説明

曲げ加工装置

【課題】
高い生産性、省設置スペース性及び良好なメンテナンス性を有し、鋼管17の曲げ部材35を高い寸法精度で製造する曲げ加工装置10を提供する。
【解決手段】
鋼管17を長手方向へ送る送り機構11と、鋼管17を送りながら支持する第1の支持機構12と、送られる鋼管17の一部または全部を加熱する加熱機構13と、送られる鋼管17における加熱機構13により加熱された部分を冷却する冷却機構14と、送られる鋼管17の少なくとも一箇所を支持しながら二次元または三次元の方向へ移動することによって、鋼管17における加熱された部分に曲げモーメントを与えて、鋼管17を所望の形状に曲げ加工する第2の支持機構25と、鋼管17の変形を防止する変形防止機構16とを備える曲げ加工装置である。送り機構11は、軸数が7軸の垂直多関節ロボットである第1の産業用ロボット18により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを構成要素とする曲げ加工装置に関する。具体的には、本発明は、閉断面を有する長尺の金属製の素材に二次元または三次元の曲げ加工を行って曲げ部材を製造するための曲げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屈曲した形状を有する金属製の強度部材、補強部材または構造部材が、自動車や各種機械等に用いられる。高強度、軽量かつ小型であることがこれらの曲げ部材に要求される。従来より、この種の曲げ部材は、例えば、プレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、さらには鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法により製造される曲げ部材をさらに軽量および小型化することは、難しい。
【0003】
近年では、この種の曲げ部材を、いわゆるチューブハイドロフォーミングにより製造することが積極的に検討される(例えば非特許文献1参照)。素材となる材料の開発や成形可能な形状の自由度の拡大等といった様々な課題がチューブハイドロフォーミング工法に存在するため、今後よりいっそうの開発が必要であることが、非特許文献1の28頁に開示される。
【0004】
本出願人は、先に特許文献1により曲げ加工装置を開示した。図3は、この曲げ加工装置0の概略を示す説明図である。
図3に示すように、曲げ加工装置0は、支持手段2によりその軸方向へ移動自在に支持された素材である鋼管1を上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り装置3により送りながら、(a)支持手段2の下流で高周波加熱コイル5により鋼管1を部分的に焼入れが可能な温度域に急速に加熱し、(b)高周波加熱コイル5の下流に配置される水冷装置6により鋼管1を急冷し、かつ(c)鋼管1を送りながら支持可能であるロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4の位置を二次元又は三次元で変更して鋼管1の加熱された部分に曲げモーメントを付与して曲げ加工を行うことによって、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と焼入れ部とを長手方向及び/又はこの長手方向と交叉する面内の周方向へ向けて断続的又は連続的に有する曲げ部材8を、十分な曲げ加工精度を確保しながら高い作業能率で、製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/093006号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、曲げ加工装置0のよりいっそうの向上を目的に、鋭意検討を重ねた結果、曲げ加工装置0が以下に列記する課題を有することが判明した。
(a)例えばボールネジを用いた送り装置3は、鋼管1の種類に応じて、段取替えを行う必要がある。段取替えは相応の時間を必要とする。これにより、曲げ加工装置0のサイクルタイムの増加、および生産性の低下が発生する。また、鋼管1のパスラインを変更する場合には、これに伴って送り装置3の設置位置を変更する必要があり、曲げ加工装置0の生産性が低下する。
【0008】
(b)例えばボールネジを用いた送り装置3は、鋼管1をセットされてからボールネジを駆動して鋼管1を送るため、生産タクトの短縮が困難である。
(c)例えばボールネジを用いた送り装置3や可動ローラーダイス4の動作タイミングを一致させる必要がある。しかし、正確に一致させることが難しく、正確に一致しない場合には、曲げ加工部品の寸法精度が低下する。
【0009】
(d)例えばボールネジを用いた送り装置3や可動ローラーダイス4を三次元で移動自在に支持するための支持装置の設置スペースが大きくなる。このため、曲げ加工装置0の設置場所が限られる。
【0010】
(e)例えばボールネジを用いた送り装置3は、鋼管1が溶接鋼管である場合には、鋼管1のセット時に、送り動作以外の動作(例えば、鋼管1を軸回りに回転させて鋼管1に存在する溶接ビード位置を曲げ加工において不具合を生じない位置に調整する動作、鋼管1のセット時の芯ずれを調整する動作、さらには送り経路を調整する動作)を行うことができない。このため、曲げ加工装置3の生産性が低下する。
【0011】
(f)例えばボールネジを用いた送り装置3や、ロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4は、極めて高精度の動作を要求されるため、定期的な清掃や補修を行われなければならない。しかし、送り装置3や可動ローラーダイス4のメンテナンス性は良好でない。このため、送り装置3や可動ローラーダイス4の補修や清掃は、相当の時間や工数を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、少なくとも送り装置として、例えば垂直多関節型の産業用ロボットを用いること、さらに、必要に応じて、可動ローラーダイスの支持装置や可動ローラーダイスの出側に寸法精度向上のために配置する寸法精度低下抑制装置として、例えば垂直多関節型の産業用ロボットを用いることによって、上述した課題(a)〜(f)を解決できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0013】
本発明は、下記条件を満足する送り機構、第1の支持機構、加熱機構、冷却機構、第2の支持機構および変形防止機構を備えることを特徴とする曲げ加工装置である。
送り機構;第1の産業用ロボットにより構成されるとともに、閉じた断面を有する中空の金属材をその長手方向へ送る。
【0014】
第1の支持機構;第1の位置に固定して配置されて、金属材を送りながら支持する。
加熱機構;金属材の送り方向について第1の位置よりも下流の第2の位置に固定して配置されて、送られる金属材の一部または全部を加熱する。
【0015】
冷却機構;金属材の送り方向について第2の位置よりも下流の第3の位置に固定して配置されて、送られる金属材における加熱機構により加熱された部分を冷却する。
第2の支持機構;金属材の送り方向について第3の位置よりも下流の第4の位置に配置されて、送られる金属材の少なくとも一箇所を支持しながら二次元または三次元の方向へ移動することによって、金属材における加熱された部分に曲げモーメントを与えて、金属材を所望の形状に曲げ加工する。
【0016】
変形防止機構;金属材の送り方向について第4の位置よりも下流の第5の位置に配置されて、送られる金属材の変形を防止する。
本発明では、第2の支持機構が、少なくとも一つの第2の産業用ロボットにより支持されることが望ましい。
【0017】
本発明では、変形防止機構が、第3の産業用ロボットにより構成されることが望ましい。
本発明では、第1の産業用ロボット、第2の産業用ロボットおよび第3の産業用ロボットの少なくとも一つが、垂直多関節ロボット、例えば軸数が5以上である垂直多関節ロボットであることが望ましい。
【0018】
本発明では、送り機構が、金属材をその長手方向へ送る際に、金属材をその軸回りに回転させるとともに、変形防止機構が、金属材を把持する把持部を有し、かつ金属材の軸回りの回転に伴ってこの把持部を軸回りに回転させることが、第2の支持機構による二次元または三次元の方向への移動量と、変形防止機構の移動量とを低減でき、これにより、曲げ加工装置全体の設置範囲を抑制できるために、望ましい。
【0019】
また、前記加熱機構が前記金属材の周囲に離間して配置される加熱コイルを有し、前記金属材が円形の横断面以外の横断面を有するとともに、少なくとも前記加熱コイルは、前記金属材の軸回りの回転に伴って前記軸回りに回転することが望ましい。
【0020】
さらに、本発明では、曲げ加工を温間または熱間で行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、曲げ加工装置0が有する上述した課題(a)〜(f)を解決でき、曲げ加工装置0よりもいっそう高い生産性、省設置スペース性及び良好なメンテナンス性を有し、閉断面を有する長尺の金属製の曲げ部材を高い寸法精度で製造できる曲げ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る曲げ加工装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1の産業用ロボット〜第3の産業用ロボットの構成例を示す説明図である。
【図3】図3は、特許文献1により開示された曲げ加工装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、曲げ加工装置によって、鋼管を回転させずに送りながら、曲げ加工製品を製造する状況を経時的に、かつ一部を簡略化して示す説明図である。
【図5】図5(a)〜図5(d)は、曲げ加工装置によって、鋼管を回転させずに送りながら、曲げ加工製品を製造する状況を経時的に、かつ一部を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明に係る曲げ加工装置を実施するための形態を説明する。以降の説明では、本発明における「閉じた断面を有する中空の金属材」が鋼管17である場合を例にとる。本発明は、鋼管には限定されず、閉じた断面を有する中空の金属材に等しく適用される。
【0024】
図1は、本発明に係る曲げ加工装置10の構成の一部を簡略化および省略して概念的に示す斜視図である。なお、図1に示す、第1の産業用ロボット18〜第3の産業用ロボット28を含む合計6基の産業用ロボットは、いずれも、マニピュレーター等を概念化および簡略化して示す。
【0025】
曲げ加工装置10は、送り機構11と、第1の支持機構12と、加熱機構13と、冷却機構14と、第2の支持機構15と、変形防止機構16とを備える。これらの構成要素を順次説明する。
【0026】
[送り機構11]
送り機構11は、鋼管17をその長手方向へ送る。送り機構11は、第1の産業用ロボット18により構成される。
【0027】
以降の説明では、第1の産業用ロボット18や第3の産業用ロボット28にも、第2の産業用ロボット27と同様のロボットを用いた場合を例にとる。
図2は、第1の産業用ロボット18、第2の産業用ロボット27および第3の産業用ロボット28(以下、「各産業用ロボット18、27、28」と略記する)の構成例を示す説明図である。
【0028】
各産業用ロボット18、27、28は、いずれも、いわゆる垂直多関節ロボットである。各産業用ロボット18、27、28は、いずれも、第1軸〜第6軸を有する。
第1軸は、上腕19を水平面内で旋回させる。第2軸は、上腕19を前後に旋回させる。第3軸は、前腕20を上下に旋回させる。第4軸は、前腕20を回転させる。第5軸は、手首20aを上下に旋回させる。さらに、第6軸は、手首20aを回転させる。
【0029】
各産業用ロボット18、27、28は、必要に応じて、第1軸〜第6軸に加えて、上腕19を旋回させる第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸は、いずれも、ACサーボモーターにより駆動される。
【0030】
各産業用ロボット18、27、28それぞれの軸数は、6または7である必要はなく、5であってもよい。これらの産業用ロボットの軸数は、加工に必要な動作を行うことができる軸数であればよい。
【0031】
各産業用ロボット18、27、28は、他の汎用の産業用ロボットと同様に、いずれも、各軸の動作を総合的に制御するコントローラー21と、動作を教示するための入力装置22とを備える。
【0032】
効果器(エンドエフェクタ)24が、第1の産業用ロボット18の手首20aの先端に設けられる。効果器24は、第1の産業用ロボット18の側方近傍に配置されたパレットに収容された鋼管17を把持すること、および、把持した鋼管17を第1の支持機構12および加熱機構13にそれぞれ設けられた貫通孔に貫通させることを行うために用いられる。
【0033】
効果器24は、鋼管17の後部外面を掴む方式でもよいし、あるいは、鋼管17の後部内部に挿入する方式でもよい。図1に示す効果器24は、鋼管17の後部内部に挿入される凸部を先端に有する方式の効果器である。
【0034】
効果器24は、曲げ加工の素材の後部の形状や寸法に応じて適宜変更されて、用いられる。曲げ加工装置10は、第1の産業用ロボット18の近傍に配置された段替え用ツール置き台30を備える。自動交換機能を有する交換用効果器24−1が段替え用ツール置き台30に載置される。加工素材が鋼管17以外の他の素材17−1(図示例は四角形の横断面を有する角管)に変更される場合、第1の産業用ロボット18が旋回し、効果器24を交換用効果器24−1に交換する。これにより、効果器24の交換が極めて迅速に行われる。
【0035】
図1に破線で示すように、もう1基の第1の産業用ロボット18−1が、第1の産業用ロボット18とともに配置されていてもよい。第1の産業用ロボット18による鋼管17の送り作業中に、第1の産業用ロボット18−1が、他の素材17−1をパレット23から拾い上げ、他の素材17−1を後述する第1の支持機構13に形成された貫通孔に通す。第1の産業用ロボット18−1は、適当な効果器を他の素材17−1の後端に配置されて、待機する。第1の産業用ロボット18による鋼管17の送り作業が終了すると、他の素材17−1のパスラインに合わせて、後述する加熱コイル支持ロボット32による加熱コイル13aの設置位置、および第2の支持機構15による可動ローラーダイス25の設置位置がいずれも変更される。これにより、第1の産業用ロボット18−1が他の素材17−1の送り作業を直ちに開始することができる。このため、曲げ加工装置10の生産タクトが短縮される。
【0036】
第1の産業用ロボット18−1は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0037】
第1の産業用ロボット18が、パレット23からの鋼管17の移載およびセットを行うので、曲げ加工装置10のサイクルタイムが短縮され、これにより、曲げ加工装置10の生産性が高められる。
【0038】
[第1の支持機構12]
第1の支持機構12は、支持台31に搭載される。第1の支持機構12は、第1の位置Aに固定して配置される。第1の支持機構12は、鋼管17を送りながら支持する。第1の支持機構12は、曲げ加工装置0と同様に、ダイスにより構成される。ダイスは、送り機構11により送られる素材を送りながら支持可能である複数のロール12a〜12fを有する。
【0039】
鋼管17は、ロール12a,12bとロール12d,12eとにより送られる。他の素材17−1は、ロール12b,12cとロール12e,12fとにより送られる。すなわち、鋼管17のパスラインがロール12a,12bとロール12d,12eとにより形成されるとともに、他の素材17−1のパスラインがロール12b,12cとロール12e,12fとにより形成される。
【0040】
複数のロール12a〜12fの設置数や形状、さらにはダイス内での配置は、搬送される素材17、17−1の形状や寸法等に応じて、適宜設定される。
このようなダイスは当業者にとっては周知慣用であるので、第1の支持機構12に関する説明は省略する。
【0041】
[加熱機構13]
加熱機構13は、鋼管17の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置Bに配置される。加熱機構13は、加熱コイル支持ロボット32により支持されて、配置される。加熱機構13は、送られる鋼管17の一部または全部を加熱する。
【0042】
加熱機構13は、誘導加熱装置により構成される。誘導加熱装置は、鋼管17の周囲に離れて配置される加熱コイル13aを有する。この加熱コイル13aは、当業者にとっては周知慣用である。
【0043】
加熱コイル支持ロボット32は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0044】
他の素材17−1を加熱する場合、段替え用加熱コイル置き台33が加熱コイル支持ロボット32の近傍に配置される。自動交換機能付きの交換用加熱コイル13bが、置き台33に載置される。素材が鋼管17以外の他の素材17−1に変更される場合、加熱支持ロボット32が旋回し、加熱コイル13aを加熱コイル13bに交換する。これにより、加熱コイル13bは極めて迅速に交換される。
【0045】
加熱機構13に関するこれ以上の説明は省略する。
[冷却機構14]
冷却機構14は、鋼管17の送り方向について第2の位置Bよりも下流の第3の位置Cに固定して配置される。冷却機構14は、送られる鋼管17における加熱機構13により加熱された部分を冷却する。これにより、冷却機構14は、鋼管17の長手方向の一部に高温部分を形成する。高温部分の変形抵抗は大幅に低下する。
【0046】
冷却機構14は、例えば、鋼管17の外面に離れて配置される冷却媒体噴射ノズル14a、14bを有する。冷却水が冷却媒体として例示される。この冷却媒体噴射ノズル14a、14bは、当業者にとっては周知慣用であるので、冷却機構14に関する説明は省略する。
【0047】
[第2の支持機構15]
第2の支持機構15は、鋼管17の送り方向について第3の位置Cよりも下流の第4の位置Dに配置される。第2の支持機構15は、送られる鋼管17の少なくとも一箇所を支持しながら二次元または三次元の方向へ移動する。これにより、第2の支持機構15は、鋼管17の高温部分(位置B〜C間に存在する部分)に曲げモーメントを与え、鋼管17を所望の形状に曲げ加工する。
【0048】
第2の支持機構15は、曲げ加工装置0と同様に、可動ローラーダイス25により構成される。可動ローラーダイス25は、鋼管17を送りながら支持可能であるロール対25a、25bを少なくとも一組有する。
【0049】
可動ローラーダイス25は、第2の産業用ロボット27により支持される。第2の産業用ロボット27はCP型のプレイバックロボットである。CP型のプレイバックロボットは、隣接する教示点の間の多数に細分化された軌跡と、これらの多数に細分化された軌跡の通過時刻とを連続的に記憶可能である。
【0050】
第2の産業用ロボット27は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸は、ACサーボモーターにより駆動される。
【0051】
グリッパー27aが、可動ローラーダイス25を保持するための効果器(エンドエフェクタ)として、第2の産業用ロボット27の手首20aの先端に設けられる。効果器は、グリッパー27a以外の型式のものでもよい。
【0052】
可動ローラーダイス25は、第2の産業用ロボット27を含む複数基の産業用ロボットにより、支持されていてもよい。これにより、各産業用ロボットの負荷が軽減されるので、可動ローラーダイス25の移動軌跡の精度が向上する。
【0053】
[変形防止機構16]
変形防止機構16は、鋼管17の送り方向について第4の位置Dよりも下流の第5の位置Eに配置される。変形防止機構16は、送られる鋼管17が自重や冷却により発生する応力によって変形することを防止する。
【0054】
第3の産業用ロボット28が変形防止機構16として用いられる。
第3の産業用ロボット28は、上述した第1の産業用ロボット18や第2の産業用ロボット27と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0055】
鋼管17の外面を掴むグリッパー29が、鋼管17の先端部17aを保持するための効果器(エンドエフェクタ)として、第3の産業用ロボット28の手首20aの先端に設けられる。
【0056】
効果器は、グリッパー29以外の型式の効果器(例えば、鋼管17の開口に挿入するもの)を用いてもよいことはいうまでもない。例えば、段替え用ツール置き台34が第3の産業用ロボット28の近傍に配置される。鋼管17の内部に挿入する型式の交換用グリッパー29−1がこの置き台34に載置される。素材が鋼管17以外の他の素材17−1に変更される場合、第3の産業用ロボット28が旋回してグリッパー29をグリッパー29−1に交換する。これにより、グリッパー29−1が極めて迅速に交換される。
【0057】
ハンドリングロボット37が第3の産業用ロボット28の下流に配置される。ハンドリングロボット37は、手首20aの先端に把持部36を有する。把持部36は、曲げ加工を終了した曲げ加工品35を保持する。ハンドリングロボット37はCP型のプレイバックロボットである。
【0058】
ハンドリングロボット37は、上述した第1の産業用ロボット18と同様に、いわゆる垂直多関節ロボットであり、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じて第7軸を有してもよい。第1軸〜第7軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0059】
ハンドリングロボット37は、曲げ加工を終了した曲げ加工品35を保持する。ハンドリングロボット37は、保持した曲げ加工品35を製品置き台38に移載する。
曲げ加工装置10は、曲げ加工を、温間または熱間で行うことが望ましい。温間とは、常温に比べて金属材料の変形抵抗が低下する温度域であり、例えば、ある金属材料ではおよそ500℃から800℃の温度域である。熱間とは、常温に比べて金属材料の変形抵抗が低下し、かつ、金属材料の焼入れ可能な温度域であり、例えば、ある鉄鋼材料では870℃以上の温度域である。
【0060】
曲げ加工が熱間で行われる場合、鋼管17は、鋼管17が焼入れ可能な温度域に加熱された後に所定の冷却速度で冷却することによって、焼入れ処理される。また、曲げ加工が温間で行われる場合、熱歪み等の加工に伴う鋼管17の歪みの発生が、防止される。
【0061】
曲げ加工装置10は以上のように構成される。
曲げ加工装置10が、鋼管17を二次元または三次元に曲げる曲げ加工を行うと、送り機構11が第1の産業用ロボット18を有するために、以下に列記する効果が得られる。
【0062】
(a)鋼管17の種類に応じて不可避的に行われる段取替えが、簡単かつ迅速に行われる。このため、曲げ加工装置10のサイクルタイムの増加が防止され、曲げ加工装置10の生産性が高まる。また、鋼管17のパスラインが変更される場合に不可避的に行われる段取替えが簡単かつ迅速に行われる。このため、曲げ加工装置10の生産の自由度および生産性がいずれも高まる。さらに、鋼管17を収容するパレット23が、第1の産業用ロボット18の動作範囲内に設置される。
【0063】
(b)送り機構11を構成する第1の産業用ロボット18が、ハンドリングロボットとしても用いられる。このため、この第1の産業用ロボット18が、素材17を所定の位置にセットした後に直ちに素材17をその軸方向へ送ることができるため、曲げ加工装置0のサイクルタイムが短縮される。
【0064】
(c)第1の産業用ロボット18の動作タイミングと、例えば、第2の産業用ロボット27、加熱コイル支持ロボット32、第3の産業用ロボット28等の他の装置の動作タイミングとを、一致させることが容易になる。このため、曲げ加工部品35の寸法精度の向上を図ることが、鋼管17の送り速度を自在に変更すること(例えば、曲げ部材における曲げ部分の送り速度を低下すること等)によって可能になるとともに、第1の産業用ロボット18の起動の際のスタートタイミングと、例えば、第2の産業用ロボット27、加熱コイル支持ロボット32、第3の産業用ロボット28等の他の装置の起動の際のスタートタイミングとを、一致させることが容易になる。
【0065】
(d)第1の産業用ロボット18が送り機構11に用いられるので、曲げ加工装置10全体の設置スペースが、第1の産業用ロボット18が例えば第1の支持機構12にできるだけ近接して配置されることによって抑制され、これにより、曲げ加工装置10の設置場所の制限が抑制される。
【0066】
(e)第1の産業用ロボット18が送り機構11の構成要素として用いられるので、例えば、(1)鋼管17が溶接鋼管である場合に、鋼管17に存在する溶接ビード位置が曲げ加工に不具合を生じない位置になるように鋼管17を軸回りに回転させてから、鋼管17を曲げ加工装置10にセットする動作、(2)鋼管17のセット時の芯ずれを調整する動作、(3)鋼管17の送り経路を調整する動作、(4)鋼管17に微小な繰り返し振動を与えることによって第1の支持機構12や第2の支持機構15の摩擦係数を低下する動作、さらには(5)鋼管17の芯ずれを修正してスティックスリップ現象の発生を未然に防止する動作といった、送り動作以外の動作も行うことができる。このため、曲げ加工装置10の生産の自由度が高まる。
【0067】
なお、第1の産業用ロボット18が溶接ビード位置を変更する動作が行う場合、周知慣用の溶接ビード位置検出装置が第1の産業用ロボット18に設けられる。鋼管17の回転角度は溶接ビード位置検出装置の検出値により演算により設定されるようにしてもよい。
【0068】
(f)第1の産業用ロボット18は、生産実績が高い汎用の産業用ロボットにより構成可能であるので、良好なメンテナンス性が得られるとともに、補修や清掃に要する時間や工数がを抑制される。
【0069】
(g)第1の産業用ロボット18は、第1の支持機構12の取付け向きに応じて、鋼管17の送り軌道を微修正できるので、曲げ加工製品35の寸法精度が向上する。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2を説明する。以降の説明は、実施の形態2のうちで上述した実施の形態1と相違する部分について行い、共通する部分の重複する説明は省略する。
【0070】
図4(a)〜図4(c)は、曲げ加工装置10によって、鋼管17を回転させずに送りながら、曲げ加工製品35を製造する状況を経時的に、かつ一部を簡略化して示す説明図である。また、図5(a)〜図5(d)は、曲げ加工装置10によって、鋼管17を回転させずに送りながら、曲げ加工製品35を製造する状況を経時的に、かつ一部を簡略化して示す説明図である。
【0071】
図4(a)〜図4(c)に示すように、実施の形態1では、送り機構11を構成する第1の産業用ロボット18が、鋼管17をその軸回りに回転させることなく、鋼管17をその軸方向へ送る。このため、鋼管17に与えられる曲げ量は、第2の支持機構15である可動ローラーダイス25の移動量に支配される。
【0072】
すなわち、可動ローラーダイス25が動作する角度は−θ〜+θであり、また可動ローラーダイス25のシフトもパスラインの上方と下方にわたっている。このため、鋼管17に与えられる曲げ量が大きい場合には、可動ローラーダイス25の移動量が大きくなり、可動ローラーダイス25の移動量が過大になり、この移動量が可動ローラーダイス25を支持する第2の産業用ロボット27の可動範囲を超えると、曲げ部材35を製造できなくなる。可動ローラーダイス25の支持を、第2の産業用ロボット27以外の機械式の設備により行うと、設備費が嵩む。このため、第2の産業用ロボット27により可動ローラーダイス25を支持し、かつ可動ローラーダイス25の移動量を小さくすることが望ましい。
【0073】
そこで、本実施の形態では、図5(a)〜図5(d)に示すように、送り機構11が、鋼管17をその軸回りに回転させながら鋼管17をその長手方向へ送るとともに、変形防止機構16を構成するグリッパー29を、鋼管17の回転に伴って鋼管17の軸回りに回転させる。具体的には、図5(b)から図5(c)の間で、出側の変形防止機構16と同期させて、鋼管17およびグリッパー29を回転させる。
【0074】
これにより、図5(a)〜図5(d)に示すように、鋼管17の曲げの方向を一方向(紙面の下方の方向)に限定することができるため、可動ローラーダイス25が動作する角度を0〜+θの一方向のみに限定できるとともに、可動ローラーダイス25のシフト範囲をパスラインの下方のみに限定することができる。したがって、変形防止機構16を構成するグリッパー29の移動方向もまた一方向にのみ限定して動作範囲を抑制することができる。
【0075】
このため、可動ローラーダイス25を支持する第2の産業用ロボット27や、グリッパー29を支持する第3の産業用ロボット28を、上腕19や前腕20の長さが短い産業用ロボットにより構成することが可能になるとともに、設備全体の設置面積を抑制することができる。
【0076】
図5(a)〜図5(d)に示す例では、単純な2次元形状に曲げ加工を行う場合であるが、より複雑な2次元形状や3次元形状に曲げ加工を行う場合であっても、可動ローラーダイス25の二次元または三次元の方向への移動量を第2の産業用ロボット27の動作範囲内に抑制することができるとともに、変形防止機構16を構成するグリッパー29の移動量を第3の産業用ロボット28の動作範囲内に抑制できるようになる。
【0077】
なお、曲げ加工される素材が、鋼管17以外の、非円形の横断面を有する金属材(例えば角管や異形管)である場合には、金属材を回転させるに伴って、加熱機構13の加熱コイル13aも、金属材の回転に伴って回転する必要がある。冷却装置13は、冷却水噴射ノズル14a、14bを回転させるようにしてもよいが、多数の冷却水噴射ノズルを金属材の周囲に配置しておいたり、または冷却水噴射ノズル14a、14bそれぞれからの噴射量を調整することとすれば、冷却水噴射ノズル14a、14bを回転させなくともよい。
【0078】
また、鋼管17にねじり加工を行う場合には、送り機構11が、鋼管17をその軸回りに回転させながら鋼管17をその長手方向へ送ることにより、可動ローラーダイス25の動作範囲を抑制することができる。
【符号の説明】
【0079】
0 特許文献1により開示された曲げ加工装置
1 鋼管
2 支持手段
3 送り装置
4 可動ローラーダイス
4a ロール対
5 高周波加熱コイル
6 水冷装置
10 本発明に係る曲げ加工装置
11 送り機構
12 第1の支持機構
12a〜12f ロール
13 加熱機構
13a,13b 加熱コイル
14 冷却機構
14a、14b 冷却媒体噴射ノズル
15 第2の支持機構
16 変形防止機構
17 鋼管
17−1 他の素材
17a 先端部
18、18−1 第1の産業用ロボット
19 上腕
20 前腕
20a 手首
21 コントローラー
22 入力装置
23 パレット
24、24−1 効果器(エンドエフェクタ)
25 可動ローラーダイス
25a、25b ロール対
27 第2の産業用ロボット
27a グリッパー
28 第3の産業用ロボット
29 グリッパー
29−1 交換用グリッパー
30 段替え用ツール置き台
31 支持台
32 加熱コイル支持ロボット
33 段替え用加熱コイル置き台
34 段替え用ツール置き台
35 曲げ加工品
36 把持部
37 ハンドリングロボット
38 製品置き台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記送り機構、第1の支持機構、加熱機構、冷却機構、第2の支持機構および変形防止機構を備えることを特徴とする曲げ加工装置:
送り機構;第1の産業用ロボットにより構成されるとともに、閉じた断面を有する中空の金属材をその長手方向へ送ること、
第1の支持機構;第1の位置に固定して配置されて、前記金属材を送りながら支持すること、
加熱機構;前記金属材の送り方向について前記第1の位置よりも下流の第2の位置に固定して配置されて、送られる前記金属材の一部または全部を加熱すること、
冷却機構;前記金属材の送り方向について前記第2の位置よりも下流の第3の位置に固定して配置されて、送られる前記金属材における前記加熱機構により加熱された部分を冷却すること、
第2の支持機構;前記金属材の送り方向について前記第3の位置よりも下流の第4の位置に配置されて、送られる前記金属材の少なくとも一箇所を支持しながら二次元または三次元の方向へ移動することによって、前記金属材における前記加熱された部分に曲げモーメントを与えて、前記金属材を所望の形状に曲げ加工すること、
変形防止機構;前記金属材の送り方向について前記第4の位置よりも下流の第5の位置に配置されて、送られる前記金属材の変形を防止すること。
【請求項2】
前記第2の支持機構は、少なくとも一つの第2の産業用ロボットにより支持されること
を特徴とする請求項1に記載された曲げ加工装置。
【請求項3】
前記変形防止機構は、第3の産業用ロボットにより構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された曲げ加工装置。
【請求項4】
前記第1の産業用ロボット、前記第2の産業用ロボットおよび前記第3の産業用ロボットの少なくとも一つは、垂直多関節ロボットである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された曲げ加工装置。
【請求項5】
前記垂直多関節ロボットの軸数は5以上である請求項4に記載された曲げ加工装置。
【請求項6】
前記送り機構は、前記金属材をその長手方向へ送る際に、該金属材をその軸回りに回転させるとともに、前記変形防止機構は、前記金属材を把持する把持部を有し、かつ前記金属材の軸回りの回転に伴って該把持部を前記軸回りに回転させることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された曲げ加工装置。
【請求項7】
前記加熱機構が前記金属材の周囲に離間して配置される加熱コイルを有し、前記金属材が円形の横断面以外の横断面を有するとともに、少なくとも前記加熱コイルは、前記金属材の軸回りの回転に伴って前記軸回りに回転することを特徴とする請求項6に記載された曲げ加工装置。
【請求項8】
前記曲げ加工を温間または熱間で行う請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された曲げ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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