説明

曇りのない基油の製造方法

【課題】基油原料の曇りをなくすこと。
【解決手段】100℃での動粘度が10cStを超える基油を遠心力により、該基油から高曇り点を有すると推定される分子を分離して、曇り点の低下した基油、及び曇った前駆体化合物に富むフラクションを得る、該基油の曇り点を低下させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、潤滑基油から曇った前駆体を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
WO−A−02070627には、100℃での動粘度が22.9cStで流動点が+9℃で粘度指数が178の基油の製造方法が記載されている。この方法は、沸点範囲がC5〜750℃のフィッシャー・トロプシュ合成生成物を水素化異性化する工程を含む。水素化異性化工程の流出流から、沸点が370℃を超える蒸留残留物を単離し、脱蝋する。脱蝋油を蒸留して、沸点が510℃を超える蒸留残留物として以上のような基油を得ている。
【0003】
WO−A−2004007647には、フィッシャー・トロプシュ誘導蝋から重質基油を製造する方法が記載されている。この方法は、沸点範囲がC5〜750℃のフィッシャー・トロプシュ合成生成物を水素化異性化する工程を含む。水素化異性化工程の流出流から、沸点が370℃を超える蒸留残留物を単離する。この残留物は、軽質基油前駆体フラクションと重質基油前駆体フラクションとに分割される。重質基油前駆体フラクションを接触脱蝋して、流動点が−15℃で粘度指数が157で100℃での動粘度が26.65cStの基油が製造される。
【0004】
WO−A−02070627又はWO−A−2004007647の方法の利点は、高粘度で高粘度指数の基油が得られることである。問題は、接触脱蝋工程で基油が得られる際、曇りの原因となる曇り前駆体が基油中に存在することである。この曇りにより原油は、特定の用途に対する適性が低下する。
【0005】
WO−A−03033622には、フィッシャー・トロプシュ誘導蝋をディープカット蒸留により沸点範囲が1000〜1200°F(538〜649℃)のフラクション及び沸点が1200°Fを超える残留物に単離して、フィッシャー・トロプシュ誘導蝋から曇りの少ない重質基油を製造する方法が記載されている。沸点範囲が1000〜1200°Fのフラクションに対しては、水素化異性化工程を行っている。この方法によれば、流動点が+10℃未満で100℃での動粘度が15cStを超える曇りのない基油が得られる。
【0006】
WO−A−03033622によれば、曇り前駆体はディープカット蒸留により基油から除去されて、残留フラクション中に残る。この方法の欠点は、ディープカット蒸留自体にある。このような蒸留は実行困難である。また原料のかなりの部分は、塔頂生成物として回収されるので、このような蒸留にはかなりのエネルギーを必要とする。更に有価の重質基油分子は、蒸留残留物と一緒に除去される。これは重質基油の収率にとって不利である。更にまた、重質基油の最大到達粘度は、この蒸留により制限される。
【0007】
WO−A−0077125には、ブライトストック(Bright Stock)と言われる重質鉱物基油を固体アルミナ吸着剤と接触させて、基油から曇り前駆体を除去する方法が記載されている。
【0008】
US−A−3670888及びUS−A−2036966は、まず油を冷却し、次いで遠心力により蝋を分離して、油から蝋化合物を分離する方法を開示している。これらの文献は、溶剤脱蝋の代替手段として、蝋分子の大量分離用代替手段を与える。
【特許文献1】WO−A−02070627
【特許文献2】WO−A−2004007647
【特許文献3】WO−A−03033622
【特許文献4】WO−A−0077125
【特許文献5】US−A−3670888
【特許文献6】US−A−2036966
【特許文献7】EP−A−776959
【特許文献8】EP−A−668342
【特許文献9】US−A−4943672
【特許文献10】US−A−5059299
【特許文献11】WO−A−9934917
【特許文献12】WO−A−9920720
【特許文献13】AU−A−698392
【特許文献14】WO−A−0014179
【特許文献15】EP−A−532118
【特許文献16】US−A−5370788
【特許文献17】US−A−5378348
【特許文献18】US−A−4859311
【特許文献19】WO−A−9718278
【特許文献20】US−A−4343692
【特許文献21】US−A−5053373
【特許文献22】US−A−5252527
【特許文献23】US−A−4574043
【特許文献24】EP−A−1029029
【特許文献25】US−A−5157191
【特許文献26】WO−A−0029511
【特許文献27】EP−B−832171
【非特許文献1】Perry‘s Chemical Engineers’ Handbook,McGraw?Hill Book Company,ニューヨーク,1984,21−19〜21−20頁及び19−89〜19−91頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、予め脱蝋したが、なお曇っている基油から出発して、曇りのない重質基油を製造する方法を提供することである。油の曇り分は、曇り点と流動点との差で表現される。この差が少ないほど、油中に存在する曇り分は少ない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、以下の方法により達成される。100℃での動粘度が10cStを超える基油を遠心力により、該基油から高曇り点を有すると推定される分子を分離して、曇り点の低下した基油、及び曇った前駆体化合物に富むフラクションを得ることを特徴とする該基油の曇り点を低下させる方法。
【発明の効果】
【0011】
出願人は、遠心力により、予め原料油を冷却することなく、油から曇り前駆体を除去できることを見出した。更に本方法は、例えばWO−A−0077125に記載されるような吸着剤型方法で必要な再生を必要とせず、連続ベースで実施できるので有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
基油原料に対し遠心力をかける。これは周知の遠心法により達成できる。遠心力は、1000〜6000rpmの回転速度で、所望の分離を達成するのに十分な時間、好適には少なくとも15分間加えるのが好ましい。本発明方法に従って基油の遠心分離を行うには、液体サイクロンを使用するのが好ましい。サイクロンを使用すると、連続式に操作でき、これにより該方法を簡素化できるので有利である。液体サイクロンの例は、Perry‘s Chemical Engineers’ Handbook,McGraw−Hill Book Company,ニューヨーク,1984,21−19〜21−20頁に記載されている。好ましくは多数の液体サイクロンを並列法で用いてよい。このような並列操作のサイクロンの第一バンクを並列操作サイクロンの第二バンクと直列に配置してもよい。本発明を実施するための他の可能な装置は、例えばPerry‘s Chemical Engineers’ Handbook,McGraw−Hill Book Company,ニューヨーク,1984,19−89〜19−91頁に記載されるような遠心重力分離器及び液?液遠心法である。
【0013】
本発明方法の原料として使用される基油は、100℃での動粘度が好ましくは10cStを超え、更に好ましくは15cStを超え、なお更に好ましくは18cStを超えるものである。このような状況下では、この特定の粘度を有する原料は、本発明方法で得られるような沸点範囲の広い曇りのないフラクションから蒸留により単離される。単離は、好ましくは蒸留による。このような基油の例は、いわゆるブライトストックで、鉱物原油の真空蒸留工程残留物を脱アスファルトして得られる。この脱アスファルトフラクションに対しては、通常、溶剤抽出工程及び溶剤又は接触脱蝋工程を行うが、なお若干曇り成分を含む。本発明の適用により、曇りの問題はなくなる。このような鉱油誘導ブライトストックは、100℃での動粘度がなお30cStを超えている可能性がある。
【0014】
更に好ましくは基油は、100℃での動粘度が10cStを超え、更に好ましくは15cStを超え、なお更に好ましくは18cStを超えるパラフィン系基油である。基油のパラフィン含有量は、好ましくは50重量%を超え、更に好ましくは70重量%を超え、なお更に好ましくは90重量%を超える。パラフィン含有量は以下の方法で測定する。
【0015】
シクロ−、ノーマル−及びイソ−パラフィン混合物中のシクロパラフィン(ナフテン系化合物)の含有量は、以下の方法により測定する。同じ結果が得られるならば、他の方法も使用してよい。基油サンプルはまず、移動相としてヘキサンの代りにペンタンを使用する高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法IP368/01を利用して、極性(芳香族)相と非極性(飽和物)相とに分離する。次に、飽和物及び芳香族フラクションは、フィールド脱着/フィールドイオン化(FD/FI)インターフェースを備えたFinnigan MAT90質量分析計を用いて分析する。ここでFI(“ソフトな”イオン化技術)は、この特定基油フラクションの炭化水素の種類を炭素数及び水素不足について定量分析するために使用される。このようなソフトイオン化技術を行うための装置条件は、供給源温度30℃、抽出電圧5kV、エミッター電流5mA、プローブランプ温度40〜400℃(20℃/分)である。
【0016】
質量分析での化合物の種類別は、形成される特有イオンにより決定され、普通、“z数”により分類される。このz数は、全ての炭化水素種について一般式:C2n+zで示される。この飽和物相は、芳香族相とは別途に分析されるので、同じ化学量論の異なる(シクロ)パラフィンの含有量を測定することが可能である。質量分析計の結果は、各種炭化水素の相対比、並びに飽和物及び芳香族フラクションの平均分子量及び多分散性を測定するため、市販のソフトウエア(ポリ32、Sierra Analytics LLC,3453 Dragoo Park Drive, Modesto,California GA95350 USAから入手可能)を用いて処理される。
【0017】
流動点は、好ましくは+10℃未満、更に好ましくは0℃未満である。粘度指数は、好ましくは140を超え、200未満である。曇り点は、通常、−5℃より高く、多くの場合、0℃より高いか、或いは5℃より又は更には10℃より高い。原料の曇り点と原料の流動点との差は、通常、10℃を超え、多くの場合、15℃を超え、或いは20℃を超え、時には30℃を超えることもある。このような曇り点と流動点との開きは、好ましい原料と溶剤脱蝋基油とを識別する。この脱蝋基油の流動点と曇り点との差は、通常、ゼロ又はゼロに近い。曇った基油中の曇り化合物の含有量は少なく、通常、1重量%未満で十分である。
【0018】
このような基油原料は、好適にはフィッシャー・トロプシュ誘導蝋から基油を製造する方法で得られる。この方法は、前述のWO−A−02070627及びWO−A−2004007647に記載されている。本発明方法は、原油又はフィッシャー・トロプシュ合成蝋の残留フラクションを利用する方法から得られる基油が特に有利であることが見出された。これは、残留フラクションより丁度高沸点のフラクションから製造するWO−A−03033622の方法とは対照的である。また本発明方法は、接触脱漏工程で得られる基油に特に好適であることも見出された。したがって本発明方法は、残留フラクションから曇りのない基油を製造できる。これは、重質基油の収率や達成可能な最高粘度にとって有利である。例えば曇りのない重質基油は、単に更に重質のフィッシャー・トロプシュ蝋から出発して、これに水素化異性化兼接触脱蝋工程を行い、更に本発明の遠心分離工程を行って製造できる。
【0019】
曇りのない基油を製造するには、以下の方法を用いるのが好ましい。
(a)フィッシャー・トロプシュ誘導蝋状供給原料に対し水素化異性化処理を行う工程、
(b)工程(a)の流出流から蒸留により、該蒸留の残留フラクションである重質基油前駆体フラクションを単離する工程、
(c)重質基油前駆体フラクションの流動点を接触脱蝋により低下させる工程、
(d)本発明方法により、工程(c)の生成物又は工程(c)の生成物の残留フラクションから曇り点を低下させる工程、
を含むフィッシャー・トロプシュ誘導供給原料からの重質潤滑基油の製造方法。
【0020】
フィッシャー・トロプシュ誘導蝋状生成物は、フィッシャー・トロプシュ合成生成物を含む。フィッシャー・トロプシュ合成生成物とは、フィッシャー・トロプシュ合成反応で直接得られた生成物を意味し、該生成物は任意に蒸留及び/又は水素化工程だけ受けたものでもよい。フィッシャー・トロプシュ合成生成物は、周知の方法、例えばいわゆる商用Sasol法、Shell Middle Distillate法又は非商用Exxon法により得られる。これらの方法及びその他の方法は、例えばEP−A−776959、EP−A−668342、US−A−4943672、US−A−5059299、WO−A−9934917及びWO−A−9920720に更に詳細に記載されている。通常、これらフィッシャー・トロプシュ合成生成物は、炭素原子数1〜100及び更には100を超える炭化水素を含有する。この炭化水素生成物は、イソパラフィン、ノーマルパラフィン、酸素化生成物及び不飽和生成物を含有する。工程(a)の原料は、酸素化物又は飽和生成物を除去するため、水素化してよい。
【0021】
好ましくは工程(a)で使用される比較的重質のフィッシャー・トロプシュ蝋状生成物は、炭素原子数が30以上の化合物を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、更に好ましくは少なくとも55重量%含有する。更に、フィッシャー・トロプシュ生成物中の、炭素原子数60以上の化合物と炭素原子数30以上の化合物との重量比は少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.4、更に好ましくは少なくとも0.55である。好ましくはフィッシャー・トロプシュ生成物は、ASF−アルファ値(Anderson−Schulz−Flory連鎖生長ファクター)が少なくとも0.925、好ましくは0.935、更に好ましくは0.945、なお更に好ましくは0.955のC20+フラクションを含有する。
【0022】
このようなフィッシャー・トロプシュ生成物は、前述のような比較的重質のフィッシャー・トロプシュ生成物を生成するいずれの方法でも得られる。全てのフィッシャー・トロプシュ法がこのような重質生成物を生成するわけではない。好適なフィッシャー・トロプシュ法の一例は、WO−A−9934917及びAU−A−698392に記載されている。これらの方法は、前述のようなフィッシャー・トロプシュ生成物を生成できる。
【0023】
工程(a)では、フィッシャー・トロプシュ誘導蝋状原料に対し水素化転化工程を行って、蝋状ラフィネート生成物を得る。工程(a)は水素及び触媒の存在下で行われる。触媒は、この反応に好適な当業者に公知の触媒から選択できる。工程(a)で使用される触媒は、通常、酸性官能価及び水素化/脱水素化官能価を有する非晶質触媒である。好ましい酸性官能価は、耐火性金属酸化物担体である。好適な担体材料としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア及びそれらの混合物が挙げられる。本発明方法で使用される触媒に含まれる好ましい担体材料は、シリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナである。特に好ましい触媒は、シリカ−アルミナ担体上に白金を担持したものである。環境上の理由から一般には好ましくはないが、所望ならば、触媒担体の酸性度は、担体にハロゲン部分、特に弗素又は塩素を適用して、高めてもよい。好適な水素化転化/水素化異性化法及び好適な触媒の例はWO−A−0014179、EP−A−532118及び前述のEP−A−776959に記載されている。
【0024】
好ましい水素化/脱水素化官能価成分は、第VIII族非貴金属、例えばWO−A−0014179、US−A−5370788又はUS−A−5378348に記載されるようなニッケルであり、更に好ましくは第VIII族貴金属、例えばパラジウム、最も好ましくは白金である。触媒は、水素化/脱水素化活性成分を担体材料100重量部当り0.005〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部含んでよい。水素化転化段階で使用される特に好ましい触媒は、白金を担体材料100重量部当り0.05〜2重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部の量で含有する。触媒の強度を高めるため、触媒は、バインダーを含んでもよい。バインダーは、非酸性であってよい。バインダーの例は、粘土、アルミナ及びその他、当業者に公知のバインダーである。好ましくは触媒は、実質的に非晶質で、これは触媒中に結晶相が存在しないことを意味する。
【0025】
工程(a)ではフィッシャー・トロプシュ誘導原料は、高温高圧下、触媒の存在下に水素と接触させる。温度は通常、175〜380℃、好ましくは250℃より高く、更に好ましくは300〜370℃の範囲である。圧力は通常、10〜250バール、好ましくは20〜80バールの範囲である。水素は、ガスの1時間当り空間速度 100〜10000Nl/l/hr、好ましくは500〜5000Nl/l/hrで供給してよい。炭化水素原料は、重量の1時間当り空間速度0.1〜5kg/l/hr、好ましくは0.5kg/l/hrを超え、更に好ましくは2kg/l/hr未満で供給してよい。水素と炭化水素原料との比は、100〜5000Nl/kgの範囲が可能で、好ましくは250〜2500Nl/kgである。
【0026】
1パス当り370℃よりも高い沸点を有する原料が、370℃より低い沸点を有するフラクションまで反応する重量パーセントとして定義する、工程(a)での転化率は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%であるが、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは65重量%以下である。
【0027】
工程(b)では、工程(a)の流出流から残留フラクションが単離される。この単離は、まず常圧蒸留を行って、基油前駆体フラクションとして残留物を得る。この残留物は好適には更に真空条件下で蒸留を行ってよく、これにより常圧蒸留で得られた残留物よりも初期沸点が高い基油前駆体フラクションが再び得られる。残留フラクションとは、前記蒸留で該残留フラクションよりも高沸点のフラクションが得られないことを意味する。したがって、残留フラクションは、前記蒸留に供給した原料の中の全ての最高沸点化合物を含有する。こうして、基油前駆体フラクションのT10重量%回収沸点は、好ましくは350〜600℃の範囲であってよい。この沸点範囲の下限では、基油や低粘度のガス油も追加の生成物として本プロセスで製造される。この範囲の上限では、比較的多量の重質基油生成物が本プロセスで製造される。該フラクションの沸点範囲の上限は、工程(a)で使用した元のフィッシャー・トロプシュ蝋の重質性及び工程(a)の水素化異性化の苛酷性に依存する。最終沸点は、幾つかのケースでは700℃程と高く、他のケースでは750℃よりも高い。
【0028】
工程(c)は接触脱蝋により行われる。接触脱蝋法は、触媒及び水素の存在下で基油前駆体フラクションの流動点を降下させるいかなる方法でもよい。好適な脱蝋触媒は、モレキュラーシーブ及び任意に第VIII族金属のような水素化機能を有する金属を組合せた不均質触媒である。モレキュラーシーブ、更に好適には中間細孔サイズのゼオライトは、接触脱蝋条件下で基油前駆体フラクションの流動点降下に良好な触媒能力を示した。中間細孔サイズゼオライトの孔径は、好ましくは0.35〜0.8nmの範囲である。好適な中間細孔サイズゼオライトは、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、SSZ−32、ZSM−35、ZSM−48及びMCM−68である。他の好ましいモレキュラーシーブは、シリカ−アルミナホスフェート(SAPO)材料であり、この中、SAPO−11は、例えばUS−A−4859311に記載されるように、最も好ましい。ZSM?5は、第VIII族金属の不存在下でHZSM−5の形態で任意に使用してよい。他のモレキュラーシーブは、第VIII族金属を添加し、組合わせて使用すること好ましい。好適な第VIII族金属は、ニッケル、コバルト、白金及びパラジウムである。可能な組合わせの例は、Pt/ZSM−35、Ni/ZSM−5、Pt/ZSM−23、Pd/ZSM−23、Pt/ZSM−48及びPt/SAPO−11である。好適なモレキュラーシーブ及び脱蝋条件の更なる詳細及び例は、例えばWO−A−9718278、US−A−4343692、US−A−5053373、US−A−5252527、US−A−4574043、WO−A−0014179及びEP−A−1029029に記載されている。
【0029】
脱蝋触媒は、好適にはバインダーも含有する。バインダーは、合成物質でも天然産の(無機)物質、例えば粘土、シリカ及び/又は金属酸化物であってもよい。天然産の粘土は、例えばモンモリロナイト族及びカオリン族である。バインダーは、多孔質バインダー材料、例えば耐火性酸化物が好ましく、耐火性酸化物の例としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアや、三元組成、例えばシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアがある。更に好ましくは、本質的にアルミナを含まない低酸性度耐火性酸化物バインダー材料が使用される。これらバインダー材料の例としては、シリカ、ジルコニア、二酸化チタン、二酸化ゲルマニウム、ボリア及びこれらの2種以上の上記例のような混合物がある。最も好ましいバインダーはシリカである。
【0030】
好ましい種類の脱蝋触媒は、前述のような中間細孔サイズのゼオライト微結晶と、前述のような本質的にアルミナを含まない低酸性度耐火性酸化物バインダー材料とを含有するが、このアルミノシリケートゼオライト微結晶のアルミナ含有量を減少させ、特に該微結晶の表面を表面脱アルミナ化処理により変性したものである。蒸煮は、微結晶のアルミナ含有量を減少できる方法である。好ましい脱アルミナ化処理は、バインダー及びゼオライトの押出物を、例えばUS−A−5157191又はWO−A−0029511に記載されるようなフルオロシリケート塩の水溶液と接触させることによるものである。この方法は、ゼオライト微結晶の表面を選択的に脱アルミナ化すると考えられる。前述のような好適脱蝋触媒の例は、例えばWO−A−0029511やEP−B−832171に記載されるように、脱アルミナ化されたシリカ結合Pt/ZSM−5、脱アルミナ化されたシリカ結合Pt/ZSM−23、脱アルミナ化されたシリカ結合Pt/ZSM−12及び脱アルミナ化されたシリカ結合Pt/ZSM−22である。
【0031】
更に好ましくはモレキュラシーブは、前記例示したようなMTW、MTT又はTON型のモレキュラシーブであり、第VIII族金属は白金又はパラジウムであり、またバインダーはシリカである。
【0032】
重質基油前駆体フラクションの接触脱蝋は、前述のように触媒の存在下で行うことが好ましい。但し、ゼオライトは、12個の酸素原子を有する12員環により形成された細孔を持った少なくとも1つのチャンネルを有する。12員環を有する好ましいゼオライトは、MOR型、MTW型、FAU型又はBEA型(骨組又は組織の型コードによる)のゼオライトである。好ましくはMTW型ゼオライト、例えばZSM−12が使用される。好ましいMTW型ゼオライト含有触媒は、第VIII族金属として白金又はパラジウム金属及びシリカバインダーも含有する。更に好ましくは触媒は、前述のようなAHS処理したシリカ結合Pt/ZSM−12含有触媒である。これら12員環型ゼオライトをベースとする触媒が好ましく、蝋状イソパラフィン系化合物を低蝋状イソパラフィン系化合物に転化するのに適していることが判った。
【0033】
接触脱蝋条件は、当該技術分野で公知であり、通常、操作温度は200〜500℃、好適には250〜400℃の範囲であり、水素圧は10〜200バール、好ましくは40〜70バールの範囲であり、重量の1時間当り空間速度(WHSV)は1時間当り触媒1リットル当りオイル0.1〜10kg(kg/l/hr)、好適には0.2〜5kg/l/hr、更に好適には0.5〜3kg/l/hrの範囲であり、また水素/オイル比はオイル1リットル当り水素100〜2,000リットルの範囲である。
【0034】
工程(d)は、前述のように遠心分離工程である。工程(d)は工程(c)の流出流に対し、更に好ましくは該流出流から蒸留により単離された重質基油に対し行ってよい。この重質基油は、前述のように、蒸留工程の残留フラクションであることを特徴とする。工程(d)において曇った前駆体を含むフラクションは好適には、曇り化合物ができるだけ多量に転化できるように、工程(c)又は工程(a)に再循環される。更に好ましくは、このフラクションは、工程(a)に再循環する。ここで曇り化合物は、低沸点化合物に一層分解しやすい。
本発明を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0035】
実施例
40℃での動粘度が16.5cStのフィッシャー・トロプシュ誘導基油の曇ったサンプル30mlを室温で4つのアーム付き遠心機(Hermle Z320遠心機)に入れた。4000rpmで60分後、サンプルを取り出し、観察した。遠心処理後のサンプルは、曇りのない多量のフラクションと、サンプル瓶の底部に、曇った少量の蝋フラクションとで構成されていた。透明な液体をデカントすると、サンプル瓶には曇ったフラクションが残っていた。透明液体からは、蒸留分離の残留フラクションとして、曇りのない重質基油が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃での動粘度が10cStを超える基油を遠心力により、該基油から高曇り点を有すると推定される分子を分離して、曇り点の低下した基油、及び曇った前駆体化合物に富むフラクションを得ることを特徴とする該基油の曇り点を低下させる方法。
【請求項2】
遠心力が、遠心重力分離器で得られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遠心力が、液体サイクロン分離器で得られる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基油の曇り点が20℃を超え、飽和物含有量が97重量%より多く、100℃での動粘度が15cStを超え、硫黄含有量が50ppm未満であり、粘度指数が140を超える請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)フィッシャー・トロプシュ誘導蝋状供給原料に対し水素化異性化処理を行う工程、
(b)工程(a)の流出流から蒸留により、該蒸留の残留フラクションである重質基油前駆体フラクションを単離する工程、
(c)重質基油前駆体フラクションの流動点を接触脱蝋により低下させる工程、
(d)請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により、工程(c)の生成物又は工程(c)の生成物の残留フラクションから曇り点を低下させる工程、
を含むフィッシャー・トロプシュ誘導供給原料からの重質潤滑基油の製造方法。
【請求項6】
工程(d)で得られた滞留物が工程(a)又は(c)に再循環される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
滞留物が工程(a)に再循環される請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2008−516035(P2008−516035A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535183(P2007−535183)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055157
【国際公開番号】WO2006/040319
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】