説明

暖房制御システム

【課題】端末センサ機器1で部屋の温度を計測しながら制御機器2により部屋に設置したヒータ3のオン/オフ制御を行う暖房制御システムにおいて、端末センサ機器1の電池の消耗を低減する。
【解決手段】制御機器2で、端末センサ機器1から受信したセンサ温度が設定温度を上回るとヒータ3をオフし、受信したセンサ温度が設定温度を下回るとヒータ3をオンする。端末センサ機器1において、スリープ時間経過毎の間欠動作により温度の計測を行うとともに、計測したセンサ温度と設定温度との温度差が大きいときはスリープ時間を基本間隔よりも長くする。計測したセンサ温度が、設定温度に対する所定の条件を満足したときに制御機器2に対してセンサ温度を無線送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末センサ機器で部屋の温度を計測しながら制御機器により部屋に設置したヒータのオン/オフ制御を行う暖房制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、暖房制御システムとして、ヒータのオン/オフ制御を行う制御機器と、部屋の温度を計測する端末センサ機器との間で無線通信を行うものが考えられている。このような無線ネットワークを構築する際、端末センサ機器を電池駆動で動作させることにより端末センサ機器の設置場所の制限を無くすことができる。端末センサ機器を動作させる電池には寿命があり、電池の消費を抑えて端末センサ機器の使用期間を延ばすことが重要になる。
【0003】
無線ネットワークにおいて、無線端末を省電力化するものとして、例えば特開2009−206749号公報(特許文献1)にマルチホップ無線ネットワークシステムが開示されている。このシステムは、制御端末からの制御命令に基づいて、全端末が既定のタイミングによりスリープモードに移行し、既定時間経過後にスリープモードから復帰して制御端末に応答することで、全端末の省電力化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−206749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記端末センサ機器はマイコンにより動作するが、マイコンを休止状態(スリープモード)からスキャン間隔毎に動作状態とさせ、このような間欠動作により温度の計測および無線通信を行うことにより、電池寿命を延ばすことが考えられる。しかしながら、ヒータのオン/オフ制御に部屋の温度を管理するような場合、部屋の温度は極端な早さで変化することはない。したがって、このような環境では所定のスキャン間隔で動作するだけでは、温度計測や無線通信に実質的に無駄な動作が含まれており、依然改良の余地がある。
【0006】
本発明は、電池駆動で動作する端末センサ機器を有する暖房制御システムにおいて、さらなる省電力化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の暖房制御システムは、温度のデータを受信する無線通信手段を備え、該受信した温度に基づいて部屋に設置したヒータのオン/オフ制御を行う制御機器と、動作用電源としての電池を内蔵し、温度センサにより前記部屋の温度を計測して該計測した温度のデータを送信する無線通信手段を備えた端末センサ機器とからなる暖房制御システムであって、前記制御機器は、受信した温度が予め設定した設定温度を上回ったときに前記ヒータをオフし、受信した温度が前記設定温度を下回ったときに前記ヒータをオンするようにオン/オフ制御を行い、前記端末センサ機器は、間欠動作により前記温度の計測を行うとともに、計測した温度と予め設定されている前記設定温度との温度差の絶対値が大きいほど前記間欠動作の間隔を長くし、計測した温度が、前記設定温度に対する所定の条件を満足したときに前記制御機器に対して計測した温度を送信することを特徴とする。
【0008】
請求項2の暖房制御システムは、請求項1に記載の暖房制御システムであって、前記端末センサ機器に、前記設定温度を下限とする所定の温度幅を有するDiff領域が設定され、前記所定の条件は、前記計測した温度が前記Diff領域を下回ったとき、及び、前記計測した温度が前記Diff領域を上回ったとき、とすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の暖房制御システムは、請求項1または請求項2に記載の暖房制御システムであって、前記端末センサ機器に、前記設定温度を下限とする所定の温度幅を有するDiff領域と、前記設定温度を上限とする所定の温度幅を有するA領域と、前記Diff領域の高温側と前記A領域の低温側にてそれぞれ所定の温度幅を有するB領域とが設定され、前記間欠動作の間隔について、基本間隔をΔtとしたときに、計測した温度が前記Diff領域またはA領域にあるときはΔt毎に温度の計測値を収集し、計測した温度が前記B領域にあるときは2Δt毎に計測値を収集し、計測した温度がDiff領域、A領域及びB領域以外にあるときは3Δt毎に計測値を収集することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
制御機器によりヒータのオン/オフ制御を行う際に、部屋の温度が設定温度に近くなると、ヒータをオン状態からオフ状態へあるいはオフ状態からオン状態へ切り換える必要がある。しかしながら、部屋の温度が設定温度より充分高いときにはヒータがオフ状態でありオン状態とするには余裕がある。また、部屋の温度が設定温度より充分低いときはヒータがオン状態でありオフ状態とするには余裕がある。したがって、請求項1の暖房制御システムによれば、計測した温度と設定温度との温度差の絶対値が大きいほど間欠動作の間隔を長くし、制御機器によりヒータのオン/オフ制御までに余裕があるときに無駄な間欠動作を行わないので、端末センサ機器の電池の消費を抑えることができ、さらなる省電力化が図れる。
【0011】
請求項2の暖房制御システムによれば、請求項1の効果に加えて、所定の温度幅を有するDiff領域を下回ったときか上回ったときにだけ制御機器に計測した温度を送信するので、無駄な送信動作がなく、さらに省電力化が図れる。
【0012】
請求項3の暖房制御システムによれば、請求項1または請求項2の効果に加えて、間欠動作の間隔がΔt、2Δt、3Δtにより段階的に設定されるので、この間隔の設定処理が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の暖房制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】実施形態の端末センサ機器のブロック図である。
【図3】実施形態の制御機器のブロック図である。
【図4】実施形態に係るフローチャートである。
【図5】実施形態における動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態の暖房制御システムの概略構成を示す図、図2は端末センサ機器のブロック図、図3は制御機器のブロック図である。この暖房制御システムは、例えば2つの部屋にはそれぞれ端末センサ機器1,1が設置されており、この端末センサ機器1,1はそれぞれ制御機器2との間で信号の無線通信を行う。制御機器2は、2つの部屋にそれぞれ設けられたヒータ3,3のオン/オフ制御を行い、各部屋のそれぞれに対して例えば床暖房を行う。端末センサ機器1,1は電池により動作するので任意の位置に設置できる。
【0015】
以下の説明では、制御機器2に対して1つの端末センサ機器1について説明するが、各端末センサ機器1,1は同じ構造であり、また、各端末センサ機器1,1は制御機器2に対して互いに独立して対等な関係にある。図2に示すように、端末センサ機器1は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)11、温度センサ12、通信手段としての送受信部13、タイマ14(マイコン11に内蔵)、記憶部15及び電池16等から構成されており、この端末センサ機器1は電池16を動作用電源として動作する。
【0016】
図3に示すように、制御機器2は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)21、操作パネル22、通信手段としての送受信部23、記憶部24及び電源回路25等から構成されており、この制御機器2は電源回路25を介した商用電源を動作用電源として動作する。記憶部24には、操作パネル22により設定された設定温度等の各種設定情報が記憶される。なお、送受信部23は後述の端末センサ機器1の送受信部13と同様に送受信を行う回路である。
【0017】
端末センサ機器1において、温度センサ12はサーミスタ等から構成されており、マイコン11は間欠動作により温度センサ12により部屋の温度を計測する。この計測した温度による温度情報を、以下「センサ温度」という。送受信部13は、短距離無線通信規格(例えば数十メートルの送受信距離)でデータを送受信する回路であり、この送信部13からセンサ温度のデータやデータ要求のデータを制御機器2に無線通信する。また、送信部13は、制御機器1から設定値のデータを受信する。タイマ14は間欠動作の間隔であるスリープ時間を計時するものであり、このスリープ時間はマイコン11によって設定される。そして、タイマ14がスリープ時間を計時してタイムアップすると、制御部に対してタイムアップ信号が出力され、間欠動作を行う。記憶部15には設定温度、Diff値、A値およびB値等の各種設定値が記憶される。
【0018】
設定温度は制御機器2から設定された温度情報であり、端末センサ機器1が設置されている部屋の目標温度を示す。Diff値は設定温度を下限とする所定の温度幅を有するDiff領域(不感領域)を設定するための値である。A値およびB値は、Diff値とともに、温度領域を設定する値であり、A値は設定温度を上限とする所定の温度幅を有するA領域を設定するための値である。B値はDiff領域の高温側とA領域の低温側にてそれぞれ所定の温度幅を有するB領域を設定するための値である。
【0019】
そして、端末センサ機器1は、上記スリープ時間を、センサ温度がどの温度領域であるかに応じて切り換える。具体的には、センサ温度がDiff領域またはA領域の場合には、予め決められた基本間隔Δtをスリープ時間として設定する。センサ温度がB領域の場合には、基本間隔Δtの2倍の時間をスリープ時間として設定する。センサ温度がDiff領域、A領域、B領域のいずれでもない場合には、基本間隔Δtの3倍の時間をスリープ時間として設定する。なお、さらに高温あるいは低温の領域を設けて基本間隔Δtのn倍の時間となるようにスリープ時間を設定してもよい。
【0020】
端末センサ機器1は、制御機器2に対して計測したセンサ温度を送信するか否かの条件を判定する。具体的には、センサ温度が設定温度を下回ったときにセンサ温度を制御機器2に対して無線送信する。また、センサ温度が(設定温度+Diff値)を上回ったときにセンサ温度を制御機器2に対して無線送信する。なお、制御機器2は、この送信されるセンサ温度に基づいてヒータ3をオン/オフ制御する。
【0021】
図4は端末センサ機器1と制御機器2の動作を示すフローチャートである。制御機器2は、ステップS1でネットワーク立ち上げの処理を行う。このネットワーク立ち上げの処理は、端末センサ機器1,1との間でネットワークの確立を行い、各端末センサ機器1,1のアドレスの設定等を行う。なお、端末センサ機器1は電源が投入されていない場合には、電源が投入された時点でその端末センサ機器1と制御機器2でネットワークの確立を行ってアドレスの設定等を行う。
【0022】
次に、制御機器2は、ネットワークの立ち上げ処理が終了すると、ステップS2でヒータ3,3に対してヒータ制御を行う。このヒータ制御は、端末センサ機器1からセンサ温度を受信した場合に、そのセンサ温度と端末センサ1に対して(部屋に対して)設定されている設定温度とを比較して対応するヒータ3のオン/オフ制御を行う。すなわち、センサ温度が設定温度を下回ればヒータ3をオンにし、ヒータ3がオン状態でかつセンサ温度が(設定温度+Diff値)を上回るとヒータ3をオフにする。
【0023】
端末センサ機器1は、ステップS11で制御機器2に対してデータ要求を行ってデータを受信し、ステップS12で、受信データに基づいてヒータ3が制御中であるか、あるいは、温度設定値の更新があるかを判定する。判定がNO、すなわちヒータ制御中でなく、かつ、温度設定値の更新もなければ、ステップS16に進む。判定がYES、すなわちヒータ制御中であるか、温度設定値の更新があれば、ステップS13でセンサ温度の計測を行う。次に、ステップS14で、計測したセンサ温度に基づいて、センサ温度のデータの送信についての条件が成立するか否かを判定する。条件が成立しなければステップS16に進み、条件が成立すれば、ステップS15で制御機器2に対してセンサ温度を送信し、ステップS16に進む。
【0024】
ステップS16では、計測したセンサ温度に基づいてスリープ時間を決定するとともにスリープ状態に移行する。なお、この決定したスリープ時間はタイマ14の計時時間としてセットする。そして、ステップS17でタイマ14がスリープ時間を計時してスリープ時間が経過するのを監視し、スリープ時間が経過すればステップS11に戻る。すなわち、このステップS17により、ステップS11〜S16はスリープ時間の間隔で間欠的に繰り返され、この間欠動作によりセンサ温度が計測される。なお、スリープ時間の間は、センサ温度の計測動作もデータ送受信等の動作も行わないので、電池16の電力をほとんど消費しない。
【0025】
以上の処理により例えば図5のように動作する。図示のように、端末センサ機器1において、センサ温度が設定温度から上のDiff領域または設定温度から下のA領域にあるときは、基本間隔Δt毎に温度の計測収集動作を行っている。センサ温度が、Diff領域の上のB領域またはA領域より下のB領域にあるときには、基本間隔Δtの2倍の間隔(2Δt)毎に温度の計測収集動作を行っている。センサ温度が、上のB領域より上または下のB領域より下の領域にあるときには、基本間隔Δtの3倍の間隔(3Δt)毎に温度の計測収集動作を行っている。
【0026】
また、ヒータが停止状態のときにセンサ温度が下降していき、センサ温度が設定温度を下回ったときにセンサ温度が制御機器2に無線送信され、制御機器2はセンサ温度が設定温度を下回っていることからヒータ3をオン(ヒータ運転)している。そして、センサ温度が上昇していき、センサ温度がDiff領域を上回ったときにセンサ温度が制御機器2に対して無線送信され、制御機器2はセンサ温度がDiff領域(設定温度+Diff値)を上回ったことからヒータ3をオフ(ヒータ停止)している。
【0027】
以上のように、計測したセンサ温度が設定温度から充分高いときあるいは充分低いとき、すなわちセンサ温度と設定温度との温度差の絶対値が大きいほど、スリープ時間が基本間隔より長くなっているので、制御機器2によりヒータのオン/オフ制御までに余裕があるときの無駄な動作を行わず、電池16の消費を抑えることができる。また、端末センサ機器1は、所定の条件が満たされたときだけセンサ温度を制御機器2に送信するようにしているので、さらに電池16の消費を抑えることができる。
【0028】
実施形態では、温度の判定域として段階的な領域を設定しているが、無段階にしてセンサ温度が設定温度より高くなるほど、あるいはセンサ温度が設定温度より低くなるほどスリープ時間を長くするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 端末センサ機器
2 制御機器
3 ヒータ
11 マイコン
12 温度センサ
13 送受信部
14 タイマ
15 記憶部
16 電池
21 マイコン
22 操作パネル
23 送受信部
24 記憶部
25 電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度のデータを受信する無線通信手段を備え、該受信した温度に基づいて部屋に設置したヒータのオン/オフ制御を行う制御機器と、動作用電源としての電池を内蔵し、温度センサにより前記部屋の温度を計測して該計測した温度のデータを送信する無線通信手段を備えた端末センサ機器とからなる暖房制御システムであって、
前記制御機器は、受信した温度が予め設定した設定温度を上回ったときに前記ヒータをオフし、受信した温度が前記設定温度を下回ったときに前記ヒータをオンするようにオン/オフ制御を行い、
前記端末センサ機器は、間欠動作により前記温度の計測を行うとともに、計測した温度と予め設定されている前記設定温度との温度差の絶対値が大きいほど前記間欠動作の間隔を長くし、計測した温度が、前記設定温度に対する所定の条件を満足したときに前記制御機器に対して計測した温度を送信することを特徴とする暖房制御システム。
【請求項2】
前記端末センサ機器に、前記設定温度を下限とする所定の温度幅を有するDiff領域が設定され、
前記所定の条件は、前記計測した温度が前記Diff領域を下回ったとき、及び、前記計測した温度が前記Diff領域を上回ったとき、
とすることを特徴とする請求項1に記載の暖房制御システム。
【請求項3】
前記端末センサ機器に、前記設定温度を下限とする所定の温度幅を有するDiff領域と、前記設定温度を上限とする所定の温度幅を有するA領域と、前記Diff領域の高温側と前記A領域の低温側にてそれぞれ所定の温度幅を有するB領域とが設定され、
前記間欠動作の間隔について、基本間隔をΔtとしたときに、計測した温度が前記Diff領域またはA領域にあるときはΔt毎に温度の計測値を収集し、計測した温度が前記B領域にあるときは2Δt毎に計測値を収集し、計測した温度がDiff領域、A領域及びB領域以外にあるときは3Δt毎に計測値を収集する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の暖房制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−190974(P2011−190974A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56943(P2010−56943)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】