説明

暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止方法、その装置、およびそのプログラム

【課題】暖房用ボイラを夏季に使用休止した場合にも燃料ノズルの目詰まりを防止する。
【解決手段】灯油等の燃料を加圧してバーナに供給する電磁ポンプ(2)と、電磁ポンプ(2)により圧入された燃料を燃焼筒(4)内へ噴射して霧化する燃料噴射ノズル(5)と、燃焼筒(4)で発する高温の燃焼ガスにより熱媒を加熱する熱交換器(11)と、熱交換器(11)から熱媒の循環を受けてすることにより暖房に必要な熱量を放出する暖房回路(19)と、燃料噴射を制御することが可能なバーナコントローラ(9)と、制御出力に応じて電磁ポンプ(2)を運転制御する電磁ポンプ制御手段と、所定時間の連続休止期間(r)により春季暖房打ち切りを認識する暖房打ち切り確認手段と、暖房打ち切り時点で燃料噴射ノズル(5)から非点火燃料を間欠的に噴射させる目詰まり防止制御手段と、秋季には噴射を止める噴射停止手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は灯油等の液体燃料を燃料噴射ノズルから噴出させて燃焼させる燃焼装置に関するものであり、特に暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止方法、その装置、およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の燃焼装置は種々のものが提案されていて、灯油等を気化させた可燃ガスを燃焼させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、燃料を供給する燃料噴射手段と、供給された燃料を気化させる気化室を配設した気化部と、この気化部を加熱するヒータと、気化部で気化したガスを噴出させるノズルと、ノズルから噴出したガスを燃焼させるバーナ部を備え、気化室には複数本の軸線の間に多数の植毛線を挟み込み、前記軸線をねじって形成した円筒ブラシ形状の気化エレメントおよび多孔体の気化ユニットを配設して構成された燃焼装置である。
【特許文献1】特開平11−72206(段落0003〜0017、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような構成の燃焼装置は、主に夏季を跨ぐ長期にわたって休止状態が続いた場合、燃料噴射ノズル内や、噴出孔に残留した燃料が、熱、光により酸化する。この過酸化物と周囲の銅、銅合金、銅化合物の銅イオンが結びつき酸化反応を加速させ、ガム状化合物が形成される。このガム状化合物が燃料噴射ノズルの噴出孔を閉塞するため、主に秋季暖房再開時に燃料を噴射できず、暖房不能という致命的故障を生ずるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、長期間保存され酸化したガム状化合物等により、燃料噴射ノズルの噴出孔が目詰まりすることを防止できるようにした、暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止方法、その装置、およびそのプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、連続休止期間(r)に基づく春季暖房打ち切りの確認から秋季暖房再開までの期間、燃料噴射ノズル(5)から非点火燃料を所定秒数噴射して所定期間休止する間欠噴射を繰り返すことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止方法である。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、春季に暖房を打ち切ってから、秋季に暖房を再開するまでの期間は休止期間となるが、予め定めておいた連続休止期間(r)が認識されたならば、春季暖房打ち切りとみなして燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止対策を実行する。すなわち、春季暖房打ち切りから秋季暖房再開までの期間、燃料噴射ノズル(5)で燃焼させないように点火しない燃料を規定された数秒間だけ噴射することにより燃料噴射ノズル(5)内の残留分を入れ替える。その噴射後は、長期間保存により酸化してガム状化合物等が生じないように、時期を見計らって間欠噴射を繰り返す。そうすると、長期休止による燃料噴射ノズル(5)の目詰まりを防止できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明に加えて、前記暖房用ボイラ(20)で季節を問わない燃焼停止から計時して連続休止期間(r)が所定時間を超えたらインターバルカウント(N)を初期値と数えて燃料噴射ノズル(5)から残留燃料を排出可能な第1設定秒数(α)だけ非点火燃料を噴射し、前記噴射から所定日数の連続休止期間(R)を経過する毎にカウントアップしたインターバルカウント(N′)が所定回数に到達するまで最小限の第2設定秒数(β)だけ非点火燃料の間欠噴射を繰り返すことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止方法である。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、春季と冬季の区別無く暖房用ボイラ(20)を燃焼停止した後に、例えば、連続休止期間(r)が72時間を超えたならば、インターバルカウント(N)の初期値を、例えば、1と数えて燃料噴射ノズル(5)から、第1設定秒数(α)として、例えば、5秒だけ燃料を噴射するが点火しないで暖房用ボイラ(20)内に漏洩させる。インターバルカウント(N)を1で示す初回の燃料噴射は、燃料噴射ノズル(5)から残留燃料を排出可能な分量で実行する。寒冷季最後の燃焼により加熱された燃料噴射ノズル(5)内部に残留する加熱履歴のある燃料の劣化程度が顕著であり、この残留燃料を一掃するためである。
【0010】
第1設定秒数(α)の噴射後、例えば、連続休止期間(R=45日)を経過する毎に、例えば、第2設定秒数(β)として、2秒だけ燃料を噴射する。この噴射で1を足すようにカウントアップしながら間欠噴射を繰り返し、インターバルカウント(N′)が、例えば、6に到達したら間欠噴射をやめる。
【0011】
このようにして、暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)の目詰まりを防止できる。なお、春季と冬季の区別無く燃焼停止したとしても、連続休止期間(r)が72時間を超えなければ、冬季とみなされるので、夏季になったら間欠噴射を停止する不具合は生じない。そして、秋になれば間欠噴射を停止しても、目詰まり防止を維持した状態で、約1ヶ月以内に再開する暖房を待てばよい。したがって、暖房用ボイラを燃焼停止した時期の区別無く、長期休止後の燃料噴射ノズル(5)の目詰まりを確実に防止し、支障なく暖房再開することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、燃料を加圧してバーナに供給する電磁ポンプ(2)と、前記電磁ポンプ(2)により圧入された燃料を燃焼筒(4)内へ噴射して霧化する燃料噴射ノズル(5)と、前記電磁ポンプ(2)を運転制御する電磁ポンプ制御手段と、所定の連続休止期間(r)が計時された時点で春季暖房打ち切りを認識する暖房打ち切り確認手段と、前記春季暖房打ち切りが認識されてから秋季暖房再開するまで非点火燃料を前記燃料噴射ノズル(5)から間欠噴射させるように前記電磁ポンプ(2)を制御する目詰まり防止制御手段と、を備えたことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止装置(100)である。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、春季暖房打ち切りの確認された時点で、目詰まり防止制御手段により燃料噴射ノズル(5)から所定タイミングで燃料を間欠的に噴射させる。ここで、間欠噴射された燃料には点火されないため燃焼筒(4)内を問題ない程度に湿潤させる。そうすると、燃料噴射ノズル(5)内に残留燃料を長期滞留させず、残留燃料が酸化する前に、新しい燃料を燃料噴射ノズル(5)内に噴射させて、残留燃料を排出させることが可能となる。
【0014】
要するに、季節要因により暖房用ボイラ(20)を長期間休止する際に、所定のインターバル期間をおいて数秒間、新しい燃料を燃料噴射ノズル(5)に圧入して噴射させ、古い残留燃料を確実に燃焼筒(4)内へ排出させることが可能である。
【0015】
また、設置される地域に応じた温暖地と寒冷地の別で季節の違いも吸収できる。なぜならば、暖房打ち切り確認手段は、春季の最終使用日から、例えば3日間の連続休止期間(r)が認識されることを条件としているので、暖房打ち切りをほぼ確実に知ることが可能だからである。
【0016】
一方、間欠噴射の停止を判断する秋季暖房再開時期は、カレンダーにより推定する程度であるが、秋になって不必要な間欠噴射を止めた時から1ヶ月ぐらいならば、非点火の間欠噴射により加熱履歴のない残留燃料のため目詰まりしないので、間欠噴射停止後に1ヶ月以内の暖房再開を待てば燃焼不良なしに正常な暖房再開が可能である。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明に加えて、前記目詰まり防止制御手段は、メモリ(16)に記憶された稼動日時の情報を演算処理して燃料噴射タイミングおよび点火を制御可能な暖房用ボイラ(20)に既存のプログラムを部分修正して実行させることが可能な既存のコンピュータ(CPU)を兼用利用したことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止装置である。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、暖房用ボイラ(20)に既存のコンピュータ(CPU)を兼用利用する。特に既存のプログラムを部分修正して実行させるので、基本設計のままで、追加部品等によるコストアップなしに前記目詰まり防止制御手段を機能させることが可能となる。
【0019】
請求項5に係る発明は、メモリ(16)に記憶された稼動情報および操作情報に基づいて暖房用ボイラ(20)を制御するコンピュータ(CPU)に実行させる燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止プログラムであって、前記暖房用ボイラ(20)で季節を問わない燃焼停止を認識する燃焼停止ステップ(S10)と、前記燃焼停止ステップ(S10)から計時して連続休止期間(r)が所定日数を超えたらYESと認識する短期休止確認(S20)ステップと、前記短期休止確認ステップ(S20)でYESならばインターバルカウント(N)の初期値を前記メモリ(16)に記憶するインターバル開始ステップ(S30)と、前記インターバル開始ステップ(S30)に応じて燃料噴射ノズル(5)から非点火燃料を噴射させる電磁ポンプ(2)を所定時間だけ運転する間欠噴射開始ステップ(S40)と、前記間欠噴射開始ステップ(S40)から計時して連続休止期間(R)が所定日数を超えたらYESと認識する長期休止確認ステップ(S50)と、前記長期休止確認ステップ(S50)でYESならばカウントアップしたインターバルカウント(N′)を前記メモリ(16)に記憶して更新するインターバルカウントアップステップ(S60)と、前記インターバルカウント(N′)が所定回数に到達したらYESと認識して目詰まり防止制御を終了するインターバル終了確認(S70)ステップと、前記インターバル終了確認ステップ(S70)でNOならば前記電磁ポンプ(2)を所定時間運転する間欠噴射繰り返し(S80)ステップと、を含んで前記コンピュータ(CPU)に実行させることを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止プログラムである。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、春季と冬季の区別無く燃焼停止(S10)から計時して連続休止期間(r)が所定日数を超えたら、コンピュータ(CPU)が短期休止を確認(S20)してインターバルを開始(S30)する。すなわち、電磁ポンプ(2)を所定時間だけ運転し、燃料噴射ノズル(5)から非点火で燃料を噴射させるように間欠噴射を開始(S40)する。
【0021】
間欠噴射開始(S40)から連続休止期間Rが所定日数を超える毎に、コンピュータ(CPU)が長期休止と確認(S50)し、インターバルカウント(N′)をN′=N+1と演算処理してメモリ(16)の記憶を更新するようにインターバルカウントアップ(S60)する。
【0022】
インターバル終了確認ステップ(S70)で、インターバルカウント(N′)が所定回数に到達してインターバル終了確認(S70)して終了するまで間欠噴射を繰り返す(S80)。
【0023】
このようにプログラムを構成したから、燃焼筒(4)内へ間欠噴射する燃料を、必要最小限の量に設定できるので、非点火の燃料により暖房用ボイラ(20)内を湿潤させて故障させるような不具合は生じない。しかも、間欠的な燃料噴射タイミング、点火タイミング、および送風のON−OFFもプログラム次第で最適に設定可能なので、夏季に間欠噴射する燃料を不必要に空焚き燃焼させたり、空送風したりする不具合もない。
以上、説明したように、暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止プログラムの実効性を保証することができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によれば、長期休止による燃料噴射ノズルの目詰まりを防止できる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、暖房用ボイラを燃焼停止した時期の区別無く、長期休止後の燃料噴射ノズルの目詰まりを確実に防止し、支障なく暖房再開することができる。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、暖房打ち切りの時を正確に確認できるので、設置地域別で温暖地と寒冷地の違いによるカレンダーと季節感とのズレを吸収することが可能である。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、既存のメモリと協働するコンピュータのプログラムを部分修正するだけで、暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止プログラムを安価で確実に提供することができる。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、燃焼筒内へ間欠噴射する燃料を、必要最小限の量に設定できるので、何ら不具合は生じない。しかも、間欠的な燃料噴射タイミングおよび点火タイミングもプログラム次第で設定可能なので、夏季に間欠噴射した燃料を不必要に空焚き燃焼させる不具合もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下、各図にわたって同一効果の部位(または制御ステップ)には同一符号(S番号)を付して説明の重複を避ける。
【0030】
図1は第1実施形態に係る暖房用ボイラ20における燃料噴射ノズル目詰まり防止装置(以下、「本装置」ともいう)100の構成図である。図1に示すリモコン10により適宜操作される暖房用ボイラ20から熱交換媒体となる温水(以下、単に「熱媒」という)の供給を受けて暖房に必要な熱量を放出する暖房回路19により構成されている。
【0031】
暖房用ボイラ20は、燃料タンク15から灯油等の燃料がオイルフィルタ3を経由し、電磁ポンプ2で加圧され、燃料噴射ノズル5から燃焼筒4の中央部に噴射されて霧化し、送風機1により送風された空気が、混合されて燃焼する。
【0032】
リモコン10の設定温度に対する自動制御、またはタイマー制御等により、点火の指令を受けてから炎検出器6が炎を検出するまでの間、点火トランス7の低圧巻線に入力した低圧電流を断続制御する等により、高圧巻線に数万Vの高電圧を誘起して点火用電極8に印加する。そうすることにより、毎秒数回のスパーク放電を連続させるようにしたイグニッション点火装置(以下、「イグナイタ」ともいう)を構成する。
【0033】
バーナコントローラ9は、熱交換器11の一部に付設された熱電変換素子であるサーミスタ12により温度検出した検出温度と、設定温度との偏差を無くすようにフィードバック制御またはフィードフォワード制御による自動制御を実行する。制御項目は燃料噴射、送風、燃焼火力、燃焼継続時間、間欠燃焼タイミング等である。
【0034】
循環ポンプ13は、熱交換器11で加熱され高温化した熱媒を暖房回路19へ圧送し、ラジエータである暖房回路19で放熱冷却された熱媒を熱交換器11へ戻して再加熱することを繰り返す。
膨張タンク14は、熱交換器11から暖房回路19にわたる密閉管路において、温度変化に伴う溶媒の体積変化分の逃げ場として、その変化した体積分を吸収する。
【0035】
図2は本装置100のブロック図である。図2に示す演算処理部(以下、「コンピュータ(CPU)」または単に「CPU」という)により総合制御される構成を示している。メモリ16,16′と情報交換自在のCPUには、電源回路90とリレー駆動回路91,92のほか、各種の制御回路、入力回路、検知回路、リモコン送受信回路40、および各種の駆動回路が接続され、制御信号を授受する都度に制御プログラムによる演算処理を行っている。リレー駆動回路91,92は配管の適所に必要な数だけ配設された電磁弁(図示せず)が、CPUの指令どおりに開閉制御されるようにリレー駆動電流を制御する。
【0036】
また、リセット回路98は、何らかの原因でCPUが機能停止した場合の復帰手段であり、押ボタンスイッチ等(図示せず)を押して復帰させる。あるいは、タイマー、温度、その他の設定を全て初期設定状態、または白紙状態に復帰させたい場合にも用いることがある。一般的には、主電源をON→OFF→ONしてもリセットすることが可能である。
【0037】
なお、CPUはリモコンl0、またはバーナコントローラ9(図1)に内蔵されているか、あるいは何れに配設されていても構わない。また、メモリ16,16′がCPUの内外の何れに配設されているかも問題でなく、メモリ16,16′に記憶された稼動日時の情報(稼動情報)や操作を認識し対応する情報(操作情報)、および制御プログラムを一部修正することで、本発明を適用しない仕様により設計製造された類似の暖房用ボイラ20にも容易に本発明を適用することが可能となる。
【0038】
さらに、入力された稼動情報や操作情報、および各種センサ(検出器、検知回路等)からの情報を、プログラムの実行により演算処理した結果、制御信号および表示信号等(図示せず)の出力が可能なCPUを「演算処理部」、あるいは「メモリ」とあわせて「コンピュータ」と称しているが、これらの呼称が何であっても構わない。
【0039】
サーミスタ入力回路25は、検出温度に対応した検出信号を演算処理に適する信号に変換してCPUへ入力する。CPUでは設定温度に対応した設定信号と検出信号を比較して差分に相当するように暖房用ボイラ20における火力を制御する。すなわち、CPUが熱量不足と判断すれば、火力を足して暖房能力を増強するような制御信号によりバーナコントローラ9へ指令を出す。
【0040】
炎検出器入力回路61は、熱反応素子で構成された炎検出器6が所定温度以上の熱を感知した感熱信号により、バーナに着火したことを検出するので、その感熱信号を演算処理に適する信号に変換してCPUへ入力する。CPUが点火指令中であるにもかかわらず、未着火であることを認識すれば、着火を促すようにバーナコントローラ9およびイグナイタにCPUから指令を出す。
【0041】
状況に応じて適切な燃料噴射するようなCPUの指令により、電磁ポンプ制御回路22が、電磁ポンプ駆動回路21を作動させ、電磁ポンプリレー駆動回路23の励磁電流を断続させることにより、プランジャ(図示せず)を往復動作させて燃料噴射する。なお、これら制御回路、駆動回路、リレー等は設計事項につき、変形して実施しても構わない。
【0042】
接点入力回路72はイグナイタに誘起電圧を発生させるために低圧側巻線の電流を断続する接点の開閉制御に関する接点開閉信号を、CPUの指令に応じてイグナイタ駆動回路71へ入力する。一般的に前記接点が閉から開に変化するタイミングで点火用電極8にスパーク放電するので、CPUが必要と判断する時間に及んで、接点入力回路72がイグナイタに接点開閉信号を入力し、点火用電極8に毎秒数回のスパーク放電を連続させように作動する。
【0043】
なお、CPUの点火指令があれば炎検出器6により着火が確認されるまでスパーク放電が継続される。ただし、後記説明するように、燃料噴射ノズル5の目詰まり防止制御(以下、「目詰まり防止制御」と略す)の実行中は、CPUの指令により電磁ポンプ2が、燃料の噴射を開始してもスパーク放電しないようにプログラムされている。
【0044】
ファン回転数検知回路33は送風機1の回転軸またはその近傍に配設され、回転数に比例したパルス信号を発生してCPUへ入力する。CPUではパルス信号によりファンの回転数を監視しながらバーナコントローラ9の火力調整機能に即してファン制御回路32およびファン駆動回路31を動作させる。通常の暖房運転中は、暖房用ボイラ20の燃焼の強度に比例する送風強度で送風機1も連動するが、目詰まり防止制御の実行中は、CPUの指令により送風機1を回転しないようにプログラムされている。
【0045】
図3は本装置100の動作手順を示すフローチャートである。図4は本装置100の動作手順を示すタイムチャートであり、時間軸X(以下、「X軸」という)の左から右に沿って動作手順を示している。これら図3、図4に沿って、図1、図2も適宜参照しながら、目詰まり防止制御の手順を(S9)〜(S90)の各ステップに分けて説明する。
【0046】
この目詰まり防止制御において、季節を問わない燃焼停止ステップ(S10)、電源初投入ステップ(S8)、またはリセットステップ(S9)から目詰まり防止制御が開始され、インターバル終了確認ステップ(S70)において、インターバルカウントN′=6?の結果がYESであれば終了する。なお、図3、図4では「ステップ」の文言を省いており、以下の記載でも同様に省くことがある。
【0047】
以下、東京地方または山口県下関市の季節感をカレンダーにあてはめて説明する。すなわち、暖房不要となる春季の4月12日に最終使用した暖房用ボイラ20が、その燃焼を停止(S10)した後に、何ら対策しなければ約7ヶ月後に到来する秋季の11月12日に暖房再開する際に、燃料噴射ノズル5が目詰まりして、燃焼不良という不具合が発生することがある。
【0048】
この目詰まり故障の原因は、主に夏季を跨ぐ長期にわたって休止状態が続いた場合、燃料が燃料噴射ノズル5内に長期間残留することにより、燃料噴射ノズル5内や、その噴出孔に残留するためである。そのように残留した燃料が、熱、光により酸化し、この過酸化物と周囲の銅、銅合金、銅化合物の銅イオンが結びついて酸化反応を加速させ、ガム状化合物が形成され、このガム状化合物が燃料噴射ノズル5の噴出孔を閉塞するのである。
【0049】
そこで、前記不具合を回避するため、燃焼停止(S10)後の対策として、燃料噴射ノズル5内の残留燃料を排出する必要がある。燃料噴射ノズル5内の残留燃料を酸化させないようなタイミングで定期的に排出するという目詰まり防止制御について説明する。
【0050】
なお、本実施形態によれば、既存の暖房用ボイラ20に属する制御プログラムを若干修正するだけで目詰まり防止制御を実施できる。したがってコストアップは僅かで済む。
【0051】
電源初投入ステップ(S8)とは、暖房用ボイラ20を含む本装置100を設置した後、初めて電源に接続して通電した時であり、この電源初投入ステップ(S8)からも目詰まり防止制御が開始される。このことは、春夏秋冬の季節を問わず、春季または夏季に暖房用ボイラ20を設置し、設置時点で短時間の試運転等を実行したことにより燃料噴射ノズル5内に燃料が残留し秋季まで休止状態が継続したとしても、本発明に係る目詰まり防止制御の効果が発揮できるようにするためである。
【0052】
季節を問わない燃焼停止ステップ(S10)とは、理由にかかわらず暖房用ボイラ20の燃焼を停止した時を意味している。しかし、目詰まり防止制御を開始すべきタイミングは、本来ならば、春季に暖房が不要となり暖房用ボイラ20の使用休止期間が開始した時であり、その春最後に暖房を使用した際に燃焼を停止した時を意味する。
【0053】
したがって、冬季の継続的な暖房使用中における温度調整のための一時停止、あるいは、利用者が就寝、外出するために暖房を一時停止した場合は、目詰まり防止制御の対象外とする。その対象外である一時停止であるか否かの判別については、後記説明する短期休止確認ステップ(S20)の実行により確認する。
【0054】
リセットステップ(S9)とは、メモリ16に対する停電バックアップが施されていない場合の停電復帰直後と同等の初期設定状態を意味している。すなわち、メモリ16およびCPUをリセットした状態である。具体的には、暖房用ボイラ20における制御手段の一部として内蔵された時計やカレンダー、およびそれらを利用したタイマープログラム等が初期設定状態に戻る。
【0055】
なお、目詰まり防止制御に関するCPUの認識は、電源初投入ステップ(S8)と、燃焼停止ステップ(S10)と、リセットステップ(S9)とは同一状態である(図3、図4参照)。したがって、例示するように、4月12日に燃焼を停止(S10)すると、設置後に電源を初投入(S8)した状態と同じにリセット(S9)される。
【0056】
そうすると、CPUおよびメモリ16に付随するクロックに連動する時計やカレンダーを用いたシーケンス制御が実行途中であっても中断して初期設定状態に戻してから、目詰まり防止制御が開始される。あるいは、メモリ16およびCPUのリセットは、実行途中の目詰まり防止制御に関する項目のみとし、時計やカレンダーの動作は周知のバックアップにより継続させるものとしても構わない。
【0057】
ここで、4月12日に実行されたリセット(S9)から計時して連続3日間使用せずに経過したか否か?の結果がYESと短期休止確認(S20)すれば、インターバル開始(S30)する。詳しくは、春季の4月12日に寒冷季最後の使用を停止した時から計時して連続休止期間r≧72時間(3日間)の経過がCPUに認識された時点でインターバル開始(S30)する。ここで、インターバルカウントN=1とCPUで認識し、N=1をメモリ16の専用領域に記憶する。
【0058】
なお、経験則から、「連続3日間の不使用」をもって短期休止と定義するようにプログラムされているが、短期休止確認(S20)を連続休止期間r≧72時間(3日間)に限定する必要はなく、r値を適宜に加減しても構わない。さらに、24時間=1日,28〜31日=1ヶ月の定義も厳格である必要はなく、制御プログラムの構成、および、その実行を説明する便宜上の数値である。したがって図4に示した日付は目安に過ぎない。
【0059】
インターバル開始(S30)すれば、自動的に電磁ポンプ2を運転して燃料噴射ノズル5から燃料を5秒間だけ噴射するように間欠噴射を開始(S40)する。その後1.5ヶ月経過したか否か?の結果により長期の休止を確認(S50)する。この長期休止確認(S50)も連続休止期間R≧45日間(1.5ヶ月)に限定する必要はなく、R値を適宜に加減しても構わない。
【0060】
長期休止の確認(S50)において、R≧45日経過?の結果がYESであれば、CPUでインターバルカウントN′=N+1=2と認識してメモリ16に記憶するようにインターバルカウントアップ(S60)を実行する。なお、N′はNの次に1つ新しいインターバルカウントを意味するので、メモリ16のインターバルカウント領域に記憶中の数に1を足した数を記憶更新する。そして、インターバルカウント=6?であるか否かを確認するようにインターバル終了確認(S70)し、インターバルカウントN′=6?YESであれば終了する。
【0061】
インターバル終了確認(S70)において、インターバルカウントN′=6?の結果がNOであれば、電磁ポンプ2を2秒間ONして燃料噴射ノズル5から燃料を2秒間だけ噴射する間欠噴射繰り返し(S80)を実行した後、1.5ヶ月経過?したか否か長期の休止を確認(S90)する。
【0062】
長期休止を確認(S90)したところ、連続休止期間R≧45日経過?の結果がNOであれば、該当日の到来を待つ一方、連続休止期間R≧45日経過?の結果がYESであれば、インターバルカウントアップ(S60)する。ついで、インターバルの終了を確認(S70)し、インターバルカウントN′=6?の結果がYESであれば終了する。
【0063】
このようにプログラムを構成したから、燃焼筒4内へ間欠噴射する燃料を、必要最小限の量に設定できるので、非点火の燃料により暖房用ボイラ20内を湿潤させて故障させるような不具合は生じない。しかも、間欠的な燃料噴射タイミング、点火タイミング、および送風のON−OFFもプログラム次第で最適に設定可能なので、夏季に間欠噴射する燃料を不必要に空焚き燃焼させ、空送風する不具合もない。
【0064】
以上、説明したように、本発明によれば、暖房用ボイラ20の使用を、概ね春季から秋季にわたって休止した場合、熱、光、その他のダメージを受けた履歴により保存状態の悪い燃料が、燃料噴射ノズル5に長期間残留して酸化したガム状化合物等により、燃料噴射ノズル5の目詰まりを防止することを目的として、暖房用ボイラ20における燃料噴射ノズル5の目詰まり防止方法、その装置100、およびそのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態に係る本装置の構成図である。
【図2】本装置のブロック図である。
【図3】本装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本装置の動作手順を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 送風機
2 電磁ポンプ
3 オイルフィルタ
4 燃焼筒
5 燃料噴射ノズル
6 炎検出器
7 点火トランス
8 点火用電極
9 バーナコントローラ
10 リモコン
11 熱交換器
12 サーミスタ
13 循環ポンプ
14 膨張タンク
15 燃料タンク
16,16′ メモリ
19 暖房回路
20 暖房用ボイラ
21 電磁ポンプ駆動回路
22 電磁ポンプ制御回路
23 電磁ポンプリレー駆動回路
25 サーミスタ入力回路
31 ファン駆動回路
32 ファン制御回路
33 ファン回転数検知回路
40 リモコン送受信回路
61 炎検出器入力回路
71 イグナイタ駆動回路
72 接点入力回路
90 電源回路
91,92 リレー駆動回路
98 リセット回路
100 暖房用ボイラにおける燃料噴射ノズル目詰まり防止装置(本装置)
CPU コンピュータ(演算処理部)
N,N′ インターバルカウント
R,r 連続休止期間
α 第1設定秒数
β 第2設定秒数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続休止期間(r)に基づく春季暖房打ち切りの確認から秋季暖房再開までの期間、
燃料噴射ノズル(5)から非点火燃料を所定秒数噴射して所定期間休止する間欠噴射を繰り返すことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止方法。
【請求項2】
前記暖房用ボイラ(20)で季節を問わない燃焼停止から計時して連続休止期間(r)が所定時間を超えたらインターバルカウント(N)を初期値と数えて燃料噴射ノズル(5)から残留燃料を排出可能な第1設定秒数(α)だけ非点火燃料を噴射し、
前記噴射から所定日数の連続休止期間(R)を経過する毎にカウントアップしたインターバルカウント(N′)が所定回数に到達するまで最小限の第2設定秒数(β)だけ非点火燃料の間欠噴射を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止方法。
【請求項3】
燃料を加圧してバーナに供給する電磁ポンプ(2)と、
前記電磁ポンプ(2)により圧入された燃料を燃焼筒(4)内へ噴射して霧化する燃料噴射ノズル(5)と、
前記電磁ポンプ(2)を運転制御する電磁ポンプ制御手段と、
所定の連続休止期間(r)が計時された時点で春季暖房打ち切りを認識する暖房打ち切り確認手段と、
前記春季暖房打ち切りが認識されてから秋季暖房再開するまで非点火燃料を前記燃料噴射ノズル(5)から間欠噴射させるように前記電磁ポンプ(2)を制御する目詰まり防止制御手段と、
を備えたことを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止装置(100)。
【請求項4】
前記目詰まり防止制御手段は、
メモリ(16)に記憶された稼動日時の情報を演算処理して燃料噴射タイミングおよび点火を制御可能な暖房用ボイラ(20)に既存のプログラムを部分修正して実行させることが可能な既存のコンピュータ(CPU)を兼用利用したことを特徴とする請求項3に記載の暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止装置。
【請求項5】
メモリ(16)に記憶された稼動情報および操作情報に基づいて暖房用ボイラ(20)を制御するコンピュータ(CPU)に実行させる燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止プログラムであって、
前記暖房用ボイラ(20)で季節を問わない燃焼停止を認識する燃焼停止ステップ(S10)と、
前記燃焼停止ステップ(S10)から計時して連続休止期間(r)が所定日数を超えたらYESと認識する短期休止確認(S20)ステップと、
前記短期休止確認ステップ(S20)でYESならばインターバルカウント(N)の初期値を前記メモリ(16)に記憶するインターバル開始ステップ(S30)と、
前記インターバル開始ステップ(S30)に応じて燃料噴射ノズル(5)から非点火燃料を噴射させる電磁ポンプ(2)を所定時間だけ運転する間欠噴射開始ステップ(S40)と、
前記間欠噴射開始ステップ(S40)から計時して連続休止期間(R)が所定日数を超えたらYESと認識する長期休止確認ステップ(S50)と、
前記長期休止確認ステップ(S50)でYESならばカウントアップしたインターバルカウント(N′)を前記メモリ(16)に記憶して更新するインターバルカウントアップステップ(S60)と、
前記インターバルカウント(N′)が所定回数に到達したらYESと認識して目詰まり防止制御を終了するインターバル終了確認(S70)ステップと、
前記インターバル終了確認ステップ(S70)でNOならば前記電磁ポンプ(2)を所定時間運転する間欠噴射繰り返し(S80)ステップと、
を含んで前記コンピュータ(CPU)に実行させることを特徴とする暖房用ボイラ(20)における燃料噴射ノズル(5)目詰まり防止プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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