中間領域と、該中間領域と前記便座本体の内縁との間の内周領域と、前記中間領域と前記便座本体の外縁との外周領域とに連続した前記発熱体が配設され、前記内周領域と前記外周領域には複数の放射状の内周切り込みと外周切り込みが形成されると共に、前記発熱体は前記中間領域から前記内周領域および前記外周領域に対して突出した突出部を有する構成とした。
【0013】
この場合、前記発熱体は、前記突出部は矩形状を呈し、前記中間領域でつながっていると良い。
【0014】
また、前記突出部は、隣り合う前記外周切り込みの間に設けられると共に、隣り合う前記内周切り込みの間に設けられていると良い。
【0015】
更に、前記発熱体は、前記便座本体の着座面の後方においても放射状に突出部が延在していると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複雑な3次元曲面を有する便座本体の裏面に面状ヒーターを貼り付ける場合、便座本体が複雑な凹曲面で形成されていても、放射状の内周切り込みと外周切り込みが形成されているので、この各切り込みにより、面状ヒーターの曲りや捻れを吸収して、便座本体の内縁および外縁の凹曲面全域にわたって、面状ヒーターを密接させて貼り付けることが出来る。発熱体は中間領域から内周領域および外周領域に対して、中央より内外の両側に向けて突出した突出部により、便座本体の内縁および外縁まで面状ヒーターを確実に配設させることが可能となる。これによって、便座本体の全域にわたって面状ヒーターの熱が伝達されるので、便座本体の内周縁および外周縁も中間領域と同様、確実に速やかに適温まで加熱して暖めることができる。よって、臀部が触れる便座表面をむらなく加熱させることができ、便座本体の裏面の凹曲面に面状ヒーターの貼り付けが行える暖房便座装置とすることができる。
【0017】
この場合、突出部は矩形状を呈し、発熱体は中間領域でつながっていると、中間領域では切り込みのない帯状となるので、面状ヒーターを便座本体に組み付ける際、安定して組み付けを行うことができ、便座本体の全表面を中間領域で単一の発熱体の矩形状となった突出部によって、簡単な構成で便座本体の全表面を均一に暖房することが可能である。従って、使用者が着座している場合のみならず着座しようとする場合、うっかり姿勢を崩した場合であっても、通常の着座姿勢では触れることが少ない便座本体の外周縁に肌が触れたとしても、不快に感じることがなくなる。
【0018】
また、突出部は、隣り合う前記外周切り込みの間に設けられると共に、隣り合う前記内周切り込みの間に設けられていると、面状ヒーターを便座本体の3次元曲面となる裏面に貼り付ける場合において、突出部および隣接する突出部同士をつなぐ中間領域の部位に大きなストレスをかけずに、便座本体に対して組み付け(貼り付け)を行うことができる。
【0019】
更に、発熱体は便座本体の着座面の後方においても放射状に突出部が延在していると、便座本体の全表面をより均一に暖房することが可能である。
【0020】
この場合、貼り付け時の切り込みが形成された端部が重なるのを防止でき、複数設けられた切り込みで曲がりや捻れが確実に吸収され、面状ヒーターの貼り付け位置のずれ等によっては前述の曲りや捻れが増加することが考えられるが、少なくとも内周切り込みの開始端の一部または全部が略三角形の切り欠き形状を設ければ、面状ヒーターそのものの貼り付け位置が許容範囲内で位置ずれを生じた場合でも、内周領域の面状ヒーターの切り込み部が重なり合うことを防止することができる。
【0021】
更に、面状ヒーターの発熱体を金属箔から成る導電体とした場合、金属箔の周囲を絶縁部材で覆うのに絶縁性が高く強度と適度な可撓性を有する薄膜樹脂材料が用いられる。発熱体である金属箔をこれらの薄膜状樹脂材料で覆われた面状ヒーターを便座筺体の内表面に貼り付けて便座の表面温度を均一にする為には、出来るだけ便座の内側に密着させることが必要であり、その為には可撓性のある柔らかい樹脂が望ましい。しかしながら、柔らかな樹脂材だけで構成してしまうと面状ヒーターの密着性は優れているが、面状ヒーターを便座内表面の所定の位置に貼り付ける作業の時に、面状ヒーター自身が撓んでしまい位置決め等の取り扱いが困難になってしまう。そこで、絶縁部材のうち少なくとも1つは硬質性の薄膜状樹脂材料を用いれば、面状ヒーターの密着貼り付けに必要な可撓性と柔らかさおよびヒーターの取り扱いや位置決めに必要な適度な剛性を持つことができる。
【0022】
また、薄膜状樹脂材料の表面に金属箔を密着固定させ、その上から電気絶縁性を有する浸透性の高い絶縁インクを金属箔のパターンを覆うように印刷して絶縁性を高め、その後に、表面全体に粘着材を有する同様の薄膜状樹脂材料を圧接して面状ヒーターを構成するようにすれば、通常の粘着のみの場合と比べて便座内部の面状ヒーター周りの水分や湿気の侵入に対する電気的安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施例1)
図1は、便蓋12を開けた状態での暖房便座装置100の斜視図を示す。図2の(a)は図1に示す便座本体3のみの上視図であり、(b)は断面便座本体3のみの正面図である。図3は図2の(a)に示すA−A断面である。
【0024】
図1に示すように、温水洗浄便座2は便器1に取り付けられる。本実施例1で説明を行う温水洗浄便座2は、暖房機能を備えており暖房便座装置100として機能する。人(着座者)が着座する着座面30の後方の後部筺体21には、着座者の局部洗浄を行う機構等が内部に収納されている。後部筐体21の側面には便座本体3の一対のヒンジ部4a,4bが左右両側に設けられ、ヒンジ部4a,4bを中心として便蓋12は回動可能となっている。また、便座本体3には着座者が手動で操作を行う操作部23を着座面横に後部筐体21と一体で備える。操作部23は後部筺体21から一方の側方に延在しており、図示しない制御基板を内部に収納し、上の表面には複数の操作スイッチが設けられる。
【0025】
次に、便座本体3について、図2の(a),(b)を参照して説明する。便座本体3は、着座面30とは反対側の下方左右両側に一対のゴム脚5が設けられており、ゴム脚5は便座本体3の裏面に一体で配置され便器1との緩衝材として機能する。便座本体3は、着座面30を有する樹脂より成る上側部材31と、上側部材31と形状が一致する下側部材32が上下方向に組み合わさって、図2の(b)に示すように両者が接合されている構成となっている。
【0026】
図3に示すように、便座本体3の上側部材31は、便座本体3の内周側には小さな曲率部(凸面)から成る内周上側部材31aを、便座本体3の外周側には小さな曲率部(凸面)と側壁から外周上側部材31bをそれぞれ有し、これらの中間には緩やかな曲率部(凸面)から成る中間上側部材31cを備える。この中間上側部材の緩やかな曲率部は凸面だけでなく緩やかな凸面と凹面の組み合わせでも良い。
【0027】
上側部材31の上方の傾斜面と水平線との成す角度(傾斜角)θは、すわり心地を良くする目的から、図2の(a)に示すA−A断面から後方になるほど大きくなり長手方向の中心線と一致するB−B断面で最大になるように設定するとともに、前方になるほど小さくなって同じく長手方向の中心線と一致するC−C断面付近で最小となるよう或いはやや逆向きの角度に設定されている。便座本体31の上下部材31,32のうち中でも上側部材31は使用者のすわり心地を鑑みて複雑な曲面の組み合わせにより構成され、内部の表面も複雑な曲面となっている。
【0028】
また、図3に示すように内周上側部材31aと外周上側部材31bの先端には各々内周溝36aと外周溝36bが設けられている。面状ヒーター7は、中間上側部材31cから内周上側部材31aへの曲り部、中間上側部材31cから外周上側部材31bへの各曲り部に到達するよう設けられる。次に、下側部材32は、ほぼ平坦な馬蹄形をなしており内周縁には外周溝36aに嵌る内周突起32aを、また外周縁には外周溝36bに嵌る外周突起32bを有している。内周上側部材31aの内周溝36aおよび外周上側部材31bの外周溝36bと対向して内周側と外周側に各々小空間を構成し、その内部には外部からの便座本体3の内部へ水や小便等の侵入を防ぐ為、内周パッキン8aと外周パッキン8bが収納されている。
【0029】
図4に示すように、便座本体3の上側部材31の凹面を成す内側に、馬蹄形の面状ヒーター7が貼付される。面状ヒーター7には内周に設けられる内周切り込み9および外周に設けられる外周切り込み10がそれぞれ等間隔に形成されている。図4に示す上方(着座面30の前方)の便座本体3の前側には、面状ヒーター7の重なり部分11があり、この重なり部11にて面状ヒーター7は所定区間重なりあっている。
【0030】
図5は便座本体3の裏面に貼り付ける面状ヒーター7の構成を示す。面状ヒーター7が便座の内側表面に貼付される側を下面(紙面方向)に、また先端側を上方に配置した状態で便座本体3の上側部材31への貼付け前の状態を示している。
【0031】
面状ヒーター7の外形は、便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形状を呈し、面状ヒーター7の先端部は互いに所定距離だけ離れている。これら左右の先端部の距離は上側部材31の内表面に貼り付けた時に、左右の絶縁シート先端部74の一部は重なり重なり部11(図4)を形成しても発熱体パターン15は重ならない形状に設定されている。図5における矩形鋸歯状の実線は通電時に発熱する発熱体パターン15であり、アルミニウム箔やステンレス箔等の金属薄膜等で形成されている。その表面を図6に示すように2枚の絶縁シートで水密に覆った構成になっている。この面状ヒーター7の内周には、例えば、着座面30の中央の位置から広がる放射状の内周切り込み9が複数等間隔で内周領域71が形成されると共に、外周には同様に放射状の複数の外周切り込み10を等間隔で有する外周領域73が形成されている。
【0032】
これらの内周切り込み9と外周切り込み10との切り込み線の方向が出来るだけ同一直線方向に揃わないようほぼ交互に配列されていると良い。これら内周切り込み9と外周切り込み10とがいずれも延在していない中間領域72が面状ヒーター7の内外周のほぼ中央部に連続的に形成されている。
【0033】
発熱体パターン15は、切り込みのない中間領域72の略中央部を全周に渡って円弧状に配設される中間領域パターン153と、隣り合う2個の内周切り込み9同士の間に中間領域パターン153から内縁75に向かって連続的に延在する矩形状(突出部77となる)を有する内周領域パターン151と、隣り合う2個の外周切り込み10同士の間に中間領域パターン153から外縁76に向かって連続的に延在する矩形状(突出部78となる)を有する外周領域パターン152とで構成され、発熱体パターン15は、外周領域パターン152から内周領域パターン151に連続している。
【0034】
また、発熱体パターン15は、図5に示されるように、着座面30の後方の略中央においてプラスとマイナスの2つの電極16に発熱体パターン15の両端が電気的に接続され、この2つの電極16に対して、後部筐体21内に設けられる発熱制御部より通電を行うことによって発熱して加熱され、着座面30を暖めることができる。
【0035】
図5に示す面状ヒーター7は外形が便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形状を呈する。面状ヒーター7は内周切り込み9と外周切り込み10を内外周の全域に有するので、実際の貼り付けにおいては、これらの切り込み9,10が上側部材31の内周上側部材31aおよび外周上側部材31bの裏面の複雑な曲面形状に添って、適宜に拡がったり折り重なったりすることにより、便座本体3の裏面における内縁および外縁までの広い範囲で張り付けを行うことができるようになっている。
【0036】
面状ヒーター7は、内縁75および外縁76に切り込みのない中間領域72を上側部材31の中央部全周に有するので、便座本体3の裏面に貼り付けを行う場合に垂れ下がることなく、適度な剛性を保持し、便座本体3の凹面形状に合わせて貼ることができ、作業性に優れる。
【0037】
また、面状ヒーター7には前述したように、発熱体パターン15は切り込みのない中間領域72の略中央部を全周に渡って円弧状に配置される中間領域パターン153と、隣り合う2個の内周切り込み9同士の間に中間領域パターン153から内周縁に向かって矩形状に延在する内周領域パターン151と、さらに隣り合う2個の外周切り込み10同士の間に中間領域パターン153から外周縁に向かって矩形状に延在する外周領域パターン152とが形成されているので、着座者が通常着座する便座本体3の着座面30の全表面域にわたって発熱体パターン15の矩形状となった突出部77,78が配置されることで、常に快適な着座温度分布を得ることができる。この場合、1つの矩形状の突出部78は等間隔で設けられた外周切り込み10の間に1個形成されていると共に、内周の突出部77は等間隔で設けられた内周切り込み9の間に1個形成されている。突出部77,78は内外周切り込み9,10のラインに対して平行なラインを有して形成されている。尚、本実施例では内外周切り込み9,10を等間隔で形成したが、これに限定されるものではなく等間隔でなくても良い。また、2つの隣り合う内外周切り込み9,10に対して、突出部77,78がそれぞれ形成されていない箇所があっても良い。
【0038】
面状ヒーター7の先端部においては、後方の右半分または後方左半分から順を追って面状ヒーター7を貼り付けた後、左右の絶縁シート先端部74の一部が重なっても、発熱体パターン15そのものが重なり、皺が発生することのない所定の距離だけ離れた形状となっている。従って、図4に示すように面状ヒーター7を便座本体3の上側部材31の裏面に貼り付けた場合、便座の先端部ではヒーター先端部での発熱体パターン15の変形に伴う抵抗値異常による異常温度上昇を防ぐことが出来る。
【0039】
図6に面状ヒーター7の構成を示す。面状ヒーター7は外側絶縁シート17に発熱体パターン15が接着され、その発熱体パターン15が接着された側に内側絶縁シート18が、強い固着力と高い電気絶縁性を有する内側粘着材19を介して水密に貼り合わされた構造となっている。
【0040】
また、上側部材31の内側凹面に貼り付けられる側である外側絶縁シート17の外表面は強い固着力と高い電気絶縁性を有する外部粘着材20で、外側は剥離紙21が設けられている。この剥離紙21は、外部粘着材20を貼り付け作業の直前まで保護するものである。前述した外側絶縁シート17および内側絶縁シート18は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)等の硬質性樹脂製シートから構成される。また発熱体パターン15は予め前述の樹脂シートの一つに接着したアルミニウム箔またはステンレス箔をエッチング等により所定のパターン形状に仕上げる方法で形成した面状金属箔抵抗体から成る。
【0041】
以上のように、これらの外側絶縁シート17、内側絶縁シート18は硬質性樹脂を採用しているので適度な剛性を有し、前述した面状ヒーター7を便座の凹面形状に合わせて貼り付けた場合に垂れ下がることなく作業性に優れる。
【0042】
また内部粘着材19は高い密着性と電気絶縁性を備えるので、便座のような電解質である水や尿等がかかりやすい環境下でも面状ヒーター7の内部を水密に保持することが出来、使用者に対する電気的安全性を確保することが出来る。
【0043】
また面状ヒーター7が発生した熱を効率良く使用者が着座する上側部材31(図3)に伝達させる為に、外部粘着材20は特に高い熱伝導性を持つことが望ましい。内部粘着材19は面状ヒーター7で発生した熱を内側絶縁シート18を介して上側部材31および下側部材32(図3)で囲われる内部空間に放熱されにくいよう熱伝導性が低いことが望ましい。
【0044】
(実施例2)
図7は本発明の上記した面状ヒーター7の構成を変形した実施例2である。図7は、図5のE−E断面での変形例である。本発明の実施例2にかかる暖房便座装置の全体構成は、図1から図5で示した実施例1における暖房便座装置100と同様であるので、同様な箇所の詳細な説明は省略し、実施例1と異なっている点について主に説明する。
【0045】
実施例2では、面状ヒーター7aは外側絶縁シート17aに発熱体パターン15aが接着され、その発熱体パターン15aの表面に実施例2の一特徴である電気絶縁インク22が印刷(例えば、スクリーン印刷等)されている。この電気絶縁インク22は高い浸透力と高い電気絶縁性を併せ持った顔料から成る。更にその表面を内側絶縁シート18aが内部粘着材19aを介して水密に貼り合わせた構成で、上側部材31の内側凹面に貼り付けられる側である外側絶縁シート17aは、外部粘着材20aと剥離紙21aで構成されている。また外側絶縁シート17a、内側絶縁シート18a、の材質、特性、構造は実施例1と同じである。
【0046】
発熱体パターン15aは実施例1と同じで、予め前述の樹脂シートの一つに接着したアルミニウム箔またはステンレス箔をエッチング等により所定のパターン形状に仕上げる方法で形成した面状金属箔抵抗体から成る。
【0047】
以上、説明したように、電気絶縁インク22は高い浸透力と高い電気絶縁性を併せ持った顔料から成り、外側絶縁シート17aに印刷されたときに外側絶縁シート17aと発熱体パターン15aとの間に形成された微少スキマに浸透し微少空間を充填しながら固着するので、外部からの水や尿等の侵入をより確実に防ぐことが出来る。これにより、従来よりも安全性の高い暖房便座装置100を提供することができる。
【0048】
(実施例3)
図8は本発明の実施例3における暖房便座装置の面状ヒーター7bであり、実施例1の図5の平面図に相当する。本発明の実施例3にかかる暖房便座装置を利用した便座付き便器の全体の構成は、図1から図4で示した前述の本発明の実施例1と同様であるので同じ点についての詳細な説明は省略し、主に異なった点について説明する。
【0049】
図8における面状ヒーター7bは、実施例1の図5に相当するもので、実施例1と同様に便座の内側表面に貼付される側を下面(紙面方向)に、また先端側を上方に配置した状態で便座本体3の上側部材31への貼付け前の状態を示す。
【0050】
面状ヒーター7bの外形形状は便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形状であり、面状ヒーター7bの先端部は所定の距離だけ離れた形状である。これら左右の先端部の距離は上側部材31の内表面に貼り付けた時に、左右の絶縁シート先端部74aの一部は重なっても発熱体パターン15bは重ならないように設定されている。図中の矩形鋸歯状の実線は発熱体パターン15bであり、実施例1と同様金属薄膜等で形成されているもので、その表面を2枚の絶縁シートで水密に覆った構成となっている。この面状ヒーター7bの内周には、内縁から内部に向かう細長い三角形を成す複数の内周切り欠き13を放射状に有する内周領域71aが形成されている。また、外周においては同じく外縁から内部に向かう細長い三角形を成す複数の外周切り欠き14を放射状に有する外周領域73aが形成されている。
【0051】
これらの内周切り欠き13と外周切り欠き14とは、お互いの切り欠きの方向が出来るだけ同一直線方向に揃わないようほぼ交互に配列されていることが好ましい。これら内周切り欠き13と外周切り欠き14とがいずれも延在していない中間領域72aが面状ヒーター7bの中央の位置に連続的に形成されている。
【0052】
発熱体パターン15bは、切り欠きのない中間領域72aの略中央にて連続して円弧状に配置される中間領域パターン153bと、隣り合う2個の内周切り欠き13同士の間に中間領域パターン153bから内周縁に向かって矩形状に延在する内周領域パターン151bと、隣り合う2個の外周切り欠き14同士の間に中間領域パターン153bから外周縁に向かって矩形状に延在する外周領域パターン152bとが形成されている。
【0053】
上記した各領域のパターン151b,152b,153bは共に連続しており、実施例1と同様に図示しない発熱制御部からの通電によって発熱する構成となっている。
【0054】
面状ヒーター7bは、その外形形状を実施例1と同じく便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形状を成し、内周切り欠き13と外周切り欠き14を全周にわたって有するので、実際の貼り付けにおいては、実施例1に示す切り込み線のみの場合に比べてこれらの切り欠き部が上側部材31の内周上側部材31aおよび外周上側部材31b等の複雑な曲面形状に添って一層適宜に拡がったり折り重なったりし易いことから、複雑な凹面形状により適した変形をすることが出来るので、発熱体パターン15bそのものが変形して発生する抵抗値異常による異常温度上昇をより確実に防ぐことが出来る。
【0055】
また面状ヒーター7bの先端部は所定の距離だけ離れた形状を成し、後方から先端部に向かって貼り付けていったとき、左右の絶縁シート先端部74aの一部は重なっても、発熱体パターン15bそのものが重なったり皺が発生することのない適切な距離を有している。
【0056】
また面状ヒーター7bは、切り欠きのない中間領域72aを上側部材31の中央部全周に対応して有しているので貼り付け作業を行う場合に前述の実施例1と同様に適度な剛性を持ち、便座の凹面形状に合わせて貼る作業性に優れている。
【0057】
また更に面状ヒーター7bの発熱体パターン15bには実施例1と同様に、切り欠きのない中間領域72aの中央部を全周に渡って円弧状に配置される中間領域パターン153bと、隣り合う2個の内周切り込み13同士の間に中間領域パターン153bから内周縁に向かってループ状に延在する内周領域パターン151bと、さらに隣り合う2個の外周切り込み14同士の間に中間領域パターン153bから外周縁に向かってループ状に延在する外周領域パターン152bとで構成されているので、使用者が通常着座する全表面域にわたって発熱体パターンが配置されており、使用者は常に快適な着座温度分布を得ることができる。
【0058】
(実施例4)
図9は本発明の実施例4における暖房便座装置の面状ヒーター7cであり、実施例1を示す図5の平面図に相当するものである。本発明の実施例4にかかる暖房便座装置を利用した便座付き便器の全体の構成は、図1から図4で示した実施例1にかかる暖房便座装置を利用した便座付き便器と同様である。
【0059】
面状ヒーター7cは、実施例1と同様に便座の内側表面に貼付される側を下方に、また先端側を上方に配置した便座本体3の上側部材31への貼付け前の状態である。
【0060】
面状ヒーター7cの外形形状は、便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形を呈する。面状ヒーター7cの先端部は発熱体パターン15c同士が所定の距離だけ離れた距離を保つように左右の絶縁シート先端部74bと一体に形成されたV字形状を有するブリッジ部24が直線状の連結部25を介してブリッジ部24の両側から一体で連結されている。これら左右の絶縁シート先端部74bの発熱体パターン15c同士の距離は、上側部材31の内表面に最後まで貼り付けて行った時に、左右の先端部の絶縁シート74bの一部は重なっても発熱体パターン15cは重ならない形状に設定されている。
【0061】
面状ヒーター7cの発熱体パターン15cは、実施例1と同様に金属薄膜等で形成され、その表面を2枚の絶縁シートで水密に覆った構成になっている。この面状ヒーター7cの内周には、内縁から内部に向かう細長い三角形を成す複数の内周切り欠き13aを放射状に有する内周領域71bを形成し、外周においては同じく外縁から内部に向かう細長い三角形を成す複数の外周切り欠き14aを放射状に有する外周領域73bが構成されている。
【0062】
またこれら内周切り欠き13aと外周切り欠き14aとは、お互いの切り欠きの方向が出来るだけ同一直線方向に揃わないようほぼ交互に配列されていると共に、これら内周切り欠き13aと外周切り欠き14aとがいずれも延在していない中間領域72bが面状ヒーター7cの周方向のほぼ中央部に連続的に構成されている。
【0063】
また更に、発熱体パターン15cは切り欠きのない中間領域72bの略中央部を全周に渡って円弧状に配置される中間領域パターン153cと、隣り合う2個の内周切り欠き13a同士の間に中間領域パターン153cから内周縁に向かってループ状に延在する内周領域パターン151cと、隣り合う2個の外周切り欠き14a同士の間に中間領域パターン153cから外周縁に向かってループ状に延在する外周領域パターン152cとで構成されている。
【0064】
面状ヒーター7cは、その外形形状を便座本体3の上側部材31の内側の立体面(凹面)の展開形状を基本とした馬蹄形状で、また内周切り欠き13aと外周切り欠き14aをヒーターの外形形状の全周にわたって有する。これにより面状ヒーター7cの貼り付けにおいては、実施例1に示す切り込み線のみの場合に比べてこれら内外周の切り欠き部13a,14aが、上側部材31の内周上側部材31aおよび外周上側部材31b等の複雑な曲面形状に添って一層適宜に拡がったり折り重なったりし易いことから、複雑な凹面形状により適した変形をすることが出来るので、発熱体パターン15cそのものが変形して発生する抵抗値異常による異常温度上昇を防ぐことが出来る。実施例4では更に貼り付け作業性を高めることを目的としている。即ち先端が左右に開いている馬蹄形に形成された面状ヒーター7cの先端部に絶縁シートに一体に形成された蛇腹状のブリッジ部材24によりフレキシブルに左右が連結されているので、例えば、組み付けの際、面状ヒーター7cを通箱等から取り出して所定の位置に配置する場合に左右が大きく開いてヒーター自身に皺や破れを生じることがない。
【0065】
また、蛇腹状の細くなったブリッジ部材24によりフレキシブルに連結されているので、貼り付けの作業行程にあっては、左右どちらか一方の発熱パターン部を先に貼り付け、その後に、もう一方を貼り付けるような手作業の場合でも、また自動機による左右同時貼り付けにおいても、ヒーターの左右が開き過ぎることがないので安定した貼り付け作業を行うことが出来る。
【0066】
更に、便座の先端部において、発熱体パターン15c同士が所定の距離を保つように左右の絶縁シート先端部74bと一体に形成されたブリッジ部材24により連結されている。この場合、便座の後端から先端側に貼り付けて行った場合に、絶縁シート先端部74bは重なっても発熱体パターン15cは重ならない形状に設定されているので、ヒーター発熱による温度ムラの発生がない。
【0067】
また実施例1と同じく面状ヒーター7cは、切り欠きのない中間領域72bを上側部材31の中央部全周に対応して有しているので貼り付け作業を行う場合に前述の実施例1と同様に適度な剛性を持っているので、便座の凹面形状に合わせて貼って行く作業性に優れる。
【0068】
更に、面状ヒーター7cの発熱体パターン15cには、切り欠きのない中間領域72bの中央部を全周に渡って円弧状に配置される中間領域パターン153cと、隣り合う2個の内周切り込み13a同士の間に中間領域パターン153cから内周縁に向かってループ状に延在する内周領域パターン151cと、さらに隣り合う2個の外周切り込み14a同士の間に中間領域パターン153cから外周縁に向かってループ状に延在する外周領域パターン152cとで構成されているので、使用者が通常着座する全表面域にわたって発熱体パターンが配置されており、使用者は常に快適な着座温度分布を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1において便蓋を開いた状態での暖房便座装置の斜視図を示す。
【図2】(a)は図1に示す便座本体のみの上視図であり、(b)は便座本体のみの正面図を示す。
【図3】図2の(a)でのA−A断面図である。
【図4】図2の(b)に示す上側部材の裏面から見た平面図を示す。
【図5】図1に示す便座本体に貼付する発熱体パターンの形状を示す便座本体の裏面から見た部分透視図を示す。
【図6】面状ヒーターの構成を示す断面図を示す。
【図7】図6に示す面状ヒーターの発熱体パターンを電気絶縁インクで覆った実施例2を示す。
【図8】本発明の実施例3における面状ヒーターの平面図を示す。
【図9】本発明の実施例4における面状ヒーターの平面図を示す。
【符号の説明】
【0070】
1 便器
2 温水洗浄便座
3 便座本体
7,7a,7b,7c 面状ヒーター
9 内周切り込み
10 外周切り込み
13,13a 内周切り欠き
14,14a 外周切り欠き
15,15a,15b,15c 発熱体パターン(発熱体)
16 電極
17、17a 外側絶縁シート(絶縁部材)
18、18a 内側絶縁シート(絶縁部材)
19、19a 内部粘着材
20、20a 外部粘着材
22 絶縁インク
30 着座面
31 上側部材
32 下側部材
71,71a,71b 内周領域
72,72a,72b 中間領域
73,73a,73b 外周領域
75 内周縁(内縁)
76 外周縁(外縁)
77,78 突出部
100 暖房便座装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と該発熱体に対して絶縁を行う絶縁部材を有し、前記発熱体に通電を行うことにより着座者が着座する前記便座本体の暖房を行う面状ヒーターを前記便座本体の裏面に備えた暖房便座装置において、
前記面状ヒーターは、前記便座本体の中央に位置する中間領域と、該中間領域と前記便座本体の内縁との間の内周領域と、前記中間領域と前記便座本体の外縁との外周領域とに連続した前記発熱体が配設され、前記内周領域と前記外周領域には複数の放射状の内周切り込みと外周切り込みが形成されると共に、前記発熱体は前記中間領域から前記内周領域および前記外周領域に対して突出した突出部を有することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記突出部は矩形状を呈し、前記発熱体は前記中間領域でつながっていることを特徴とする請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記突出部は、隣り合う前記外周切り込みの間に設けられると共に、隣り合う前記内周切り込みの間に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記発熱体は、前記便座本体の着座面の後方においても放射状に突出部が延在していることを特徴とする請求項1乃至3の少なくともいずれか一項に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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