説明

暖房便座装置

【課題】便座の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止させることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座と、前記便座の上方を覆うことができる便蓋と、前記便座および便蓋を支持するとともに前記便座を加熱するための電流を出力する支持体と、を備え、前記便座は、誘導加熱により発熱する導電体を有し、前記支持体は、前記電流を加熱用通電パターンに基づいて出力する第1の制御部を有し、前記便座および便蓋のいずれかは、前記誘導加熱のための磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記電流を高周波電流に変換して前記誘導加熱コイルに供給するとともに前記電流の通電パターンが前記加熱用通電パターンとは異なることを識別した場合に前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を停止する制御を実行する誘導加熱制御部と、を有することを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設置される便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、PP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂で形成されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷たさを感じる場合がある。これに対して、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置について、省エネルギー化を図るための提案がなされている。
【0003】
例えば、誘導加熱を便座の暖房に利用した暖房便座装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された暖房便座装置は、誘導加熱により瞬間的に便座を暖房できる。しかしながら、誘導加熱を利用した暖房便座装置は、電流の通電を制御する制御部に異常が生ずると誘導加熱を制御することができない。そのため、便座の温度が異常温度に到達するおそれがある。
【0004】
これに対して、通電制御開始から所定時間経過後に通電を遮断する通電遮断装置を備えた暖房便座装置が開示されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に開示された暖房便座装置では、便座の温度が適温を超えて異常温度に達した後に通電遮断装置が通電を遮断し、使用者が快適に便座に座ることができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−18114号公報
【特許文献2】特開2003−219983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止させることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、便座と、前記便座の上方を覆うことができる便蓋と、前記便座および便蓋を支持するとともに前記便座を加熱するための電流を出力する支持体と、を備え、前記便座は、誘導加熱により発熱する導電体を有し、前記支持体は、前記電流を加熱用通電パターンに基づいて出力する第1の制御部を有し、前記便座および便蓋のいずれかは、前記誘導加熱のための磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記電流を高周波電流に変換して前記誘導加熱コイルに供給するとともに前記電流の通電パターンが前記加熱用通電パターンとは異なることを識別した場合に前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を停止する制御を実行する誘導加熱制御部と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0008】
この暖房便座装置によれば、誘導加熱制御部は、便座を加熱するための電流の通電パターンを検知し、電流の通電パターンが加熱用通電パターンとは異なることを識別した場合に誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止する制御を実行する。これにより、便座の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止することができる。また、電流を加熱用通電パターンに基づいて出力する第1の制御部に異常が生じた場合でも、誘導加熱制御部は、誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止することにより誘導加熱を停止することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記加熱用通電パターンは、前記電流が連続通電されるときの通電パターンとは異なり、前記誘導加熱制御部は、前記第1の制御部から出力される電流の通電パターンが前記連続通電されるときの通電パターンである場合には、前記高周波電流の供給を停止することを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、加熱用通電パターンは、電流が連続通電されるときの通電パターンとは異なる。そのため、誘導加熱制御部は、第1の制御部から出力される電流の通電パターンが連続通電されるときの通電パターンとは異なることを確実に識別することができる。これにより、第1の制御部に異常が生じた場合でも、誘導加熱制御部は、誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止することにより誘導加熱を停止することができる。
【0011】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記加熱用通電パターンは、前記誘導加熱を制御する単位時間中の所定のタイミングで前記電流が非通電となる通電パターンであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、加熱用通電パターンは、誘導加熱を制御する単位時間中の所定のタイミングで電流が非通電となる通電パターンである。つまり、第1の制御部は、非通電となる時間を設けるだけの通電の制御を実行することで加熱用通電パターンを形成する。そのため、電流の通電の制御がより容易となる。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記誘導加熱制御部は、前記電流を前記高周波電流に変換する発振制御部と、前記発振制御部の作動を制御する第2の制御部と、前記電流の通電パターンが前記加熱用通電パターンとは異なることを識別すると前記第2の制御部により前記発振制御部の作動を停止させる通電パターン識別部と、を有することを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、通電パターン識別部は、電流の通電パターンが加熱用通電パターンとは異なることを識別すると第2の制御部により発振制御部の作動を停止させ、誘導加熱コイルへの高周波電流の供給を停止する。これにより、異常な通電が生じた場合には誘導加熱を停止することができ、より簡単な回路構成で安全性を高めることができる。
【0015】
また、第5の発明は、第4の発明において、前記第2の制御部は、前記高周波電流の1パルスあたりのオン時間を調整可能とされて、前記通電パターン認識部の出力に応じて前記オン時間を設定することを特徴とする暖房便座装置である。
【0016】
この暖房便座装置によれば、第2の制御部は、高周波電流の1パルスあたりのオン時間を調整することができる。これにより、第2の制御部は、通電パターンの違いを利用して誘導加熱出力の大きさを制御することができる。
【0017】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記便座は、電気抵抗により発熱するヒータをさらに有し、前記誘導加熱コイルおよび誘導加熱制御部およびヒータは、前記便座の内部に設けられ、前記電流は、前記便座の内部で前記誘導加熱コイルと前記ヒータとに分配して供給されることを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、電流は、便座の内部で誘導加熱コイルとヒータとに分配して供給される。そのため、便座への電力供給線を一系統にすることができ、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、便座の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止させることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図3】本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
【図4】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の他の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図7】本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
なお、図2(a)は、本実施形態にかかる暖房便座装置を上方から眺めた平面模式図であり、図2(b)は、図2(a)に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【0022】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング(支持体)400と、便座200と、便蓋300と、を有する。ケーシング400は、便座200および便蓋300を支持している。具体的には、便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0023】
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、第1の制御部410が設けられている。一方、便座200の内部には、誘導加熱制御部250が設けられている。
【0024】
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。本実施形態の筐体210は中空であり、例えば樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0025】
便座200の筐体210の内部には、高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222が設けられている。図2(b)に表した便座200では、誘導加熱コイル222は、便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されている。但し、誘導加熱コイル222の設置形態は、これだけに限定されず、誘導加熱コイル222は、便座200の内部に設けられた図示しない支持体により支持されていてもよい。
【0026】
便座200には、誘導加熱コイル222から発生した磁界により誘導加熱される導電体231が設けられている。より具体的には、導電体231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0027】
導電体231としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0028】
第1の制御部410は、誘導加熱の電源となる電流すなわち便座200を加熱するための電流(電源電流)の通電を制御する。誘導加熱制御部250は、電源電流の高周波電流への変換を制御する。そして、誘導加熱制御部250は、電源電流を変換した高周波電流であって誘導加熱コイル222に供給する高周波電流を制御する。
【0029】
本実施形態によれば、暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、待機時の消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることができる。
なお、誘導加熱コイル222と誘導加熱制御部250とを、便蓋300の内部に設けて、便座200に設けた導電体231を誘導加熱してもよい。
【0030】
また、誘導加熱制御部250は、電源電流の通電パターンを検知し、誘導加熱コイル222への電流供給の状態が異常であるか否かを判定する。誘導加熱制御部250は、電源電流の通電パターンの異常を識別した場合、すなわち誘導加熱コイル222への電流供給の状態が異常であることを識別した場合には、高周波電流の供給を停止する。そのため、本実施形態によれば、例えば第1の制御部410に異常が生じた場合でも、便座200の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止することができる。これについて、図面を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0031】
図3は、本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
また、図4は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
【0032】
例えば、ケーシング400内には、第1の制御部410と、誘導加熱コイル通電スイッチ421と、第1のゼロクロス検出部431と、が設けられている。第1の制御部410、誘導加熱コイル通電スイッチ421、および第1のゼロクロス検出部431には、商用電源10が接続されている。第1のゼロクロス検出部431は、図4(a)に表したような商用電源10のON(オン)/OFF(オフ)の切り替えの際に交流電圧のゼロ地点(ゼロクロス点)の通過を検出する。そして、第1のゼロクロス検出部431は、検出したゼロクロス点の検出信号を第1の制御部410へ送信する。
【0033】
第1の制御部410は、第1のゼロクロス検出部431から送られた検出信号によって、例えば図4(b)に表したような加熱用通電パターンを形成する。なお、第1の制御部410が形成する加熱用通電パターンは、図4(b)に例示した加熱用通電パターンに限定されるわけではなく、商用電流の通電パターンとの識別が可能な通電パターンであればよい。また、第1の制御部410は、誘導加熱を実行する際に、複数の加熱用通電パターンを形成してもよい。第1の制御部410は、形成した加熱用通電パターンに基づいて電源電流を出力するように誘導加熱コイル通電スイッチ421へ制御信号を送る。つまり、第1の制御部410は、形成した加熱用通電パターンに基づいて出力する電源電流の通電を制御する。誘導加熱コイル通電スイッチ421は、第1の制御部410から送られた制御信号によって誘導加熱コイル222への通電のオン/オフを制御する。
【0034】
便座200内には、高周波電源回路500と、誘導加熱制御部250と、が設けられている。高周波電源回路500は、高周波電流を生成し誘導加熱コイル222にその高周波電流を供給する。高周波電源回路500は、整流部510と、平滑部530と、共振回路540と、インバータ550と、を有する。
【0035】
整流部510は、図4(d)に表したように、商用電源10から供給される電流を整流する。平滑部530は、整流部510により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する。平滑部530は、高周波に対して高インピーダンスとなって商用電源10側にノイズが伝達するのを防止する平滑コイル531と、インバータ550に流れる高周波電流を供給する平滑コンデンサ533と、を有する。
【0036】
共振回路540は、誘導加熱コイル222と、共振コンデンサ541と、を有する。インバータ550は、スイッチング素子551を有し、共振回路540に供給する電力を制御する。スイッチング素子551には、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)が用いられる。
【0037】
誘導加熱制御部250は、第2のゼロクロス検出部251と、通電パターン識別部253と、第2の制御部255と、発振制御部257と、を有する。図4(c)に表したように、第2のゼロクロス検出部251は、ケーシング400から出力された電源電流の通電パターンのゼロクロス点の通過を検出する。第2のゼロクロス検出部251は、検出したゼロクロス点の検出信号を通電パターン識別部253へ送信する。
【0038】
通電パターン識別部253は、第2のゼロクロス検出部251から送られた検出信号に基づいて、ケーシング400から出力された電源電流の通電パターンが異常であるか否かを判定する。通電パターン識別部253は、判定信号を第2の制御部255へ送信する。第2の制御部255は、通電パターン識別部253から送られた識別信号に基づいて発振制御部257へ制御信号を送信し、発振制御部257の作動を制御する。発振制御部257は、第2の制御部255から送られた制御信号および共振回路540の電圧の変化に基づいてスイッチング素子551のオン/オフを制御する。言い換えれば、発振制御部257は、第2の制御部255から送られた制御信号および共振回路540の電圧の変化に基づいて電源電流を高周波電流に変換し、誘導加熱コイル222に供給する高周波電流を制御する。
【0039】
また、便座200内には、便座200の温度を検知する第1および第2のサーミスタ259、261が設けられている。第1のサーミスタ259は、第2の制御部255に接続されている。第1のサーミスタ259は、便座200の温度を検知する。第2の制御部255は、第1のサーミスタ259で検知した便座200の温度の情報を一つの条件として、発振制御部257を介してスイッチング素子551のオン/オフを制御することができる。これにより、第2の制御部255は、便座200の加熱時間や加熱特性、あるいは高周波電源回路500の動作/停止を制御することができる。
【0040】
第2のサーミスタ261は、第1の制御部410に接続されている。第1の制御部410は、第2のサーミスタ261で検知した便座200の温度の情報を一つの条件として誘導加熱コイル通電スイッチ421を制御することができる。
【0041】
前述したように、第2の制御部255は、発振制御部257に動作指示を行ってスイッチング素子551のオン/オフを制御する。発振制御部257の動作は、次のようになる。
【0042】
まず、発振制御部257がスイッチング素子551をオン状態に制御すると、商用電源10から供給された電流は、整流部510により整流され、平滑部530により平滑化され、誘導加熱コイル222に流れる。電流が誘導加熱コイル222に流れると、誘導加熱コイル222に磁気エネルギーが溜まる。続いて、発振制御部257がスイッチング素子551をオフ状態に制御すると、商用電源10からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル222に溜められたエネルギーが共振コンデンサ541へ静電エネルギーとして移動する。その後、再び共振コンデンサ541から誘導加熱コイル222へエネルギーが戻り、共振する。この共振動作の途中で、発振制御部257によってスイッチング素子551が再びオン状態に制御されると、誘導加熱コイル222に磁気エネルギーが補充される。これらの動作を繰り返して共振を継続させる。
【0043】
このように、発振制御部257がスイッチング素子551のオン状態とオフ状態とを切り替え制御することにより、誘導加熱コイル222および共振コンデンサ541において共振が発生し、高周波電流が生成される。高周波電流は、誘導加熱コイル222へ供給される。誘導加熱コイル222は、供給された高周波電流によって高周波磁界を発生する。この高周波磁界によって導電体231に渦電流が発生し、導電体231が発熱する。以上の動作により、例えば、図示しない入室検知センサが使用者の入室を検知すると、第2の制御部255は、誘導加熱コイル222への通電を制御し便座200を急速に加熱することができる。そのため、使用者が便座200に座った際に冷たさを感じさせないような適温にすることができる。
【0044】
ここで、例えば誘導加熱制御部250のうち第2のゼロクロス検出部251、通電パターン識別部253、第2の制御部255が設けられていない場合において第1の制御部410に異常が生ずると、第1の制御部410は、誘導加熱を制御できない場合がある。例えば、ケーシング400から出力される電源電流の通電が継続され、導電体231が発熱し続ける場合がある。そうすると、便座200の温度が異常温度に到達するおそれがある。
【0045】
これに対して、本実施形態の便座200の内部には誘導加熱制御部250が設けられている。誘導加熱制御部250が有する通電パターン識別部253は、第2のゼロクロス検出部251から送られた検出信号に基づいて電源電流の通電パターンが加熱用通電パターンとは異なることを識別すると電源電流の通電パターンが異常であると判定する。そして、通電パターン識別部253は、第2の制御部255により発振制御部257の作動を停止させ、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を停止する。
【0046】
次に、誘導加熱の制御について、図4に表した具体例を参照しつつ説明すると、まず、第1の制御部410は、第1のゼロクロス検出部431から送られた検出信号によって加熱用通電パターンを形成する。本具体例では、第1の制御部410は、誘導加熱を制御する単位時間中(図4(b)に表した加熱用通電パターン(1)〜(8)の間の時間中)の所定のタイミングで電源電流が非通電となる時間(非通電時間)を有する加熱用通電パターンを形成する。この非通電時間帯は、商用電源10が出力する電流の一つ又は複数のゼロクロス点を含んだ時間帯である。具体的には、図4(b)の「正常」時に表したように、第1の制御部410は、誘導加熱を制御する単位時間のうち商用電源10から出力された電流の8周期に1周期の割合で非通電時間を有する加熱用通電パターンを形成する。
【0047】
図4(c)に表したように、第2のゼロクロス検出部251は、電源電流の通電パターンのゼロクロス点の通過を検出する。また、図4(d)に表したように、整流部510は、電源電流を整流する。そして、通電パターン識別部253は、第2のゼロクロス検出部251から送られた検出信号に基づいて、電源電流が出力されているか否かを判定する(タイミングt1〜t2)。より具体的には、通電パターン識別部253は、電源電流の出力開始からゼロクロス点が3回継続すると電源電流が出力されていると判定する。
【0048】
電源電流の出力を通電パターン識別部253が判定した場合には、図4(e)に表したように、第2の制御部255は、発振制御部257の作動を開始する(タイミングt2)。これにより、誘導加熱コイル222への高周波電流(誘導加熱電流)の供給が開始され、誘導加熱の実行が開始される(タイミングt2)。
【0049】
続いて、通電パターン識別部253は、第2のゼロクロス検出部251から送られた検出信号に基づいて、電源電流の通電パターンが加熱用通電パターンと異なるか否かを判定する。前述したように、第1の制御部410は、誘導加熱を制御する単位時間のうち商用電源10から出力される電流の8周期に1周期の割合で非通電時間を有する加熱用通電パターンで電源電流を出力する。そのため、第1の制御部410や誘導加熱コイル通電スイッチ421などに異常が生じていない場合には、第2のゼロクロス検出部251は、誘導加熱を制御する単位時間中に15回のゼロクロス点(図4(c)に表したタイミングt1〜t3の間のゼロクロス点(1)〜(15))の通過を検出し、非通電時間中(タイミングt3〜t4)はゼロクロス点の通過を検出しない。
【0050】
この場合には、通電パターン識別部253は、電源電流の通電パターンが加熱用通電パターンとは異ならないことを識別する。そして、第2の制御部255は、発振制御部257の作動を継続させる。
【0051】
一方、第1の制御部410や誘導加熱コイル通電スイッチ421などに異常が生ずると、ケーシング400から出力される電源電流が継続される場合がある。その場合、第1の制御部410や誘導加熱コイル通電スイッチ421が異常であるから、第1の制御部410は、加熱用通電パターンを形成できずに電源電流を加熱用通電パターンで出力することができなくなる場合がある。そうすると、第2のゼロクロス検出部251は、誘導加熱を制御する単位時間中に連続して16回のゼロクロス点(図4(c)に表したタイミングt4〜t6の間のゼロクロス点(1)〜(16))の通過を検出する。つまり、通電パターン識別部253は、電流供給が正常に行われていればゼロクロス点を検出できない時間帯(タイミングt5〜t6)においてゼロクロス点を検出したとの検出信号によって、電源電流の通電パターンが第1の制御部410により形成された加熱用通電パターンとは異なることを識別する。
なお、通電パターン識別部253は、電源電流の通電パターンが加熱用通電パターンとは異なることを、複数の単位時間分連続して識別した場合、例えば、ゼロクロス点を複数の単位時間分連続して検出した場合に、電源電流の供給状態が異常であると判断するのが好ましい。
【0052】
この場合には、通電パターン識別部253は、電源電流の通電パターンの異常を識別する。そして、第2の制御部255は、発振制御部257の作動を停止する(タイミングt6)。これにより、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が停止し、誘導加熱の実行が停止する(タイミングt6)。
【0053】
本実施形態によれば、通電パターン識別部253は、誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する高周波電源回路500への通電状態が異常であることを識別するので、第1の制御部410や誘導加熱コイル通電スイッチ421などに異常が生じた場合でも、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を停止することができる。誘導加熱コイル222への高周波電流の供給が停止すると、誘導加熱コイル222は、磁界を高周波で発生することができない。そうすると、導電体231には渦電流が発生せず、導電体231は発熱できない。これにより、便座200の温度が異常温度に到達する前に誘導加熱を停止することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第1の制御部410は、電源電流が連続通電されるときの通電パターンとは識別可能な加熱用通電パターンを形成する。つまり、前述したように、第1の制御部410は、誘導加熱を制御する単位時間中の所定のタイミングで、一つ又は複数のゼロクロス点を含んだ非通電時間を有する加熱用通電パターンを形成する。そのため、通電パターン識別部253は、電源電流の通電パターンが連続通電されるときの通電パターンとは異なることを確実に識別することができる。これにより、第1の制御部410に異常が生じて加熱用通電パターンを作り出すことができない場合でも、誘導加熱コイル222への高周波電流の供給を停止することができる。また、第1の制御部410は、非通電時間を有する加熱用通電パターンを形成する。つまり、第1の制御部410は、非通電時間を設けるだけの通電の制御を実行することで加熱用通電パターンを形成する。そのため、電源電流の通電の制御がより容易となる。さらに、より簡単な回路構成で安全性を高めることができる。
【0055】
図5は、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の他の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
図5(a)に表したように、発振制御部257がスイッチング素子551をオン状態に制御すると、誘導加熱コイル222に流れるコイル電流Iが増加する(タイミングt101)。これにより、誘導加熱コイル222に磁気エネルギーが溜まる。続いて、発振制御部257がスイッチング素子551をオフ状態に制御すると、誘導加熱コイル222に溜められた磁気エネルギーが共振コンデンサ541へ静電エネルギーとして移動する(タイミングt102)。そのため、共振電圧VCEは増加する。なお、共振電圧VCEは、スイッチング素子551の両端にかかる電圧である。
【0056】
続いて、コイル電流Iがゼロとなり逆方向に流れ始めると、共振電圧VCEは減少し始める(タイミングt103)。つまり、共振コンデンサ541の放電が始まる。そして、共振電圧VCEは、共振回路540の入力電圧(図5(a)に表した破線参照)を基準として振動しようとするが、例えばスイッチング素子551に内蔵されたフライホイール・ダイオードなどによりクランプされているためほぼゼロのままとなる(タイミングt104)。また、以上の動作中に導電体231に渦電流が発生し、導電体231が発熱するため、共振エネルギーは減衰していく。
【0057】
これに対して、コイル電流Iが再び増加し始めるときに、発振制御部257は、スイッチング素子551をオン状態に制御する(タイミングt105)。これにより、誘導加熱コイル222にエネルギーが再び溜まる。
【0058】
このように、誘導加熱コイル(L)222と、共振コンデンサ(C)541と、導電体(R)231と、によるLCR共振動作で、導電体231は発熱している。そのため、共振動作のエネルギーを制御することにより誘導加熱出力を制御することができる。共振動作のエネルギーは、振動振幅(電流振幅)と、周波数と、で決まる。そのため、第2の制御部255は、高周波電流の1パルスあたりのスイッチング素子551のオン状態の時間(オン時間)を調整して振動振幅あるいは周波数を制御することにより誘導加熱出力を制御することができる。
【0059】
図5(b)を参照しつつ、誘導加熱出力を低減させる場合を例に挙げて説明する。
図5(a)および図5(b)に表したように、第2の制御部255の指示により発振制御部257が高周波電流の1パルスあたりのスイッチング素子551のオン時間を短くすると、コイル電流Iの振動振幅は小さくなる。つまり、図5(b)に表した動作におけるコイル電流Iの振動振幅は、図5(a)に表した動作におけるコイル電流Iの振動振幅よりも小さい。
【0060】
そのため、図5(b)に表した動作における共振電圧VCEの共振振幅は、図5(a)に表した動作における共振電圧VCEの共振振幅よりも小さくなる。また、図5(b)に表した動作における共振エネルギーは、図5(a)に表した動作における共振エネルギーよりも小さくなる。これにより、第2の制御部255は、高周波電流の1パルスあたりのスイッチング素子551のオン時間を調整することで誘導加熱出力を制御することができる。
【0061】
また、第2の制御部255は、図5(b)に表したように高周波電流の1パルスあたりのスイッチング素子551のオン時間を短くし誘導加熱出力を抑えることで、便座200の着座面を保温することもできる。また、第2の制御部255には第1のサーミスタ259が接続されている。そのため、第2の制御部255は、第1のサーミスタ259を用いてフィードバック制御を行うことにより、高周波電流の1パルスあたりのスイッチング素子551のオン時間を調整することもできる。
【0062】
次に、本発明の他の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の他の実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
なお、図6(a)は、本実施形態にかかる暖房便座装置を上方から眺めた平面模式図であり、図6(b)は、図6(a)に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0063】
本実施形態にかかる暖房便座装置100aの便座200aの内部には、図2に関して前述した便座200に対して、ヒータ241と、熱伝導体243と、がさらに設けられている。誘導加熱コイル222は、便座200aの筐体210の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていている。
【0064】
ヒータ241は、誘導加熱コイル222からみて導電体231とは反対側に配置されている。言い換えれば、ヒータ241は、導電体231からみて誘導加熱コイル222よりも遠い位置に配置されている。
ヒータ241は、通電されて発熱することにより便座200aの着座面を保温あるいは加熱することができる。ヒータ241は、通電される電流と、ヒータ241自身が有する電気抵抗と、により熱(ジュール熱)を発生することができる。このようなヒータ241としては、例えば「チューブヒータ」や、「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などを用いることができる。
【0065】
熱伝導体243は、ヒータ241が発熱した熱を着座面の全体に略均一に広げることができる。また、熱伝導体243は、誘導加熱コイル222とヒータ241との間に設けられ、誘導加熱コイル222とヒータ241とを絶縁する機能を有する。
本実施形態にかかる暖房便座装置100aのその他の構造は、図1および図2に関して前述した暖房便座装置100の構造と同様である。
【0066】
図7は、本実施形態にかかる暖房便座装置の回路図である。
図6に関して前述したように、便座200aの内部には、電気抵抗により発熱するヒータ241が設けられている。誘導加熱コイル222とヒータ241との回路は、便座200aの内部において分岐している。つまり、第1の制御部410が通電を制御する電源電流は、便座200aの内部で誘導加熱コイル222とヒータ241とに分配して供給される。
【0067】
第2のサーミスタ261は、第1の制御部410に接続されている。第2のサーミスタ261は、便座200aの温度を検知する。第1の制御部410は、第2のサーミスタ261で検知した便座200aの温度の情報を一つの条件として誘導加熱コイル通電スイッチ421を制御することができる。これにより、ヒータ241への通電が制御される。その他の回路構成は、図3に関して前述した回路構成と同様である。
【0068】
本実施形態によれば、ケーシング400から出力された電源電流は、便座200aの内部で誘導加熱コイル222とヒータ241とに分配される。そのため、便座200aへの電力供給線221を一系統にすることができる。また、ヒータ241としては、出力が比較的低いヒータを選択することができる。
【0069】
これにより、比較的細い電力供給線221を使用することができ、電力供給線221の配線作業の効率化を図ることができる。また、電力供給線221を一系統にすることができるため、コストダウンを図ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、暖房便座装置100、100aなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや誘導加熱コイル222やヒータ241や導電体231の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
10 商用電源、 100、100a 暖房便座装置、 200、200a 便座、 210 筐体、 210a 上面、 221 電力供給線、 222 誘導加熱コイル、 231 導電体、 241 ヒータ、 243 熱伝導体、 250 誘導加熱制御部、 251 第2のゼロクロス検出部、 253 通電パターン識別部、 255 第2の制御部、 257 発振制御部、 259 第1のサーミスタ、 261 第2のサーミスタ、 300 便蓋、 400 ケーシング、 410 第1の制御部、 421 誘導加熱コイル通電スイッチ、 431 第1のゼロクロス検出部、 500 高周波電源回路、 510 整流部、 530 平滑部、 531 平滑コイル、 533 平滑コンデンサ、 540 共振回路、 541 共振コンデンサ、 550 インバータ、 551 スイッチング素子、 800 洋式腰掛便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
前記便座の上方を覆うことができる便蓋と、
前記便座および便蓋を支持するとともに前記便座を加熱するための電流を出力する支持体と、
を備え、
前記便座は、誘導加熱により発熱する導電体を有し、
前記支持体は、前記電流を加熱用通電パターンに基づいて出力する第1の制御部を有し、
前記便座および便蓋のいずれかは、前記誘導加熱のための磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記電流を高周波電流に変換して前記誘導加熱コイルに供給するとともに前記電流の通電パターンが前記加熱用通電パターンとは異なることを識別した場合に前記誘導加熱コイルへの前記高周波電流の供給を停止する制御を実行する誘導加熱制御部と、を有することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記加熱用通電パターンは、前記電流が連続通電されるときの通電パターンとは異なり、
前記誘導加熱制御部は、前記第1の制御部から出力される電流の通電パターンが前記連続通電されるときの通電パターンである場合には、前記高周波電流の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記加熱用通電パターンは、前記誘導加熱を制御する単位時間中の所定のタイミングで前記電流が非通電となる通電パターンであることを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記誘導加熱制御部は、
前記電流を前記高周波電流に変換する発振制御部と、
前記発振制御部の作動を制御する第2の制御部と、
前記電流の通電パターンが前記加熱用通電パターンとは異なることを識別すると前記第2の制御部により前記発振制御部の作動を停止させる通電パターン識別部と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記第2の制御部は、前記高周波電流の1パルスあたりのオン時間を調整可能とされて、前記通電パターン認識部の出力に応じて前記オン時間を設定することを特徴とする請求項4記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記便座は、電気抵抗により発熱するヒータをさらに有し、
前記誘導加熱コイルおよび誘導加熱制御部およびヒータは、前記便座の内部に設けられ、
前記電流は、前記便座の内部で前記誘導加熱コイルと前記ヒータとに分配して供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−205802(P2012−205802A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74196(P2011−74196)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】