説明

書類またはアイテムにマーキングする方法、マーキングされた書類またはアイテムを識別する方法および装置、円偏光粒子の使用法

円偏光を反射する粒子のランダム分布を含むマーキングを利用した、書類またはアイテムの光学的な識別および/または認証であり、マーキングは、インクによって書類またはアイテムに付けられ、読取装置は、円偏光を利用して薄片を背景から区別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類またはアイテムのマーキングおよび識別の分野に属する。本発明は、書類またはアイテムに固有の個別マークを与える方法と、マーキングされた書類またはアイテムを識別する方法および装置と、固有の個別マークを生成するための円偏光粒子の使用法とに関する。
【背景技術】
【0002】
有価書類の証明またはアイデンティティ管理の分野では、個々の書類またはアイテムを大量の類似アイテムから認識すること、すなわちアイテムの識別がしばしば必要になる。識別とは、何かまたは誰かを特定の個体として認識することである。対象物の真正性の証明、すなわち認証だけが必要になる場合もある。認証とは、何かまたは誰かをある部類に属するものと確証または確認することである。アイデンティティが確かめられればそのアイテムは真正である、ということに留意されたい。その逆は真ではない。
【0003】
当技術分野では、書類またはアイテムを識別または認証するためのいくつかの異なる解決策が提案されている。特に興味深いのは、書類またはアイテムのランダムな特徴を個別化要素として利用する方法である。ランダムな特徴は、ここでは、書類またはアイテムの上または中に自然に存在してもよいし、書類またはアイテムに意図的に導入されてもよい。
【0004】
特許文献である米国特許第4,661,983号明細書、国際公開第94/29817(A1)号、米国特許第4,677,435号明細書、仏国特許第2765014(B1)号明細書、国際公開第96/03714(A1)号、米国特許第6,584,214号明細書には、個々の書類またはアイテムの識別のための、自然に存在するランダムな特徴の使用法が記載されている。特徴は、外部に格納することのできるシグネチャとして用いられ、また、視覚的にまたは電子的に、書類またはアイテムを認証するために用いられる。
【0005】
特許文献である米国特許第4,661,983号明細書、米国特許第3,636,318号明細書、米国特許第4,218,674号明細書、米国特許第4,150,781号明細書、独国特許第2829778号明細書、欧州特許第0161181号明細書、米国特許第5,018,830号明細書、米国特許第5,325,167号明細書、米国特許第5,602,381号明細書、仏国特許第2765014号明細書、国際公開第99/38128号、国際公開第02/50790号、国際公開第04/070667号、国際公開第05/104008号、国際公開第2005/008294号、国際公開第2006/078220号には、個々のアイテムを認証または識別するための、粒子のランダム分布の使用法が記載されている。例えば顔料粒子、繊維などといった粒子は、ここでは、アイテムの材料の本質的な部分であってもよいし、あるいは、例えば印刷されるインクを介して、意図的にアイテムに加えられてもよい。
【0006】
国際公開第05/104008号は、物品の真正性またはアイデンティティを検証する方法を開示している。この方法は、物品上におけるランダムに分布したタガント粒子の分布パターンの表現を生成することと、この表現が、物品上におけるランダムに分布したタガントの分布パターンの事前記録済表現と少なくとも部分的にマッチするときに、マッチ信号を発生させることとを含む。
【0007】
特許文献である米国特許第3,636,318号明細書、米国特許第4,218,674号明細書、米国特許第5,602,381号明細書、仏国特許第2765014(B1)号明細書には、個々のアイテムを認証または識別するための、磁性粒子のランダム分布の使用法が記載されている。
【0008】
米国特許第3,636,318号明細書は、微粉化された強磁性体材料のランダムパターンを備えるアイデンティティ書類を開示している。この書類の認証または識別は、その特徴的な磁気シグネチャを、発行権者によってあらかじめ記録されてデータベースに格納されたシグネチャと比較することによって行われる。
【0009】
米国特許第4,218,674号明細書は、ランダムな欠陥、好ましくは磁性繊維のような磁性粒子の分布、を有する対象物の真正性またはアイデンティティを検証する方法およびシステムを開示している。ここでは、このランダムな欠陥が対象物の表面上を所定の測定軌道に沿って走査され、結果として得られた信号が2進符号の形で格納される。認証または識別については、格納された2進符号が、測定軌道に沿った別の走査の結果と比較される。
【0010】
米国特許第5,602,381号明細書は、マーキングされた対象物と、この対象物が真正であるか否かを調べる方法および装置とを開示している。製造工程において、多数の磁性ポリマー要素が、対象物の、ある領域に組み込まれる。認証または識別はその領域を磁気的に走査することによって行われ、そうして得られた信号は、個々の対象物に特有のものである。この信号は、磁性ポリマー要素の密度、大きさ、埋め込まれた深さ、長さ、および向きに応じて変化する。
【0011】
仏国特許第2765014(B1)号明細書は、磁性粒子のランダム分布を有する磁性インクを備える印刷書類を認証または識別する方法を開示している。書類上の粒子分布が、測定され、その書類と関連付けられて、データベースに記録される。その後の、書類の真正性を調べる管理ステップでは、粒子分布が再度測定され、あらかじめ記録された分布と比較される。比較が合致したら、書類は真正であると判断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当業者には明白なように、米国特許第3,636,318号明細書、米国特許第4,218,674号明細書、米国特許第5,602,381号明細書、仏国特許第2765014(B1)号明細書に開示されたような磁性粒子の分布の認証では、認証装置と認証対象アイテムとが密接に接触する必要がある。ところが、このようなアイテムと認証装置との接触によってアイテムが容易に詰まる恐れがあり、認証対象アイテムが紙製で状態が悪い場合はなおさらである。これは、銀行券を受け取るATM(現金自動預払機)またはAVM(automated vending machine、自動販売機)の場合、多くのサービス調整が必要となる恐れがあるため、特に不都合である。
【0013】
特許文献である米国特許第5,325,167号明細書には、個々の書類またはアイテムを認証または識別するための、トナー粒子のランダム分布の使用法が記載されている。書類またはアイテムの、所定の場所にある「粒状の捺印部」が第1の時点で走査され、得られたデータがデータベースに記録される。その後の時点で書類またはアイテムを認証する際には、「粒状の捺印部」を新しく走査して得られたデータと、前もって格納された参照データとが比較される。
【0014】
トナー粒子の寸法は非常に小さく、10マイクロメートル程度である。レーザープリンタで印刷された書類では、単独でランダムに散乱したトナー粒子を、印刷された領域の外側において、光学顕微鏡で見ることができる。そのようなトナー粒子の分布は、ランダムな配置を表しており各印刷アイテムに固有であるので、アイテムを識別するために用いられ得る。しかしながら、そのような識別を実際に実装することは、顕微鏡と非常に精密な位置決めとを必要とするので、実験室の外では実現可能ではないかもしれない。また、どのようにすれば工業的な条件の下で実用的な認証速度を達成できるか、も明らかではない。なぜなら、アイテムを識別する小さなトナー粒子の固有の配置を含む微視的な領域を、正確に見つけ出して位置決定しなければならないからである。大量の粒子位置データを扱うことを回避するために、この領域は必然的に小さく選択される。大量の粒子位置データを扱うと、参照データとの比較が遅くなり、従って識別動作全体が遅くなってしまう。
【0015】
特許文献である米国特許第4,527,051号明細書、国際公開第02/50790号、独国特許第2829778号明細書には、個々のアイテムを認証するための、発光粒子のランダム分布の使用法が記載されている。
【0016】
米国特許第4,527,051号明細書は、粗粒状の発光顔料粒子のランダム分布によって形成された印刷線を有する、クレジットカードまたは身分証明書のような保護対象書類を開示している。蛍光線の位置は、カードの署名欄の上である。署名欄および署名された名前自体は発光性ではない。カードを励起放射で照射すると、個々の発光粒子が特徴的な反応放射を発する。線に沿った発光粒子の位置、およびカード所持者の署名との交点における発光の遮断の結果として固有の信号パターンが生じ、この信号パターンは、機械で読み取られて、カードの真正性の証拠として格納されることができる。
【0017】
米国特許第4,527,051号明細書の教示によれば、発光顔料粒子は粗粒状にされなければならない。これは、粒子分布の測定に有用な、明瞭で明るい発光信号を各粒子が発するようにするためである。粗い球形状を有するこれらの発光粒子は、その3次元寸法が大きすぎるため、オフセット印刷、写真製版印刷、フレキソ印刷などのようなごく一般的な印刷工程で用いることができない。これが、発光粒子分布に基づく従来技術の第1の短所である。
【0018】
さらに、励起光の強度が高くなければならない。これは、発光粒子分布の明瞭な画像を取得するのにかかる時間を低減するために、十分に強い発光反応を生じさせるためである。発光エネルギー変換過程の効率は元々低いので、一般に発光信号は弱いものである。これは、銀行券の処理でしばしば必要となるような高速認証にとって重大な障害である。従って、米国特許第4,527,051号明細書に開示された方法および手段は、低速から中程度の認証速度での動作に限定される。これが、この従来技術のもう一つの短所である。
【0019】
国際公開第02/50790号は、セキュリティタグの製造方法を開示している。このセキュリティタグは、ランダムに分布した粒子を含み、粒子は、反射層および/または屈折層を含む。国際公開第02/50790号によれば、特定の位置における反射性および/または屈折性の粒子の存在だけでなく、個々の反射性の粒子の向きも利用される。反射性の粒子は小さく、結果として生じる光学的なランダムパターンは非常に複雑であり、物理的な再構成に対して高度に頑健なシステムが得られる。そしてこのパターンを用いて、各対象物について固有のアイデンティティ情報が生成される。
【0020】
国際公開第02/50790号の認証/識別の方法の不利な点は、タグ付けされたアイテムの識別領域に存在する粒子が多数であり、そのため、粒子分布を格納されている参照データと比較できるように、生データに対してある種の選択を実行する必要がある、ということである(例えば、引用書類の図2による画像強調処理)。また、薄片の向きを測定するには複雑な読取機器も必要であり、さらに、コーティング内の薄片の向きは、機械的または化学的な影響(しわ、濡れ等)によって、時間とともに変化する可能性がある。
【0021】
従来技術において開示された多くの方法、マーキング、認証機器およびシステムはすべて、ランダムな粒子分布を書類またはアイテムの識別手段として利用するのであるが、それらにもかかわらず、一つとして大規模に応用されるようになったものはない。この理由は、以下のうちの1つまたはそれ以上である。
a)磁性マーキング粒子の場合、読取装置を書類またはアイテムと接触させる必要があること。これは、詰まりを引き起こす恐れがある。
b)小さな検出領域。書類またはアイテム上で見つけたり正確に合焦させたりするのが困難である。
c)粗粒状の粒子を用いる必要があること。発光マーカーの場合、普通の印刷技術に対してほとんど適合性がない。
d)粒子の位置情報および向き情報の処理量が多い、またはそれどころか多すぎること。このため、重要なデータベースと非常に高性能な検索アルゴリズムか、あるいは有効にする一部のマーキング粒子を事前に選択しておくことが必要になる。
e)前出の項目の1つまたはそれ以上が発生することに起因する、時間のかかる処理動作。
f)機械的または化学的な損傷に対するマーキングの耐性が低いこと。
【0022】
理想的には、粒子のランダム分布を有するマーキングで実施される、意図的に導入されるランダムな特徴と、それに対応する認証手段とは、以下の要求事項に従うべきである。
a)書類またはアイテムと読取装置とが機械的に接触しないこと。
b)容易な位置決定と合焦とを可能にする、十分に大きな検出領域。
c)マーキングの信号応答が強いこと。
d)多様な応用技術に適合すること。
e)生成される位置情報データ記録の大きさが小さいこと。
f)粒子を容易に見つけられること。
g)高速で動作できること。
h)マーキングの耐久性/安定性が高いこと。
【課題を解決するための手段】
【0023】
[発明の概要]
本発明は、従来技術の短所を克服し、書類またはアイテムを認証および/または識別するためのマーキング方法、マーキング、および装置を開示するものである。これらにおいて、マーキングは、容易に認識できる円偏光粒子のランダム分布に依拠し、粒子は、印刷されたインク、またはコーティング組成物を介して、書類またはアイテムに付けられる。
【0024】
特に、円偏光を反射する特性を有するマーキング粒子が、対応する認証機器と共に利用される。これにより、ほぼすべての背景において、たとえその背景が着色され、および/または反射性であったとしても、容易にマーキングを区別することができる。本発明によるマーキングは、紙、プラスチック、金属、ガラス、印刷されたアイテム等のような、たいていの材料および基板において実施可能である。
【0025】
円偏光粒子の利用により、非偏光、左円偏光、および右円偏光の条件から選択された1つ以上の偏光条件の下でマーキングを評価できるようになることは、注目に値する。その際、偏光条件の選択は、光源とマーキングとの間に適用されてもよいし、あるいはマーキングと観察者または観測装置との間に適用されてもよいし、あるいはこれら両方でもよい。異なる偏光条件下におけるマーキングの少なくとも2つの画像を互いに差し引くと都合がよく、これにより偏光差分画像が形成される。偏光差分画像は、もはや背景からの寄与を含まず、マーキングのきれいな画像を表す。本発明の関連で特に好ましいのは、左円偏光条件および右円偏光条件の下で撮ったそれぞれの画像の差分を形成することである。このように、本発明は、左円偏光および右円偏光についてマーキング粒子の反射係数に異なるものが存在すること、すなわち、非偏光照明下のマーキング粒子からの反射光が少なくとも1つの円偏光成分を有することに依拠する。
【0026】
選ばれたマーキング粒子は平らな薄片であり、薄片は、一方では、かなりの2次元寸法(典型的には50マイクロメートル以上)を有するので、容易に検出できると同時に、マーキングを保持する書類またはアイテムの摩擦、摩耗、またはしわによって容易に損なわれたりせず、また他方では、厚さが薄いので(典型的には約5マイクロメートル)、普通の印刷工程に適合可能である。
【0027】
本発明の重要な態様において、マーキング粒子は、低い表面密度で付けられる。これはつまり、マーキング領域上に存在する粒子の数が適度になるようにするためであり、そうすることで、マーキングを表すデータセットを、既存の処理機器において十分な速度で容易に処理および格納することができる大きさに制限するのが目的である。
【0028】
本発明の他の態様では、書類またはアイテム上でのマーキングの位置決定および走査が容易になるように、マーキング領域が、十分に大きな、微視的でない寸法を有する。
【0029】
本発明の第1の目的は、書類またはアイテムの表面に配置されてマーキングを構成する、円偏光粒子のランダム分布を利用してアイテムを認証または識別する方法を提供することである。
【0030】
本発明の第2の目的は、非接触の方法で光学的に認証され得る円偏光粒子のランダム分布を含む領域を有する保護対象の書類またはアイテムを提供することである。
【0031】
さらなる目的は、上記の書類またはアイテム上の粒子分布を認証/識別する能力を有する読取装置を提供することである。
【0032】
また、本発明は、上記のマーキングを行うための円偏光粒子を含むインクまたはコーティング組成物と、適切な濃度の円偏光粒子を含むラミネートまたは押出フィルムと、上記のインクもしくはコーティング組成物を押印もしくはコーティングされ、または上記のラミネートもしくは押出フィルムを保持する書類またはアイテムと、を含む。
【0033】
本発明によれば、円偏光粒子は、コレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)薄片として実施されることが好ましい。そのようなポリマーは、円偏光成分を反射する。これは、所定の波長域内において、所定の円偏光状態(左または右回りで、ポリマーによる)を有する光が主に反射される、ということを意味する。
【0034】
コレステリック液晶ポリマーは、らせん状に配列された分子積層の形の分子秩序を有する。この秩序に起因して材料の屈折率の周期的な空間変調が生じ、その結果、光の所定の波長および偏光の、選択的な透過/反射が起こる。CLCPにおけるらせん状の分子配列の特定の状態により、分子のらせん状積層の回転の向きに応じて、反射光が左回りまたは右回りに円偏光する。
【0035】
このように、CLCP薄片を含むコーティング組成物を介して書類またはアイテムに付けられ得るような、円偏光粒子のランダム分布を含むマーキングが、書類またはアイテムに固有の光学的シグネチャを与え、この光学的シグネチャは、円偏光に対するその特有の反射によって、検出かつ区別することができる。インク中にランダムに存在するこの粒子は、印刷された書類またはアイテムにもランダムな位置および向きで現れる。このマーキングは、ほぼ透明であるがその偏光効果によって背景から区別可能であり、あらゆる種類の書類または物品の、あらゆる種類の認証、識別、追跡、およびトレースの用途に利用することができる。
【0036】
[詳細な説明]
本発明による、アイテムにマーキングし、アイテムを識別または認証する方法は、a)コレステリック液晶ポリマー(CLCP)薄片として選ばれた粒子のランダム分布を、銀行券、引換券、ID書類、プラスチックカード、スタンプ、ラベル、包装、物品等のようなアイテムに設けるステップと、b)第1の時点において、薄片のランダム分布を表すデータを照明手段と光学検出手段とを備える読取装置を用いて記録し格納するステップと、c)その後の時点において、マーキングされたアイテムをステップb)におけるような読取装置と粒子のランダム分布を表す格納されたデータとを用いて識別または認証するステップとを含む。ステップb)およびステップc)の読取装置は、同一である必要はなく、また同一の種類である必要もない。
【0037】
「読取装置」という用語は、本発明に従ってマーキングされた書類またはアイテムを識別または認証することのできる装置を示す。これに加えて、読取装置は、バーコード読み取り能力、画像撮影能力等のような他の能力も有してよい。特に、読取装置は、バーコード読取装置、カメラ付き携帯電話、光学スキャナ等が改造されたものであってよい。
【0038】
本方法は、CLCP薄片が、好ましくは紫外、可視、および赤外の電磁スペクトル、すなわち300nmないし2500nmの波長から選ばれた少なくとも1つのスペクトル領域において、円偏光成分を反射し、読取装置が、円偏光を利用して、円偏光差分画像を形成することによって薄片を背景から区別することを特徴とする。
【0039】
円偏光の利用は、国際公開第2004/11273(A2)、(A3)号に開示されたように行われてよい。これにより、粒子のランダム分布の画像が一つ一つ、それぞれ左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタを通して記録され、そうして得られた「右回り」の画像と「左回り」の画像との間で、個々の画素に基づいて差分画像が形成される。これにより、円偏光を反射していない画像成分がすべて除去されることは、注目に値する。
【0040】
表Iを参照すると、所与の波長についての、完全吸収性の背景における、反射係数Fを有する右偏光薄片からの検出光強度は、以下のように定量化され得る。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
背景が不完全な反射性である状況については、強度は表Iで与えられる。
【0045】
右円偏光成分と左円偏光成分とを等しく反射する背景上にCLCP薄片が位置する場合、背景の寄与は、強度R−Lを作成する際に差し引かれ、従って、後続の信号処理ステップからは除去されるので、後続の信号処理ステップはマーキング粒子だけに集中してよい。
【0046】
左回りの画像と右回りの画像とを理にかなう方法で互いに差し引くには、まずそれらの画像の倍率および位置を互いに合わせる必要がある。これは、対応する画像要素のそれぞれの画素を合致させなければならない、ということを意味する。これは、存在するそれぞれの画像歪曲に左右されるので、多かれ少なかれ厄介な作業になりかねない。理想的なのは、明らかに、左回りおよび右回りの両画像が、同じ距離、同じ角度、同じカメラおよび光学系で記録される場合である。そのような場合に、画像の倍率合わせまたは位置合わせが不要になることは、注目に値する。
【0047】
当業者に明白なように、必要とされる、左円偏光および右円偏光の下でのマーキングの画像は、さまざまな方法で得ることができる。ただし、それぞれの方法において、読取装置は、少なくとも1つの円偏光フィルタを有しなければならない。好ましくは、読取装置は、以下のように右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれを有する。
a)それぞれ左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタを装備された2つのカメラを用いる。同じ距離、同じ画角で撮影された2つの「並行した」画像を得るために、ビームスプリッタを組み合わされた単一の光学系が用いられ得る。
b)アイテムを左偏光および右偏光で見た場合に対応する分割画像を生じる、ビーム分割手段と左右偏光選択手段とを有する単一のカメラを用いる。この選択肢は、低コストの機器に特に有用である。
c)単一のカメラを、独国特許第10211310号明細書に開示されたような、右円偏光と左円偏光との代替選択を可能にする電気光学フィルタと組み合わせて用いる。
d)左円偏光の照明手段および右円偏光の照明手段を用いる。
【0048】
選択肢c)では、左回りおよび右回りの画像が連続して取得され、これには選択肢a)またはb)の場合の2倍の取得時間がかかる。しかしながら、選択肢c)には、右円偏光画像の画素と左円偏光画像の画素とが元から正確に符合しており、時間のかかる画像照合アルゴリズムを実行しなくて済む、という利点がある。単一のカメラを使用するので、この選択肢もまた、低コストの機器に有用である。
【0049】
実施の形態d)では円偏光フィルタの付いていないカメラが用いられ、マーキングが左円偏光および右円偏光で連続して照明されて、対応する左回りおよび右回りの画像データが連続して記録される。実施の形態c)の場合のように、実施の形態d)にも、左円偏光画像の画素と右円偏光画像の画素とが元から正確に符合しており、時間のかかる画像照合アルゴリズムを実行しなくて済む、という利点がある。単一のカメラを使用するので、この選択肢もまた、低コストの機器に有用である。
【0050】
右円偏光および左円偏光による連続した照明は、上記の実施の形態a)ないしc)とも組み合わされ得る。
【0051】
左円偏光および右円偏光は、2通りの方法で得ることができる。すなわち、それぞれ左円偏光フィルタと右円偏光フィルタとを装備した、連続して照明される2つの光源によって、あるいは、左円偏光と右円偏光との交互選択のための電気光学フィルタを装備した単一の光源によって、得ることができる。
【0052】
さらに、光源は、発光ダイオード(LED)またはレーザーダイオード(LD)のような、スペクトル選択性の光源とすることができる。また、円偏光フィルタは、カラーフィルタと組み合わせることもできる。
【0053】
画像取得用の画像センサデバイスは、当業者に知られているように、CMOS型またはCCD型の、単色画像センサまたはカラー画像センサとすることができる。シリコンベースの単色画像センサは、350nm未満から1100nm程度までにわたる、可視領域を超える波長範囲に感度を持つ。そのような画像センサは、可視領域(400nmから700nm)におけるその有用性に加えて、近紫外(UV)領域(波長400nm未満)および近赤外(IR)領域(波長700nmより上)においても画像の取得に用いることができる。ゲルマニウム(Ge)またはヒ化ガリウムインジウム(InGaAs)のような他の半導体で作製された画像センサでは、波長2500nmまでのさらなる光学赤外領域において撮像が可能になる。
【0054】
画像を取得するカメラまたは画像センサ、および光源には、マーキングが円偏光放射を反射するスペクトル範囲、を選択するために光学フィルタ(以下、「カラーフィルタ」と呼ぶ)をさらに装備させることができる。好ましい実施の形態では、認証装置は少なくとも1つのカラーフィルタを有し、カラーフィルタは、帯域通過型、長波長通過型、または短波長通過型の、着色ガラスまたは干渉フィルタとすることができる。ここで、通過領域は、フィルタが電磁放射に対して少なくとも部分的に透過性になる波長領域である。
【0055】
コレステリック液晶ポリマー(CLCP)薄片は、紫外(400nm未満)、可視(400nmから700nmまで)、または赤外(700nmから2500nmまで)の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有する。スペクトル反射帯域は、狭帯域(半値幅50nm未満)型または広帯域(半値幅50nm以上)型であってよい。スペクトル反射帯域内においてCLCP薄片によって反射された光は、主に円偏光、すなわち、左円偏光または右円偏光される。
【0056】
円偏光は、光などの電磁放射の伝搬モードであり、この伝搬モードでは、電場ベクトルが時間の経過とともに円を描く。従って、電気ベクトルは、波の伝播の方向に沿ってらせんを描く。円偏光は、電場ベクトルの回転の向きに応じて、左回りまたは右回りと呼ばれてよい。
【0057】
さらなる好ましい実施の形態では、CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有する。この特性を有する薄片は、多層構造を有し、同一出願人の同時係属出願である欧州特許出願公開第061161410号明細書に開示されており、当該出願は引用することによりここに組み込まれているものとする。特に、薄片は、各スペクトル反射帯域が個々に左円偏光および右円偏光されるように、作製され得る。一例として、450nmおよび650nmに2つの狭いスペクトル反射帯域を有するCLCP薄片は、4つの異なる可能な「偏光の種類」(polarization flavor)、すなわち450(右)−650(右)、450(右)−650(左)、450(左)−650(右)、450(左)−650(左)のうちの1つを有する。スペクトル反射および反射光の偏光に加えて、薄片が、発光、磁気特性などのさらなる特性を有するようにすることもできる。
【0058】
検出領域、すなわちアイテムを識別または認証するためにマーキングが利用される領域は、マーキング自体よりも小さな寸法であってよい。容易に認識できる円偏光粒子のランダム分布は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの検出領域で利用されることが好ましい。巨視的な検出領域を選択することにより、速度がきわめて重要な工業的応用において、マーキングの位置決定および読み取りが簡単になる。
【0059】
しかしながら、検出領域は、領域が(例えばマーク上に存在する他の図形的要素によって)容易に特定され得る限りは、1平方ミリメートル以下程度に小さくすることができる。さらにまた、検出領域は、対象物の見えている表面全体と同じくらい大きくてもよい。検出領域に関して解決しなければならない2つの技術的問題は、a)該当領域を速やかに見つけ出して明確にその範囲を定めることと、b)その内容を確実に読み取ることである。第1の問題は、例えば、検出領域を示してその範囲を定める、他の目に見える特徴または検出可能な特徴に頼ることによって対処することができ、第2の問題は、本発明による円偏光マーキング粒子を利用することによって対処される。
【0060】
たとえランダムなCLCP薄片がほんのわずかしかマーキングに存在しない場合であっても、第1のマーキングにおける薄片の位置が第2のマーキングにおける薄片の位置と合致する可能性は、きわめて低い。事実上再現不可能な固有のシグネチャを生成するには、20個ほどの少ないCLCP薄片で十分であり、これは同時に、格納するのに非常にコンパクトである。ここで、32×32フィールド、すなわち合計1024フィールドにデジタル化された検出領域の場合を取り上げる。各粒子は、これらのフィールドのうちの1つに属し(占有することができ)、従って、1024=10文字の記号体系のうちの1文字として表され得る。従って、粒子が20個あると、可能な組み合わせの数はなんと1023ほどになる。一方、これもまた当業者に明らかなことであるが、利用できるデータ格納容量および処理能力が許せば、マーキングの耐性を高めるためにずっと多数のデジタル化フィールドおよびずっと多数の薄片を用いることができる。
【0061】
あるいは、32×32フィールドの領域が、それぞれが32ビットである32個のデジタルナンバーの配列として表されてよい。あるフィールドが少なくとも1つの薄片で占有されていれば、対応するナンバーの対応するビットは1であり、他は0である。
【0062】
ランダム分布は、検出領域内に位置する3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含む。1領域当たりの適切な薄片数は、付けられる材料における薄片の適切な濃度を選ぶことによって、所与の付けるための処理用に、容易に設定され得る。マーキングがスクリーン印刷によって付けられる場合、印刷される書類上に必要な1領域当たりの薄片数を生成するには、通常はスクリーン印刷用インク中の1%程度の薄片濃度が好適である。
【0063】
好ましくは、粒子のランダム分布は、アイテムに、コーティング組成物を塗布したり箔を貼り付けたりすることによって、完成したアイテムの外部表面上に生成される。コーティングは、例えば、必要量のCLCP薄片を付加成分として含む保護ワニスであってよい。CLCP薄片は透明性が高いので、そのようなマーキングは、肉眼ではほとんど見ることができないが、CLCP薄片が示す特有の偏光効果を用い、また必要であれば光学カラーフィルタを併用して、明示することができる。
【0064】
しかしながら、CLCP薄片は、以下のいずれかによる、任意の付けるための技術によって付けることができる。すなわち、i)液体コーティング組成物で、ペースト状のコーティング組成物で、もしくは固体の、特に熱で溶ける粉末のコーティング組成物(例えばレーザープリンタおよび複写機用のトナー)で、アイテムまたはその一部にコーティングまたは印刷すること、または「ブロンジング」すること、あるいは、ii)あらかじめ上記i)により処理されたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、もしくは任意の転写可能物をアイテムに貼り付けること、である。こうしてアイテムは、CLCP薄片のランダム分布を備えたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、もしくは任意の転写可能物を備えてよく、あるいはアイテム自体が、CLCP薄片のランダム分布を備えたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、もしくは任意の転写可能物であってよい。
【0065】
ただし、後の認証/識別に備えて、印刷された書類またはアイテム上で薄片が確実に残存するようにしなければならない。最終的に(銀行券、カード、またはID書類などのように)ワニスがけまたはラミネート化のステップを施す場合、粒子は、書類またはアイテムにどのように付けられたかに関係なく、書類またはアイテムに強固に定着されると考えることができる。
【0066】
好ましい粒子は、欧州特許出願公開第061161410号明細書および関連文献に記載された種類の薄片である。本発明を実現するために有用なCLCP顔料は、欧州特許第1213338(B1)号明細書、欧州特許第0685749(B1)号明細書、独国特許出願公開第19922158(A1)号明細書、欧州特許出願公開第0601483(A1)号明細書、独国特許出願公開第4418490(A1)号明細書、欧州特許第0887398(B1)号明細書、および国際公開第2006/063926号に開示されている。また、米国特許第5,211,877号明細書、米国特許第5,362,315号明細書、および米国特許第6,423,246号明細書も参照される。こうした粒子は、1マイクロメートルから10マイクロメートルほどの厚さと、10マイクロメートルから100マイクロメートルほどの薄片寸法とを有し、該当する液晶ポリマー前駆体膜の粉砕によって得られる。本発明で用いるのに好ましい薄片は、1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲の厚さと、20マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲の平均薄片寸法とを有する。
【0067】
薄片は、コーティング組成物によって書類またはアイテムに付けられることが好ましい。これは、適量の薄片が、付加成分として少なくとも結合剤を含むコーティング組成物に、混入されることを意味する。結合剤中の薄片の適切な濃度は、0.01重量%から20重量%の範囲、好ましくは0.1重量%から3重量%の範囲にあり、最も好ましいのは、0.2重量%から1重量%の範囲の濃度である。結合剤は、付加成分、特に充填剤および添加剤を含んでよく、さらに着色剤などの、インクのセキュリティ要素を含んでよい。
【0068】
マーキングの好ましい薄片密度は、1平方ミリメートル当たり100片以下、好ましくは35片以下、最も好ましくは1平方ミリメートル当たり7片以下である。
【0069】
さらに、マーキングは、異なる種類の粒子で構成されてよい。また、所定の円偏光の薄片によって上記の密度で表されたマーキングを、ずっと多数の他の顔料粒子の中に隠すことも可能であり、その際、後者は、同じ性質または異なる性質であり、同じ色または異なる色を有する。特に、少数の、ある円偏光のコレステリック液晶顔料薄片によって表されるマーキングを、多数の、逆の円偏光のコレステリック液晶顔料薄片に隠すことができる。
【0070】
このように、本発明の実施の形態に好適な印刷用インクまたはコーティング組成物は、少なくとも、ワニス成分(結合剤)と、マーキング(CLCP)薄片とを備えなければならない。随意に、顔料、染料、エクステンダー、添加剤、光開始剤などが存在してもよい。
【0071】
CLCP薄片が付けられる基板は、印刷用インクまたはワニスに対して適合性のある任意の材料とすることができる。好ましくは、基板は、紙、ボール紙、プラスチック、または金属である。また、織材およびフェルトがコーティングされてもよい。さらに、基板は、黒、白、色付き、および/または反射性とすることができる。黒い基板はCLCP薄片の反射を感知するのに最良のコントラストを与えるが、薄片の、背景からの区別は、たとえ後者が黒くなくても薄片の偏光特性により可能である。また、基板は、テキストまたはバーコードもしくはマトリックスコードのような、識別印を含んでもよい。
【0072】
当業者に明白なように、CLCP薄片を含むコーティングは、薄片の少なくとも何分の1かが認証のために検出可能なまま残ることを見越して、テキストまたはバーコードもしくはマトリックスコードのような識別印で重ね刷りまたはコーティングされることができる。
【0073】
コーティング方法は、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷のような一般的な大面積印刷技術から選択されることが好ましい。コーティング後に結像剤を硬化させることにより、確実に、マーキング粒子がその位置に定着され、しっかりとつなぎ止められてそこに留まるようになる。これは、マーキングおよび識別の手段として個々の粒子のランダム分布を用いて、アイテムの通常の使用状態において頑健で、耐久性があり、かつ安定した識別子を提供する、という点で重要である。
【0074】
マーキングが「グラビア印刷」によって付けられる場合は、「グラビア」(彫版)印刷版のカップ状のくぼみでできた、あらかじめ形成されたパターンが、インク液滴の沈着場所の、「自然の」デジタル配列として働いてよい。そのような液滴のそれぞれは、少なくとも1つの薄片を含んでよく、その場合であればその配列要素のデジタル値は「1」と指定され、あるいは薄片をまったく含まなくてもよく、その場合であればその配列要素のデジタル値は「0」と指定される。このような、薄片の位置情報の「自然の」デジタル化は、マーキングの読み取りにおいて、読み取りマスクを簡単かつ迅速な方法で正しく位置決めするために役立ち得る。1つの配列要素が1つ以上の顔料薄片によって占有される確率は、印刷用インク中の薄片の濃度に依存する。あらかじめ形成されたパターンにインク液滴を沈着させるのと同じ効果を得るために、「グラビア印刷」以外の印刷工程、特にフレキソ印刷またはインクジェット印刷を用いてもよい。
【0075】
この種のマーキングは、それを取り巻く環境の影響に対して非常に耐性がある。なぜなら、粒子は、いったん定着されるとその位置が変わりにくいからである。粒子が十分に大きければ、摩擦または摩耗によって粒子が失われることもまずない。印刷された特徴の、範囲を定められた領域の全面を覆うほどの密度は、例えば、約20重量%のCLCP薄片顔料を含むスクリーン印刷用インクを用いて得ることができるが、そうした高密度の薄片が用いられる場合は、存在する薄片の総数の部分集合を選択して、ランダム分布のデータ表現を、処理可能な限度内にとどめるようにすると有利である。そして、ランダム分布を表すデータは、例えば位置、向き、または図柄のような所定の全体的基準に従って、いくつかの薄片をより大きな総数から選択することによって取得される。
【0076】
位置基準は、例えば、印刷された特徴の境界線に沿って孤立している粒子の位置だけを考慮し、印刷された特徴の内側に集積した粒子の位置を無視する、というように実装することができる。
【0077】
あるいは、印刷された背景のいくつかの細部を参照点として用いて、薄片の位置を適切に決定することもできる。
【0078】
向きの基準は、例えば、所定の角度的な制約の下で照明および観測を用いて粒子の反射特性を利用することによって、実装することができる。その条件の下で光源からの光を検出部に反射する粒子だけを考慮し、その条件の下で光を反射しない粒子は無視するのである。当業者には明白なように、マーキングされたアイテムが照明源および検出部に対して回転または傾斜すると、粒子の別の部分集合が反射状態になる。従って、この種の選択の作業性は、最初に選ばれた読み取り条件を精密に再現することに強く依存する。
【0079】
図柄の基準は、粒子の色または色ずれの特性を利用することによって実装することができる。印刷された特徴の、範囲を定められた領域の全面を覆うことは、例えば、異なる種類の粒子の混合物を用いて実現されてよい。これらのうちの1つ以上の所定の種類を別々または一緒に用いて、ランダム分布を表すデータを導出してよい。所定の種類に属するものとしての粒子の選択は、ここでは、あらかじめ定められた光学特性に基づいて行われる。
【0080】
本発明は、上記のマーキング方法に加えて、上に概説されたようなマーキングを保持する書類またはアイテムも含む。特に、以下の通りである。
【0081】
少なくとも1つの領域をCLCP薄片のランダム分布でマーキングされた書類またはアイテムであって、CLCP薄片が円偏光成分を反射していることを特徴とする書類またはアイテム。
【0082】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、CLCP薄片が、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする書類またはアイテム。
【0083】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、CLCP薄片が、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする書類またはアイテム。
【0084】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、各スペクトル反射帯域が、個々に左円偏光または右円偏光されることを特徴とする書類またはアイテム。
【0085】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、ランダム分布が、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの領域で生成されることを特徴とする書類またはアイテム。
【0086】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、CLCP薄片のランダム分布が、既存の識別印の上に付けられることを特徴とする書類またはアイテム。
【0087】
上記のようにマーキングされた書類またはアイテムであって、ランダム分布が、3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含むことを特徴とする書類またはアイテム。
【0088】
本発明は、これに加えて、認証装置で認証/識別するための、粒子のランダム分布を書類またはアイテムにマーキングするためのコレステリック液晶顔料(CLCP)薄片の使用法も含み、この使用法は、CLCP薄片が、円偏光成分を反射しており、認証装置が、円偏光を利用して、円偏光差分画像を形成することによってマーキングの薄片を背景から区別することを特徴とする。
【0089】
CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有する。
【0090】
あるいは、CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有する。
【0091】
CLCP薄片は、個々に左円偏光または右円偏光される各スペクトル反射帯域をさらに有してよい。
【0092】
本発明のさらなる態様は、上記のようなCLCP薄片の使用法であって、ランダム分布が、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの検出領域で生成または利用されることを特徴とするCLCP薄片の使用法である。
【0093】
本発明のさらなる態様は、上記のようなCLCP薄片の使用法であって、ランダム分布が、3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含むことを特徴とするCLCP薄片の使用法である。
【0094】
本発明によるアイテムを認証するためのコーティング組成物中のCLCP薄片の濃度は、好ましくは0.01重量%ないし20重量%、より好ましくは0.1重量%ないし3重量%、最も好ましくは0.2重量%ないし1重量%である。
【0095】
本発明は、ランダムに分布した粒子を含むマークを有するアイテムを識別または認証する装置をさらに含み、この装置は、照明手段と光学検出手段とを備え、円偏光を検出して解析する手段と、円偏光差分画像を形成する手段とを特徴とする。
【0096】
本発明による装置は、好ましくは右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれである少なくとも1つの円偏光フィルタを有してよい。
【0097】
本発明による装置は、少なくとも1つのカラーフィルタをさらに有してよい。
【0098】
本装置は、単色画像センサと、カラー画像センサとから構成される群から選択された少なくとも1つの電子画像センサを備えるものであり、さらに、画像センサは、CMOS画像センサと、CCD画像センサとから構成される群から選択されてよい。本装置は、例えばカメラ付き携帯電話として実施される、他の機能を実行する装置に組み込まれてよい。本装置は、画像分割プリズムと、2つの円偏光フィルタとをさらに備えてよい。
【0099】
好ましい光学検出手段は、図4によるコンパクトで小さなプリズム(1)を備える。プリズムは、既存の撮像装置(例えばカメラまたは携帯電話)(2)に対して、後者の大幅な改造を必要とせずに(図5)、容易に取り付けられるように実施される。
【0100】
プリズム(1、1’)は、撮像装置のレンズの前にプリズムを固定できるように、磁気的な固定具やねじ等として実施され得る、反転可能に固定する手段(3)を備えてよい。
【0101】
図4(A)および図4(B)を参照すると、プリズム(1)は、屋根部の角度(Φ)が140°ないし170°の範囲にある二等辺プリズムであることが好ましい。プリズムは、屈折率nが1.3ないし1.9の範囲にある、一片の光学的に好適な材料(ガラス、プラスチック)製であってよい。あるいは、プリズムは、単一のプリズムを形成するように接合された2つの矩形半プリズム(1、1’)で構成されてよい(図4(B)、図4(C))。
【0102】
読取装置は、レンズ(3、図4(A))を組み合わされたプリズム(1)と、電子画像センサとを備える。レンズは、カメラや携帯電話などにすでに存在するものであってよい。プリズムの機能は、マーク(I)の画像を2つの同じ画像(I1、I2、図4(A))へと二重にすることであり、これらの画像は、レンズ(3)によって画像センサチップ(2)上に結像される。画像センサチップ(2)は、CCDデバイスまたはCMOSデバイスであってよく、マーク(I)の両偏光のそれぞれにそれぞれ対応する2つの画像を同時に出力する。
【0103】
これを実現するため、プリズム(1)は、それぞれ左(4)円偏光および右円偏光を透過する2つの偏光フィルタ(4、4’)を備える。偏光フィルタは、プリズムの上部(屋根部)の両方の面に配置されてよい(図4(B))。あるいは、フィルタ(4、4’)は、プリズムの底部(基部)に配置されてもよい(図4(C))。
【0104】
さらに、偏光フィルタ(4、4’)は、特定の波長範囲の選択的な透過のために、カラーフィルタと組み合わされてよい。
【0105】
画像における円偏光状態を解析するための他の種類のプリズムならびに他の方法および装置は当業者に知られており、それらが、本発明に従って必要とされる機能において、上記のプリズムおよびフィルタに取って代わってもよい。
【0106】
特に、プリズムおよびレンズのそれぞれの機能を単一のデバイスに統合して(図4(D)、図4(E))二眼レンズまたは二眼フレネルレンズを形成することができ、二眼レンズの個々の部分に、右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタを設けることができる。
【0107】
右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタを設けられた二眼フレネルレンズを備えるこの実施の形態は、安価であり、またプラスチック材料でできた単一の平らなシートとして構成され得るので、特に好ましい。
【0108】
画像データは、マクロ対物レンズと画像を分割する光学素子とを装備したデジタルカメラを利用して記録されてもよい。図8による、光を拡散させる白色ドームは、穴を通して試料を視覚的に確認することができ、また全方向性の照明手段を備えるものであるが、有利には、この白色ドームが用いられてよい。
【0109】
読取装置と共に用いられる好ましい照明手段は、環状光源を備え、環状光源は、白色LEDまたはカラーLEDの輪として実施されてよく、これを用いて白色ドームが照明される。そしてドームは、光を試料上に拡散させて、マーキング中に存在する本質的にすべてのCLCP薄片がカメラの画像で見えるような状態を提供する。拡散照明源は、当業者に知られており、さまざまな製造業者(シーメンス、Advanced illumination、シーシーエス等)から市販されている。代替となる実施の形態では、有利には、着色照明を用いてCLCP粒子と背景とのコントラストを改善してよい。
【0110】
本発明による別の実施の形態では、読取装置の照明手段は、完全には拡散性でない。少なくとも部分的に指向性のある照明を用いることによって、照明と検出角度との選ばれた組み合わせについての特定の反射条件を満足するほんの一部の粒子だけを選択することができる。
【0111】
照明と検出とを基板面に対して単純に直交させて設定すること(直立した光、直交する視野)により、基板の面の20°以内に面が向いているCLCP薄片だけを検出する(すなわち選択する)ことができる。
【0112】
これに相当する実施の形態では、書類またはアイテム上のマーキングの画像データ取り込みは、マクロ対物レンズと、屋根部の2つの面が左偏光フィルタおよび右偏光フィルタのぞれぞれを有するプリズムと、を装備した単純なカメラによって実行される。照明は、カメラの方向からの光源、例えばフラッシュライトによって行われる。この場合、CLCP薄片の一部だけが、カメラへ向けて光を反射し、画像に現れる。このように、CLCP薄片の選択が、読取装置の指向性の照明手段によって行われる。
【0113】
一連(k=1、…N)の指向性光源が用いられてもよい。その際、それらが1つずつスイッチを入れられて、同じ粒子配列の、対応する一連(k=1、…N)の画像が撮影される。続いて、これらの画像は、各画素(i、j)の強度がI(i,j)=Max(I_1(i,j),I_2(i,j),…I_N(i,j))である単一の画像へと組み合わされてよい。また、シーケンスの各ステップごとに複数の指向性光源がスイッチを入れられてもよい。
【0114】
本装置は、円偏光によって書類またはアイテムを照明する照明手段をさらに備えてよい。第1の実施の形態では、右円偏光および左円偏光のための別々の光源が存在し、これらの光源のスイッチを交互に入れたり切ったりする。第2の実施の形態では、独国特許第10211310号明細書に開示されたような、右円偏光と左円偏光との代替選択を可能にする電気光学フィルタ、を有する単一かつ唯一の光源が用いられる。また、唯一の光源と、左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタの機械的切り替えとを設けることもできる。
【0115】
本装置は、データ処理動作を実行できるようにするとともに、有線もしくは無線のデータリンクまたはインターネットを介して情報を転送するための、ハードウェアおよびソフトウェアをさらに備えてよい。データ処理は、特に、画像の取得(取り込み)と、左回りの画像と右回りの画像との互いの倍率合わせ、位置合わせ、ならびに差し引き(照合および画像処理)と、結果の解釈(マーキングの認証または識別)とのために必要である。データリンクの場合は、これらの動作のうちのいくつかを、遠隔のコンピュータによって実行することもできる。
【0116】
本発明のさらなる態様は、CLCP薄片のランダム分布を有するアイテムを認証する認証装置を作る工程であって、左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタのそれぞれを有する、画像を分割する光学素子が、カメラ付き携帯電話と共に組み立てられることを特徴とする工程である。
【0117】
本発明のさらなる態様は、カメラ付き携帯電話と共に組み立てられた、左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタのそれぞれを有する、画像を分割する光学素子、を備える認証装置の使用法であって、CLCP薄片のランダム分布を有するアイテムを認証するための使用法である。
【0118】
本装置は、カラーフィルタをさらに備えてよい。当業者に明白なように、画質を向上させるために、多様なフィルタを偏光フィルタと組み合わせて用いることができる。電子式のCCDまたはCMOSの画像センサチップのような白黒センサのスペクトル応答が、適切なカラーフィルタによって修正され得ることは注目に値する。粒子の反射が電磁スペクトルの所定の波長領域にあることを利用して、着色ガラスフィルタまたは干渉フィルタを用いて画像のコントラストを向上させることができる。
【0119】
書類またはアイテムの所定の領域の中または上に含まれるCLCP薄片のランダム分布を、本発明に従い図4に準じて認証または識別する方法においては、画像センサから画像を得るために、書類またはアイテムが、上記の光学手段、すなわち画像を分割する偏光プリズムおよび画像センサ、を備える読取装置の前に置かれる。必要であれば、専用の照明手段が用いられる。
【0120】
画像を分割する光学素子がプリズムである場合、プリズムの各傾斜面がそれぞれ左偏光フィルタおよび右偏光フィルタを備え、それにより、それぞれ左円偏光および右円偏光の下で見たマーク(I)に対応して、画像センサデバイスの2つの別々の部分に別々の画像を生成するようにしてよい。
【0121】
マーク(I)の両方の画像(I1、I2)はそこで、必要に応じて変換および倍率合わせの動作が適用されて、互いに対してマッピングされる。そして、画像(I1、I2)が互いに差し引かれて、もはや非偏光の背景の寄与を含まない差分画像(I1−I2)が生成される。
【0122】
差分画像に基づいてマーキング粒子(薄片)の位置が決定され、マーキング粒子の位置データを、データベースから取り出された、あらかじめ記録された情報と比較することによって、書類またはアイテムが認証または識別される。データベースまたはその一部を読取装置に組み込んで、単独で識別できるようすることもできる。あるいは、データベースまたはその一部は、アイテムの真正性またはアイデンティティを確認するのに遠隔の問い合わせを必要とする外部サーバ(コンピュータ)上でホストされる。
【0123】
概して、差分画像(I1−I2)は、それぞれ左偏光フィルタおよび右偏光フィルタを通して撮影された同じマークの2つの画像を用いて取得される。その際、任意の所与の点に偏光顔料薄片が存在するか否か、そしてその偏光顔料薄片は左回りと右回りのどちらの光成分を反射するか、を決定するために、2つの画像の対応する点を1点1点比較することが必要である。左回りと右回りの画像における各点の対応関係は、差し引きの動作が行われる前に特定されなければならない。これは、画像照合アルゴリズムによって実現できる。画像照合アルゴリズムは、マーキングの領域に存在する図柄などに対して位置を確定して、局所的な画像要素を示すものである。そのような画像照合アルゴリズムは当業者に知られており、入手可能である。
【0124】
本発明によるマーキングの第1の好ましい実施の形態において、CLCPマーキング薄片は、可視スペクトル中のある波長範囲において単一の円偏光の光成分を反射する。その結果、そのような薄片の有無を、そのスペクトル範囲における左円偏光および右円偏光についての反射率の違いから決定することができる。
【0125】
さらなる実施の形態では、CLCP薄片は、可視スペクトル中の複数の範囲において光を反射する。そして、その各範囲で、薄片が左回りまたは右回りの光成分のいずれかを個別に反射するようにすることができる。この二重(左および右)の円偏光薄片は、偏光とカラーフィルタとの組み合わせを利用することにより一義的に検出可能である。
【0126】
CLCP薄片の重要な利点は、20マイクロメートルないし100マイクロメートルにわたるその多少大きな薄片寸法と、1マイクロメートルないし10マイクロメートルほど(典型的には3マイクロメートル)のその多少薄い厚さとである。CLCP薄片は、この適度な厚さにより、その多少大きな薄片寸法にもかかわらず、一般的な印刷用インクに(例えば重ね刷り用ワニスに)混ぜ込むことができ、一般的な印刷機器で印刷することができる。CLCP薄片がある程度柔軟な材料であることが、その少なからぬ理由である。
【0127】
本発明においてマーキング粒子として用いられるCLCP薄片は、その大きな寸法により、書類またはアイテム上で容易に検出できる。薄片の寸法が大きいので、マーキングの領域も、容易に位置決定されるように広く選択することができる。また、既存の識別印の上に透明なCLCP薄片を付けることができる。その結果、CLCP薄片を含む保護膜が識別印を密封し、これにより、識別印が不正に変更されていないことを確かめることができる。
【0128】
多数の書類またはアイテムを明確に識別するには、20個ないし50個ほどの薄片で十分であり、これにより、処理と参照データベースへの事前記録とが行われなければならないデータの量が制限される。
【0129】
識別される書類またはアイテムに応じて、マーキングを施される領域が、有効利用される識別領域にわたって広がってもよい。極端な場合は、書類またはアイテムの全体がマーキングの対象になってよい。
【0130】
本発明による識別では、実際に取り出された薄片パターンと参照データベース内のあらかじめ記録されたパターンとの完全な合致が不要なので、マーキングされた書類またはアイテムの、損傷および汚れの悪影響が低減される。実際、データベース内のあらかじめ記録された薄片位置の一部が問題の書類またはアイテム上に認められさえすれば、書類またはアイテムの真正性を保証することができる。一方、あらかじめ記録された参照データベースにない薄片が書類またはアイテム上に存在していたら、その問題の書類またはアイテムは偽造であると見なされることになる。これらの利点が相まって、不十分な認証速度、詰まり、書類の汚れ等に関する従来技術の問題の多くが克服される。
【0131】
マーキングの領域は、マーキングの検出(読み取り)に使用される領域を含むが、この後者よりずっと広くてもよい。検出領域の好ましい大きさは1平方センチメートルであるが、用途に応じて、より小さな、またはより大きな寸法が選ばれてもよい。検出領域は、試料全体と同程度の広さでもよい。検出領域が広い場合は、読取装置の位置決めがより容易であり、認証および識別がより高速になる。また、あらゆる場合において、読取装置によって取り込まれる領域は、マーキングを保持する書類またはアイテムのわずかな位置決め誤差を補償できるようにするために、認証されるマーキングの実際の領域よりも広くすべきである。マーキングの認証は、書類またはアイテム上におけるマーキングの正確な位置決めのステップを必ず含む。
【0132】
シグネチャ、すなわち特定の位置におけるマーキング粒子の存在を反映するデータセット、のデータサイズは、注意を要する点である。当業者に知られているように、大量のデータレコードの識別には、参照データベースにおける時間のかかる検索が必要であり、データベースにおける検索時間を減らすためには、シグネチャ自体の大きさを制限する必要がある。薄片の位置、向き、薄片の色、該当する場合は薄片の二重偏光などのような、いくつかのパラメータを用いて、アイテムのシグネチャを定義することができる。シグネチャが薄片の位置だけを表すように制限することで、シグネチャの大きさを大幅に減らすことができる。
【0133】
処理するデータセットの大きさをさらに減らすには、ノイズを減らしてアイテムの明確なシグネチャを得るために、検出領域内の隣接する画素から取り出したデータを組み合わせてよい。例えば、正方形の4個、9個、または16個等の隣接する画素のデータを組み合わせて「マクロ画素」の値を表してよい。これにより、複数の画素にわたって広がる大きくて光り輝く薄片または薄片群だけが、最終的なデータセットで使用されることになる(「マクロ画素アルゴリズム」)。処理するデータセットの大きさを減らすために、フーリエ領域におけるグライディング手段(gliding means)またはスペクトルフィルタリングのような、ノイズを低減する他の統計的手段を適用してもよい。
【0134】
アイテムの認証は、わずかなパラメータだけに対して、好ましくはアイテムの真正性を確認するために選ばれた所定の領域における位置に対して、行われてよい。あるいは、向き、色、観測角度に応じた色ずれ等のような、薄片の他のパラメータが、真正性の基準としてデータベースに格納されたデータセット、に含まれてもよい。
【0135】
CLCP薄片のランダム分布の使用により、アイテムの固有のアイデンティティが生成される。この分布は、偽造者であれば厳密な模写を作製するために合致させなければならない、いくつかの「ランダムさの度合い」を有する。これらの度合いとは、各CLCP薄片の位置、3軸すべてに関する薄片の向きの自由度、薄片の直径、薄片の色および色ずれ、薄片の偏光(左回り、右回り、または両方)、ワニス内での薄片の深さ、アイテムの第1層の色である。多くの薄片が同時に基準に合致しなければならないので、首尾よくマークを複製する総合的な可能性はきわめて小さい。
【0136】
CLCP薄片の量を増やすと、マーキングを再現するのが難しいため、偽造のリスクが低減される。CLCP薄片の製造自体が現在は容易でなく、また多様な異なる種類のCLCP薄片を作製することができる。この、正しい材料を入手できないことが、偽造者にとっての第1の、重要な障害である。第2の障害は、シグネチャ領域における薄片分布を再構成してランダムさの度合いをすべて合致させることの難しさである。
【0137】
書類またはアイテムは、書類またはアイテムのマーキング領域における薄片の位置、向き、色、色ずれ等に関する取り出されたデータを、あらかじめデータベースに格納された、オリジナルの書類またはアイテムの「シグネチャ」と比較することによって、認証または識別される。索引付きデータベースまたは生のデータベースが用いられてよい。索引付きデータベースは、情報に対して、迅速な内容主体の検索およびアクセスを行うことができる、という利点を有する。
【0138】
もしも初めに格納された情報に対応しない薄片位置が書類またはアイテム上で見つかったら、その書類またはアイテムは偽造と見なされる。たとえ初めに格納された情報が書類またはアイテム上に存在しない薄片位置を含んでいても、その書類またはアイテムは真正であると見なされる。マーキングが真正であると認められるためには元の薄片の、ある最小の割合が存在していなければならない、ということが要求されてよい。例えば、シグネチャは、そのランダムなCLCP分布の位置の85%がデータベースにあるあらかじめ記録された元のシグネチャと合致したら、真正であると見なされてよい。この比較は、時間を節約するために、書類またはアイテムの「シグネチャ」の一部だけに制限されてもよい。ただし、明確な識別にするためには、十分な数の薄片位置が比較されなければならない。
【0139】
各書類またはアイテムの個別のシグネチャである、本発明のマーキングは、書類またはアイテムを追跡またはトレースする働きをすることができる。マーキング領域におけるCLCP薄片のランダム分布、またはその薄片の少なくとも一部の選ばれたもののランダム分布が、データベースにあらかじめ記録される。その後、好適な読取装置(相応に変更されたカメラ付き携帯電話、または市販のフラットベッドスキャナのような変更された市販の走査装置であってよいが、好ましくは専用の読取装置である)によって書類を調べることができ、薄片位置に対応する、取り出された「シグネチャ」が、データベースにおいて識別され得る。つまり、書類のアイデンティティが決定され得る。
【0140】
次に、図面および例示的な実施の形態を用いて、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明によるマーキングおよび識別の方法およびシステムを模式的に描く図である。
【図2】本発明によるマーキングを模式的に描く図である。
【図3】本発明による読取装置を、以下の異なる可能な実施の形態に従って模式的に描く図である。(A)それぞれ左円偏光フィルタと右円偏光フィルタを有する2つのカメラ。(B)左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタを備える画像分割プリズムを有する単一のカメラ。(C)左円偏光と右円偏光とを逐次選択するための電気光学スイッチを有する単一のカメラ。(D)逐次的な左右偏光照明を有する単一のカメラ。
【図4】(A)カメラに取り付けられた偏光画像分割プリズムの機能を説明する図である。(B)偏光画像分割プリズムの第1の実施の形態を模式的に描く図である。(C)偏光画像分割プリズムの第2の実施の形態を模式的に描く図である。(D)偏光フィルタを持つ二眼レンズを模式的に描く図である。(E)偏光フィルタを持つ二眼フレネルレンズを模式的に描く図である。
【図5】偏光画像分割プリズムを備えるカメラ付き携帯電話の実施の形態である。
【図6】本発明による、グラフ用紙(ミリメートル格子間隔)上のマーキングを示す図であり、(A)は1重量%のCLCP薄片を含むインクで実現されたもの、(B)は0.2重量%のCLCP薄片を含むインクで実現されたものである。
【図7】データマトリックスコードの上に実現された、本発明によるマーキングの画像を示す図であり、(A)は右円偏光フィルタを通して撮影されたもの、(B)は左円偏光フィルタを通して撮影されたもの、(C)は画像(A)と画像(B)との差分である。
【図8】白色の拡散球体内に位置する白色LEDの輪を備える好ましい照明手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0142】
図1は、本発明による方法の例示的な実施の形態を示し、この方法は、円偏光粒子を利用して書類またはアイテムにマーキングし書類またはアイテムを識別するものであり、その際、追跡動作およびトレース動作のためのシステムを実施するさらなるハードウェアおよびソフトウェアと共に、マーキングされた書類を認証/識別する装置を用いる。
【0143】
適切な濃度の円偏光CLCP薄片(2)を含むインクを用いて、ラベル(1)のような書類またはアイテムがマーキングされる。結果として生じたマーキング(3)は、適切な結像光学系(5)と円偏光フィルタ(6)とを有するカメラ(4)を用いて記録される。当然のことながら、この手法において、円偏光フィルタ(6)は、左円偏光フィルタおよび右円偏光フィルタの両方、または電気光学フィルタに相当する。照明手段(7)も存在する。左円偏光および右円偏光を用いてマーキングから取得された画像データが、対応するソフトウェアを有する第1のコンピュータ(8)で処理され、シグネチャ(S)がマーキングから導出されてデータベース(9)に格納される。
【0144】
その後、アイテム(1)は、追跡またはトレースしたい製品(製品)で使用される。製品を識別するには、読取装置(12)を用いてマーキング(3)の画像データが記録される。読取装置(12)は、記録された画像データを、無線リンク(L)を介して、第2のコンピュータ(10)に連結された基地局(11)へ送ってよい。第2のコンピュータ(10)は、対応するソフトウェアを有しており、受信した画像データからシグネチャを導出して、それをデータベース(9)に格納されたシグネチャのライブラリと比較する。これにより、シグネチャは、データベース(9)に存在することが見出されて、製品がその出所およびトレース記録に関して識別されるか、そうでない場合は、製品は、真正ではないと見なされる。
【0145】
図2は、マーキングされたSICPA社のスタンプを示しており、このスタンプは、1平方センチメートルの好ましい大きさを有する。検出領域は、スタンプ全体で構成される。スタンプは、1重量%の右円偏光CLCP薄片を含むワニスで重ね刷りされている。この画像は、右円偏光フィルタを570nmのローパスフィルタと組み合わせて用いることにより記録された。570nmのローパスフィルタは、570nmを超える波長の光を透過し570nm未満の波長の光を遮るものである。スタンプの暗い領域に薄片が明瞭に見られる。
【0146】
図3は、マーキングを読み取るための、異なる4種類の設定を模式的に描く図である。
実施の形態A)による読取装置は、2つの別々の電子画像センサ(C1、C2)を備え、これらはそれぞれ、レンズまたは光学系(3)と、左円偏光フィルタまたは右円偏光フィルタ(L、R)とを有する。マーキング(I)は、左偏光フィルタ(L)を通して第1の画像センサ(C1)により撮像されて第1の画像(I1)が生成され、右偏光フィルタ(R)を通して第2の画像センサ(C2)により撮像されて第2の画像(I2)が生成される。
【0147】
実施の形態B)による読取装置は、レンズまたは光学系(3)を有する単一の画像センサ(C1)と、画像分割プリズム(プリズム)とを備え、プリズムは、それぞれプリズムの屋根部の2つの面に配置された左円偏光フィルタと右円偏光フィルタ(L、R)とを持つ。マーキング(I)の両方の偏光画像(I1、I2)が、同一の画像センサ(C1)で同時に取得される。
【0148】
実施の形態C)による読取装置は、レンズまたは光学系(3)を有する単一の画像センサ(C1)と、右円偏光または左円偏光を選択するために交互に切り替えられる電気光学フィルタ(EO)とを備える。マーキング(I)の両方の偏光画像(I1、I2)が、同一の画像センサ(C1)で逐次取得される。
【0149】
実施の形態D)による読取装置は、レンズまたは光学系(3)を有する単一の画像センサ(C1)と、2つの光源(LS1、LS2)とを備え、2つの光源(LS1、LS2)はそれぞれ、それらの前に配置された左円偏光フィルタと右円偏光フィルタと(L、R)を有する。光源は、交互にスイッチを入れられたり切られたりして、右円偏光照明と左円偏光照明とで交互にマーキング(I)を照らす。画像センサは、この右円偏光照明および左円偏光照明の下でマーキング(I)の画像を撮影する。こうして、マーキング(I)の両方の偏光画像(I1、I2)が、同一の画像センサ(C1)で逐次取得される。
【0150】
実施の形態D)のさらなる変形(図示しない)では、偏光を選択するための電気光学フィルタ、を有する単一の光源が用いられ得る。
【0151】
図4(A)は、単一の電子画像センサ(2)を用いてマーキング(I)の左偏光画像および右偏光画像を同時に記録できるようにする、本発明の好ましい光学手段の機能を模式的に描く図である。ここでは、画像センサ(2)のレンズまたは光学系(3)の前に配置されたコンパクトなプリズム(1)の2つの面によって、マーキング(I)の画像が2つの画像(I1、I2)に分割される。各画像の偏光を選択するために、コンパクトなプリズム(1)の2つの面の前に、それぞれ左偏光フィルタと右偏光フィルタと(4、4’)が配置される。
【0152】
左円偏光フィルタは、アイテム上のマーキングの左円偏光薄片によって反射された光成分のような、左偏光を主に透過する。右円偏光は左のフィルタを通過せず、右円偏光を反射する対象物は、画像では黒く表示されることになる。すなわち、それらはまったく見えない。右偏光フィルタについても、同じことが逆の向きで当てはまる。
【0153】
図4(B)は、図4(A)のプリズムの詳細な断面図を示す図である。プリズム(1)は、単体であってもよいが、2つの矩形半プリズム(1、1’)で構成されることもできる。プリズムの屋根部の角度(Φ)は、140°ないし170°の範囲に含まれる。屋根部の角度がこれよりも小さいと、プリズムの透過が著しく少なくなるとともに画像に大きな収差が生じ、また屋根部の角度がこれよりも大きいと、2つの画像(I1、I2)の分離が小さくなりすぎる。左偏光フィルタおよび右偏光フィルタ(4、4’)は、プリズムの両方の屋根面の前に配置される。画像センサデバイスにプリズム(1、1’)を逆に取り付けられるようにするために、プリズム(1、1’)の基部に固定手段(3)が配置される。
【0154】
図4(C)は、プリズムの代替実施形態を示し、ここでは、左偏光フィルタと右偏光フィルタと(4、4’)がそれぞれ、プリズムの基部の左側と右側とに配置される。
【0155】
図4(D)は、偏光フィルタを持つ二眼レンズを備える画像分割光学素子を示す。レンズの各部分が、共通の画像センサデバイスに対象物の別々の画像を生成するようになっている。
【0156】
図4(E)は、図4(D)と同様の機能を実現する、偏光フィルタを持つ二眼フレネルレンズを備える画像分割光学素子を示す。
【0157】
図5は、カメラ付き携帯電話に取り付けられたプリズムを示す。カメラ付き携帯電話が読取装置として働くようになっている。
【0158】
図6による、マーキングの第1の例示的な実施の形態において、インク中のCLCP薄片の最適な濃度を決定した。この目的のために、以下の一般的配合のシルクスクリーン用インクを準備した。
【0159】
基本配合 インク0.2% インク1%
オリゴマー 50%
モノマー 30%
アエロジル200 3%
インク展色剤 合計 83% 83%
光開始剤 合計 10% 10%
添加剤 合計 6.8% 6%
CLCP薄片 0.2%ないし1%
顔料 合計 0.2% 1%
合計 100% 100%
【0160】
インクの粘度は、当業者に知られた手段によって、0.5Pa・sないし1Pa・sの範囲の値に調整した。
【0161】
本例の目的は、インクを印刷し硬化させた後に得られる1面当たりのCLCP薄片の数を示すことであった。インクは、スクリーン77Tによるシルクスクリーン印刷技術を用いて、ミリメートル方眼紙に印刷した。印刷したインクはUV乾燥させた。
【0162】
図6(A)は、1重量%のCLCP薄片を含む、印刷され硬化されたインクから取得した画像を示す。570nmのローパスフィルタの使用により、CLCP薄片の検出を容易にした。そのようなフィルタは、570nmよりも長い波長の光を透過し、570nmよりも短い波長の光を遮る。図6(A)から分かるように、1平方ミリメートル当たり約35個の薄片が存在する。
【0163】
図6(B)は、同じ条件を用いて印刷された、0.2重量%のCLCP薄片を含むインクの場合を示す。同じ条件の下で撮影されたこの画像は、1平方ミリメートル当たり約7個の薄片が存在することを示している。
【0164】
図7に準じた、本発明によるマーキングのさらなる例示的実施形態では、マトリックスコードを、1重量%のCLCP薄片を含むシルクスクリーン用インクで重ね刷りした。このマーキングは、スクリーン77Tによるシルクスクリーン印刷技術を用いて印刷した。印刷したマーキングはUV乾燥させた。
【0165】
図7(A)は、そうして得られたマーキングを、左円偏光フィルタを通して撮影したネガ(反転)画像を示す。CLCP薄片が暗い斑点として、それよりも大きな、マトリックスコードの白い斑点上に見えている。マトリックスコードの暗い(元は白い)領域には、薄片はほとんど見られない。
【0166】
図7(B)は図7(A)と同じ領域を示すが、これは右円偏光フィルタを通して撮影したものである。もはや薄片は見えない。画像中のわずかな暗い斑点は、印刷の不完全さによるものである。
【0167】
図7(C)は、図7(A)の画像から図7(B)の画像を差し引くことによって得た差分画像を示す。CLCP顔料薄片の存在する部分がすべて暗い斑点として見えるが、背景のマトリックスコードは、ほぼ完全に除去されている。
【0168】
図8は、白色の拡散ドーム(半球)の内部に、輪状に並んだ16個の白色LEDを備える好ましい照明手段を示す。この照明手段により、マーキングを構成するコーティング内でのCLCP薄片の実際の向きとは無関係にマーキングの事実上すべてのCLCP薄片を見えるようにする、というような全方向的な方法で書類またはアイテムを照明することが可能になる。撮像装置は、白色の拡散ドームの上部の穴から挿入される。
【0169】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイテムにマーキングし、前記アイテムを識別または認証する方法であって、
ランダムに分布した粒子を含むマークを前記アイテムに設けるステップと、
前記ランダム分布を表すデータを、照明手段と光学検出手段とを備える読取装置を用いて記録し格納するステップと、
後に前記ランダム分布を表す前記データを読み取りそれらを前記格納されたデータと比較することによって、前記マーキングされたアイテムを識別または認証するステップと
を含む方法において、前記ランダムに分布した粒子は、円偏光成分を反射するコレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)薄片で構成され、前記読取装置は、円偏光を利用して、円偏光差分画像を形成することによって前記薄片を背景から区別することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記円偏光差分画像は、非偏光と、左円偏光と、右円偏光との群から選択された2つの異なる偏光条件、の下で得られた2つの画像の間で形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各スペクトル反射帯域は、個々に左円偏光または右円偏光されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ランダム分布は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの領域で生成または利用されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ランダム分布は、3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ランダム分布を表す前記データは、位置、向き、または図柄のようなあらかじめ定められた基準に従って、いくつかの薄片をより大きな合計数の中から選択することによって得られることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記読取装置は、少なくとも1つの円偏光フィルタ、好ましくは右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれを有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記読取装置は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに通過帯域を有する少なくとも1つのカラーフィルタを有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、液体組成物でのコーティングまたは印刷と、ペースト状のコーティング組成物でのコーティングまたは印刷と、固体の、特に熱で溶ける粉末のコーティング組成物でのコーティングまたは印刷と、「ブロンジング」とから選択されたコーティング技術によって前記アイテムに設けられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、識別印で重ね刷りまたはコーティングされることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、あらかじめ構成されたインク液滴パターンを印刷技術で付けることによって付けられることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ランダム分布は、CLCP薄片の前記ランダム分布を備えたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、または任意の転写可能物の形で前記アイテムに設けられることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
自身の識別または認証のために、ランダムに分布した粒子で少なくとも1つの領域にマーキングされたアイテムであって、前記粒子は、円偏光を反射するコレステリック液晶ポリマー(CLCP)薄片で構成され、前記薄片の密度は、1平方ミリメートルあたり100片以下、好ましくは35片以下、最も好ましくは7片以下であることを特徴とするアイテム。
【請求項16】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項15に記載のアイテム。
【請求項17】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項16に記載のアイテム。
【請求項18】
各スペクトル反射帯域は、個々に左円偏光または右円偏光されることを特徴とする請求項17に記載のアイテム。
【請求項19】
前記ランダム分布は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの領域で生成されることを特徴とする請求項15ないし18のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項20】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、既存の識別印の上に付けられることを特徴とする請求項15ないし19のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項21】
前記ランダム分布は、3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含むことを特徴とする請求項15ないし20のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項22】
液体コーティング組成物でのコーティングまたは印刷と、ペースト状のコーティング組成物でのコーティングまたは印刷と、固体の、特に熱で溶ける粉末のコーティング組成物でのコーティングまたは印刷と、「ブロンジング」とから選択されたコーティング技術によって前記アイテムに設けられたCLCP薄片のランダム分布を備える請求項15ないし21のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項23】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、識別印で重ね刷りまたはコーティングされることを特徴とする請求項15ないし22のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項24】
CLCP薄片の前記ランダム分布は、あらかじめ構成されたインク液滴パターンを印刷技術で付けた結果であることを特徴とする請求項15ないし23のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項25】
CLCP薄片の前記ランダム分布を備えたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、もしくは任意の転写可能物を備え、または、CLCP薄片の前記ランダム分布を備えたラベル、ラミネート、フィルム、転写箔、もしくは任意の転写可能物である請求項15ないし24のいずれか1項に記載のアイテム。
【請求項26】
読取装置によって識別または認証するための、粒子のランダム分布をアイテムにマーキングするためのCLCP薄片の使用法であって、前記CLCP薄片は、円偏光成分を反射し、前記読取装置は、円偏光を利用して、円偏光差分画像を形成することによって前記薄片を背景から区別することを特徴とするCLCP薄片の使用法。
【請求項27】
前記円偏光差分画像は、非偏光と、左円偏光と、右円偏光との群から選択された2つの異なる偏光条件、の下で得られた2つの画像の間で形成されることを特徴とする請求項26に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項28】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項26または27に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項29】
前記CLCP薄片は、紫外、可視、および赤外の電磁スペクトルのうちの少なくとも1つに、少なくとも2つのスペクトル反射帯域を有することを特徴とする請求項28に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項30】
各スペクトル反射帯域は、個々に左円偏光または右円偏光されることを特徴とする請求項28に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項31】
前記ランダム分布は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも25mm、より好ましくは少なくとも100mmの検出領域で生成または利用されることを特徴とする請求項26ないし30のいずれか1項に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項32】
前記ランダム分布は、3個ないし1000個の薄片、好ましくは10個ないし300個の薄片、より好ましくは30個ないし100個の薄片を含むことを特徴とする請求項26ないし31のいずれか1項に記載のCLCP薄片の使用法。
【請求項33】
CLCP薄片のランダム分布を用いてアイテムにマーキングし前記アイテムを識別するためのコーティング組成物であって、前記コーティング組成物は、0.01%ないし20%、好ましくは0.1%ないし3%、最も好ましくは0.2%ないし1%の重量濃度のCLCP薄片を含むことを特徴とするコーティング組成物。
【請求項34】
ランダムに分布した粒子を含むマークを有するアイテムを識別または認証する装置であって、照明手段と光学検出手段とを備え、左円偏光および右円偏光を検出して解析する手段と、円偏光差分画像を形成する手段とを特徴とする装置。
【請求項35】
前記円偏光差分画像は、非偏光と、左円偏光と、右円偏光との群から選択された2つの異なる偏光条件、の下で得られた2つの画像の間で形成されることを特徴とする請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記装置は、少なくとも1つの円偏光フィルタ、好ましくは右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれを有することを特徴とする請求項34または35に記載の装置。
【請求項37】
前記装置は、少なくとも1つのカラーフィルタを有することを特徴とする請求項34ないし36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
前記装置は、単色画像センサと、カラー画像センサとから構成される群から選択された少なくとも1つの電子画像センサを備えることを特徴とする請求項34ないし37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記画像センサは、CMOS画像センサと、CCD画像センサとから構成される群から選択されることを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記装置は、画像分割プリズムと、右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれとを備えることを特徴とする請求項34ないし39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記装置は、カメラ付き携帯電話で構成されることを特徴とする請求項34ないし40のいずれか1項に記載の装置。
【請求項42】
前記装置は、前記マーキングを右円偏光および左円偏光のそれぞれで照明するための照明部を備えることを特徴とする請求項34ないし41のいずれか1項に記載の装置。
【請求項43】
前記装置は、前記装置による画像処理動作を可能にするハードウェアおよびソフトウェアを備えることを特徴とする請求項34ないし42のいずれか1項に記載の装置。
【請求項44】
CLCP薄片のランダム分布を有するアイテムを識別または認証する読取装置を作る工程であって、画像分割プリズムと、右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれとが、カメラ付き携帯電話と共に組み立てられることを特徴とする工程。
【請求項45】
カメラ付き携帯電話と共に組み立てられた、画像分割プリズムと、右円偏光フィルタおよび左円偏光フィルタのそれぞれと、を備える読取装置の使用法であって、CLCP薄片のランダム分布を有するアイテムを識別または認証するための使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−525343(P2010−525343A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504515(P2010−504515)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003116
【国際公開番号】WO2008/128714
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】