説明

最適化されたアフェレーシスのドロー及びリターンのためのシステム及び方法

血液成分を収集し交換するための血液処理装置(10)が、全血を対象から引き出し、使用されない血液成分を対象へ戻すための静脈アクセス装置、並びに引き出された全血を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離する血液成分分離装置(11)を備えている。この分離装置は、第2の血液成分を第2の血液成分保存容器(20)へ送ることもできる。このシステムは、静脈アクセス装置(24)と血液成分分離装置とを接続し、第1の血液成分を対象へ戻すようになっているリターンラインを使用する。このシステムは、リターンラインに配置されている第1の圧力センサ(M1)及び第2の圧力センサ(M2)有している。第1の圧力センサは、血液成分分離装置と静脈アクセス装置との間に配置されており、第2の圧力センサは、リターンラインに第1の圧力センサと静脈アクセス装置との間に配置されている。リターンラインに接続されたポンプは、測定された圧力に基づいてリターン流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、「System and Method for Optimized Apheresis Draw and Return」と題され、代理人番号1611/A52で譲渡され、Etienne Pages及びMichael Ragusaを発明者とする2008年4月14日付け出願の米国特許出願第12/102,427号の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は、参照によりここに援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、血液アフェレーシスのためのシステム及び方法、特に、最適化されたアフェレーシスのドロー及びリターンのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アフェレーシスは、対象(対象者)から引き出された全血から個々の血液成分を分離し集収することができる処置である。典型的には、全血は、対象のアームに挿入された針を介して引き出され、遠心分離ボウルのような細胞分離器へ移送される。全血が、その様々な成分(例えば血漿、赤血球及び血小板)に分離されたら、1つの又は複数の成分を遠心分離ボウルから集収することができる。残された成分は、除かれた成分の体積を埋め合わせるため補償流体と共に対象へ戻すことができる。
【0004】
アフェレーシス処置を行う際、技術者は、処置時間と患者の安全性とのバランスを取らなくてはならない。詳細には、技術者は、処置時間及び対象の不快感を最小限にするようにできるだけ迅速に処置を行わなくてはならないが、対象の安全性を常に意識しなくてはならない。安全性の認識に関するそのような領域の1つは、全血が対象から引き出され、残りの血液成分が対象へ戻される圧力である。残りの成分及び潜在的な補償流体が対象に戻される圧力は、対象の安全にとって重要である。圧力が、リターンの際に過度に高く、ドローの際に過度に低い場合、対象は静脈損傷のリスクに曝される。
【0005】
対象から引き出された血液及び対象から戻された成分の圧力を制御するために、現状のシステムは、静脈圧の測定を試みている。しかし、現状のシステムは典型的には、アクセス位置から一定距離を置いたライン内の圧力を測定する。この距離が測定値の不正確さを生ぜしめ、その結果、現状のシステムは、静脈圧を正確に測定することができない。このような不正確さによって患者のリスクは増大し、おそらく、技術者がアフェレーシスシステムを非最適な速度で操作せざるを得ないことは想像され得る。静脈穿刺にできるだけ近い位置で測定しても、現状のシステムでは、測定点と針の先端との間に生じる圧力の損失を考慮に入れていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、センサを静脈内に配置する必要はなく、供血者の静脈圧を正確に決定する。いくつかの態様では、圧力は、針先端をアフェレーシス装置へ流体接続する1つ又は複数のライン内の2点で測定することができる。この2つの測定点(P1及びP2)は、供血者の静脈内の針先端から一定距離を置かれて配置されていてよい。これらの測定点は、既知の流体抵抗R1及びR2をそれぞれ有するラインの2つの部分を区切ることができる。Rは、流量で除した2つの圧力測定点間の圧力変化として規定することができ、mmHg/ml/分で表すことができる。上記2つの点は、針先端と第1の測定点との間のラインの部分並びに第1の測定点と第2の測定点との間の部分を含んでいてよい。静脈圧は、上記ラインの部分内で、流体の性質及び流量とは独立して、測定された圧力及び抵抗の関数として決定することができる(例えば、Pv=f(P1、P2、R1、R2))。加えて、いくつかの態様では、Pv、P1及びP2は、時間又は時間にわたって処理された体積の関数であってよい。
【0007】
本発明の態様によれば、血液成分を集収し交換するための血液処理装置は、全血を対象から引き出し、使用/集収されなかった血液成分及び潜在的な補償流体を対象へ戻すための静脈アクセス装置、並びに血液成分分離装置を備えている。血液成分分離装置(例えば遠心ボウル)は、引き出された全血を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離する。血液成分分離装置は、第2の血液成分を第2の血液成分保存容器へ送達することもできる。
【0008】
血液処理装置は、静脈アクセス装置及び血液成分分離装置を流体接続するリターンラインを有していてもよい。システムは、第1の血液成分を対象へ戻すためにリターンラインを使用することができる。システムは、リターンライン上に配置されている第1及び第2の圧力センサを有していてもよい。第1の圧力センサは、血液成分分離装置と静脈アクセス装置との間に配置されていてよく、リターンライン内で第1の圧力を決定することができる。第2の圧力センサは、第1の圧力センサと静脈アクセス装置との間に配置されていてよく、リターンライン内の第2の圧力を決定することができる。リターンラインに接続されているポンプは、前記第1の圧力及び前記第2の圧力を利用して決定される対象アクセス圧力に基づいて、リターンライン内の戻し流量を制御することができる。この対象アクセス圧力は、リアルタイムに決定することができる。
【0009】
他の態様では、このシステムは、静脈アクセス装置の近傍で、引き出された血液に抗凝血剤を導入するための抗凝血ラインを有していてもよい。加えて、このシステムは、血液成分分離装置と静脈アクセス装置との間のリターンライン上に配置されたバルブを備えていてよい。バルブは、リターンライン内での流れを停止することができる。このシステムは、システムが第1の血液成分を対象へ戻す際に、対象からの全血の引き出しを停止する連動装置を有していてもよい。
【0010】
さらに別の態様では、対象アクセス圧力は、リターンラインの第1の部分の少なくとも1つの性質及びリターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質に基づいていてもよい。第1の部分は、第1及び第2の圧力センサ間にあってよい。第2の部分は、第2の圧力センサと静脈アクセス装置との間にあってよい。リターンラインの第1及び第2の部分の性質は、非限定的に、構造の長さ、内直径、流れに対する抵抗及び材料を含んでいてよい。システムは、リターンラインの第1及び第2の部分内の流れ抵抗に基づきリターン流量を制御することもできる。流れ抵抗は、上述のラインの性質に基づいて算出することができる。
【0011】
本発明のなおさらなる態様によれば、血液成分分離装置は、引き出された血液を、第1の血液成分及び第2の血液成分に加えて、第3の血液成分にさらに分離することができる。第1の血液成分は赤血球であってよく、第2の血液成分は血小板であってよく、第3の血液成分は血漿であってよい。
【0012】
本発明の別の態様によれば、血液処理機器を使用して血液成分を集収し交換する方法が、静脈アクセス装置を対象へ挿入すること及び全血を対象から引き出すことを含む。静脈アクセス装置は、引き出された血液が集収される血液分離装置に流体接続していてよい。この方法はさらに、引き出された血液を、血液成分分離装置を利用して第1の血液成分及び第2の血液成分に分離し、第2の血液成分を血液成分分離装置から抽出する。上記システム又は方法は、残りの成分(例えば、第1の血液成分)を対象へリターンラインを通して戻すことができる。
【0013】
いくつかの態様では、上記方法は、第1の圧力センサを用いてリターンライン内の第1の圧力を、第2の圧力センサを用いてリターンライン内の第2の圧力を測定することができる。第1及び第2の圧力センサは、リターンライン上に配置されていてよい。例えば、第1の圧力センサは、静脈アクセス装置と血液成分分離装置との間でリターンライン上に配置されていてよく、第2の圧力センサは、静脈アクセス装置と第1の圧力センサとの間で、リターンライン上に配置されていてよい。上記方法はさらに、リターン流体ライン内のリターン流量を、第1の圧力及び第2の圧力を利用して決定される対象アクセス圧力に基づいて制御することができる。
【0014】
さらなる態様によれば、対象アクセス圧力は、リターンラインの第1の部分の少なくとも1つの性質及びリターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質を利用して、決定することもできる。第1の部分は、第1及び第2の圧力センサ間にあってよく、第2の部分は、第2の圧力センサと静脈アクセス装置との間にあってよい。ライン部分の性質は、その構造の長さ、内直径及び材料を含んでいてよい。流量は、リターンラインの第1の及び/又は第2の部分内の第1の流れ抵抗に基づいて制御することもできる。流れ抵抗は、リターンラインのそれぞれの部分の性質に基づいて計算することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、血液成分分離装置は、引き出された血液を、第1の血液成分及び第2の血液成分に加えて、第3の血液成分をさらに分離する。第1の血液成分は血小板であってよく、第2の血液成分は赤血球であってよく、第3の血液成分は血漿であってよい。いくつかの態様では、対象アクセス圧力は、リアルタイムで決定される。
【0016】
本発明の別の態様では、血液成分を収集し交換するための血液処理装置が、静脈アクセス装置及び血液成分分離装置を備えていてよい。この装置は、全血を対象から引き出し、使用されていない血液成分を対象へ戻すために、静脈アクセス装置を利用することができる。血液成分分離装置は、引き出された全血を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離し、第2の血液成分を第2の血液成分保存容器へ送ることができる。
【0017】
この血液処理装置は、リターンライン及びドローラインを有していてもよい。リターンラインは、静脈アクセス装置と血液成分分離装置とを流体接続し、第1の血液成分を対象へ戻すのに使用することができる。ドローラインも、静脈アクセス装置と血液成分分離装置とを流体接続し、ドロー全血を対象から血液成分分離装置へ引き出すのに使用することができる。
【0018】
血液処理装置は、リターンライン上に配置された第1の圧力センサ及びドローライン上に配置された第2の圧力センサを有していてもよい。各センサは、それぞれのライン上で血液成分分離装置と静脈アクセス装置との間に配置されていてよく、圧力を測定することができる。リターンラインに接続されているポンプは、センサによって測定された圧力に基づいて決定される対象アクセス圧力に基づいて、リターン流量を制御することができる。
【0019】
他の態様では、血液処理機器を利用して血液成分を集収し交換する方法が、静脈アクセス装置を対象へ挿入すること及び血液を対象からドローラインを通して引き出すことを含んでいてよい。この方法は、さらに、血液成分分離装置を用いて、引き出された血液を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離する。血液が成分に分離されると、上記方法は、第2の血液成分を血液成分分離装置から抽出し、第1の血液成分を対象へリターンラインを通して戻すことができる。
【0020】
上記方法は、第1のセンサ及び第2のセンサそれぞれを使用して、第1の圧力及び第2の圧力も測定することができる。第1の圧力センサは、静脈アクセス装置と血液成分分離装置との間で、リターンライン上に配置されていてよい。第2の圧力センサは、静脈アクセス装置と血液成分分離装置との間で、ドローライン上に配置されていてよい。上記方法は、さらに、第1の圧力及び第2の圧力を使用して決定される対象アクセス圧力に基づいて流量を制御することができる。
【0021】
上述した本発明の特徴は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の態様によるアフェレーシスシステムの概略図である。
【図1B】本発明の態様によるアフェレーシスシステムの別の態様の概略図である。
【図1C】本発明の態様によるアフェレーシスシステムのさらに別の態様の概略図である。
【図2】本発明の一態様による、図1Aのアフェレーシスシステムと共に使用するためのディスポーザブル(使い捨て)システムを概略的に示す。
【図3】本発明の態様による、図1Aのアフェレーシスシステムと共に使用する血液成分分離装置の側面図を概略的に示す。
【図4】本発明の一態様による、図1Aのアフェレーシスシステムを使用する方法のステップを示すフローチャートを示す。
【図5】本発明の別の態様による、図1Aのアフェレーシスシステムを使用する第2の方法のステップを示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の態様は、血液アフェレーシス処置を行うシステム及び方法を提供する。本発明の特定の態様は、全血の対象からの引き出し及び採取されなかった若しくは処理されなかった血液成分の対象への戻しの最適化を行う。方法及びシステムは、ドロー及び/又はリターンライン上の複数の圧力センサを使用することができ、それにより、対象アクセス位置における圧力を決定し、この圧力に基づきシステム内の流体の流れを制御する。以下、例示的な態様の詳細について説明する。
【0024】
図1A及び2に示すように、また上述したように、本発明の態様によるアフェレーシスシステム10は、引出しポンプP1を使用して、全血を対象から静脈アクセス装置24を通して引き出す。静脈アクセス装置24は、対象の静脈にアクセスすることができる任意の数の装置であってよく、非限定的に、瀉血針を含む。システム10が全血を対象から引き出すと、血液は、ドロー/リターンライン28を通過して血液成分分離装置11、例えば、標準的なレーサム型の遠心分離器に入る。血液成分分離装置11は、全血をその構成成分(例えば、赤血球、白血球、血漿及び血小板)に分離する。レーサム型の遠心分離器に言及しているが、他のタイプの分離チャンバ及び装置、例えば、参照によりここに援用される米国特許第4,983,156号及び4,943,273号で記載されているような、一体のブロー成形された遠心ボウルを使用することができる。
【0025】
システム10が全血を対象から引き出すと、システム10は、抗凝血剤を、引き出された全血へ導入することができ、これにより、ライン内又は血液成分分離装置11内での血液の凝血が防止される。そのために、システム10は、一方の端部で抗凝血剤源16(例えば抗凝血剤のバッグ)に、もう一方の端部で静脈アクセス装置24(又はドロー/リターンライン28)に流体接続した抗凝血剤ライン32を備えていてよい。抗凝血剤ポンプP3には抗凝血剤ライン32が通っており、当該ポンプP3は、抗凝血剤ライン32内の抗凝血剤の流れ及び全血へ導入される抗凝血剤の量を制御することができる。抗凝血剤は、任意の点で全血に添加することができるが、静脈アクセス装置24にできるだけ近くで抗凝血剤を導入することがのが好ましい。
【0026】
抗凝血剤ライン32は、抗凝血剤源16、抗凝血剤又は抗凝血剤ライン32中の任意の細菌がシステム10及び/又は対象に入るのを防ぐ細菌フィルタF2を備えていてもよい。加えて、抗凝血剤ライン32は、抗凝血剤内の空気の存在を検出する空気検出器D3を備えていてよい。任意のシステム10のライン内の空気泡の存在は、システム10を操作する上で問題となることがあり、空気泡が血液流に入った場合には、対象に対して有害ともなり得る。したがって、空気検出器D3は連結装置に接続されていてよく、この連結装置は、空気泡が検出された場合に抗凝血剤ライン32内の流れを停止し(例えば、抗凝血剤ポンプP3を停止すること又は抗凝血剤ライン32上のバルブを閉鎖することにより)、それにより空気泡が対象へ入ることを防止する。所望の量の抗凝血処理された全血が対象から引き出され、血液成分分離装置11内に収容されたら、血液成分分離装置11は全血をいくつかの血液成分に分離する。例えば、血液成分分離装置11は、全血を第1、第2、第3、そしてできれば第4の血液成分に分離することができる。より具体的には、血液成分分離装置150は、全血を血漿、血小板、赤血球及びできれば白血球に分離することができる。
【0027】
図3に示すように、レーサム型遠心分離器を使用する場合には、血液成分分離装置11は、回転可能なボウル12及び不動の入口及び出口ポートPT1及びPT2を備えていてく、これらのポートは、回転式シール74によってボウル内部と流体連結している。ドロー/リターンライン28は、静脈アクセス装置24(例えば瀉血針)と入口ポートPT1とを流体接続する。いくつかの態様では、全血が最初にプールされてから供給される場合には、静脈アクセス装置24を全血バッグ(図示せず)に置き換えることができる。そのような態様では、ドローライン28は、全血バッグを入口ポートPT1に流体接続する。
【0028】
上述のように、血液成分分離装置11は、全血をその構成成分に分離する。詳細には、ボウル12が回転するに伴い、遠心力が、ボウルの底部に流入させた抗凝血処理された全血を、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、血小板及び血漿に分離する。ボウル12の回転数は、例えば4,000〜6,000rpmの範囲で選択可能であって、典型的には4,800rpmである。血液は、成分密度に応じて異なる画分に分離される。より高密度の成分、つまりRBC60は、ボウル12の外壁70に押しやられ、一方で、より低密度の血漿66がコア72により近いところに存在することになる。バフィーコート61は、血漿66とRBC60との間に形成される。バフィーコート61は、血小板64の内層、血小板及びWBCの移行層68、並びにWBC62の外層からなっている。血漿66は、分離領域から出口ポートに最も近い成分であり、抗凝血処理された追加の全血がボウル12に流入ポートPT1を介して入る際、ボウル12から出口ポートPT2を介して出ていく第1の流体成分である。
【0029】
システム10は、ボウル12の肩部に適用することができる光学センサ21を含むこともできる。光学センサ21は、ボウル12の外壁70から漸次的に且つ同軸状にコア72に向かって進んでいく血液成分の各層をモニタする。光学センサ21は、バフィーコートが特定の半径に達することを検出することができる位置に取り付けられていてよく、全血を供血者401から引き出すステップ及び全血をボウル402へ導入するステップを、その検出に応じて終了させることができる。
【0030】
血液成分分離装置11が血液を様々な成分に分離した後、成分の1つ又は複数を血液成分を分離装置11から除くことができる。例えば、血漿を血漿バッグ18へライン37(図1A及び図2)又は廃棄バッグ(図示せず)を通して除くことができる。別態様では、血漿は、ドロー/リターンライン28上に配置された血漿リザーバ(図示せず)へと除くことができ、或いは白血球(WBC)は、1つ以上の白血球バッグ22へとライン35を介して除くことができる。システム10のいくつかの態様は、集収された血漿の量を測定する重量センサ33を備えていてよい。図示しないが、血小板バッグ20及び白血球バッグ22は、同様の重量センサを備えていてよい。除かれた血漿は、後に、血液成分分離装置11へライン40及び再循環ポンプP2を介して流量を増大させながら再導入することができ、それにより、血小板が血小板バッグ20へライン39を介して抽出され送られる。このプロセスは、サージ・エルトリエーション(surge elutriation)として知られている。
【0031】
いくつかの態様では、システム10は、血液成分分離装置から流出する流体(例えば、血漿、血小板、赤血球等)の種類を判定することができるラインセンサ14を備えていてもよい。特に、ラインセンサ14は、ボウル12を出て行く血液成分を通して光を発するLED、及び成分を通過した後の光を受容する光検出器からなる。光検出器によって受容された光の量を、ラインを通過する流体の密度と相関させる。例えば、血漿がボウル12を出て行く場合には、ラインセンサ14は、ボウル12を出て行く血漿が血小板で濁る(例えば、ボウル12を出て行く流体が血漿から血小板へと変化する)時を検出することができる。次いでシステム10は、この情報を利用して、血液成分をボウル12から除くことを停止する、又は例えばバルブV2を閉鎖しバルブV3を開放することによって、流れを再方向付けすることができる。
【0032】
システムが、所望の成分を血液成分分離装置11から分離した後、システム10は、残りの成分を対象へ戻すことができる。システムは、ドロー/リターンポンプP1を使用して、成分を対象へドロー/リターンライン28を介して戻すことができ、このドロー/リターンライン28は、上述のように、血液成分分離装置11と静脈アクセス装置24とを流体接続する。別態様では、システム11は、システムが成分を対象へ専用のリターンライン27を介して戻すことができるように構成されている(図1B)。抗凝血剤ライン32及びドロー/リターンライン28と同様、専用のリターンライン27は、リターンライン内の流体流れの時間、方向及び流量を制御する専用のリターンポンプP5を有していてもよい。そのような態様では、リターンライン27は、静脈アクセス装置24にも、好ましくは、リターンポンプP5と静脈アクセス装置24との間の位置で流体接続し得る。加えて、そのような態様では、システム10は、専用のドローライン29及びドローポンプP4も有している。いくつかの態様では、システム10は、システムが第1の血液成分を対象へ戻す際に全血を対象から引き出すことを停止する連動装置を含んでいてよい。
【0033】
図1Aに示すように、また上で簡単に述べたように、システム10は、システム全体に配置された複数のバルブを有していてよく、それにより、システム10内の流体の流れが制御される。例えば、ドロー/リターンライン28は、開放時ににはラインを通した流れを可能にし、閉鎖時には流れを阻止することを可能にするバルブV1を備えていてよい。加えて、白血球、血漿及び血小板バッグそれぞれに続くライン35、37及び39は、少なくとも1つのバルブV2、V3、V4及びV5を有する(例えば、ライン37は、血漿バッグ18の流入口でバルブV2を、血漿バッグ18の流出口でバルブV5を有し、ライン39は、血小板バッグ20の流入口でバルブV3を有する)。加えて、血液成分分離装置11への流入口は、血液成分の分離装置11への又は分離装置11からの流れを可能に若しくは阻止するバルブ(図示せず)を有していてよい。上述のバルブはいずれも、手動式又は自動式であってよい。言い換えれば、上記バルブは、使用者/技術者によって手動で操作してもよいし、特定の条件を満たせば自動で、例えば制御器(例えば、以下に述べるように、ドロー/リターンライン28において空気が検出された場合にバルブV1を閉鎖するもの)によって操作することもできる。
【0034】
抗凝血剤ライン32と同様、ドロー/リターンライン28は、多数のセンサ、フィルタ及び検出器も備えていてよく、それにより、対象の安全性及び最適化されたシステムの操作が保証される。特に、図1Aに示すように、ドロー/リターンライン28は、ライン28内の空気の存在(又は非存在を)検出する空気検出器D1及びD2を備えていてよい。この空気検出器D1及びD2は、検出器D1及びD2が空気を検出した場合に、(例えばドロー/リターンポンプP1を停止する又はバルブV1を閉鎖することによって)ドロー/リターンライン28内の流れを停止する連結装置と接続されていてよい。加えて、ドローライン28は、引き出された血液若しくは戻される成分中に又はそれと共に存在し得るあらゆる細菌、汚染又は粒子を除く血液フィルタF1を備えていてよい。システム10は、システム10内の圧力レベルをモニタするシステム圧力モニタ(SPM)M3を備えていてもよい。その詳細を以下に説明する第1及び第2の圧力モニタM1及びM2と同様に、システム圧力モニタM3は、ライン36(例えば、血液成分分離装置11の流出口から続くライン)に接続されている試料ライン208を備えていてよい(図2)。
【0035】
上述のように、システムが血液を対象から引き出す圧力及び流量並びに採取しなかった成分を対象へ戻す流量は、処置の全体的な時間及び効率のためだけでなく、対象の安全性のためにも重要である。圧力及び流量が、過度に低い場合には、処置には、必要とされるよりも長い時間がかかり、よって、対象の不快感は増す。しかし、圧力及び流量が過度に大きい場合でも、対象は、静脈損傷のような問題を被る場合がある。そのために、本発明の態様は、ドロー/リターンライン28(又は専用のリターンライン27及び専用のドローライン29)内の圧力をモニタする圧力モニタM1及びM2を備えていてよい。
【0036】
単一の点においてのみ戻り圧力をモニタする従来のシステムとは異なり、本発明の態様は、上述のように、モニタ2つの位置で戻り圧力をモニタする。いくつかの態様では、システム10は、圧力センサM1及びM2からの圧力測定値を用いて、所望の範囲内で流量を制御し圧力を維持する。追加的に又は別態様で、システム10は、この圧力情報を利用して、静脈アクセス装置24における圧力(例えば対象アクセス圧力)の正確な測定値を得ることもできる。
【0037】
共有されたドロー/リターンライン28を有する態様では、第1の圧力センサM1がドロー/リターンライン28上で静脈アクセス装置24と血液成分分離装置11との間に配置されていてよい。第2の圧力センサM2は、静脈アクセス装置24と第1の圧力センサM1との間に配置されていてよい。第1及び第2の圧力センサM1及びM2は、ドロー/リターンライン28に直接的に配置されていてもよいし、ドロー/リターンライン28に試料ライン204及び206を介してそれぞれ接続されていてもよい。次いで、システム10は、M1及びM2からの圧力測定値、並びにドロー/リターンライン28の部分A(例えば、静脈アクセス装置24と第2の圧力センサM2との間の部分)及びドロー/リターンライン28の部分B(例えば、圧力センサM1と圧力センサM2との間の部分)の性質(例えば、長さ、内直径、構成材料等)を用いて、対象アクセス圧力を計算することができる。詳細には、システム10は、ライン部分A及びBの既知の性質を利用して、各部分の抵抗を計算することができる。ラインの性質が処理の開始前に既知であるので、システム及び/又は操作技術者は、前もって抵抗を計算することができる。
【0038】
次いで、システムは、以下により詳細に説明する等式に基づいて、リアルタイムで対象アクセス圧力を計算する。システムにより使用される等式が、システムがドローステップを実施しているかリターンステップを実施しているかによって決められることに留意することが重要である。
【0039】
例えば、ドローステップでは、システムは、次の等式を使うことができる。
Pv = PM2 - PHM2 + (RA/RB) * ((PM2 - PHM2) - (PM1 - PHM1))
これに対し、リターンステップでは、システムは次の等式を使うことができる。
Pv = PM2 - PHM2 - (RA/RB) * ((PM1 - PHM1) - (PM2 - PHM2))
式中、R=チューブ区分Aにおける流れに対する抵抗(例えば、針、針ライン、及びセンサM2に続くドロー/リターンライン28を含む)であり、
=チューブ区分Bにおける流れに対する抵抗(例えば、センサM1及びM2間のドロー/リターンライン28を含む)であり、
HM1及びPHM2=それぞれ、静脈アクセス装置24と圧力センサM1及びM2との高さの差に関連するPM1及びPM2の部分。
【0040】
圧力センサM1及びM2は、同じライン(例えば、ドロー/リターンライン28)上に配置されているものとして説明しているが、圧力センサM1及びM2は、異なるライン上に配置されていてよい。例えば、図1Bに示すように、システム10が、ドローポンプP4を備えている専用のドローライン29、並びにリターンポンプP5(上述のような)を備えている専用のリターンライン27を有する場合には、圧力センサM1及びM2は別個のライン上に配置されていてよい。例えば、圧力センサM1をリターンライン27上に配置し、圧力センサM2をドローライン29上に配置することができる。そのような態様では、部分Aは、静脈アクセス装置24とコネクタ30との間に配置されている。しかし、部分Bの位置は、対象アクセス圧力が、ドローステップ又はリターンステップのどちらに決定されるかに依存する。特に、ドローステップにおいて、部分B(図1BにおけるBとして示す)は、コネクタ30と圧力センサM2との間に配置されている。別態様では、リターンステップにおいて、部分B(図1BにおけるBとして示す)は、コネクタ30と圧力センサM1との間に配置されている。
【0041】
部分A及びBの配置並びに圧力センサM1及びM2の配置を換えることに加えて、専用のリターンライン27及び専用のドローライン29を有するシステムは、対象アクセス圧力を決定するための異なる等式の利用もしなければならない。加えて、ドロー/リターンライン28のみを有するシステムに対する場合と同様に、システムによって用いられる等式は、システムがドローステップを行うのかリターンステップを行うのかに依存する。例えば、ドローステップにおいて、システムは、次の等式に基づく対象アクセス圧力を決定することができる。
Pv = PM1 - PHM1 + rD/RD * [(PM1 - PHM1) - (PM2 - PHM2)]
式中、Rは、供血者ライン(例えば部分B)の流れに対する抵抗であり、rは、針及び針チューブ系(例えば部分A)の流れに対する抵抗であり、
HM2及びPHM1は、それぞれ、静脈穿刺と圧力センサとの間の高さの差に関連するPM2及びPM1の部分である。
【0042】
これに対して、リターンステップにおいては、システムは、次の等式に基づいて対象アクセス圧力を決定することができる。
Pv = PM2 - PHM2 - rR/RR * [(PM1 - PHM1) - (PM2 - PHM2)]
Rは、供血者ライン(例えばB)の流れに対する抵抗であり、rは、針及び針チューブ(例えば部分A)の流れに対する抵抗であり、
HM2及びPHM1は、それぞれ、静脈穿刺と圧力センサとの高さの差に関連するPM2及びPM1の部分である。
【0043】
上記等式は、針及び針チューブ(例えば、針先端とコネクタ30との間に配置されているチューブの部分)において生じる圧力損失であるPDPM2を補正するために、特定の条件が満たされる場合に、利用可能であることに留意することが重要である。詳細には、上記条件は、(1)ディスポーザブルセットが既知であって、抵抗r及びRが既知であり、(2)針の抵抗r又はr/Rの比が、ドローステップ及びリターンステップで同じでなく、(3)供血者ライン(例えばDPM1及びDPM2ライン)が、均質の粘性を有するものとみなすことができる流体で満たされており、且つ(4)静脈アクセス装置24並びに圧力センサM1及びM2の相対位置が既知であって、PHDPM1及びPHDPM2が規定される場合に満たされる。
【0044】
ドロープロセスにおいて、一般に、流体粘性の何らかの相違を考慮する必要がないことに留意することが重要である。特に、それは、ドローにおいて処理された流体の性質は、常に、全血又は抗凝血処理された全血であるからである。したがって、上述の条件(3)は、通常満たされる。しかし、リターンプロセスにおいて、第1の圧力センサ(例えばM1)での流体は、第2の圧力センサ(例えばM2)での流体とは異なることがある。例えば、第1の圧力センサM1において全血が存在得るし、第2の圧力センサにおいて濃厚赤血球が存在し得る。圧力センサでの流体の相違は、任意の数の様々な因子によって生じ得る。例えば、センサの1つの近傍のラインの部分は、それ以前のプロセス(例えば、ドロープロセス又はその前のリターンプロセス)からの流体を含み得る。追加的に又は別態様で、流体の相違は、分離装置から出て行く流体の性質が変化すると(例えば、流体が1つの血液成分から別の成分へ変化した場合)、生じ得る。いずれの場合にも、第1のセンサM1及び第2のセンサM2で異なる流体、よって潜在的に異なる粘性が見られる期間(例えば、流体がセンサ間を移動するのに必要な時間)がある。
【0045】
圧力をリアルタイムで決定する性能があることが1つの理由で、本発明の態様は、ライン内での流体粘性の変化を検出し、それを補償することができる。例えば、システムの態様は、抵抗rを有するラインの部分に対する変化を適用することによって、抵抗Rを有するラインの部分内での粘性及び流体の変化を補償することができる。数学的に簡素化された形態では、条件(3)を満たしていない場合、等式は次のようになり得る。
Pv(t)=PM2(t)-PHM2-rR/RR*[(PM1(t-Δt)-PHM1)-(PM2(t-Δt)-PHM2)]/Flow(t-Δt)xFlow(t)
Δtは、広義には、変化した粘性の流体が、抵抗Rのラインの部分から抵抗rのラインの部分へ移動するために必要な時間として定義することができる。
【0046】
したがって、システム10は、ライン28内の流体の流量又は流体の粘性を知ることなく、リアルタイムで、正確に、対象アクセス圧力を測定することができる。システム10は、次いで、圧力センサM1及びM2からの圧力測定値又は計算された対象アクセス圧力に基づいて、ドロー/リターンライン28(又はドローライン29及びリターンライン27)を通る流量を制御することができる。このように流量を制御することによって、システム10は、所望の操作範囲で圧力を維持することができる。操作範囲は、多数の因子に基づいて決定することができ、それには、非限定的に、静脈アクセス装置24のサイズ、対象の性質(年齢、身長、体重、健康状態等)、静脈アクセス装置24の位置(例えば、どの静脈に挿入されるか)、カフ圧、並びにシステムの性質が含まれる。これにより、対象が、ますます増大する静脈損傷又はその他の複雑な事態のリスクに曝されることなく、システムを、最適な流量(例えば、全血が引き出される時の流量及び成分が対象へ戻される時の流量)で操作することができる。
【0047】
図1A〜C及び2に示すよう、また上述のように、システム10は、システムの各構成要素へ、またそこから続く多数のラインを含む。多くの例では、多数のラインが、単一のライン内へと通じている。そのような場合、システム10は、ラインを接続するためのラインコネクタを備えていてよい。ラインコネクタは、yサイトコネクタ、例えば、抗凝血剤ライン32をドロー/リターンライン28と接続するコネクタ30、並びに血漿バッグ18から来るライン40及びドロー/リターンライン28を接続するコネクタ91であってよい(Yコネクタの出口はPT1へ通じるライン41である)。別態様では、コネクタは、Tサイトコネクタ、例えば、ライン37及び39をライン36へ接続するコネクタ92、並びにシステム圧力モニタM2のための試料ライン208をライン36に接続するコネクタ26であってよい。
【0048】
図4は、上述のデュアル圧力センサアフェレーシスシステムを使用する方法を描いたフローチャートを概略的に示す。詳細には、前記方法は、まず、静脈アクセス装置24を対象へ挿入し(ステップ410)、次いで、全血をドロー/リターンライン28(又はドローライン29)を通して引き出すことを開始する(ステップ420)。上述のように、ドローポンプP1は、ドロー/リターンライン28内での流れの方向、流量及び時間を制御する。システム10が、全血を対象から引き出す際、抗凝血剤ポンプP3は、抗凝血剤を抗凝血剤源16から全血へと抗凝血剤ライン32を介して導入する。上述のように、抗凝血剤は、システム内での全血の凝血を防止する。
【0049】
抗凝血処理された全血が血液成分分離装置11へ到達すると、血液成分分離装置11は、血液を、上述の層状の配置に、構成成分(例えば、赤血球、血漿、血小板及び白血球)へと分離する(ステップ430)。次に、システムを操作する技術者は、1つ以上の成分(抽出される成分は、処置の目的に応じて決められる)を抽出し(ステップ440)、残りの血液成分を対象へ戻す(ステップ450)。方法10が、成分を対象へ戻すと、方法は、2点で圧力センサM1及びM2を使用して、ドロー/リターンライン28(又はリターンライン27)内の圧力も測定することができる(ステップ460及び470)。第1及び第2の圧力が適切な範囲内にある場合には(ステップ480)、システム10は、安全な最適化された流量で操作されており、システム10は、現状の流量を維持することができる(ステップ482)。第1及び第2の圧力が所望の範囲外にある場合には、システムは、圧力がその範囲内になるように流量を調節することができる(ステップ484)。例えば、圧力が低い場合には、システム10は、流量を増大させることができ(例えば、ドローポンプP1の速度を増大させることによって)、それにより、流量が最適化される。別態様では、圧力が所望の範囲を超える場合には、システム10は流量を減少させ(例えば、ドローポンプP1の速度を減少させることにより)、それにより、流量及び圧力が対象にとって安全となる。
【0050】
他の態様によれば、また図5に示すように、デュアル圧力アフェレーシスを使用する方法は、いくつかの追加的な任意のステップを含んでいてもよい。特に、第1の圧力(ステップ460)及び第2の圧力(ステップ470)を測定した後、システム10は、上述のように、測定した圧力を利用して対象アクセス圧力を計算することができる(ステップ510)。次に、この方法は、対象アクセス圧力が所望の範囲内にあるかどうかを決定することができる(ステップ520)。対象アクセス圧力が範囲内にあれば、方法は、流量が、対象に対して安全であり且つ最適化されているので、ドロー/リターンライン28(又はドローライン29及びリターンライン27)内の流量を維持することができる(ステップ530)。対象アクセス圧力が範囲外にある場合には、方法は、範囲内にあるように流量を調節することができる(ステップ540)。例えば、圧力が低い場合には、システム10は流量を増大させることができ(例えば、ドローポンプP1の速度を増大させることによって)、それにより、流量が最適化される。別態様では、圧力が所望の範囲を超える場合には、システム10は、流量及び圧力が対象にとって安全となるように、流量を減少させることができる(例えば、ドローポンプP1の速度を減少させることによって)。
【0051】
システムの全ての構成要素が、接触する物質と適合性がある適切な材料からなっていることに留意されたい。例えば、ドロー/リターンライン28、ドローライン29、リターンライン27、並びにライン36、37及び40は、血液及び血液成分と適合性のあるものでなくてはならない。加えて、血小板バッグ20及び血漿バッグ18は、それぞれ、血小板及び血漿と適合性がなくてはならない。同様に、抗凝血剤ライン32は、抗凝血剤と適合性がなくてはならない。
【0052】
以上の議論は、本発明の様々な例示的な態様を開示するものであるが、当業者が、本発明の真の範囲を超えることなく、本発明の利点のいくつかを達成するような様々な変更を行うことができることは明かであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液成分を収集し交換する血液処理装置であって、
対象から全血を引き出し、使用されない血液成分を対象へ戻すための静脈アクセス装置、
前記引き出された全血を第1の血液成分及び第2の血液成分へ分離するための血液成分分離装置であって、前記第2の血液成分を第2の血液成分保存容器へ送るように構成されているもの、
前記対象から全血を引き出し、前記第1の血液成分を対象へ戻すための、前記静脈アクセス装置と前記血液成分分離装置とを流体接続するドロー/リターンライン、
前記ドロー/リターンラインに且つ前記血液成分分離装置と前記静脈アクセス装置との間に配置されている、前記ドロー/リターンライン内の第1の圧力を決定するための第1の圧力センサ、
前記ドロー/リターンラインに且つ前記第1の圧力センサと前記静脈アクセス装置との間に配置されている、前記ドロー/リターンライン内の第2の圧力を決定するための第2の圧力センサ、並びに
前記ドロー/リターンラインに接続された、当該ドロー/リターンライン内の流量を制御するためのポンプであって、前記第1の圧力及び前記第2の圧力に基づいて決定された対象アクセス圧力に基づいて流量を制御するもの
を備えている、血液処理装置。
【請求項2】
前記静脈アクセス装置が、補償流体を対象へ戻すために使用することもできる、請求項1に記載の血液処理システム。
【請求項3】
前記血液成分分離装置が遠心ボウルである、請求項1に記載の血液処理システム。
【請求項4】
前記抗凝血剤を、前記静脈アクセス装置の近くで、引き出された血液中に導入するための抗凝血ラインをさらに備えている、請求項1に記載の血液処理システム。
【請求項5】
前記血液成分分離装置と前記静脈アクセス装置との間のドロー/リターンラインに配置されており、該ドロー/リターンライン内の流れを停止するバルブをさらに備えている、請求項1に記載の血液処理システム。
【請求項6】
前記対象アクセス圧力が、前記ドロー/リターンラインの第1の部分の少なくとも1つの性質及び前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質にさらに基づいており、前記第1の部分が、前記第1及び第2の圧力センサ間にあり、前記第2の部分が、前記第2の圧力センサと前記静脈アクセス装置との間にある、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項7】
前記ドロー/リターンラインの第1の部分の少なくとも1つの性質及び前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質が、構造の長さ、内直径及び材料からなる群から選択される、請求項6に記載の血液処理装置。
【請求項8】
前記流量が、前記ドロー/リターンラインの第1の部分内の第1の流れ抵抗にも基づいて制御され、当該第1の流れ抵抗が、前記ドロー/リターンラインの第1の部分少なくとも1つの性質に基づいて計算される、請求項6に記載の血液処理装置。
【請求項9】
前記流量が、さらに、前記ドロー/リターンラインの第2の部分内の第2の流れ抵抗に基づいて制御され、当該第2の流れ抵抗が、前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質に基づいて計算される、請求項8に記載の血液処理装置。
【請求項10】
前記血液成分分離装置が、引き出された血液を、第1の血液成分及び第2の血液成分に加えて、第3の血液成分にさらに分離する、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項11】
前記第1の血液成分が赤血球であり、前記第2の血液成分が血小板であり、前記第3の血液成分が血漿である、請求項10に記載の血液処理装置。
【請求項12】
前記対象アクセス圧力がリアルタイムで決定される、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項13】
前記第1の血液成分が対象へ戻される時に、全血の対象からの引き出しを停止する連動装置をさらに備えている、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項14】
前記流量が、ドロー流量及びリターン流量の少なくとも1つである、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項15】
血液処理機器を利用して血液成分を収集し交換する方法であって、
前記血液分離装置に流体接続した静脈アクセス装置を対象へ挿入し、
血液を対象から引き出し、その場合、引き出された血液が、処理のために前記血液成分分離装置内に収集され、
前記引き出された血液を、前記血液成分分離装置を利用して第1の血液成分及び第2の血液成分に分離し、
前記第2の血液成分を前記血液成分分離装置から抽出し、
前記第1の血液成分を対象へ前記ドロー/リターンラインを通して戻し、
前記静脈アクセス装置と前記血液成分分離装置との間のドロー/リターンラインに配置されている第1の圧力センサを用いて、該ドロー/リターンライン内の第1の圧力を測定し、
前記静脈アクセス装置と前記第1の圧力センサとの間のドロー/リターンラインに配置されている第2の圧力センサを用いて、該ドロー/リターンライン内の第2の圧力を測定し、
前記第1の圧力及び第2の圧力を用いて決定された対象アクセス圧力に基づいて、前記ドロー/リターン流体ライン内の流量を制御する
ことを含む、方法。
【請求項16】
抗凝血剤を、前記引き出された血液内へ抗凝血剤ラインを介して導入することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記血液成分分離装置が遠心ボウルである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ドロー/リターンラインが、前記血液成分分離装置と前記静脈アクセス装置との間に配置されたバルブを備えており、該バルブが、前記ドロー/リターンライン内の流れを停止させる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記対象アクセス圧力が、さらに、前記ドロー/リターンラインの第1の部分少なくとも1つの性質及び前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質を利用して決定され、前記第1の部分が、前記第1及び第2の圧力センサ間にあり、前記第2の部分が、前記第2の圧力センサと前記静脈アクセス装置との間にある、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ドロー/リターンラインの第1の部分の少なくとも1つの性質及び前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質が、構造の長さ、内直径及び材料からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流量が、前記ドロー/リターンラインの第1の部分内の第1の流れ抵抗にも基づいて制御され、該第1の流れ抵抗が、前記ドロー/リターンラインの第1の部分少なくとも1つの性質に基づいて計算される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記流量が、さらに、前記ドロー/リターンラインの第2の部分内の第2の流れ抵抗に基づいて制御され、該第2の流れ抵抗が、前記ドロー/リターンラインの第2の部分の少なくとも1つの性質に基づいて計算される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記血液成分分離装置が、前記引き出された血液を、第1の血液成分及び第2の血液成分に加えて、第3の血液成分にさらに分離する、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の血液成分が赤血球であり、第2の血液成分が血小板であり、前記第3の血液成分が血漿である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象アクセス圧力がリアルタイムで決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記流量が、ドロー流量及びリターン流量の少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
血液成分を収集し交換するための血液処理装置であって、
全血を対象から引き出し、使用されない血液成分を対象へ戻すための静脈アクセス装置、
前記引き出された全血を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離するための液成分分離装置であって、前記第2の血液成分を第2の血液成分保存容器へ送るように構成されているもの、
前記静脈アクセス装置及び前記血液成分分離装置に流体接続されている、第1の血液成分を対象へ戻すためのリターンライン
前記静脈アクセス装置及び前記血液成分分離装置に流体接続されている、全血を対象から血液成分分離装置内へ引き出すためのドローライン、
前記血液成分分離装置と前記静脈アクセス装置との間のリターンラインに配置された、第1の圧力を決定するための第1の圧力センサ;
前記血液成分分離装置と前記静脈アクセス装置との間のドローラインに配置された、第2の圧力を決定するための第2の圧力センサ、並びに
前記リターンライン及び前記ドローラインの少なくとも1つに接続され、接続された流量を、前記第1の圧力及び前記第2の圧力に基づいて決定された対象アクセス圧力に基づいて制御するための第1のポンプ
を備えている、血液処理装置。
【請求項28】
前記第1のポンプが前記リターンラインに接続されており、リターン流量を制御する、請求項27に記載の血液処理装置。
【請求項29】
前記ドローラインに接続された、該ドローライン内のドロー流量を制御するための第2のポンプをさらに備えており、当該第2のポンプが、ドロー流量を、前記第1の圧力及び前記第2の圧力に基づいて決定される対象アクセス圧力に基づいて制御する、請求項28に記載の血液処理装置。
【請求項30】
血液処理機器を利用して血液成分を収集し交換する方法であって、
前記血液分離装置に流体接続された静脈アクセス装置を対象へ挿入し、
血液を対象からドローラインを通して引き出し、その場合、該引き出された血液が、処理のために前記血液成分分離装置内で集収され、
前記血液成分分離装置を利用して、前記引き出された血液を第1の血液成分及び第2の血液成分に分離し、
前記第2の血液成分を前記血液成分分離装置から抽出し、
前記第1の血液成分を対象へリターンラインを通して戻し、
前記リターンラインに前記静脈アクセス装置と前記血液成分分離装置との間に配置された第1の圧力センサを用いて、第1の圧力を測定し、
前記ドローラインに前記静脈アクセス装置と前記血液成分分離装置との間に配置された第2の圧力センサを用いて、第2の圧力を測定し、
流量を、前記第1の圧力及び前記第2の圧力を使用して決定された対象アクセス圧力に基づいて制御する
ことを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516214(P2011−516214A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504203(P2011−504203)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040199
【国際公開番号】WO2009/129140
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(594202615)ヘモネティクス・コーポレーション (22)
【氏名又は名称原語表記】Haemonetics Corporation
【住所又は居所原語表記】400 Wood Road,Braintree,Massachusetts 02184,United Statesof America
【Fターム(参考)】