説明

暖房器具の点火装置

【課題】燃料に点火する時の突入電流を小さく抑えることができ、簡単な構造でメンテナンスも容易な暖房器具の点火装置を提供する。
【解決手段】風入口22から流入したエアを吹出口24から木質ペレットWに向けて吹き出す送風管26を備える。内蔵する抵抗体28a,30aの抵抗値Rが正の温度係数を有するセラミックヒータ28,30を備える。電源62によるセラミックヒータ28,30への電圧印加動作を制御する制御装置32を備える。セラミックヒータ28,30が、記送風管26の内側に、通過するエアの流れに対して直列に配置され、抵抗体28a.30aが電源26の出力に個別に接続される。制御装置32が、セラミックヒータ28,30に商用電圧Vacを継続印加して行う抵抗体28a,30aの本発熱動作を、吹出口24に近い方のセラミックヒータ28から順に、所定の時間差を設けて開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質ペレット等の燃料を着火させる暖房器具の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の点火装置は様々な形態の暖房器具に使用されており、例えば特許文献1に開示されているように、燃料である木質ペレットを燃焼させる燃焼部と、燃焼部に木質ペレットを供給する供給装置と、燃焼部に空気を送る送風機と、燃料部の木質ペレットに点火する点火装置と、当該各部の動作を制御する制御回路とを備えた木質ペレット燃焼装置がある。この制御回路はメモリカードが接続可能であり、木質ペレットの供給量、点火装置の作動時間、送風機の回転数などの設定値を、制御回路に差し込まれたメモリカードに記録された値に変更することができる。また、点火装置の発熱体として棒状のセラミックヒータが例示され、発熱したセラミックヒータを木質ペレットに接触させて点火する構造になっている。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、セラミックヒータに内蔵された抵抗ヒータの熱をセラミック体の表面より放射して発熱器の燃料ガスを点火する点火装置と、ヒータ抵抗体の抵抗値を検知してヒータ抵抗体への通電を断続させる制御装置とを備えた暖房器の点火装置がある。この制御装置は、ヒータ抵抗体の抵抗値を検知することによってヒータ抵抗体の温度を検出し、その温度が上限基準値に達すると通電を停止し、下限基準値まで低下すると通電を再開する動作を繰り返す。この動作により、ヒータ抵抗体からセラミック抵抗体への伝熱遅れに起因するヒータ抵抗体の極部発熱を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24983号公報
【特許文献2】特開平5−248636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された木質ペレット燃焼装置の点火装置は、700℃を超えるような高温のセラミックヒータが木質ペレットに接触する構造なので、セラミックヒータ表面に燃焼した木質ペレットの残渣などが付着して汚れ易く、清掃等のメンテナンスが面倒であった。
【0006】
また、特許文献1,2に開示されたいずれの点火装置も、点火のためセラミックヒータを通電して発熱させる時、非常に大きな突入電流が流れるという問題がある。この種のセラミックヒータは、例えば図11(a)に示すよう回路を用いて発熱させることができる。すなわち、電源10の出力が制御装置14のスイッチ14aを通してセラミックヒータ12の抵抗体12aに接続され、制御装置14がスイッチ14aをオンすることによって電圧Vacを印加する。電圧Vacは、一般家庭のコンセントから取り出される商用電圧のAC100Vである。
【0007】
セラミックヒータ12は、図11(b)に示すように、抵抗体12aの抵抗値Rの温度係数が正であり、自身の温度が低いときほど抵抗値Rが小さい。従って、セラミックヒータ12が冷めた状態でスイッチ14aをオンすると、図11(b)に示すように、オンの直後に実効電流Irがピークを示し、大きな突入電流Irp(0)が発生する。その後、抵抗体12aの発熱と共に抵抗値Rが徐々に大きくなって実効電流Irが減少し、やがて温度が所定の値に飽和し、実効電流Irが安定電流Ir(0)に収束し、抵抗体12aが安定電力P(0)で発熱を続ける。なお、特許文献2の点火装置の場合、上記の動作に加え、所定のタイミングでスイッチ14aがオフし、その後オン、オフを繰り返す動作が行われるが、それは、上記の突入電流Irp(0)が発生した後のことである。
【0008】
このように大きな突入電流Irp(0)が流れると、暖房器具を点火する度に配電盤のブレーカが容量オーバーで遮断したり、商用電源ラインのAC100Vが一時的に低下して家庭内の各種の電子機器が誤動作したりするおそれがあった。
【0009】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、燃料に点火する時の突入電流を小さく抑えることができ、簡単な構造でメンテナンスも容易な暖房器具の点火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、風入口から流入したエアを吹出口から燃料に向けて吹き出す送風管と、内蔵する抵抗体の抵抗値が正の温度係数を有する複数のセラミックヒータと、電源による前記セラミックヒータへの電圧印加動作を制御する制御装置とを備え、複数の前記セラミックヒータが、前記送風管の内側に、前記送風管の内側を通過する前記エアの流れに対して直列に配置され、前記抵抗体毎に前記電源の出力に個別に接続され、前記制御装置が、前記各セラミックヒータに前記電源の出力電圧を継続印加して行う前記抵抗体の本発熱動作を、所定の時間差を設けて開始させる暖房器具の点火装置である。
【0011】
前記燃料は木質ペレットであり、前記送風管の前記吹出口から吹き出す加熱エアによって当該木質ペレットを着火させる。さらに、前記制御装置は、前記送風管の前記吹出口に近い方の前記セラミックヒータから順に前記本発熱動作を行わせると良い。
【0012】
前記制御装置は、本発熱動作の開始前で待機中の前記セラミックヒータに対し、前記電源の出力電圧を所定の時比率で断続印加し、当該セラミックヒータの前記抵抗体に予備発熱動作をさせてもよい。また、前記セラミックヒータがそれぞれ別個の管状部材の内側に設置され、複数の前記管状部材を所定の角度で屈曲させて直列に接続することによって前記送風管が形成されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
この発明の暖房器具の点火装置は、燃料に点火する際、各セラミックヒータごとに電源電圧を継続印加するタイミング、すなわち本発熱動作を開始させるタイミングをずらすことによって、突入電流を小さく抑え電源の負担を軽減することができる。
【0014】
また、加熱エアを吹き出す吹出口に近い方のセラミックヒータから順番に本発熱動作を開始させることによって、加熱エアの温度を効率よく上昇させることができ、燃料への点火及び着火を短時間で行うことができる。さらに、本発熱動作前で待機中のセラミックヒータに対し、電源電圧を所定の時比率で断続印加して予備発熱動作をさせることによって、突入電流を抑えつつ加熱エアの温度をさらに効率よく短時間で上昇させることができる。
【0015】
また、セラミックヒータを設置した複数の管状部材を準備し、管状部材を適宜の角度で接続することによって送風管を形成すれば、暖房器具内部の狭く入り組んだ空間であっても点火装置を配置することができ、暖房器具の小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の暖房器具の点火装置の一実施形態を示す正面図(a)、左側面図(b)である。
【図2】図1のA−A断面図(a)、B−B断面図(b)である。
【図3】この実施形態の点火装置を内部に設けた暖房器具を示す正面図(a)、右側面図(b)である。
【図4】図3の暖房器具内部の燃料の点火に関与する部分の構造を説明する模式図である。
【図5】この実施形態の点火装置の制御装置の動作を説明する回路図(a)、タイムチャート(b)である。
【図6】この実施形態に用いたセラミックヒータの抵抗値−温度特性を示すグラフである。
【図7】変形例の制御装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図8】試作した暖房器具の点火装置の動作例を示す実測波形である。
【図9】試作した暖房器具の点火装置の他の動作例を示す実測波形である。
【図10】従来と同様の暖房器具の点火装置の動作例を示す実測波形である。
【図11】従来の点火装置の制御回路の動作を説明する回路図(a)、タイムチャート(b)である。
【図12】セラミックヒータの抵抗値−温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の暖房器具の点火装置の一実施形態について、図1〜図7に基づいて説明する。この実施形態に係る点火装置20は、図1、図2に示すように、風入口22から流入したエアを吹出口24から燃料に向けて吹き出す送風管26と、送風管26の内側に設置され、通過するエアを加熱する2つのセラミックヒータ28,30と、セラミックヒータ28,30の発熱を制御する制御装置32とを備えている。
【0018】
セラミックヒータ28,30は同一の素子であり、細長い円柱状のセラミック体の中に抵抗体28a,28bを内蔵し、セラミック体の根元部分に抵抗体28a,30aに電力を供給するリード線34,36が接続されている。抵抗体28a,28bは、図3に示すように抵抗値Rが正の温度係数を有し、上記の背景技術の説明の中で説明したセラミックヒータ12の抵抗体12aよりも大きい抵抗値R(ここでは約2倍の抵抗値)を有している。
【0019】
送風管26は、2つの管状部材38,40で構成されている。管状部材38には、円筒状外形の先端部に吹出口24が設けられ、内側にセラミックヒータ28が配置され、その根元部分が管状部材38の後端部に固定されている。そして、管状部材38の後端部からセラミックヒータ28のリード線34が外部に引き出されている。また、管状部材38側面に、暖房器具に取り付ける際に使用するネジ止め用の取付部38aが左右一対に立設されている。
【0020】
管状部材40は、円筒状外形の先端部が閉鎖され、内側にセラミックヒータ30が配置されその根元部分が管状部材40の後端部に固定されている。そして、管状部材40の後端部からセラミックヒータ30のリード線36が外部に引き出されている。また、管状部材38側面の後端部寄りの位置に、風入口22が開口している。
【0021】
管状部材38,40は、管状部材38側面の後端部寄りの位置と、管状部材40側面の先端部寄りの位置とが溶接等によって一体に連結され、内側の空間が連通孔42を通じて連続している。ここでは、この点火装置20が取り付けられる暖房器具の内部の構造に合わせ、管状部材38,40が所定の角度で交差する(ここでは直角に交差する)ように接続され、一体の送風管26が形成されている。
【0022】
以上の構成を備えた点火装置20は、送風管26の風入口22からエアが流入し、セラミックヒータ28,30によって加熱された加熱エアを吹出口24から吹き出すことができる。制御装置32の構成と機能については、以下の後の動作説明の中で述べる。
【0023】
次に、点火装置20が搭載された暖房装置44の構成を説明するとともに、点火装置20を用いて暖房装置44の燃料に点火する動作について説明する。暖房装置44は、木質ペレットWを燃料とする室内暖房用のストーブである。木質ペレットWは、間伐材や製材端材等の木材を破砕してペレット状に圧縮した固形燃料であり、近年、再生可能で地球環境に優しい新しい燃料として注目されている。木質ペレットにも複数の種類があるが、一般的には200〜400℃に加熱するとペレット中で燃焼ガスの分解が始まり、その状態が長時間継続すると着火に至る。また、400℃以上に加熱すると短時間のうちに着火する。
【0024】
暖房装置44は、図4に示すように略矩形の筺体46を有しており、筺体46の前面上方部に温風吹出口48が設けられ、背面下方部に屋外に煙を排気するダクト48が設けられ、上面に木質ペレットWの供給口50が設けられている。また、暖房器具44の内部の電子機器類に電源を供給するため、図示しないACケーブルがコンセントに接続されている。
【0025】
暖房装置44において、燃料を燃焼させ熱エネルギーを発生させる部分は、図5の模式図に示すように、ペレットタンク52、燃焼室54、ファン56及び点火装置20で構成されている。ペレットタンク52は、上方の供給口50から木質ペレットWが投入され、下端部分の排出ノズル52aから木質ペレットWを定量排出するものである。
【0026】
燃焼室54は木質ペレットWを燃焼させる空間であり、下方に排出ノズル52aから定量排出された木質ペレットWを受ける燃焼ポット58と、木質ペレットWが燃焼して発生した熱エネルギーを吸収するための図示しない熱交換器とが設けられている。点火装置20は、管状部材38の吹出口24寄りの部分が燃焼室54の内に差し込まれ、管状部材40及び風入口22が燃焼室54の外側に位置するように取り付けられ、室温に近い常温エアを風入口22から取り込み、吹出口24から吹き出す加熱エアが燃焼ポット58内の木質ペレットWに直接吹き付けられる構造になっている。
【0027】
ファン56は、排気通路60を通じて燃焼室54内の空気を減圧する方向に駆動される。従って、ファン56を駆動することによって筺体46の内側に図5の破線で示すような空気流が発生し、木質ペレットWの燃焼に必要な酸素が燃焼室54内に取り込まれ、その燃焼により生じた熱エネルギーを受け取った空気が熱交換器に移送される。そして、熱交換された空気が屋外に排出される。同様に、点火装置20の風入口22に常温エアが流入し、加熱エアが吹出口24から吹き出される空気流も発生する。
【0028】
点火装置20のセラミックヒータ28,30への電圧印加動作は、図6(a)の回路図に示すように、2つのスイッチ64,66を有する制御回路32によって制御される。商用電圧Vacを出力する電源62が図示しないコンセントを介して制御回路32に接続され、スイッチ64,66を通して抵抗体28a,30aに個別に接続されている。スイッチ64,66は、例えばトライアック等の双方向に導通可能な半導体スイッチ素子が好適である。制御回路32は、セラミックヒータ28を本発熱させるときにスイッチ64のオン状態を保持し、抵抗体28aに電圧Vacを継続印加する。同様に、セラミックヒータ30を本発熱させるときはスイッチ66のオンを保持し、抵抗体30aに電圧Vacを継続印加する。また、セラミックヒータ30を予備発熱させるときにはスイッチ66を所定の周期及び時比率でオン・オフし、抵抗体30aに電圧Vacを断続的に印加する。
【0029】
次に、点火装置20を用いて木質ペレットWに点火する際の動作について、図6(b)のタイムチャートに基づいて説明する。まず、使用者の操作により点火装置20の制御装置32がスイッチ64をオンし、抵抗体28aに電圧Vacを継続的に印加することによって吹出口24に近い方のセラミックヒータ28を本発熱させる。スイッチ64をオンした直後は、抵抗体28aの温度が冷めているので抵抗値Rが小さく、抵抗体28aに過渡的に電流Ir28が大きくなる。ここで、図3に示すように、セラミックヒータ28の抵抗体28aの抵抗値Rは、背景技術で説明した図11、図12のセラミックヒータ12の抵抗体12aの約2倍の値を有しているので、実効電流Ir28のピークは、図11の実効電流Irp(0)の約1/2倍になる。
【0030】
また、スイッチ64がオンするのとほぼ同時に、制御装置32がスイッチ66のオン・オフ動作を開始し、抵抗体30aに電圧Vacを断続的に印加することによって他方のセラミックヒータ30を予備発熱させる。予備発熱は、セラミックヒータ28の本発熱よりも小さい発熱量に抑えるため、スイッチ64のオンの時比率を20〜40%程度に設定するとよい。商用周波数(50又は60Hz)の1サイクル単位でオンとオフを切り替え、10サイクルのうちの3サイクル分をオンさせる。スイッチ64のオン・オフを開始した直後は、抵抗体30aの抵抗値Rが小さいが、実効電流Ir30のピークは、実効電流Ir28の約1/3倍(実効電流Irp(0)の約1/6倍)になる。その結果、電源62が出力する実効電流Irのピークである第一の突入電流Irp(11)が、突入電流Irp(0)の約2/3倍になる。
【0031】
その後、本発熱しているセラミックヒータ28の抵抗体28aの温度が上昇し、抵抗値Rが大きくなって実効電流Irが低下する。そして、実効電流Irが第一の突入電流Irp(11)の半分程度になったタイミングで、制御装置32がスイッチ66のオン・オフ動作を停止し、オンに保持する。そして、抵抗体30aに電圧Vacを継続印加し、セラミックヒータ30を本発熱させる。スイッチ66がオンに転じた直後は、抵抗体30aに流れる実効電流Ir30が約3倍に増加する。その結果、電源62が出力する実効電流Irがその分だけ増加し、第二の突入電流Irp(12)が発生する。しかし、予備加熱によって抵抗体30aの抵抗値Rがある程度高くなっているので、第二の突入電流Irp(12)は、第一の突入電流Irp(0)よりも小さくなる。
【0032】
この状態が続くと、やがて抵抗体28a,30aの温度が所定の値に飽和し、各実効電流Irp28,Irp30も収束し、その合計電流Irが安定電流Ir(0)に収束し、抵抗体28a,30aが安定電力P(0)で発熱を続ける。図6に示す安定電力P(0)は、図11における安定電力P(0)と等価である。
【0033】
点火装置20は、上記の要領でセラミックヒータ28,30を発熱させ、送風管26に取り込まれた常温エアを加熱して吹出口24から加熱エアを吹き出す。加熱エアは、セラミックヒータ28,30に第二の突入電流Irp(12)が流れる頃に260℃を超えさせ、その後450〜500℃を目指して上昇させるとよい。すると、木質ペレットWは、加熱エアの温度が260℃を超えた頃から燃焼ガスの分解が始まり、450℃に達するまでには着火する。
【0034】
以上説明したように、点火装置20は、木質ペレットWに点火する際、セラミックヒータ28,30ごとに電圧Vacを継続印加するタイミング、すなわち本発熱動作を開始させるタイミングをずらすことによって、突入電流をIrp(11)とIrp(12)に分散させてピークを小さく抑えることができる。従って、電源62の負担が軽減され、暖房装置44を点火する度に配電盤のブレーカが落ちてしまうといった不都合が起こりにくくなる。
【0035】
また、加熱エアを吹き出す吹出口24に近い方のセラミックヒータ28から順番に本発熱動作を開始させるので、加熱エアの温度の上昇が速い。仮に、吹出口24から離れているセラミックヒータ30の方から本発熱動作をさせたとすると、抵抗体30aの発熱を受けた加熱エアが冷めた管状部材38を通過するときに熱を奪われ、吹出口24から吹き出すときに温度が低下してしまう。従って、上記のようにセラミックヒータ28の方から本発熱動作をさせることによって、加熱エアの温度を効率よく上昇させることができ、燃料への点火及び着火の時間を短縮することができる。
【0036】
さらに、本発熱動作前で待機中のセラミックヒータ30に対し、商用電圧Vacを所定の時比率で断続印加して予備発熱動作をさせることによって、突入電流を抑えつつ、加熱エアの温度をさらに効率よく短時間で上昇させることができる。
【0037】
また、セラミックヒータ28,30を設置した管状部材38,36は、エアの流れを妨げない範囲で適宜の角度に接続して送風管26を形成することができるので、暖房器具44の内部の狭く入り組んだ空間であっても点火装置20を配置することができ、暖房器具44の小型化に寄与することができる。
【0038】
なお、この発明の暖房器具の点火装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図6(a)で説明した点火装置20の動作を変更し、セラミックヒータ30が上記の予備加熱動作を行わず、本発熱動作を開始する前の待機中にスイッチ66をオフ状態に保持するように変更してもよい。このようにすれば、予備発熱動作による加熱がなくなる分だけ加熱エアの温度の上昇が若干遅くなるものの、スイッチ64,66を高速にオン・オフさせる必要がないので、制御装置32の制御回路等が簡単化され、取り扱いが容易な機械式リレーを使用することも可能になる。ただし、図7に示すように、第一の突入電流がIrp(11)からIrp(21)に低下し、第二の突入電流がIrp(12)からIrp(22)に増加するので、第二の突入電流Irp(22)を一定以下に抑えるため、スイッチ66をオンするタイミングが早くなり過ぎないようにする必要がある。
【0039】
また、セラミックヒータは、図2のセラミックヒータ28,30のような円柱状タイプのものに代えて、円筒状タイプ、短冊状タイプ、その他一般に市販されている各種形状のものを選択することができる。その場合、セラミックヒータの発熱がエアに効率よく伝達されるように、搬送管の内壁の形状をセラミックヒータの形状に合わせて変更するとよい。
【0040】
また、セラミックヒータを3つ以上組み合わせたハイパワーの点火装置を構成してもよく、その場合においても、吹出口に最も近い方のセラミックヒータから順番に本発熱動作を開始させることによって、加熱エアの温度を効率よく上昇させることができる。
【0041】
また、点火対象の燃料は木質ペレットに限定されず、木質ペレット以外の固体燃料、液体燃料、気体燃料であってもよい。従って、この発明の点火装置は、様々な暖房器具に搭載することができるものである。
【実施例】
【0042】
上述した実施形態に係る点火装置20の一実施例について説明する。セラミックヒータ28と30は同じものであって、抵抗値Rの特性として、商用電圧Vacが100Vで安定電力P(0)が合計600W程度となるものを選択した。そして、試作した点火装置20を実際の暖房器具44に搭載して点火試験を行い、セラミックヒータ28,30に流れる電流Ir28,Ir30,Irと吹出口24から吹き出す加熱エアの温度Tkを測定した。なお、暖房器具44は一般家庭用のストーブであり、使用者が点火操作をした後、できるだけ短時間のうちに部屋を暖め始めることが求められる。そこで、暖房器具44では、点火操作から木質ペレットWが着火するまでの時間を、最大120秒以下にすることを目標にした。
【0043】
図8のグラフは、セラミックヒータ28が最初から本発熱動作を行い、セラミックヒータ30については、最初に予備発熱動作を行って約14秒間後に本発熱動作を行ったときのデータである。セラミックヒータ30の予備発熱動作は、商用周波数(50又は60Hz)の1サイクルごとにスイッチ66のオンとオフを切り替え、10サイクルのうちの3サイクル分をオンさせることによりオンの時比率を30%にした。具体的には、10サイクル中に回の7回オンし、3回のオフを入れた動作を繰り返す設定にした。また、点火操作から300秒経過後、制御回路32のスイッチ64,66を共にオフにし、セラミックヒータ28,30への電力供給を停止した。
【0044】
試験の結果、図8に示すように、加熱エアTkが260℃に達する時間が45秒で、300秒後には455℃まで上昇した。従って、木質ペレットWを120秒以内に着火させる目標は十分に実現できる。また、第一の突入電流Irp(11)が13A、第二の突入電流Irp(12)が8Aとなった。
【0045】
また、図9のグラフは、セラミックヒータ28が最初から本発熱動作を行い、セラミックヒータ30については、最初に予備発熱動作を行わずにスイッチ66をオフに保持し、約14秒間後に本発熱動作を行ったときのデータである。この場合、加熱エアTkが260℃に達する時間が50秒で、300秒後には445℃まで上昇した。従って、図8に示すように予備発熱を行ったときに比べ、木質ペレットWが着火するまでの時間が10秒程長くなるが、120秒以内に着火させることは可能である。また、第一の突入電流Irp(21)が10A、第二の突入電流Irp(22)が13Aとなり、突入電流のピークを小さく抑えることができた。
【0046】
それに対して、図10の比較データのグラフは、セラミックヒータ28,30が共に最初から本発熱動作を行ったときのデータであり、突入電流Irp(0)が20Aと非常に大きくなった。従って、この実施形態に係る点火装置20を使用することによって、突入電流のピークを約2/3倍の値に低減する効果が得られた。
【符号の説明】
【0047】
20 点火装置
22 風入口
24 吹出口
26 送風管
28,30 セラミックヒータ
28a,30a 抵抗体
32 制御装置
38,40 管状部材
42 連通孔
44 暖房装置
W 木質ペレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
風入口から流入したエアを吹出口から燃料に向けて吹き出す送風管と、
内蔵する抵抗体の抵抗値が正の温度係数を有する複数のセラミックヒータと、
電源による前記セラミックヒータへの電圧印加動作を制御する制御装置とを備え、
複数の前記セラミックヒータが、前記送風管の内側に、前記送風管の内側を通過する前記エアの流れに対して直列に配置され、前記抵抗体毎に前記電源の出力に個別に接続され、
前記制御装置が、前記各セラミックヒータに前記電源の出力電圧を継続印加して行う前記抵抗体の本発熱動作を、所定の時間差を設けて開始させることを特徴とするストーブの点火装置。
【請求項2】
前記燃料は木質ペレットであり、前記送風管の前記吹出口から吹き出す加熱エアによって当該木質ペレットを着火させる請求項1記載のストーブの点火装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記送風管の前記吹出口に近い方の前記セラミックヒータから順に前記本発熱動作を行わせる請求項2記載のストーブの点火装置。
【請求項4】
前記制御装置は、本発熱動作の開始前で待機中の前記セラミックヒータに対し、前記電源の出力電圧を所定の時比率で断続印加し、当該セラミックヒータの前記抵抗体に予備発熱動作をさせる請求項2又は3記載のストーブの点火装置。
【請求項5】
前記セラミックヒータがそれぞれ別個の管状部材の内側に設置され、複数の前記管状部材を所定の角度で屈曲させて直列に接続することによって前記送風管が形成されている請求項4記載のストーブの点火装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−104628(P2013−104628A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249666(P2011−249666)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591051678)株式会社西村精工 (2)
【Fターム(参考)】