説明

曲げ加工装置

【課題】プレスブレーキの制御が簡単であり、なおかつ自由な折り曲げ角度を実現する曲げ加工装置を提供する。
【解決手段】ダイ121のV字溝127を利用した曲げ加工をする曲げ加工装置において、V字溝を挟む位置にV字溝と平行なピット(くぼみ)123a、123bを有するダイと、ピット位置と嵌合するピット部押圧部を有する第2のパンチ装置105と、V字溝と嵌合するV字溝押圧部103を有する第1のパンチ装置101と、から成り、折り曲げる素材111を第2のパンチ装置で押圧した後に、折り曲げる素材を第1のパンチ装置で押圧することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークをV字形状に折曲げる際に使用されるダイに関する。

【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、従来、プレスブレーキによって板状のワークをV字形状に折曲げ加工するとき、V字形状の溝を備えたダイと、上記構内にワークを押し込むように作用するパンチとを用いるのが一般的である。
【0003】
ところで、プレスブレーキによってワークをV字形状に折曲げ加工する場合は、ダイに形成した均一なV字形状の溝内に、パンチによってワークを押し込む態様でもって行うものであるから、加工後のワークは両端や中央などの部分に関わらず、程度の差はあれ、全体的に均一な角度となる。また、前述のプレスブレーキ自体も、ワークの両端や中央などに関わらず、どの部分であっても均一な曲げ角度が得られることを理想として設計、製造されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−254300号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイを用いた折り曲げ加工の手段としては大きく分けて二つの方法がある。一つは、ワークをダイのV字溝の形状に合致するまでプレスブレーキなどによってワークに力を加えるパンチ作業であり、もう一つは、プレスブレーキなどによるパンチ作業の際の力の加え方を加減し、力が弱ければV字溝の角度以上の開き角度の折り曲げ加工になるし、力が強ければV字溝に合致する開き角度の折り曲げ加工になるパンチ作業である。
【0006】
本発明の課題とは前記二つの方法のうち、前者に対する課題である。すなわち、ワークがV字溝の形状に合致するまで力を加えるパンチ作業に関するものであり、この場合は、折り曲げ角度はV字溝の開き角度に依存するため、折り曲げ角度を変えたい場合には、必要とされる開き角度を持ったV字溝のダイを改めて製造しなければならなかった。
【0007】
このようなパンチ作業は、プレスブレーキの制御が簡単になるため実用的であるが、前記のように、折り曲げ角度を自由に設定できないという課題があり、産業上の利用分野は限られていた。本発明は当該課題を解決し、プレスブレーキの制御が簡単であり、なおかつ自由な折り曲げ角度を実現することを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は次のような解決手段をとるものとする。つまり、
ダイのV字溝を利用した曲げ加工をする曲げ加工装置において、
前記V字溝を挟む位置に当該V字溝と平行なピット(くぼみ)を有するダイと、
前記ピット位置と嵌合するピット部押圧部を有する第1のパンチ装置と、
前記V字溝と嵌合するV字溝押圧部を有する第2のパンチ装置と、
から成り、
折り曲げる素材を第1のパンチ装置で押圧した後に、
当該折り曲げる素材を第2のパンチ装置で押圧することを特徴とする曲げ加工装置である。
【0009】
また、本発明は、
前記ダイ上のピットの幅が、ピット幅調整素材の装着によって可変であることを特徴とする曲げ加工装置である。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレスブレーキによる曲げ加工の際に使用するダイにおいて、V字型の溝の脇の任意の箇所にピット(くぼみ)を備え、当該ピットの幅を調整することで、様々な折り曲げ角度を実現できる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を表した説明図(側面図)である。
【図2】本発明におけるダイの斜視図である。
【図3】本発明におけるピットの使用例を示した図である。
【図4】本発明における折り曲げ加工の実施例を示した図である。
【図5】加工されたワークを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下に本発明を実施するための好適な実施例について図を参照して説明する。なお、前記のように、本発明は、ワークがV字溝の形状に合致するまで力を加えるパンチ作業に関するものである。
【0013】
図1は本発明にかかる装置の側面図である。121はダイであり、直方体のピット幅調整素材125aと125bの装着によって幅が可変であるようなピット123aと123bを有し、V字溝127によってワーク(折り曲げ対象)111を折り曲げる。
【0014】
プレスブレーキなどを用いて上方から圧力を加えるパンチ操作によってワーク111を加工するのであるが、第1のパンチ装置105は、ピット123a及び123bと噛み合う凸状のピット部押圧部107a及び107bを有している。 また、第2のパンチ装置101は、V字溝127と噛み合う凸状のV字溝押圧部103を有している。
【0015】
図2はダイ121の斜め上方から見た斜視図である。V字溝127の左右にピット123aと123bが配置されており、ピットの幅は125aと125bで調節が可能である。ここでピット123aと123bの位置は任意であり、V字溝127からの距離をなんら特定しないものである。
【0016】
図3は本発明にかかる実施例の前半の動作ステップを示したものである。第1のパンチ装置105に設けられたピット押圧部107a及び107bは、ダイ121のピット123a及び125bと噛み合っているため、ワーク111を前記第一のパンチ装置でダイ121に押圧すると、ワーク111には隆起部113a及び113bが生成される。ここで第1のパンチ装置の押圧にあたってはプレスブレーキによる手段など種々のものが考えられ、本発明ではこれを何ら限定するものではない。
【0017】
図4は本発明にかかる実施例の後半の動作ステップを示したものである。第2のパンチ装置101に設けられたV字溝押圧部103は、ダイのV字溝127と噛み合っているため、ワーク111を前記第2のパンチ装置101でダイ121に押圧すると、ワーク111には折り曲げられた部位115が生成される。ここで第2のパンチ装置の押圧にあたってはプレスブレーキによる手段など種々のものが考えられ、本発明ではこれを何ら限定するものではない。
【0018】
図5はダイ121に押圧する前記第1のパンチ装置105と第2のパンチ装置101によって、加工されたワーク111の一部を示したものである。第1のパンチ装置105によって生成された隆起部113aは、第2のパンチ装置101をダイ121に押圧する際には、ワークが折り曲げられるために中心方向に引かれ、ダイのピット123aの右端から左側へと移動する。
【0019】
なおも第2のパンチ装置の押圧を続行すると、隆起部113aはピット123aの左端に到達し、ワーク111の折り曲げ加工はこれ以上続行不能となる。この時、ピット123aの幅をP、ダイのV字溝の一辺の長さをX、ワークの折り曲げ加工された部位の一辺をYとすると、数1が成立する。
(数1)
X−Y=P
【0020】
前記のように、ピット123aの幅Pによってワークの折り曲げ加工の一辺Yが変化し、これはつまり角度θ2を制御できるということである。ただし、折り曲げ加工はダイ121のV字溝の角度以下になるような動作を出来ないので、数2が成立する。
(数2)
θ2≧θ1
【0021】
ここで、折り曲げられた部位115は頂点角度がθ2であり、一辺がYの二等辺三角形である。なお、一辺の長さYとピット幅Pとの関係は、数1からY=X−Pであるから、三角関数を用いることにより、必要とされるθ2が決まれば、ピット123aの幅Pも決まる。従って、所望のピット幅になるよう、ピット幅調整素材125aをピット123a内部に設置し、必要な角度θの折り曲げ加工が可能になるのである。
【0022】
本発明によれば、ワークの折り曲げ加工によって隆起部113a及び113bが生成されてしまうが、実用にあたっては、隆起部113aと折り曲げられた部位115の間と、隆起部113bと折り曲げられた部位115の間の2カ所を切断して回避できる。
【0023】
以上説明したように、本発明は、ダイにピットを設け、当該ピットをワークの隆起部が移動することによって、ワークの中心部において、ピット幅に応じた折り曲げ加工をすることができる装置に関するものであり、ピット幅を可変にしたことにより、任意の折り曲げ角度で折り曲げ加工を実施することが可能になるという特徴を有している。

【符号の説明】
【0024】
101…第1のパンチ装置、 103…V字溝押圧部、
105…第2のパンチ装置、 107a,107b…ピット部押圧部、
111…ワーク、 113a,113b…隆起部、
115…折り曲げられた部位、
121…ダイ、 123a,123b…ピット、
125a,125b…ピット幅調整素材、 127…V字溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイのV字溝を利用した曲げ加工をする曲げ加工装置において、
前記V字溝を挟む位置に当該V字溝と平行なピット(くぼみ)を有するダイと、
前記ピット位置と嵌合するピット部押圧部を有する第1のパンチ装置と、
前記V字溝と嵌合するV字溝押圧部を有する第2のパンチ装置と、
から成り、
折り曲げる素材を第1のパンチ装置で押圧した後に、
当該折り曲げる素材を第2のパンチ装置で押圧することを特徴とする曲げ加工装置。

【請求項2】
前記ダイ上のピットの幅が、ピット幅調整素材の装着によって可変であることを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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