説明

暖房座

【課題】誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることのできる暖房座を提供すること。
【解決手段】暖房座である暖房便座50に、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61と、シート62に誘導加熱用コイル61が接着されることにより形成される誘導加熱用シート60と、着座面53を有すると共に、誘導加熱用シート60が取り付けられる便座本体部52と、便座本体部52における誘導加熱用シート60よりも着座面53側に配設され、且つ、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより発熱する発熱体70と、を備え、誘導加熱用シート60は複数に分割されている。これにより、1つ1つの誘導加熱用シート60の大きさを小さくすることができ、誘導加熱用コイル61が接着された誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付ける際における、取り付けの容易性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、所望の部材を加熱する手段として、誘導加熱を用いるものが増加している。この誘導加熱は、加熱する部材として金属を使用し、この金属の近傍に配設された導線に高周波電流を流すことにより、導線の周囲の磁束を変化させて金属に誘導電流を発生させ、誘導電流に対する金属の抵抗によって、金属を加熱させる。これにより、金属の温度を短時間で上昇させることができ、誘導加熱は、即熱に有効な技術として用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された暖房便座装置では、絶縁シート上に誘導加熱に用いる誘導コイルを配設して形成した誘導コイルシートと、誘導コイルへの通電によって発熱する金属製の発熱体とを便座に設けており、誘導コイルシート上の誘導コイルに通電して発熱体の誘導加熱を行うことにより、便座を加熱している。さらに、この特許文献1に記載された暖房便座装置では、コイルの配置パターンが異なった誘導コイルシートを複数設け、これらを組み合わせて便座に設けることにより、誘導加熱によって便座を加熱する際における温度の均一化または最適化を図っている。また、特許文献2に記載された誘導加熱調理器では、誘導加熱コイルを複数設け、一部を重ね合わせて配置し、重ね合わせた部分の電磁エネルギーを大きくすることにより、特定部位を強く加熱するようにしている。
【0004】
また、特許文献3に記載された暖房便座装置では、誘電コイルに通電することにより発熱する着座面用発熱体をシート状に形成し、このシート状の着座面用発熱体に複数個の貫通抜き部を分散して設けることにより、着座部の曲面領域に、皺や亀裂等を生じさせることなく着座面用発熱体を配置することができる。さらに、この特許文献3に記載された暖房便座装置では、発熱体との距離が大きい誘導コイルや平面積の大きい誘導コイルは、導線の巻き数を増やして磁束密度を高め、反対に発熱体との距離が短い誘導コイルや平面積の小さい誘導コイルは、磁束密度が小さくてもよいので、導線の巻き数を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−291461号公報
【特許文献2】実開平5−36794号公報
【特許文献3】特開2009−273756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘導加熱は、誘導加熱用コイルに高周波電流を流すことにより発熱体を加熱するが、誘導加熱による温度分布を所望の温度分布にするには、誘導加熱用コイルを、誘導加熱を行う部材の形状に合わせつつ、目的とする温度分布に応じた形態で取り付ける必要がある。しかし、誘導加熱を行う部材の形状が複雑な場合、誘導加熱用コイルも、この複雑な形状に合わせて取り付ける必要が生じ、取り付けが困難となる場合がある。便座の場合、その形状が3次元的で複雑であり、その便座面を均一に加熱する為には、誘導加熱用コイルの位置や間隔を厳密に規定する必要がある。そのため、IH調理器の様に、平面同心円状に密巻きできず、取り付けがはるかに難しい。
【0007】
また、誘導加熱用コイルは、リッツ線が用いられることが多いため、このリッツ線を、誘導加熱を行う複雑な形状に屈曲させるのは、困難となる場合がある。ここで、誘導加熱に用いる誘導加熱用コイルについて説明すると、誘導加熱では高周波電流を使用するが、この高周波電流は、導線に流した際に主に導線の外周部を流れ、導線の中心部には流れ難い性質を有している。このため、誘導加熱用コイルとして用いる導線は、高周波電流が流れる部分をより多く確保して電気抵抗を少なくするために、線径が細く、外周に絶縁被膜が施された素線を束ねることにより、電気が流れる部分である導線の外周部を増加させたリッツ線が用いられることが多くなっている。しかし、リッツ線が有する素線の絶縁被膜は薄膜となっており、傷付き易いため、リッツ線を複雑な形状に曲げて部材に取り付ける場合、リッツ線の絶縁被膜に傷を付ける場合がある。このように、リッツ線の絶縁被膜に傷を付けてしまった場合、絶縁破壊が発生して高周波電流を適切に流す際の効率が低下する場合がある。
【0008】
また、特許文献1に記載された暖房便座装置のように、誘導加熱用コイルを絶縁シート上に配設して誘導コイルシートとして形成した場合でも、誘導コイルシートを取り付ける部材の形状が複雑な形状の場合には、平坦な面にシートを取り付けるのとは異なり、容易に取り付けられなくなる場合がある。即ち、平面シートにリッツ線を予め取り付け、それを便座の3次元面に取り付けることで、平面シートへのリッツ線取付は容易になるのだが、大きな平面シートを便座の3次元面に取り付ける際、どうしても歪みが出て、シートの位置ずれ、シワ、浮きが発生するのである。これらのため、複雑な形状の部材に誘導加熱用コイルを取り付けるのは、大変困難なものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることのできる暖房座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る暖房座は、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルと、シートに前記誘導加熱用コイルが接着される誘導加熱用シートと、着座面を有すると共に、前記誘導加熱用シートが取り付けられる本体部と、前記本体部における前記誘導加熱用シートよりも前記着座面側に配設され、且つ、前記誘導加熱用シートが有する前記誘導加熱用コイルに高周波電流を通電することにより発熱する発熱体と、を備え、前記誘導加熱用シートは複数に分割されていることを特徴とする。
【0011】
この発明では、誘導加熱用コイルがシートに接着されることにより形成される誘導加熱用シートを複数に分割し、この分割された誘導加熱用シートを、発熱体が配設される本体部に取り付けている。このように、予め誘導加熱用コイルをシートに接着することにより形成される誘導加熱用シートを、複数に分割することにより、1つ1つの誘導加熱用シートの大きさを小さくすることができる。誘導加熱用シートの大きさが小さくなれば、3次元面に取り付ける際の歪みも小さくでき、誘導加熱用シートの位置ずれ、シワ、浮きも少なくなる。これにより、誘導加熱用コイルを本体部に取り付けることを目的として誘導加熱用シートを本体部に取り付ける際における、取り付けの容易性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0012】
また、上記暖房座において、複数に分割された前記誘導加熱用シートは、端部を重ねて前記本体部に取り付けられることが好ましい。
【0013】
この発明では、複数に分割された誘導加熱用シートの端部を重ねて本体部に取り付けるので、誘導加熱用シートの端部に位置する誘導加熱用コイルも重ねることができる。これにより、誘導加熱用シートを分割することに起因して、誘導加熱時に分割部分の温度が上昇しなくなることを抑制できる。この結果、誘導加熱用シートを分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を抑制することができる。
【0014】
また、上記暖房座において、前記誘導加熱用シートは、重ねる部分の前記誘導加熱用シート同士の向かい合わせ方向における、前記誘導加熱用シートのそれぞれの端部に位置する前記誘導加熱用コイルの幅の1.5倍以下の範囲内で前記誘導加熱用コイル同士が重なるように前記誘導加熱用シート同士を重ねることが好ましい。
【0015】
この発明では、誘導加熱用コイルの幅の1.5倍以下の範囲内で誘導加熱用コイル同士が重なるように誘導加熱用シート同士を重ねるので、より確実に、誘導加熱用シートの端部付近の誘導加熱時における温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シートを分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【0016】
また、上記暖房座において、前記誘導加熱用シートは、分割後のそれぞれの前記誘導加熱用シートにおいて最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となって複数に分割されていることが好ましい。
【0017】
この発明では、各誘導加熱用シートにおける最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となるように、誘導加熱用シートを分割するので、それぞれの誘導加熱用シートにおける誘導加熱時の温度分布の均一化を図ることができ、これにより、誘導加熱用シート全体の温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シートを分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【0018】
また、上記暖房座において、前記誘導加熱用シートは、前記誘導加熱用コイルの密度が同程度になるように複数に分割されていることが好ましい。
【0019】
この発明では、誘導加熱用コイルの密度が同程度になるように誘導加熱用シートを複数に分割するので、それぞれの誘導加熱用シートにおける誘導加熱時の温度分布の均一化を図ることができ、誘導加熱用シート全体の温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シートを分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る暖房座は、誘導加熱用コイルを所望の部位に容易に取り付けることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施形態1に係る暖房便座を備える便器の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す便座ユニットの斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す便座ユニットを便器本体側から見た斜視図である。
【図4】図4は、便座ユニットに設けられる電気部品の説明図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面図である。
【図6】図6は、図4のB−B断面図である。
【図7】図7は、図6のC部詳細図である。
【図8】図8は、図6のD−D矢視図である。
【図9】図9は、図8に示す誘導加熱用シートに形成される誘導加熱用コイルの配線パターンの説明図である。
【図10】図10は、誘導加熱用シートを分割する場合におけるシートの取り出し状態を示す説明図である。
【図11】図11は、誘導加熱用シートを一枚で形成する場合におけるシートの取り出し状態を示す説明図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る暖房便座に設けられる誘導加熱用シートの説明図である。
【図13】図13は、図12のE部詳細図である。
【図14】図14は、実施形態3に係る暖房便座に設けられる誘導加熱用シートの説明図である。
【図15】図15は、実施形態1に係る暖房便座の変形例を示す説明図である。
【図16】図16は、実施形態1に係る暖房便座の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る暖房座の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る暖房便座を備える便器の斜視図である。同図に示す便器1は、便器本体5の上部に、便蓋6と、本発明に係る暖房座の一実施形態である実施形態1に係る暖房便座50を備える便座ユニット10とが設けられている。これらの便蓋6と暖房便座50とは、共に水平方向の回動軸を中心として便器本体5に対して回動可能に設けられており、便蓋6と暖房便座50とは、この回動軸を中心として回動することにより、共に起立させたり倒したりすることが可能に設けられている。また、これらの便蓋6と暖房便座50との回動軸は、互いに平行な向きになっており、この回動軸を中心として回動させることにより、便蓋6と暖房便座50とを共に倒した場合には、暖房便座50が便器本体5側となって便蓋6と暖房便座50とが重なった状態で、便器本体5に対して閉じるように設けられている。
【0024】
また、このうち暖房便座50は、便器本体5の上部の縁に沿った形状で形成されており、即ち、暖房便座50は、便器本体5に対して開口して形成されている。これに対し、便蓋6は、開口していない板状の形状で形成されている。このため、便蓋6と暖房便座50とを共に倒した場合には、便蓋6は、暖房便座50の開口部分、或いは、便器本体5を便蓋6で閉じる形態になる。つまり、便蓋6は、便器本体5の開閉蓋として設けられている。
【0025】
図2は、図1に示す便座ユニットの斜視図である。図3は、図1に示す便座ユニットを便器本体側から見た斜視図である。暖房便座50を備える便座ユニット10は、さらに、便座ユニット10における便器本体5への固定部分である便座支持体12を有している。また、暖房便座50は、当該暖房便座50の本体部である便座本体部52と、この便座本体部52に結合されると共に、暖房便座50を倒した際に便器本体5側に位置し、便器本体5に対向する裏蓋58とを有している。このうち、便座本体部52は、暖房便座50を倒した場合における当該便座本体部52の上側の面が、便器1を使用する使用者が着座する際の着座面53として設けられている。
【0026】
また、便座本体部52には、ヒンジ部54が設けられており、暖房便座50と便座支持体12とは、この便座本体部52のヒンジ部54と便座支持体12とが支持軸16によって接続されることにより、この支持軸16を介して接続されている。暖房便座50は、この支持軸16を中心として便座支持体12に対して回動可能に設けられており、便座支持体12は、便器本体5への固定部分として設けられている。このため、便座支持体12を便器本体5に固定した状態で、暖房便座50を、支持軸16を中心として回動させた場合には、暖房便座50は、便器本体5に対して回動する。
【0027】
図4は、便座ユニットに設けられる電気部品の説明図である。図5は、図4のA−A断面図である。暖房便座50は、電磁誘導によって加熱を行う誘導加熱が可能に設けられている。便座ユニット10には、この誘導加熱に用いる電気部品を含め、複数の電気部品が設けられており、これらの電気部品の制御部として、便座支持体12には支持体側制御部20が配設されており、暖房便座50には便座側制御部21が配設されている。
【0028】
便座支持体12は箱状に形成され、支持体側制御部20は、便座支持体12に内設されている。支持体側制御部20は、外部の電源40に接続されており、電源40から供給された電気を、便座ユニット10が有する各電気部品に送電している。
【0029】
また、便座支持体12には、支持体側制御部20に接続されるスイッチ基板25が設けられている。このスイッチ基板25は、便座支持体12の外面に位置するスイッチボタン(図示省略)を有しており、スイッチボタンの操作状態は、スイッチ基板25から支持体側制御部20に伝達される。支持体側制御部20は、スイッチ基板25から伝達されたスイッチボタンの操作状態に基づいて、便座ユニット10が有する各電気部品の制御を行う。
【0030】
また、暖房便座50は、支持軸16を介して便座支持体12に接続されており、支持軸16を中心として便座支持体12に対して回動可能に設けられているが、便座支持体12には、この支持軸16を回動させることができる駆動モータ15が設けられている。この
駆動モータ15は、支持体側制御部20によって制御可能に設けられており、駆動モータ15を作動させて支持軸16を回動させることにより、暖房便座50を起立させたり倒したりすることが、電気制御によって可能になっている。
【0031】
また、暖房便座50は、電源40に接続される支持体側制御部20に対して電気的に直接接続されておらず、暖房便座50には、給電装置30を介して電気の供給が可能に設けられている。この給電装置30は、便座支持体12側に配設される送電部31と、暖房便座50側に配設される受電部34とにより構成される。このうち、送電部31は、一次側コイル32を外周に巻き付けた一次側コア33を有しており、支持体側制御部20に接続されている。また、受電部34は、二次側コイル35を外周に巻き付けた二次側コア36を有しており、便座側制御部21に接続されている。
【0032】
一次側コア33と二次側コア36との配置は、少なくとも暖房便座50を倒した状態の場合に互いに近接する位置に設けられている。給電装置30による支持体側制御部20から暖房便座50側への給電は、支持体側制御部20から一次側コイル32に対して適当な周波数の交流電流を供給することにより、二次側コイル35で誘導起電力が発生する。このように発生した電力が、暖房便座50に設けられる便座側制御部21に伝達されることにより、暖房便座50側に電気が供給される。
【0033】
また、暖房便座50には、後述する誘導加熱用コイル61が設けられる誘導加熱用シート60が配設されている。誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61は、便座側制御部21に接続されており、便座側制御部21は、誘導加熱用コイル61に高周波電流を送電している。また、暖房便座50には発熱体70が設けられており、誘導加熱用コイル61に高周波電流を送電することにより、発熱体70を加熱させることが可能になっている。即ち、暖房便座50は、誘導加熱用コイル61と発熱体70とにより、誘導加熱が可能になっている。さらに、暖房便座50には、サーミスタ(図示省略)等の温度検出手段が設けられており、温度検出手段での検出結果に基づいて、誘導加熱の制御を行う。
【0034】
図6は、図4のB−B断面図である。図7は、図6のC部詳細図である。誘導加熱用シート60は、PET(Polyethylene terephthalate)等の部材からなるシート62に、誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61が接着されている。この誘導加熱用コイル61は、シート62における一方の面に、誘導加熱に適した配線パターンで接着されており、例えば、熱を与えることによって接着力を発生する感熱接着剤65によって、誘導加熱用コイル61はシート62に接着されている。このように、高周波電流を通電する誘導加熱用コイル61として用いられる導線としては、線径が細く、外周に数μm程度の厚さの絶縁被膜が施された素線を複数本撚り合わせたリッツ線が用いられている。
【0035】
また、シート62には、誘導加熱用コイル61が接着されている面の反対の面に、他の部材に対して接着可能な接着層63が設けられている。誘導加熱用シート60は、この接着層63が便座本体部52に接着されることにより、暖房便座50に設けられている。このように、誘導加熱用シート60が便座本体部52に接着される位置は、便座本体部52における着座面53の反対の面になっている。
【0036】
詳しくは、便座本体部52は、樹脂材料からなると共に、便器本体5の上部の縁に沿って形成されている。さらに、便座本体部52は、便器本体5の上部の縁に沿っている部分の各断面形状が、支持軸16を中心として暖房便座50を倒した場合における上側に凸となる方向に、概ね湾曲している。
【0037】
誘導加熱用シート60は、このように湾曲して形成されている便座本体部52の凹側の面、或いは、暖房便座50を倒した場合における便座本体部52の下側の面に、接着層63で接着することにより、取り付けられている。
【0038】
また、便座本体部52には、暖房便座50を倒した場合における便器本体5側の位置である便座本体部52の下方側に、湾曲して形成される便座本体部52の凹んでいる側を閉じる裏蓋58(図3参照)が結合される。便座本体部52は、このように裏蓋58が結合することにより内側が閉塞した状態になるため、誘導加熱用シート60は、暖房便座50に内設された状態になる。
【0039】
また、湾曲して形成されている便座本体部52の凸側の面であり、暖房便座50を倒した場合における便座本体部52の上側の面には、鉄やアルミニウム等の金属材料によって形成される発熱体70が、便座本体部52の上面のほぼ全域を覆って配設されている。
【0040】
また、便座本体部52の上側の面は、暖房便座50の着座面53として設けられているため、発熱体70は着座面53に位置し、暖房便座50は、発熱体70の表面が着座面53となって形成されている。このため、誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより発熱する発熱体70は、便座本体部52における誘導加熱用シート60よりも着座面53側に配設されている。
【0041】
なお、着座面53は、発熱体70の表面を着座面53として用いるのではなく、発熱体70の表面の一部、または全部を覆う薄い化粧板(図示省略)を設け、この化粧板の表面を着座面53として使用してもよい。
【0042】
また、このように上側の面に発熱体70が配設される便座本体部52の下側の面には、誘導加熱用シート60が取り付けられている。便座本体部52において、このように発熱体70や誘導加熱用シート60が取り付けられている部分は、湾曲した板状の形状で形成されている。このため、発熱体70と誘導加熱用シート60とは、便座本体部52を介して近接して配設されている。
【0043】
図8は、図6のD−D矢視図である。図9は、図8に示す誘導加熱用シートに形成される誘導加熱用コイルの配線パターンの説明図である。これらのように、暖房便座50に内設されている誘導加熱用シート60は、2つに分割されて設けられている。詳しくは、誘導加熱用シート60は、支持軸16を中心とする暖房便座50の回動方向に直交する方向を中心として、線対称になるように2分割されている。即ち、誘導加熱用シート60は、2つのシート62が対称となる形状で形成されており、このそれぞれのシート62に、誘導加熱用コイル61が対称となる配線パターンで接着されている。このように、2つに分割された誘導加熱用シート60は、誘導加熱用コイル61の配線パターンが、シート62と共にほぼ線対称になって形成されている。誘導加熱用コイル61は、このように誘導加熱用コイル61の配線パターンの範囲が分割されることにより、2つに分割されて形成される誘導加熱用シート60を、それぞれ便座本体部52に取り付けることにより、誘導加熱用コイル61を暖房便座50に配設する。このように、誘導加熱用シート60を分割することにより、平面として作れられたシート62を、3次元形状を持つ便座本体部52に容易に貼り付けることができる。
【0044】
なお、図9の64a、64bは、シート62に設けられる位置決め用の穴である。便座本体部52に、穴64a、64bに対応する凸部を設けておくことにより、誘導加熱用シート60の便座本体部52への取り付け位置を正確に保つことができる。
【0045】
この実施形態1に係る暖房便座50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態1に係る暖房便座50を備える便器1では、スイッチ基板25に設けられるスイッチボタンの状態と、便蓋6が開いているか否か等の便器1の状態に応じて、支持体側制御部20で、電源40から供給された電気を各電気部品に送電したり、各電気部品の作動を制御したりする。また、暖房便座50に電気を供給する際には、給電装置30を介して、便座支持体12側から暖房便座50に対して給電する。
【0046】
給電装置30を介して暖房便座50に給電された電気は、便座側制御部21に送電される。便座側制御部21では、この電気を、所定の周波数、例えば、20kHz〜100kHz程度の周波数の高周波電流にして、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61に送電する。この高周波電流が誘導加熱用コイル61に通電されると、誘導加熱用コイル61の周囲の磁束が高周波に応じて変化する。
【0047】
高周波電流の通電によって誘導加熱用コイル61の周囲の磁束が変化した場合、発熱体70がこの磁束の変化の影響を受け、発熱体70内に渦電流が流れる。発熱体70内を電気が流れた場合、発熱体70は、当該発熱体70を構成する金属の電気抵抗によって発熱し、暖房便座50の着座面53の温度は上昇する。即ち、暖房便座50は、誘導加熱用コイル61と発熱体70との誘導加熱によって温度が上昇する。
【0048】
また、このように誘導加熱によって暖房便座50の温度を上昇させる場合には、サーミスタ(図示省略)等の温度検出手段によって暖房便座50の温度を検出しながら、温度調節を行う。つまり、温度検出手段での検出結果が、予め設定された温度や、スイッチ基板25のスイッチボタンによって設定された温度よりも低い状態を示している場合には、誘導加熱の出力を大きくする、または、誘導加熱の状態を維持する。これに対し、温度検出手段での検出結果が、予め設定された温度や、スイッチ基板25のスイッチボタンによって設定された温度よりも高い状態を示している場合には、誘導加熱の出力を小さくする、または、誘導加熱を停止する。これにより、誘導加熱によって上昇させる着座面53の温度を、所望の温度にする。
【0049】
以上の暖房便座50は、誘導加熱用コイル61がシート62に接着されることにより形成される誘導加熱用シート60を2つに分割し、この分割された誘導加熱用シート60を、発熱体70が配設される便座本体部52に取り付けている。このように、誘導加熱用シート60を、2つに分割することにより、1つ1つの誘導加熱用シート60の大きさを小さくすることができる。これにより、誘導加熱用コイル61を便座本体部52に取り付けることを目的として誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付ける際、便座の形状に合わせて取り付け易くなる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0050】
図10は、誘導加熱用シートを分割する場合におけるシートの取り出し状態を示す説明図である。図11は、誘導加熱用シートを一枚で形成する場合におけるシートの取り出し状態を示す説明図である。また、誘導加熱用シート60を2つに分割することにより、シート62の素材であるシート素材80から、誘導加熱用シート60で使用するシート62を取り出す際における無駄な部分を減少させることができる。つまり、誘導加熱用シートを分割せず、誘導加熱用シートで使用するシート82を1枚のシート82によって形成する場合には、各シート82は、最低限、最終的なシート82の形状の大きさをシート素材80から取り出す必要があるため、シート素材80からの効果的な取り出しが困難になる。特に、シート82の内側に穴が形成されている場合には、この穴の部分に位置するシート素材80は、使用できない部分になるため、シート素材80における無駄な部分が増加する(図11)。
【0051】
これに対し、本実施形態1に係る暖房便座50で用いる誘導加熱用シート60のように、誘導加熱用シート60を2つに分割し、これによりシート62も分割する場合には、1つ1つのシート62の大きさが小さくなるため、シート素材80からシート62を取り出す際におけるシート62の配置の組み合わせを、無駄な部分を低減した配置にすることができる。さらに、このようにシート62を分割することにより、最終的な誘導加熱用シート60の形態では穴が形成される場合でも、1つ1つのシート62に穴が形成されることを抑制することができ、シート素材80における無駄な部分をより減少させることができる(図10)。従って、誘導加熱用シート60を分割することにより、シート62を取り出すシート素材80の無駄を減少させることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0052】
但し、これまでに説明した実施形態1においては、相対する2枚の誘導加熱シート60の間の部分、即ち、図8のF、G部分は、誘導加熱用コイル61の密度が不均一になるため、温度が均一になり難い。そこで、実施形態2を用いることができる。
【0053】
[実施形態2]
実施形態2に係る暖房便座50は、実施形態1に係る暖房便座50と略同様の構成であるが、誘導加熱用シート60の端部が重ねられている点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図12は、実施形態2に係る暖房便座に設けられる誘導加熱用シートの説明図である。本実施形態2に係る暖房便座50では、実施形態1に係る暖房便座50に設けられる誘導加熱用シート60と同様に、誘導加熱用シート60は2つに分割されている。さらに、本実施形態2に係る暖房便座50では、2つに分割された誘導加熱用シート60は、端部68を重ねて便座本体部52に取り付けられている。
【0054】
図13は、図12のE部詳細図である。このように、端部68を重ねて便座本体部52に取り付ける誘導加熱用シート60は、重ねる部分の誘導加熱用シート60同士の向かい合わせ方向における、誘導加熱用シート60のそれぞれの端部68に位置する誘導加熱用コイル61の幅の1.5倍以下の範囲内で誘導加熱用コイル61同士が重なるようにして、誘導加熱用シート60同士を重ねる。なお、ここでいう誘導加熱用シート60同士の向かい合わせ方向とは、誘導加熱用シート60の端部68付近で折り返すように、或いは、約180°向きを変えるように配設される誘導加熱用コイル61における、折り返し方向を指している。
【0055】
誘導加熱用シート60の端部68同士を重ねる部分は、誘導加熱用コイル61同士が重なっている部分における、誘導加熱用シート60同士の向かい合わせ方向の誘導加熱用コイル61全体の幅Wtが、誘導加熱用コイル61の同方向におけるそれぞれの幅W1、W2とのうち、幅が広い方の幅の1.5倍以下の範囲内になるように重ねられている。また、このように誘導加熱用シート60の端部68同士を重ねる部分における誘導加熱用コイル61を流れる電流の方向は、重なっている部分の双方の誘導加熱用コイル61を流れる電流が、互いに反対向きになる方向で流れるように設けられている。
【0056】
この実施形態2に係る暖房便座50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。誘導加熱を行う場合、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより、発熱体70を発熱させるが、この誘導加熱は、誘導加熱用シート60の端部68付近でも行われる。
【0057】
ここで、誘導加熱用シート60の端部68同士が重ねられている部分において、互いに重なっている双方の誘導加熱用コイル61を流れる電流の向きは、互いに反対向きになって流れているため、誘導加熱用コイル61に高周波電流が流れることによりこの部分で発生する磁界は、互いに打ち消し合う方向の磁界が発生する。このため、このように誘導加熱用コイル61同士が重なり、電流の向きが反対向きとなっている部分では、誘導加熱は行われなくなる。
【0058】
従って、誘導加熱用シート60の端部68同士付近では、誘導加熱用シート60同士の向かい合わせ方向に沿った方向に形成される誘導加熱用コイル61を流れる電流による磁界のみが発生し、端部68が重ねられる双方の誘導加熱用シート60に設けられる誘導加熱用コイル61同士が、連続して形成されるような形態で磁界が発生する。これにより、誘導加熱による発熱が均一化される。
【0059】
以上の暖房便座50は、複数に分割された誘導加熱用シート60の端部68を重ねて便座本体部52に取り付けるので、誘導加熱用シート60の端部68に位置する誘導加熱用コイル61も重ねることができる。これにより、誘導加熱用シート60を分割することに起因して、誘導加熱時に分割部分の温度が不均一になることを抑制できる。
【0060】
また、誘導加熱用コイル61の幅の1.5倍以下の範囲内で誘導加熱用コイル61同士が重なるように誘導加熱用シート60同士を重ねるので、誘導加熱用コイル61同士が重なった部分同士の磁界は打ち消し合わせて誘導加熱を行うことができる。これにより、より確実に、誘導加熱用シート60の端部68付近の誘導加熱時における温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シート60を分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【0061】
[実施形態3]
実施形態3に係る暖房便座50は、実施形態1に係る暖房便座50と略同様の構成であるが、分割後の誘導加熱用シート60の幅の適正化を図っている点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。図14は、実施形態3に係る暖房便座に設けられる誘導加熱用シートの説明図である。本実施形態3に係る暖房便座50では、実施形態1に係る暖房便座50に設けられる誘導加熱用シート60と同様に、誘導加熱用シート60は2つに分割されているが、この実施形態3に係る暖房便座50では、分割後の幅が適切な幅になるように分割されている。
【0062】
具体的には、暖房便座50の幅が広い部分と狭い部分とが概ね区分けされ、誘導加熱用シート60は、その区分けに合わせて分割する。この場合、分割後のそれぞれの誘導加熱用シート60において最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となって複数に分割されているのが好ましい。
【0063】
また、このように誘導加熱用シート60を複数に分割した場合、誘導加熱用コイル61も、最適な巻き方にして配設する。例えば、隣接する誘導加熱用コイル61同士で、電流の方向が逆相になる部分、例えば、図14の下部分の間隔は、便座本体部52における誘導加熱用シート60が取り付けられている部分の厚さの3倍以上にすると、隣接する誘導加熱用コイル61の磁場の相殺が少なくなり、効率が良くなる。ただし、間隔Hを20mm以上にすると、その部分で誘導加熱が行われ難くなり、温度が上昇し難くなって冷たく感じ易くなるので、間隔Hは20mm以下にする。
【0064】
また、隣接する誘導加熱用コイル61同士で、電流の方向が同相になる部分の誘導加熱用コイル61同士の間隔Jは、便座本体部52における誘導加熱用シート60が取り付けられている部分の厚さの2倍未満にすると、温度分布が均一になり易くなる。ただし、便座本体部52の縁は、誘導加熱用コイル61の密度が小さくなって温度が低くなり易いので、誘導加熱用コイル61の密度を、他の部分の2倍程度の密度にするのが好ましい。
【0065】
また、暖房便座50、或いは誘導加熱用シート60の幅が広い部分では、電流の方向が同相になる誘導加熱用コイル61の中心線に沿う部分が、誘導加熱による温度上昇が大きくなり過ぎ、高温になる場合がある。この場合は、この部分の誘導加熱用コイル61の密度を下げるのが好ましい。
【0066】
以上に述べた誘導加熱用コイル61の間隔調整は、便座の幅が大きく変わった場合、幅の異なる部分で共立させるのは難しいが、幅が略同じ部分で誘導加熱用シート60を分割すれば、それぞれの部分を最適に設計することができる。
【0067】
また、暖房便座50の形状によって、部分的に誘導加熱用シート60の幅が広くなり、また、誘導加熱用シート60の分割もし難い部分では、この部分の誘導加熱用コイル61の密度を補う誘導加熱用コイル61を設けてもよい。
【0068】
この実施形態3に係る暖房便座50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。誘導加熱を行う場合、誘導加熱用シート60が有する誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより、発熱体70を発熱させるが、誘導加熱用シート60は複数に分割されており、それぞれの誘導加熱用シート60において最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となっている。即ち、複数に分割された誘導加熱用シート60は、それぞれの誘導加熱用シート60内での幅の変化が小さくなっている。
【0069】
このため、それぞれの誘導加熱用シート60内での誘導加熱用コイル61の密度の変化が小さくなっており、誘導加熱時に誘導加熱用コイル61に高周波電流を通電することにより発生する磁界も、場所ごとの差が小さくなって発生する。従って、誘導加熱による発熱が均一化される。
【0070】
以上の暖房便座50は、各誘導加熱用シート60における最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となるように、誘導加熱用シート60を分割している。これにより、誘導加熱時における、それぞれの誘導加熱用シート60ごとの磁界の均一化を図ることができ、誘導加熱時の温度分布の均一化を図ることができるため、誘導加熱用シート60全体の温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シート60を分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【0071】
また、それぞれの誘導加熱用シート60内での幅の変化が小さくなるように、誘導加熱用シート60を複数に分割することにより、容易に磁界の均一化を図ることができ、容易に、誘導加熱時の発熱量の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シート60を分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より容易に抑制することができる。
【0072】
図15は、実施形態1に係る暖房便座の変形例を示す説明図である。なお、実施形態1に係る暖房便座50は、誘導加熱用シート60は、支持軸16を中心とする暖房便座50の回動方向に直交する方向を中心として、線対称になるように2分割されているが、誘導加熱用シート60は、この方向以外で分割してもよい。例えば、図15に示すように、誘導加熱用シート60の面上において、暖房便座50の回動方向に直交する方向における便座本体部52の長さの中央付近で、暖房便座50の回動方向に平行な方向に沿って2分割してもよい。誘導加熱用シート60を、この方向に分割した場合でも、1つ1つの誘導加熱用シート60の大きさを小さくすることができ、誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付ける際における、取り付けの容易性を向上させることができる。この結果、誘導加熱用コイル61を所望の部位に容易に取り付けることができる。
【0073】
図16は、実施形態1に係る暖房便座のもう一つの変形例を示す説明図である。また、誘導加熱用シート60は、2分割以外の分割数で分割してもよい。例えば、図16に示すように、暖房便座50の幅、或いは誘導加熱用シート60の幅ごとに、4分割してもよい。この場合、実施形態3に係る暖房便座50と同様に、分割後のそれぞれの誘導加熱用シート60において最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となって複数に分割されているのが好ましい。誘導加熱用シート60の分割は、2分割に限らず、複数に分割することにより、誘導加熱用シート60を便座本体部52に取り付ける際における、取り付けの容易性を向上させることができる。また、この範囲内になるように誘導加熱用シート60を分割することにより、誘導加熱時の温度分布の均一化を図ることができ、誘導加熱用シート60全体の温度分布の均一化を図ることができる。これらの結果、誘導加熱用コイル61の取り付け性の向上と、誘導加熱の性能の確保とを両立させることができる。
【0074】
また、実施形態3に係る暖房便座50では、誘導加熱用シート60を分割する際の基準として、分割後のそれぞれの誘導加熱用シート60の幅に基づいて分割しているが、誘導加熱用シート60の分割は、これ以外に基づいて行ってもよい。例えば、誘導加熱用シート60は、誘導加熱用コイル61の密度が同程度になるように複数に分割してもよい。これにより、誘導加熱時における、それぞれの誘導加熱用シート60ごとの磁界の均一化を、より確実に図ることができる。従って、それぞれの誘導加熱用シート60における誘導加熱時の温度分布の均一化を、より確実に図ることができ、より確実に誘導加熱用シート60全体の温度分布の均一化を図ることができる。この結果、誘導加熱用シート60を分割することに起因する誘導加熱の性能の低下を、より確実に抑制することができる。
【0075】
また、本発明に係る暖房座の実施形態として上述した実施形態1〜3及びその変形例では、暖房便座50を用いて説明しているが、本発明に係る暖房座は、暖房便座以外のものに適用してもよい。本発明に係る暖房座は、誘導加熱によって温度を上昇させることができ、着座時に使用されるものであれば、その用途や態様は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明に係る暖房座は、誘導加熱を行う誘導加熱用コイルにリッツ線が用いられる場合に有用であり、特に、誘導加熱用コイルを取り付ける部分の形状が複雑な形状である場合や、誘導加熱用コイルの配線パターンが複雑な場合に適している。
【符号の説明】
【0077】
1 便器
5 便器本体
6 便蓋
10 便座ユニット
12 便座支持体
20 支持体側制御部
21 便座側制御部
30 給電装置
40 電源
50 暖房便座
52 便座本体部
53 着座面
58 裏蓋
60 誘導加熱用シート
61 誘導加熱用コイル
62 シート
63 接着層
65 感熱接着剤
68 端部
70 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱時に高周波電流を通電する誘導加熱用コイルと、
シートに前記誘導加熱用コイルが接着される誘導加熱用シートと、
着座面を有すると共に、前記誘導加熱用シートが取り付けられる本体部と、
前記本体部における前記誘導加熱用シートよりも前記着座面側に配設され、且つ、前記誘導加熱用シートが有する前記誘導加熱用コイルに高周波電流を通電することにより発熱する発熱体と、
を備え、
前記誘導加熱用シートは複数に分割されていることを特徴とする暖房座。
【請求項2】
複数に分割された前記誘導加熱用シートは、端部を重ねて前記本体部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の暖房座。
【請求項3】
前記誘導加熱用シートは、重ねる部分の前記誘導加熱用シート同士の向かい合わせ方向における、前記誘導加熱用シートのそれぞれの端部に位置する前記誘導加熱用コイルの幅の1.5倍以下の範囲内で前記誘導加熱用コイル同士が重なるように前記誘導加熱用シート同士を重ねることを特徴とする請求項2に記載の暖房座。
【請求項4】
前記誘導加熱用シートは、分割後のそれぞれの前記誘導加熱用シートにおいて最も幅が広い部分の幅が、最も幅が狭い部分の幅の1.5倍以下となって複数に分割されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房座。
【請求項5】
前記誘導加熱用シートは、前記誘導加熱用コイルの密度が同程度になるように複数に分割されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の暖房座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−239941(P2011−239941A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114541(P2010−114541)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】