説明

書画撮像装置および写り込み補正方法

【課題】照明光の写り込みを軽減する。
【解決手段】書画撮像装置は、下向きの書画原稿が載置される透明板と、透明板を下方から照らす照明と、書画原稿の原稿面を下方から撮像するカメラ1と、透明板で反射した照明光のみをカメラ1で撮像することにより得られた写り込み補正用データを予め記憶するフラッシュメモリ15と、カメラ1から出力された書画原稿の画像データの値と写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出して補正画像データを出力する減算部20とを備える。さらに、書画撮像装置は、書画原稿の画像データの輝度値が所定値を上回るときに、1より小さい係数を出力する係数演算部17と、減算部20に入力される前の写り込み補正用データの各画素の値に係数を乗算する乗算部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書画原稿を透明板に下向きに載置して、カメラにより下方から撮像する書画撮像装置に係り、特に照明光の写り込みを補正する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)に代わって、透明なガラス板の上にカタログや書籍等の書画原稿を下向きに載置し、下方からカメラで撮影して得た画像を液晶プロジェクタで投影する書画撮像装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−246098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された書画撮像装置においては、装置のサイズを薄くしたいという要求があったが、装置を薄くすると、照明光の写り込みが発生してしまうという問題点があった。以下、この写り込みの問題点について図を用いて説明する。図4は特許文献1に開示された従来の書画撮像装置の光学系の断面図である。書画撮像装置の光学系は、CCDカメラ等のカメラ1と、レンズ2と、ガラス製の透明板4と、遮光板5と、ひさし6と、蛍光灯7と、反射板8と、外囲器9とを有する。
【0005】
遮光板5と外囲器9とは、蛍光灯7からレンズ2までの光路を囲むように配置されている。ひさし6は、遮光板5の上端部に形成され、蛍光灯7の上部を覆うようになっている。反射板8は、外囲器9の側壁部9aの内面に取り付けられている。遮光板5の内面、ひさし6の上面、外囲器9の側壁部9aの内面、外囲器9の底面部9bの上面は、光の反射を極力小さくするために黒色仕上げが施されている。
【0006】
この書画撮像装置では、図5に示したように、蛍光灯7から出射した照明光は反射板8によって反射され、透明板4に照射される。これにより、透明板4上に下向きに載置された書画原稿3が照らされることになる。このとき、反射板8の下端部で反射した光が透明板4に到達するまでの距離は、反射板8の上端部で反射した光が透明板4に到達するまでの距離よりも長い。したがって、書画原稿3に照射される光の照度に不均一が生じる。そこで、反射板8の下端側の反射率を高くし、上端側の反射率を低く抑えることにより、書画原稿3全体を均一に照らすことができるようにしている。そして、カメラ1は、書画原稿3を下方から撮像する。
【0007】
以上のような書画撮像装置において、装置を薄くしようとすると、図5に示す透明板4からレンズ2までの距離lが小さくなり、レンズ2への入射光と透明板4とのなす角θが小さくなる(すなわち、透明板4に対する照明光の入射角が大きくなる)。透明板4に対する照明光の入射角が大きくなると、透明板4において全反射が発生し易くなり、カメラ1で撮像する画像に照明光の写り込みが目立つようになる。特に光の反射状態が複雑な透明板4の四隅で照明光の写り込みが顕著に目立つようになった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、照明光の写り込みを軽減することができる書画撮像装置および写り込み補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の書画撮像装置は、下向きの書画原稿が載置される透明板と、この透明板を下方から照らす照明と、前記書画原稿の原稿面を下方から撮像する撮像手段と、前記透明板で反射した照明光のみを前記撮像手段で撮像することにより得られた写り込み補正用データを予め記憶する記憶手段と、前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの値と前記写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出して補正画像データを出力する減算手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の書画撮像装置の1構成例は、さらに、前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの輝度値が所定値を上回るときに、1より小さい係数を出力する係数演算手段と、前記減算手段に入力される前の写り込み補正用データの各画素の値に前記係数を乗算する乗算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、下向きの書画原稿が載置される透明板と、この透明板を下方から照らす照明と、前記書画原稿の原稿面を下方から撮像する撮像手段とを備えた書画撮像装置において、照明光の写り込みを補正する写り込み補正方法であって、前記透明板で反射した照明光のみを前記撮像手段で撮像することにより得られた写り込み補正用データを記憶手段に予め保存しておく写り込み補正用データ登録ステップと、前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの値と前記写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出して補正画像データを出力する減算ステップとを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明板で反射した照明光のみを撮像手段で撮像することにより得られた写り込み補正用データ、すなわち透明板による反射のみの写り込み画像を予め取得しておき、撮像手段から出力された書画原稿の画像データの値と写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出することにより、書画原稿の画像に現れる照明光の写り込みを軽減することができ、画像の見苦しさを改善することができる。
【0012】
また、本発明では、撮像手段から出力された書画原稿の画像データの輝度値が所定値を上回るときに、1より小さい係数を出力し、減算手段に入力される前の写り込み補正用データの各画素の値に係数を乗算することにより、写り込み補正によって補正した部分が暗くなってしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る書画撮像装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る書画撮像装置の写り込み補正用データ登録時の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る書画撮像装置の原稿撮像時の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の書画撮像装置の光学系の断面図である。
【図5】従来の書画撮像装置の光学系の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る書画撮像装置の電気系の構成を示すブロック図である。書画撮像装置の電気系は、カメラ1と、A/D変換器10と、ゲイン調整部11と、画像分割・平均演算部12と、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性のメモリ13と、CPU14と、不揮発性のフラッシュメモリ15と、画像拡大演算部16と、係数演算部17と、乗算部18と、ゲイン調整部19と、減算部20とを有する。
【0015】
次に、以上のような書画撮像装置の動作について、まず写り込み補正用のデータを登録する動作を図2のフローチャートを用いて説明する。光学系の構成は、図4、図5に示した従来の書画撮像装置と同様であるので、図4、図5の符号を用いて説明する。
最初に、透明板4の上方に透明板全体を覆う黒色の光吸収体を透明板4と離隔して配置する。蛍光灯7から出射した照明光は反射板8によって反射され、透明板4に照射される。カメラ1は、レンズ2を通じて入射した透明板4からの入射光を画像信号に変換する(図2ステップS100)。ここで、透明板4の上には透明板全体を覆う黒色の光吸収体が透明板4と離隔して配置されているので、透明板4を透過した光が反射されて透明板4に戻ることは殆どない。したがって、カメラ1は、透明板4による反射のみの写り込み画像を取得することになる。
【0016】
A/D変換器10は、カメラ1から出力された画像信号をA/D変換して画像データを出力する(ステップS101)。ゲイン調整部11は、A/D変換器10から出力された画像データの各画素の輝度値に所定のゲインG1を乗算するゲイン調整を行い、画像の輝度を適切なレベルに調整する(ステップS102)。なお、このゲイン調整部11は必須の構成要件ではない。
【0017】
続いて、画像分割・平均演算部12は、ゲイン調整部11によってゲイン調整された縦p画素×横q画素の画像データを予め定められた縦i画素×横i画素(i<p、i<q)の大きさの縦m×横n個(m<p、n<q)のブロックに分割し、縦m画素×横n画素の画像データに縮小する(ステップS103)。画像分割・平均演算部12は、ブロック内の各画素の輝度の平均値をそのブロックの輝度値とすることで、ブロックを1画素に縮小する。この処理をブロック毎に行うことで、縦p画素×横q画素の画像データを縦m画素×横n画素の画像データに縮小する。なお、この画像分割・平均演算部12は必須の構成要件ではない。
【0018】
画像分割・平均演算部12によって縮小処理された画像データは、メモリ13に一時的に格納される(ステップS104)。次に、CPU14は、メモリ13に格納された画像データを圧縮し(ステップS105)、圧縮後の画像データを写り込み補正用データとしてフラッシュメモリ15に格納する(ステップS106)。フラッシュメモリ15に格納する前に画像データを圧縮することで、データ量を削減した状態でフラッシュメモリ15に格納することができる。
こうして、写り込み補正用データのフラッシュメモリ15への登録が終了する。
【0019】
次に、書画原稿3を撮像する動作を図3のフローチャートを用いて説明する。まず、装置の電源が投入されたときに、CPU14は、フラッシュメモリ15に格納されている写り込み補正用データを解凍してメモリ13に格納する(図3ステップS200)。
透明板4上に下向きに載置された書画原稿3をカメラ1が撮像する動作は上記と同様であり(ステップS201)、A/D変換器10は、カメラ1から出力された画像信号をA/D変換して画像データを出力する(ステップS202)。
【0020】
画像拡大演算部16は、メモリ13に格納された写り込み補正用データが表す画像の座標とA/D変換器10から出力された画像データが表す画像の座標とが同一で、かつ写り込み補正用データの画像サイズ(縦横の画素数)と画像データの画像サイズとが同一になるように、写り込み補正用データの画像サイズを拡大する(ステップS203)。画像拡大演算部16は、画像分割・平均演算部12と逆の処理を行えばよい。すなわち、画像拡大演算部16は、縦m画素×横n画素の写り込み補正用データの各画素を、それぞれ縦i画素×横i画素のブロックに拡大する。このとき、ブロック内の各画素の輝度値は拡大前の画素の値と同じである。画像拡大演算部16は、このような画像拡大演算を写り込み補正用データの各画素について行うことにより、縦m画素×横n画素の写り込み補正用データを、縦p画素×横q画素の写り込み補正用データに拡大する。なお、画像拡大演算部16は必須の構成要件ではなく、画像分割・平均演算部12による画像縮小演算をしない場合には、画像拡大演算も不要である。
【0021】
次に、係数演算部17は、A/D変換器10から出力されるデータが表す画像の輝度値の飽和状態に応じて1以下の係数αを出力する(ステップS204)。係数演算部17は、画像の輝度値の代表値(例えば各画素の輝度値の平均値あるいは極大値)が所定値以下の場合、画像の輝度値が飽和状態でないと判断し、α=1とする。また、係数演算部17は、画像の輝度値の代表値が所定値を上回る場合、画像の輝度値が飽和状態に近いと判断し、α<1とする。この画像の輝度値が飽和状態に近いときの係数αの値は、CPU14から任意に設定できるようになっている。乗算部18は、画像拡大演算部16から出力された写り込み補正用データの各画素の輝度値に係数演算部17から出力された係数αを乗算する(ステップS205)。この係数αを乗算する理由については後述する。
【0022】
ゲイン調整部19は、乗算部18から出力された写り込み補正用データの各画素の輝度値に所定のゲインG2を乗算するゲイン調整を行い、写り込み補正用データの輝度を適切なレベルに調整する(ステップS206)。なお、このゲイン調整部19は必須の構成要件ではない。減算部20は、A/D変換器10から出力された画像データの輝度値とゲイン調整部19から出力された写り込み補正用データの輝度値との差分を同じ座標の画素毎に算出して補正画像データを出力する(ステップS207)。A/D変換器10から出力された画像データの輝度値をL1、画像拡大演算部16から出力された写り込み補正用データの輝度値をL2とすると、補正画像データの輝度値は、L1−L2×α×G2となる。減算部20で演算処理された補正画像データは、プロジェクタ21に出力される。プロジェクタ21は、図示しないスクリーンに画像を投影する。
【0023】
以上のように、本実施の形態では、透明板4による反射のみの写り込み画像を予め取得しておき、カメラ1で撮像して得た書画原稿3の画像から写り込み画像を減算することにより、書画原稿3の画像に現れる照明光の写り込みを軽減することができ、画像の見苦しさを改善することができる。
【0024】
なお、輝度値が飽和状態に近い画像から写り込み画像を引いてしまうと、補正した部分が暗くなってしまうので、カメラ1で撮像した画像の輝度値が飽和状態に近い場合には、1より小さい係数αを写り込み画像の輝度値に乗算して、写り込み画像の輝度値を下げる。こうして、輝度値が飽和状態に近い画像にも対応することができる。
【0025】
本実施の形態の書画撮像装置は、プロジェクタと一体になった書画撮像装置でもよいし、プロジェクタ等の外部装置と独立した書画撮像装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、被写体である書画原稿を透明板に下向きに載置して、カメラにより下方から撮像する書画撮像装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…カメラ、2…レンズ、3…書画原稿、4…透明板、5…遮光板、6…ひさし、7…蛍光灯、8…反射板、9…外囲器、10…A/D変換器、11…ゲイン調整部、12…画像分割・平均演算部、13…メモリ、14…CPU、15…フラッシュメモリ、16…画像拡大演算部、17…係数演算部、18…乗算部、19…ゲイン調整部、20…減算部、21…プロジェクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向きの書画原稿が載置される透明板と、
この透明板を下方から照らす照明と、
前記書画原稿の原稿面を下方から撮像する撮像手段と、
前記透明板で反射した照明光のみを前記撮像手段で撮像することにより得られた写り込み補正用データを予め記憶する記憶手段と、
前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの値と前記写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出して補正画像データを出力する減算手段とを備えることを特徴とする書画撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の書画撮像装置において、
さらに、前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの輝度値が所定値を上回るときに、1より小さい係数を出力する係数演算手段と、
前記減算手段に入力される前の写り込み補正用データの各画素の値に前記係数を乗算する乗算手段とを備えることを特徴とする書画撮像装置。
【請求項3】
下向きの書画原稿が載置される透明板と、この透明板を下方から照らす照明と、前記書画原稿の原稿面を下方から撮像する撮像手段とを備えた書画撮像装置において、照明光の写り込みを補正する写り込み補正方法であって、
前記透明板で反射した照明光のみを前記撮像手段で撮像することにより得られた写り込み補正用データを記憶手段に予め保存しておく写り込み補正用データ登録ステップと、
前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの値と前記写り込み補正用データの値との差分を画素毎に算出して補正画像データを出力する減算ステップとを備えることを特徴とする写り込み補正方法。
【請求項4】
請求項3記載の写り込み補正方法において、
さらに、前記撮像手段から出力された書画原稿の画像データの輝度値が所定値を上回るときに、1より小さい係数を出力する係数演算ステップと、
前記減算ステップで演算を行う前の写り込み補正用データの各画素の値に前記係数を乗算する乗算ステップとを備えることを特徴とする写り込み補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−228930(P2011−228930A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96829(P2010−96829)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】