説明

有価証券印字データ編集装置と、有価証券印字データ編集方法およびそれに用いるプログラム

【課題】従来より短期間で能率よく有価証券(類)のオンデマンド印刷を可能にする有価証券印字データ編集装置や、有価証券印字データの編集方法、或いは有価証券印字データの編集を行うコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】有価証券の一代表例として債券について言えば、債券印字データ編集装置30は、主版DB13と債券販売データ読込部14と印字編集部16とからなる。主版DB13は、有価証券の銘柄ごとに共通の印字データである主版データが格納されている。債券データ読込部14は、債券販売データ10を読み込む。印字編集部16は、債券データ読込部14が読込んだ債券販売データ10に対応する主版データを、主版DB13より取得し、該主版データと債券データ読込部14が読込んだ債券販売データ10に基づき、オンデマンド印刷機に入力する印字データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、債券、受益証券、或いはその他の有価証券の発行のニーズに関わり、オンデマンド印刷機に入力する印字データを自動的に編集する有価証券印字データ編集装置と有価証券印字データ編集方法およびそれに用いるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有価証券は、1000口、100口、10口、1口といった、切の良い口数の各証券の版面データを一つずつ編集し、これらの版面データを製版して原版を起こし、これらの原版を用いて、予め大量に印刷しておく。そして、買い付けの口数にあわせて、これらの券を組み合わせて様々な口数の証券を発行している。例えば、2300口の買い付けの場合は、1000口の証券を2枚と100口の証券を3枚組み合わせて、2300口としている。また、口数だけが未記入の特定の証券を予め大量に用意しておき、販売時に口数を書込むことも行われている。しかしながら、ペーパーレス化を進め電子取引の促進を行うための方策として、証券の電子化が認められるようになると、紙による証券の発行は原則として行われなくなり、希望者にのみ発行されることになる。このため、紙での発行枚数は劇的に少なくなることが予想され、従来のように大量に印刷することを前提とした運用は適さず、有価証券をオンデマンドで発行できるようにすべきとの要求が高まる。そこで例えば、有価証券の銘柄によって変更する必要のない、偽造防止対策や装飾的効果のための図10に示すような下地などは、予め(オフセット印刷またはグラビア印刷等の一般の)印刷機で印刷して保管しておく(この印刷物は準備刷と称する)。そして例えば、図9に示すように、発行内容にあわせて印刷すべき、証券の種類や口数、記番号などは委託会社からの有価証券の発行要求に応じて、ワードプロセッサ形式の編集装置を用いて、オペレータが印字データを編集し、準備刷の上にオンデマンド印刷機により印刷するなどして、個別に証券を作ることが考えられる。
なお、証券のオンデマンドでの発行の従来技術の一例として、データ放送を利用した特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−24555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、オンデマンドで有価証券を発行するために、オペレータが、編集装置を用いて発行内容にあわせて印字データの編集を行い、準備刷の上にオンデマンド印刷機により印刷していると、編集や検査に多くの手間と労力や時間を要するため、印刷の依頼を受けてから依頼元に製品を納入するまで、およそ1ヶ月(もしくはそれ以上)の日数がかかる場合も珍しくなく問題視されている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、有価証券のオンデマンド印刷を、より短期間で実行可能にする有価証券印字データ編集装置と有価証券印字データ編集方法およびそれに用いるプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっている主版データを、有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースと、有価証券販売データを読み込む読み込み手段と、前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、前記主版データベースから取得し、該主版データと前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する印字編集手段とを備えることを特徴とする有価証券印字データ編集装置である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、有価証券販売データを読み込む第1の過程と、主版データは有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっており、前記第1の過程にて読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、主版データを有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースから取得する第2の過程と、前記第2の過程にて取得した主版データと前記第1の過程にて読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する第3の過程とを備えることを特徴とする有価証券印字データ編集方法である。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、コンピュータを、有価証券販売データを読み込む読み込み手段と、主版データは有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっており、前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、主版データを有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースから取得し、該主版データと前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する印字編集手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、有価証券の販売管理に用いられる有価証券販売データを入力すると、それぞれの有価証券販売データをそれぞれ対応する主版データと併せて利用し、オンデマンド印刷用の印字データを自動的に能率よく編集することができる。その結果、有価証券をオンデマンド印刷で作成する場合、より短期間での納期対応が実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による債券印字データ編集装置(有価証券印字データ編集装置に対応)の構成を示す概略ブロック図であり、この装置は、有価証券の一種である債券を対象とした印字データ編集装置である。10は、債券の販売管理用に販売実績に基づき、受託会社が発行する債券販売データ(有価証券販売データに対応)であり、代表例として、図2に示す債券コード、受託会社コード、口数、記番号、OCRコードおよび作成日の各データを有している。30は、債券印字データ編集装置であり、債券管理テーブル11、受託会社テーブル12、主版DB13、債券販売データ読込部14、データ項目追加部15および印字編集部16を備える。債券管理テーブル11は、債券の銘柄ごとに、図3(a)に示す債券コード、債券名、受託会社コード、受託会社名、表裏区分を格納した記憶領域である。受託会社テーブル12は、受託会社ごとに、図3(b)に示す受託会社コード、受託会社名、納入先を格納した記憶領域である。主版DB13は、債券の印字データのうち、口数、記番号,OCRコードの箇所を空欄にした印字データである主版データを債券の銘柄ごとに格納したデータベースである。債券販売データ読込部14(読み込み手段に対応)は、それぞれの買い付けに係る債券販売データ10を読み込む処理部であって、必要となれば、データのチェックを行う機能も更に備えさせることが好ましい。データ項目追加部15は、債券販売データ読込部14が読み込んだそれぞれの買い付けに係る債券販売データ10の中の債券コードとそれに対応する受託会社コードを読み出しのキー代わりに用いて、債券コードで債券管理テーブル11から、また受託会社コードで受託会社テーブル12から、それぞれの買い付けに関し編集に必要な情報を読み出し、表裏区分などの印字データの作成に必要な情報を取得するとともに、準備刷出庫票18、半製品札紙19および加工指示票20を出力する処理部である。印字編集部16(印字編集手段に対応)は、債券コードを読み出しのキー代わりに用いて、主版DB13から、表側のみの主版データを、又は、表側と裏側の主版データを表裏区分に従って取得し、これと口数、OCRコード、記番号のデータを(適切な箇所に口数、OCRコード、記番号を印刷できるように)組み合わせて印字データ17を生成する処理部であって、必要となれば、検査リスト21、納入リスト22および送付用ラベル23を出力する機能を更に備えることが好ましい。印字データ17は、オンデマンド印刷機への入力データであり、債券の表と裏を、準備刷をした用紙の上にオンデマンド印刷機にて印刷するためのデータである。準備刷出庫票18、半製品札紙19および加工指示票20は、オンデマンド印刷を行う指示をするための帳票である。検査リスト21および納入リスト22は、印刷工場内でのチェック用の帳票である。送付用ラベル23は、印刷した債券を受託会社へ送付する際に使用するラベルである。
【0010】
次に、この債券印字データ編集装置の動作を説明する。例えば、委託会社であるZZ社(投信会社)が、債券の一種であるXXX投資信託を○○○信託銀行に受託しているとする。ここで、○○○信託銀行の受託会社コードは「12」、XXX投資信託の債券コードは「100000」であるとする。このXXX投資信託が、20YY年9月1日に、1,234口買い付けられると、ZZ社は、記番号およびOCRコードを振って図2に示す情報を債券販売データとして、販売管理に使用するとともに、フレキシブルディスクなどの媒体に、例えばファイル名“BOND20YY0901”にして格納して、印刷会社に引き渡し、債券の印刷を依頼する。印刷会社は、債券販売データの入った媒体を受けると、これを自社の債券印字データ編集装置に入力する。
【0011】
債券印字データ編集装置では、債券販売データ読込部14が、媒体からファイル名“BOND20YY0901”の債券販売データを読み込むと、データ項目が揃っているかのブランクチェック、外字を使用していないかの外字チェック、項目の属性に従い、半角数字を使用しているかなどの属性チェック、項目の規定通りの桁数であるかの桁数チェックを行う。これらのチェックで問題がなければ、該債券販売データをファイル名とともに、データ項目追加部15へ出力する。データ項目追加部15は、債券販売データを受けると、その中から債券コード(ここでは、「100000」)を抽出する。次に、債券管理テーブル11を検索して、債券コードが該「100000」と一致するレコードの債券管理情報を取得する。ここでは、図3の(a)に示す、債券コード「100000」、債券名「XXX投資信託」、受託会社コード「12」、受託会社名「○○○信託銀行」、表裏区分「1」という内容のレコードを取得したとする。
【0012】
さらに、データ項目追加部15は、債券販売データから受託会社コード(ここでは、「12」)を抽出する。次に、受託会社テーブル12を検索して、受託会社コードが該「12」と一致するレコードの受託会社情報を取得する。ここでは、図3の(b)に示す、受託会社コード「12」、受託会社名「○○○信託銀行」、納入先「△△△信託銀行」という内容のレコードを取得したとする(註釈:受託会社と納入先とは、一般に、異なる場合も同じ場合もどちらもありえる)。データ項目追加部15は、取得した債券管理情報および受託会社情報と、入力された債券販売データとを照合することにより、受託会社コードの矛盾の有無を判断する。矛盾が無い場合には、次に、これらの情報をあわせて、図4に示す処理用データを作成する。尚、ここで例えば、“主版コード(表)”は、債券コード「100000」の末尾に「_f]を付して「100000_f」とし、“主版コード(裏)”は、表裏区分が「0」の場合は、裏面には印刷しないので「nopage」とし、表裏区分が「0」以外では、債券コード「100000」の末尾に「_b]を付して「100000_b」とし、また、“用紙区分”は、該債券を印刷する用紙を指定する項目であるが、ここでは全て同じ累投用の準備刷済みの用紙を使うこととし、「累投用」とする。処理用データは、印字編集部16へ出力され、好ましくは、(その後の作業やその管理をより便利にすべく)その他にも作業指示用の帳票である準備刷保管用紙出庫票18、半製品札紙19、加工指示札紙20などの出力に利用される。
【0013】
印字編集部16は、処理用データを受けると、該データに基づき、図5に示す表面(おもてめん)の出力編集データと、裏面がある場合は、図6に示す裏面の出力編集データを生成する。ここで、“ページ番号”は表面と裏面で同じ値になるように振られた、印刷用の通し番号である。次に、印字編集部16は、主版DB13(主版データベースに対応)から、“主版コード(表)”に一致する図7に示すような表面の主版データを取得する。主版データには、図中の(2)〜(12)のような空欄部分があるので、これらの空欄部分に表面の出力編集データの#2〜#12の項目の値が入るように編集し、これを主版データと組み合わせて印字データとして、例えばフレキシブルディスクとかその他の適当な情報記録媒体に出力する。尚、もし裏面もある場合は、表面と同様にして、印字編集部16は、主版DB13から、“主版コード(裏)”に一致する図8に示すような裏面の主版データを取得する。裏面の主版データには、図中の(5)〜(12)のような空欄部分があるので、これらの空欄部分に表面の出力編集データの#5〜#12の項目の値が入るように編集し、これを主版データと組み合わせて印字データとして、例えばフレキシブルディスクとかその他の適当な情報記録媒体に出力する。表面の印字データと裏面の印字データとは、互いに関係を持つ対に成っているので、好ましくは、その後の作業や管理上の便宜の為に一まとめに組み合わせて一つの情報記録媒体に出力しておく。ここで、図7および図8の(5)〜(12)の項目等がある領域は、印刷工場内での検査などを目的に印刷されるものであり、最終的には裁断して切り落とされてしまい、債券としての物品上には残らない。
【0014】
好ましくは、その後の作業や管理上の便宜の為に、さらに、印字編集部16は、印字データを出力するとともに、処理用データを用いて、印刷した証券の受託会社への送付に用いる送付用ラベル23や、印刷した証券の検査などに用いる検査リスト21や納入リスト22などの帳票を出力する。
【0015】
このように本発明に係る債券印字データ編集装置(即ち有価証券印字データ編集装置)は、債券販売データを入力すると自動的に能率良く、オンデマンド印刷機に入力するための印字データを生成する。このため、例えば従来およそ1ヶ月(又はそれ以上)かかると考えられた債券印刷の依頼を受けてから納入までの期間を、約1週間程度に短縮することができる。
【0016】
なお、本発明に係る債券印字データ編集装置(即ち有価証券印字データ編集装置)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより印字データの編集を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
有価証券のオンデマンド印刷に用いて好適な有価証券印字データ編集装置や、有価証券印字データ編集方法、或いは有価証券印字データの編集を行うコンピュータプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態による債券印字データ編集装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における債券販売データ10の例を示す図である。
【図3】同実施形態における債券管理テーブル11および受託会社テーブル12の1レコードの例を示す図である。
【図4】同実施形態における処理用データの例を示す図である。
【図5】同実施形態における表面の出力編集データの例を示す図である。
【図6】同実施形態における裏面の出力編集データの例を示す図である。
【図7】同実施形態における表面の主版データの例を示す図である。
【図8】同実施形態における裏面の主版データの例を示す図である。
【図9】従来のオンデマンド印刷の構成を示すブロック図である。
【図10】準備刷の対象となる下地の例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10…債券販売データ
11…債券管理テーブル
12…受託会社テーブル
13…主版DB(主版データベースの略称)
14…債券販売データ読込部
15…データ項目追加部
16…印字編集部
17…印字データ
18…準備刷出庫票
19…半製品札紙
20…加工指示札紙
21…検査リスト
22…納入リスト
23…送付用ラベル
30…債券印字データ編集装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっている主版データを、有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースと、
有価証券販売データを読み込む読み込み手段と、
前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、前記主版データベースから取得し、該主版データと前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する印字編集手段と
を備えることを特徴とする有価証券印字データ編集装置。
【請求項2】
有価証券販売データを読み込む第1の過程と、
主版データは有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっており、前記第1の過程にて読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、主版データを有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースから取得する第2の過程と、
前記第2の過程にて取得した主版データと前記第1の過程にて読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する第3の過程と
を備えることを特徴とする有価証券印字データ編集方法。
【請求項3】
コンピュータを、
有価証券販売データを読み込む読み込み手段と、
主版データは有価証券に印字する印字データであって有価証券の一つの銘柄に対して一つ定まっており、前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに対応する主版データを、主版データを有価証券の銘柄ごとに読み出し可能に格納する主版データベースから取得し、該主版データと前記読み込み手段が読み込んだ有価証券販売データに基づき印字データを生成する印字編集手段として機能させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−148861(P2007−148861A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343408(P2005−343408)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】